いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】地獄(1979)

2008-10-20 | 邦画 さ行
【「地獄」神代辰巳 1979】を観ました



おはなし
姦通の罪で地獄に堕ちたミホ(原田美枝子)の娘、アキ(原田美枝子)。彼女もまた、近親相姦の罪で地獄に真っ逆さま。

「地獄」というと、中川信夫監督版、石井輝男監督版も存在するわけですが、なんていうか、そのテーマが映画監督のイマジネーションを怪しく刺激しちゃうんでしょうか。とにかく、全開バリバリな怒涛の展開に、唖然とするばかりです。

「人はいつか死なねばならぬ。死に至るまでに多くの罪を犯す。法の裁きは仮の罰となる。死後の世界そのものが、真の刑罰として存在するのではないかと、人々は何千年もの長きにわたって夢想してきた。それが地獄である。地獄は恐怖の夢である。人は今も地獄を道連れにして生きているのだ」。地獄絵を映し出しつつ、そんなナレーションが語られます。語っているのは、天本英世。って、その段階で怖いんですけど。

「昭和30年」、山崎ハコの歌をバックに、手に手を取って逃げている二人の男女が映し出されました。お腹の大きな女は生形ミホ(原田美枝子)。そして男は生形竜造(西田健)です。ミホにとって竜造はダンナのお兄さん。つまり、二人は不倫の果てに子供ができてしまい、こうして道無き道を逃げているのです。

「あの人が追ってくる。殺される、私たち」と心配するミホに、「大丈夫だよ。誰も山越えなんかすると思っちゃいない」と宥めすかして、山小屋に逃げ込んだ竜造。しかし、全然、大丈夫じゃなかったようです。いきなり踊りこんできた雲平(田中邦衛)が猟銃をぶっ放し、さらには猟銃を棍棒代わりに竜造をボッコボコ。哀れ、竜造は撲殺されてしまうのでした。ひぃー。小屋を逃げ出したミホですが、いきなり獣罠(トラバサミ)に足をバックリと挟まれてしまいました。なにしろ、大型のトラバサミは人の足の骨だってくだいてしまうくらい強力ですからね。これは痛い。ついでに追いかけてきた雲平に腹を足蹴にされ、これまた痛い。「腹の子は兄貴の胤だ」と腹をグリグリされたミホは、そのまま雲平に見捨てられ、野垂れ死にを待つしかないようです。

家に戻った雲平は、竜造の妻のシマ(岸田今日子)に報告です。「ミホは獣罠にかかったまま死にかけてる。朝まで持つまい」。しかし、「殺さなかったの」とシマは不満げ。早速、死にかけてるミホを見物に出かけます。いるいる。ミホが死にかけてます。「許して、子供だけは」と哀願するミホに、「地獄で産めばいい」と悪態をついたシマは嬉しそうに去っていくのでした。

ここからが最初の驚愕シーン。「ミホさんがいたぞー」「見つかったぞー」。ワラワラと村人たちがやってきました。時既に遅し。ミホはすでに死んでいるようです。しかし、股がぐぐぅっと開き、羊水があふれ出し、赤ん坊が股間からせり出してきました。オンギャア。そして、赤ん坊を残したまま、ミホの死体がスルスルと滑り出しましたよ。それも坂の上の方に。そのままミホの死体は断崖絶壁からジャーンプ。まるで、鳴門の渦潮みたいなところに、ドンドンと落ちていくのです。

はい、ここは地獄です。正確に言うと、三途の川と賽の河原なので、まだ冥途になりますけどね。そこには、懸衣翁(浜村純)と懸衣嫗(毛利菊枝)が、ミホを待ち構えていました。衣領樹という、罪の重さを測る樹に、ミホの着物を引っかけてみます。ぐぃー。うわっ、思いっきりしなっていますよ。うわーん。これだけ衣が重いと、ミホの地獄行きは間違い無さそうですよ。ぽわわーん。空のスクリーンに、現世の光景が映し出されました。ミホに懸衣翁が言います。「生まれながらに地獄を背負った赤子の生き様、見届けるのだっ」。

ということで、赤ちゃんは、村人の手によって、生形の屋敷に運ばれました。「まさか、死人から子供が生まれるなんて」と愕然としているシマ。シマの幼い二人の息子は、母の愕然っぷりをよそに、突然の妹出現に大喜びです。え、雲平ですか。雲平は「似てる。ミホに似てる」と言いながら、横でゲロを吐いていますよ。しかし、連れてこられた以上、いりません、とは言えずに赤ん坊を引き取るシマ。しかし、見れば見るほどムカツキます。赤ん坊のお尻にある、赤い牡丹の痣も気に入りません。いっそ、このまま風呂に沈めてやろうかしら。そぉーっと。と、いきなり風呂の窓から使用人の山尾(加藤嘉)が顔を出しました。「いけません、奥様。それでなくても村の連中は奥様が赤ん坊をどんな具合に育てるか、面白がって見物してるんだ。その赤ん坊が風呂の中で溺れ死んだりしたら、みんな何て言いますかね」。この山尾というのは、とても気の利く召使というか、悪人なので、背中の駕籠に、ちゃんと身代わり用の赤ん坊を運んできていたのです。持つべきものは、加藤嘉ですね、まったく。じゃあ、赤ん坊をすりかえて、ミホの子供はどこかに捨てておきましょう。

「20年後」。いきなりですが、ここは鈴鹿サーキット。今しもフォーミュラ選手権が始まろうとしています。ここに出場するのは、水沼アキ(原田美枝子 二役)や、生形松男(石橋蓮司)といった面々。もちろん、もうお分かりですよね。アキは、ミホの子供が大きくなったもの。松男は、シマの息子のお兄さんの方です。さあ、因縁の対決、いったいどうなるでしょうか。ブオンブオン。排気音が高まり、レース開始。周回遅れのアキのマシンに、「どけえ。一周遅れ」と怒鳴り、抜きにかかる松男のマシン。しかし、その時、どこからか「アキィ。アキィー」と不気味な声が響いたかと思うと、いきなり白い霧が立ち込めてきちゃいましたよ。あっ、デカいミホが登場しました。その上、アキのマシンのノーズに、(多分)ミホの生首がチョコンと乗っています。うわーん。接触したアキの松男のマシンは、そのまま爆発するのでした。それも、かなりいいイキオイの大爆破です。

事故のショックを癒すために、ローカル線に乗って、センチメンタルジャーニーなんかしちゃっているアキ。しかし、デッキで外を見ていたところ、いきなり「アキィ。アキィー」と不気味な声が再び聞こえてきましたよ。ガタン。いきなりドアが開いて、外に転げ落ちそうになるアキ。ウギャーッ。しかし、捨てる神あれば拾う神があるもので、列車にぶらさがって絶叫するアキの声を聞いたハンサムな青年が走ってきて、落ちそうになっているアキを救ってくれたのでした。

行く当てのないアキを、自分の出身地に誘ってくれたハンサム青年。名前を生形幸男(林隆三)と言います。もちろん、シマの息子で、松男の弟だったりするのは、言うまでもありません。

都会での生活に疲れ生形村に戻ってきた幸男を、喜んで迎えるシマですが、連れてきた娘の顔を見てビックリ。まるでミホに生き写しじゃありませんか。まあ、一人二役だから当然ですけどね。その上、幸男とアキはいきなりイチャついているので、怒りすら覚えちゃいます。ど、どういうこと。早速、入浴中のアキの裸をノゾキ見る、忠実な使用人の山尾。おお、あるある。お尻に見事な牡丹の形をした痣が。「説明して、どういうことなの」と山尾に食って掛かるシマ。「まさか、お前が呼んだんじゃないでしょうね」。「そんな。私は奥様のためを思って、赤ん坊を取り替えて、東京の養護施設に預けてきたんですぜ。しかも、こっちの身元も何も明かしちゃいねえんです」とベランメエな口を聞く山尾ですが、なんだろうなあ。ベランメエ口調で、やたらと風呂場を、あの黒目がちの目でウルウル覗いている加藤嘉っていうのが、とりあえずオカシクてたまらない気分です。

ま、加藤嘉の子犬のような目付きは横に置いて、シマはアキが村から出て行くように、山尾に命じました。「村には若い者が大勢います。精力を持て余した若い男がね」と言って、ニヤリと笑う山尾。うーん、やっぱり、加藤嘉には似合ってない。

さて、生形村の名物と言えば、笠卒塔婆と金輪。よく分かりませんけど、卒塔婆の真ん中に、鉄の回転する輪っかがついているものです。で、この金輪と呼ばれる鉄の輪っかを回して、そのまま止まれば良し、逆回転を始めると、その人は地獄に落ちるそうなのです。なんか、よく分からないけど怖いですねえ。ぞろりとした母の形見の着物を着て、墓場に行き、その金輪の回転にチャレンジしてみるアキ。止めとけばいいのに。案の定、金輪は思いっきり逆回転です。ぎゃあー、と叫ぶアキ。ついでに地面までがグラグラ。うわっ、地震です。あれー。崖から落ちたアキは、たまたま首に巻いていた包帯で、宙ぶらりんになってしまうのです。首が絞まり、クラクラするアキ。鳴門の渦潮な地獄の入り口が見えてきちゃいましたよ。遥か下方の地獄では、針山地獄にいる母のミホが叫んでいます。「アキィー。私は雲平に殺されたのよぉー(ちょっと違う、見捨てられただけ)」「アキィー。私をこんな目に合わせたのはシマよぉー(いや、自業自得)」「アキィー。よくお聞き。お前は私の分も生きるのよぉー。私の恨みを受け継ぐのよー」。

はっ。気がつくとアキは、小屋に横たわっていました。横には大事故以来、久々に再会した松男が「大丈夫か。また会ったな」と心配しています。はあはあ。いきなり喘ぎ始めたアキは、「早く抱いて。骨が軋むほどに」と松男にむしゃぶりつくのです。いったい、何事が。

はっ。もう一回、目覚めたアキ。「どこなの」とか寝ぼけたことを言っていますよ。そして、自分の体の異変というか、情事の名残に気づいた様子です。「あたし、何てことを。あたし、どうしたんだろう」と言うアキに、「首つってたんだよ。ガケっぷちで」と極めて冷静な松男。とりあえず、「地すべりがして、地獄を見たんだわ」とアキは、自分の世界に没頭しちゃうのです。

そのまま松男につれられ、生形の屋敷に帰るアキ。幸男は、アキと松男の間になにかあったんじゃないかとイライラ。シマは、またも帰ってきたアキに、「汚い」と言い捨てムカムカ。そして、アキの代わりに娘として育てられた久美(栗田ひろみ)は、大好きなお兄ちゃん(幸男の方)がアキに取られそうでツンツンです。

そんな久美にアキは言い出しました。シマに借りていた着物がミホの形見だったこと。そして、袂に入っていたお守りを落としてしまったことをです。「お守りは久美さんが探してくださいね」。そう、あなたが本当にミホの「実の娘」なら、あなたがミホの着物を着て、ミホのお守りを探さなければならない。まあ、よく分からないリクツですが、負けじ魂で、着物を着て出かける久美。しかし、そこには山尾こと加藤嘉が手配した、村の「精力を持て余した若い男」たちが、精力マックスで待ち構えていたのです。わっしょい、わっしょい。顔に布切れをかぶせ、お神輿のように久美を担いでいって、レイプする村の精力あふれる若い男たち。かわいそうに、さっきまでアキが着ていた着物で出歩いたため、久美はズタボロにされてしまうのでした。ちょっと、展開が強引すぎるような気が、しないでもないんですけど。

廃人のようになった久美の頭をナデながら、「久美はうちの子よ。赤ん坊の時から育てた娘なのよ。百倍にして、あの女に返してやるわ」と気合を入れているシマ。さあ、だんだん怖くなってきましたね。

さて、タタリを恐れて、人里離れたところにポツンと一つだけ建てられたミホのお墓。そこに、アキはやってきました。おっと、たまたま通りがかった尼さん(佐藤友美 特別出演)が、「ミホさんのお墓です」とか、案内を始めましたよ。それを聞いて、卒塔婆についた金輪をそっと回してみるアキ。「信じておいでですか。カネの輪を回して、止まれば極楽。もし逆に回ったら地獄」と尼さんが言っている側から、ものすごいイキオイで逆回転を始める金輪。止めようとしたアキの手から血しぶきが飛ぶほどのイキオイです。ごごー。

思わず、ちょっとビビル尼さん。アキが言い出しました。「私には地獄が見えるんです。血のつながった兄を愛して、愛してもいない別の兄と、男と女の交わりをしたり。地獄に落ちないんですか。地獄に落ちないんですかああああぁぁぁぁー」。そのあまりの迫力に、完全にビビって、尼さんはスタコラ逃げ出しちゃいました。「分かったわ、母さん」と言いつつ、猛回転する金輪をパシッと止めたアキ。「救いなんて、ありゃしないってことが」。

開き直ったアキは、幸男を誘うことにしました。イヤイヤと言いつつ横たわれば、あっけないほど簡単に、幸男は欲情しちゃったみたいです。と、そこに久美が棍棒を持って乱入。ドカスカ。二人を殴り始めましたよ。もう、完全に瞳孔が開ききっています。「殺してやる、殺してやる」と殴りかかってくる久美に、さすがに辟易した二人は川に逃げ出し、そこでイチャイチャ。さらに、カットが変わると、いきなり滝つぼで、裸になって抱き合っていたりするのです。しかし、そんな二人を、遠くからグワーッと久美が睨んでいたりするので、物騒でしかたありません。とりあえず、「久美さんが見てる。今夜来てっ。離れで。約束して」と幸男と約束をして、アキはその場を去るのでした。

さて、シマに呼び出されたアキは、蔵に出かけました。「ミホさんの形見を見せてあげようと思って」と三味線を取り出すシマ。「ミホさん、温泉を流れて歩く女芸人でね。この辺にやってきたのは、あなたの生まれる三年前」と語りだすシマ。アキの写真を見せつつ、罵詈雑言の嵐です。思わず髪を掻き毟りながら、それを聞いているアキ。「母親だけ見せたんじゃ不公平ね。父親も見せてあげなくちゃね」と言って、床下をあけるシマ。なんと、床下には大きな地下室があるじゃありませんか。とりゃっ。アキを突き落とすシマ。「竜造は?父親はどこっ」「そこよ」。ふぎゃー。なんと、そこにはミイラ化した竜造がいるのでした。「体の中は防腐剤でいっぱーい。だけど、こうしておけば、いつまでたっても、私だけの竜造。もう浮気も駆落ちもできやしない」と言いながら、クスクス笑い出したシマは、三味線を地下室に投げ捨てるのでした。岸田今日子ちょっと怖すぎ。

一方、約束の時間になっても離れにやってこないアキを、ぼけーっと待っている幸男。と、そこに松男がやってきました。寝転がっている幸男にまたがり、「どこが気に入ったんだよ。体か」と、腰をグラインドしたりしてますよ。さすがに石橋蓮司に、そんなことされても嬉しくともなんともないので、パンチを繰り出す幸男。そのまま、拳と拳で語り合う兄弟げんかの始まりです。ドカッ。ボコッ。バシッ。あ、シマがやってきて、絶叫しています。「やめなさい。やめて、久美がかえってこないのよー」。「匂う、匂う」と言うシマにくっ付いていく兄弟二人。陶芸用の窯にやってきた三人は、ドッカン、ドッカンと窯を壊し始めます。あ、いました。久美がいました。と、その瞬間、ズゴーッと久美は燃え上がるのです。どうしてなんて、聞かないでくださいね。

地下室のアキは三味線を弾いています。「母さん、不思議だわ。あたしにも三味線が弾ける」。ついでに歌い始めます。「この歌、なにっ?」「地獄が呼んでるの?」と、デンパな発言を繰り返していたアキですが、ふと気づくとミイラが泣いていますよ。メキメキ。おや、ミイラが急速に白骨化しはじめ、あわせるように壁が崩れてきましたよ。ドカーン。なんと、ミイラの奥には、どこまでも広がる地下道が続いているじゃありませんか。もう好きにして。穴から洞窟に入ったアキは三味線を弾きながら歩きます。「地獄に行く道なの。うがあ」。しかし、それは地獄への道ではなかったようで、気づけば古井戸の真下に出ていました。「助けて、誰か助けてぇ」。「誰かいるのか。アキじゃねえか」と答えたのは雲平。そう、竜造を殺した雲平です。

なんか、いきなりキレイな着物に着替えて、雲平と座敷に座っているアキ。もう、さっぱり分かりません。ともあれ、そこで雲平はアキに欲情しました。「殺してぇなあ。抱きてぇなあ」とアキにのしかかる雲平。しかし、そこに「アキィ。アキィー」と不気味な声が響き、力を貰ったアキは、三味線のバチを横一閃するのでした。バシュッ。両目を切り裂かれる雲平。しかし、欲情しているので、ゾンビのようにアキに迫ってきますよ。ボロン。ボロン。三味線を弾きながら後ずさりをするアキ。ボロン。ボロロン。いつのまにか、三味線だけがズルズル、ズルズルと進み、それを追っていった雲平は、ガケから真っ逆さまに転げ落ちるのでした。

久美の葬式に、雲平の死体が担ぎこまれました。そして、三味線の音がボロロン。「ミホっ」と呟きつつ、フラフラ歩き始めるシマ。そのまま蔵に行き、「まだ生きてたのね、ミホっ」と階段を降ろして地下室に降りていきます。見れば、夫のミイラは白骨化しています。ズゴゴ。いきなり地震が起きて洞窟が埋まりました。そして、頼みの階段も上に、引き上げられてしまいます。ボロロン。ボロロン。地下室を見下ろしているのは、ミホじゃなくて三味線片手のアキ。「あなたが瀕死のミホを見殺しにしたように、私もあなたを見殺しにする」ボロロン。「負けない。あなたには絶対、負けないっ」と夫の頭蓋骨を抱きしめて叫ぶシマ。「地獄で待ってるわ」というシマに、アキも負けじと言い返します。「そうよ、ミホが地獄で待ってるわ。私はあなたを、そこへ送る案内人なのよ。ミホの恨みの落とし子なのよ。私はあなたをミホと同じ苦しみを味あわせるために生まれてきたのよ。私はミホなのよ。死ねばいい。死んで地獄に行けばいい。死んでしまえばいい。死ねーっ。死んでしまえーっ」。髪を振り乱しているアキ。「あたしはどこにもいなくて、ミホだけがここにいるのよ。死ね。死んでしまえ。死ね。死んでしまえーーーーーーーっ」。こ、怖い。

幸男と逃げ出したアキ。岩場だらけの荒野をひたすら歩みます。そして、それを松男たちが追ってきました。やめましょうよ、と説得する山尾こと加藤嘉を猟銃でボコボコに殴り殺して、気勢を上げた松男は、ドッカンドッカン、猟銃を乱射しはじめましたよ。目の前には、いかにも危なっかしげな岩の塊。ズゴゴゴ。ほら、言わんこっちゃない。松男たちはみるみるうちに岩に体を潰され、一人、また一人と息絶えていきのでした。

さて、どうにか危機を脱した幸男とアキは、岩場に張り付くように建っている、これまたイカニモな小屋に入りました。止めておけばいいのに、そこで愛し合いはじめる二人。ズモモモモ。うわっ、小屋が、小屋が。山を滑ってる。「落ちていく」「いいの、いいの、殺してぇ、いやああああ」と絶叫するアキ。もう、小屋はなんだか尋常じゃないスピードで地面に落下していくのでした。

はい、鳴門の渦潮を抜けて地獄にやってきたアキ。ここからは、いよいよお楽しみの地獄めぐりの始まり。とりあえずアキは閻魔大王(金子信雄)に、どんなヒドイ地獄に落とされてもいいから、ひと目だけでもお母さんに会いたい、とお願いをしてみたところ、OKをもらえました。ということで、茶吉尼天(天本英世)を案内人に歩きだすアキ。石臼で、グチャグチャにミンチにされているシマや山尾がいます。幻のアキを求めて、体をズタズタに切り裂かれつつ木登りをしている幸男、松男、そして竜造、雲平兄弟もいます。さらに進む、アキと茶吉尼天。「やっと着いた。ここがお前の母の地獄。そこだ」。おお、確かに、そこにはケモノと化したミホがいるじゃありませんか。角が生えているけど、どちからというと、ミュージカル「キャッツ」っぽいです。

「これが地獄だ。ひと目会いたいと願った母親は、もはやわが子の判別さえつかぬ。ただのエサにしか思えぬのだ。戦え、さもないと餌食にされるぞ」と言って、剣をくれる茶吉尼天。しかし、アキは母と戦う気はありません。「お母さん」、返事の代わりにパクッと噛まれるアキ。「声を出すな。戦え」と茶吉尼天が言うと、ミホがアキをさらにパクッ。そう、地獄では声を出しちゃいけないお約束みたいなのです。そんなことを無視して、「お母さん」と絶叫するアキ。何てことでしょう。アキの足が木になっていくじゃありませんか。見る見るうちに一本の桜の木になってしまうアキ。うごー、うごー。ケモノ化したミホが、桜の木に体当たりをかまします。うごー、ドカン。うごー、ドカン。ペキッ、ペキペキッ。木が割れて、そこからまばゆい光がほとばしります。やがて、その光は全てを覆いつくし……

どこかの、陽光降り注ぐ海岸。生まれたばかりの赤ん坊が砂浜で泣いています。オギャー、オギャー。お尻には赤い牡丹の痣が。「あきーーーぃ」とどこかから声が聞こえます。


まあですね、ムリヤリまとめれば、男と女の愛の行き着くところは地獄。そして、親子の愛の究極は天国に通じるとか、言えないこともないと思うんですよ。でもね、それはあくまで比喩的な話であって、閻魔大王がいらないような気もします。ということで、やっぱり、この映画はなにかトンデモないものを観てしまった、という満足感に浸るのがよろしいんじゃないでしょうか。なにしろ、矢島信男のチープでいながら、ツボをおさえた特撮は、一見の価値がありますしね。

それにしても、原田美枝子ですよ。ダメな母と、その犠牲になった娘。それを一人二役で演じるというのが凄い。まんま平山秀幸監督の「愛を乞うひと」そのまんまですから。「愛を乞うひと」はぼくにとって、お気に入りを越えた、本当に感動に心震えた作品なんですが、その20年前に、こんなことやってたなんて。なかったことにしたい。観なかったことにしておきたい、そんな風に思ってしまいます。

もちろん、それは原田美枝子さんの名演技を汚したくないという意味からで、この映画の原田美枝子さんだって、怒涛の迷演技ではあるんですけどね。「愛を乞うひと」が、自陣から果敢に打ち込んだ、猛スピードのシュートだとすれば、この映画は、自分のゴールに向かって打ち込んだ猛スピードのシュートな感じです。壮烈な自爆点とでも言えばいいんでしょうか。いずれにしろ、原田美枝子さんが素晴らしいことには変わりないので、結果オーライということにしておきます。

ちなみに、岸田今日子、田中邦衛、石橋蓮司、加藤嘉などの助演も、ヘンな方向にピカピカ光っています。うーん、素晴らしい。







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4 コメント

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す、すごい (ゆう)
2008-10-20 21:00:51
こんばんは。もうポカンとしつつ先を読み急ぎましたね。なんちゅう映画でしょう。男と女の愛が行き着く先は地獄。至言ですね。真剣になればなるほどドツボにはまる。生きるも地獄、死ぬも地獄。結構イロモノぽいけど、見てみたいですね。
Unknown (ひな)
2008-10-21 18:10:23
こ、怖い。
全身が痛くなりました。
岸田今日子さんは、綺麗系の話のときと、こういうキテレツ系の話のときでは、目張りの入り方と付けまつげの気合度が違いますね。

それにしても地獄も怖いけど現実のほうがもっと怖く感じる映画ですねえ。
不倫と近親相姦はいけませんね。
いきなりの大金で (いくらおにぎり)
2008-10-21 18:45:33
ゆうさん、こんにちは

色物なのは間違いないと思います。神代監督は、ロマンポルノ時代にも、男と女の出口の無い愛を描いて成功していたので(特に前作の"赫い髪の女"は傑作)、その路線の延長だとは思うんですが。まあ、いきなり多額の製作費に喜び勇んで、トンデモなく突っ走っちゃったんでしょうか。
Unknown (いくらおにぎり)
2008-10-21 18:55:33
ひなさん、こんにちは

この映画の岸田今日子は、イトコの岸田森もビックリな、キテレツ系でした。ひなさんが仰るとおりキレイな役も演じられるのに、こういう役も喜んで(多分)、演じてしまうのがスゴイですね。

不倫は、理性でダメだと思いますが、近親相姦は感情的にオエッときます。理解不能です。

本番まであと少しですね。風邪など引かぬように、体調管理を万全にしてください。

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