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【映画】勝利者の復讐

2007-09-12 | 邦画 さ行

【「勝利者の復讐」小森白 1958】を観ました



おはなし
金庫破りの達人・前島は刑を終えて更生を誓いますが、前科者に仕事はありません。そのまま、再び悪の道に落ちる前島。しかし、仲間と押し入った宝石店で、ボスが命乞いをする店員を殺したことから……

名脇役だった細川俊夫が主演の珍しい映画です。もしかして細川俊夫が主演というのは、これっきりじゃないかと思うのですが。当然、周りを固めるのは、新東宝の濃すぎるメンバーなので、かえって細川俊夫の普通ぶりが際立ちます。

冒頭は天知茂の顔のアップから。タイトルロールとともに、ソフト帽をかぶりピストルを持った天知茂が強盗をしているさまが映し出されます。もう、この段階で細川俊夫の主役の座が危うい感じです。

さて、刑務所を出てきた前島(細川俊夫)は優しい妻・房江(小畑絹子)と可愛い娘が待つ家に帰ります。そんな前島をじっと見つめる男たち。もう、見た瞬間に悪漢だと分かるいでたちです。

人見知りをして恥ずかしがる娘を見て、目を細めた細川俊夫は、妻の小畑絹子に「お前も幼稚園の先生なんか辞めろよ」と言います。さあ、明日からバリバリ働くぞ、と張り切る細川俊夫。

しかし、世間の風は冷たいのでした。前科者に仕事はなく、娘は「やーい、泥棒の子」と虐められ、さらに妻は夫の前歴がバレて幼稚園を馘になるという八方ふさがりな感じです。

そんな細川俊夫に「兄貴、兄貴」と接近してくるチンピラの森田(鮎川浩)。出所直後は、話を聞こうともしなかった細川俊夫ですが、背に腹は代えられず弟分の誘いにのって、国際商事に勤めることにしたのです。表向きは普通の会社のような国際商事ですが、ストーリーの流れからして、真っ当な会社のはずがありません。その上、社長の深沢を演ずるのが、天知茂ですから、もう黒を通り越してドス黒さ全開な感じです。さらに社長の天知茂には、一卵性双生児の弟までいるという設定ですから、どんどん細川俊夫の主演の座は危ない感じです。

よく分かりませんが社長の天知茂(兄)は、とんでもない悪人。天知茂(弟)は、そっくりさんとして天知茂(兄)に協力はしているものの、ナヨナヨしたヘタレというキャラクター付け。もちろん、それを天知茂は演じ分けるのですが、その差をハッキリさせるために、悪い天知茂はいつも以上に悪く、ナヨナヨした天知茂はとんでもなくナヨナヨしていると、まさに天知茂ファンならよだれをたらしちゃいそうな美味しさ爆発です。あ、主演は細川俊夫ですがね、あくまで。

「これから君にやってもらいたいのは、宝石店の金庫破りだ」と細川俊夫に言う天知茂(兄)。どこかで、普通の会社だと良いなあ、と思いたがっていた細川俊夫は、言下に「お断りします」と言ってみますが、「君には奥さんも子供もいるはずだ」と脅迫されてはしかたありません。

宝石店に押し入った悪漢たち。細川俊夫はさっそく自慢の腕を生かして金庫をサクっと開けますが、止せばいいのに天知茂(兄)は、命乞いをする店員たちを無慈悲に撃ち殺していくのでした。急報を受け、駆けつけてくる警察。うまいこと逃げる天知茂(兄)と悪漢たち。しかし、気持ちドンクサイ細川俊夫は、オタオタしていて警察に捕まってしまったのです。

「いいか、今度はお前は殺しに関係しているんだぞ。今までの錠前破りとは違うんだ」と皆川警部(沼田曜一)に尋問される細川俊夫。今まで迷惑もかけ、世話にもなった沼田曜一に、真実を話したいのはヤマヤマですが、「俺を裏切ったら女房子供の命はない、分かったな」という天知茂(兄)の言葉が頭の中でリフレインして、黙秘を続ける細川俊夫でした。

ここで止せばいいのに天知茂(兄)は、細川俊夫の妻を呼び出すことにしました。言葉巧みにおびき出される小畑絹子。「大きな声を出しますよ」と抵抗する小畑絹子に「あなたは私の秘密を知った。その償いをしていただきましょう」と天知茂(兄)はピストルを乱射です。次々と割れるつぼ。なんで、天知茂(兄)は自分の社長室で、大切そうなつぼを撃ちまくっているのか、きっと誰にも理解できないでしょう。もちろん、演じている天知茂(兄)も分かっていないに決まっています。

泣いている小畑絹子。天知茂(兄)は「これから毎日、こういう生活が続くんだ。前島君が出てくるまではね」と下卑た笑いを浮かべています。どうやら、小畑絹子を乱暴してしまったようです。まったく、これでは黙秘を続けている細川俊夫の立場はゼロですね。それに、そんなことを言ったら絶望した小畑絹子がどんな行動を取るか……
あっ、社長室の窓から小畑絹子は飛び降りてしまいました。唖然としている天知茂(兄)。かなりマヌケです。

沼田曜一のはからいで、取調室から小畑絹子の入院している病院に連れてきてもらった細川俊夫。どうにか小畑絹子の臨終には立ち会うことができました。
「警部さん、何もかも申し上げます。宝石強盗の首領は深沢正夫という男にに間違いありません」と証言を始める細川俊夫。そりゃそうです。人質は、手を出さないから人質の価値があるんで、手を出した上に死なれては、細川俊夫だって黙っているワケがないじゃないですか。

早速、逮捕拘留された天知茂(兄)。しかし、検死の結果、小畑絹子が暴行されていたと聞かされても妙に自信たっぷりです。それというのも、社長室から小畑絹子が飛び降りた時間にはバー・オアシスにいたというのです。調べてみるとなるほど、アリバイが腐るほど出てきました。もちろん、細川俊夫に面通しをさせても、不敵に笑う天知茂(兄)。さすがに沼田曜一警部もお手上げで、何か物的証拠はないのか、と細川俊夫に聞くのでした。

沼田曜一の尽力で、刑が確定するまでのあいだ保釈を許された細川俊夫は、これまた沼田曜一の口利きでタクシー運転手になることに。まあ、容疑が強盗殺人なのに保釈が許されるのかとか、短期間しか働けないのにタクシー運転手の口がよくあったな、という疑問を抱いてはいけません。ともあれ、僅かな期間でも、細川俊夫は幼いわが子と暮らす期間が与えられたのですから、良かったね、と思いましょう。

タクシーを流す細川俊夫。しかし、あるところで乗せた客がなんと天知茂だったのです。思わずギョっとする細川俊夫ですが、天知茂は細川俊夫に気づいていないようです。そんなバカな。「深沢っ」と声をかけると、多少はビックリしていたようですが、どうにも分かりません。思わず、アパートの入り口まで尾けていく細川俊夫。表札には深沢ではなく西村登と書いてあります。どうしたことでしょう。これは他人の空似なんでしょうか。

天知茂(弟)が天知茂(兄)に、細川俊夫に「深沢っ」と声をかけられたことを報告しています。「ぼくはもう、こういう役はゴメンだな」とナヨナヨしている天知茂(弟)。天知茂(兄)は、コイツを生かしておくとマズイと思ったのか、天知茂(弟)を絞め殺して、箱詰めにしちゃうのでした。さすが鬼畜っぷりがイカシテます。

一方、危険を感じた細川俊夫は、大家のおばさんや、そこのキレイな娘さんの由美子(三田泰子)と相談して、幼い我が子を逃がすことにしました。行き先は千葉の漁村ですから、そこまでは天知茂(兄)の魔の手は及ばないでしょう。早速、三田泰子に頼んで娘を連れて行ってもらう細川俊夫。しかし、二人の乗った汽車には、天知茂(兄)の部下たちがバッチリ乗り込んでいたのです。

ついでに細川俊夫も拉致した天知茂(兄)。子供の居場所は知っているぜ、と細川俊夫を脅かします。子供に手を出すだなんて、この卑怯者と怒る細川俊夫に「そうはいかねえ。俺を裏切った貴様への、これが何よりの復讐だ」と言い返す天知茂(兄)。いや、細川俊夫は黙秘していたのに、先に小畑絹子に手を出して、死なせてしまったのは天知茂(兄)ですから。これは、どうみても天知茂(兄)が悪い。しかし、そんな理屈は天知茂(兄)には関係ないので、細川俊夫を殺そうとしますが、まさにピンチのその瞬間、どうにか細川俊夫は逃げ出すことに成功したのです。

「どうだ、やっぱり来ただろう」と不敵に笑っている天知茂(兄)。ここは千葉の漁村、細川俊夫が子供を匿ってもらっているところです。細川俊夫はまさか天知茂(兄)たちが先回りして、物陰から見張っているとは気づいていないので、とにかく子供を連れて逃げなくては、と頭の中がいっぱいです。そこに天知茂(兄)から脅迫電話がかかってきました。おとなしく出てこないと、子供を殺すというのです。
こうなったらもはや、と考える細川俊夫。「これ以上逃げても無駄だ」「そうだ、いっそ深沢を殺そうか」「啓子を殺人犯の娘にすることはできない」と、思いは千々に乱れます。しかし、そこで気づきました。「深沢を逮捕するには殺人現行犯以外にはない。殺人現行犯以外には」

警部の沼田曜一に約束の場所と時間を電話で告げ、「深沢を殺人現行犯で引き渡します」と言って電話を切る細川俊夫。下宿屋の娘さんに子供のことを頼み、悲壮な決意で約束の場所に出かけます。

もう死を覚悟して、自分が殺されることで天知茂(兄)を逮捕させようとしている細川俊夫。よく分からないままに余裕を見せている細川俊夫をさすがに不気味に思ったのか、天知茂(兄)は直接自分で手を下そうとせず、部下に殺させようとするではありませんか。これでは天知茂(兄)は殺人犯にならない、と思った細川俊夫は天知茂(兄)にパーンチです。あっ、怒りました。天知茂(兄)が怒っています。畜生とピストルで細川俊夫を撃とうとする天知茂(兄)。そこに、天知茂(兄)の部下で、細川俊夫を悪の道に引きずり込んだチンピラが「兄貴ぃ」と飛び込んできて、撃ち殺されました。さらに細川俊夫も撃たれ、なんだかムチャクチャな状態。

そこに遅ればせながら、警官隊がやってきました。いきなり天知茂(兄)たちが立てこもる建物に発砲してきます。バーン、バーン、轟く銃声。「深沢、武器を捨てて出て来い」。バーン、バーン。いや、ちょっと乱暴です。中には細川俊夫もいるんですから。そんなに撃たないで。

次々と倒れていく天知茂(兄)の部下たち。警官隊が建物に飛び込んできました。「ふふっ、捕らえられるものなら捕らえてみろ」とピストルをコメカミにあてる天知茂(兄)。自決しようとは、いい根性です。しかし、そうは問屋が卸しません。細川俊夫が懸命な努力で放った銃弾が、天知茂(兄)の手からピストルを叩き落し、自決は未遂に終わったのです。
「前島、てめえのために死ねなかった。皮肉だな」と言って、ヒャハハハハッと笑い出す天知茂(兄)。何もそこまで笑わなくても、という勢いです。

我が子と大家の娘さんが遊んでいるのを、病室から見つめる細川俊夫と沼田曜一警部。娘は小さな体で精一杯、縄跳びをしているのでした。

天知茂のアップで始まり、子供の縄跳び姿で終わるこの映画。たとえ、途中がどんなにムチャクチャでも、最後は勧善懲悪のラインを崩さない、実に新東宝らしい作品でした。最後は、天知茂の野望も打ち砕かれましたしね。しかし、実際のところは、初主演に燃える細川俊夫の野望が、天知茂の怪演で見事に打ち砕かれてしまったのが悲しいところですが。

しかし、よく分からないのがタイトルの「勝利者の復讐」。いったい誰が勝利者だったんでしょう。奥さんを殺され、これからおそらく刑務所に入る細川俊夫が、まさか勝利者とは思えませんし。新東宝の、トンデモタイトルには慣れていたつもりですが、こういった「微妙に」ズレたタイトルはすごく気になってしまうんですけど。


(たとえ天知くんのアップで始まろうが、)

(天知くんが分身の術で攻めてこようが)

(主役は俺だ。俺ですよねえ)

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