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【映画】あゝ決戦航空隊

2007-06-30 | 邦画 あ行

【「あゝ決戦航空隊」山下耕作 1974】を観ました



おはなし
特攻生みの親である大西瀧治郎の苦悩を描きます。

笠原和夫渾身の脚本で描かれた「特攻」をテーマにした一台巨編です。メインキャラクターを大西瀧治郎、そして小園安名に絞り込んだおかげで、密度の濃い作品に仕上がりました。

戦局が悪化した頃。いよいよ米軍の攻勢はフィリピンに届こうとしています。ここは日本にとっても、南方の資源地帯と本土を繋ぐ生命線。ここを失えば、日本は遠からず失血死せざるを得ません。ここは敗勢著しい日本海軍も、残存勢力を集中して、乾坤一擲の大勝負をかける決意です。

そんな折、フィリピン防衛を任務とする第一航空艦隊司令長官になった大西瀧治郎(鶴田浩二)は、親補式に臨むことになりました。大西の脳裏には、大西に熱い意見をぶつけてきた男たちの顔が浮かびます。

特攻するしか道は無い、と語った千代田艦長の城大佐(松方弘樹)や、館山神雷部隊の岡村大佐(中谷一郎)、それにあくまで特攻に反対し続けた小園安名中佐(菅原文太)などの顔です。

嶋田軍令部総長(内田朝雄)に特攻の是非を問う大西ですが、豊田連合艦隊司令長官(大木実)に聞け、と逃げられ、その豊田にも逃げを打たれる始末。結局は「特別攻撃を取るにせよ、取らんにせよ、一切小職にお任せいただきたい」と米内海軍大臣(池部良)に宣言せざるを得ないのでした。

腹心である児玉誉士夫(小林旭)を引きつれフィリピンのクラーク基地に乗り込んだ大西は、稼働機がほとんどない現実に愕然とします。
なにしろ戦艦大和、武蔵などがレイテ湾に突入して、米軍の補給物資を焼き払うという捷一号作戦を成功させるためには、航空攻撃で米軍空母の甲板を一週間は使用不能にせねばならなかったからです。

ここに至って大西の腹は決まりました。早速、猪口先任参謀(室田日出男)や玉井中佐(梅宮辰夫)を呼びつけて、特攻攻撃の腹案を話す大西。とりあえず指揮官には海兵出身の関行男大尉(北大路欣也)を選び、特攻攻撃が実施されることになったのです。

「皆は既に神である。神であるからもはや欲望が無いとは思うが、もしあるとすれば、それは自分の体当たりが無駄では無かったかどうか、知りたいことであろう。しかし皆は長い眠りにつくのであるから、それを知ることもできぬし、知らせることもできない。しかし、後は自分がやる。皆の成果を見届けて、必ず陛下にお知らせ申し上げる。その上で、改めて自分が皆に報告に行く。しっかり頼む」

栗田艦隊がレイテ湾に突入しました。武蔵が激しい攻撃を受けて沈没したものの、ハルゼー率いる機動部隊は北方の小沢囮艦隊に誘致され、レイテ湾は僅かな護衛兵力のみです。

関行男大尉率いる神風特別攻撃隊敷島隊を始め、セブ基地から出た大和隊、若桜隊、クラーク基地から出た朝日隊、山桜隊、ダバオ基地の菊水隊などが、続々と敵艦に体当たりをしかけます。

米軍は予想もしない戦法に混乱しています。今こそチャンス。しかし、栗田艦隊は武蔵の沈没に恐れをなしたのか、レイテ湾を目前に逃げ帰ってしまったのです。

もはや勝機は去りました。フィリピン防衛はならなかったのです。飛行機が無くなり、大西以下全員は陸戦隊となりました。空襲の際にも、飛行場に立ち尽くす大西。一刻も早く敵弾にあたって死にたいかのようです。しかし連合艦隊から、司令部は台湾に転進しろ、との命令が届きました。「まだ、まだ死ねんのか」とつぶやく大西。16戦区指揮官の佐田大佐(待田京介)から「長官、あなたは卑怯者だ」となじられた大西は、バカモノとビンタをしますが、内心は複雑なようです。

台南基地で神風特攻隊を再編成する大西。人命の損耗を恐れるアメリカは、最後には必ずへこたれると考える大西は、99回敗れても、最後の1回に勝てば「勝ち」だ、と部下たちに言い聞かせます。「もっとも効果的に敵を殺せ。もっとも効果的に死を選べ」と激烈な調子で訓示をするのです。しかし内心では「特攻なんて、あれは統率の外道だよ」とつぶやき「我が声価は棺を覆うて定まらず、百年の後、また知己なからんとす」と歌を残すのでした。

この頃になると、特攻は公式の戦術となりました。しかし、熟練パイロットを失い、米軍も対策を講じたため、レイテの時の突入率が80パーセントだったのに対して、沖縄ではもはや50パーセントにまで落ち込んでしまいました。もちろん批判は全て、特攻の創始者として喧伝された大西に向かうのです。

さて、ここは厚木の302航空隊。ここは首都防空の要として、改田中尉(渡瀬恒彦)や荒井大尉(黒澤年男)などといったパイロットたちが連日、B29を迎撃しています。しかし、こちらにも被害は出ます。荒井大尉が撃墜され、無残な肉塊と化したのを見た改田中尉はヤケになっています。しかし、そんな中尉をなだめたのは司令の小園安名(菅原文太)でした。
「わが302空は特攻隊ではない。命がある限り敵と戦う。それが任務だ」

大西は軍令部次長になりました。自宅は空襲で丸焼けで、宮中参内のための一種軍装もない状態。しかし妻(中村玉緒)を官舎にいれることもせずに、軍務に精励します。
実験により、250キロや500キロ爆弾を抱いての特攻では、敵艦のアーマーを貫通できないという実験結果が出ても、「敵の指揮を鈍らせることはできる」と精神論に大きく傾いてしまった大西です。そのうえ、敵飛行場の強襲着陸作戦に傾くなど、かなり迷走ぎみ。そんな大西を見て米内大臣は激怒しますが、もはや大西の心には叱責の声は届かないようです。

「銅だよ、銅」と腹心の児玉誉士夫を呼びつけて命じる大西。特攻機の電磁回路に使う銅が足りないと言うのです。被災地の電線を集めれば銅が取れるという児玉の言葉に、早速一緒に出かける大西。児玉子飼いの岡村吾一(山城新伍)や、関東関根組組長(安藤昇)と言った戦後も暴力団として活躍(っていうのもヘンですが)する面々を使って、人海戦術で銅を集めまくります。そんな折、児玉が大西に言いました。

「国民はだいぶ疲れてますよ。まだ戦争を続けると言うなら、思い切ったことをせにゃいかんですな。天皇陛下おん自ら陣頭に立ち、国民や兵卒と同じ暮らしをし、戦っていただくことです」

何も言い返せない大西は、ただ「それは言うな」と答えるだけでした。

さて、物資不足は深刻化。暴動や革命を恐れた首脳部は「国体護持」という美名のもとに終戦工作を始めました。
そんな状況下で、怒り出したのが小園(菅原文太)。早速、横須賀鎮守府司令長官(金子信雄)の元に殴りこみ(あっ、怒鳴り込み)、物資を出せと強談します。しかし、長官は行くときはわしも行く、今は我慢せい、と言うばかりです。

厚木に大西が視察にやってきました。早速、不平不満をぶちまける小園。「特攻は必勝の道ではなく、必敗の道です」とまで言い切りますが、大西はただ「徹底して負ける。そこまで行き着いたら、誰も逃げ隠れはできんだろう」と答えるのです。ここでいう「誰も」が誰を指すのかは、畏れ多いことなんですが。

いよいよ敗戦直前。ソ連軍がソ満国境地帯に集結を始めました。児玉から、米内大臣の一派が終戦工作をしていると聞いた大西は、最高戦争指導会議に乗り込みます。ここは君の来るところではないと米内に怒られても一歩も引かない大西。阿南陸軍大臣(山本麟一)も大西のことを取り成します。

じゃあ、仕方が無いと別室で話し合う二人。ここで止めたら、特攻で死んだ英霊はどうなる、という大西に「英霊に報いるために特攻を出す。その霊に報いるために、また特攻を使う。果てしの無い滅亡の道ではないか」と答える米内。日本民族の精神を守るため、と言う大西の言葉も「戦争は現実だ」と一蹴です。大西はただ、「生きてる者も大切でしょうが、死んだ者の魂も考えてやらねば、国家の責任は果たされません」としか言えないのでした。もう、この段階で大西は死に魅入られてしまっているのでしょう。というか、最初の特攻を送り出したときから、すでに死んでいるのかも知れません。

いよいよ終戦の聖断が下りました。宮様を動かして、最後の最後まで巻き返しを図った大西ですが、いよいよ打つ手もありません。
終戦派の迫水書記官長(江原真二郎)にまで「書記官長、何かいい知恵はないでしょうか、戦いに勝つ。何かないかなあ」と聞いてしまうほど憔悴しきった大西。米内にも「本日、この御聖断を天の声として受け入れてくれんか」と言われ、「分かりました。抗戦は断念します」と、とうとう答えるのでした。

ここに抗戦を断念していない男がいます。小園です。横鎮長官のところに怒鳴り込んだ小園は、聖断は君側の奸が出したもので無効。そんな命令は拒否するべきだ、と打電したと言い出しました。「非常識な。それではクーデター宣言ではないか」と言う長官は、かなり逃げ腰。小園は「あなたは軍人にあるまじき卑劣漢だ」と罵り、「さらばだ」と厚木に戻っていくのでした。そして、終戦の勅語が流れた直後に、わしと志を同じくする者はここに残れと、檄を飛ばすのです。

敗戦の翌日。児玉誉士夫が大西のところに駆けつけてきました。血まみれで横たわっている大西の姿を見て絶句する児玉。大西は腹を切ったのです。虫の息の大西に「おやっさん、児玉参りました」と挨拶をする児玉。「おお、部下との約束を果たしたぞ」「介錯は不要だぞ」と言う大西は、「なるべく長く苦しんで死んだほうがいい」と覚悟を示すのでした。

8月21日。小園は海軍病院に監禁されています。小園はマラリアの再発で人事不省になってしまったために、反乱計画は未発に終わったのです。寺岡中将(遠藤太津朗)に大西が自決したことを知らされても、熱で朦朧とした頭では理解できない様子。病室を抜け出した小園は、日本刀を振り回して、「大西次長どこですか」と絶叫するのでした。

そして、小園の部下の改田中尉(渡瀬恒彦)は飛行機を持ち出して出撃しました。海に突入して自爆する改田。まるで、親分の小園の代わりに死んでいくようです。

小園は病院の屋上に上がりました。降りろ、と喚く軍人たちに、小園は昂然と胸を張って叫びます。
「天皇陛下、お聞きください。あなたは過ちを犯しましたぞ。あなたのお言葉で戦争をお始めになったのに、何ゆえ降伏なさるのでありますか」

現在(1974年当時)でも、大西の住んだ官舎は渋谷の南平台に残っているそうです。荒れ果てた室内は、今も大西の恨みを残しているようです。
と、シーンは大西の切腹シーンに。作法どおりに、腹を横一文字に切る大西。そのまま、刃を縦に引き、真一文字の切腹です。そして、喉を突きます。大西の遺書がテロップで映し出されます。大西の顔のアップ、そして「大西瀧治郎 行年五十五歳」

いや、強烈な映画です。まず、199分という長丁場なのに圧倒されますし、そこに描かれるのは、どうみてもヤクザの抗争劇。

簡単に図式化すると、アメリカ組と抗争している広域暴力団日本組があります。組のトップは、まあ陛下ですね。そして、それを実質的に仕切っているのは冷静沈着な池部良の代貸し。日本組には参加の暴力団が多数ありますが、一つは内田朝雄が組長の特攻組。ここには一人一殺のポリシーを持つ鶴田浩二若頭がいて、小林旭や山城新伍などの命知らずを子分にしています。
もう一つは横須賀組で、組長は金子信雄。ここには厚木一家を預かる武闘派の菅原文太がいて、配下には渡瀬恒彦などのヒットマンをかかえています。
こんな日本組は、出口の無いアメリカ組との抗争に疲れ果てて、日本組組長の命を助けるという条件で、手打ちを図ろうとしています。こうなると収まらないのが、子分を鉄砲玉として多数殺した鶴田浩二。今さら手打ちだなんて、子分に顔向けできません。さらに、菅原文太だって、その時になれば俺が先頭に立つと金子信雄に言われ続けて、子分に苦しい戦いをさせていたのだから、これまた納得できないところです。

「仁義なき戦い」な感じで展開したストーリーが、最後には天皇の戦争責任に行き着くのは、まあ当然のこと。とりあえず、ぼく個人としては、昭和天皇が、立憲君主制下の「天皇」という立場へ自分を固く縛めていたので、単純な戦争責任は問えないと思っています。そもそも終戦の聖断じたいが超法規的行為だと思いますし。

しかし、シンプルに「オヤジの言葉で、わしらは抗争を始めたんじゃ」と言われてしまうと、これはまあ、そういう考え方もあるよなあ、と思わないでもありません。というか、それ以上言いようが無いですね。

この映画の題字は児玉誉士夫自身。そのためか、小林旭が児玉誉士夫を演じて、妙にカッコよく描かれているのはご愛嬌といったところでしょうか。ちなみに、この映画の2年後にはロッキード事件が起こります。







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