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邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】赤線玉の井 ぬけられます

2006-09-05 | 邦画 あ行

【「赤線玉の井 ぬけられます」神代辰巳 1974】を見ました。



おはなし
売春防止法が施行される直前の玉の井。「小福」で働いている売春婦たちの、正月の数日間を哀しくもおかしく描きます。


主として3人の売春婦のエピソードがメインの、この映画。シマ子(宮下順子)のちょっと哀しいようでいながら実は楽しいんじゃないのという話、公子(芹明香)の笑えるようでいて、実はけっこう哀しい話。そして、直子(丘奈保美)の文句無くおかしい話の3つです。

シマ子には志波(蟹江敬三)というヒモがいます。志波はバクチを打つわ、ヒロポンをやっているわで、甲斐性の無い男。でも、入れ墨をしている男に弱いシマ子は、志波から離れることができません。今日も、志波に頼まれた一万円を工面するために、アクセサリーを同輩に売って金を捻出しています。ところが、賭場に金を届けてもロクに相手にもしてくれない志波。そんな時、シマ子は賭場の廊下で思わず自慰にふけってしまうのでした。

こういうタイプは、自分に酔いやすいタイプですね。不幸な私というのに憧れて、その幻想が続いている間はどこまでも男に尽くしてしまいます。でも、ある日ふと憑き物が落ちたように男を捨ててしまうか、「もっと」不幸にしてくれそうな男に乗り換えたりしますので注意が必要です。ぜひ蟹江敬三には頑張っていただきたいと思います。



公子(芹明香)は、馴染みの客と結婚することになりました。せめて写真だけでも、という男の心遣いに涙する公子。二人は正月を温泉で過ごそうということで出かけますが、夜になると、どうにも男がヘタ。「好きかい、ぼくを好きかい」と言う男の声に答えずトイレに行った公子は「東京帰ってもうまくいくかしら」と独白します。結局、早々に東京に帰ってきてしまった公子は、店に顔を出します。驚く女将たちを尻目に、「やっぱ、お店はいいわあ」とくつろぐ公子。揚げ句の果てに客を取り絶頂を迎えるのでした。とうとう夫は迎えには来ませんでした。

こういうタイプを淫乱と言ってしまえばそれまでですが、実は哀しい生い立ちがそうさせているのかもしれません。公子の初回のシーンというのも映画の中では語られていましたが、ビクビクと小鳥のように震え、それは痛ましい処女喪失でした。もし彼女が、こんなところに足を踏み入れずにいたらどうなっていたでしょう。悲惨な状況に「慣れ」、それを自らが望んでいたことのように思い込んでしまうのは哀しいことです。



直子(丘奈保美)は、先輩の繁子(中島葵)が、去年の正月に一日で26人の客をとったことを聞き、記録更新を目指すことにします。「直子の十人目」というテロップが出たあたりでは快調です。帳場のオヤジ(殿山泰司)が教える「男を早くイカせる方法」なんてのにも、「せっかくだけど、あたしそんなインチキくさくなくやってみるつもりよ」と相手にしません。「直子の十六人目」ここで遅い客に当たってしまった直子は、オヤジの教えてくれた股火鉢の方法を使うことにします。果たして、記録更新はなるのでしょうか。

こういうタイプは、ほっておいても大丈夫です。人生はゲーム、と割り切っていますし、常に前向きに生きていけるでしょう。自分で商売を始めても成功するタイプです。



しかし、特飲店を舞台にした群像劇というと、溝口健二の「赤線地帯」を思い出しますが、あちらは芸術、こちらはロマンポルノですから当然、エピソードもしょうもないものが多いです。でも、しょうもないのが人生。ダメな人のダメな人生をペーソスたっぷりに描く、この映画。意外と拾い物かもしれません。ごらんになる時は、溝口健二の「赤線地帯」とぜひいっしょにどうぞ。宮下順子が木暮実千代、芹明香が町田博子、そして丘奈保美は若尾文子に見えてくること請け合いです。

 

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