いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】美味しんぼ

2007-05-26 | 邦画 あ行

【「美味しんぼ」森崎東 1996】を観ました



おはなし
東西新聞社の企画「究極のメニュー」担当者に選ばれた山岡士郎と栗田ゆう子は、同じく帝都新聞社の企画「至高のメニュー」監修者の海原雄山と対決するのですが……

この映画はおいしすぎます。いや、美味しんぼだから、美味しいのはあたりまえですが、それ以前に映画自体が香ばしすぎて最高です。

導入部は、市井の人々の表情を捉えてみたり、とっても松竹してますが、「はっきり言って」退屈ですから、あっさり飛ばします。ともあれ、東西新聞の大原社主(芦田伸介)が100周年記念に「究極のメニュー」なる企画を思いついたことだけご理解ください。しかし、芦田伸介の人相がとっても悪いので、新聞社の社主というより総会屋にしか見えないところはポイントです。

じゃあ、「究極のメニュー」は誰に作らせようということで、とりあえず陶芸家にして美食家の海原雄山(三国連太郎)を監修に、文化部の中で、舌の鋭敏な者を担当者に任命することに決定です。

よせばいいのに、一軒の料亭で、社主自らの海原雄山への接待攻撃、並びに文化部「グルメ」セレクションが行われることになりました。セレクションの方は、3種類の水と3種類の豆腐の銘柄を当てるというテレビチャンピオンな方法。理路整然とその違いを見分けた山岡士郎(佐藤浩市)と、勘だけで答えた栗田ゆう子(羽田美智子)が全問正解でめでたく担当者に選ばれます。一方、大原社主は雄山の説得に成功、出足は順調だと思ったのですが。

グータラな山岡が、料亭から帰ろうとしたところ、女将が泣きついてきました。お客さんがお吸い物の味に怒っているというのです。客に泣きついてどうするんだ、と思いますが、山岡は早速お吸い物作りを開始。無事、美味しいお吸い物ができたのです。喜んで、雄山のところに持っていく女将。雄山も、今度のお吸い物には満足なようです。
作った人間を見たいな、と言い出す雄山。フランス料理じゃあるまいし、何気取ってんだと思いますが、これはお話の都合ということで。

しかし、厨房を訪れてみれば、そこにいるのは山岡士郎。な、なんと山岡士郎と海原雄山は実の親子で、なおかつとっても仲が悪かったのです。知っていましたか?あ、知ってる。そうですか。
「監修の仕事、断わるよ。こういう男と一緒に仕事したくないんだ」とドスドスと帰っていってしまう雄山は、かなりのわがまま爺さんです。

翌日、海原雄山の主宰する美食倶楽部に出かけることにした大原社主と栗田ゆう子。山岡士郎はドタキャンです。しかし、大原社主が礼を尽くして頼んでも、雄山は監修を引き受けるどころか、無視する始末。さすがに大原社主のコメカミもピクピク気味です。

もう頼まん、と海原雄山に代わる美食家を探した結果、3人の美食家が集められました。しかし、この美食家たちはフォアグラが最高と言い放つ俗物。山岡は「最高のフォアグラを用意してください。それよりはるかにうまいものを用意しましょう」と言い放つや、いきなり釣りに出かけてしまうのです。釣ってきたのはアンコウ。そう、フォアグラよりうまいものはアンキモだったのです。フォアグラはガチョウを不自然に太らせ肥大させた肝臓、それに比べて、健康に泳いでいるアンコウの肝が美味しいのは当たり前、という山岡。まあ、不自然と健康っていうのは、美味しさとは「一切」関係ありませんが、そこらへんは、断言したもの勝ちということですね。まあ、
「あの先生がたは必要ないようだな。山岡君、究極のメニューは栗田君と二人で思い通りやってくれ」と大原社主も認めているようなので、どうでもいいんですけど。

ちなみに、ここで招かれた3人の美食家がスゴイ。砂塚秀夫、清川虹子、それに小松方正です。砂塚秀夫と言えば、網走番外地のオカマ役が懐かしく思い出されますので、食べているのは刑務所の食事じゃないでしょうか。清川虹子は、うーん、せいぜいがお茶漬けを立ったまま食べるのが関の山。小松方正は、確かに料亭とかに行ってそうです。ただ、ほとんど賄賂を渡すか、受け取るかで、料理を味わっているヒマは無さそうです。

さて、東西新聞のライバルである帝都新聞が、海原雄山を監修に向かえ「至高のメニュー」を立ち上げることになりました。ほとんど、星飛雄馬に対抗するために、星一徹が中日の監督になってしまうようなものです。まあ、美食倶楽部の板前が竜雷太ですから、ちょうどいいかもしれません。竜雷太、伴宙太、ほら何となく似てるでしょ。

ともあれ、ここで方針転換。当初は一社の企画だった究極のメニューも、至高のメニューとの対決方式になってしまったのです。
とりあえず、一回目のお題はお魚勝負。それぞれが、料理を持ち出し、それを審査員に判定してもらうのです。

13年前に、母が危篤にも関わらず陶芸を優先させた海原雄山を恨んでいる山岡は、「13年か、今ならあいつに勝てるっ」と気合充分。銀座で美味しいものを食べつけている辰っつぁん(田中邦衛)に教えを乞うのでした。と言っても、辰っつぁんは銀座のホームレス。でも、残飯を食いつけているおかげで、銀座のどの店が美味しい料理を出すかを熟知しているそうです。。。っていうか、店を何件かに絞って、自分の舌で確かめようとか思わないんでしょうか、山岡君は。
それにしても、田中邦衛は「若大将」シリーズでは青大将として、曲りなりにも社長の息子だったのが、「北の国」からではかなり貧乏な役になり、今度はホームレスですからね。しかも、すごく似合っているし。

さて、お魚対決です。山岡は、タイのお刺身とカブト焼きを出しました。とりあえず、審査員は舌鼓を打っているようです。そして雄山はというと、アジの開きと味噌汁にご飯。何ですか、これ。審査員も、ちょっと憮然としています。しかし、審査員のひとり、京極万太郎(財津一郎)が「待てよ。これただのアジの開きとちゃうでー」と言い出しました。なんだか、とてつもなく脂の乗っているアジの開きだそうです。「うん、潮の香りとお日さんの香りや。本まもんの干物のかおりやー」とデカイ声を出す財津一郎。そのデカイ声に引きずられたのか、うやむやなうちに雄山の勝ちです。

第2回の勝負は中華対決。山岡は、ホームレスの田中邦衛を見ていて思いついた乞食鶏という料理を出します。ホームレスから乞食鶏という、あまりにもストレートな着想には感心せざるを得ませんね。この乞食鶏は、鶏マルマルの中に、各種野菜などを詰め込んで、土に固めて焼く料理だそうです。実際、映画で見てもおいしそう。ちょっと食べたくなってきました。
対する雄山が出してきたのは鶏スープ。と言っても、ただのスープじゃありません。仏跳墻と言って、高級鶏(ウコッケイ)に、フカヒレ、鹿のアキレス腱、魚の浮き袋などなどが入った、すごいスープらしいのです。とはいえ、これは観てても、全然味の想像がつかないので、「映画的」じゃないですね。それを補うべく入っている、審査員の皆さんの「おお、これは」「なんと」「美味だあ」「うまいだけではない。慈愛に満ちている」などの台詞が、よけいに演出の苦しさを物語っているようです。
さらに財津一郎の、満州から引き上げるときに云々、という泣き芝居が入り、雄山が再び勝ちました。

東西新聞では、連敗中の山岡を担当から外せ、という声が。そんな時、美食倶楽部の板前・伴宙太じゃなくて竜雷太がやってきました。竜雷太が言うには、山岡と兄弟同様に育った里美(遠山景織子)の具合が悪いそうなのです。「山岡を兄と慕っている美少女が、心臓病で」ご飯も食べられない状態だというんですから、もうベタ過ぎる設定ですけど、これを堂々とやるのが松竹流ということで。どうやら「お兄ちゃんの作ってくれたものなら、何でも食べる」と言っているそうですから、これは敵地「美食倶楽部」に行かないわけにはいきませんね。

駆けつけてみれば、里美は煮豆を食べたいなどとぬかします。じゃあ丹波のインゲン豆を手に入れなくては、と旅立つ山岡。丹波ですよ。京都の先ですよ、インゲン豆のために。
丹波について、あちこちをキョロキョロ探して歩く山岡。しかし、あるのは黒豆。それも中国産ばかりです。と、何だか懐かしいような良い匂いがしてきました。近所を歩いている主婦に「あの匂いはどこから」と尋ねる山岡。そんなの知らないわよ、自分でクンクンしなさい、と普通だったら答えるところでしょうが、丹波のひとは親切です。あっちから、と教えてくれたのでした。どうやら、匂いはある民家から漏れ出している様子。山岡は早速家に入り込みます。そこにいるのは謎のオバサン(樹木希林)でした。さあ、ここからは樹木希林の時間です。要は、樹木希林は山岡のお母さんの従姉妹だったんですけど、それが観客に分かるまでの芝居の細かいこと。踊ったりコケてみたり、泣かせ芝居をしてみたりと、もうやりたい放題。多分、監督も樹木希林にお任せだったんじゃないかと思うほどの濃い芝居です。そう、まるで一人でドリブルをして、一人でシュートを決めてしまうような感じです。

そんなこんなで、山岡は、鎌倉の美食倶楽部にインゲン豆を持ってとんぼ返りしました。
「よし勝負しよう」と言い出す雄山。いや、あんたら親子はちょっとおかしいよ、どうしてそんなに勝負が好きなんだか。

とりあえず煮豆は完成しましたが、食べごろはすこし冷めてから。じゃあ、と山岡は煮豆を売りに行くことにしました。「煮立てー、インゲーン」と叫びながら、自転車を漕ぎ出す佐藤浩市。カットが変わると、遠山景織子と羽田美智子も煮豆を食べながら、心の交流をしているようです。遠山景織子も煮豆を食べたおかげでアメリカに行って心臓手術を受ける気になったようですし。めでたい、のかな。
ゲリラロケでしょうか。鎌倉駅前を「にまめー」とヤケになって走りまわる佐藤浩市。イメージがガラガラ崩れていきます。それをそっと見つめている三国連太郎。歩いている女子高生たちが、マジにあせって三国連太郎を見ています。
これは罰ゲームでしょうか。それとも新手の羞恥プレイ?

煮豆は冷めきってしまいました。「売り時過ぎちゃったんで、持っていってください」と道行く主婦に煮豆を配り出す佐藤浩市。ようやく、仕込みの俳優さん相手にお芝居ができるので、安心したような佐藤浩市の表情が泣かせます。そこに、手を差し出して「私にもくれ」という三国連太郎。一口食べると「あー、私は負けたかもしれん」。よく分かりませんけど、なんとなく親子で分かり合ってるみたいです。良かった、良かった。多分。

「究極のメニュー」対「至高のメニュー」、3回目の勝負が行われることになりました。今度は器になる陶器作りから勝負が始まるそうです。海原雄山の窯に集まる多数の取材陣。おっと、心臓病の遠山景織子は、雄山からかっぱらった皿を持って、アメリカに手術に行くみたいです。よく分かりませんが、難病ものとしてもハッピーエンドなんでしょうか。窯に火を入れる雄山の厳しい表情。山岡はその姿を、その生き様を熱く見つめるのでした。

とりあえず、ストーリーラインのベースは「会社の金をふんだんに使った親子喧嘩」です。と言うか、それ以上でも、それ以下でもないですね。
しかし、マンガに文句つけるのも野暮だと思いますけど書きます。そもそも究極だろうが、至高だろうが、とにかく美味しい料理のメニューを選ぶのが目的ですよね。だとしたら、鯛のお刺し身より、アジの開き定食の方が「勝ち」とかに、どうしてなってしまうんでしょうか。そりゃ、とてつもなく美味しいアジの開きの方が、マズイ鯛の刺し身より美味しいことはあるでしょうが、メニューとして「アジの開き定食最強」とか一般化できるのか、と。だったら、究極のメニューなんて、「初デートで彼女と食べたマックのバーガー」とか「2週間、海の上を遭難したあとに食べたお粥」とかが勝つに決まってるじゃないですか。
まあ、そんなバカなマンガですから「とっとと連載も終了した」のかと思ったら、まだ連載は続いているそうで、今度の6月に99巻が出るそうです。これって、全部読んでる人いるんでしょうか。いたとしたら、その人にこそ「究極かつ至高」の称号をあげたいと思います。

さて、原作はともかく、この映画の最大の売りは、「三国連太郎と佐藤浩市」の親子が、親子役で共演していることに尽きるでしょう。日本の男優の中でも、役への傾倒ぶりでは仲代達矢とも並ぶまさに「昭和の怪優」の三国連太郎と、父譲りの役者バカぶりで押しも押されぬ名優の佐藤浩市。この二人が主演クラスでぶつかり合うのですから、この点だけでも奇跡としかいいようがありません。でも、その「奇跡」の結果が「美味しんぼ」かよ、と。鎌倉駅前での恥ずかし勝負なのか、と。

お話のメチャクチャさといい、松竹特有の人情路線といい、名優を使って、よくもこれだけスケールを小さくできたものだと、ある意味で感心しました。


(遠山景織子と羽田美智子の側頭部)

(息子よ)

(恥ずかしいだろうが頑張れよ)

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