いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】あゝ同期の桜

2007-05-30 | 邦画 あ行

【「あゝ同期の桜」中島貞夫 1967】を観ました



おはなし

学徒出陣で二等水兵となった学生たち。彼らの群像を描きます。

映画の冒頭は、神宮で行われた学徒出陣壮行会のフィルムが流れます。雨の中を学生たちが行進する有名なフィルムです。

「昭和18年12月10日 舞鶴海兵団」
この日、出陣学徒の一部、1万3千名は2等水兵として各地の海兵団に分散配置されました。ここ舞鶴海兵団でも、白鳥(松方弘樹)、半沢(千葉真一)、南条(夏八木勲)、不破(蟹江敬三)、由井(村井国夫)などが、鬼教官(山本麟一)に「貴様たちの娑婆っ気を徹底的に抜いてやる」としごかれます。かれら出陣学徒たちは訓練を終えれば、いきなり士官になる身分。たたき上げの下士官たちからすれば、今まで戦争に参加せずのうのうと暮らしていた彼らに対して、好意の感情を持てと言っても無理な話ではあります。
厳しい訓練の合間、僅かな時間ですが学徒たちは家族との面会を許されました。白鳥は父や母、それに妹の礼子(藤純子)とのつかの間の再会を楽しみます。しかし、半沢には面会の人間がいないようです。そんな寂しそうな半沢に礼子を紹介する白鳥。半沢は礼子の作った饅頭をほおばっていて、鬼教官にボコボコに殴られてしまいます。「ごめんなさい」と謝る礼子に「とんでもない。殴られてもお釣りが来るほどうまかった。ありがとう礼子さん」とニコニコ顔の半沢です。


「昭和19年2月1日 土浦海軍航空隊」
初期教育を終えた学徒たちは、搭乗員教育、そして予備士官教育を受けるために土浦に送られました。いきなりエライ人の挨拶で「お前たちは全員死んでもらう」と言われ、反発する学徒たち。しかし、ここまで来てしまったら、今さらどうしようもありません。
南条などは田舎に残した新妻が子供を産んだということで、大喜びですが、もちろん会うのもままなりません。脱走を試みる人間が出るほどの厳しい訓練もやがて終わり、学徒たちは、操縦、偵察に別れ新たな任地に赴くのでした。

「昭和19年6月 南九州出水海軍航空隊」
操縦に回された白鳥たちは、南九州で訓練に入りました。これから、複葉機で一からの操縦を覚えなければならないのです。しかし、操縦の技量はひどいもの。練習機の赤とんぼは、あっちにフラフラ、こっちにフラフラです。
そんな様子を地上から見ていた剣持大尉(高倉健)は「何をしとるんだらあ。ったくマズイな。手荒くマズイな」とブツブツ文句を言っています。そして、周りに集まる学徒たちに一言。
「どうだ、みんなやる気あんのかい」「はいっ」
剣持大尉は笑いながら言います。「返事だけ聞いてると、海軍航空隊をお前さん方にまかしたくなるよ」つられて笑い出す学徒たち。しかし、剣持大尉は、いきなり怖い顔をして「笑い事じゃねえ。来るんだぞ、貴様らにまかせる時が。それも遠い先のことじゃない」と怒鳴るのです。思わず、シュンとしてしまう学徒たちです。

3台の自転車が走っています。ハンドルに木でできた飛行機の模型をつけて、編隊飛行よーし、などと言いながら走っている姿は、まるで子供が遊んでいるようです。「こんなの、日本海軍だけじゃねえのかな」とブツクサ言いながらも、マジメに訓練に励みます。しかし、こんなことやってて戦争に勝てるんでしょうか。いや、勝てなかったんですけどね。そして、ある日の訓練のこと。白鳥の操縦する赤とんぼのエンジンがいきなり不調になりました。止まるプロペラ。白鳥の手に余る事態です。後席に乗っていた剣持大尉は慌てず騒がず「まかせろ」と不時着の態勢をとりました。しかし、不時着時に大怪我。片目を失ってしまうのでした。

「昭和19年9月 東九州宇佐海軍航空隊」
学徒たちは、ようやく少尉に任官しました。隊長の大岡大尉(小池朝雄)は、新米少尉たちに訓示を行います。
「我が第一航空艦隊はフィリッピンにおいて、ついに体当たり攻撃を敢行。多大の戦果を挙げた。爆弾を抱いて敵の機動部隊に飛行機もろとも殴りこんだんだ」「日本を滅亡から救うにはこれしかない。これしかない」自分でも信じられないことを他人に言うのは辛いのでしょう。大岡大尉の顔は苦衷の表情です。これから諸君には体当たりの訓練をしてもらわないといけない、と言ったすぐ後に、でも飛行作業は中止する、と言い出す大岡大尉。「燃料がないんだ。訓練用の燃料は、もはや一滴もない」
新米少尉たちのやることと言えば、ひたすら防空壕の穴掘り。思わず白鳥が「終わりさあ」と言ってしまいます。それを聞きとがめたのが、海軍兵学校出の若手士官たち。二つのグループに別れて殴り合いです。

特攻隊の隊長として、陣之内大尉(鶴田浩二)も赴任してきました。新米少尉たちにも特攻隊への志願が求められます。「しかし、これは命令ではない。志願である。特攻を志願するものは一歩前へ」シーン。誰も出ません。出ません。出ません。おずおずと一人が進み出ました。あわてたように、全員が一歩前へ出ます。この瞬間に、彼らの命のカウントダウンは始まってしまったのです。

特攻隊に志願した新米少尉たちには、最後の外出が許可されました。思い思いに家族や大切な人との別れを惜しむ少尉たち。南条は、新妻(佐久間良子)と赤ん坊に会っています。もんぺ姿の新妻は「あなた、いいって言うまで襖を開けないでね」と別室に入りました。そして出てくると、純白のウエディングドレス姿。しかし、そこに非常呼集がかかりました。南条も基地に戻らなくてはなりません。待って、とドレスの裾を引き裂き始める新妻。引きちぎった布に、涙をたっぷり押し付けた新妻は「マフラーにして」と布を渡すのでした。

南条は、仲間より一足早く特攻に出撃しました。「出撃です。南条が出て行くんです」と白鳥から連絡をうけた新妻は、子供を抱いて必死に基地まで走りますが、時既に遅し。特攻機は轟々と新妻の上を飛び去っていくのでした。

仲間たちのところに陣之内大尉が来て「第二次出撃の命令が下った」と言います。残った仲間たちは、そろって特攻機の出撃基地に移動することになりました。赴任先の司令(天津敏)は「貴様たちも、特攻隊としてここまで出てきたからには、生きては帰させんから、そのつもりでおれい」と檄を飛ばします。そんな言い方ないだろ、と思いますけど。

そうこうする内に、片目になった剣持大尉。それに、出撃したものの機体の不調で帰ってきてしまった南条少尉などが、特攻基地に揃いました。特に、特攻から帰ってきてしまった南条少尉は、後席の偵察員が死んだにも関わらず一人生き残ってしまったので、針のむしろ状態です。無神経な司令は「命が惜しくなったんではあるまいな」とか「一度出た者が帰ってくると士気に影響する」などと言いたい放題のありさま。だったら自分で行ってみろ、と言いたくなるくらい嫌な奴です。そのうえ、偵察員の仲間の予科練出身者からは「南条少尉、あんたは卑怯だ」とまで言われる始末で、もう居たたまれない気分です。

白鳥、半沢、南条などの出撃が決まりました。しかし、翌日は雨で出撃中止。こうなるとヘビの生殺しのようで、みんな落ち着きません。そして迎えた次の日。もはや出撃メンバーを選ぶどころではなく、全力出撃です。水盃を交わし、特攻機は次々と飛び立っていきます。しかし、南条の機体はプラグが不調で出力が上がりません。南条は偵察員を降ろし、司令所に報告に行かせることにしました。でも、これで中止なんてことになったら、司令に何を言われるか。南条は偵察員を下ろしたまま機体を滑走させます。もちろん離床出力に足りない機体は飛び立てず、滑走路から落ちて爆発です。

ここで、記録フィルムが挿入されます。そして突入直前の特攻機の画でストップモーション。「その時間、彼等はまだ生きていた」のテロップが出ます。そして画面は暗転。「この時から僅か四ヶ月 戦争は終わった」

この映画は、あまり評価できません。キャラクターの掘り下げが足りず、散漫な印象です。もちろん「オールスター映画だから」という理由もあるかもしれませんが、それだけではないような気もします。もしかしたら、監督の中に方針が無かったんではないでしょうか。この手の話を描くときには大きく分けて、3つの方法があると思います。ひとつは戦争を絶対悪と捉え、軍人すらもそこに巻き込まれた被害者として描く方法。もうひとつは、ヤクザものになぞらえ、愛する者の死などを織り交ぜて、憎むべき敵を自分の命と引き換えに倒す、というもの。そして最後は、戦争というフィールドを舞台にしつつも、青春映画なり自己実現の映画として描くもの。

しかしこの映画には、そういったテーマのどれかを突き詰めていく迫力が、まったく感じられませんでした。藤純子と千葉真一の恋愛も中途半端。健さんを片目にしてみせたって、そのあと殴りこむ(出撃する)わけでもない。そして、嫌味な司令の言葉や、自転車で編隊訓練をするシーンなどは、確かに戦争の不合理さを指摘していますが、それが「糾弾」のレベルまで届かず「皮肉」にしかなっていません。

そんな映画ですから、役者の芝居も表面的。特に鶴田浩二などは、自らが海軍整備兵でもあったことから、特攻隊を描いた映画に出る時には執念の芝居を見せるものですが、この映画ではそれも不発です。
正直、おすすめできない映画でした。







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2 コメント

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もしかしたらご存知かもしれませんが (みらぁ)
2009-07-24 12:47:34
初めまして、みらぁと申します。
ブログを楽しく拝見させて頂きました。
ご紹介くださっている『あゝ同期の桜』ですが、実は、監督の知らない所でフィルムが勝手に編集しなおされていたんだそうです。(大幅にカットされているそうです。)
監督の中島貞夫さんの著書『遊撃の美学』の中で少し触れられています。

制作当時はまだ特攻隊を送り出した側の人間も多数存命で、戦時中は子供であり戦争に理不尽さを感じていた中島監督の製作意図は問題が多いと会社が判断したモノではないかと言う事でした。

中島監督の編集された『あゝ同期の桜』が是非見てみたいなと思っています。
Re:もしかしたらご存知かもしれませんが (いくらおにぎり)
2009-07-24 14:18:14
みらぁさん、はじめまして。こんにちは。

そうですか。とてもいいことを教えていただきました。すると、僕の書いた
>キャラクターの掘り下げが足りず、散漫な印象です。
というのは、ある意味、的を射ていたわけですね。もっとも、中島監督にかなり酷な言い方だったのも事実なので、中島監督ゴメンナサイです。まあ、中島監督がこのブログを読むこともないので、アレですけど。

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