いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】愛河

2008-07-07 | 邦画 あ行
【「愛河」田中重雄 1958】を観ました


おはなし
三三子(みさこ)と新子は高校時代からの親友。しかし、二人の恋愛観は対照的で……

原作は「姿三四郎」などを書いた富田常雄ですが、これはラブロマンス。それも「純潔とは」みたいな、大時代なテーマの大河恋愛ドラマです。ああ、だから愛河なのかな。

若い娘たちが川遊びをしています。「ヤッホー」とかご機嫌な感じ。なんで、川遊びでヤッホーなのかは不明ですが。おっと、向こう岸にちょっとカッコイイ男子たちが。「ねえ、ちょっと、ちょっと二番目の彼氏、すごくイカスじゃない」と言っているのは、化粧品会社に勤める新子(叶順子)です。多分、富田常雄的には、こういう軽い娘は、なにかヒドイ目に遭うことに決まっていますよ。

彼へのプレゼントを買うために、伊勢丹のネクタイ売り場にやってきた新子。そこでは、高校時代からの親友・三三子(若尾文子)が働いているのです。「水沢さん、元気」と新子に聞かれ、「今日、面接試験なんだ。彼」と恥ずかしそうに答える三三子。そう、新子はワリと男女関係に積極的ですが、三三子は奥手なのです。ちなみに、別の映画でも若尾文子はデパートのネクタイ売り場で働いたりしていましたが、この当時、オシャレな職場だったんでしょうか。

さて、その「彼」こと水沢保夫(川口浩)が日東物産の就職試験を受けています。「君、ガールフレンドは」などと、興味本位の質問をぶつけてくる面接官に、「失礼ですが、そういうご質問と、就職はどういう関係があるんでしょうか」とハッキリ言う水沢。さすが、奥手の三三子の彼氏だけありますね。まあ、若尾文子と川口浩が、奥手なカップルっていう段階で、かなりムチャ目な感じもしますけどね。

ま、それはともあれ、こんな真面目なカップルは、待ち合わせ場所だって絵画館前です。実家に行って、三三子のことを話してくるよ、と言う水沢。「就職すれば、結婚もそう先のことじゃないしね」「まあ、うれしい」。いやあラブラブな二人です。「君はきっといい奥さんになってくれるね」「あなたも、きっといいハズバンドになるわ」。もう、勝手にしてください。

新子は、オシャレなクラブ「ハイヌーン」にやってきました。というのも、彼氏が、ここのオーナーの息子なのです。ちなみに彼氏は、三井明(柴田吾郎)、っていうか改名前の田宮二郎ですね。基本的に柴田吾郎名義での田宮二郎は、女に手が早くて、無責任と相場が決まっていますので、やっぱり新子こと叶順子は、エライ目に遭ってしまいそうですね。「用事が終わったら、ドライブ行こう」と言われ、喜ぶ新子。危ない、危ない。

ぶぉーん。「57年型のご機嫌なクルマ」に乗って、ドライブする二人。キキーッ。人気のない海岸に。「ほら、こんなに心臓がドキドキよ」と言う新子に、三井の顔が迫ります。そして……。
「ごめんね、新子」「ううん」「後悔してないかい」「後悔してるくらいなら、ついてこないわ」。そんな会話を交わしつつチューする二人。あーあ、田宮二郎は危ないのに。

一方、真面目なカップル、三三子と水沢もデート中。ハイヌーンでいい感じに飲んで、水沢の寮にやってきた二人。折からの雨で、三三子の服がびしょ濡れというシチュエーションが、なんとも危ない感じ。「あら、もうこんな時間」と帰ろうとする三三子にチューする水沢。ゴクリ。
「ねえ、みさちゃん。ぼくのものになってくれ。もう待てなくなったんだ」「いけないわ、保夫さん」「なにがいけないんだ」
「だって、あたしたち結婚するまで純潔でいる約束だったわ」。
まあ、それはそうかもしれませんが、水沢としても、はいそうですか、とは言えない気分。
「でも、ぼくたち、もう2年間も待ったんだ。僕の就職も決まったし、もう結婚なんて形式に囚われなくたっていいじゃないか」「でも」。
よし、もう一押し。この論法でどうだ。
「僕のこと信じてないのかい。愛してないのかい」「まあ、ひどいわ。愛してないなんて」
「じゃあ、その証拠を見せてくれ」「イヤ、イヤよ、そんなこと」
水沢の手を振り放し、背を向けてしまう三三子。なんてこったい。カンペキなロジックだと思ったのになあ。
「ねえ、保夫さん。お願い。何も言わずに待ってくださるわね」
「……冷たい女だね、君は」、いや、ホントはそんなこと言う気じゃないんだ。涙目の三三子を見ていると、悲しい気分になりますが、口が勝手に動いてしまいます。この口が。
「僕は君に恥ずかしい要求をしたよ。僕は動物的な人間だから、これから先も、君を苦しめるかもしれない。僕たちはもう会わない方がいいんだ」。うわーん、とんでもないこと言っちまった。

「お前にちょっと話があるんだ」と、兄の剛一(川崎敬三)が三三子に声をかけます。大学の先輩で、日東物産の営業部長が三三子を見初めたので、お付き合いしてみないかと言うのです。もちろん、断わる三三子。しかし「じゃあ、何か。他に好きな人でもいるのか」と剛一は、人の言うことを聞かずに、話をどんどん進めちゃうのです。

ということで、剛一から奢ってやると、幌馬車というレストランに呼び出された三三子。なんと、剛一は勝手に、営業部長(北原義郎)とのお見合いをセッティングしていたのです。まさか席を蹴立てて帰れないし、困ったわ。さらに、トコトン間の悪いことに、レストランから出たところを、水沢に目撃されてしまう三三子。水沢としては、三三子との冷却期間中に、自分の会社の営業部長と三三子がレストランから出てきたりするところを見つけたりしたら、もうカンペキに疑っちゃいます。妄想の虜です。許すまじ、という気分です。ムカムカ。

ヤケ酒を飲みに行く水沢。飲み屋で、いすゞ自動車に勤めている先輩(菅原謙二)に会ったりもしましたが、内心の怒りを抑えられません。多分、"先輩っ今は心から笑えないの"って気分でしょう。その上、三三子の家に電話すると、兄の剛一に「三三子はずぅーっと遅くなりますよ」とか言われて、ガチャンと切られるし。どうしてくれよう。ムカムカ、ムカムカ。

怒りのままに、別の飲み屋に行く水沢。ところが、この店は「童貞キラー」と異名を取るゆうこ(角梨枝子)の店だったから、さあタイヘン。「純潔なんかクソ喰らえだぁ」とグデングデンの水沢に、「あたしをぐっと抱いてごらんなさい」「臆病者ねえ」と挑発するゆうこです。「よーし」と見栄を張る水沢ですが、そこは経験の差は歴然。「看板までいてね。あたしのアパートまでくるのよ。いいわね」と、耳たぶをカプっとされて、ふにゃふにゃです。それにしても、角梨枝子の場合、名前は角ですが、ルノワールの絵を思わせる丸型体系。そのうえ、怒涛のセクシービームで、三原葉子や春川ますみの姉貴分みたいな存在ですから、ちょっと普通の男では抵抗できませんね。ちなみに、アパートの部屋に入るところを、「たまたま」同じアパートに住んでいる新子に目撃されたりしていますが、それはまた後のお話。

会社にいる水沢のところに、三三子から電話がありました。「なんか用」とぶっきらぼうな水沢に、「まだ、怒ってらっしゃるの。あれから一月も連絡ないし、あたし今日お会いしたいの」と三三子は懸命です。しかし、水沢は「今忙しいんだ。今さら会ったってしょうがないじゃないか」と言い放った上で、三三子が泣き出すまで、ガンガン厳しい言葉をぶつけるのです。分かります、この気持ち。そんなこと思ってないのに、後に引けず、キツイことを言ってしまうんですよね。うわーん。

水沢は課長から、営業部長の運転手役を命じられました。まあ、普通なら「ハイッ」と張り切って返事をするところです。普通なら。しかし、今の水沢はヤサグレ気分。その上、相手は三三子の恋人(と思いこんでる)です。「お断りします」、うわっ、言っちまった。「君、今の態度はいったい何だ」「僕は運転手として、この会社に雇われたんじゃありません」。誰か、この口を止めてぇ。「生意気を言うな。君はまだ見習い社員なんだぞ。そんな不遜な考えで、本採用にはならんぞ。そのつもりでいたまえ」「僕の方でお断りします。僕は辞めます」。ああ、あゝ、嗚呼。この口が、この口が。

家で思いつめてる三三子。「バカねえ、どうして断わったりしたの」という新子の声が脳裏に。「ぼくたち2年間も待ったんだ」という水沢の声も脳裏に。えーん、水沢さんと別れたくないよぉ。
ということで、「ねえ、お母さん。あたし今夜遅くなったら、新子さんのとこに泊まるかもしれないわ」とウソをついてお出かけです。しかし、水沢は部屋にいやしません。その上、隣の人に聞くと、最近、しょっちゅう外泊しているというじゃありませんか。何?、あたしが、こんな決心してきたのに、どういうこと。ムキーっ。

産婦人科の門をくぐった新子。まあ、そういうことです。これは三井に相談しなくては。早速、会いに行く新子。しかし、三井はクラブ歌手とデート中じゃありませんか。でも、いいの。愛があるから。「あたし妊娠したのよ」「ホントか脅かすなよ」。あれれ、三井さん冷たい。その上、「これだけありゃ足りるだろ」と札びら出してるわ。「あたし、あなたの赤ちゃん産みたいの」「何だって」「あなたと結婚したいの」「バカなこと言うなよ」。うわーん、三井さんのバカっ。思わず三井を引っぱたく新子。しかし、三井はマッハの速さで、新子を殴り返すのでした。それも札束で、なおかつ往復で。「待ちたまえっ。何てことするんだ君は」と飛び込んできたのは、三三子のお兄さん、剛一。ぱーんち。そんな男たちの喧嘩をよそに、ヨロヨロ歩き出した新子は、クルマに轢かれるのでした。きーっ、どしゃん。

「すいません」。病院で看病してくれている三三子に礼を言う新子。「あたしバカだったのね。あんな三井みたいな男に愛情持っていたなんて」。うんうん、改名前の田宮二郎は危険な男ですからね。と、そこにお兄さんが見舞いを持ってやってきましたよ。あれ、前はドンクサイと思っていたけど、なんかステキに見えるわ。思わず、「良い方ね、お兄さまって」と言う新子。そう、確かに川崎敬三は良い人です。ちょっと空気が読めないのが弱点ですけど、川崎敬三の良い人率は、おおむね80パーセントを越えるイキオイですから。

まあ、それはそれとして、男に騙された新子は一気に奥手な女に。そうなると、三三子のことが心配でならないので、水沢がバーのゆうこの部屋に入ったことを報告します。ごめんね、イヤミじゃないのよ。「ううん、かえってうれしいわ、ホントのことを聞いて。私、もう一度保夫さんに会ってみる」「三三子は水沢さんを許すって言うの」。

「許すって言ったら、今の私の気持ちを偽っていることになるわ」ギロリ。
「許せないわ、今は。でも、私目隠しをして、現実から目を逸らしたくないの。保夫さんに会って、確かめたいわ。ホントのことを」。メラメラ。危ない、川口浩。逃げてーっ。
しかし、会社を辞めた水沢は部屋にいません。ゆうこの部屋を急襲するも、そこももぬけの殻。いったいドコに逃げやがった。とりあえず、水沢の田舎に行ってみましょう。何か手がかりがつかめるかもしれないし。

はい、水沢の実家の温泉旅館に、三三子はやってきました。お母さんによると、水沢は先輩の紹介で、何とか言う自動車会社の運転手をしているそうです。何とかじゃ、分かりませんよ、お母さん。でも、せっかく来たんだし、お母さんに私の気持ちを聞いてもらわなくちゃ。
「恥ずかしい話ですけど、実は……」……。……。「でもあたし、保夫さんをホントに愛しています。こんなことで、気持ちが離れたり、他の人に取られるくらいだったら、あたし何も最初から惜しみはしませんでしたわ。ただ、どうしても、結婚までは純潔でいたかったんです。おばさま、こういう考え方って、古いんでしょうか。あたしが悪いんでしょうか」。
ほら、良い娘さんねえ、って褒めて褒めてお母様。
「私は、自分の息子でも、あなたの夫として、オススメできませんわ」。
おいおい、そうじゃなくって。いやん、話の方向がヘンだわ。直さなくちゃ、直さなくちゃ。
「でも、あたし、それが保夫さんの全てだとは思いたくありません。ホントはもっと良い人なんですもの」、えーと、これでフォローになったかしら。

さて、荒くれ運転手たちにまじって、トラック運搬の仕事をしている水沢。まあ当然、周りからは、大学出で生意気、ということでいびられています。しかし、おとなしくいびられるような性格でもないので、さっそく喧嘩。とりゃっ。おらおら。ばこっ、ぼすっ。「おい止めないか」と先輩が走ってきました。とりあえず、荒くれ運転手を背負い投げです。さすが、菅原謙二。やっぱり、柔道がでないとね。まあ、それはともあれ、水沢たち運転手は出張で、神戸までトラックを運搬することになったようですよ。と、このシーンがすごい。いすゞ自動車と提携しているんでしょう。完成前のトラックを川口浩たちが運転しています。まったくボディがついていない、間に合わせの木の椅子をつけただけのトラックです。へぇ、トラックってこうやって運ぶんだ、とビックリです。やっぱり、映画って勉強になりますねえ。

仕事を終えた水沢。先輩に誘われ、神戸の街に繰り出します。ところが飲み屋に入ってビックリ。なんとゆうこがいるじゃありませんか。そっぽを向く水沢に、言い寄ってくるゆうこ。「好きよ、たまらなく好きなの、あなたが」、そういってメモとアパートの鍵を渡してきました。メモによると、一本しかない鍵だそうで、「女の私に恥をかかしちゃ、イヤあよ」と書いてあります。これは新手のナンパですね。確かに鍵が一本とか言われると、自分が行かなくては、ゆうこは部屋に入れないわけだし、これじゃ、断わりにくいです。

はい、水沢は行きませんでした。翌朝になって、鍵を返しにアパートに向かいます。と、「たまたま」実家に帰っていた新子と「偶然に」会ったりしていますが、まあ映画だから許してって感じです。しかし鍵がないと言いつつ、ちゃっかり部屋で、お色気をムンムンと放出中のゆうこ。「これ返すよ」と水沢が鍵を渡すと、「ダメ、返さないわ」と迫ってきました。危うし、水沢。大丈夫か、水沢。と、いきなりそこにパトロン(三島雅夫)がやってきました。「ゆうこ、なんやねん、その男は」パーンチ。タイヘンです、水沢は別の意味でピンチです。

新子からの電話を受けた三三子。今日は、営業部長との結納の日ですが、そんなの無視です。無視、無視。早速、神戸に急ぐ三三子。新幹線が開業していないので、ピューンと言うわけにはいきませんが、ガタンゴトンと急ぎます。ガタンゴトン。ガタンゴトン。

「ここよ、三三子」。新子の案内でゆうこの部屋に来た三三子。しかし部屋はもぬけの殻。管理人のおばさんによると、ゆうこは引越して、水沢はパトロンの子分の「与太者」に連れて行かれたそうです。タイヘン、水沢さーん。

ばこっ、どすっ。与太者たちにリンチされている水沢。「まだおもてなしが足りんのと違うか」というパトロンの言葉に、リンチが激しさを増します。と、そこに三三子が駆け込んできました。「やすおさーん、やすおさーん」。おっと水沢がふっかーつ。手を縛っていたロープも(なぜか)ほどけて、逆襲です。「逃げろ、逃げるんだぁ」、「野郎、ふざけやがって」。ピーポーピーポー。新子の呼んだ警察がやってきました。ほっ、助かった。

病室で水沢を心配そうに見ている三三子。そこに、兄からの電話です。「ねえ、新子。代わりに出てくれない」。なんだか、お兄さんと新子は、良い感じで話していますよ。二人の間に恋が芽生えるのもそう遠くないでしょう。いえ、もう芽生えているのかもしれませんね。そして、三三子と水沢は……。
「ぼくが悪かったんだ」「私が悪かったの」
「僕たち、随分回り道をしたな」「でも、よくここまで乗り越えてきたわ」
「もう君を離さないよ」「私だって、絶対に離さない」
「みさちゃん」「保夫さん」
ちゅっ。

えーと、とりあえず、純潔は力なり。という結論でいいのでしょうか。純潔を守らなかった新子は子供を堕ろすはめにおちいり、三三子は幸せをつかんだということで。とは言え、新子もお兄さんと幸せをつかむみたいだし、純潔を貫いた三三子の方は、水沢がエリートサラリーマンの地位をフイにしているので、一概に純潔=正義と言い切れない部分も残りますが。まあ、原作が富田常雄なので、説教くさいのはともかくとして、面白いお話でした。なんていうか、大映の作品は安心して観られますよね。あまりドギツクないのがいいです。

若尾文子と叶順子はともに、ショートカットがとてもかわいいです。もちろん、かわいい人はどんな髪型でもカワイイのだ、というのが真実かもしれませんが、長い髪よりショートカットの方が、キュート度数が高めな気がします。
あとは、「ふてぶてしいお坊ちゃん」風味の川口浩。人がいいけど空気読めない川崎敬三。そして、かつては若尾文子の相手役だったのに、ちょっと貫禄がついてしまった菅原謙二など、大映東京の誇るメンバーが揃っていて、これまたみんな良いですね。そして、柴田吾郎こと田宮二郎。ホント、良い俳優さんです。悪人から、調子のいい善人まで、オールマイティ。田宮二郎のおかげで、作品のグレードが一段、上がった気がします。

いくらおにぎりブログのインデックスはここ
いくらおにぎり日記はここ
『映画・DVD』 ジャンルのランキング
この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 【映画】ホワイト・ラブ | トップ | 【映画】娘の冒険 »
最近の画像もっと見る

あわせて読む