いくらおにぎりブログ

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【映画】安珍と清姫

2008-02-25 | 邦画 あ行

【「安珍と清姫」島耕二 1960】を観ました



おはなし
有名な道成寺の伝説を、新解釈してみた作品です。

市川雷蔵と若尾文子。二人が共演したこの作品は、雷蔵の美しさ、若尾文子の情念がうまく絡んで面白い作品でした。

パッカ、パッカ。清姫(若尾文子)の乗った馬が走っています。清姫は畑を荒らす狐を退治するために、今日も弓を持って山を走っているのです。狐をみつけ、ひょうと矢を射る清姫。しかし、その矢は旅の僧、安珍(市川雷蔵)に当たってしまいました。連れの僧、道覚(小堀阿吉雄=明男)は清姫に食って掛かりますが、安珍は「道覚、手荒な真似はよせ」と痛みをこらえて言うのです。

この清姫は、紀州は真砂の庄司である清次(見明凡太郎)の娘。名家の娘で、近在に美貌も鳴り響き、隣の里の長者・友綱などからも求婚されている姫です。友綱は父の清次に「清次殿、姫と引き換えにと申すわけではないが、もし清姫を私にいただけたら、ふたご山の水門を開いて、この真砂の里にも水が流れるようにしたいと考えているのです」と言い出しました。それを聞いてグラつく清次。友綱は家柄は申し分ないし、白面の貴公子。その上、真砂の里に水が流れれば、里の者の喜びはいかばかりでしょう。

さて、安珍を連れて帰ってきた清姫。とりあえず手当てはしましたが、心は晴れません。「あのお方は私を恨んでおられるだろうか」と婆やに弱音を吐いちゃうくらいです。しかし婆やは断言します。「過ぎたことは過ぎたこと。心をこめた介抱こそが、あの方をお救いする道でございます」。「介抱」と繰り返す清姫。心なしか頬が紅潮しているようです。

早速、安珍の元を訪れる清姫。しかし、安珍は「私は沙門の身でございます。女人を近づけてはなりません」と後ずさりをするのでした。「私の介抱を断わると言うのですか」と手ぬぐいを床に叩きつける清姫。ちょっと気が強いようですね。

そんな堅物の安珍を「野暮な奴だのう」とあざ笑うのは、旅の友の道覚。早速、ただ酒をがぶ飲みして、女中に言い寄るなど、とんでもない破戒坊主ですが、まあ確かに安珍もカタブツ過ぎるかもしれません。

「人の親切を踏みにじって、何が沙門の身じゃ」と婆やに愚痴る清姫。「道心堅固な顔はしているが、あの仕草が本心とは思われん。何としてもあの偽りの面を剥いでみてやる」とヘンなところで燃えています。さすが若尾文子。

しかし、それからがタイヘンでした。清姫が安珍の部屋に行くと、安珍は一心不乱に経を読み始めるし、琴の演奏を聞かせましょうというと、外に出て子供相手に笛を吹き始めちゃう始末でチャンスが見つからないのです。

そして迎えた祭りの夜。安珍は謎の巫女に、「そなたは何者かの妖かしに憑かれておる。その妖かしは、そなたの望み、いいや、そなたの命まで奪おうぞ」と言われちゃいました。そこに「安珍さまー」とやってくる清姫。もう気の弱い安珍は一目散に逃げ出すのです。そして、ようやく露天風呂に入ってノンビリしていた安珍ですが、そこに清姫も入ってきてしまいました。「お傷の痛みはいかがでございます」と声をかけてくる清姫。しかし安珍は、裸の女が傍にいる、それも内心では憎からず思っている清姫が横にいるというだけでガチガチです。そんな安珍をおかしそうに見つつ、清姫が言い出します。「あたし、夕べおかしな夢を見ました。キレイな花びらが散って……」。

ここで、いきなり市川雷蔵と若尾文子の踊りのシーンがソフトフォーカスで始まっちゃいました。とは言え、雷蔵の格好は光源氏のそれ。そして若尾文子は出雲のお国みたいな格好です。

「この夢は清姫が胸に描いた、はかない乙女の願いの夢」と言い出す清姫。安珍というか市川雷蔵は心底困ったなあ、という顔をしています。「何とぞ、この私の心を」と清姫がすり寄ってきました。「いけません、おやめください」と抵抗する安珍。しかし、清姫が「この心、かなえられずば、この清姫、清姫、死ぬより道はございません」と泣きはじめると、ついつい情にほだされちゃうのです。好きだと言ってください、と迫る清姫に、案珍は「この身、御仏に仕える身ならずば」と答えてしまいました。「お受けくださりますか」「はい」。その瞬間、清姫は高笑いを始めました。「とうとう正体を見せましたな」と安珍をバカにする清姫。「あたしは勝った」とか言っていますし。すっかり傷ついてしまう安珍です。

翌日のこと。旅の相棒の道覚が、清次の金を盗んで女中と逐電しているのが判明しました。とりあえず平謝りに謝る安珍。これから二十一日の間、道成寺にこもって修行をしたあと、必ずここに戻って罪を償います、と約束をします。あなたのせいではないのだから、と清次は笑いますが、それでは気が済まない、この笛をカタに置いていきますと安珍は言うのでした。そして、旅立ち。しかし、清姫は琴を弾いていて、見送りにも出ません。ちょっと寂しそうな顔をする安珍です。

安珍は、旅の途中、謎の托鉢坊主に出会い、「払っても、払っても消えぬ煩悩に悩まされているようじゃな」と声をかけられます。ギクっ、心を見抜かれて焦る安珍。これはなお一層、修行に励まなくてはと心を新たにした安珍は、道成寺に着くと一心不乱に経を読むのでした。

一方、清姫は気づきました。安珍のことを心から好きだったことに。もちろん、あわてて後を追ったものの安珍に会えるわけがなく、家でひたすら安珍の修行の無事を祈る毎日です。とは言え、安珍の残した笛をそっと口に当ててみたりして、すっかり「恋する女」モードに入っていますが。

安珍は、修行中に寺にやってきた左大臣の娘に気に入られたりしつつ、抜けぬ煩悩に苦しんでいます。副住職さんに「仏の顔も女に見える」と悩みを打ち明けたところ、それなら滝に打たれろと言われる安珍。早速、滝に打たれてみますが、それでも煩悩は消えません。しかし、ここで思いました、俳優さんってタイヘンです。雷蔵はホントに水に打たれていますから。まあ、ホントの滝がどうかは知りませんが。それはともかく、そこに謎の托鉢坊主が再び顔を出しました。「煩悩に苦しむとは、その煩悩がいまだ極まらぬ故じゃ。もっともっと苦しむことじゃ」と言う托鉢坊主に、私をお導きください、と頼み込む安珍。しかし、托鉢坊主は行雲流水などと言って去って行ってしまうのです。すっかり絶望した安珍は、身も世もなく泣き崩れるのでした。

そこに清姫がやってきました。安珍を慕う気持ちが抑えられなくなったのです。「安珍さま。あたしは何という思い上がった、愚かな女だったのでございましょう」と言う清姫。「この愚かな過ちは消えません。この罪の償いは死んでお詫びいたします」と滝つぼに飛び込もうとしています。慌てて清姫を止めて、パンパンパンと顔を張り飛ばす安珍。清姫は「あたしをお許しくださいますか」と涙に濡れた瞳で見つめます。「清姫さま」と、思わず抱きしめる安珍。安珍は、結局、清姫の服を脱がし、キスをしてしまうのでした。

翌朝、安珍の錫杖を振ってみたりして、とても幸せそうな清姫。しかし待ってください。あたりを見回しても、その愛しい安珍がいないではありませんか。「安珍さまぁ」と呼んでも、ただ沈黙が帰ってくるばかりです。

その頃、安珍は逃亡中。「何という汚い奴だ。卑しくも御仏に仕える身をもって、一時の煩悩に負け、犬畜生にも劣る野獣に成り下がるとは。お前のような奴は、一思いに死んでしまえ」と、自分を責めまくっています。そういえば、日の光も、今はまぶしくて、安珍の目を突き刺します。一方、清姫は安珍を追いかけています。安珍の錫杖を頼りに、懸命に野山をかけています。ということで、このシーンは、二人の心情をオペラのように歌い上げるというもの。あ、もちろん雷蔵と若尾文子が歌うわけではなくて、本業の声楽家が歌っているみたいです。なんだか、和洋折衷な感じが愉快ですね。

さて、傷心の清姫が家に帰ると、とんでもない事態になっていました。長者の友綱の誠実さに感服した父が、姫を嫁にやると約束してしまったのです。それも「姫が何と言おうと」だそうです。「私はイヤでございます」と断わる清姫。「私には既に心を捧げた愛しいお方がございます」と安珍への気持ちを打ち明けました。お父さんとしては。しまった、といったところでしょう。

山野を歩いていた安珍は、道覚が村人に捕まっているのを目撃しました。出家の身でありながら、女犯の罪を犯した道覚。それが今、村人たちに罵られ、蹴られています。「ああっ」と絶望の声を上げる安珍。それは、まさしく自分の辿るべき未来ではありませんか。ということで、安珍はまた走り始めました。どこへ逃げる当てもないのですが。しばらく行くと、托鉢坊主がまた登場。なんだか仙人みたいな坊さんですね。「まだ悟りが開けんようじゃな」と托鉢坊主は言います。しかし、安珍の涙ながらの訴えを聞いた托鉢坊主はこうも言うのです。「恥ずべきことではない」と。御仏を選んで信仰に生きるも良し、女性と結婚して生活を立てるのもまた良し。要は、「信じる道を歩め。それが仏の道でもあるのじゃ」ということです。

それを聞いた安珍は、清姫のもとに走り始めました。一刻も早く、あの人に会いたい。しかし、村はずれで、清姫の家の下僕たちに取り囲まれて、殴られてしまいます。もはや長者との結婚が決まった。「これから先は一歩も里へ入ることはならん」と言われ、追い返される安珍。「良かった。私は煩悩に目がくらみ、あやうく人の道を踏み外すところだった。もう二度と真砂の里に足を踏み入れてはならない。清姫さま、どうぞお幸せになってください」と言って、歩き去る安珍。もう一度、道成寺に行って、今度こそ修行の終わるまで寺を一歩もでない覚悟です。

一方、真砂の里では清姫の父、清次が自害してしまいました。このままでは長者の友綱に面目が立たないからです。しかし、それと同時に清姫に残した遺書にはこう書いてあったのです。恋を遂げろと。下僕から、「仔細も知らず、安珍様を道成寺に追いやってしまいました」と聞いた清姫は走り出しました。急がなくては。もし安珍様が道成寺に入ったら、女人の私は安珍様に二度と会えなくなる。なんとしても安珍様が山門をくぐる前に追いつかなくてはいけない。

ということで、歩く安珍と、走る清姫が交互に映し出されます。野を越え、山を越え、ついでに砂丘まで越えちゃう二人。安珍は歩きながら、清姫とのことを妄想してみたり、「仏の道は厳しいぞ」と自分に言い聞かせたりと、忙しい限り。そして、とうとう清姫は安珍に追いつきました。「安珍さまぁ」という声が聞こえます。「いけない、今振り返ってはいけない。今振り返ったら何もかも水の泡だ」と言いつつ、耳を押さえてダッシュする安珍。清姫も安珍を追おうとしますが、鬼神の技でも働いているのでしょうか。何故か吹き始めた突風にさえぎられ、前に進めないのです。強風に髪を振り乱し、唇のはしから血をにじませながらも一歩一歩這うように進む清姫です。

日高川を渡り、道成寺に入った安珍。倒れこむように仏像の前に額づき、懸命に祈り始めました。そして、清姫は日高川を前に途方に暮れています。安珍を渡した舟はいません。逆巻き、牙をむくかのような急流は、清姫と安珍の間を冷たく分け隔てているのです。清姫はためらわずに川に飛び込みました。

祈る安珍。しかし、あたりはにわかに暗くなり雷が鳴り出します。
川に沈んでいく清姫。ユラユラと沈んでいきます。
祈りの途中、にわかに起こった落雷に失神する安珍。
川底に沈んだ清姫の体。いきなりゴゴゴと音がします。大蛇です、清姫の体は大蛇に変わりました。

安珍の身を案じた道成寺の僧たちは、安珍を鐘の中に隠しました。そして鐘の周りをひしひしと囲み、誦経を始めるのです。しかし、そこに清姫が来ました。真っ白な顔は、もはや清姫であって、清姫ではありません。あれーと弾き飛ばされていく僧たち。清姫は鐘の周りをゆっくり歩きます、ゆっくり、ゆっくり。また清姫は大蛇に化身しました。ギラつく目。そして口から火焔をぶわーっ。

はっ。目覚める安珍。清姫のところに行かなくては、と立ち上がろうとします。それを押さえつける僧たち。「どうぞ行かせてください」と安珍は抵抗します。その時、「離してやれ」という声が響きました。道成寺の住持です。しかし、よく見れば、それは謎の托鉢坊主ではありませんか。「早う行け」と住持に言われ、「はい」と飛び出す安珍。外に出ると鐘はそのままです。してみると、やはりあの不思議な出来事は全て夢だったのでしょう。

安珍が川べりにたどり着くと、そこに清姫が倒れています。「清姫さま」と遺骸を抱き上げる安珍。「私は何という愚かな過ちを犯したのだろう。恋にも徹しきれず、仏の道も究めることができず、あなたをこんな姿にしてしまった。もうこれからは一生傍を離れず。あなたの冥福を祈ります。どうか許してください」。そう言った安珍は、清姫を抱いて何処ともなく歩き去っていくのでした。

なんか大蛇の造形が情けなかったり、そもそも夢オチかよ、という部分はあるものの、なかなか面白い映画でした。何と言っても、市川雷蔵と若尾文子が、それぞれの持ち味を生かしているところが大きいと思います。

市川雷蔵といえば、真っ先に思い浮かぶのが眠狂四郎シリーズや、陸軍中野学校シリーズのようなニヒルな主人公。しかし、それ以外にも「炎上」や「破戒」など「悩みまくる主人公」の演技も素晴らしいものがあります。まして、雷蔵の場合、僧形が似合うので、この映画にはピッタリ。

若尾文子の清姫もピッタリ。自分の感情に正直に、どんな障害があっても突き進む。まさに増村保造とのコンビで確立した「女」がそこにいるかのようです。ただ惜しいのが、若尾文子の衣装。あえてそうしたんでしょうが、全編を通じて襟のあわせを緩めに着ています。別に清姫は女郎じゃないんだから、何もそこまでしなくてもいいんじゃないかと思いました。これでは「女の情念」イコール「ふしだら」「だらしない」みたいにも取れてしまいます。

それはそれとして、この映画は別の意味で「伝説の映画」。若尾文子にまつわる、ある伝説があるのですが、きっちり確認できました。伝説は本当だった、ありがとう、といいたい気分です。いや、ホントに島監督ありがとう。









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4 コメント

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はじめまして (蘭)
2008-02-27 14:33:37
はじめまして。私も邦画が好きなので、よくこちらのブログを拝見させていただいています。  安珍と清姫はまさに伝説の映画でしたのね~若尾文子さんが伝説のシーンで顔がぽっつと赤くなるのがリアルでした。。。よく世に出ましたよね。。。ファンとしては嬉しい(?)ですが
仰るとおり (いくらおにぎり)
2008-02-27 16:15:57
蘭さん、はじめまして。こんにちは。

つまらない文章を読んでいただいて恐縮です。ありがとうございます。

そうそう、蘭さんの仰るように、あの気の強い若尾文子が、一瞬うろたえたような恥ずかしいような表情をみせましたね。ちょっと萌えます。

若尾文子は、今の世の中では考えられないくらいの大スターですから、ホント、どうして世に出たんだか。不思議です。
伝説 (蘭)
2008-02-28 15:24:30
本当ですね!!気の強い文子様がかわいくなる瞬間でした。まさに元祖ツンデレですね(笑) 当時も話題になったんですかね?この伝説シーンは。 本当に世に出たのが不思議ですね!!
ツンデレ (いくらおにぎり)
2008-02-29 09:41:14
蘭さん、こんにちは

ツンデレ、、(笑)
たしかに。まあ相手が雷蔵だからこそ、ツンデレも成り立つんでしょうが。これが普通の男だったらツンで終わりでしょう。

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