いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】暗黒街の顔役

2008-09-29 | 邦画 あ行
【「暗黒街の顔役」岡本喜八 1959】を観ました



おはなし
小松竜太と、弟の峰夫は暗黒街の住人。しかし、峰夫が足を洗おうとしたことから……。

雪村いづみ主演のロマコメでデビューした岡本監督が、3本目にして、はじめて取り組んだ男性路線映画です。もちろんプロデューサーは田中友幸。そして岡本映画の常連になる佐藤允も印象的な役で出演するなど、岡本喜八ワールドは、まさにこの作品から始まりました。

カチャッ。ドアを開けて入ってくる殺し屋。「誰だっ」という誰何の声に、黙ったまま銃を発射します。待ち構えていた車に飛び乗り、逃げる殺し屋。しかし、対向車のヘッドライトに照らされ、運転手(宝田明)の顔は、ばっちりと食堂の女給(笹るみ子)に目撃されてしまったのでした。

「横光商事」は、横光組の傘下で、焦げ付き手形の回収業を行っています。そこを任せられているのは、幹部の小松竜太(鶴田浩二)。組の中では、頭脳派で通っている彼ですが、その分、組の武闘派、黒崎(田中春男)などからは目の敵にされている様子です。もっとも、組長の横光(河津清三郎)は、竜太の金儲けの才能を買っているので、懸命に黒崎をなだめている状態です。

しかし、そんな状況に少し変化が現れました。それというのも、竜太の弟・峰夫(宝田明)に何か問題がおきたようなのです。竜太が、横光と黒崎に呼び出され、あわてて事務所に駆けつけると、二人は渋い顔。「弟の峰夫に会ったか?」「いえ、あんまり寄り付かないもんで」。「どういう気持ちか知らんが、新宿で歌をうたっとる」と困り顔の横光に、黒崎がかぶせるように言います。「それもだ。例の目撃者のいる食堂と目と鼻の先のジャズ喫茶だ。ふん。エディ・ミネオっていういっぱしの名前でさ。笑わせるぜ」。それは確かに、タイヘンです。目撃者の娘が、万が一にも、峰夫の顔を思い出して警察に通報したら、芋づる式に横光組の殺人がバレてしまいますもんね。
ともあれ、「小松、すぐやめさせろ」と横光に命令されちゃう竜太ですが、はたしてどうなることやら。

「とうとう兄さんを寄越したのか」と悪びれない峰夫。「お前のモンタージュ写真がチラシみたいにばら撒かれてるんだぞ」と竜太に言われても、あまり、コトの重大さが分かっていないようです。呆れ果てた竜太が、思わず峰夫の頬を一発引っぱたいても、「兄さんこそ、ボクの気持ちなんか、分かるもんか」とか言ってる始末ですしね。ともあれ、峰夫は歌手として芽が出てきたので、カタギになりたいと言っていますが、どうでしょうね。

さて、ここは樫村自動車修理工場。樫村(三船敏郎)は、一回横光組から金を借りてしまったばっかりに黒崎に弱みを握られてしまっています。そのため、犯罪用の車を用意させられたり、工場が殺人の格好の場所にされちゃったりと、もう踏んだり蹴ったりもいいところ。まあ、三船敏郎が演じているだけあって、町工場のオヤジとしては「異様」なまでに貫禄があるんですけど、その実、とても怖がりなので、黒崎にちょっと脅されるとすぐヘナヘナです。と、今も峰夫が黒崎の部下に連れてこられて、修理工場でヤキを入れられちゃいそうな雰囲気です。

「ちきしょう、俺を消すつもりか」と過剰反応して、暴れる峰夫。「消してみろ。さあ、消してみろ」と喚くや、全ての秘密を書いた手紙が用意してあり俺が死んだら警察に渡るぞ、と言い出しました。えっ、それはマズイな。峰夫を解放する黒崎たち。しかし、それは「ヤキ」から「抹殺」に方針が変わってしまうことでもあることに、峰夫は気づいているのかどうか。

早速、峰夫にふざけた考えを思いとどまるように、説得に行く竜太ですが、どうもうまくいきません。「兄さん、ボクはほんの下っ端だ。何にも知らないんだよ。撃ったのは、五郎っていう流れ者の殺し屋さ。ボクは運転してただけなんだ」「それだけ知ってりゃ充分だ。カタギになるには突っ込みすぎてる」。どうも、見解の相違が埋まりませんね。

峰夫問題以外にも、お仕事は待っています。竜太は、兄貴分で大幹部の須藤(平田昭彦)と、不良外人コステロのやっている秘密カジノをぶっ潰すことに。と、このシークエンスが素晴らしい。いまいちツメの甘い鶴田浩二に比べ、平田昭彦のカッコイイこと。タキシードに身を固め、敵をパンチでノシていく姿は、あたかもショーン・コネリーな007の趣です。机の上をシュッと滑ってポーズ決めたりして。

それはともかく、とうとう恐れていた事態が起こりました。食堂の娘が、峰夫の顔を思い出してしまったのです。もう、躊躇している暇はありません。峰夫を、そして娘を消さなければ横光組は大ピンチです。須藤の兄貴や、親分の情婦リエ(草笛光子)など、竜太に同情的な面々がいくらサポートしてくれたとしても、もはや娘を殺し、峰夫を殺すのが、暗黒街の掟というものです。

樫村が用意させられた車で、撥ね殺された食堂の娘。その記事を読んで、ようやくシャレにならない立場に追い込まれていることに気づいた竜太は、恋人(柳川慶子)と、そのお腹にいる子とともに逃亡することにしました。しかし、その前に、最後の一曲とか言って、舞台でノンキに歌っているのが、どうにも情けない限りですが。

「逃がしたって、慌てることはねえ」と余裕の横光。それというのも、こんな時のために、竜太の息子で、施設に入っている真一を誘拐しておいたのです。息子をネタに竜太を脅して、峰夫を探し出させる。それでOK。組は万事安泰ですから。

苦悩する竜太は、思わず、兄貴分の須藤に頼みに行っちゃいます。「兄貴、頼む」とかわいい弟分に頼まれ、「ねっ、何とかしてあげて」とリエの好サポートもあって、須藤も決心をしました。「オヤジもいささかヤキが回ったかな」。

しかし、横光の動きも素早いものが。竜太の部屋に殺し屋の五郎(佐藤允)を監視のために送り込み、最後通牒を出してきました。「竜太、時間切ろう。今夜6時。それまでに居所が分からなけりゃ、どっかの子供が事故でやられるぜ」。「知らないものは無理だ」と悲痛な叫びをあげる竜太ですが、えーっと待てよ。そういえば、峰夫は、巣鴨のおばさんのとこに逃げたのかもしれないぞ。早速、横光にご注進です。自分の息子の命のためには、弟なんか構ってられませんよね。

あとは、横光や黒崎が峰夫のヤサを見つけて、自分の息子を返してくれるのを待つだけです。ジリジリ、ジリジリ。うーん、とりあえず、殺し屋五郎を買収でもしてみようかな。金を2倍、いや3倍出すけど、こっちに寝返らない?「オレ、スポーツで言えや、フェアプレイってやつで生きてるんで」。はい、あっさり断わられちゃいました。うーん。ジリジリ。ジリジリ。ブー。ブザーが鳴りました。おっと、息子の施設の、美人先生(白川由美)がやってきたようです。とりあえず、息子は出かけていまして、とかトボケてみる竜太。ブー。またブザーが。何てことでしょう。息子が帰ってきたじゃありませんか。セクシーなリエが、親分の横光に無断で、息子を取り返してくれたのです。やったあ。あとは、美人先生に息子を託して、逃がせばOKです。

「待ちな」。殺し屋五郎が重い口を開きました。サッと緊張する竜太。しかし、竜太が息子のために買っていたオモチャの包みをアゴで指しつつ、五郎は「忘れもんで」と言うのです。

早速、息子を連れて逃げようとする竜田ですが、そこに横光と黒崎がやってきちゃいました。や、やばい。バレちゃった。どうやら、横光たちは峰夫のヤサを見つけ出したようで、竜太に峰夫をおびき出すよう命じにきたのです。ここでゴネたら、間違いなく息子は殺される。やむなく、峰夫をおびき出して、樫村の自動車修理工場に連れて行く約束をする竜太です。

でも、その前に、兄貴に相談しておこう。須藤の兄貴はハンサムかつダンディなわりに男気あふれる性格なので、きっと力になってくれるはず。

「オレも出かけていって相談しよう。遠くへ飛ばすなり、オレが匿うなり、オヤジだって、オレの顔が丸つぶれになるようなことはしないだろう」と、須藤の兄貴は頼もしいことを言ってくれました。「兄貴っ」と感激する竜太に、須藤はさらにこう付け加えます。「まさかの時には、オレにも覚悟がある」。

安心して峰夫を迎えに行く竜太。大丈夫だ、少しくらいはヤキを入れられるかもしれないけど、必ず須藤の兄貴が、力になってくれるから。しかし、修理工場に着いても、待っているのは横光と黒崎で、須藤の兄貴はいません。「どうせ、こんなことだと思ってたよ」と悪態をつく峰夫に、「バカ言え。須藤の兄貴が」と呆然とした表情をかくせない竜太。しかし、須藤が来ないのも当たり前。須藤は以前ヤキを入れたコステロ一味の凶弾に倒れていたのですから。

ニヤニヤと銃を構える黒崎。峰夫の命は風前の灯。と、思ったら、樫村こと三船が切れました。どりゃあ、いきなり黒崎に体当たりをかましています。さすが、世界のミフネ、やるときはやりますね。バコーン。と、後ろから工員(夏木陽介)に殴られる樫村。ああ、子飼いの工員が敵に通じていたとは、ダメじゃん世界の三船。しかし、ここで諦める樫村ではありません。小心者がキレると怖いんですから。いきなり電気ドリルを持って暴れだしましたよ。バンっ。殺し屋五郎も、どうやら、こちらの味方になってくれたようです。「竜ちゃんっ」とリエも駆け寄ってきました。なんだか、いきなり味方がいっぱい、形勢逆転でしょうか。いえいえ、そうは問屋が卸しません。バンバン。あっ、竜太が撃たれました。さらにバンッ。今度は殺し屋五郎まで銃弾に倒れていますよ。殺し屋五郎、とてもニヒルでカッコよかったのに、最期はかなりあっけない感じです。どどど。慌てて電話に走っていく樫村。110番で、警察に全てをぶちまけています。チッ。逃げていく横光と黒崎。よかった、のかな。

「峰夫、自首してくれ」、そう言って、ヨロヨロの竜太は黒崎たちを追おうとします。「どこへ行くんだよ。そんな体じゃどこへも行かれやしないよ」とオロオロする峰夫。「峰夫、この手を見ろ。オレだってこんなに汚れないうちに手を洗いたかったぜ。しかしなあ、こうまで汚れてしまったら、染み抜きも効かねえや。見ろ」、そう言われて、竜太の手を覗き込んだ峰夫は、いきなりパンチを食らってノックアウト。ちょっとマヌケ過ぎです。

リエと共に車に乗り、横光、黒崎を追う竜太。しかし、大量の出血で目がうつろです。「どこか、窓が開いてやしないか」「えっ、どこも開いてやしないわよ」「いやに寒いなあ」。あっ、これはタイヘン。完全に放心状態になってますよ。

一方、車でスタコラ遁走中の横光と黒崎は、警察の非常警戒に引っかかりました。とりあえずトボけてみますが、死の間際に殺し屋五郎の放った弾丸の弾痕があったので、万事休す。「ちくしょう、こうなりゃ」とアクセルを踏んで逃げようとする黒崎。しかし、運転を誤った車は、道路を飛び出し爆発炎上してしまうのでした。そんな様子を停めた車から眺めていた竜太。そのままガクッと、リエの腕の中で息絶えるのです。


なんていうか、見所満載の映画でした。ストーリー自体は、ハードに徹しきれていないというか、主人公の竜太という人物像がヘタレなので、少し物足りません。その点、老舗というか本職ヤクザの東映に比べると、アクが足りなくて不満が残るところです。しかし、それを補って余りあるのが、スタイリッシュな映像と、カッコイイ俳優たちでした。

白塗り系ではあるものの、ヘンに美しい鶴田浩二。左に同じな宝田明。まるでハリウッド映画から抜け出てきたような平田昭彦の粋っぷり。顔はまあ、整っているとは言いがたいものの、存在感抜群の佐藤允。

そして、アレですよ。何と言っても、岡本監督のお友達な三船敏郎の、ドリルを持った怪演。これが最高です。









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2 コメント

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かっこいいな~ (ゆう)
2008-09-29 20:20:29
若親分とはまたテイストの違う男気ものですね。鶴田浩二ゆうたらお茶漬の味でノンちゃんなんつって津島恵子にラーメンの講釈たれてた人ですよね。これも宍戸錠がよくやってた無国籍の活劇みたいなものですか?江戸川乱歩の黒蜥蜴を思い出しました。あれも暗黒街が出て来ます。殺し屋、情婦、ボス、取り引き、麻薬、拳銃、いろいろイメージが湧きますね。
鶴田浩二 (いくらおにぎり)
2008-10-01 10:13:55
いや、鶴田浩二のまとめ方として、それはアンマリな気もしますけど。せめて、昭和残侠伝で、ことごとく健さんと池部良の恋の道行きを邪魔するヤツとか。って、これもアンマリか。

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