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【映画】女死刑囚の脱獄

2007-09-07 | 邦画 あ行

【「女死刑囚の脱獄」中川信夫 1960】を観ました



おはなし
無実の罪を着せられた女死刑囚が、脱獄のうえ、真犯人を見つけます(ちょっと嘘)。

フィルモグラフィ的に言うと、中川信夫監督が「雷電」と「地獄」の間に撮った作品。まあ、脂の乗り切った時期と言えなくもありませんが、そうそう傑作ばかり連発もできないよね、というのが本当のところかもしれません。

今井京子(高倉みゆき)は金持ちのお嬢様。父と、義母、それに血のつながらない義妹の4人家族です。京子にはお父さんの決めた婚約者・明夫(和田桂之助)がいますが、実は貧乏だけど色男の荘一(寺島達夫)とできているのです。

ある日のこと、今井家の4人と、明夫、荘一は揃って鴨撃ちに来ていました。そこで京子は、荘一に「私できちゃったのよ、あなたのベビー」と打ち明けました。しかし、父に話して、と頼む京子に「僕、話すの怖いな」と逃げ腰の荘一は、京子から父に打ち明けるように頼むのです。「じゃあ、その代わりに、ネッ」とイチャイチャする二人。それを物陰から見ていた義妹は、怒りにフルフル震えながら、猟銃とか構えています。なんか、ワケアリっぽいですね。

家に帰った京子は、父に荘一と結婚したいと持ちかけました。当然、父は激怒。さらに「子供ができちゃったのよ」と言い出したのですから、父は大激怒です。いや、この気持ちはよく分かりますね。ぼくだって許しません。しかし、京子は「出て行け」と怒りまくる父を尻目に、出て行かないし、自分にも権利があると言い捨てるのです。えーと、高倉みゆきはヒロインのはずですが、この段階では、とっても嫌な娘なんですけど。

ともあれ、怒り冷めやらぬ中、一人になった父は酒をグイッと呷り、そして死んでしまいました。どうやら、青酸カリが酒に混ぜられてたようです。

早速、宮田警部(沼田曜一)を筆頭とする刑事たちが乗り込んできました。捜査の結果、京子のハンドバックから青酸カリの入った香水ビンが出てくるわ、直前に口論をしていたのが判明するなど、すっかり京子は犯人な感じ。サクっと逮捕された京子は、そのまま死刑判決も確定して、出産後、盛岡刑務所に収監されてしまったのです。

刑務所は恐ろしい世界。同房の君江(若杉嘉津子)は何かと親切にしてくれますが、弓子(浜野桂子)からはレズを迫られ、弓子の愛人のよし子(美谷早百合)からは嫉妬の視線を浴びるなど、なかなか前途多難な感じです。しかし刑務所に、恋人の荘一が面会に来てくれました。残念なことに子供の写真は忘れてしまったそうですが、耳寄りな情報を荘一は教えてくれました。京子のフィアンセ明夫が、事件の日に、こっそり京子の部屋に入り込んでいたというのです。やっぱり、あの男が犯人、と怒りの拳を固めちゃう京子です。もっとも、同房の女囚たちは、めったに面会にも来ないし、来ても子供の写真すら持ってこない荘一の言うことなんか当てにならないと京子をバカにしていますが。

さて、君江が京子に脱獄を持ちかけてきました。もちろん、京子が断わるはずもありません。とにかく刑務所から出て、真犯人を見つけなくては。君江からヤスリを受け取った京子は、夜な夜なギーコギーコと鉄格子を切る作業に没頭です。しかし、ある夜のこと、レズの弓子に作業が見つかってしまったではありませんか。「バラシテもいいのかい」と迫ってくる弓子。京子ピーンチです。このままでは新しい世界に目覚めてしまいそうです。しかし、それを見つけた弓子の愛人のよし子が嫉妬の形相もすさまじく襲ってきました。弓子の首を締め上げるよし子。もう、刑務所は大騒ぎです。慌てて駆けつけた看守に引っ張っていかれるよし子。気絶から覚めた弓子は、男性の医師を見て、「抱いておくれよ」と狂乱。なんだか、ウヤムヤのうちに、房内には、京子と君江だけが残ったのです。これはチャンス。心置きなく、脱走の準備ができるというものですね。

鉄格子を切り、ロープで屋根に上り、建物から建物に飛び移りして、どうにか脱走に成功した二人。とは言え、頑張っているのはほとんど姐御肌の若杉嘉津子だけですが。ともあれ、君江と別れた京子は、盛岡に転居しているフィアンセ明夫のもとに向かうことにします。

トントン、ノックの音にドアを開けて「京子さん」と絶句する明夫。それもそのはず、京子こと高倉みゆきの顔が完全にホラー入っていますから。ヤスリを構えて「父を殺したのはあなたでしょ」と怖い顔で言う京子。しかし、色々と話を聞いてみるとどうも、明夫は犯人ではなさそうです。そもそも動機もありませんしね。「信じてくれますか」と尋ねる明夫に「いいえ、信じられません」と答える京子。しかし、人の良い明夫は、フィアンセでありながら、他の男との間に子供まで作ってしまった京子の無罪を証明するために奔走することになるのです。まったくお人好し過ぎです。

京子を隠れ家に匿って、僕一人で東京に行ってきますよ、と言う明夫。しかし京子は、私も東京に行くと言い張って聞きません。ここからは、ちょっとサスペンスタッチで、盛岡から東京への脱出行が描かれます。変装して汽車に乗り込み、刑事の目を避けるために、汽車のデッキの外にぶら下がる京子。まあ新東宝なので、安いのは言うまでもありませんが。

さて、京子が脱獄したという知らせは、東京の宮田警部の元にも届いていました。それと同時に、義妹と荘一ができているという情報も入ってきます。「ははぁーん」と一人納得した顔をする宮田警部。部下たちは、自分たちが捕まえた京子が"無実だと困る"ので、再捜査に反対しますが、宮田警部は「我々のメンツなんか問題じゃない」と男気を見せるのでした。

密かに東京に潜伏した明夫と京子。自由に出歩けない京子に代わり、明夫は必死の調査を続けます。それを発見した宮田警部との間に芽生える男の友情。もちろん法の番人たる宮田警部は、京子を見つけて「しまったら」、逮捕しなくてはいけない立場ですが、そこは暗黙の了解ということで。

しかし、それをぶち壊すのは京子です。荘一のアパートに電話をして、張り込んでいた刑事に話しかけるは、子供の託児所を覗きに行って見つかるは、やりたい放題。こうなると、さすがの宮田警部も京子を捕まえるしかないじゃないですか。「あたしは無実です」とヒステリックに叫ぶ京子に、「法はあくまで法だ」と冷然と答える宮田警部なのでした。

しかし、一方で義母に張り付かせていた刑事から、義母と荘一が逢引をしているという情報があがってきました。つまり、荘一は義母と義妹の二人と関係を持っていたのです。決まりだ。この事実を義妹に突きつければ、かならず義妹は全てを話すだろう、と確信する宮田警部。しかし、法は法なので、京子の身柄を盛岡から来た刑事たちに渡さねばなりません。そのタイムリミットは翌朝の10時。なかなか見つからない義妹。刻々と過ぎていく時間。はたして間に合うのでしょうか。まあ、間に合わないワケありませんけどね。

ともあれ、確保された義妹に、荘一と実の母が関係していたことを教えると、義妹はペラペラ話し始めました。結局、父を殺したのは義母と荘一だったようです。とりあえず疑いが晴れて良かったね。

オープンカーでドライブをしている明夫と京子。「しっかり掴まってないと、振り落としちゃうぞ」「いやあーん」。もう勝手にしなさい。

ということで、女囚さそりの10年前に封切られた「早すぎた」女囚映画な本作ですが、そこは新東宝。「看板に偽りあり」な感じがプンプン漂ってきます。女囚モノにかかせないリンチはありませんし、お色気度はかなーり低め。しかし、レズの女囚を出してきたところは、なかなか鋭い感じがしました。もう頭がそればっかりで占められてしまったようなパッパラパーな女囚が迫り、高倉みゆきが苦悶の表情を浮かべるところは、なかなかの名シーンです。もっとも、高倉みゆきの場合、演技がちょっと不自由なので、迫力を求めると大間違いだと思います。

沼田曜一は、キチガイ系の演技をさせてもよし、誠実な学校の先生役もまた良し、という新東宝では貴重なバイプレイヤーですが、この映画では「漢らしい」警部を熱演していました。無罪なのは分かっているけど、法は法、見逃すわけには行かない。しかし、時間までには真犯人をあげて見せる、というフツフツとした自信を感じさせる演技がナイスです。

高倉みゆきは、当時の新東宝社長、大蔵貢が「女優を妾にしたのではない。妾を女優にしたのだ」と公言されちゃったかわいそうな人ですが、実際に出演映画を見ても、いつも暗い顔をしています。正確に言うと、居心地の悪そうな表情とでもいうのでしょうか。まるで、私はこの場所(撮影現場)にいてもいいのだろうか、と自問自答しているような表情です。そして、それが結果的に「汚れた肉体聖女」や「嵐に立つ王女」での巻き込まれ型なヒロインにはあっているのですが、この映画ではちょっとムリがあったようです。もちろん、ストーリーのベースは、無罪の罪で死刑判決を受けるという、まさに悲劇のヒロインですが、実際に描かれているのが、高飛車でヒステリックに叫んでいるだけの頭の悪そうな女性像なのです。

これは、脚本が悪かったのか、高倉みゆきの演技力の問題なのかは分かりませんが、結果的にはとても共感できないヒロイン像になってしまったのが残念です。


(無実の罪で死刑囚にされた高倉みゆきは)

(若杉嘉津子の手助けで脱走)

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2 コメント

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リアルだとこうなる? (シャケ)
2007-09-24 11:30:31
ストーリーが進むほど、高倉みゆきの行く末がどうでもよくなってくるという(笑)不思議な映画です。無実の罪で死刑判決→のち脱走というとこまでは、若杉嘉津子もいい感じですごく期待させるのですが。
でも脱走犯が犯人を追い詰めるなんて、ハリソン・フォードでもなきゃ無理でしょう(『逃亡者』も「お前、ほんとなんでもできるのな」という感じ満載でしたし)。
その点では、フツーの人が脱走して真犯人を捕まえようとすると、(リアルだと)こういうちょっとマヌケな感じなのかなあ、と思いつつ見てました。無茶な設定にはヒーローの方がしっくりくるのでしょうね。物足りないですが、これはこれで好きかもしれないです。
逃亡者と比べちゃ (いくらおにぎり)
2007-09-24 16:18:18
シャケ師匠、カラオケ楽しゅうございました。リンダ・リンダ・リンダは聞いていて、燃えました。

で、高倉みゆきですね。ホント、どうでも良い感じですね。とりあえず沼田曜一を見とけ、ってことでしょうか。

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