いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】あさ潮ゆう潮

2007-10-26 | 邦画 あ行

【「あさ潮ゆう潮」佐伯幸三 1956】を観ました



おはなし
瀬戸内海の小島に育った仲良し7人組。高校を卒業後、彼らに待ち受けていた運命は……

出生のヒミツとか、若尾文子の一人二役など「イカニモ」な要素がちりばめられている割には、意外と普通の映画です。

「行って参りまーす」と、明るい声で家を飛び出していく女学生の名は弓子(若尾文子)。弓子は、渡し舟から巡航船に乗り換え、これから高校の卒業式に向かうのです。ここは瀬戸内海の小島。同じ島から、離れた高校に通う7人の仲良しグループも、明日からは別々の道を歩むことになるのでしょう。

海岸にある大きな岩に、自分たちの名前を刻む7人組。「おい、みんな。この文字は永久に消えないんだ。俺たちの友情の証だ」と言うのは、リーダー格の大助(川口浩)。将来は立派な海の男になるのが夢のようです。他にも、新平(川崎敬三)は医学部に進学、作次(入江洋佑)は漁師に、五郎(月田昌也)は警官、ヤスエ(藤田佳子)はお嫁入りと、みなバラバラになってしまうのです。肝心の弓子と言えば、姉が勤める別府の温泉ホテルで仲居をすることが決まっています。

寂しそうに「大さん、あたしたちの将来、どうなるかしら」と大助に聞く弓子。大助は「バカ、僕じゃいけないのか」と、弓子をそっと抱き寄せるのです。

ここは別府にある花の井ホテル。厨房でテキパキと働いているのは弓子の姉、舜子(水戸光子)です。そこに弓子がやってきました。喜んで迎える舜子。もちろん弓子は、その日から早速、姉を見習うように一所懸命働き出したのです。もっとも仲間の仲居たちは「違うもんだねえ。女中頭の妹ともなると」とイヤミを言っていますが。

ある日のこと。いかにも金持ちのお嬢さん風の一団がホテルにやってきました。なぜか、弓子の顔を見て「あら、ちょっと幣原さんだわ」と言っています。弓子が、別人ですと言っても、不思議そうに「あなた幣原さんのご親戚」と首をかしげるばかり。これは何かありそうですね。

さらに大助から手紙がやってきました。大助は立派な海の男になるために、幣原造船に入社して船を作っているそうです。いや、何も作るところから始めなくてもと思いますが。だったら、立派な農夫になりたかったら、まずはヤンマーに入ってトラクターを作るところから始めるのかよ、と突っ込みたくなってしまいます。まあ、それはともあれ、手紙の最後には「弓ちゃん、僕は君を離さない」とか書いてあるので、ポーっとしてしまう弓子です。

リベットハンマーの轟音が響く造船所で、大助は懸命に働いています。そこに、社長一行が視察に訪れました。あ、クレーンにぶら下げられた鉄筋がバラバラと崩れて落下してきます。とっさに、飛び込んで社長のお嬢さんを救った大助。しかし、その顔を見ると……なんと、弓子そっくりではありませんか。いきなり無音になって、見つめ合う若尾文子と川口浩のアップ。驚愕の表情の川口浩。白馬の王子様でも見たような顔の若尾文子。その二人の顔のアップが交互に映し出されます。もういい、っていうほどしつこく。うわあ、ベタですね。ともあれ、弓子そっくりな社長令嬢は、和子(若尾文子 二役)と言うそうですが、こんなにソックリな赤の他人がこの世にいるものでしょうか。ここでネタバレですが、実は弓子と和子は双子なのです。ビックリしましたか。あ、ビックリしませんか。

さて、7人組の一人で、嫁に行ったヤスエが新婚旅行で花の井ホテルを訪れました。久しぶりの再会に喜ぶ弓子ですが、ヤスエは浮かぬ顔です。それもそのはず、新郎の儀平はお爺さんのうえに、どケチ、下品と最悪パターンだったのです。本当は7人組の作次と将来を誓い合っていたのに、金のためにお嫁入りしたヤスエにとって、これはあまりに酷な話でした。ちなみに儀平を演じているのは東野英治郎。この時は48歳ですが、どうみても60代にしか見えません。そりゃ、高校卒業して東野英治郎のお嫁さんじゃあねえ。

姉の舜子には東京に彼氏がいるようです。その彼氏は、どうやら商売に失敗したようで音信不通になってしまいました。慌てて、東京に出かけることにした舜子。ちょっと心配ですね。

久しぶりに、大助から手紙がやってきました。しかし、その手紙にはビックリするようなことが書いてあったのです。
「弓ちゃん、僕はこれ以上の沈黙に耐えられない。思いがけないことから社長に可愛がられ、今は本社の秘書課に勤めている」で始まった手紙には、「そんなことより驚かないでくれ。僕は君に会った」「これには何か秘密があるのだろうか、教えてくれ」と書いてあります。まあ教えてくれと言われても、弓子にとってもあずかり知らぬことです。

さて、花の井ホテルの常連客で、インチキな大阪弁をあやつる竹内(船越英二)という男がいます。これが、すっかり弓子にご執心。何かと言えば訪れて、しつこく弓子に迫っています。そして、ある日、とうとう弓子を強引に押し倒そうとしてきました。とりあえず、女将の機転で、その場を逃れた弓子ですが、すっかりヘコミモードです。

ついでに言えば、東京に行った姉も音信不通、それに大助の手紙も気になります。女将が「これを機会に、東京に行ってみたら」と、優しい言葉をかけてくれたこともあり、弓子は意を決して東京に行くことにしたのです。

東京に着いた弓子は、早速幣原造船の本社へ。すると受付嬢が「あっ、お嬢さん」と、どうも弓子を社長令嬢と勘違いしている様子です。大助さんはお屋敷に行ってらっしゃいます、という言葉に導かれるように、今度は幣原社長宅に向かう弓子。すると、タイミングもバッチリ、大助が和子のオープンカーに乗るところを目撃してしまったのでした。ガーンとショックをうける弓子です。

しかし、浮気に気づいた奥さんじゃあるまいし、いきなり仕事場に行ってしまう弓子も弓子ですよね。その上、社長宅まで押しかけていくのもスゴイ。受付嬢が社長の住所をペラペラ喋るとも思えないので、「それでお嬢さん、い、いえ、あたくしの住所はどこかしら、おーほっほ」とか一芝居打ったんでしょうか。

さて、その頃、姉の舜子はオンボロアパートにいました。恋人が警察に捕まっているので、その空き部屋で、恋人が釈放されるのを待っているのです。トントン。ノックの音がします。舜子が戸を開けると、そこには幣原造船の社長夫人(三宅邦子)が立っていました。部屋に招き入れる舜子。なんだか気まずい雰囲気です。社長夫人は恐るおそる口を開きます。「弓子を返してくださるわけには参りませんでしょうか」。即座に「お断りします」と答える舜子。どうも社長夫人は諦めのよい人のようで、そうですかとあっさり帰っていったのです。

入れ違いに部屋にやってきたのは弓子。弓子は開口一番、「ねえ。あたしたちと幣原さんと何かあるんでしょ」と舜子に言い出します。「ねえ、教えて。あたし、大助さんと車に乗ってる、もう一人のあたしを見てしまったの」。

「今まで隠しててごめんなさい。ホントはね、あたしたち、あたしたちホントの姉妹じゃないの」と告白をする舜子。よく分かりませんが、双子は縁起が悪いという迷信を信じた幣原夫妻は、双子のうち一人を養女に出したそうなのです。でも、と続ける舜子。さっき、幣原夫人があなたを返してくれと言ってきたのを、わたしは断わってしまった。だけど、あなたの幸福を考えたら断わるべきじゃなかったわね。

「お姉さん、あたしもうそんな話イヤっ」と言う弓子。「お姉さんとあたし、今までどおりの姉妹でなくちゃイヤ」。さすが、主人公。金持ちより貧乏な姉を取るなんて泣かせます。

7人組の仲間で医学部生の新平を訪ねた弓子。どうやら、全てを話してしまったようです。「弓ちゃん、ところで医者の卵として忠告するけど、君たちのような場合は一卵性双生児と言うんだ」と重々しく語る新平。「顔かたちばかりか、精神的にも瓜二つなんだ」。だから、好きな人も一緒だと言うのです。「まあ」と絶句する弓子。しかし、これは「忠告」なんでしょうか。「説明」とかの気もしますが。それも、どちらかというと「珍説」の部類の。

さて、造船所では社長令嬢の和子が大助に言い寄っています。「お嬢さんなんてイヤっ。どうして和子って呼んで下さらないの」「あたくし、あなたが好きよ。愛しています」。若尾文子に、こんなこと言われて、平気な男なんてちょっとどうかしてます。もちろん大助も、思わずクラっときてしまいます。と、そこに警官になった五郎が走ってきました。「大ちゃん、ヤスエちゃんと作ちゃんがタイヘンなんだよ」

ヤスエは作次と心中したようです。まあ、10代の乙女が東野英治郎と結婚したんですから、そりゃ死にたくもなります。

仲間たちは三々五々、島に帰りました。名前を刻んだ思い出の岩を見つめる仲間たち。「一年も経たないうちに二人も減っちゃって」と嘆く五郎。「バカだなあ。生きていれば、生きてさえいれば何とかなったのに」と悔しそうな新平。しかし、この場には大助はいませんでした。悲しみの帰郷なのに、大助と会えるかもとどこかで期待していた弓子には、二重のショックです。

由布高原に遊びに来ている和子とお友達。そこで和子は、お友達から自分にソックリな人が別府にいることを聞きました。「ねえ、その人弓子さんっていわなかった」と問いただす和子。そうよ、と言われると、お友達のオープンカーを借りて、山道を飛ばし始める和子です。

一方、別府のホテルに戻った弓子のもとに大助から電話が入りました。聞けば、すぐ近所まで来ているようです。慌てて飛び出す弓子。久しぶりの再会です。二人はじっと見つめあいます。「聞いたよ、君と和子さんのこと」と言う大助。弓子も「あたしも話したいことがあるの」と大助を熱く見つめます。
「大さん、あなた今迷ってるんだわ。でもあなたが、その迷いに負けない人だってこと、あたしよく分かるの。そう思わせて」とかき口説く弓子ですが、しかし、大助は二人を選べない、だから別れると言い出しました。
「ねえ、あたしを離さないって誓ったあの日を思い出して」と目を閉じて、チュー待ちの体制をとる弓子。思わず、キスをしようとする大助。しかし、ギリギリのところで大助は、弓子から離れ、「ぼくはやっぱりあの人のことを忘れることはできないんだ」と絞り出すように言うのです。とりあえず、ガーーンとショックを受ける弓子です。まあ、同じ若尾文子なら金持ちの若尾文子の方がいいのかも知れませんけど、ちょっとアンマリですね。

ヤケになった弓子は、ホテルに戻ると、スケベな竹内の部屋に行き、日本酒をあおるのです。と、そのころ和子は山道を爆走中。カーブを曲がりそこね、吹っ飛ぶのでした。

いい加減に酔っ払った弓子を押し倒そうとしている竹内。外には救急車のサイレンが聞こえます。ガラッ、襖が開きました。そこに立っているのは大助。大助は竹内にパンチを一発かまします。ベテラン船越英二、新人川口浩のパンチに沈む、といったところでしょうか。

そこに急報が。和子が事故で瀕死の重傷を負ったというのです。懸命の手術が続きます。待合室で心配そうに待つ弓子と大助。

和子が意識を取り戻しました。目を開くと、そこには大助と、そして弓子がいます。見つめ合うダブル若尾文子。「お姉さま、お姉さましっかりなさって」という弓子に、「弓子さん、もっと早くお会いすれば良かった」と答える和子。ガクっ。死にました。

海を滑るように進む客船。一室では舜子と幣原夫妻が語り合っています。どうやら、舜子の取り成しで、弓子は幣原家に戻ることになったようです。一方、デッキでは弓子と大助が並んで、生まれ育った島を見つめています。「さあ、僕もあっちに行って、モリモリ働くぞ」と言う大介。弓子は言います、「大さん、あなたの大きな夢を思い切り伸ばしてきてちょうだい」。
「あたしはあたしの夢を育てているわ」

終わりです。えーと、これは川口浩は若尾文子に振られたということで、いいのかな?それにしても、二兎を追うものは一兎も得ず、というのは本当ですね。まして、若尾文子がウサギのようにオトナシイわけありませんし。

川口浩は、デビューして間もない頃なので、顔がまだ芋っぽいです。台詞回しも、ちょっとたどたどしくて、これが逆に新鮮な感じでした。

若尾文子は、いつもの若尾文子ですから、文句の付けようもなし。ただ、そこにいてくれれば、それでいいのです。輝くお顔を拝見しているだけで、それで満足ですから。とは言え、今回は一人二役なので、一応、純真な少女と、金持ちのお嬢さんを演じ分けちゃったりしていますが、まあ、演技力を云々する映画ではありませんからね。

それにしても驚いたのは、水戸光子が若尾文子の姉役だったこと。女優に年齢のことを言っちゃいけませんが、母親役の三宅邦子が39歳で、水戸光子は37歳ですからね。ちょっとムリがあるんじゃないの、と思ってしまいました。

ともあれ、この映画から得られる教訓は、どんなに金に困っても、東野英治郎と結婚するのはやめておこう、ということです。











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