いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】明日は日曜日

2008-05-21 | 邦画 あ行
【「明日は日曜日」佐伯幸三 1952】を観ました



おはなし
大好きな山吹桃子とケンカになってしまった桜井大伍は……

一見すると、菅原謙二と若尾文子主演のラブコメなんですが、その実、映画界の虚々実々をあらわすスゴイ作品……っていうのは、ちょっと言いすぎですね。

ここは早朝の三鷹駅。「もしもし、始発電車が出ますよ」と駅員さんから起こされたのは、東洋貿易の社員、桜井大伍(菅原謙二)です。うーん、とノビをしながら電車に乗り込む大伍。そのまま会社に出勤です。もちろん会社には一番乗り。課長の椅子に座って悦に入っていたら、社長に見つかり、かえって「感心、感心、一日も早くその椅子に座りたい気持ちは良く分かる」と褒められたり、
恋人の山吹桃子(若尾文子)からは、「珍しいのねえ。いつも滑り込みのクセに」とからかわれたり、まあ普通のサラリーマンですね。って、若尾文子が恋人だなんて、普通の人間のワケないですが。

大伍の上司は総務課長の宮田(森繁久彌)、まあ大方の予想通り、社長にはペコペコしている、調子のいい課長さんです。今日も社長から遅刻を怒られていますが、まあ大丈夫、大丈夫。どうにかなるさ。それに社長はなんだか機嫌もいいし。というのも、アメリカに輸出した小型カメラが大評判で、会社の業績もかなり期待できそうなのです。

大伍は、同僚から恋の相談を受けました。エレベータガールの杏子(伏見和子)との中を取り持って欲しいというのです。しかし、不器用な大伍に、そんな器用なことができるわけもありません。ということで、早速、恋人の桃子に相談です。しかし、桃子が杏子に探りを入れてみると、なんと二番目に好きなのが山野さん、そしてナンバーワンは大伍さん、などと言い出したのです。これには桃子もビックリ。「ねえ、お願い。あの方とご一緒に映画に行くチャンス、こしらえてくださらない」と頼まれ、今さら、大伍は自分の恋人とも言い出せず困ってしまうのでした。なんて、ベタなラブコメなんだ。

早速、演奏会の切符を買ってきた桃子。何としても、杏子と山野をくっ付けてしまわねば、大伍を取られてしまいそうです。不審がる山野に「この演奏会聞かないなんて、近代青年の恥よ」と切符を押し付け、杏子にも「この演奏会聞かないなんて、近代女性の恥よ」と強引に説得する桃子。多分、ここは笑うところなんでしょう。

これでひと安心。明日の日曜日には大伍とデートですから、ウキウキの桃子です。しかし、ここで問題が起こったのです。総務課きってのプレイボーイ北村が大伍に、田舎から妹が出てくるから、部屋を貸してくれと言うのです。「そんなワケじゃしょうがないね」と気持ちよく、鍵を渡した大伍は、宿直室に泊まりこむことに。しかし、その夜、「偶然にも」会社に泥棒が入りました。本来の宿直の老社員・三宅(藤原釜足)に起こされた大伍は、得意の柔道で泥棒を投げ飛ばし、泥棒はほうほうの体で退散。「わし一人じゃどうにもならなかった。明日にでも馘になったかもしれない」と落ち込む三宅に、大伍は「三宅さん、ぼくが今夜、ここに泊まったってことを、みんなに黙っててください」「三宅さんが強盗を退治したってことにするんです」と爽やかに言うのです。

翌朝はやく、桃子は大伍を驚かせようと、大伍の部屋に。しかし、部屋の中からは甘いささやき声と、チュッチュッとキスの音が聞こえるじゃありませんか。ガーンとショックを受けて去る桃子。一方、大伍は「お前と同じ気持ちだよ」と渋谷のハチ公の頭を撫でながら、待ちぼうけです。

翌、月曜日、強盗を撃退した(ことになっている)三宅はすっかりヒーローです。社長からは金一封が出るし、課長は褒めちぎるし、ついでに定年後も嘱託として会社に残れることになって万々歳。課員がみんなで三宅を祝福するなか、しかし、ひとりムスーッとしているのは桃子です。「ねえ、土曜日の晩のことだけどね」と声をかけた大伍にも、「聞きたくないわ。嘘つきの弁解なんか」と聞く耳持たずな態度です。これには大伍もすっかりムカッ。「ふーん、よし君がその気なら、こっちにも覚悟がある。今後、一切君とは口を聞かん」と言ってしまうのでした。

さて、課長は社長のお供で料亭に。芸者に大モテで、社長の手前、かえって困ってしまうほどです。しかし、その頃、家には三宅の奥さんが、金一封のお礼に来ていたのです。「課長さんにおなりになってからは、課長手当てもお付きになるし、交際費はお入りになるし、今日の昇給なんかもたいしたもんだろうって、三宅なんかも、いつも羨んでいるんでございますよ」。そんな言葉を聴いているうちに、怖い顔になる課長の奥さんの康子(市川春代)。どうやら、課長手当などは、初耳のようですよ。そんなことも知らずに、ニヤケていた課長は、芸者の本名が康子だと聞いて、酔いもスッカリ醒めてしまいました。自分の奥さんと同じ名前じゃねえ。慌てて家に帰る課長。しかし、家の手前で、給料袋からコッソリ課長手当を抜いて帽子に隠している姿を、奥さんの康子はバッチリ見ているのでした。それも怖い顔で。

「あーた、お帽子こっちにちょうだい」「さあ、ここにお座んなさい」「あたし、あなたって方が、つくづく信じられなくなりましたわ」、言いたいことをまくし立て、子供を連れて出て行ってしまう奥さん。課長はガックリです。

翌日、ションボリしている課長。ツーンとしている桃子と大伍。なんだか雰囲気がピリピリしていますよ。そんな中、奥さんから桃子に電話が入り、桃子は課長を監視することになったのです。そんな女同士の結託を知らない課長と大伍は、飲んだくれては気勢を上げていますが、どうも意気が上がりません。それからしばらくして、息子が課長を訪ねてきました。「だってボク、お父ちゃんに会いたかったんだもん」というかわいい息子の言葉に、ホロリとしてしまう課長。これは、あと一歩でオチますね。

「ええ何だか、とっても元気がありませんわ。ええ、まず成功ですわ」、桃子が誰かと電話をしていますよ。ピンときて「君、誰からだい」と詰問する大伍。桃子は「口を聞かないはずだったでしょ」とツーンです。ムカっ。給仕にメモを渡させる大伍。「君はスパイだ。奥さんと内通している」。桃子も負けてはいません。「スパイだなんて卑劣な言葉は使わないでください。男性の不徳に対して、常に女性は結束しているものよ」。「君がその気なら、絶好を宣して断固戦う」「男性の横暴に対して、断固戦う」。あらあら。

大伍の「断固戦う」というのは、飲み屋のマダムと浮気をすることだったようです。しかし、大伍はバカがつくほど正直なので、本気、それとも浮気?とマダムに聞かれて、「今んとこ浮気のつもりだよ。しかし生まれて初めての浮気なんだ」とか言っちゃうのです。「でもね、大伍さん。あたし心底惚れた男とだけは、浮気はイヤなの」と悲しそうなマダム。そりゃそうだ、失礼ですよね。でも、そうは言いつつ、大伍の子犬のような目を見るとつい、
「イヤイヤ。そんな熱っぽい目で見たりしちゃ。ビールだけ。ビールだけよ」と言うのでした。

さて、それはともあれ、課長さん夫妻を、このままにはしておけません。大伍は桃子と一時休戦をすることにして、課長さん夫妻を仲直りさせることにしました。呼び出された課長さん、そして奥さん。二人は道路を挟んで見つめあい、そして駆け寄って、手を取り合っています。良かった、良かった。さあ、自分もと思い、桃子に歩み寄る大伍。桃子も歩いてきました。さあ、熱い抱擁を……と思ったら桃子はスタスタ去ってしまいます。どうも、怒りはまだ解けていないようですね。

本来だったら楽しかったはずの社員旅行も、意地を張っている二人にとっては、気が重いばかりです。そして、その社員旅行の真っ最中に、社長から課長あてに、旅行を中止してすぐ戻るようにとの電報が飛び込んできたのです。

日曜日にも関わらず、全員集合を命じられた総務課の面々。課長が暗い声で社員たちに状況の説明をしています。すなわち、輸出していた小型カメラに不良品が見つかったこと。当然、大口の契約はご破算になり、さらには会社の信用が失墜することすら考えなければならない情勢なのです。
「したがって、諸君の給料も遅配あるいは欠配ということになるかもしれないのであります」

社長や課長は、今回の契約破棄を受け入れ、後はほとぼりがさめるのを待つ方針。しかしバカが付くほど一直線な大伍は、ウチのあつかった製品に不良品があるわけがない。だとしたら、このことを英字新聞に投書して、世論に訴えるべきだという考えです。えーと、総務課員なのにどうして品質について詳しいのか、そのうえ英字新聞って何だよ、などと言ってはいけません。

当然、勝手に投書をした件で、「困ったことをしてくれたねえ」と社長は渋い顔。社内では、大伍が馘になるという噂でもちきりです。案の定、怖い顔をした課長に連れられて、社長室に呼ばれて行く大伍。社員たちは口々に、「なんとかならないもんかねえ」と同情している様子です。そんな時、老社員の三宅さんが、桃子に「あのう、実は」と声をかけてきました。強盗事件の一切を聞いた桃子。とすれば、日曜の朝に、大伍の部屋にいた人は別の人だった。桃子は、自分の早とちりにガガーンです。

一方、社長室に呼ばれた大伍の目の前には、ニコニコ顔の社長が座っています。「社長。どうぞ、最後の思いやりでしたら、そんなに優しく笑ってくださらなくても、桜井大伍の腹は決まっております」と辞表を差し出す大伍。「桜井クン。その腹だ、その腹だよ。でかしたぞ君は」と社長は言い出しました。なんと、大伍の投書が海の向こうで大評判になり、契約は元通り。金もちゃんと送られてくることになったそうです。ほっほう。

大伍は係長に昇進。みんなが「おめでとう」「おめでとう」と大伍の周りを取り囲んでいます。でも、その輪の中に桃子は入れません。だってそれじゃ、まるで自分が卑しい人間みたいですもんね。大伍がいないところで、シクシク泣く桃子なのです。

社長主催の宴会が料亭で開かれています。しかし、ここで課長の粋なはからいが。グデングデンに酔いつぶした大伍を、桃子に渡したのです。「山吹クン。わしが康子に参ったのもな、今夜のようにグデングデンに酔っ払った時に、介抱されたからなんだよ」。

新橋駅のホーム。ベンチで正体無く酔いつぶれている大伍を、愛おしそうに見つめている桃子。
「あっ、桃子さん」、大伍が目を覚ましたようです。「醒めた。とっても苦しそうだったわ」と微笑む桃子。「桃子さん。ぼくは悪い夢を見てたようだったよ」「ええ私も」「もうすっかり醒めた」「ええ私も」、勝手にしなさい。「明日は何曜日だっけ」「明日は日曜日よ」「じゃあ明日こそ十時だ。いいね」「ハチ公の前で」、ニッコリと見つめ合う二人です。おや、終電がやってきました。二人は手を取り合って、電車に乗り込むのです。


デビュー翌年の菅原謙二と、デビューイヤーの若尾文子。二人は恋人役として、この後、何本も映画に出演することになりますが、実質的な初共演作として、この映画は貴重です。演技については、まだまだクエスチョンマークな感じもしますけど、なんと言っても初々しいったらありゃしません。

しかし、さすがにこの二人だけで映画を作るのは厳しいという判断があったのか、映画としては若尾文子と菅原謙二のラブコメ部分が5割。あとの5割は森繁久彌のサラリーマン人情ドラマになっています。と、ここが問題なのです。

「三等重役」という映画は、その後長く続くことになる東宝の社長シリーズの先駆けですが、それが封切られたのが1952年の5月。その映画に課長役で出ていた森繁を、やはり課長役に据えた、この映画の封切りが同じ52年の11月。「三等重役」の前社長役の小川虎之助を、この映画の社長役に起用するなど、なんだか、「三等重役」人気を当て込んだような作りになっています。やっぱり、天下の大映といえどパクリたくなるくらい、サラリーマン映画というのは、世の中の需要にマッチしていたということなんでしょうね。

実際に、この映画を見ていて感じるのは、当時のサラリーマンって楽しそうだよね、ということ。戦前のシガラミから離れ、戦争直後の怒涛の時期も、もはや過去のものになりつつある。高度経済成長期を数年後に控え、でも会社には家族的な雰囲気がまだ色濃く残っている。そんな微妙な時代なのです。だから、社員は職場旅行といえば、楽しみにして参加し、給料が遅配、欠配と言われても、会社のためなら仕方ないや、それに何とかなるんじゃないか、と希望を失わない。なにしろ、これからは「上がって行く一方なんだから」という日本全体のイケイケ気分が乗り移っている感じが、今から見るとうらやましい限りです。

ちなみに現在では、隣に座っている社員同士ですら、会話をせずにメールをやり取りするなどと言われますが、この当時も同様なのがオカシイですね。なにしろ給仕を使って、メモのやりとりですから。







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