いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】女であること

2006-11-07 | 邦画 あ行

【「女であること」川島雄三 1958】を観ました。


(バックは三輪明宏の若い頃)

おはなし
弁護士の佐山(森雅之)と夫人の市子(原節子)は、結婚して10年。まだ子供がありません。佐山家では、佐山が弁護している死刑囚の娘・妙子(香川京子)を引き取り面倒を見ています。そこに、ある日、市子の学校時代の友人の娘・さかえ(久我美子)が、市子を頼って家出してきました。穏やかだった佐山家に、風が吹きます。


どう評価しても、そこからスルリと出ていってしまうような川島監督。そのうえ、この映画はビッグネームがぞろぞろ出てくる文芸映画ですから、余計に評価が難しいです。もちろん、ぼくの場合、批評なんてできないし、単なる感想文の羅列しか書けないんですけど。

とりあえずお話は、原節子と森雅之の少し倦怠期を迎えつつある夫婦の物語。かつて恋人同士だった三橋達也に対する、原節子の心の揺れ。香川京子が恋人の石浜朗と同棲し別れる話。そして我がまま一杯に育った久我美子が周囲をかき回す様子などが描かれるのですが、ともすれば散漫になりそうな物語をがっちり力強く進めていく川島監督の手腕には呆れてしまいます。

最初期の川島作品は、「こんな映画で金を取ったのか」と唖然とするくらいのひどさだし、後期の傑作と呼ばれる作品群は、面白いんだけど癖が強いものが多く、いずれにしても極端から極端に振れやすい監督だと思っていたのですが、この映画については、とりあえずかなり正当派のスタイルで撮っているように思いました。

しかし、川島監督ですからね、映画の冒頭は丸山明宏(三輪明宏)の歌でスタートです。
♪女であること、それは育ち過ぎた子羊 エレガントな豚、帽子の好きなキツネ
♪女、それはとてもやらしい神様 とてもかわいらしい悪魔

などと歌っていました。

女であること原節子篇
原節子が演ずるのは貞淑な夫人。とは言え、昔好きだった男を見てときめいたり、久我美子が自分の夫にちょっかいを出すのを見て、嫉妬に我を忘れたりとなかなか忙しいです。全体的なイメージは成瀬巳喜男の映画に近くて、「驟雨」や「めし」「山の音」などの雰囲気が漂います。また倦怠期の夫婦が子供ができてハッピーエンドっていうのは原節子主演ではありませんでしたが(原節子が急病のため急きょ、杉葉子が代役に)、やっぱり成瀬監督の「夫婦」にも似ていますね。
もちろん、原節子ですから、立ち居振る舞いから何から、まさに日本の生んだ最高クラスの美。とはいえ、子供をポコっと産むわけですから、まさに

「エレガントな豚」でしょうか。



女であること香川京子篇
死刑囚の父を持つために、息を潜めるように生きている香川京子。こういうちょっと暗めの役をやらせると香川京子は最高ですね。もともと幸薄そうというか、体温が低そうな人ですから、この手の役はお手の物です。とはいえ、原節子と森雅之の会話で、(父の)裁判(の過程)でほとんど香川京子の秘密なんてないじゃないかと、森が言うと原はこう答えます。
「ですから人に知れない秘密が何か欲しいんでしょ」
その通り、香川京子はひそかに石浜朗に恋をしているのです。そして、やがては森の家を飛び出し石浜と同棲を始めるという思い切った行動に。やっぱり、普段から自分を抑圧していると突発的な行動に出てしまうんですね。
しかし、同棲を始めた途端、冷たくなる石浜朗。そりゃそうです、お坊ちゃんですから。
子供ができたら、どうする?と聞く香川京子に対して
「僕は不賛成だね。君の遺伝は悪いよ」
と答える不実っぷり。最低ですね。香川京子は結局、石浜朗とは別れることにしますが、そりゃ当然です。というか、そんな男とはとっとと別れなさい。
でも、ものすごく清純な顔をしているのに、やってることはけっこう大胆。まさに

「育ち過ぎた子羊」ですね



女であること久我美子篇
原節子の女学校時代の親友の娘である久我美子は家出をして、森家に居座ることになります。行動は傍若無人ですが、とりあえずは憎めないので、周りにも何となく許容されています。おばさま、おばさまと原節子にくっつき、香川京子への注目を自分に振り替えないと気が済まなかったり、森雅之を誘惑してみたり、さらには原節子の昔の恋人の三橋達也と愛人関係になってみたりと忙しいこと、このうえもなし。
映画の最後では、行方知らずだったのが土砂降りの中、ひょっこり帰ってきて原節子を心配させます。
「誰もさかえちゃんのこと悪く思ってなんかいないのよ」という原に
「うちには却ってそれがいけないんです。甘やかされて大事にばかりされていて。自分のほんまにしたいこと、ちょっとも分からなんだんです」
「誰だって、それが分かれば……」
「うち、もっと違うところで、ほんまの自分を見つけたい」などと言って、去っていく始末。でも、きっとムリな気がしないでもありませんね。だいたい「自分探し」とか言っている段階で、お嬢さん過ぎます。もっともリアルに久我侯爵家のお嬢様ですから仕方ありませんけど。そんな久我美子は、自分の実態よりも大きめの帽子をかぶって、ひとからどう見えるかをいつも気にしている、まさに

「帽子の好きなキツネ」です。



当然、「女」が主人公の映画ですから「男」はどうでもいい扱い。森雅之こそ、さすがに存在感を示しましたが、三橋達也は単なるプレイボーイ以上の演技をさせてもらえませんでしたし、石浜朗に至っては鬼畜扱い。芦田伸介なんて、いてもいなくても良い位の存在感の無さでした。

あと、原節子の女学校時代の旧友役で、丹阿弥谷津子(金子信雄の奥さんで、池中玄太80キロのおばあちゃん)や、南美江(ムー一族のおばあちゃん)、菅井きんなどが、ホッホッホとかやっているのには笑えました。





(とにかく珍しいのが原節子のキスシーン、それも久我美子と)


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