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【映画】優駿 ORACION

2007-01-20 | 邦画 や〜わ行
【「優駿 ORACION」杉田成道 1988】を観ました。



おはなし
嵐の日に生まれた仔馬のオラシオンを巡って、展開する群像劇です。


フジテレビの開局30周年記念作品。そのため、製作は日枝(現)会長、監督は「北の国から」の杉田成道などフジテレビ色全開です。

ストーリーは、ちょっと分裂気味。とりあえずオラシオンの周りをうろうろする人たちの群像劇としか言い様がありません。もちろん、この場合の群像劇というのは、話にまとまりがない、という意味です。

映画は、北海道の草原から始まります。ドッカンドッカン雷が落ちる中で、博正(緒形直人)は仔馬の出産が近いことを知ります。「子供が生まれるんだ。嵐のような馬が」と飛ぶように牧場に帰る緒形直人。そこには、父の千造(緒形拳)以外に、馬主の会社社長・平八郎(仲代達矢)と美しい娘の久美子(斉藤由貴)がいました。いきなり可愛い子がいたので狼狽した緒形直人は、絵本で覚えた伝説の馬の話なんかを始めちゃいますが、それを感心して聞いてくれる斉藤由貴。確かに斉藤由貴ならば、大きな目をクリクリさせて真剣に聞いてくれそうです。
そして、仔馬が生まれました。「生まれた、生まれた」と喜ぶ緒形直人に「良かったわね。ゴドルフィンの子孫がちゃんと生まれたものね。風の狼」と答える斉藤由貴。緒形直人が吹聴した絵本の知識を消化して返事をする斉藤由貴って、社長令嬢なのに、やっぱり良い人です。

さて、話は仔馬の成長とリンクしつつ緒形直人と斉藤由貴の恋愛話になるのかと思いきや、あらぬ方向に進み始めます。
仲代達矢の会社は、急成長を遂げてきたのですが、ここにきて大手企業の買収のターゲットになってしまいました。大企業の社長・平幹二朗に「にこやかに」恫喝される仲代達矢。そのうえ、仲代達矢の隠し子が重い腎臓病で、腎臓移植をしなければ助からないというダブルパンチです。自分の血液型ではムリなのであなたの腎臓を移植してください、と愛人・加賀まりこに頼まれる仲代達矢ですが、会社がタイヘンな時に体を痛めるわけにはいかないという理由で「俺に息子はいない。会いたいと思ったこともない」とすげなく断ります。
ところで、物静かでじっと耐える愛人役が加賀まりこっていうのは、どうかと。思いっきり、ミスキャストのような気がします。

そんな時、有名な調教師・田中邦衛が馬を売り込みにきます。"弱小牧場の馬だけど素質がある"と田中が見込んだ馬は偶然にも、緒形拳の牧場で生まれた仔馬です。そんなもの買ってる場合じゃないだろと思いますが、仲代達矢は仔馬を3千万円で買うことにしました。

「あの馬、私にください」と斉藤由貴に頼まれた仲代達矢は、「おい、あの馬、3千万円もするんだぞ」と言いつつ、隠し子の秘密を聞いてもらったうえで、秘密にしてもらう条件でOKしました。確かに斉藤由貴なら、秘密の話を真剣に聞いてくれた上で、口が堅そうなので良い取引かもしれません。

ここで話は2つに分かれます。
一つはオラシオンと名付けられた仔馬の成長の話。緒形拳の牧場では話にならないので大厩舎に移されるオラシオンの、母馬との別れやケガの克服などが描かれます。なぜか緒形直人は、ずっと飼い主面で出てくるのですが、これは大人の事情なんでしょう。

もう一つは、隠し子の誠(吉岡秀隆)と斉藤由貴の交流。斉藤由貴は足しげく吉岡秀隆のもとを訪れます。クリスマス、お正月、節分。名乗りあえない姉弟ですが、その分献身的に斉藤由貴は吉岡秀隆の面倒を見て、さらにオラシオンを吉岡秀隆にあげるのでした。

重役会議が行われています。仲代達矢の会社は、どうやら大企業に乗っ取られてしまったようです。会議室でぼう然としている仲代達矢のもとに、斉藤由貴が訪ねてきました。吉岡秀隆が危篤だというのです。仲代達矢もつくづく運のない男ですね。
病院に駆けつけた仲代達矢。エプロン姿の加賀まりこが「来ていただけて、ありがとうございます」とさめざめと泣きます。全然、加賀まりこに似合っていません。
病室に入ると、息絶え絶えの吉岡秀隆が「父さん、ぼくに腎臓ください」と言います。新旧演技派の対決です。泣けるというより、息を飲むような行き詰まる攻防に見えてきます。とうとう仲代達矢が「うん」と言った時に心電図がピーっと鳴り始めました。腰が抜けるほど、ベタな演出です。

さて、北海道ではオラシオンの母馬が死にかけています。なぜかそこに駆けつけた仲代達矢は、母馬を埋める緒形拳をじっと見つめます。もちろん、ここでもさんざん演技対決をした後ですけど。ついでに、緒形拳も胃ガンで死にそう、だそうです。ふむふむ。

デビュー以来、3連勝と絶好調のオラシオン。しかし、緒形直人が事故って付けた古傷が不安要素です。ベテラン調教師の田中邦衛は、オラシオンは1800メートル以上のレースはムリだから2400メートルのダービーは諦めよう、と言います。そこに緒形拳が死んだという知らせとともに、遺言が伝えられました。それはダービーを取るまで帰るな、というものでした。
「そうか、賭けてみるか。2400」という仲代達矢。オラシオンの体調は一切無視の方向のようです。

ダービー当日。彼方から地響きをあげて走ってくる馬群。映画の内容はともかく、このシーンは感動しました。スゴイ迫力です。ぼくは競馬をやりませんが、全力疾走する馬は、本当にキレイというか、いっそ崇高な感じがしますね。
オラシオンは、1着でした。斜行したということで審議になったものの、無事に優勝確定です。田中邦衛に「おじさま、ありがとう」と言う斉藤由貴。すいません、「おじさま」にちょっと萌えました。これはクラリス萌え?でしょうか。
北海道での緒形拳の葬式にひとり参列していた仲代達矢は、遺影に向かって何かを語りかけているのでした。

いや、スゴイ映画です。なにしろ作り込み演技の帝王、仲代達矢。演技にうるさい緒形拳、田中邦衛。若手とは言え、役者バカの吉岡秀隆。それに映画デビュー作とは言え、やはりカエルの子はカエルな緒形直人たちが出ているんですから。ある意味「ストーリーは関係ない、俺の演技を見て泣けっ!」な人たちが集まってしまって、監督もさぞタイヘンだったことでしょう。特に緒形拳と仲代達矢が語り合うシーンなどは、秘術を尽くしたバトルが繰り広げられ、まったく油断も隙もあったもんじゃありません。

そんな人たちに囲まれ、時には姉のように、そして母のように、さらには「おじさま」攻撃まで駆使して、相手を務め上げた斉藤由貴って本当に素晴らしい。
そもそも、「恋する女たち」や「トットチャンネル」などの大森一樹監督作品では、確固としたコメディエンヌぶりを発揮していた斉藤由貴ですから「受け」の演技をさせると抜群にうまいです。だからこそ「恋する女たち」では菅原文太の長男、菅原薫のデビューを支え、「トットチャンネル」では高嶋政宏がデビュー。そしてこの「優駿」でも緒形直人がデビューできたんでしょうね。だって、単なるアイドルだったら、素人の相手なんかはできませんから。

もったいないのは、第1回東宝シンデレラで、準グランプリになってしまったこと。グランプリの沢口靖子が、中途半端な成功しか得られなかったことを考えると(嫌いではありませんけど)、もし斉藤由貴を優勝させて、早くから積極的に主演作を量産していれば80年代を代表する映画女優になったかもしれないですね。








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