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【映画】大殺陣 雄呂血

2008-08-20 | 邦画 あ行
【「大殺陣 雄呂血」田中徳三 1966】を観ました



おはなし
市川雷蔵が大蛇を倒すために大暴れ、、、な話ではありません。

いや、冗談抜きで、雷蔵が大蛇と戦う話だと思っていたんですが、どうも違っていたようです。なぜ「雄呂血」かというと、戦前の阪妻作品「雄呂血」のリメイクだから。じゃあ、なぜ戦前の「雄呂血」が「雄呂血」なのかは、聞かないでください。

パカラッ、パカラッ。「どけどけ、邪魔だあ」、そう言いながら馬を疾駆させている侍がひとり。そのまま水無月藩の井坂道場に乗り込んできました。「拙者は岩代藩供頭、樫山伝七郎。隣藩のよしみで一手ご指南願いたい」。要は道場破りみたいなものでしょうが、師範代の小布施拓馬(市川雷蔵)は、慌てず騒がず「あいにく、師範・井坂弥一郎、不在なれば」と対応するのです。当然、伝七郎は悪口雑言を並び立てて挑発しますが、なあに気にしない、気にしない。

パカラッ、パカラッ。再び、馬を走らせている伝七郎は、馬上をゆく水無月藩士たちを見つけると、「お主ら、水無月藩の者は腰抜けが多いなあ」とバカにします。「なにっ、くそー」。どうも、この藩士たちは拓馬ほど人ができていないようで、この伝七郎を後ろから斬ってしまったのです。ちなみに斬ってしまった藩士は片桐万之助(平泉征)といって家老の息子。横で「顔を知られたからにはトドメを」と煽っているのは、御用人の甥っ子、真壁十郎太(中谷一郎)です。

当然、こんなことが起これば大問題に。岩代藩からは殺された伝七郎のお兄さん、又五郎(内藤武敏)が、下手人を出せ、と怒鳴り込んでくるし、師範(内田朝雄)をはじめ、水無月藩の皆さんも困り顔です。中でも困ったのは、家老。なにしろ、自分の息子が「実は……」と告白してきたのですから。うーん、かわいい息子を差し出すわけにはいかないし、どうにかならないものか。

ということで、家老は御用人の真壁半太夫(加藤嘉)に相談。いや、相談ではないですね。息子のことを隠して、あとはどうにかしろ、と命令です。この御用人は、加藤嘉が演じていることからも分かるように、とても誠実なお人柄。まさか、自分の甥っ子まで、事件に関与しているとは露知らず、事件の解決に苦慮します。いったい、どうしよう。そうだっ。

御用人の一人娘・波江(八千草薫)と、拓馬は結婚を控えた、まさに男雛女雛にも例えられる美男美女カップル。しかし、この拓馬を犠牲にするしかありません。「拓馬、これからわしの申すことは、お家の一大事。波江ともども、心して聞いてくれ」。御用人は、伝七郎殺害の件を知っておろうな、と前置きをして、いきなり「その下手人になってほしい」と言い出しました。「何も聞かずに引き受けてくれないか。もちろん、死んでくれとは言わん。ただ姿をくらますだけで……、一年間だ。その間に岩代藩とは誠心誠意、折衝を重ねて必ず話をつける。万が一の場合は、わしが腹を切って、そなたの潔白を証明する」。

いやあ、将来のお父さんにそこまで言われたら断われません。まして、「拓馬殿をおいて、このような大役を忍んでくれるのは、他には見当たらぬ」とまで言われてしまえばなおさらです。結局、来年の春、参勤交代の際に上州高崎まで来てくれ、と頼まれ、拓馬は了承するのでした。さて、じゃあ出奔するか、と出かけた拓馬。と、そこに御用人の甥っ子、十郎太が現れました。「悪いが、残らず聞いてしまった」と言う十郎太は、「なあに、一年なんかすぐだよ」と拓馬を慰めますが、そもそもコイツも現場にいたわけですから、にこやかな顔の裏には、何が隠れているんだか分かりやしません。

旅の空の拓馬。このチャンスに見聞でも広めて、と思ったらいきなり悲運に。なんと、溺れた子供を助けている間に、小悪党の舟次郎(藤岡琢也)にお財布を盗まれてしまったのです。「無いっ」、とショックを隠せない拓馬。旅の始めから、ヒロイックな気分台無しで、ヨロヨロしちゃいます。ちなみに、拓馬は知らないことですが、この頃、生真面目な御用人は心労のあまり卒中で死んだりして、ますます暗雲が垂れ込めてきた感じです。

道路工事の人夫にまで、身を落とした拓馬。「お前は侍だな」と代官に虐められたりしつつ、臥薪嘗胆の日々です。辛い時には、波江のくれたかんざしを見たりして、指折り数えて一年を過ごすのでした。

やったぁ。一年立ちました。いそいそと高崎の本陣に出かける拓馬。でも、なんだか様子がヘンですよ。みんな冷たいし。その上、御用人が真壁様から落合様に変わっているじゃありませんか。「では、真壁様の私との約束、お聞き及びと存じますが」と聞いてみても、「約束。何のことだ」と言われちゃいます。ま、まじですか。そうだ、十郎太ならば、その経緯を知っている。と閃いた拓馬。「お疑いならば、真壁十郎太にお聞き願いとう存じます」。しかし十郎太は「存じませぬ。いっこうに」とトボケていますよ。その上、「波江は俺が妻に貰い受けた」とまで。

神妙にせい、と襲ってきた藩士たちを斬り捨てて、逃げ出した拓馬。思わずグチもこぼれるというものです。「武士の約束とは、こんなものだったのか。醜いぞ、卑怯だぞ」。うわっ、涙が出てきちゃいました。「馬鹿な、馬鹿な。武士の信義、そんなものか。どこにある。ない、ない。どこにもないっ」。

遊び人風のカッコで逃げる拓馬。あっ、またあのイヤミな代官がいる、フンっ。と、その態度に怒った代官が、「えーい、待て。待たぬか」と、刀を抜いて追いかけてきましたよ。シュバッ。抜く手も見せずに代官を斬り捨てる拓馬です。

波江は出奔することにしました。十郎太と結婚したくないのも、もちろんですが、それより拓馬に知らせたいことがあったのです。岩代藩に対抗して結成された拓馬暗殺隊。このことをお伝えせねば。ああ拓馬さま、いったいどこにいらっしゃるの……。と、思って、張り切って出かけたのはいいものの、そうは問屋が卸しません。いきなり人買いにさらわれちゃいましたよ。えっほ、えっほ。駕籠に乗せられさらわれていく波江。まさか、眼前を通り過ぎて行く駕籠に波江が乗せられているとは、夢にも思わない拓馬です。

ちゃっかり、すり寄ってきた小悪党の舟次郎と共に旅を続ける拓馬。岩代藩の追っ手から辛くも逃げ出したり、心中しようとしていた町人を助けようとしたり、まあ色々とありました。そして、とうとう水無月藩の追っ手に追いつかれてしまったのです。「わしが相手をする。手出しはならんぞ」と進み出る師範。しかし、たとえ師であっても、拓馬だって黙って斬られるわけにはいきません。「小布施、斬るぞ」「私も斬るっ」。とりゃっ。拓馬の剣は師範を貫きましたが、しかし拓馬も手傷を負って、崖をゴロンゴロンと落ちていくのです。

うーん。うーん。はっ。拓馬が気づくと、そこは旅籠の一室。崖から落ちて、気を失っていた拓馬を旅籠の娘・志乃(藤村志保)が見つけ、看病してくれていたのです。世をすねていた拓馬ですが、志乃はあくまで優しく、そして時に厳しく接してきます。しかし、そんな親切が息苦しい拓馬。「なぜ、俺をそんなにかまう」「分かりません。ただ、そうせずにはいられないの」。

傷も癒えたある日、二人は近くに散歩に出ました。「志乃さんは俺の何を知っているというのだ。人間の心は、いや俺という人間は、あんたが見ている以上に、もっと愚かで醜いものなのだ」と言ってみる拓馬。しかし、志乃はいつもと同じ菩薩のような包容力で「あなたは可哀想なお人です」と言うだけです。ちっくしょー。ムリヤリ志乃を抱きしめる拓馬。しかし、志乃は悲しげな表情で、「手ごめにされるなら、舌を噛んで死にます。女に愛されたいなら、どうかお侍としての誇りを持ち直してください」と拓馬を諭すのでした。くくく。ダメだ。そう、拓馬は侍の誇りを捨てた身。しかし、悪党にもなりきれず、そんな自分がイヤでたまらないのです。志乃の前にいられず、その場を去る拓馬。もう、自己嫌悪で一杯です。

キャーッ。絹を裂くような志乃の叫び声が聞こえました。慌てて駆け寄る拓馬。と、思わず身を隠します。なんと、岩代藩の追っ手たちが、志乃を乱暴しているではありませんか。拓馬探索のため長い旅を続けている藩士たちは、欲情に駆られて志乃を襲ったのです。しかし、世話になった志乃が犯されるのを助けもせずに、拓馬は物陰に潜んで、ただ時間の過ぎるのを待っているのです。ようやく藩士たちが去りました。拓馬が恐るおそる近づいてみると、志乃は何も言いません。それもそのはず、志乃は舌を噛んで死んでいたのです。

「志乃さん。卑怯で隠れたわけではない。追われる者の悲しい性だ。許してくれ」と、志乃の死体に詫びる拓馬。しかし、そんな言葉は、しょせん自分に対する言い訳です。そしてそれは、自分こそが、一番よく知っていることでしょう。「志乃さん、志乃さん」と拓馬は、ひたすら泣き続けるのでした。

時は流れて、ここは木曾谷の野尻宿。拓馬は今、ここで親分の用心棒をしています。宿場を支配するのは、十手と博打の二足の草鞋を履いている仏の五郎蔵という親分。しかし、どうみても仏という柄ではないような。と、そこに、小悪党の舟次郎がやってきました。拓馬が水無月藩の追っ手に襲われたときにスタコラ逃げ出して以来、久しぶりの再会ですが、舟次郎はまったく悪びれる様子もなく、拓馬をおだてています。しかし、そんな人のよい顔の裏には、恐るべき陰謀の芽を隠していたのです。

「そうか、そういう曰くつきの侍か」と醜悪な笑みを浮かべる仏の五郎蔵。「へい。その上、代官叩き斬ったお尋ね者でございますよ」と、これまたズルそうな笑みを浮かべる舟次郎。二人は、水無月藩、岩代藩の双方に拓馬の情報を売って、ひと稼ぎしようと計画しているのです。準備は万端。後は、拓馬を油断させるだけです。

とりあえず、ご機嫌を取るために、拓馬を女郎屋に連れて行く五郎蔵と舟次郎。さすがに、ここでは刀を外しますもんね。って、おやっ。何ていうことでしょう。さらわれた波江が、ここで女郎になっているじゃありませんか。見つめ合う二人。波江の頬に涙がひとすじ流れます。拓馬は、そんな波江から目を逸らしつつ言います。「五郎蔵、あの女を自由な身にしてやってくれ。頼む」。ちょっと計画が狂ってとまどう五郎蔵ですが、なあに、それならそれで計画を変更するだけです。「わしも仏の五郎蔵だ」と安請け合いのひとつもしてみましょう。ということで、いきなり後ろから斬りかかってみました。とりゃあ。ひょい。うわっ、避けられた。
でも大丈夫。五郎蔵にはまだ余裕があります。「この家の周りは五郎蔵一家だけじゃねえ。代官所の捕り方衆や、水無月藩、岩代藩のお侍たちで十重二十重に取り囲んであるんだ。神妙にしろい」。

なんと卑怯な、許せん。不意打ちをかけようとした舟次郎を斬り、「貴様が仏か」と五郎蔵も斬る拓馬。あとは、この重囲をいかに斬り抜けるかです。しかし、取り囲んでいる人数はたくさん。ざっと百人は越えそうなイキオイです。でも、行くしかありません。

ということで、ここからは殺陣。それも大殺陣です。四方八方から飛んでくる取り縄を切って、敵を斃していく拓馬。梯子の攻撃、大八車の突進。つき転ばされながらも、とにかく斬って、斬って、斬りまくります。「十郎太出て来い」、憎い十郎太を斬り、刀が折れれば脇差で戦いましょう。敵の刀を奪い取りましょう。とにかく、生きている限り、戦うのです。そんな拓馬の姿に、岩代藩の又五郎は言います。「貴様が背後から斬るような武士でないこと、俺は信じる。弟、伝七郎殺害の下手人貴様ではない。その証拠この目でしかと見た」。しかし、もうお互いに引くことはできません。とりゃあ。バサッ。又五郎もまた斃れました。もう、何人を斬ったのか分かりません。しかし、動いている者がいる限り、拓馬は刀を振るうのです。

気づけば、もう誰も立っているものはいません。拓馬に近づき、膝を折って泣き続ける波江。拓馬は、ただ呆然と、その前に立っているのみです。


スゴイ殺陣でした。90分に満たない映画ですが、その後半、10分以上が殺陣に使われています。さすがにこれだけ長いと、普通は途中でダレそうなものですが、その気配は微塵もありません。地面に転がり、這いずりまわり、とにかく敵を斃していく。それでも、雷蔵の一挙手一投足にムダがなく、動きがキレイなのは、さすがというか何というか。思わず見とれてしまいます。ただただスゴイとしか言いようがありません。

それにしても、この時期の雷蔵は「眠狂四郎シリーズ」をはじめ、「陸軍中野学校シリーズ」「若親分シリーズ」「忍びの者シリーズ」をやっているころ。この年の出演だけで10本。それも全部、主役という凄まじさです。そんな中で、これだけの大殺陣を練習して、こなしてしまうんですから、とても人間業とは思えません。つくづく偉大な俳優でした。

ちなみに、この映画は脇役も充実しています。見た瞬間、とにかくカワイイ八千草薫。ひたむきな視線にドキドキさせられる藤村志保。風車の弥七とは違って、憎々しさ爆発な中谷一郎。イラっとくる小悪党の藤岡琢也。そして、とにかく善人な加藤嘉。みんなツボにはまった役どころで、雷蔵を好サポートしていました。







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