いくらおにぎりブログ

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【映画】女間諜暁の挑戦

2009-02-16 | 邦画 あ行
【「女間諜暁の挑戦」土居通芳 1959】を観ました



おはなし
特務機関員の岸井隆(天知茂)は、敵組織の実態を暴くため、京劇の美人スター(三原葉子)に接近したものの……。

とりあえず、「女」とか「肉体」とかタイトルにつけて気を引くのは、大蔵新東宝の常套手段ですけど、肝心の女間諜(高倉みゆき)が、トップクレジットのわりに出番が少ないのはどうしたことでしょう。まあ演技が下手だとか、社長の愛人だとか、イカニモな条件はそろっているものの、悪い女優さんじゃないんですけどね。

「日華事変の頃」「日本軍の戦果は果てしなく拡大されていったが、後方占領区に於ては敵間諜機関によるテロ行為が頻発した」。そんなテロップとともに、日本軍のトラックの前にドラム缶がゴロゴロっ。キキーッ。急停車したトラックに、わらわらと敵が群がり、マシンガンをバリバリバリ。で、タイトルがドドーン。えーと、新東宝にしてはハデですね。もっとも、このまま尻すぼみなことが多いのも、新東宝の特徴ではありますけど。

黒メガネの男の前に、陸軍中尉が出頭してきました。「貴様は過去2年間、特務工作員としてスパイ教育を叩き込まれた男だ。岸井たかし、これがたった今からの貴様の姓名だ。たかしは国家隆昌の隆」と厳かにいう黒メガネの男。「はい」と答えた岸井隆(天知茂)に、黒メガネの男は続けます。「いいか、女におぼれてはいかんぞ。それだけは言っておく」。

約束の北京駅に出かけた岸井を待っていたのは、女間諜の三津井雪(高倉みゆき)。と、駅頭で騒ぎが。どりゃー。うわーっ。タイヘンです。中国人間諜に陸軍大佐が刺し殺されていますよ。思わず、ピクっと反応する岸井。しかし、雪は押しとどめて言うのです。「岸井。あなたはわたしくの命令によってのみ行動すること。さあ、いらっしゃい」。

ということで待つことしばし、岸井に命令が下りました。スッと写真を差し出す雪。写真にはふくよかな女性が写っていますよ。「林晃彩、京劇のスター女優。表面は親日家を装ってはいるが、わが"むらさき機関"のブラックリストのナンバーワンよ。ただし、彼女がクロであるという確証は何もない。命令。岸井隆は林晃彩に接近せよ」。ん?誰か物陰で様子を伺っています。待てーっ。ぱからっぱからっ。馬で敵スパイを追撃するふたり。スチャッ。敵スパイは銃を構えますが、雪の方がタイミングが早かったようです。バーン。うわーーーっ。敵スパイは崖からゴロゴロと落ちていくのです。
「これで当分安全。私たちのことを嗅ぎつけた野良犬は片付けたわ。岸井、林晃彩の心を捉えて、その正体を暴け。しかし、絶対に自分の心を相手に与えてはならない」と雪に言われ「分かりました」と返事をする岸井。しかし雪はちょっと心配だったんでしょうか、「林晃彩は美人です。絶対におぼれないこと」と念押しをしていますよ。よっぽど、岸井は「おぼれやすそうな」顔をしているに違いありません。

京劇のスター女優、林晃彩(三原葉子)が踊っています。新東宝の映画において、三原葉子が踊るのは、太陽が東から昇って西に沈むくらい当然のことなので、ここはジックリ鑑賞してみましょう。うーん、いいですね。三原葉子という女優さんは、決して世間的な意味での「美人さん」ではありませんが、いつも一生懸命にやっている雰囲気が伝わってきて、とても好感がもてます。ふっくらした体型とあいまって、いい人オーラが伝わってくるようです。ということで、踊りの時間も終わり、林晃彩は岸井に紹介されました。さあ、岸井はうまいこと林晃彩に取り入ることができるでしょうか。

グワーン。憲兵が殺され、直後に大爆発。林晃彩と一緒に、その爆発現場に居合わせた岸井は、アヤシイ奴ということで、憲兵隊に連行されちゃいました。さっそく、むらさき機関の機関長、「王大人」こと河石大佐(竜崎一郎)に憲兵隊から確認の連絡が届きます。なにしろ、スパイと思って、味方の特務機関員を逮捕したらタイヘンですからね。しかし、王大人は「知らんねえ」と一言。雪が「大丈夫でしょうか」と心配しても、まあ訓練も受けているし、拷問に耐えられるだろ、と冷たいお言葉です。さらに「ヤツがダメなら他の手段を使うまでさ。三津井クン、キミは岸井に惚れたね」と言い出す始末。なんでしょうか、特務機関員っていうのは、惚れっぽい人々で構成されているんですかね。

ビシっ。バシっ。ひたすら拷問が続きます。しかし、岸井が頑張れば頑張るほど憲兵たちは疑いを深めていきます。なにしろ、普通の人間がここまで拷問に耐えられるわけもありませんから。と、10日ほど拷問を受けたところで、ようやく王大人から「岸井を離してやってくれ」という連絡が。なんだか、ぶたれ損な岸井です。

ズタボロの岸井は「謝天成を探れ」というメモを雪に残して、林晃彩のところに。あ、ちなみに謝天成(江見俊太郎)というのは、林晃彩の大ファンな中国人でしたが、プロの岸井からみると、どうもアヤシク見えたようです。それはともあれ、林晃彩のところに行って、「晃彩。僕は君と一緒にいたというだけで、憲兵に拷問された」と訴える岸井。「ワケをワケを教えてくれ」バタッ。おや、失神しました。これには、晃彩も責任を感じちゃいました。「岸井、ごめんなさい。私のために憲兵隊に疑われたりして」とクスリを口移しで飲ませています。もちろん、岸井は失神などしておらず、スキをみてニヤリと笑っているのです。

岸井の残したメモを回収した雪は謝を尾けて、阿片窟に潜入。阿片を吸いつつ、明日の十時に敵組織が秘密書類の受け渡しをする予定であることをつかみました。よーし、捕まえてやる。早速、翌日、憲兵隊に協力してもらい、敵の連絡員を秘密書類ごと逮捕です。とは言え、敵もさるもの。早速、連絡員は謝のことを吐かず、移送中に敵組織の襲撃で死んでしまったのです。どうも、あと一歩のところで敵組織はむらさき機関の手をすり抜けてしまうようですね。こうなれば、頼りは岸井の活躍にかかっているのですが。

その岸井は、晃彩とデート中、かつての部下に「中隊長どのっ」と声をかけられたりしつつ、どうにかこうにか調査を続行中。しかし、晃彩はなかなか尻尾を見せようとしません。と、チャンスがやってきました。晃彩が京劇の研究会に出るというのです。「先にうちに行ってて。すぐ帰ります。私の寝室で待ってて」、チュッ。にこやかに手を振って晃彩を見送る岸井ですが、もちろん、そのままにしておく気は毛頭ありません。ササッ。シュタタ。ササッ。尾行開始です。

しばらく尾けると、晃彩は一軒の廃屋に消えていきました。おやっ、消えた。しかし、調べると、地面に隠された扉があるではありませんか。そぉーっ。地下室から話し声が聞こえてきます。晃彩と謝、それに他にも仲間が大勢いるようですよ。切れ切れに聞こえてくる会話からすると、敵組織は高木参謀を襲って、作戦計画書を手にいれる相談をしているようです。これは一大事。早速、雪に電話しなければ。ジーコロ、ジーコロ。ダイヤルをまわし、呼び出し音をイライラと聞いている岸井。うわっ。タイヘンです。晃彩が出てきましたよ。このままじゃ、マズイ。慌てて受話器を置いて、先回りするべく岸井は走り出します。もちろん、岸井は、その電話に出た雪が「もしもし。もしもし」と繰り返していることは知りません。

トントン。トントン。岸井、いないの。部屋の戸を叩いている晃彩。岸井はあわててバルコニーをよじ登っています。おかしいわ、いないのかしら。晃彩が不審げな視線をドアに向けると、ドアがガチャっと開いて、岸井が顔を出しました。有無を言わさずチューをして、「君を驚かそうと思ってね」とごまかしています。「まあ、悪い岸井」。

抱き合って踊る二人。しかし、内心では別のことを考えているようですよ。

(「この人は油断できない。どこか、底の知れない冷たいところがある。だが、あたしの心の乱れはどうしたことだろう」)

(「この接吻も彼女の演技のひとつだろう」)

(「この人、あたしから何か探ろうとしている。でもダメ、それだけは。もうダメ、あたしの体、この人のものになることを求めてる」)

さて、岸井が連絡できなかったばっかりに、高木参謀は襲われ計画書が敵に奪われてしまいました。むらさき機関の王大人は「ヤツは何をしている」と怒りまくりです。「申し訳ありません」と代わりに謝っている雪。しかし、王大人は「おかしいと思わないか」と雪に言うのです。雪は「相手も大物です。そう易々とは」と懸命にフォローをしますが、王大人は「そう相手の林晃彩は才色兼備。君に劣らぬ美人だ」「もし君が晃彩だったらどうする。腕によりをかけて岸井を誘惑するんじゃないかね」と岸井を疑うのでした。しかし、みんなが女におぼれることを心配している岸井って、いったい。

早速、岸井を呼び出す雪。参謀が殺されたことを告げ、「岸井。キミは迷ってるっ!」と断言する雪。「迷う。そうかもしれない」と岸井は悩んでいます。「キミが迷っているのは、晃彩に心奪れているからです」ビシッ。「そんな、任務以外の話をやめてくださいっ」、イヤイヤをする岸井。「岸井、待ちなさいっ!!」。えーと、どっちが男で、どっちが女だか分かりません。ショボーンとした岸井に、「岸井。情報を期待します。では、お別れの握手」と手を差し出す雪。思わず、手袋をしたまま手を差し出す岸井ですが、雪は「ダメ。手袋を脱ぎなさい」と命令するのです。直接、肌を触れ合わせて、「お分かりになる。分からなければいいの」と、いきなり女の子っぽくなる雪。しかし、岸井はボケーっとしていますね、残念なことに。

敵スパイたちは一同にそろって打ち合わせ中。一方のリーダー。謝が岸井はアヤシイと言い出せば、もう一方のリーダー・晃彩はアヤシクないと水掛け論。と、そこにピーピーピピ、ガガガ、と無線機が鳴り始めました。重慶から命令がきたようです。北支派遣軍ノ最高司令官・多田大将ヲ爆殺セヨ。場所ハ北京郊外第一鉄橋。時間ハ不明。それを、またコッソリ覗いている岸井。見張りに見つかりましたが、見張りを倒し、ダッシュで雪に報告です。しかし、運悪く晃彩から送られたライターを落っことし、それを謝がニヤリと見つめていますよ。

「岸井からの報告です。敵の本拠地が分かりました」と、王大人に報告する雪の表情はうれしそう。憲兵隊を連れて出発です。おー。しかし、みんなが駆けつけるとアジトはもぬけのから。そのうえ、コチコチと音がしますよ。えーと、この金属の箱は何かな。ドカーン。あわれ、憲兵隊の何人かが爆発に巻き込まれ死亡。「岸井に裏切られた」と王大人は激怒しています。

王大人の命令で、岸井を殺しにやってきた雪。もし、命令を実行できなければ、雪が王大人に殺されるでしょう。しかし、岸井が「僕が死んであなたが助かるなら撃ってください」とつぶらな目で見つめてくると、雪はどうしても引き金を引けません。「岸井、わたくしの最後の命令です。逃げて。早くここを逃げてっ」。しかし、岸井は「雪さんが僕を信じてくれるなら、たった一つ、残された方法があります」と言い出しました。「岸井、キミを信じます。その方法を教えて」。それは、こういう計画でした。爆弾を仕掛ける場所は分かっている。あとは、僕が裏切ったふりをして、敵に多田大将の乗った列車の時刻を教えれば、敵はそこに集まるはず。そこを一網打尽にしましょう。「しかし、そんなことをすれば、キミは必ず殺される」と悩む雪。しかし、どうやら、それしか手はないようです。「明日の暁。4時15分」と時間を教える雪。さあ、ぐずぐずしていられません。急いで憲兵隊と連絡を取らなければ。バババババ。バイクで走り出す雪。時間との競争です。

わざと捕まった岸井は、敵に列車の時刻を教えました。「今日のの夜明け。4時15分。ペキンステーション」。敵も大騒ぎ。うわっ、時間がないじゃないか。それ、急げー。

ということで、爆走する列車。爆弾を仕掛ける敵スパイ。そして、現場に急ぐ憲兵隊のむらさき機関の面々が交互に描かれ、銃撃戦が開始されました。バーン、バーン。うわぁ。バーーン。ぎゃあああ。どうやら、憲兵隊が押しているようです。

そのとき、岸井と晃彩は隠れ家でお留守番です。「岸井、たとえ襲撃が成功しても謝はあなたを生かしておかないわ。あたしが魂を売ったことを知っているのよ」と嘆く晃彩に、岸井は答えます。「祖国を売り、魂を売ったのは僕だ」。「では、あの恋はかりそめではなかったの」「かりそめの恋なら死なずにすんだ。でも、僕は君の本当の心を知って満足している」。ひしっ。抱き合って、チューをする二人。と、そこに憲兵隊から逃げた謝がやってきました。バーン。とっさに岸井を庇って撃たれる晃彩。特務機関員の養成所を優秀な成績で卒業した岸井は、鍛えた腕で、スチャッとピストルを構え、バーン。って、撃たれてるし。どうも、訓練と実戦は違うようです。しかし、そこに飛び込んできた雪のピストルが火を吹き、謝は倒れ伏したのです。

「岸井、しっかりして」「雪さん、許してくれ。僕は晃彩に……」ガクッ。「岸井、恋してはいけないと言ったのにぃー」。

多田大将からお褒めの言葉を貰った雪は、「でも、あたくし、お役に立てましたこの機会にお願いして、日本に帰らせていただくことにしました」とあっさり、女間諜を辞めることにしました。日本に向かう船のうえ、雪はつぶやきます。「かわいそうな岸井。あなたは立派に任務を果たしたのよ。安心して、愛する晃彩と異国の空に、静かに眠ってください。わたくしはあなたが好きでした。この寂しさを忘れるために重い任務を捨てて、故郷に帰ります。岸井、さようなら」。船は一路、日本を目指して航海を続けるのです。


えーと、岸井が恋をしてはいけないのに、恋をするお話でした。っていうか、なんでみんな「岸井」って、呼び捨てにしてるんだろう。

ま、それはともかく、(いちおう)主演の高倉みゆきは、全編、白い乗馬ズボンに黒い革ジャンを引っ掛けているというボーイッシュな服装。一方、三原葉子はチャイナドレスのスリットも悩ましい、お色気タップリな服装でした。もちろん、これは好みの問題ですけど、岸井としてはお色気のほうにヤラレタってことなんでしょうね。それにしても、色悪の天知茂ですら、三原葉子の純粋さには勝てないという、貴重な教訓を学ぶことができたように思います。おしまい。







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2 コメント

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高倉みゆき (アパッチ)
2009-03-02 00:51:39
いくらおにぎりさん、こんにちは、
この時代の映画では1、2を争う程のキスシーンの多い映画ですね。
さて、高倉みゆきですが、この人の評価は賛否両論ですね。私は賛の方でスパイ役や王女役には向いていると思います。それから、みゆき節というのがあって、心が強そうでも腰折れしてしまう。
潔癖であってもハマると溺れてしまう。
こう言う役にはピッタリです。
ただ一つ疑問なのは、大蔵社長から改名させられた俳優は、天城竜太郎を始め皆元の名前に戻しているのに、大蔵社長と喧嘩別れした、高倉みゆきは何故和田道子に戻さずに、高倉みゆきで通したのかな?
まぁ高倉みゆきは良い名前ですけどね。





なぜでしょう (いくらおにぎり)
2009-03-02 09:54:27
アパッチさん、こんにちは。

>潔癖であってもハマると溺れてしまう
「汚れた肉体聖女」とかも、そのパターンでしたね。あと、どちらかというと、女王様顔なのに、Mっけタップリなところも、ポイント高いと思いました。
もっとも、演技力って部分では、どうしても小畠絹子や久保菜穂子に勝てないと思いますけど。

改名の件。どうしてなんでしょうねえ。本名がいかにも地味だからでしょうか。

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