いくらおにぎりブログ

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【映画】陸軍中野学校

2006-11-14 | 邦画 や~わ行

【「陸軍中野学校」増村保造 1966】を見ました。



おはなし
帝大を優秀な成績で卒業し、陸軍予備士官学校を出た陸軍少尉の三好次郎(市川雷蔵)は、草薙中佐(加東大介)にスカウトされ、極秘任務につくことになりました。計18名の一般大学卒業生上がりの少尉たちが、付くことになった任務はスパイになること。次郎も、母や婚約者の雪子(小川真由美)との連絡を絶ち、スパイになるための特殊訓練を受けることになります。
しかし、突然、消息を絶った次郎を心配した雪子はイギリス人スパイに騙され、極秘情報を漏らすスパイに。次郎は、雪子を前に非情の決断を強いられます。


とてもスタイリッシュな映画です。東映の「ルバング島の奇跡 陸軍中野学校」が男臭さ溢れる漢(おとこ)の映画なら、こちらはダンディズム溢れるスマートな映画でした。

三好次郎(市川雷蔵)は、連隊長室に呼び出されると、そこには草薙中佐(加東大介)がいます。次々と不思議な質問をぶつけてくる草薙中佐。とっさの判断力を試し、記憶力を確かめるテストに三好次郎は見事答えます。
しばらくして次郎たち計18名のエリートたちは、愛国婦人会の敷地にある木造2階建てのバラックに集められます。そして、そこで1年間のスパイ教育を受けるように命じられました。彼らは、戸籍を捨てられ、出世の見込みもなく、ただ命の危険だけがある任務に就かなければならないのです。もちろん、そんな任務、嬉しいわけはありません。しかし、草薙中佐の熱意溢れる言葉
「この草薙と一緒に働いてくれ」という言葉に、みんな何となく頑張るぞー、という気分になってしまいます。恐るべきは、草薙中佐のカリスマ性ですね。ちなみに三好次郎は椎名次郎に名前を変えさせられました。

訓練は多岐にわたります。剣道、柔道、飛行機の操縦、射撃、無線、そして大学教授を招いての政治・経済・外交問題の講義。みんな夜もひたすら自習の生活です。そんな時も、ふっと現れては酒や食い物を差し入れていく草薙中佐。軽くギャグを飛ばしても、誰もクスリともしないのに、まったくめげてません。さすが草薙中佐です。

訓練施設は中野の電信隊跡地に移りました。通称「中野学校」の名実ともに始まった瞬間です。やっぱり校舎はバラックみたいですが。ここでは、より実践的な訓練が始まります。爆破術、毒殺術、暗号術、ついでに手品の練習、鍵開けの練習、もうなんでもアリです。
さらにイヤなのは、拷問の実習。「たとえば、この機械の音を聞いていると、たった1時間で発狂する」などど言われて、イヤーな音まで聞かされてしまいます。それで「やめてくれー」と言って耳を塞いでいた学生は便所で首を吊って自殺。さすが、この機械の性能は伊達ではなかったようです。悲しみに沈む訓練生たち。草薙中佐は言います。
「スパイを養成する方法なんて、俺も知らん」えっ、そうなんですか。訓練生たちに詫びる草薙中佐。そして、そのまま演説へ。
「スパイの根本精神は真(まこと)だ」などとまた自分の世界に没頭していきます。そこに、市川雷蔵のクールな声でナレーションがかぶさります。「我々は、また草薙中佐の熱意に負けた」

厳しい訓練は続きます。全員、外国語を2カ国語は習得すること、職業も2つ以上覚えること。次郎は英語と中国語を学び、コックと洋服屋の職業をマスターしました。さらに性感帯の研究までが訓練に入っています。黒板で、性感帯を教わった訓練生たちは、さっそく街に出て実践です。しかし、訓練生の手塚は女に入れあげてしまい、仲間の軍刀まで盗んで金に替え、女に貢ぐ始末。付け焼き刃の知識で、女性に手を出すとロクなことにならない、という見本ですね。軍刀を盗んだのが憲兵隊にバレた手塚は、仲間に詰め寄られます。もう、みんな草薙中佐に心酔してしまっているので「中野学校を救い、所長に詫びる方法はたった一つしかない」と言って、腹を切れと迫ります。「手塚、腹を切れ」「手塚、死んでくれ」「卑怯者になるな」それでも躊躇している手塚に「俺が刀を持っててやる。目をつぶって飛びかかってこい」とまで言い出します。さすがに手塚もそこまで言われては引き下がれずに、死ぬのでした。

一方、次郎の婚約者の雪子(小川真由美)は、必死に次郎の行方を探しています。さすが情念の塊、小川真由美。ほとんど鬼気迫る勢いです。彼女は、英国人の経営するベントリー商会を辞め、少しでも次郎の消息が知りたくて参謀本部のタイピストに。しかし、それを喜んだのはベントリー。実は彼は英国のスパイだったのです。次郎は陸軍に殺されたなどと言って、巧みに雪子の心をつかむベントリー。雪子は亡き次郎の仇を取る、と思わされて英国スパイの手先になってしまうのでした。

さて、あるのは草薙中佐の溢れるほどの熱意だけで、中野学校には予算はほとんどありません。それなのに、性感帯の実習までやっているので、いつも金が無くて困っています。そこで、草薙中佐は一計を案じました。それは
「卒業試験として、英国の暗号コードブックを奪い、それを参謀本部に買ってもらう」というもの。さすが、草薙中佐。考えることが冴えてますね。

実行部隊は、成績優秀な次郎たち数名。さっそく領事館員のE.H.エリックに取り入った次郎たちは暗号コードブックの入手に成功します。しかし、その情報が参謀本部に勤める雪子によって、英国側にばれてしまいます。こんなものは使い物にならん、と嫌味な参謀(待田京介)に罵倒される草薙中佐。おかしい、暗号コードブックは、分からないように写真撮影したはず、つまりこれは参謀本部から英国側に情報が漏れたに違いないと調査を始める次郎たち。そして、内偵の結果、雪子が情報を漏らしたスパイだということが分かりました。

次郎は、草薙中佐にことの次第を洗いざらい報告します。もちろん雪子がかつての婚約者であったことも。
「そうか、何もかも俺のせいだな」とうなだれる草薙中佐。「椎名、恨んどるか、この草薙を」、くうーっ、こういう所が草薙中佐が心酔されてしまうところなんですね。この件が明らかになれば雪子はおそらく、憲兵隊に辱められ、拷問の上、殺されてしまうでしょう。
「椎名、どうせ殺されるなら、お前がやったらどうだ。その方が女も幸せだろう」と言う草薙中佐。とりあえず、こっそり逃がすとか、逆スパイにするという発想は無いんですか。まあ、無いのなら仕方ないですね。

憲兵隊に急襲されたベントリーは青酸カリを飲んで自殺。敵ながら天晴れです。そして、次郎は雪子に接触します。死んだと思っていた次郎が、ひょっこり現れて、天にも昇る喜びに包まれた雪子。次郎は雪子をホテルに誘います。まったく疑わずに付いてくる雪子。ここらへんの小川真由美の演技は良いです。淫らなのに純粋、と言えば良いんでしょうか。
手品師に教わった訓練を生かし、毒薬を雪子に飲ませた次郎。
雷蔵の淡々としたナレーションがかぶさります。
「心臓はまったく止まり、私は雪子を殺した」
そして、偽の遺書が大写しに。
「私はスパイでした。自殺します。雪子」
そして、そこにまた雷蔵のナレーションが
「私もスパイだった。私の心も死んだ」

中野学校は卒業式を迎えました。参謀本部に功績が認められ、来年からは50人の生徒を迎えるそうです。草薙中佐に心酔している第1期生たちは、草薙中佐を讃えて万歳をします。卒業祝いの宴もたけなわの頃、草薙中佐は次郎を表に呼び出して、語ります。「辛かったろう」「君には何も言うことはない。ただ一言、死ぬな」うーむ、ここら辺が草薙中佐の人身掌握術なんですね。

翌日、任地の中国に向けて旅立つ椎名次郎の姿がありました。ということで、続編に続きます。

とにかく、この映画は市川雷蔵が目立ちません。訓練生たちが台詞を話しているときも、いつも画面の端の方に黙って立っているんです。また自分が写っているシーンでも、動きも台詞も最小限。表情もほとんど無表情です。まさに、スパイってこんな存在なんでしょうね。とにかく、雷蔵の抑えに抑えた演技は最高です。

そして、光るのが草薙中佐の加東大介。とにかくエネルギッシュで、信頼される上司像を見事に演じています。もし、この役が弱いと、なんでみんな辛い訓練や境遇に甘んじているのかという説得力が無くなってしまいますから。良く雑誌で、理想の上司像みたいな特集がありますが、その点では、まさに加東大介は理想中の理想です。
もっとも、いったん草薙中佐に見込まれたらとんでもないことになってしまいますけどね。


(雷蔵と情念の女・小川真由美)


(雷蔵と情熱の男・加東大介)

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2 コメント

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未見なんですが (アナベル・加トー少佐)
2010-05-31 19:34:15
これ読んでまず思ったのは「攻殻機動隊」の元ネタか?ってことです、ま共通項は草薙とスパイと防諜だけなんですが。オレてっきり中野学校ってのはスパイ養成学校だと思ってたんですが、実体は対スパイ要員養成ギプスだったんでしょうか。(おそらく違う)

脱線ついでですがBSマンガ夜話の「攻殻」の回では出演者が絵と設定のムズカシさ(自分はそうは思わない)を繰り返すばかりでガッカリしました、おかげであれからマンガ夜話は一回もみていません。あの出演者ってのはホントにマンガ以外は無知な連中なんだなーと実感やれやれ。
Re:未見なんですが (いくらおにぎり)
2010-06-01 09:42:29
加トー少佐、こんにちは。

まず。んなわけねーだろ、と申し上げます。なんですか、ギブスって。

BSマンガ夜話ってのは、一回も見たことないんですけど、それほどにダメですか。まあ、確かに、それを見ている時間にマンガを読んだ方がいいかも知れないですね。

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