いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】あるべらえず うんべると

2006-08-14 | 邦画 あ行

【「あるべらえず うんべると-消え入ぬように-」関乃介 2004】を見ました。

おはなし
アルベラエズ・ウンベルト(以下「彼」)はコロンビアから出稼ぎにきた不法滞在者。
仕事も辞めてしまって、何をしたら良いか分からなかった「私」は、テニスコートで声をかけてきた人懐っこい彼の姿を偶然フィルムに収めます。以来、1997年から足掛け6年に渡って、彼の生活を追い続けたドキュメンタリー作品です。



監督の「私」は仕事を辞めて、なんとなくアパートの前にある畑を撮り始めたのがきっかけで、たまたま出会った彼もカメラに撮ることとなり、この作品を作ったそうです。そのため、執拗に畑のシーンがくり返し挿入されます。最初は、それを見てて違和感を感じました。何となくあざとさを感じたからです。そのうえ、カメラワークも稚拙だし、技術的にはヒドイ作品だなと。コロンビア人の彼の描き方についても同様で、お涙頂戴な作品なのかと、正直言って、見始めた時は期待もしていなかったのですが。

彼には、やがて日本人の彼女(「まや」さん)ができ、彼女もフィルムの前で積極的に語り始めます。記録が始まった翌年の1998年には彼のお兄さんも出稼ぎに来ますが、日本に馴染めず、すぐに帰国。まやさんと結婚した彼も、ペナルティのため1年間国外に出なければならないということで帰国します。ところがコロンビア地震。彼の安否も分からず心配する「私」や「まや」さん。

「私」のアパートには、お父さんの暴力に愛想をつかしたお母さんが転がり込んできます。

そんなこんなの2000年、ようやく彼が日本に戻ってきました。このころ監督の「私」がどんな生活状況だったのか、正直分かりません。いろいろあったんだろうと想像するしかありません。

そして時間はぐっと進んで2003年。彼は「まや」さんの元にはいません。どうやら、20歳の女性と浮気をしているようです。

「私」のアパートに転がり込んでくる彼。仕事がなかなか見つからない彼は、たまにアルバイトをするくらいで、ブラブラしています。「私」のカメラは求職中の彼の面接の場について行きます。
彼の新しい彼女の「ともみ」さん。そして、「私」のお母さんと彼が語る風景、さらには「まや」さんと彼の離婚話にまでカメラは肉薄していきます。

最初は、ヒドイものだったけど、ここらへんになると「私」の技術も格段に進歩しています。くり返し挿入される畑の風景も、もう違和感は感じません。老夫婦が世話をしている畑は、晴れの日、雨の日。子供が遊んでいたり、雪景色だったり、さまざまな表情を見せています。

最後、夜のファミレスをカメラがゆっくり舐めるように撮るシーンがあります。テーブルごとに、談笑する家族たち。まったく別個の人生を象徴するような風景。
シーンが変わって車を運転する彼。故郷のお姉さんに子供が生まれることを報告しているようです。彼の頬に伝う涙。クルマは病院に着き、恐るおそる自分の子供を抱く彼。

すごい作品です。NHKのドキュメンタリーなんかでは足元に及ばないほどの、圧倒的な現実がフィルムに焼き付けられています。

というのも、結局ドキュメンタリーは全て、撮り始める前に結果が決まっている部分がありますよね。それは「撮影の狙い」といった形で作品を縛りますし、多少のハプニングがあったとしても、やっぱり、それを修正していこうとする製作者の意図が働いてしまうものです。結局、糾弾や扇動さらには感動なり、何かしらの感情を見ている人に起こさせるための手段として、現実は消費されてしまうのです。

でも、この作品は違います。最初に意図があったわけでは無く、淡々と撮った素材が「たまたま」ドラマティックなものになってしまった。そして、「私」自身のテクニックも徐々に向上した結果、ラストに向けて大きな感動が盛り上がったということでしょう。

良くも悪くも、映画の神様が与えた「奇跡」のような作品であると、ぼくは思います。

 

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