いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】愛のコリーダ

2006-11-15 | 邦画 あ行
【「愛のコリーダ」大島渚 1976】を見ました。



おはなし
定(松田英子)は、奉公先の主人、吉蔵(藤竜也)に一目ぼれします。一方、遊び馴れた吉蔵も、定の激しい淫乱さに引きずられ、その虜に。待合に居続けた二人ですが、その行為は止まるところを知らず、ついには定は吉蔵の首を絞めて殺し、陰部を切り取ったのでした。


「愛のコリーダ」はバージョンとして、ブチブチにカットされた、初期公開バージョン。カットの無い、完全版。そしてボカシの無い、フランス公開バージョン、の3つがあるようですが、ぼくが見たのは、カットの無い完全版です。

思いっきり笑わせてくれたり、泣かせてくれたり、どんな形であれ、人の心を強く揺さぶるのが「良い映画」だとしたら、この映画は確かに「良い映画」だと思います。というのも、見ていると、とてもイヤーな気分になれましたから。時間は109分の映画だったのですが、体感的には3時間近い映画を見ているような気分。それも、出口のないカフカ的悪夢の世界をさ迷ったような感じがします。ともあれ、全編に渡って定と吉蔵の性交シーンがこれでもか、これでもかと続くので、ホント見ていて疲れます。だから、もしイヤーな気分になりたくなったら、この映画を観るといいかもしれませんね。その点で、見た後の疲労困ぱい度は、ジャン・ジャック・ベネックスの「ベティ・ブルー」と同等か、それ以上という感じでした。

阿部定事件については、定の生い立ち、カルモチンを買ったこと、シーツに「定吉 二人きり」と書いて、吉蔵の太ももには「定・吉二人」とそれぞれ血で書き、さらに吉蔵の腕には包丁で「定」と刻んだなどと、細かい事実が明らかになっていますが、そこらへんは、この映画ではほとんど触れていないか、改変をしています。
もちろん、「この映画は事件の再現フィルムではない、男と女が愛欲の極限まで行った姿を描きたかったのだ」「この映画は芸術なのだ」と言われてしまえばそれまでですが、なんだか見ていて消化不良な気分になったのも事実です。

それと言うのも、この映画の前年に公開されている田中登監督の「実録 阿部定」では、そこらへんが実に正確に描かれていたからです。別にロマンポルノをバカにしたりする気は毛頭ないのですけど、ぞれにしたって日活でかなり低予算だったと思われる「実録 阿部定」の方が、考証をきちっとやって見ごたえのある作品に仕上がっているのに、なぜ大島渚の映画では、そこらへんがおろそかになって、単なるハードコア・ポルノになってしまったんでしょう。

阿部定役は、松田英子さん。ぼくは、あんまりキレイだとは思えませんでした。まあ、実際の阿部定の顔は知りませんけど、それにしても・・ちなみに「実録 阿部定」の方は、主演が宮下順子さん。こちらは文句無く美人さんです。まあ、主演女優の顔だけで映画の価値は決まらない、ということは重々承知のうえですけど、どうせなら美人の方がいいですよね。

一方、吉蔵役は「実録 阿部定」の江角英明さんもいい俳優さんですが、この映画では藤竜也。もう、これはですね、軍配は完全に藤竜也に上がりますね。何と言っても、ぼくが兄貴と慕う藤竜也ですから。でも、ファンとしては「何で、こんな映画に・・」と思うのも正直なところです。なんか、大林宣彦監督がすぐにデビューしたての小娘を騙して脱がせてしまうように、大島渚の手練手管に兄貴も騙されちゃったんでしょうか。「芸術」って言われて、脱いでしまったんだとしたら、兄貴、それは大きな間違いだよ。

映画の中では、オレンジ色に染まった障子を背景に、室内に神輿がでーんと置いてあったり、人気の無い競技場の観客席を阿部定が走り回る夢のシーンがあったりと、微妙に芸術ぶっているところがイヤです。なんか潔くないんですよね。それに、奥さんの小山明子さんが、キレイな芸者役でちらっと出てくるところも不満。「自分の奥さんにはいい着物を着せておいて、兄貴はチンチン丸出しなのか?おい!」と、言いたくなってしまいます。

ということで、見た後の感想としては最低の映画だったのですが、企画段階ではひし美ゆり子さん(アンヌ隊員)の起用も検討されていたそうで、もしそれが実現していたら、感想は180度違っていたかも知れません。
まあ、映画において主演女優はそれだけ大切だということで。




いくらおにぎりブログのインデックスはここ
いくらおにぎり日記はここ
『映画・DVD』 ジャンルのランキング
コメント (10)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 【映画】陸軍中野学校 | トップ | 【映画】砂糖菓子が壊れるとき »
最近の画像もっと見る

10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
そうそう (ななみ)
2009-06-17 14:43:56
先日、「愛のコリーダ」を見ました。ブログ作成者さんと、ほぼ同じ意見です。最後まで一応見ましたが、結局何が言いたいのかが全く解らない映画だと思いました。また、女優さんの演技も上手いとは言えないとゆうか、定が吉蔵を愛しているようには全く見えず、若い娘が年上の男性に我が儘、癇癪を起こしているようにしか見えなくて、不快にしか思えませんでした。
また、「本番」をする事に芸術は感じられません。
スゴイけれど (いくらおにぎり)
2009-06-18 13:55:47
ななみさん、はじめまして。こんにちは。

ご賛同いただけたようでありがとうございます。しかし、何分にも昔書いた記事なので、言葉足らずの部分があったかもしれません。

ぼくとしては、プラスにもマイナスにも振幅がない映画がダメな映画だと思っています。その点で言えば、この映画はマイナス方向ではあるものの、その振幅は大きいんじゃないかと。つまりスゴイ映画であるとは思います。もっとも、個人的には「再び観たくない」し、「不愉快になる」んですけど。
松田英子さんよかったじゃないですか (yukilot)
2009-07-25 00:22:16
パリに長く住みながら、一度もこの日本人がこぞってパリまで見に来る有名な映画を見ませんでした。パゾリーニのソドムの120日と同じで、ポルノの振りをしたホラー映画に違いないと信じこんでいましたから。フランス人の中には「ロマンチック」と表する人がいましたね。それでも信じませんでした。コワい名画よりメグ・ライアンの駄作の方がいいと思ってました。しかし!!!帰国してからしばらくして(最近ですが)、そう言えば愛のコリーダを見ていない、フランス文化の見落としだと反省し(あんまりフランスで聞かされたので、フランス文化の一部のように思えるようになったのです)、見ました。別にコワくもなかったです。藤竜也さんは素晴らしい軟弱男の典型を作ってましたが、何より松田英子さんが感動的と思いました。かわいい、というか...フラストレーションとストレスと密室が生む嗜虐性のとりこになり、途中で旅館の女中さんをパシパシとひっぱたくところがあり、「よせ、定!」と吉蔵にとめられるところがありますが、なんだかかわいそうで。「結婚してる男なんだから、しょうがないじゃない。相手変えてよ、相手」という気持ちになってしまった。実際の阿部定がどんな人だったかは全く知りませんけど、こういう女性との逃避行は中年男性にとってリフレッシュ出来る瞬間ではないでしょうかね。もちろん、殺されたり死体を毀損されるのは嫌でしょうけども...松田英子さん、スタイルもすごくいいですよね。細いけど強そうで。ともかく、藤竜也さんより「演じてない」感じがポルノじゃもったいないなあと。

書かせていただいてありがとうございました。
かわいいの定義 (いくらおにぎり)
2009-07-25 10:14:39
yukilotさん、はじめまして。こんにちは。
松田英子さん、かわいいですか。yukilotさんの性別を存じ上げないので、仮に女性だとさせていただくと、男性と女性の好みの差かなあ、と。
男性が見る「かわいい」は美人の類型のひとつですが、女性の言うところの「かわいい」は、仕草や生活態度の全般が対象になっているような気がするんですよね。もっといえば、自分に脅威を与えない程度の容ぼうの方を、「かわいい」と定義しているような気がします。
だいたい、ここの点で、男性と女性の違いが顕著になるようです。よくあるパターンとしては、「○子、絶対にかわいいから会ってみなよ」と女友達に紹介されて、会ってみてがく然とする、みたいな。

それはともあれ、人によって、ひとつの映画の解釈や感動が、これほど違うんだな、と再認識できたのは貴重な経験です。ありがとうございました。

初めまして (台湾人)
2009-10-22 16:46:39
やはり性描写が過激過ぎてノーカット版は日本で入手するのは不可能なのでしょうか?

イザベル・アジャーニの「王妃マルゴ」でヴァンサン・ペレーズがイザベル・アジャーニとセックスした後ペニスを正面から見せたシーンは私にとって最初の生々しい性描写でした。
Re:初めまして (いくらおにぎり)
2009-10-23 14:16:34
台湾人(ヴィクトリアズ・シークレット)さん、はじめまして。こんにちは。

実を言うと、映画で性描写が始まると、恥ずかしくて逃げ出したくなる方です。何もそのものズバリを描かなくても、ほのめかす程度で良いんじゃないかと思います。なにしろ「秘め事」っていうくらいですし。
古い映画なのに・・・ (kazu☆)
2009-11-09 01:30:30
はじめまして、kazu(かず)と申します。
つい最近ノーカットを観る機会がありました。
性描写のグロい感じ、すでに1976年に映画にされて俳優が演じてた事実が驚きでした。
松田さんはあの役にはいいんじゃないでしょうか。スタイルもお顔も。時々、小悪魔みたいな顔してますし。

しかしながら、また観たいとは・・・思えません。一度観たらいいかなと、それほど戦慄的な
感想を持ちました。
同姓として、最後の行為は理解できませんが
極限の愛なのか、割り切れないです。

グーグルでヒットしたのでお邪魔しました。
失礼いたします。

Re:古い映画なのに・・・ (いくらおにぎり)
2009-11-09 15:34:52
KAZさん、はじめまして

タイトルにもありますが、これって「愛」なんですかね。いえ、愛のひとつの形として認めたとしても、これは普遍的な愛の形ではないだろう、と思います。

じゃあ、何なのかというと、結局のところ「性行為」のバリエーションの一つに過ぎないんじゃないでしょうか。もちろん、その点において、かなりの極北まで突っ走っていることは間違いないと思いますが。

その点で、KAZUさんの
>極限の愛なのか、割り切れないです
というお言葉に全面的に賛同します。
ベルリン人 (Jacky)
2010-02-13 11:46:04
昨日ベルリン国際映画祭で上映されました。1976年(日仏)当然のこと、ノーカット版です。
やはりすごいですね、当時この映画を作ったのですから。時代のバックグラウンドが今とは想像もできないほど性の表現に関して保守的であった時の作品ですから。

上映前には当時ベルリン国際映画祭フォーラム部門担当者の10分間にわたり、この映画上映までの裏話等があり(この映画は1976年にベルリン国際映画祭ですでに上映されている)、やはりドイツでも検察にこのフィルムは差し押さえられ非常に苦労していた様です。
最高裁迄行き逆転勝利となったとのこと、洋の東西を問わず、時代の先端、次に来るものに対する人間、社会の閉鎖性は似たりよったりですね。

今は2010年ですから、この映画の新鮮さはかなりあせちゃってますが、やはりすごいことをしてくれたということは時代が経てば経つほどに
評価されるのではないでしょうか。
今、男根切除シーンをみると観客は笑って見てましたが、全体としてなにかシーンとして、少し食傷気味(これでもか、これでもかという
感じ)な感慨を受けるほど見せてくれます。

映画の芸術性は言うに及びませんが、事実としてこの阿部定事件が実際に起きていたこと、定の言ったこと、したこと、これを映画が再現するには相当深い見地から物事を見渡さないと
画面からだけの判断では、到底見ることが出来ないかも知れませんね。

Re:ベルリン人 (いくらおにぎり)
2010-02-21 15:05:25
Jackyさん、はじめまして。こんにちは。
実生活多忙につき、激しくお返事が遅れてごめんなさい。

ご意見、興味深く拝見しました。ただ、ひとつ思ったのは、「事実としてこの阿部定事件」というのは、結局、単なる猟奇殺人でしかないんじゃないでしょうか。そして、そこに「物語」を見出し、「芸術」にしたのは、後世の大島渚であり田中登なのだろうと。だから事件そのものに特殊なものが存在するというのは違うんだろうなと考えました。いずれにしろ、「愛のコリーダ」って、人気ありますねえ。正直、ビックリです。

あわせて読む