いくらおにぎりブログ

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【映画】処刑の部屋

2008-02-13 | 邦画 さ行

【「処刑の部屋」市川崑 1956】を観ました



おはなし
島田克巳は、U大学の4年生。友人が就職活動で大人しくなっていくのに対し、相変わらずギラギラしている彼は……

石原慎太郎の短編が原作です。原作は細かいところは忘れてしまいましたけど、拷問シーンがかなりの割合を占めるスプラッターな展開。なので、これを忠実に映画化はできないだろうと思っていましたが、やっぱり、その点ではヌルくなってしまったようです。

六大学野球の様子が点描されます。大騒ぎの観客席。次は、キャベツ畑の真ん中に呆然と立っている、しょぼくれた銀行員が映し出されます。共和銀行吉祥寺支店の島田(宮口精二)です。すると、このキャベツ畑は練馬区あたりでしょうか。

しょぼくれた島田が、愛想笑いを浮かべつつ営業活動をして、ようやく銀行に戻ると、そこには息子の克巳(川口浩)がいて、「お父さん、頼みがあるんです」と言い出しました。克巳の連れてきた友人の伊藤が持ち込んだ手形を割って欲しいというのです。もちろん堅実な銀行員の島田にとっては胡散臭い話ですが、聞けば伊藤は金持ちのボンボン。それが家から持ち出した180万円の手形を割って欲しいというのですから、確実を取るか、儲けを取るか悩ましいところです。ともあれ、手形を割るのがダメなら、これを担保に3万円貸して欲しいと言われ、ポケットマネーから3万円を渡す島田です。

「案外簡単だったな」と明るく言って、オープンカーに乗り込む伊藤。そう、伊藤と克巳は、ダンスパーティを開いて儲けるために、その軍資金を必要としていたのです。要は、勉強せずに、遊んでいる学生ということでしょうね。

ということで、ここまでで、実直な旧世代と、遊びまわってる大学生みたいな、いかにも図式化された映像が展開されましたが、まあ何と言うか、ありきたりな感じではあります。確か原作では(うろ覚えですが)、そんな説明は無く、ただ「そこにあるもの」として、無軌道な主人公がポツンと置かれていたので、そちらの方がスッキリしていて良かったような気がします。

さて、久々に授業に顔を出した克巳。どうやら、K大の学生との勉強会が行われているようです。そして、そこでひときわ目立つのは、唯物史観について滔々と意見を述べている青地顕子(若尾文子)です。思わず、実践のない理論は無意味だと、持論を展開する克巳。しかし、教授(中村伸郎)が克巳の話をさえぎって、出版社の連中と出かけてしまったので、とりあえずムカっとするのでした。

ダンスパーティが行われています。客の入りもよく、企画した克巳たちはかなり儲かりそう。しかし、そこに自衛隊とバカにしているJ大学の学生たち(川崎敬三など)が喧嘩を売りに来たので、一波乱。まあ喧嘩っ早い克巳などは、喜んで相手に殴りかかっている様子ですが。

六大学野球の試合が行われています。カードは、U大とK大というライバル校同士の対戦。当然、神宮はものすごい盛り上がりです。というか、U大生にとって、UK戦と、後に続くコンパは一年の中でもビッグイベントの一つなのです。試合はU大の勝ちに終わり、地元の新宿では学生たちが大騒ぎ。もちろん克巳たちも、いい女はいないかと、雑踏で目を皿のようにしています。あ、いました。けっこう美人で、いかにも声をかけられるのを待っている女の子(プラスお友達)が。「付き合っていただけやすかな」「ええいいわ」。ちなみに、克巳はコロっと忘れているようですが、この女の子は、あのK大生の顕子でした。

一通り飲んだ後、小料理屋の座敷に移ったみんな。ここで、伊藤と克巳は女の子をモノにすることにしました。眠り薬を酒に混ぜて、ヤッてしまうのです。早速、薬屋に行く克巳。ついでに、高校時代からの親友、良治を誘うことにしましょう。行きつけの飲み屋に行くと、いました、いました。良治は堅物の吉村と、男二人で飲んでいます。良治に、女の子を眠らせることを話して、お前も来いよ、と誘う克巳。しかし、予想外のことに良治は、それを断わったのです。その上、二人でワルをしてきた日々のことを「若気のいたり」とまで言い出す始末。就職が近くなると、人間ってこれほど変わるものなんでしょうか。それとも、吉村みたいな堅物と付き合って、良治もつまらない男になってしまったんでしょうか。

「俺たちがこれからやろうとする女のひとりはな、お前が熱を上げてたあのK大の女なんだぜ」と吉村を挑発する克巳。「うそだ」と吉村は絶句していますが、ざまあ見ろです。

とりあえず鬱屈した気分のまま小料理屋に戻った克巳は、薬をビールに混ぜて、女の子たちを朦朧とさせて、伊藤のアパートに連れ込みました。もちろんやることは一つです。顕子を取った克巳は、顕子を下着に剥き、顔に平手打ちを数発かまします。「何とか言え、何とか言ってみろ」「これが研究会でちょっとでも俺を感心させてくれた女なのか。女なんかみんな同じだ」。そのまま、克巳は顕子を押し倒すのでした。

やることをやった後、女の子たちをタクシーに乗せてバックレた二人。顕子は「ひどい人ね、何てことすんのよ。警察に言うわ」などと言っていましたが、まあそうなったらなったで言い逃れる自信もあります。しかし、結局、顕子は警察に言いませんでした。むしろ、克巳に「会いたい」という手紙を寄越したのです。

「ねえあなた、この前、どうしてあたしを選んだの」と冷たい表情で、パキパキと喋る顕子。私のことが好きなの、とか色々と聞いてきます。もちろん、そんな女の気を引く仕草に答えようとしない克巳。「だいたい、好きになるって俺には良く分からないんだ」と言い放つのです。「じゃあ失敬するよ、あばよ」と言って去っていく克己を見送る顕子の表情は能面のようです。

やることもないので、暇つぶしにラグビーをしている克巳。それをじっと見ているのは、相変わらず能面のような顔をした顕子。克巳が傍によっても喋りません。そして、そのままプイと歩き出すのでした。思わず、後を追ってしまう克巳です。

その後、克巳に侮辱された吉村が、克巳の悪行を暴く匿名の手紙を、克巳の父に送りつけたり、それが原因で母(岸輝子)が泣いたりしつつ、別れの場面が映し出されました。
どうやら、克巳と顕子は付き合ったりしたようですが、「俺はもうあんたを欲しくないんだ」と克巳は顕子を捨てたのです。まあ、目に見えていたことではあります。

さて、授業中に良治は克巳にダンスパーティをやらないか、と声をかけてきました。高校時代からの悪友が帰ってきたと、喜んで奔走する克巳。父が吐血して倒れたって、克巳にとってはどうでもいい話。それより、良治の復活がうれしくてたまらないようです。しかし、ある日、ダンスパーティの理由を聞いて克巳はガックリしました。良治は、自分が属する勉強会の資金稼ぎのためにパーティを企画していたのですから。それまでの熱中が醒めた克巳は、パーティから手を引くことにしました。

そして迎えたパーティの日。万事、慎重になってしまった良治らしく、警察に付け届けをして派遣してもらった刑事がパーティ会場を警備しています。そんな大人みたいな根回しの仕方も、克巳は気に入りません。こうなったら、いっそパーティの売上金を強奪してみたらどうでしょう。そうしたら良治は、かつてのような野獣のような気概を見せて怒るでしょうか。早速、自衛隊ことJ大の竹島(川崎敬三)に、売り上げの運搬ルートを教える克巳。案の定、竹島たちは喜んで、良治を襲うことに同意したのです。

今、売り上げを積んだ車が出発しました。あとを尾けていくのが竹島たちの乗った車です。会場を飛び出し、高台からその様子を見守る克巳。走る良治の車。追う竹島の車。道をふさがれた良治の車は停車し、そこに近づき窓から顔を突っ込んで、竹島が何かを話しています。さあ、良治、どうする。まさか、素直に金を渡すわけはあるまい。殴れ、殴れ。しかし、何事も無かったように、竹島は金を受け取り、車は去っていきました。

竹島たちのアジトに乗り込む克己。竹島たちは、上機嫌で分け前を克巳に渡しますが、「いらない。この金はいらないよ。その代わり全部返してくれ」と克巳は答えます。良治とグルでからかったんだな、と怒り出す竹島。そりゃそうだ。「良治があんたなんかに、黙って金を取られるなんて、万に一つもあると思わなかったんだ」と答える克巳。いや、それじゃあ、竹島も怒るでしょう。

ああ、やっぱり。子分の一人に、ジンをかけられ目潰しをされた克巳。男たちが取り囲んで殴りつけ始めました。しかし、ふてぶてしい克巳に、みんなももてあまし気味。とりあえず、ベルトで椅子に縛り付けてみたものの、「謝れ」「謝れ」と言いながら、交代で殴りつけるくらいしか思いつきません。そこに、仲間の一人と、その従妹の顕子がやってきました。克巳を見て、一瞬絶句した顕子ですが、「この人に借りがあるの」と言って、克巳を殴ります。へへへと笑う克巳。「何笑うの。笑わないで」と半狂乱になって克巳を殴りつける顕子。しかし、とうとう克巳の足に取りすがって泣き始めてしまいました。その顕子を「どけ」と蹴る克巳。「泣くくらいなら、貸しだの借りだの偉そうなこと言うな」と喚いています。これは許せない、と顕子の従兄が克巳を蹴り倒して首を踏んづけます。このまま力を入れ続ければ、克巳は死ぬでしょう。なんだか、ビビって後ずさりを始めるみんな。従兄も、それ以上何をしていいのか、戸惑い気味です。まさか殺すわけにもいきませんし。しかし、それでもふてぶてしい態度の克巳。一人がナイフを取り出しました。これで克巳が泣き喚けば、みんなで笑いものにできます。しかし、それでも態度の変わらない克巳。「なんだいやれねえのか」「よーし俺がやってやら」と虚勢を張るみんなですが、結局、打つ手がありません。それどころか、克巳に「お前たち、みんな腰抜けだ」とバカにされてしまう始末です。「てっめら、女に気兼ねしてんのか。女なんて恋愛ごっこばかりしたがってる、薄汚ねえもんだぜ」と、さらに暴言を吐く克巳。その時、顕子がサッとナイフを奪い取り、克巳を刺しました。「やった」と叫んで逃げ出すみんな。「あんたが悪いのよ、あんたが悪いのよ」と言いながら、顕子もヨロヨロと去り、克巳だけが残されます。血まみれの克巳。しかし、ナイフは克巳の体を切ると同時に、克巳を縛めていたベルトも切ったようです。

「痛てえなあ。痛てえなあ」「ちくしょう、死ぬもんか。痛てえなあ」と言いつつ、克巳は裏通りを這っていくのです。

とりあえず大学名はボカしていますが、六大学野球で盛り上がり、ライバル校がK大、と言えばW大しかありませんよね。で、W大と言えば「スーパーフリー」事件がありました。5年ほど前ですが、イベントサークルの「スーパーフリー」が輪姦事件を引き起こして、まさにこの映画の「まんま」です。その点では、この映画が将来を予見していたことは、瞠目に値します。

しかし、そこでふと考えます。だとしたら、この映画は何を描きたかったんでしょう。
まず、一つ確認しておきたいのが、石原慎太郎の原作は、無軌道な克巳の「荒れた」心象風景を描くのがメインだったと思われます。しかしそれが映画化されると、なんだか父親の世代と、若い世代のカルチャーギャップみたいな部分にも焦点が当たってしまいました。でも、それは蛇足と言わざるを得ません。だって、最近の若いものは、みたいなフレーズは大昔からの定番ですしね。

では、いつの時代にもいる無軌道な若者の生態を描きたかった?そうかもしれません。戦後すぐのアプレゲールと言われた若者像を初め、こういった若者を文学も映画も、好んで題材にしてきましたから。しかし、そうだとしたら、この映画はちょっと弱いです。

周りの学生はよく描かれています。特に、群れて粋がってはいるものの、実際にはヘタレの川崎敬三とかの人物像は秀逸です。しかし、川口浩演ずる克巳まで行ってしまうと、これはちょっとと思わざるを得ません。要は強すぎるのです。あんたは北方賢三の登場人物か、と思うくらいにタフで頑固。いや、そんな学生いないだろ、仮にいたとしても特殊すぎる、と思ってしまうのです。それに、そんな硬派な奴がダンスパーティ企画したり、酒飲ませて女の子に乱暴しないんじゃないでしょうか。

それはともかく、これが初主演になる川口浩は、まさに大器の予感がプンプン匂ってきます。育ちの良さから来る「お坊ちゃま」な感じと、たいていの遊びはやり尽くしたみたいな「虚無感」。さすが、リアルにサラブレッドだけはあります。

若尾文子は、まだ頬がふっくらしてカワイイ時代ですが、その割に体当たりの演技。下着にされたり殴られたり、能面のような表情を見せたりと、この頃の文子タンとは思えない演技が見ものです。まあ、後に増村保造監督と組んで、あんなことや、こんなことになっちゃいますが、この頃は、あくまで「お嬢さん」役が多かったですからね。その点では、とても貴重でしょう。

ともあれ、川口浩や若尾文子の演技を楽しめるものの、原作がショッキングだったせいもあって、かえって市川崑監督らしさが薄まってしまった佳作、そんな印象を持ちました。

最後に、個人的な意見ですが、こういったダンスパーティ(今ならイベント)とかを企画して、粋がっているお坊ちゃんは大キライです。なので、ホイチョイの映画は、それなりに評価しても、ホイチョイプロの人たちはキライ。まあ、貧乏人のヒガミと聞き流してください。







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