いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】海燕ジョーの奇跡

2007-05-01 | 邦画 あ行

【「海燕ジョーの奇跡」藤田敏八 1984】を観ました



おはなし
フィリピン人と日本人の混血児のジョーが、ヤクザとの抗争で日本にいられなくなりフィリピンに逃亡。しかし、追っ手に殺されてしまいます。

見も蓋もないあらすじですが、まあそういう映画なので仕方ありません。ただ、このあらすじで正統派の東映ヤクザ映画とかを想像してしまうと、とんでもない目にあいます。

弟分のカンミン(柄沢次郎)が、海に石を投げまくっています。それをクルマの中から見守る南風ジョー(時任三郎)と恋人の洋子(藤谷美和子)。
「カンミン、東シナ海を埋め立てるつもりか」と言っていますが、カンミンが苛立っているのにも理由があるのです。
それというのも、ジョーとカンミンの属する島袋一家が、琉球連合から破門されて解散することになってしまったからです。カンミンはようやく島袋一家の構成員として、チンピラになったばかり。就職内定を貰った会社がいきなり潰れてしまったようなものですから、荒れるのも無理は有りません。

とりあえず、ジョーはオヤジの島袋(内藤武敏)についてヤマト(本土)に逃げることになっていますが、カンミンはそのメンバーにも入れてもらっていないようです。バーで飲んだくれるカンミンは琉球連合のヤクザにメンチを切りました。よせばいいのに。案の定、撃ち殺されるカンミン。こうなるとジョーとしては黙っていられません。カワイイ弟分の仇とばかりに琉球連合理事長の金城(鈴木瑞穂)のタマを取りに行きます。ここでイイ迷惑なのが金城です。自分が指示したわけでもないのに、命を狙われてしまうわけですから。とりあえず金城の前に立ちはだかったジョーは、無言のまま金城の体に銃弾を撃ちこみまくるのでした。

とりあえずオヤジの情婦ミッチー(五月みどり)や、恋人の藤谷美和子の助けを得て沖縄を逃げまくるジョーですが、沖縄は島ですから逃げるのにも限界があります。母も「ジョー、フィリピンに逃げなさい」と言っていることですし、ここは一発、海外逃亡しかないでしょうか。そんな時、偶然、刑務所で一緒だった上勢頭(田中邦衛)と再会したジョー。田中邦衛はもと過激派の闘士で海外への密航ルートを知っているようです。ついでに、そこらへんを掘るとゴロゴロ出てくるらしい旧日本軍の手りゅう弾を田中邦衛から貰い、ジョーは金を作ってくることにしました。ところで、田中邦衛が革命を夢見る過激派と言うのは、かなりの強引なキャスティングではないかと思います。こういう時には便利な俳優の原田芳雄を使えるといいのですが、あいにく別の役にキャスティングされていますし、まあ仕方ないんでしょうか。

狙うは亀千代商事。亀千代(加藤嘉)は島袋一家から琉球連合に乗り換えたような奴ですから、何の問題もありません。たとえ「ジョー」と加藤嘉がニコニコ笑いかけてきても、たとえ解散する島袋一家にいつまでも義理立てしていられるわけがなかろうとも、そんなことはジョーには一切関係ないのです。まさにゴーイングマイウェイ。ジョーは無事に金を奪いました。なんだか人の良さそうな加藤嘉が可哀想ですが、ジョーのやることだから許してあげてね。

とりあえず、自由に海を飛び回る海燕は良いなあ、なんでカットを挟みつつ、いよいよジョーはフィリピンに逃げることになりました。「早くしろ、海燕ジョー」という田中邦衛。非常にさりげなく名前が南風ジョーから海燕ジョーに変わったようです。

とりあえず高速の出る密輸ボートに乗ったジョー。今までのカッチョ悪いリーゼントから、変装のために牛乳瓶底メガネをかけ、カトちゃん風に変身しましたからボートの男にもバレないでしょう。もっとも、ボートをあやつる謎の男は編み笠を目深にかぶっているので、そもそもジョーの顔すらまともに見ていないかもしれませんが。と思ったら、謎の男はジョーに、お前は人を殺して追われてるだろ、と言い出します。何だ見てたんだ。男は危険手当てとして30万の料金の3倍の90万をチャッカリ要求するのでした。ちなみに、この謎の男は三船敏郎。もちろん、これ以降もストーリーにガッチリ絡む、なんてことは一切無く、これだけの出演です。まあ企画が三船敏郎の息子、三船史郎ですからね、ハッハッハ。(ちなみに三船史郎が主演の映画はこちら)

与那国島に上陸したジョーは、藤谷美和子のおばあちゃんに会います。これが原泉。相変わらず正体の見えない不気味なばあさんぶりが泣かせます。語尾がいちいち「~であります」というのもヘン。ほとんど横溝正史の作品に出てくる土地の古老みたいな感じですが、これまたストーリーに大きく絡むことは「一切無く」、ピンポイントで自分の芸を披露して消えていくのでした。

与那国島からは台湾の輸送船に。ここで元日本軍の上等兵だと言う台湾人船長と、つかの間の交流をするジョー。もちろん、これがストーリーに絡むことはありません。さらに台湾沖の小島からヤミ族(タオ族)のチヌリクランというカヌーに乗り換えてフィリピンのバターンをジョーは目指します。カヌーにちょこんと乗っているジョーですが、もちろんヤミ族の方たちとの交流はありません。だって、言葉も通じないしね。

とりあえずヒッチハイクなんかしつつマニラにたどり着いたジョーは、島袋のオヤジの友人で、フィリピンで手広く悪事を働いている与那嶺(原田芳雄)の元を訪ねることにしました。
「あー、あんた島袋の、何とかジョーさん」とアバウト極まりない理解のされかたをするジョー。まあ原田芳雄にしたら出演作が多すぎて、いちいちジョーの苗字なんか覚えていられないという気持ちはよく分かります。

ジョーはここフィリピンで父親探しをするつもりです。手がかりは一通の手紙。早速、原田芳雄にあてがわれたフィリピン人女性に読んでもらう事にしましたが、女性は悲しげに「コレエイゴデモ、タガログゴデモナイネ」と言うのです。そう、正解はローマ字。ナンだよそれ、って感じです。そのローマ字手紙によると、父のロペスは事業に大成功して大金持ちとのこと。よっしゃ運が向いてきた、と喜び勇んで手紙の住所を尋ねたジョーですが、そこは荒れ果てた焼け跡が残るばかり。どうやら父は事業に失敗してスラムのどこかにいるらしいのです。

ヤケになったジョーは、虎の子の現金を椅子に置きっぱなしで、ディスコで踊りまくっていたため、金を盗まれてしまいます。一緒に踊っていたフィリピン人女性は、
「ワタシディスコサソッタ。ワタシワルイ。ワタシノクニハズカシイ」と謝りますが、ジョーは「俺の国だ」と憮然とするばかりです。まあ、この場合、国はどうとかこうとかではなく、大金を置きっぱなしで踊る方が間違っていると思いますが。

ともあれ、無一文のジョーは、原田芳雄のもとで裏ビジネスのお手伝い兼用心棒になることにしました。当然、名前を覚えるのが苦手な原田芳雄の命令で、ロペスという名前に変えられてしまいます。いや、海燕ジョーと言う名前の寿命も短かったなあ。
しかし、仕事は順調。結構、ジョーはこの仕事に向いているようです。そうこうする内に藤谷美和子も訪ねてきました。
「ジョー、ロペス3世ができてるさ、うちのお腹に」とノリの良い藤谷美和子。ジョーは早速、命の洗濯に行くから良いほうのクルマを貸してくれと原田芳雄に強引に頼み込み、二人でバカンスとしゃれこむのです。

とは言え、向かった先はスラム。父のロペスに会うためです。何だかスラム中の人々が、みんなカメラを覗き込んでいるような状況の中、ジョーは父ロペスがやっている床屋を見つけました。自分が息子だと言うことを隠して髪を切ってもらうジョー。平山監督の「愛を乞うひと」では同じシチュエーションでも、まさに映画史に残る名シーンでしたが、コチラはそんなことは一切ありません。主人公の心の動きが一切不明なまま、髪を切ってもらいスタスタと出てくるジョー。そのあと、海に石を投げるジョーに「ジョー、マニラ湾埋め立てるのー」と藤谷美和子が言うシーンがインサートされますが、だからどうした、という感じは否めません。

さて、日本からルポライターの沢井(清水健太郎)がやってきました。ジョーの取材をしたいというのです。ジョーの生い立ちや逃亡者としての生活をルポしたら、スゴイ作品になりそうだと言うのです。もちろん清水健太郎の場合は、マジで犯罪者ですから自分をルポしろよ、と思わないでもありませんが、まあそれはそれとして。つきまとう清水健太郎をケシちゃおうと物騒なことを言い出す藤谷美和子ですが、とりあえず実害は無さそうだからほっておく原田芳雄とジョーです。

今度は、日本から島袋のオヤジこと内藤武敏がやってきました。出迎える原田芳雄、藤谷美和子そしてジョー。しかし、空港から後をつけてくる赤いカマロが一台あるではありませんか。どうしたことでしょう。内藤武敏は空港でも、あのクルマを見たと言っていますので、おそらく琉球連合の連中に後を尾けられてしまったのでしょう。
あ、タイヘンです。後ろのカマロからライフル銃が連射されています。いきなり弾丸に当たった内藤武敏がサクっと死にました。原田芳雄も腕を撃たれました。よっしゃあ、とハンドルを握りながらモソモソとピストルを取り出すジョー。と、それを奪い取った藤谷美和子がいきなり、クルマから身を乗り出して発砲です。火薬のバンって音が怖かったのでしょう。思いっきり目をつぶっています。かわいいな藤谷美和子。しかし、その瞬間に後ろにのけぞる藤谷美和子。どうやら撃ち返されてしまったみたい。しかし、藤谷美和子の弾丸も急所にあたったようで、赤いカマロはゴロンゴロンと転がっています。

大丈夫か、とジョー。しかし、藤谷美和子は何も答えません。あっさり死んでしまったのです。ズカズカとカマロに歩み寄ったジョーは、虫の息の男たちに銃弾を叩き込み止めを刺します。そして呆然としているのです。おっ、そこに清水健太郎がクルマでやってきました。いきなり自分のクルマで、ブォンブォンとカマロを押しています。押されたカマロはそのまま谷底に落ちていったのです。ついでに原田芳雄を病院に連れて行ってくれるという清水健太郎。ありがたく、その申し出を受けたジョーは、藤谷美和子と内藤武敏の遺体をどこかに埋葬するために、ひとりクルマを飛ばすのです。

いきなりのスコールに、びしょびしょになった藤谷美和子ですが、「死んでますから」何も反応しません。このシーンに何の意味があるのかは、凡人にはまったく分かりませんけど、きっと藤谷美和子の我慢強さを藤田監督が試してみたかったんでしょう。もしくは、びしょびしょフェチとか。

ともあれ、クルマを走らせるジョーの目の前にフィリピン軍の検問が迫ってきました。「おい死体が乗っているじゃないか」というような会話がタガログ語で交わされます。とりあえず、アクセル全開で逃げようとするジョー。しかし、軍用ライフルで撃ちまくられてはたまりません。クルマは宙を飛びひっくり返ってしまいました。そこには、眠っているような藤谷美和子の死体、そしてやはり血まみれで、身じろぎもしないジョー

ふっとシーンが変わります。路上でひっくり返っていたクルマは、きれいなきれいなビーチに転がっています。打ち寄せる波。真っ青な空。そしてクルマで死んでいるジョーと藤谷美和子。
おい、まさか。もしかして、これが奇跡ですか。これがオチですか。

とりあえずメタメタな脚本と、お口ポカーンな演出で、この映画の失敗は約束されてしまったようなものですが、それより痛いのが主演の時任三郎です。別に時任三郎という俳優が良いとか悪いとかではなく、単純に向いてないだろ、と。ガラスのように繊細な部分と、どこか破滅を望んでいるような危うい部分、そんなのが同居しているような俳優さんだったら、この映画ももう少しマシなものになったかもしれませんよ。だけど、時任三郎ですからね。

人には人(にん)というものがあります。松田優作や原田芳雄が生真面目な市役所職員をやっても似合わないように、努力とは別の部分で、その人の持つ雰囲気というのが確かに存在するようです。もちろん松田聖子のように、そういった人(にん)をぶち壊して生き続ける人も稀にいますが、これは極めて例外。
そういった観点から見ると、時任三郎をジョーにキャスティングした段階で、この映画は終わったな、と思ってしまうのです。
ついでに、人(にん)に合わない、という部分では田中邦衛の革命家というのも勘弁して欲しいと思います。

ちなみに、フィリピンを舞台にした犯罪者たちの痛快なお話ということなら、三池崇史監督の「天国から来た男たち」というものがあります。日本から逃げてきたか、フィリピンでひょんなことから捕まってしまったのか、という違いはありますが、フィリピンであくどいビジネスに関わる謎の男に見出されるという部分は共通。この映画の主人公は吉川晃司、謎の男は山崎努、ヒロインは大塚寧々ですが、こちらの方が娯楽作品として、はるかに面白いです。

もし、あなたの人生の中で、どうしてもフィリピンの日本人犯罪者を描いた映画を見なくてはならなくなったら、「天国から来た男たち」を観ることをお勧めします。まあ、そんなこともないでしょうけど。


(ミフネっ!)




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