いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】おんな極悪帖

2008-04-23 | 邦画 あ行
【「おんな極悪帖」池広一夫 1970】を観ました



おはなし
もとは芸者だった女が大名の側室になりあがり、実権を握ろうとするお話です。

まあ基本的に出てくる人間、出てくる人間が「全部」悪いというストーリー。アウトラインは、こんな感じ。

春藤家の殿様(岸田森)は最近、ご乱行が絶えません。というのも、不見転(みずてん)芸者のお銀(安田道代)という女を側室に迎えたから。このお銀は悪い女で、腰元の梅野(小山明子)、家老の靱負(佐藤慶)、さらには奥医師の玄沢(小松方正)などと組んで奥方の毒殺を狙っています。そうすれば、自分の子供に藩主の座が転がり込みますから。

ところで、腰元の梅野は10歳下の若いツバメに首ったけ。しかし、この磯貝伊織(田村正和)という若侍もなかなかのクセモノ。あっというまにお銀のツバメに鞍替えです。

国許からは、武勇に優れた侍たち(早川雄三、伊達三郎)が、殿様に諫言しにやってきました。お銀を毒虫とまで言い切り、斬り捨てるように殿様に迫るのです。いよいよ、奥方暗殺を急がなくては、我が身が危うい。お銀は奥坊主の珍斉(芦屋小雁)を脅迫して毒殺を命じたのですが。

ここでは、一人ひとりの出演者を、その末路とともに紹介してみますね。

なまえ:珍斉(芦屋小雁) しょくぎょう:奥坊主 せいかく:軽薄

下屋敷に勤める妹に金をせびりにきて、たまたまお銀たちの悪巧みを聞いてしまった。その悪巧みとは、まさに珍斉自身が、奥方に毒を盛る役というのがツライところ。妹は、褒美の金をもらった上で、殿様にチクれば、両方から金をもらえてウハウハと説得するが、「死ぬのは怖い」ので断固拒否。しかし、目の前で強欲な妹を斬り殺されて、あっさり毒を盛ることに同意する。毒殺後、自分が死んだら、全てはお上にバレルようになっていると、逆にお銀を脅迫して、大枚ゲットで逃亡。唯一、死ななかった運のいい人。

なまえ:玄沢(小松方正) しょくぎょう:奥医師 せいかく:すけべ

元々、芸者だったお銀の馴染みだったため、毒薬調達を頼まれる。お銀は奥方に加え、家老も暗殺して、あんたと一緒になると甘い言葉をささやくが、そこは小松方正。家老を殺すだけなら一服で充分と、毒薬を全部お銀に渡さない用心深さも。しかし、毒を塗ってあったお銀の足をペロペロ舐めていて悶死。結局、すけべが命取りに。

なまえ:菅沼(早川雄三)、氏家(伊達三郎) しょくぎょう:ぶこつな侍 せいかく:わりと打算的

国許から、殿様をお諫めしにきた二人。武芸も抜群らしい。というと、剛直な感じがするが、実のところは出世が目当て。殿に自分たちが倒せるわけはないと高をくくり、奥方に男児が生まれたら殿を乱心のかどで押し込めてしまう予定。自分たちは新体制の功労者としてウハウハ(なつもり)。
あろうことか、田村正和ごときに倒されるという不甲斐なさで、憤死。

なまえ:靱負(佐藤慶) しょくぎょう:ご家老 せいかく:冷静

やっぱり、芸者時代のお銀と馴染みで、殿にお銀を推挙した張本人。自ら藩主一門の出身ということもあり、お銀の子供が藩主になったら、自分が実権を握ろうという野心家。しかし、お銀と伊織が、「さて、残るはご家老」「どんな風にして殺そうか」と明るく相談しているところに出くわして逆上。伊織との壮烈な斬りあいの末、斬死。しかし、この佐藤慶と田村正和の戦い。どっちも弱そうなのが、強烈。

なまえ:梅野(小山明子) しょくぎょう:腰元 せいかく:マジメ、でも意外と情熱的よ

お銀の腹心。頭がキレ、武芸自慢の男を一撃で斬り殺すほどの武芸自慢な一面も。言ってみればスーパー腰元。しかし、10歳年下の田村正和に惚れたのが命取り。乱心の殿の気まぐれで「伊織と立ち会ってみろ」と言われた瞬間の悲しそうな表情がステキ。しかし、「立会いまする。君命とあれば」とやる気満々の田村正和を見て、すっかり騙されていたことに気づくが、すでに後の祭。あっさり斬られて、惨死。しかし、前年に第2子を出産したばかりなのに、稼ぎの無さそうな夫(大島渚)のために、懸命に働くなんて、小山明子自身はまさにスーパーお母さん。

なまえ:とのさま(岸田森) しょくぎょう:とのさま せいかく:クレイジー

この映画で、もっとも鮮烈な印象を残すのが、このおとのさま。なにしろ、ほぼ全編を通じて、ゲハハハ。ギャハハハ。ゲラゲラ。と笑いっぱなしですから。気分で家臣の首を斬ってみたり、レクリエーションに家臣を弓で射てみたりとやりたい放題。もともと岸田森の持っている素質と相まって、まさにカリギュラなおとのさまの誕生です。その上で、お銀や田村正和の悪巧みを見破るという、意外に英明なところも持っていたりするのが、またオシャレ。しかし、キレた田村正和に襲われ、ヒーヒー言いながら逃げ回るさまは、別の意味で圧巻。斬られても、斬られても意味不明の絶叫をあげながら逃げまくる岸田森を見ていると、死に様に(文字通り)命を賭けていた川谷拓三を思い出して、思わず涙で前が見えません。結局、見苦しく逃げ回ったすえに、無駄死。

なまえ:磯貝伊織(田村正和) しょくぎょう:いろおとこ せいかく:いろおとこ

年上の小山明子を手玉にとり、ついでに安田道代のハートもゲットする、スーパー色男。その上、剣の腕もスゴイとなったら、これは市川雷蔵の演じた眠狂四郎の生まれ変わりのようです。とはいえ、ツライところは、殺陣がまったくナッてないので、全然強そうに見えないところ。これでは雷蔵のあとを継いで、眠狂四郎は演じられません。えっ、演じてるって。眠狂四郎を。田村正和が。えーと、聞かなかったことにしておきましょう。
全ての計画がうまく行き、さあこれからと言うときに、子供の悪戯で入ってしまった毒を、知らずに飲んでしまうという不運なところが悲しすぎます。そのうえ、それをお銀の仕業と誤解して刀を振り回すという、「漢」とはいえない所業が、小物っぷりを強調してしまいました。結局、お銀を刺して毒死。
しかし、さすがに田村正和と思ったのは、例のあの口調で喋りつつ、「乱れてもいない」前髪をかき上げる仕草を見せるところ。この人はホンモノです。

なまえ:お銀(安田道代) しょくぎょう:毒婦 せいかく:わるい

さて、主人公のお銀。もともと芸者時代に仲間にイジメられたことがキッカケで毒婦の道に入ったように描かれていますが、それよりなにより天性の悪女だったと思われます。いわば、ナチュラルボーン悪女。次から次へと邪魔者を殺し、藩政を掌握。いよいよ田村正和とラブラブな生活が、という矢先に、誤解から田村正和に追い回されたのは完全に計算違い。さらに、刺されてのたうちまわっているところに、家臣たちがやってきて「奥方様が生きておられるのだ」と聞いた時の気持ちはいかばかりだったでしょう。目を見開いたまま、怨死。ちなみに座右の銘は「地獄、極楽、覗きカラクリ」。


芸術の大映といえども、世の中の流れには逆らえず、ハダカを売り物にしたようなキワモノ時代劇を60年代末期から作り始めています。例えば、市川雷蔵の眠狂四郎シリーズですら、その傾向は顕著でした。その雷蔵版眠狂四郎の最終作(池広監督)が公開されてから、1年3ヶ月。雷蔵が亡くなってからだと、わずか9ヶ月ほど後に公開された、この映画。池広監督をはじめ、スタッフ、キャストだってそれなりに豪華。でも、何も今までとは変わっていないはずなのに、何かが失われてしまったような雰囲気です。それが何かはウマク言えませんが、「斜陽」という言葉が頭に浮かびました。ストーリだって、荒唐無稽だけど面白い。安田道代の演技だって上手い。でも、大事なものが、そう、スターのキラメキが決定的に失われてしまった。そんな宴の後みたいな寂しさを感じます。

ところで、この映画。「おんな極悪帖」というより、「みんな極悪帖」と言った方が良さそうです。







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2 コメント

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すごい作品ですヨ (タイリー)
2009-01-11 04:32:20
いやぁびっくりしました。
これは単純なキワモノ作品ではない、原作ものなのか、オリジナル脚本なのか、一体誰が書いたのかと思って確認したら、やっぱりやっぱりの谷崎潤一郎でした。
おどろおどろしい人の業や狂気の愛を描かせたら天下一品、「卍」「鍵」「刺青」「痴人の愛」などちょっと思い出しただけでもいやはやです。
一見純愛風の「春琴抄」でさえもかなりです。
それにしても大映のカメラって、宮川さんや弟子の牧浦さん以外の人でも実にキレのある映像で感服です。
シネスコ大好き♪
尖ったものコワイ (いくらおにぎり)
2009-01-13 14:18:20
タイリーさん、こんにちは。

確かに谷崎は耽美的な作品を書きますもんね。「春琴抄」だって、一歩間違えたらホラーですよね。ぼくは、尖端恐怖症ぎみなので、アレはすごく怖いです。

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