いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】子連れ狼 死に風に向う乳母車

2011-05-19 | 邦画 か行
【「子連れ狼 死に風に向う乳母車」三隅研次 1972】を観ました

おはなし
冥府魔道に生きる父子が今回暴れる場所は、東海道沿いみたいです。

若山富三郎版「子連れ狼」の第3弾です。1では空気だった大五郎も、徐々に存在感を増してきました。


なんかサウンド・オブ・ミュージックのオープニングみたいな爽やかな音楽が流れます。ここは川のほとり。「船が出るぞぉ」。渡し船の船頭が怒鳴りました。あわてて船に乗り込む人々。町人やら、女衒に連れられた娘などさまざまです。と、そこにゴロゴロと乳母車を押しながら拝一刀(若山富三郎)がやってきましたよ。それを見て船頭は苦い顔。「ダメだ。ダメだよ、ご浪人さん。そんなヘンな車、乗せられねえ」。「乗せるのではない」と言った拝一刀は、そのまま乳母カーを川にボチャン。そしてヒモを渡し船に結び付け、息子、大五郎を乳母カーに乗せ、自分は渡し船のソソクサと乗り込むのでした。「へへ、なるほどねえ」と感心している様子の船頭は、そのまま船を出発させます。

ぷかぷか。川面を滑るように進んでいく渡し船ですが、女衒の文句松(名和宏)と売られた娘のお松(加藤小代子*)が何やら言い争っているようです。と、その拍子にお松の荷物が川にジャポン。あれえ。しかし、船の後方には乳母カーが曳航されていますからね。ほら、大五郎が荷物を拾ってくれたみたいですよ。そして、目的地につき、大五郎から荷物を受け取ったお松は文句松に連れられて、いずこかに。しかし、このお松のせいで拝一刀がトンデモない目にあうとは、お釈迦様でも気がつくめえ、です。

ま、それはともあれ、あいかわらず追っ手をバッサバッサ斬り殺しながら旅を続ける父子。そんな中でも野グソをする大五郎のために、葉っぱをよく揉んでトイレットペーパーにしてあげる拝一刀の姿など、親子の情感あふれるシーンなんかもあったりして、いい感じです。もちろん、基本は冥府魔道な父子なんですけど。

さて、街道筋の茶屋では、照りつける炎暑に閉口したのか、胸を大きくはだけダラしなく酒を飲んでいる侍たちが。「あーあ、渋皮のむけたような女か娘が通らねえのかよう」とひとり(山谷初男)が言えば、うんにゃうんにゃと同意する仲間ふたり。残るひとり(加藤剛)は酒も飲まず端然と座っているようですが、どうにも胡乱な侍たちです。浪人でしょうか。いいえだれでも。どうやら、説明くさいセリフによると、この侍たちは渡り徒士(わたりかち)という存在のようですよ。「俺たち渡り徒士はなあ、今日はあっちの大名。明日はこっちの大名と参勤交代の時だけ雇われるお供の飾り人間だ。浮き草稼業の流れ者だな。へへっ」だそうです。要は人件費を抑制するために使われる、臨時雇いの派遣さんみたいなもののようです。なんていうか、今も昔も世知辛いですねえ。

おっと、そんなところに手代を連れたお歯黒のおばさんと、その娘が歩いてきましたよ。ギラリン。加藤剛を除く渡り徒士たち3人は目を輝かせます。よっしゃあ。さっそく後をつけ、手代を殴り倒して、おばさんと娘に迫る3人。「俺たちゃ渡り徒士」「はっ!渡り徒士」「そうよ、渡り徒士だ」。なんだかシュールなセリフとともに、あれえ。母と娘は抵抗むなしく乱暴されてしまっのです。と、そこに失神から覚めた手代が棍棒片手に殴りこんできましたよ。よくも奥様とお嬢様を、殺してやるぅ。刀を差しているとはいえ、しょせん剣術もまともにできない3人は、タジタジです。というか、完全に負けてます。「ま、待ってくれえ」。しかし「許さねえだ」と棍棒をフルスイングする手代。と、そこに加藤剛がやってきましたよ。「か、官兵衛さん。助けてくれえ」。うーん仕方ないなあ。とりゃっ。抜く手も見せずに手代を斬り殺した官兵衛こと加藤剛は、さらに母と娘も斬り殺すのでした。さらに、3人にクジを引かせる加藤剛。そう、代官所を納得させるためには、犯人役が必要ですもんね。はい、あんたが当たり。クジに当たった山谷初男は「何で俺だけが」と逃げようとしますが、後ろからバッサリ。そのまま街道を歩いていた父子連れの乳母カーにすがりつくように絶命するのでした。ん?乳母カー。そう、そこにいたのは拝一刀こと若山先生だったのです。

ギロリ。そこらへんに転がっている手代の死体や、母と娘の死体を見やる若山先生に、加藤剛は折り目正しく言います。「見苦しい有様をお見せした。お許しを願いたい」。「渡り徒士とも思えぬ武士らしきふるまい」とエラそうに答える"ただいま絶賛浪人中、ついでにお尋ね者"の若山先生。「武士らしい。ふっ(苦笑)。拙者、元越前丸岡藩、お駕籠衆を務めし孫村官兵衛と申す。卒爾ながらご姓名は」「拝一刀と申す」。「やはりそうでござったか」と加藤剛はサワヤカ笑顔を全開です。そう、お互いに無類の剣士として、その名前くらいは知りあっているようなのです。と、ニコヤカな談笑タイムはここまで。たとえパートタイムとはいえ、次の職場に迷惑をかけるわけにはいかない。だから勝負していただきたい、と言い出す加藤剛。微妙に武士の意地の張りどころを間違えているような気もします。しかし、その願いに若山先生が沈黙していると、残った2人の渡り徒士たちが、「やいやい官兵衛さんが、これほど頼んでんだ。立ち会ったらどうなんだ」とチンピラ風に言いがかりをつけ、さらには斬りかかってきましたよ。なんていうか、身の程知らず。サクッ。はい、死にました。

あらためて対峙する、加藤剛と若山先生。自然と闘いの機が熟してきます。「もし拙者に勝機があるならば、あのお子のことは身命にかえてお引き受けつかまつる」「そのお気遣いは無用に願いたい。我ら親子、冥府魔道に生きるものなれば、六道四生順逆の境、もとより覚悟のうえ」。「いざ」「まいる」と刀を抜きあう二人。と、いきなり若山先生、「この勝負分けにいたす」と刀を納めてしまいましたよ。「なにゆえに」「真の武士として残しておきたいが故に」。クルッ。後ろを向いてスタスタと行ってしまう若山先生。「俺はまた死にぞこなった」と加藤剛はガックリしています。

さて旅籠でご飯を食べている冥府魔道父子。と、その隣の部屋でも、文句松こと名和宏とお松が食事中でした。食事を終えて、お松に足をマッサージしてやると言い出す名和宏。でもマッサージしているうちに、ほら、名和宏ですからね。欲情スイッチ、オーン。でも無理やりチューをした挙句、舌を噛み切られて悶絶死。出番が少なくても名和宏はオイシイところを持っていきます。

ずずず。若山先生と大五郎が食後のお茶をおいしそうに啜っていると、そこにお松が転げ込んできましたよ。か、匿ってください。おそらく内心ではビックリしているだろう若山先生ですが、なんていうか知らぬ顔じゃないし、押入れに匿うくらいならね。その後やってきた宿場役人をケムに巻き、さ「行くが良い」と言う若山先生。と、そこに土地のヤクザたちがやってきちゃいました。ずらりと並んだヤクザの真ん中には着流し姿も凛々しい男装の麗人(浜木綿子)が。「手前は古四王(こしお)一家の酉蔵と申しやす。この宿場から刈谷までの遊び場所、全てを束ねておりやす亡八もんで。その子は手前どもの女衒、文句松が買ってきたタマでござんす。どうか御引渡しを願いとう存じやす」。折り目正しい挨拶に、若山先生はひとこと「断る」。いや、それじゃ困ります。その後、浜木綿子がいくら懇切丁寧に道理を尽くしても、「くどい」「断る」を連発する若山先生。どうやら、お松がぽろりと落とした位牌を見て、アレを思い出したみたいです。ちなみにアレって言うのは、徳川を呪詛する位牌を持ってるだろ、と裏柳生に言いがかりをつけられ冥府魔道に堕ちた事件のこと。「位牌が結ぶ冥府魔道の因縁。一枚の位牌のために人間としてのあらゆるものを失った我ら親子。引き下がれぬ理由がそこにある」と言いながら若山先生がギロリと浜木綿子をにらむと、大五郎も負けじとギロギロリと浜木綿子をにらんだりして。うっ、カワイイじゃないか。大五郎、キュートすぎだろ。

ま、それはともあれ、浜木綿子は困り果てちゃいました。ピストルを撃ってみれば、ササっと畳を起こして防いじゃうし、せめてお松に水揚げさせて、そのお金をくれれば勘弁してやるけど……と妥協案を出しても若山先生はガン無視。どうにもこうにも若山先生に対抗する手段が思いつきません。うーん。そうだ!折檻を受けてくれたら、こっちのメンツも立つんだけど、どう? おっと、これには若山先生OKなようですよ。ただし、「その責めをわしが代わって引き受ける」。「しかし」と言う浜木綿子に若山先生。「病い身の女郎に代わって、朋輩が責めを受けることもあると聞く。身代わりは駄目だというしきたりもあるまい」。ヘンなとこで若山先生リクツっぽいです。

キリキリ、キリキリ。ジャッポーン。滑車で逆さに吊られ、水桶に頭を突っ込まれている若山先生。キリキリ。ザッポーン。本気で水責めされちゃってますよ。頭に血が上るわ、鼻から水が入るわで、とても苦しいんじゃないでしょうか。いくら撮影とはいえ、やってることは紛れもない拷問そのものですから。しかし、若山先生というか拝一刀は音をあげません。よーし、じゃあ、今度はもっと恐ろしい責めだ。逆さ吊りにしたうえで、寄ってたかって棍棒で殴るという恐ろしい責め。これは、本当にキツイぞお。浜木綿子は子分たちに言います。「次はぶりぶりだっ」。えっ?ぶりぶり。「ぶーりぶり。ぶーりぶり」。早速、棍棒で若山先生を殴り始める子分たち。段々盛り上がってきたのか、お囃子もテンポアップしていきます。「ぶーりぶり。ぶーりぶりのぶーりぶり」。バコっ。バコっ。肉を撃つ音とぶりぶりが交錯して、なんだかもう、なんだかもう、ぶりぶり。

しまいには、「ロッキー」でロッキーがボコってた牛肉の塊みたいになった若山先生。しかし、どうにか「ぶりぶり」に耐えきったようです。「お、お侍さま。おら、おらあ」と泣いているお松。大五郎も「ちゃん」と心配げ。「本当のお侍ってのは少なくなったが、まだこんなお人がいるんだねえ」と浜木綿子は、なんだか他人事のように感心しています。

さようならあ。手を振ってどこか田舎にでも帰るお松。しかし、浜木綿子は若山先生に言うのです。「あの子が女郎になるかならぬかの落とし前はつけていただきやしたが、まだひとつ、文句松を殺したことのケリはついておりやせん」。ええ、またぶりぶりするの。「手前の頼みを聞いてくださりゃ全てをもみ消します。拝さま、あなたさまをぶりぶりにかけている時、ある噂を思い出しました。ご公儀介錯人が柳生一門との確執により、刺客子連れ狼として流浪いたしておること」。カチャッ。浜木綿子が秘密スイッチを押すと、床の間がパカっと開いて隠し部屋が。「こちらへ」。

そこに寝ていたのは隻腕の男(浜村純)。「元掛川藩筆頭家老、三浦帯刀でござる。実は貴殿をお探ししておった」。ついでに言うと、酉蔵こと浜木綿子も、実は家老の双子の妹娘、酉だそうですよ。双子は不吉ということでやくざさんの養女になったそうです。それはともかく、浜村純は殺しを依頼したいそうですよ。ターゲットは遠江の代官、猿渡玄蕃。「事情を承りたい」という若山先生。そして浜村純が語るところによると……。

掛川藩のお殿様はクルクルパー。乱暴狼藉を繰り返していました。そして家臣たちは、そんなお殿様のことがバレないように、必死に取り繕っていたそうですが、お側用人だった猿渡玄蕃が老中にチクってしまったとか。おかげでお殿様は切腹。しかし、猿渡玄蕃はその功績で天領(幕府直轄地)の代官になったのです。なんて悪いヤツなんだ猿渡玄蕃。もうバッサリ斬っちゃってください。ヒートアップしている浜村純ですが、何ていうかなあ。領民からしたらどっちでもいい話というか、どっちもどっちだよなあ。え。若山先生の反応ですか。もちろん、ただひと言。「刺客引き受け五百両」です。

さて、ゴロゴロと乳母カーを押しつつ遠江の天領に入る若山先生。と、タイミングがいいのか悪いのか、代官・猿渡玄蕃の使いがやってきましたよ。ぜひ代官に会って欲しいというのです。そして、その代官・猿渡玄蕃(山形勲)は屋敷で「来るかなあ。来てくれねば困る」と部屋をウロウロしている真っ最中。なんていうか恋する乙女状態。そんなに会いたいですかねえ。すでに二人の遣い手、左門(和崎俊哉)と朽木六兵衛(草野大悟)がいるんだから、何も若山先生に頼らなくても。

おっと、若山先生がやってきました。山形勲は息せき切って言います。「早速じゃが、老中板倉内膳正を斬ってただきたい」。おい早速すぎだ。「お断りいたす」。うわっ、若山先生も早速過ぎ。「まて、こちらの意図を知られたからには生かしては帰さん」。ほれ、行け。しかし、左門と六兵衛は身じろぎもしませんよ。そのまま若山先生は帰っていきました。ムキーっ。怒り出す代官の山形勲。「なぜ斬らなかった」。しかし、左門は静かに答えるのです。「もし拙者が斬りつければ、奴の胴太貫が殿の胸を貫いたでしょう。朽木どのが撃っても同じことだったでしょう。拝は恐ろしい遣い手です」。……すごい。自分の失敗を、かえって恩着せがましく言えるこの才能。これがあれば、何も代官の手先なんかしないでも、江戸とかでハッピーに暮らせるんじゃないでしょうか。ともあれ、左門の言葉に説得されちゃった山形勲は考えます。うーむ。それにしても、なんでアイツ来たんだ?仕事を断るなら来なきゃいいのに……って、まさかっ。そうだ、そうに違いない。俺より先に、老中が俺を殺すように依頼したんだ。そうに違いない。うわーん、どうしよう。

さて、六兵衛こと草野大悟はひみつ特訓場で、ピストルの練習中。バーン。ババーン。愛用の2丁拳銃が火を吹きます。と、パチパチと拍手が聞こえます。見ると、ヘンな髪形の幼児が、こちらを見て拍手しているじゃありませんか。人相が悪いわりに子供好きな草野大悟はうれしくなって、さらにピストルを発射。バン、ババーン。ちらっ。こっそり見ると、幼児がこっちを見て、うれしそうに拍手していますよ。いやーん、カワイイ。よーし、おじさん頑張っちゃうぞぉ。どりゃ。ズババーン。ズババババーン。両手のピストルを思いっきり全力射撃してみました。……。ん? あれ、子供がいない。すっかりロンリーハートになって家に帰ることにした草野大悟ですが、さっきの幼児が川で溺れているのを見て、理性が飛びました。待ってろ坊や、おじさんが今助けるからね。ピストルを置いて、川に飛び込む草野大悟。ジャバジャバ。しかし、何ということでしょう。せっせと泳いでいる草野大悟の前で、その幼児がスックと立ち上がったではありませんか。えーと、自分も立ち上がってみると、とても溺れようもない浅い川。ってことは、罠。慌てて自分のピストルを取りに戻ろうとした草野大悟ですが、待ち構えていた若山先生にサクっと斬り殺されてしまったのです。もちろん、拍手をした幼児が大五郎なのは言うまでもありません。さすが冥府魔道に生きる親子。

パカラパカラ。左門が馬を走らせていると、草原の中に乳母カーを発見しました。あれはもしや。馬を降り、草原を歩くと、ギロリ。案の定、こちらをにらんでいる幼児がいましたよ。うっ、怖い。そして、ヌーっと若山先生も登場。南無三。こうなれば戦うしかない。小柄(こづか)を飛ばしつつ、飛燕のごとく斬りかかる左門。しかし若山先生は小柄を軽く胴太貫で弾き飛ばし、そのまま大ジャンプです。ぴよーん。そして空中から左門の脳天めがけ、胴太貫をシュート。バヒューン。ザクっ。胴太貫は左門の脳天を貫いて、まるで一輪挿しのように突き立っているのでした。

六兵衛、左門を失った代官の山形勲は決意しました。やらなければ、こちらがやられる。だから、打てる手は全部打つ。早速、部下を動員し、江戸の柳生にも急使を立てます。ついでに隣藩にも応援の依頼。なあに数百人の人数を集めれば、いくら拝一刀といえども勝てぬ相手ではない(と思いたい)。さっそく、弓隊、鉄砲隊、などが集結。隣藩からも、腕自慢の渡り徒士などがやってくるようですよ。

高札に書いてあった時と所を見て、指定の地蔵が原にやってきた若山先生と大五郎。なんということでしょう。見渡す限り、敵、敵、敵の大群です。「大五郎、冥府魔道に入ったぞ」というと、大五郎も何かを感じたのでしょう。キリリとした表情です。そんな様子を物陰から見ているのは浜木綿子と、腹心の子分たち。「だめだい、とてものことに勝ち目はねえ」「しかし、なんで進んでいくんだい」、口々に言う子分たちをよそに、浜木綿子はじっと熱視線で見守るのです。

射程距離に入った。そう見て取った山形勲は命令します。「弓隊っ!」。それに応えて、弓隊が一斉射撃を開始しました。ひょう。ひょう。しかし若山先生は断固として言います。「大五郎っ」。すると大五郎が乳母カーのスイッチをポン。カシャン。おお、乳母カーに楯が出てきましたよ。これで矢なんかへいちゃらです。ぐぬぬ、怒りに震える山形勲は続けて命令。「鉄砲隊っ!」。しかし「撃てっ」と命令した時、先に動いたのは乳母カーでした。ガチャリ。カバーが外れたかと思うと、乳母カーからは12本の銃身を持つガトリング砲が。ズガガガガ。はい、鉄砲隊は壊滅です。さらにイキオイに乗った若山先生は手りゅう弾をひょいひょい投げ始めました。どかーん。うわああ。どっかーん。ぎゃああ。まさに阿鼻叫喚とはこのこと。さらに乳母カーの仕込み槍を片手に敵の中心に突っ込んでいきます。縦横無尽。突いて、斬って、ついでにライダージャンプからのキックをかましたりと、まさに暴風のごとく荒れ狂う若山先生。気づけば、残るは代官の山形勲だけです。

しかし、山形勲だって伊達に山形勲じゃありません。エラいんですから。すちゃっ、ピストルを取り出し、馬上から撃ちはじめましたよ。焦って、右に左に逃げ回る若山先生。しかし、両手に持っていた刀を撃ち落とされ、絶体絶命。バーン。とうとう倒れてしまいました。ふふふ、これで最後だ。ゆっくり照準を定め、引き金を引く山形勲。カチリ。なんてことでしょう。弾丸切れです。と、その時、山形勲は見ました。やっつけたと思っていた若山先生が、両手に2丁拳銃を持っているのを。ズババババ。若山先生は気持ちよさそうに全弾を山形勲に叩き込むのでした。

その時、遠くの崖上に、柳生の援軍が到着しました。「よくぞ血路を開いた。よくぞ生き延びた、拝一刀。だがうぬら親子に明日はない。我ら柳生一門の手から逃れることはできぬ。てやーっ」。言うだけ言うと、クルリとUターンして、江戸に帰っていく柳生さんたち。いや、多分、若山先生に聞こえてないし。そもそも、間に合ったとしても、そんな崖の上から何をする気だったの。

そんな柳生さんの負け惜しみを知ってか知らずか、大五郎はピッと一方向を指差しました。そう、彼方から、これも遅刻組の加藤剛がやってきたようです。「重ねてお立合いを願う」と言う加藤剛に若山先生は答えます。「しかと承知」。なんで今回は勝負を受けるのか。そのヒントは残り上映時間。そろそろ終わりですからね。

「参る」と刀の鯉口を切る加藤剛。若山先生もゆっくりと抜刀します。すーっ。刀をまっすぐ体の正面に構える加藤剛に対して、若山先生は刀を持った手、そして反対の手も大きく斜め上に構える変わったスタイル。そう、強いて言えば「お客様は神様ですby三波春夫」剣法でしょうか。しばし静寂。そして、チャキン、ジャキーン。刀の当たった音がしたかと思うと、背中を大きく切り裂かれた若山先生の姿が。しかし、意外と元気な若山先生はゆっくりと振り向きます。そして、それを見ていた加藤剛が、これまたゆっくりと下を見ると、なんと若山先生の胴太貫が自分の体を貫通しているのでした。

貫通した刀を抜けば、そのまま加藤剛は死ぬでしょう。しかし刀を抜こうとした若山先生に加藤剛は言います。「しばらくっ。伺いたいことがござる」。そして、いきなり自分語りのスタート。かつて、お駕籠衆として、大名の駕籠脇で護衛するのが役目だった自分。そんなある日、テロリストたちが駕籠を襲ってきたそうです。たぶん、桜田門外の変みたいなのを想像すればいいんでしょう。そこで、自分は考えた。このまま駕籠脇にいてもじり貧で殿を守りきることはできない。ならば答は一つ。敵中に突撃して、一人でも多く斬る。結果として、敵は壊滅し、殿の命は守られた。ところが、駕籠脇を離れた自分はすっごく怒られちゃった。え、これってどうなのさ。「あの時、たとえ不利と知ってもお駕籠脇を離れず、主君を守って斬り死にすることが武士道の真か。武士道とはいかに生きるかではなく、いかに死ぬかということでござるか。拝どのお答えくだされ」。

「お答えくだされ」とお願いされちゃった若山先生はひと言で答えます。「真の武士道とは死をもって生きることでござる」。「死をもって生きる?」と困り顔の加藤剛。ただでさえお腹を刀が貫通してるんだから、ムズカシイことワカリマセン。これはマズイと思ったのか若山先生は言い直します。「それがしが、もしそこもとの立場だったら、やはり斬って出る」。ぱあっ。加藤剛の顔がうれしさに輝きます。「それを聞き、拙者、心が晴れもうした」。よっしゃ、じゃあ切腹します。もし良かったら、介錯なんかしてもらえないかなあ。ああん、図々しい子って思われないかな。ドキドキしながらお願いしてみる加藤剛。「公儀介錯人であったご貴殿に、拙者ごとき者が介錯を願えるだろうか」。答は……(ドキドキハート)。「真の武士を知る者に隔てはござらん。介錯つかまつる」。やったあ。えいやっ。ポーン。飛んでいく加藤剛の首。ここでスゴイのはカメラが加藤剛の首の視点になること。宙を飛び、ゴロンゴロンと転がっています。そして、転がっている首が映ります。何とはなしに加藤剛の首が笑っているように見えるのは、若山先生に首チョンパしてもらえたからでしょうか。

そんな一部始終を物陰から見ていた浜木綿子は、飛び出して若山先生の後を追おうとしています。きっと先生のワイルドさにハートがズッキューンに違いありません。しかし、そんな浜木綿子を必死で止める子分の伊達三郎たち。「元締め、行っちゃいけねえ」「あれは人間じゃねえ。化けもんですぜ」。そんな子分たちの言葉を真に受けるあたしじゃないけど、確かに子分たちを捨てる事もできない。ウルウルしながら若山先生を見つめる浜木綿子です。

ざっくり斬られて、片肌脱ぎのランボー状態の若山先生は乳母カーを押して歩いていきます。おや、どこかから歌が聞こえてきました。「♪夜烏が鳴いたあ。誰かが死んでるぜえ♪」。これは若山先生ご自身の歌ですね。「♪子連れがやってくるぜえ。くるぜえ。くるぜえ♪」。自分でフェイドアウトなんかしちゃう律儀な若山先生です。


ポイントというか見どころは3つ。

まずは、乳母車の飛躍的な重武装化。今回はガトリング砲まで備えていますから。おそらく報酬の500両は全部、武器代に消えているんでしょうね。あと、何気にそれを操作する大五郎の顔つきも渋くてステキです。

そして、忘れちゃならない若山先生の殺陣。これはいつもながらほれぼれするデキです。日本刀を持たせたら日本一。つまりは世界一ですからね。1作目のような「超」高速な殺陣は見つけられなかったものの、どこをとっても一級品でした。

さらに見どころは、ヒロインの浜木綿子。基本的に香川照之のお母さんくらいの認識しかなかったのですが、いや、お見それしました。何ていうかキレイ。それも自然なキレイさではなく、徹底的に人工的な美です。と、書くと、まるでケナしているみたいですが、そうではありません。うーむ、そう「大衆演劇」的な美とでもいえばいいのかもしれません。古くは梅沢富美男、最近では早乙女太一や橘大五郎につながる計算されつくした美です。スッキリした目元に、ミリ単位の正確さで飛ばされる視線。べらんめえ口調からおしとやか口調まで完璧なエロキューション。とても37歳には見えませんよ。いやあ、あの顔、あの声で「次はぶりぶりだっ」とか言われてみたい。

あと、草野大悟を倒すヤリクチとか、卑怯未練な行動をしまくるくせに、加藤剛には「真の武士とは」を語っちゃう拝一刀。さすが冥府魔道に生きるだけあって、好きです。これからも、もっともっと卑怯になって欲しい。

*キネ旬データベースなどでは小夜子になっていますが、映画クレジット表記では小代子でした

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若山富三郎 公儀介錯人 ガトリング砲 早乙女太一 クレジット表記 べらんめえ口調 梅沢富美男 生きること サウンド・オブ・ミュージック 桜田門外の変
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