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【映画】女左膳 濡れ燕片手斬り

2008-07-02 | 邦画 あ行
【「女左膳 濡れ燕片手斬り」安田公義 1969】を観ました



おはなし
女左膳と呼ばれる隻眼隻手(片目片腕)の女剣士おきんは、悪い奴らをバッサバッサ。

市川雷蔵が亡くなって数ヶ月。どうも、大映の企画力は低下の一途を辿っているようです。併映は江波杏子主演の「女殺し屋 牝犬」だし。うーん、なんだかなあ。

息を切らせながら走っている町娘のお美津(丘夏子)。どうやら、侍たちに追われているようです。荒れ果てた屋敷に逃げ込んだお美津ですが、「おっ、いたぞ」、あーあ、見つかっちゃいました。
と、そこに出てきた女(安田道代)と、男の子がひとり。女は、白い着流しをさらっと着ているのはいいとして、なんと片目片腕のうえに、刀を背負っているという奇異な姿です。

「雲が出た。雨を呼ぶのか濡れ燕。濡れ燕が血を呼んでいる。安ぼう、この人を頼むよ」。刀を口にくわえ、ギラリと抜き放つ女。「おのれっ。女だてらに何奴だ。名を名乗れ」「濡れ燕のおきん。人呼んで女左膳!」。

まあ当然のように、侍たちはおきんにバリバリ斬られるのでした。

助けたお美津と、安ぼうを連れて、一軒のボロ家に向かうおきん。安ぼうが声をあげます。「おじいちゃん。左膳のお姉ちゃんが帰ってきたよ」。「何度言ったら分かるんだ。左膳なんて呼ぶんじゃねえ。これはお嬢様。やっとお帰りくださいまして」、そう答えるのは、忠義の家臣。五助です。

お美津に事情を聞くおきん。すると、驚くべきことが分かりました。御殿奉公と騙されたお美津は、芝の法成寺に連れ込まれ「地獄絵のようなあさましい」ことを強いられたというのです。「法成寺と言えば、江戸城大奥、お袖の方の信仰篤いという、あの法成寺かい」。

それはともかく、お美津を実家に送り届けるおきん。トントン。こんばんわぁ。げげっ。なんと、一家と奉公人、全員惨殺されてますよ。「遅かったよ。もう少し、早く気がつきゃ」と悔しがるおきんに、「お姉ちゃーん」と安ぼうの声が。フッフッフ。「やっぱり来よったな。貴様か。女だてらに剣を使うというバケモノは」と坊主頭の男が不敵な笑いです。「坊主の回し者かい」とおきん。いや、これも坊主ですけど。とりゃっ。はい、坊主たちサクサク斬られました。

坊主は坊主でも偉そうな坊主がいます。法成寺の門主、高円大僧正(澤村宗之助)です。この坊主は、寺社奉行と「お美津はどうした」と密談中。やっぱり、悪い奴ですね。なんか、手下のやくざを使って、お美津はもちろん、おきんの襲撃を計画しているようですよ。

ということで、五郎蔵(小松方正)率いる神明一家が、おきんの居所を探っています。もちろん、江戸の町衆が、おきんの居場所を漏らすはずもありません。かえって新八というイナセな兄さんが、おきんのところに「気をつけてくださいよ」とご注進に及ぶしまつ。

「面白くなってきたぜ」と、自分から神明一家の賭場に乗り込むおきん。「誰に頼まれた。坊主かい、それとも寺社奉行」。まあ素直に答えてくれるわけもないので、とりあえずやくざの二三人を愛刀「濡れ燕」の錆にして、「ごめんよ」とスタコラ逃げ出すおきんです。

しかし、その帰り道。誰かが尾けてきますよ。編み笠を目深にかぶった侍(本郷功次郎)です。「元青山大膳太夫家来、森作左衛門の忘れ形見、おきんに相違ないな」。堅苦しい侍に、「ああ、そーだよ」とフランクなおきん。「同藩、三輪栄三郎と申す」「なんの用だい」「君命である。濡れ燕を渡せ」。カッチーン。なんだって。そもそも、刀キチガイの青山大膳は、刀欲しさにおきんの父母を殺し、おきんをこんな姿にした張本人なのです。幸い、五助が刀とおきんを連れて、江戸に逃げてくれたおかげで、こうしておきんは生きていますが、そのおきんに刀を渡せとは笑止千万。

「お前さん、私をただの女だと思ったら大きな間違いだよ」、おきんの目がスッと細まります。とりゃっ。切り結ぶ二人。実力は伯仲です。と、そこに酒徳利がぴよーんと飛んできました。見れば、薄汚い謎の浪人(長門勇)が、「待て。この勝負、わしにあずけろ」と言っています。「どきな。あたしゃ、この刀泥棒を叩き斬ってやるんだ」と怒るおきん。「刀泥棒、へぇ、そんな風には見えんがな」と、謎の浪人に言われた栄三郎は「主命だ」と憮然とした表情。なんだか、おきんと栄三郎の戦いはウヤムヤのうちに終わってしまったようです。というか、正確に言うと、生真面目な栄三郎がマゴマゴしている間に、二人ともいなくなってしまったという感じ。

しかし、この薄汚い浪人は何ものでしょうね。「世の中には、どんなことだって知っている奴はいるもんだ」とかうそぶいていますが、どうもただの浪人には見えません(って、当たり前)。

さて、法成寺では偉い坊主が、「若い女は身の薬じゃ」などと言いつつ、秘め事の真っ最中。また、同じ寺の別の部屋では、同じ男女の営みを、秘めるわけではなく、大奥の女たちに見せています。そう、これが法成寺の秘密だったのです。大奥の女たちが、ゴックンと生唾を飲み込んでいるところに、突如、ハハハと笑い声が響きました。おきんです。「こりゃ、しどい見世物だ。極楽どころか、地獄絵だぜ」。キャーッと逃げ惑う大奥の女たち。ちなみに、「しどい」なんて言い方、あんた江戸っ子だね。

偉い坊主の部屋に乗り込んだおきん。「誰じゃ」「お前さんのご趣味にあわない女さ」「何が欲しい」「お前さんの命さ」。うわーっ。隠し扉を開けてスタコラ逃げ出す偉い坊主。えーと、困ったなあ。隠し扉が開かないし。仕方ない、逃げよう。おきんもスタコラ逃げ出します。ともに逃げてりゃ、世話がないですね。

塀の向こうで待っている新八と安ぼうに、「どいておくれよ。あたしだって女だよ」とヘンな恥じらいを見せつつ、飛び降りたおきん。意外と女らしい一面もあるじゃありませんか。まあ、この当時、パンティなんてものはありませからね。着物の下には何もつけないんじゃ、恥ずかしいのも当然です。

しかし、敵もさるもの引っ掻くもの。敵の用心棒に五助が殺されてしまったではありませんか。「ケダモノめ。どうして、あの時斬ってしまわなかったのか」と悔しがっても、後の祭り。せめて、この手で仇は討つ。ザシュッ。おきんの濡れ燕が一閃し、血しぶきをあげ、ついでに前宙返りをして、息絶える敵の用心棒です。

「こうなったら、法成寺と寺社奉行と神明一家。この三つ巴の醜い関係を江戸中に触れまわしてやるんだ」と決意するおきん。早速、新八の仲間の力を借りて、ちらし文をばら撒き始めます。イラスト付きの怪文書の効果はてきめん。ひそひそ。ひそひそ。あっという間に江戸中の噂です。

このちらし文のおかげで儲けた人がひとり。邪魔になった寺社奉行を斬り捨てた偉い坊主は、青山大膳を老中に据えて、悪の片棒を担がせることにしたので、青山大膳はラッキーな感じです。もちろん、タダではありません。お礼に美しいお女中の操を差し出すことを要求されましたが、どうせ家来の妹なんで、タダみたいなものです。まあ、強いて言えば、お女中の操が栄三郎の妹というのが、問題といえば問題ですけど。しかし栄三郎は真面目一徹の男ですから、「君命」と言えば納得するでしょう。

この後、おきんが神明の五郎蔵こと小松方正を「ケダモノめ」とザックリ斬って、小松方正がそれはそれは、派手な死にっぷりで魅せてくれたり、生真面目な栄三郎こと本郷功次郎が、おきんに「頼む、江戸から立ち退いてくれ」とイイ人っぷりを見せたりしつつ、お話は終盤の、このシーンへ。

青山大膳の密命を受けた指南役(伊達岳志=伊達三郎)が、栄三郎に斬りかかりました。危うし、栄三郎。と、そこに助太刀に飛び込むおきん。「さあ、早く行っておやりよ」「すまん」。栄三郎は、偉い坊主の毒牙にかかった妹を助けるために、法成寺に走ります。「みさおー、どこだぁ」「兄上っ、兄上っ」「操、売僧(まいす=偉くない坊主)に身を売るな。そなたは殿に騙されたのだぁ」。操を連れて、得意の隠し扉からスタコラ逃げ出す偉くない坊主。ああ、やっぱり栄三郎も開かない扉の前で途方に暮れていますよ。ホント、役に立つなあ、この隠し扉。さて、ヒミツ通路を抜け、キュラキュラとヒミツ階段を動かした偉くない坊主。階段を登ると、そこは仏像の立ち並ぶ仏堂です。ああ、ひと安心。偉くない坊主は唇を突き出し、操にチューしようとしています。まったく、この非常時に何をやっているんだか。ギギーッ。ほらね。扉が開いて、おきんが現れましたよ。指南役をサクっと斃したおきんは、前回の失敗に懲りて、この仏堂をきちんと見つけたようです。「売僧、死ねっ」、ザシュッ。血しぶきをあげて斃れる偉くない坊主です。

ワラワラとやってくる家来たちを、次々と斬っていくおきん。バタン。タイヘンです、おきん落とし穴に落ちました。「くそー」。そこに「おきんっ」と栄三郎が。「栄三郎さんっ」、よっこいしょ。良かった、落とし穴から出られましたよ。「妹さんは助け出したぜ」「おきん死ぬなよ」「お前さんこそ」、とりゃとりゃ、とりゃーっ。またも家来たちを斬っていく二人。一体全体、敵は何人いるんでしょう。

そこに、現れたのは青山大膳。「あのバケモノを斬れ」「そのバケモノに誰がした。お前さんが欲しがっていた、この濡れ燕の切れ味を、お前さんの体で味あわせてやる」。濡れ燕を振りかざして、護衛を斬り斃し、まさに青山大膳の脳天を叩き割ろうとした、その時。「待てっ」と声がかかりました。そこには謎の浪人です。「お、お前さんは」「これから先は、お上に任せておけ」、ニカッ。

「控えろっ」という謎の浪人の声に答えるかのように、静々と現れる大目付。「大膳どの。追って沙汰を待つように」「ははぁーっ」。ついでに、謎の浪人は大目付に、なにやら耳打ちしています。あれ、二人はおきんの方を見てますよ。なんだよ、感じ悪いなあ、もう。

全てが終わり、しばらくたったある日。おきんは、謎の浪人こと大目付の隠密から、青山大膳が国許で謹慎になったことを聞きました。まずがめでたし、めでたしです。「そこでだ、お前さんはほとぼりが冷めるまで、江戸を離れていてもらいたいんだ」という隠密。フンとうなづくおきん。それはそうとして、どうしても気になるなあ。「ところでお前さん。あん時、大目付にあたしのこと何て言ったんだい」。ギクっ。隠密は動揺しつつ言うのです。「ああ、あれか。わしの女房って言ったんだい」。ふぅヤレヤレな顔をするおきんでした。

安ぼうと旅をするおきん。「おいら、お姉ちゃんの行くところなら、どこへだって付いていくんだい」、二人はテクテク歩いていきます。おしまい。

えっ、栄三郎ですか。ああ、なんか侍を辞めたいという手紙が、隠密のところに来たみたいですよ。


えーと、安田道代の女左膳。悪くはなかったですよ。殺陣もけっこう決まっていたし、本郷功次郎や長門勇の脇もいい感じでした。悪役も、小松方正のやくざ、小池朝雄のバカ殿。それに、澤村宗之助の偉くない坊主という充実っぷりが、素晴らしいです。

ただ、なんで女左膳なんだ。これをシリーズ化でもする気だったのか大映。そんな疑問が湧きあがります。というのも、これが仮にヒットして、続編、また続編と続いたとして、それが安田道代のキャリアになるのかなあ、と。

安田道代を一言で表すとすれば、「遅れてきた新人」でしょうか。美人だし、時代がもう少し早ければ、京マチ子、山本富士子、若尾文子などに次ぐ、大スターになれたんでしょうが、ちょっと生まれるのが遅すぎたようです。結果、出演本数こそそれなりにあるものの、なんだか微妙な役ばかり。この女左膳も、まあ、代表作になりようがない、というか、なって欲しくない、というか。

ちなみに、本郷功次郎も、微妙に「遅れてきた感」の漂う俳優さんではあります。







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2 コメント

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父と子の十字架 (稲妻猿人)
2008-07-04 01:04:29
おひさしぶりですぅぅっ!

なに?覚えてらっしゃらない?無理もありません。
かなり前にコメント差し上げたことのある、稲妻猿人です。

あの頃と変わらず、快調にブログを更新なさってて、嬉しい限りです。
気にはなっていたのですが、ワタシ、普段は映画をほとんど見ないもので、なかなかコメントする機会がなくて、こ無沙汰になってしまいました。

というわけで、“本郷功次郎”の名前に釣られて現れました。
「微妙に遅れてきた感」、なるほど、そんな感じはしますね。

まあ、ワタシ的には、世代的なこともあって、「特捜最前線」の橘警部のイメージが強いと言うかそのイメージしかありません。って、特捜もリアルタイムでは見てないんですけど。

あと、本郷さんといえば、大映の特撮映画でしょうか。ご存知とは思いますが、特捜最前線は別名「特撮最前線」ですからねぇ。
特捜はいいすね (いくらおにぎり)
2008-07-04 11:40:24
おひさしぶりですぅぅっ!

なに、覚えていたかって。ぎくっ。え、えーと。すいません、忘れてました。あわてて、コメントの過去ログを見て、、、ポン。長崎人の稲妻猿人さんでいらっしゃいますね。ほぼ、2年ぶりのコメントありがとうございます。

>「特捜最前線」の橘警部

いいですよねえ。ぼくも、最近スカパー!の再放送をちょこちょこ見て、その渋さに感じ入っております。

あと自宅PCのiTunesで、チリアーノの「私だけの十字架」をループ再生してみたり……

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