いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】しとやかな獣

2006-12-03 | 邦画 さ行

【「しとやかな獣」川島雄三 1962】を観ました。



おはなし
団地住まいの前田一家。元海軍中佐の時造(伊藤雄之助)、妻のよしの(山岡久乃)、長男の実(川畑愛光)。そして、今は有名作家(山茶花究)の愛人で、別に住んでいる友子(浜田ゆう子)の4人家族です。
ある日、前田家に実の勤め先の社長(高松英郎)が乗り込んできました。実が使い込みをしたというのです。のらりくらりと言い逃れをする時造。しかし、使い込んだ金のほとんどを手に入れたのは経理の幸枝(若尾文子)でした……


毎度まいど思うことですが、川島雄三監督の映画は、感想文が書きにくくてしょうがないです。表面的にストーリーを追っても、そのエッセンスは伝わらないし、どう書いても「なんか違うなあ」という気分になってしまうのです。ということで、苦し紛れではありますけど、頑張って書いて見ますね。

登場人物はいずれもくせ者ぞろい。これを相撲に例えてみると

<横綱>
三谷幸枝(若尾文子)

芸能プロの会計担当者。前田実が、芸能プロからちょろまかした金を貢がせて旅館を建ててしまう。芸能プロの社長とも関係があり、さらには税務署の神谷(船越英二)とも関係が有る様子。この人には誰も勝てません。








<大関>
前田時造(伊藤雄之助)

元海軍中佐。得意技はのらりくらり。とにかく、人を丸め込んでしまう手腕は天才的。それも、まったく自分の手を汚さずに、息子、娘に詐欺まがいのことをさせているのが知能犯。とはいえ、自分自身怪しげな投資話で金をすっているようなのが情けない。




<大関>
前田よしの(山岡久乃)
時造の妻。得意技はだんまり。一見、夫をたてる貞淑な妻のようだが、ある意味陰のフィクサーかも。若尾文子を見て、「あの方を敵に回すことは怖いですわ」と敵の実力を看破するあたりは、なかなかできることではありません。






<関脇>
前田実(川畑愛光)
時造の息子。芸能プロでは金をごまかしたけれど、ほとんどを若尾文子に貢いでしまう。でも、騙されたあとも若尾文子が忘れられないらしい。そのうえ、ごまかした金のほとんどを家に入れる親孝行(っていうのか)な一面も。とはいえ、芸能プロの社長から、さらに金を引き出すなど実力はなかなかのもの。




<小結>
前田友子(浜田ゆう子)

時造の娘。作家の吉沢先生(山茶花究)の愛人。せっせと吉沢先生から金を引き出しては、家に入れています。そもそも前田家の住む部屋じたいが吉沢先生が友子に与えられたものだったりするので、前田家にとって吉沢先生は最大の金づるです。しかし、友子はけっこう献身的に吉沢先生に仕えたりもしているので、まあ小結程度でしょうか。





<前頭>
吉沢先生(山茶花究)

流行作家。すっかり友子に溺れて、いい金づるになっています。とはいえ、再三にわたる金の無心や、弟の実までもが原稿料をつまみ食いしていることに気づき、激怒。友子と別れることしました。この点では、負け犬ですが、別れ際に前田家に預けてある絵画を持って帰っちゃうなど、ちゃっかりした面も。



<十両>
香取社長(高松英郎)

芸能プロダクション社長。イブニング・プレスリーを呼んで公演を企画するなどかなりのやり手。それに会社の金もけっこう使い込んでいる様子です。しかし、若尾文子に夢中になってしまい、会社の金をつままれるなど、ちょっと情けないです。そのうえ、税務署の調査が近いと知ると、実に自分の使い込んだ部分も、肩代わりしてもらうことにします。しかし、そこでも実に金を要求されてしまい、もう踏んだり蹴ったり。



<ふんどし担ぎ>
神谷(船越英二)

税務署員。若尾文子に魅入られてしまい、納付された税金をあげてしまうという、ある意味、前後関係を考えない行動に出てしまった人。子ウサギのようにおどおどした演技がステキです。前田家に若尾文子がいると聞いて、出かけてきたものの会えず、団地の屋上から飛び降りて死んでしまいます。可哀想な気もしますが、若尾文子と付き合えただけでもラッキーということで。




<青い目の力士>
ピノサク(小沢昭一)

金髪姿がイカス、インチキ外人ミュージシャン。実に出演料を盗まれました。しかし、この役はおいしすぎます。嘘くさい英語を喋りまくり、周囲を煙にまく怪演は一歩間違えると、映画を無茶苦茶にしてしまいますが、あやういバランスで踏みとどまったのは川島監督の力量でしょうか。



この映画は、基本的に団地の一室で進行します。その点では、舞台に近いともいえるでしょう。しかし、川島監督ですから、天井からのショット、床からのショット、覗き穴からのショットと、ありとあらゆる角度から撮影して、映画でなければ表現できない世界を構築しています。もちろん、そういったショットにどんな意味があるのか、そもそも意味があるのか無いのか、はぼくには分かりません。ただ、面白いなあ、と思うだけです。
それは、内容にも言えて、いちおうブラックなスラップスティックコメディという範疇にでも入るのでしょうが、本当にそんなジャンル分けに意味があるのかないのか、そもそも見ていて感じる、不穏な感じというか、ザワザワした気分はコメディじゃないだろう、とも思うのです。

若尾文子の悪女っぷり、伊藤雄之助のピントのずれた悪党っぷりは、それぞれ見事ですが、なにより良かったのは山岡久乃でした。貞淑な妻として、夫の発言や行動を全て肯定しつつも、その発言はあるべき姿から、数センチずれている感じがして不気味です。そして、最後の最後、自殺した船越英二を見つけても、家族には何も言わないところが、何ともいえない悪意を感じます。それに何より、どんな状況でも目が笑っていないのが、さすが山岡久乃と言わざるをえません。

ともあれ、この映画は面白いのですが、「どこが面白いか話して」と聞かれると困惑する映画です。さらに「どこが面白いか書いてみな」と言われると困惑から絶望に。観たことの無い方はぜひ観て下さい。そして、もう観た方はぜひ感想を教えて下さい。本気で、どう言葉にしたらいいか分からないんです。


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