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【映画】女の勲章

2007-05-06 | 邦画 あ行

【「女の勲章」吉村公三郎 1961】を観ました


おはなし
ある服飾学院を巡る女4人の葛藤。そして、やり手マネージャーとの虚々実々の駆け引きを描いた作品です。

基本的には京マチ子を主人公に若尾文子、叶順子、中村玉緒の4人が織り成す愛憎の物語なのですが、出来上がってみるとほとんど田宮二郎が主演の映画になってしまいました。

ここは学校の建築現場。大庭式子(京マチ子)が感慨深げに、工事の様子を見守っています。そこに「やあ、また来てはりましたんでっか」とマネージャーの銀四郎(田宮二郎)がやってきました。次々とまくしたてて去っていく銀四郎。それを見ていた式子の内弟子たちの表情は複雑です。
「入って一年にもなんないのに、あのでしゃばり方」と毒づく一番弟子の倫子(若尾文子)。それに同意するのは2番弟子のかつ美(叶順子)です。3番弟子の富枝(中村玉緒)は式子と同じで、銀四郎のことを気に入っている雰囲気。

さて、建物も完成し、いよいよ学校のオープンです。いままで式子の家でこじんまりとやっていた大庭洋裁教室が、聖和服飾学院に生まれ変わるのです。しかし、正規に専門学校になったために色々な問題も出てきました。
中でも大きな問題は、服飾デザイナー協会で言い渡された服飾メーカーや紡績会社との提携問題。どこの学校も、いわばパトロン的な協力会社を持っているものらしいのです。そんなことも知らなかった式子は、会合で大恥をかいてしまいました。

早速、一番弟子の倫子に、どうにかならないかと頼み込む式子。倫子は渋い顔をしていますが、内心ではシメタと笑っています。というのも、倫子は三和織物の宣伝部員・野本(内藤武敏)と肉体関係があり、そのコネでどうにもする自信があったからです。でも、あっさり提携話をまとめては有り難味が薄い。「とっても難しい話を私がまとめたことにするのよ」と倫子は野本と組んで、さんざん焦らしたあげく、倫子のおかげで提携話がうまくいったことにしようと画策するのでした。

いよいよ、式子と倫子が連れ立って三和織物に出かけようという日。銀四郎が、ぼくも行く、と言い出しました。ムッとする倫子ですが、式子は単純に心強いと喜んでいます。
行ってみると、野本は平身低頭で、別の学校との提携が決まってしまったので、今回の話はなかったことに、と謝っています。どうやら、これは本当の話のようです。しかし、銀四郎はどうせ倫子と野本が仕組んだ芝居だろうと、式子を連れてその場を立ち去ってしまうのでした。

銀四郎のセッティングで、一席を設けることになりました。相手は大阪毎日新聞の記者・曽根(船越英二)。曽根と銀四郎は大学の同級生だったのです。とりあえず有ること無いことを吹き込んで、曽根を味方にしてしまう銀四郎。曽根の書いてくれた提灯記事のおかげで、聖和服飾学院の評価もうなぎのぼり、あっさり三和織物との提携も実現してしまいました。
「これから学校内のこと、女同士で勝手に決めたらあきまへんで」と倫子たちに釘を刺すのを忘れない銀四郎です。

夏休み。体調を崩した式子は六甲のホテルで静養をしていました。しかし、ご機嫌伺いに来た倫子に見せる式子の顔は元気そう。すっかり体調も回復したようです。ホッと一安心の倫子ですが、そのホテルに銀四郎も顔を出しました。とりあえずつっけんどんな倫子の態度にも、まったくめげない銀四郎は、その夜、式子に夜這いをかけたのでした。「もう堪忍して、銀四郎さん」と言う式子に、「何言うてはんねん、いい年して」とかまわず迫ってくる銀四郎です。

翌朝、一足先に帰るという倫子を車で送ることにした銀四郎。そう、そのまま倫子のアパートに上がりこみ、倫子まで自分の女にしてしまったのです。さすがというか、何というか。
銀四郎は早速、倫子の利用方法を見つけ出しました。購買部を作って、生徒に売りつけるコンパスや何やらで、利益をピンハネしようというのです。それに気づいた式子は怒りますが、そこは銀四郎とは男と女の関係ですから、どうにも強く出ることができないのです。

銀四郎は次の一手に出ることにしました。大阪は心斎橋の一等地に新校舎建設を建てることにしたのです。当然、そんな資金は、どこを振っても出てきませんから学校債という名目の借金でまかなうことにしました。式子は育ちがいいので、よく分からないまま、全ては銀四郎にお任せモードです。理事の選任についても、理事長の式子を筆頭に、式子のおじさん、銀四郎自身、倫子、それに銀四郎の恩師となんとなく決められてしまいました。

心斎橋にオープンした聖和服飾学院本校。今までの聖和は甲子園校として倫子が面倒を見ることになりました。当然、裏で操るのは銀四郎ですが。そして、銀四郎はすぐさま京都にチェーン校を作る計画をぶち上げたのです。とりあえず、2番弟子のかつ美を誘惑して自分のモノに。ほとんど、ハーレム建設のようですね。

そんな頃、式子は新しく理事になった銀四郎の恩師と親しく話す機会を持ちました。フランス文学を専攻する白石教授がその人ですが、これを演じているのが貴族的な風貌の森雅之ですから、当然、式子はメロメロ。その上、しばらくして式子と再会した教授は、最初は名門のお嬢さん、次に会った時は一流のデザイナーのポーズ、今は実業家の顔をしていますね、と鋭く突っ込んでくるのです。「人間は誰でも何らかの形で、自分を認められたいと思っています。しかし、その認められ方が間違っていたり、狂っていたりすると、その人の人生までが狂ってしまいますよ」と、預言者みたいなことを言い出す教授。さすが、森雅之、説得力抜群です。

さて、銀四郎はとりあえず3番弟子の富枝も自分のモノにしておくことにしました。まあ、何に使えるか分かりませんからね。しかし、この富枝というのは銀四郎以上に食わせ者。銀四郎の手からスルっと逃げたかと思うと、学校直営の縫製工場を作ったら大儲けよ、と銀四郎に吹き込むのです。そして、自分を工場長にしてくれたら……。

とりあえず、銀四郎は工場を建てました。式子に無断で土地の名義を富枝にもしておきました。さあ、これでどうだ。
「ほな寝まひょ」と言う富枝。「えらい事務的やなあ」と銀四郎も呆れ顔ですが、まあ頂けるものは頂いておかないとね。しかし、一回の関係で、次はないと断言する富枝。おいおい、と思う銀四郎ですが、富枝は処女をあげたんだから、これで充分と言い放つのです。どうも、役者が違いすぎるようです。

さて、式子に、そして聖和服飾学院に大きな話が舞い込みました。フランスの有名デザイナー、ジャン・ランベールとの提携話です。まだ日本での生産がなされていないランベールのパターンを入手できれば、これは生徒募集の目玉になりますし、莫大な洋服の売り上げも期待できます。

とりあえず契約のために式子自身がパリに渡って、ランベールとの交渉に臨むことにしました。式子は、タバコをふかしながら、3人の弟子に自分がパリで着る洋服を仕立てさせています。その姿は、完全にマダム。もう京マチ子にぴったりな感じです。
しかし、洋服を仕立てた3人の弟子が帰ったあと、式子はとんでもないものを見つけてしまったのです。それは、縫製工場の土地売買契約書。なんと、名義が富枝の名前になっているではありませんか。慌てて書類を取りに戻ってきた富枝に詰問する式子。
しかし富枝はまったく悪びれず「これ貰いましてん。銀四郎さんに貰いましてん」と答えるのです。そのうえ「うちが3番目だす」とまで言い出す始末。もう式子は、完全に頭に血が上っています。そこにやってきた銀四郎。いつものように調子よく振舞っていますが、式子の顔は蒼白です。
「あたしは今、4分の1だってことを考えてるの」「あたしの体があんたにとって4分の1、たった4分の1だってことを知ったわ」
しかし、開き直った銀四郎はヘラヘラしています。その上、出て行ってちょうだいと言う式子に、それなら慰謝料2千万円を寄越せと言い出すのです。学校がここまで大きくなったのも、全ては自分の手腕があったればこそ、だから慰謝料は当然という理屈です。
思わず顔を覆って泣き出してしまう式子に銀四郎は、
「かなわんなあ。お涙ちょうだい。堪忍しとくれなはれな」と言い残してその場を去るのでした。

とりあえず、とってもショボイ特撮の飛行機で、式子はパリに着きました。どうみてもチャチなエッフェル塔がバックに立っていますが、誰が何と言っても、ここはパリ。パリなのです。
しかし、フランス人は金に汚いので(いや、ぼくの意見じゃありませんよ)、ジャン・ランベールは土壇場になって契約について文句を言い出しました。途方にくれる式子。しかし、偶然にも、ここパリには白石教授が学会で滞在中ではありませんか。早速、教授を頼る式子。都合よく、教授は有名画家と懇意で、そのコネでランベールを説得することもできました。

傷心の式子は、おもわずセーヌのほとりで教授と熱いキスをかわすのです。ホントは隅田川だったりするかもしれませんが、あくまでセーヌ川ということでひとつ。

いよいよ明日は東京のホテルで大々的にジャン・ランベールショーが行われます。そのリハーサルの合間に、式子は銀四郎をホテルの一室に呼び出しました。そこに待っていたのは白石教授。式子は教授と結婚するから、今までの関係を清算して欲しいと銀四郎に持ちかけます。
「今度のランベールショーの利益は全部あなたにあげるわ」
「それだけだすか」
「大阪の本校もあげるわ」
「それだけだすか」
「京都のチェーンスクールもあげるわ」
「それだけ?」
銀四郎の言うには、そもそも本校を建てたのも学校債。その後の京都校、縫製工場も全部、担保・担保で実態は無い、というのです。

こんな時に頼りになるのは白石教授こと森雅之。しかし「結婚は諦めましょう」といきなりぶちかまします。二人は同じ金銭観を持っているようです、とか、仕事をして負債を返して田宮二郎と別れればいいでしょう、などと言ってすっかり逃げ腰。実際、その後に「じゃあ」と言ってそそくさと出て行ってしまいました。さすが、一見カッコいいのに、実は情けない男を演じさせたら日本一です。

ここは、聖和服飾学院の甲子園校。全てが始まった場所です。そこに佇む式子。自らの紋章をかたどったステンドグラスを悲しく見つめています。目を移すと、そこにはボディに飾られた美しいドレスが。そっと裁ちばさみを手に取る式子。あっ、ボディをグサっと刺しました。一回二回。もう、止まりません。京マチ子が鬼気迫る表情で、ボディをメッタ刺しです。怖い。

東京でショーの準備に余念が無い倫子たち。そこに、甲子園校で式子が自殺したという連絡が入ったのは翌朝のことでした。
早速、大阪に向かう倫子たち。銀四郎は、スキャンダルの匂いを嗅ぎ付けて集まった記者たちに言います。
これは、式子がランベールの型紙と格闘した結果の、いわば芸術上の美しい死だと。

式子の死体が霊安室から運び出されていきます。最後の死に化粧を倫子たち弟子の手でほどこされるために。着いていこうとする銀四郎。しかし倫子に「着いてこないで」とピシャリと言われて立ち尽くしました。廊下を去っていく式子のストレッチャー。そこには立ち尽くしている銀四郎のシルエットだけが浮かび上がっているのでした。

いやあ、出てくる人間の誰一人として、ロクな人物では無いというのが泣けてきます。
悪女っぷりをいかんなく発揮している若尾文子。こすっからい叶順子。若尾文子に輪をかけてとんでもない女の中村玉緒。この3人の悪弟子の上に君臨するのが、ホーッホッホと高笑いを始めちゃいそうな京マチ子ですから、これはもう特濃ソースみたいな趣です。特に素晴らしいのは中村玉緒。悪女モードに入った若尾文子の嫌な女っぷりは、それはもう素晴らしいのですが、その上を軽々と飛び越えていく悪女っぷりには目を見張ります。

森雅之は、先にも述べましたが、伝統のヘタレっぷりが全開です。名門の御曹司かつ京大出身という華麗な経歴から来る、まさに威厳としか言いようの無い圧倒的な存在感。そして、それがたった一つの台詞や態度で、ガラガラと崩れ去っていくさまは、まさにナイアガラ瀑布アタックとでも言いたいくらいの、素晴らしさでした。

さて、何と言ってもこの映画は、田宮二郎の映画です。たとえクレジット順が後ろだろうと、完璧に主役は田宮二郎。銀縁メガネを光らせて、コテコテの大阪弁をまくし立てる。出合った女はすべて自分のもの。欲と色の亡者でありながら、不思議と憎めない。そしてなにより、徹底的にハンサム。これだけの条件が揃ってしまったら、もう何もいえませんよね。その上、役名も銀四郎ですよ。なんだか旅回りの一座の花形役者みたいな名前じゃありませんか。

この映画は、田宮二郎が大抜擢を受けて、後のスターダムの足がかりにしたものですが、確かにこれだけの堂々たる演技を、大物先輩女優相手にできたのですから、大成功だったと思います。


(大御所京マチ子を口説き)

(悪女、若尾文子の上をいく悪っぷりで)

(叶順子なんかは、鎧袖一触)

(でも、中村玉緒には、あっさり手玉に取られる)

(そんな、イカス男は田宮二郎)

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