いくらおにぎりブログ

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【映画】春雪の門

2008-06-25 | 邦画 さ行
【「春雪の門」佐伯幸三 1953】を観ました



おはなし
柔道に青春をかける龍太郎は、博徒に襲われる伯爵令嬢を助け……

いったい何本あるんだと思っちゃいますが、菅原謙二の柔道物です。山本富士子と若尾文子がそろい踏みですが、今回のヒロインは山本富士子でした。

ポクポク。ポクポク。馬車が進みます。バシャっ。車輪の跳ね上げた泥水が、乱暴そうな博徒たちにかかっちゃいましたよ。「待て、待て。待たねえか」と馬車を追いかけてくる博徒たち。馬車に乗っているのは、金持ちの東小路(高松英郎)と仙石伯爵令嬢の真理子(山本富士子)。「君たちは東小路と知ってのことか」と威張る東小路ですが、なあに博徒はそんなことを意に介しません。御者はとっとと逃亡。引きずりおろされた東小路も、スタコラ逃げてしまうのです。

下卑た笑いを浮かべつつ、「おい姉ちゃん。お前も降りろよ。いいじゃねえか」と真理子に迫る博徒たち。ああん、どういたしましょう。「君っ!」。おっ、腰に手を当てた青年が立っています。「乱暴はやめたまえっ」「何を。おっ、貴様は八丁荒らしの龍太郎」。突然現れた、凛々しい姿の杉龍太郎(菅原謙二)に、ポーッとする真理子のアップ。「貴様たち、博打ばかりかゆすりもやるのかっ」、エイッ。次々と投げ飛ばされる博徒たちですが、驚いた馬が走り出してしまったのです。パカラッ、パカラッ。ああん、どういたしましょう。困っている真理子ですが、駆けすがった龍太郎がインディ・ジョーンズばりに馬車にぶら下がり、御者台につきましたからひと安心。「びっくりなすったでしょ」と振り返る龍太郎のサワヤカ笑顔に、恥じらいまくる真理子。もう完全にホレホレ目線です。ああん、どういたしましょう。

仙石伯爵のお屋敷に馬車は着きました。婆や(浦辺粂子)とともに、家にお上がりくださいと勧める真理子ですが、龍太郎は固く辞退です。「じゃ、せめてお名前なりと」という声に、テレくさそうな龍太郎は、ドドドと走っていってしまうのでした。後に残されたのは、忘れ物のメダル。それを胸に、憧れの視線をいつまでも向ける真理子です。

そんな真理子が、部屋で杉の残したメダルを撫でていると、お父様の仙石伯爵(信欣三)がやってきました。東小路がお前を欲しいと言っている、と言う伯爵に真理子はキッパリ答えます。「わたくし、すいませんが、お断りしていただきとう存じます」。困ってしまう伯爵。というのも、東小路に金を借りまくっていたのですから。ああん、どういたそう。

さて、紘道館では問題が出来してしまいました。先日の復讐とばかりに、博徒から果たし状を突きつけられた龍太郎が、勝手に私闘をしてしまったのです。兄弟子の三国が懸命にとりなしますが、先生の矢野正五郎は厳しい処断を下します。「杉。紘道館柔道のの精神は人間修行の道じゃ。覆水は盆に帰らぬ。紘道館の不名誉をあえてした者は、その責任を取らねばならぬ」。泣きながら道場を去る龍太郎。果たして彼の行く場所は、どこに。

と、ちゃんと兄弟子の三国が紹介してくれて、行く場所は決まっていました。下谷にある大工の銀作の家です。行った早々、娘のおせい(若尾文子)の行水姿を見てしまったりする龍太郎ですが、おせいは、そんな龍太郎に好意を抱いたようす。それというのも、柔道以外はてんで不器用で、でも、何事も「すまんです」と言いつつ、一生懸命な龍太郎。ああん、どうしちゃおう。

部屋で琴を弾いている真理子。でも、心は上の空。ぽわわーん。腰に手をあててスックと立った、あの凛々しいお姿。御者台から振り返った時の、あのサワヤカな笑顔。思い出しただけで、顔が赤らんでしまいそうです。と、そこに婆やが戻りました。「婆や、杉さまにお会いできて?」「それが紘道館には、もういらっしゃらないのでございます」。ガーン。さらに、そこにやってきた東小路にまで言い寄られて、もう真理子の気持ちは……ああん、どういたしましょう。

「すまんです」。また、そんなこと言ってるよ、このスットコドッコイは。懸命にモーションをかけても、鈍感極まりない龍太郎に、イライラするおせい。「ぼくは柔道を離れては生きられない。紘道館は、ぼくの魂の道場なんだよ」。だからぁ、そんなことはいいって。あたしを見なさいよ。どうも、若尾文子の美貌をもってしても、菅原謙二のハートはゲットできないようです。

町を歩いている真理子と婆や。あっ、杉さまだわ。「婆や」と声をかけると、婆やが早速、龍太郎に声をかけてくれました。婆やの後ろでモジモジしている真理子。なんだか、テレつつヌボーッとしている龍太郎。おお、会話はないけど、二人は馴染んでいるようです。「お嬢様、お食事にでもお誘いしては」と言われ、コクっとうなづく真理子。そのまま、料亭に舞台は移ります。

たまたま、同じ料亭に来ていた東小路が、三人の姿を目撃してしまいました。ぬぬぬ、真理子さんめ、ぼくちんというものがありながら。早速、子分の増田に龍太郎排除を命令する東小路。「琉球生まれの唐手にはかないますまい」と増田は自信たっぷり。これはタイヘンですよ。

そんなことを知らない真理子はモジモジ。龍太郎はボケーッ。仕方ない、婆や一人で喋りまくっています。「ねえ、杉さま。お嬢様は今、とても困ってらっしゃいますの。お父様から気の進まぬご結婚を勧められております」。えーと、ほら、お父さんが勧める結婚ならいいんじゃないですか。適当なことを言う龍太郎に、真理子は「いいえ、わたくし死んでもイヤなのです」と、熱視線で見つめます。「杉さま、教えてくださいませ。わたくし、いったいどうすればいいのでしょう」。相変わらずハッキリしない龍太郎。これじゃ、埒が明きませんわ。こうなったら、
「いやっ。お嬢さんなどと。ねえ杉さま、お願い。真理とお呼びになって。九段坂で初めてお目にかかったあの日から、真理は杉さまをお慕い申しておりました」。「すまんです」と逃げ出す龍太郎。もう、杉さまったらテレ屋さんなんだから。ああん、どういたしましょう。

むむむ、と悩んでる龍太郎。と、そこに博徒たちといっしょに、なんだか強そうなのがやってきましたよ。琉球唐手の使い手、美奈島金城です。試合を申し込む金城に、「しかし、唐手と柔道では勝負になりませんよ」と断わる龍太郎。よーし、チェーイ。壁を叩き割って、「唐手が恐ろしいのか」フフフ、ハハハ、と挑発する金城ですが、龍太郎にとってそれどころじゃないんですって。

悩みつつ、寝ている龍太郎。と、そこに今度はドスを持った男が襲ってきました。えいっ、と投げ飛ばす龍太郎。なんと、襲ってきたのは、大工の銀作の一番弟子です。どうも、おせいが龍太郎にホレているので、嫉妬に駆られて襲ってきたもよう。「おめえを殺して、自分も死ぬつもりだった」とか言っていますが、さすがに男と無理心中なんて、まっぴらごめんです。いやいや、おせいとは何でもないからさ、と懇切丁寧に説明をして、お引取りいただきましょう。

お嬢様の真理子が、ひとり人力車に乗って、下谷までやってきました。もちろん、下谷なんて身分違いの場所、普通だったら怖くてムリですが、そこは龍太郎にひと目会いたい、その気持ちが真理子を駆り立てたのです。しかし、やっぱり下谷ですからね。人力俥夫に5円という法外な値段を吹っかけられて、困り果てる真理子です。ああん、どういたしましょう。と、そこにキップのいい声が。「箱根の山んなかじゃあるまいし。雲助の真似は止めた方がいいよ。20銭もあればいいんでしょ」。おせいです、おせいがピンチを救ってくれました。「あのぅ」と、この親切なおせいに、すがりつく真理子。杉さまが、ここらにいませんか。ピクっ。な、なにおう。恋敵の出現に、知らないよ、とトボけたおせいですが、やっぱりウソはつけません。「ついてらっしゃいな。教えてあげるわ」。一方、真理子も、このおせいが、龍太郎と同居していると気づき、「あのぅ。わたくし自分のことばかり考えていました。あなたと杉さまのことを……」とショボーンです。

しかし、肝心の龍太郎は書置きを残して家出。えーと、二人ともフラれた?そろって、ドヨーンです。「あの人、今ごろ信玄袋を片手に、どこかで、この花火を見ているんだわ。ノンキな人」とおせいは、夜空に咲く花火を見つめます。いったい、龍太郎はどこに行ってしまったんでしょうね。

はい、意外と近くにいたようです。友達の代わりに、煮込み屋台でアルバイト中でした。柳橋の粋な芸者、えん彌姐さん(村田知英子)に好かれたり、けっこう楽しそう。というか、なんでコイツばっかり、こんなにモテルんだか。

真理子は部屋でウジウジしています。「あなたさまが恨めしくてなりません。あの日、どうして真理を抱いてはくださいません。真理は女。恋に生きとうございます」、そう言いつつ忘れ物のメダルを胸にクネクネするのでした。と、そこにお父さんの伯爵登場。留守中に料亭で龍太郎に会っていたことを知り、怒っています。「お前はわしの留守中、何をしていた。身勝手なまねは許しませんぞ。東小路への体面もある。わしは明日、紘道館に行ってくるからね」。

煮込み屋台に先生の矢野正五郎、兄弟子の三国がやってきました。恐縮する龍太郎に先生は言います。「杉、おまえ仙石伯爵の令嬢の危難を救ったそうじゃないか」。どうも、伯爵は礼を言いつつ、暗に文句をつけてきたようです。「杉、柔道の方はどうだ。忘れられんだろう。帰りたくなったら、いつでも帰って来い」、そう言って去っていく先生。もちろん、このままでは単純な龍太郎にメッセージが伝わらないので、兄弟子の三国が補足します。「杉、先生の言うこと分かるな。仙石家には東小路が必要なんだ」。えーと、うーん、ああ。つまり破門を解いて欲しかったら、お嬢さんを諦めろ、ということですね。

雨に打たれつつ、むむむ、と悩んだ龍太郎。仙石家に向かいます。龍太郎が来たと聞いて、喜びに顔を輝かす真理子。しかし、龍太郎は言うのです。「お嬢さん、ぼく、ぼくはいかん男です。失策ばかりしています。ぼく、あの時、すまんことしました。男らしくない態度でした。申し訳ありません」「すまんです。下谷で厄介になってた大工の娘さんと婚約してたんです」。一瞬、グラっとした真理子ですが、愛する男の表情を見抜けないわけもありません。「ウソです。あなたはウソを仰ってます」「杉さま。何かワケがあるなら、どうぞ仰ってくださいまし。真理は聞き分けのない女ではないつもりです。もし、あなたの仰ることが正しければ、真理はあきらめます。でもそのようなウソを仰られたのでは、真理は、真理は」。

結局、トボケとおした龍太郎が、煮込み屋台でアルバイトをしていると、そこに増田の息がかかった博徒と唐手家の金城がやってきました。おいおい、今日のオレは何をするかわからないぜ。とりゃー。片っ端から、投げまくる龍太郎。しかし、ピストルには勝てなかったようです。ズドン。どさっ。逃げろー。

肩を撃たれて倒れている龍太郎を見つけたのは、柳橋のえん彌姐さん。「はっ!杉さん。これはいけない」。命を取りとめた龍太郎は、そのままえん彌姐さんの家で養生することに。えん彌姐さんは、東小路の手先で金持ち証人の増田の世話を受けている身でしたが、そんなこと関係ありません。むしろ、杉さんを狙った増田なんて、大キライだよ、イーっだ、な気分です。

しかし、えん彌姐さんがラブラブ気分で龍太郎の世話を焼いているところに増田がやってきてしまいました。「あっ、貴様」と怒る増田。しかし、とりあえずは龍太郎そっちのけで、増田とえん彌姐さんの言い争いです。てめえ、浮気しやがって。ヘン、金を借りてるからって偉そうに。なにをーっ、金返せすぐ返せ。返してやるよ、ああ返すとも。本当だな、本当だな。なんか、そんな会話の後、ドスドスと増田は帰っていったのです。一転、しおらしげに「杉さん、愛想つかした?」とカワイイえん彌姐さん。「ねえ杉さん、あたしゃ、どんなことがあっても、あんたが元通りになるまで、返しゃしないから」。ええと、龍太郎の意見は誰も聞いてくれないみたいですね。ぐっすん。

増田が龍太郎の所にやってきて、新聞を見せます。
「世界的拳闘選手ルドルフ・マリク来朝 我国柔道界に試合をいどむ」
「ぼくにやれと仰るんですか」と聞く龍太郎。賞金はいっぱい出すよ、そうすればえん彌の借金も返せるんじゃないかい、とニヤニヤ笑いの増田。こ、これは。別にえん彌姐さんに惚れているわけじゃありませんが、"義を見てせざるは勇なきなり"とも言います。まさに、龍太郎の男が試されているのです。ここで逃げたら龍太郎じゃありません。蛇太郎。いえ虫太郎です。

兄弟子の三国は、試合をやったら紘道館を辞めることになるぞ。でも、やるからには全力でやれ。と、応援してるんだかたしなめているんだか、良く分からないことを言います。でも、龍太郎は頭を使うことはどうせ苦手です。もうこうなったら、やるしかありません。

そして迎えた試合の日。おせいは職人と結婚してしまい、今日、お嬢様の真理子も東小路に嫁ぐそうです。しかし、龍太郎は、今この瞬間。ただ戦うマシンになるのです。

試合の勝敗はどちらかが気絶するまでという、なかなか苛酷なもの。そして龍太郎は苦戦気味。なにしろ畑違いのボクサー相手で、なおかつ相手はグローブの下にメリケンサックを仕込んでいるのですから。ダウン。龍太郎はダウン。

その時、真理子もまた、結婚式の後のパーティでダウンしていました。ごふっ。なんだか、血を吐いています。露骨にイヤな顔をして逃げ出す東小路。どうやら、真理子は結核か何かにかかってるようです。「東小路さまもあんまりだ」とメソメソする婆や。「ねえ、真理子さん、負けちゃイヤ、強くなってね」とおせいは励ましています。そして、「許してくれ。わしが悪かった」と謝っている仙石伯爵。なんだか、このまま死にそうなイキオイですが、そんなことはないので安心してくださいね。

さて、試合に戻ります。メリケンパンチに何回となくダウンを喫した龍太郎。もうダメだ。もう動きたくない。そんな龍太郎の脳裏に真理子の声が響きました。「生きてください」。体が動くような気がします。「生きてください。杉さまっ」、ふっかーつ。どりゃーっ。ボクサーを投げ飛ばす龍太郎。二回、三回と投げられ逃げ腰のボクサー。そして、だぁーっ。気合と共に、ボクサーをより高く、より遠くに飛ばす龍太郎。ボクサーはそのまま、リングの外にぴゅー。ばたんきゅう。失神しました。

そのころ、試合の結果を待たずに、えん彌姐さんを手篭めにしようとしていた増田。そこに、試合を終えた龍太郎が飛び込んできました。投げつけるように賞金を渡した龍太郎。これでえん彌姐さんの借金は帳消しです。まあ、そこで終われば平和ですが、そうは問屋が卸しません。博徒たちが、ドスをきらめかせて襲ってきました。もちろん、龍太郎は快調に投げ飛ばしていきます。「あっ、危ない」、ダーン。龍太郎を庇って撃たれたえん彌姐さん。もう、こうなったら、目に入るもの全部投げてやる。とりゃ、とりゃ、とりゃあ。最後に残ったのは増田ひとり。

「ひと目で社会の害虫と分かる博徒どもはまだいい。しかし、貴様のような紳士の仮面を被った悪魔は……」

てやーーーっ。裂帛の気合と共に増田を投げる龍太郎。増田は、窓を突き破って、そのままどこかへ飛んでいくのです。

ここは海岸。真理子の転地療養先です。結局、伯爵は屋敷を売って田舎に戻り、東小路から離縁された真理子は、こうして婆やと共に寂しい海岸を見ながら、体を癒しているのでした。「こんなことなら、最初から杉さまと」とグチる婆やに、「婆や、もう言わないで」と、やはり悲しそうな真理子。と、そこにおせいに連れられ、龍太郎がやってきましたよ。下を向いてテレている龍太郎に、真理子は一歩また一歩と近づいていきます。嬉しくてメソメソしている婆や。寂しそうに笑うおせい。やがて、並んだ龍太郎と真理子は、海岸をどこまでもどこまでも歩いていくのです。


なんだか、龍太郎が外人と対決するところなどは、黒澤監督の「続 姿三四郎」っぽいですが、それもそのはず。原作者が一緒ですから。講道館を紘道館に、嘉納治五郎を矢野正五郎に置き換えた、この一連の柔道モノは、まあ有体に言ってしまえば、全部いっしょ。柔道最強。柔道家モテモテ。ということで。

それにしても、菅原謙二は、自身が主役の柔道モノでもイヤミがなくて素晴らしいですが、若尾文子や山本富士子、京マチ子などの助演に回っても、うまく女優さんを引き立てることのできる、いい俳優さんでした。川口浩、田宮二郎が台頭してくるまでは、まさに大映東京のベスト男優と言っても過言ではありません。

高嶺の花・山本富士子と低嶺の花・若尾文子は、そのキャスティングも納得な感じ。これが逆だと、まあ山本富士子はそれでもケナゲな娘っぽくてイケそうですが、高貴な伯爵令嬢の若尾文子ってギャグですもんね。

そんなこんなで、手堅い話に適切なキャストですから、安心して観られる娯楽作品でした。







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