いくらおにぎりブログ

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【映画】女めくら物語

2008-08-04 | 邦画 あ行
【「女めくら物語」島耕二 1965】を観ました



おはなし
盲目のマッサージ師・鶴子は、ふとしたことで知り合った木越のことが好きになりますが……。

タイトルからして、若尾文子が仕込み刀を持って、悪い敵をバッサバッサと斬り捨て御免な映画かと思ってしまいますが、オーソドックスな恋物語でした。でも、こういった映画は、やっぱりNHKとかでは放映できないんでしょうねえ。ほとんど、ピーの嵐になりそうだし、それにタイトルも伏字で、女○○○物語とかになると、かえって扇情的です。

「あたしは16の年の秋、遅い女のしるしをみましてから、まもなく病気で突然、目が見えなくなったにわかめくらです」。雪のようにハラハラとイチョウの葉がふる中で、そのイチョウの木にすがりついて泣いている少女が映し出されます。「なにしろ、両親には早く別れ、一人ぼっちの身の上でしたので、いっときは悲しさと絶望で気が狂いそうでした」。

ピーッ。甲高い音の按摩笛を鳴らしながら、白杖を突いて歩いている女は、この映画の主人公、鶴子(若尾文子)です。「でも、思い直して修行したかいがあって、それからまもなく四谷・津の守の花柳界で、按摩をして働くようになりました」。

モノローグと共に、鶴子が酔客の腰を揉んでいる様子が映し出されます。「でも、女であるために馬鹿にされて、ふざけた真似や、悪さをする方があるので、しみじみ悲しくなることがあります。男の方って、どうしてこうなんでしょう。いくら目が見えないからといって、あんまり女を見くびったやりかたです」。

さて、夜の石段を登っている鶴子は、ふとした拍子にバランスを崩します。「あっ、あぶない」。そんな鶴子を、一人の男性(宇津井健)が優しく抱きとめてくれました。「どこまで行くの」と鶴子に声をかけた男性は、鶴子が上にある待合まで行くと言うと、自分も行くからと手を引いてくれたのです。

鶴子は早速、待合「小花」の女将さんに、今の男性について聞いてみました。「木越さんっておっしゃるの。時々、いらっしゃるのよ」「はあ、木越さん……」。「どうしたのお鶴ちゃん、耳の付け根まで赤くして」。鶴子の心には、恋心のようなものが芽生えたようです。

鶴子は、そのまま療治に向かいます。相手は酒癖の悪いお客さんだそうですが、大丈夫でしょうか。ドタドタ。手探りで廊下を逃げてくる鶴子。やっぱり、大丈夫ではなかったようですね。息を切らせた鶴子はそのまま、「すいません、助けてください」とてきとうな部屋に飛び込むのでした。

追ってきた酔客が、その部屋の襖を開けると、そこでは木越が誰やら女を抱きしめています。「あっ、こりゃ失礼」といぶかしげに去っていく酔客ですが、もちろん女とは、とっさに丹前を羽織った鶴子だったのです。「ハハハ。うまく追っ払ったね」と笑った木越は、鶴子に療治を頼んでくれました。またまたの、嬉しい偶然に、鶴子は夢心地です。木越のその声、その優しさが、好ましく思えてくる鶴子。聞けば、商売がうまく行かなくて鬱屈しているそうで、奥さんとも離婚するらしいのですが、そんなことも、かえって鶴子にはうれしく思えてしまうのでした。

そのため、日ごろ奥手な鶴子ですが、精一杯の勇気で、こう言ってみます。「あのう、こちらへいらっしゃいましたら、また呼んでいただけますでしょうか」。「いいよ」と優しく言ってくれた木越は、こうも言ってくれました。「しかし、君のような美しい人と、しょっちゅう会っていると惚れてしまうかもしれんが、いいかな」。ポッと頬を染める鶴子です。

鶴子は、熊田鍼灸マッサージ療院というところに、住み込みで働いています。仲間は盲人、そうでない人を含めて5人ほど。先生(中村鴈治郎)やお母さんはちょっと厳しいですが、まあ、どこへ行っても、そんなものでしょう。しかし、ある日、糸子(渚まゆみ)という目明きの娘がやってきてからは、療院の雰囲気も変わってしまいました。お母さんの目を盗んでは先生とイチャつき、それを嵩にきて傍若無人に振舞う。そのため、弟子は一人辞め、二人辞めして、なんだかイヤな感じです。

とは言え、鶴子にとっては、それはあまり気になりません。なにより、あの木越さんにまた逢いたい。逢ってお話を聞きたい。そればかりが頭の中を占めているのですから。しかし、木越のお呼びはいつまで待ってもかかりません。「あれからの私は、毎日死ぬほどあの方にお逢いいしたくて、胸がいっぱいでした。めくらでなければ、お目にかかりに行くか、お願いして来ていただくのですが、それもできず、お呼び出しのかかるのをじっと待っている切なさは、按摩でなければ分からない苦しみです」。

療院近くの、石段を登った途中にある、小さなお稲荷さん。そこが鶴子のお気に入りです。うれしかったり、悲しかったりする時。それに、のんびりしたい時も、いつもここに来ます。今日も、ここで鶴子は祈ります。木越さんに会えますように、と。「ああ、お逢いいしたい。一言でもいいから、鶴ちゃんとお声をかけて欲しい」。

そんなある日、木越さんから療治の依頼があったと、療治から帰った鶴子に、お母さんが告げました。いそいそと支度をする鶴子。しかし、お母さんは「代わりに糸子に行ってもらったからね」と言うのです。ガーン。ショックです。逢えないのは、もちろん悲しいですが、療治に行ったのが糸子では、愛しい木越さんが誘惑されてしまうかもしれません。待合「小花」に電話をしてみたり、その前をうろうろしてしまう鶴子。と、そこに糸子が声をかけてきました。「鶴子姉さん、今夜のお客、すごいハンサム。お姉さんでないんで、がっかりしてたわよ」。あの方は私のことを覚えていてくれた、と嬉しい半面、鶴子の胸には、逢えなかった悲しさが、幾層倍にも募るのでした。

もう、ただじっと待ってはいられない。鶴子は、ほんの一回、お逢いした木越さんが、こんなことを言っていたのを思い出しました。確か、芸者の菊千代姐さんが幼馴染だとおっしゃっていたわ。早速、菊千代(万里昌代)のところに出かけた鶴子は、電話をかけて欲しいと頼んでみます。何事も、勇気を出してやってみるものです。なんと、木越は今日、「小花」に行って、鶴子を呼んでくれるというではありませんか。天にも昇る気持ちの鶴子。もし他の療治が入ったら、タイヘンと、芸者屋で待たせてもらって、お呼びの電話がかかるのを待ち続けます。コチコチ、コチコチ。秒針の刻む音を聞きながら、ひたすら待ち続けます。

「それから、ずいぶん長いこと待ちましたが、とうとうあの方から電話はかかってきませんでした」。悄然として歩く鶴子の心には、こんな疑念が巻き起こります。「もしかしたら、あたしは自分勝手にあの方の気持ちを想像して、自分だけで思い悩んでいるのではないでしょうか」と。

糸子が療院から逃げ出しました。お客さんのお金を盗んだそうです。慌てて、自分の貯金通帳を探ってみた鶴子は、それが元の場所にあって、ホッとしましたが、先生はタイヘンそうです。なにしろ、示談にするために、自分のお金で弁償をするそうですから。

寄せては返す波の音をじっと聞いている鶴子。年に一度の慰安旅行で、海に来ているのです。「やがて、仕事に辛い冬も過ぎて春になりました。けれど、あの方には一度もお目にかかれないばかりか、電話ひとつ、かかりませんでした。噂によると、会社の経営がうまくゆかず、つぶれるかも知れないということでしたが、めくらの私にはどうすることもできませんでした。私は目を治し、一日でもいいから、あの方に普通の女として付き合っていただきたくてお金を貯めはじめました。もし目が明いたら、あの方は私をやっぱりきれいだと仰ってくださるでしょうか。前よりもっと、優しくしてくださるでしょうか」。

キキーッ。突然の急ブレーキの音によろめく鶴子。バタン、ドアが開く音がした後、「鶴ちゃん」という声が聞こえました。忘れようにも忘れないその声。「木越さんっ」。商売がうまく行かなくて、ムシャクシャして車を飛ばしていたという木越さんは、「どう、ドライブに行かないか」と鶴子を誘ってくれました。「ええ、気晴らしにうんと飛ばしてください」と車に乗り込む鶴子。確かに木越は、イライラしているのでしょう。タイヤが鳴る音、体にかかる重さ、そんなものからも、相当に車を飛ばしていることが分かります。「怖くないかい」「いいえ、ちっとも。木越さんと一緒なら平気」。キキー。「大丈夫?」「大丈夫よ」。「もしかしたら」「えっ、なあに」「海に落ちるかもしれないよ」「いいわ、死んでもいいわ」。滝のような雨の音がして、木越さんは車を止めたようです。危ないからでしょうか。でも、鶴子には分かっていました。車に乗った時に、かすかに触れた木越さんの心臓が激しく高鳴っていたことを。きっと死ぬ気だったんだ。でも、私がめくらだから、それで同情して、死ぬのを止めたんだ。「ああ、私は目が見えるようになりたい。そうしたら、一人前の女として扱っていただけるかも知れないのに」。

その後、死のうという気持ちを捨てた様子の木越は、6時にまた逢う約束をしてくれましたが、結局、その時間を過ぎても連絡は来ませんでした。そして、そのままふっつりと消息を絶ってしまったのです。

「あの方の消息は、それっきり分からなくなってしまいました。やっぱり自殺をなすったのに違いありません。あの時、私はもっと一生懸命にお止めすべきだったのです。でも、たった二回しかお逢いしないのに、あの方に呼び覚まされた女心はいっこうに消えずに、毎日、私を寂しくさせます」。いつものように、石段途中のお稲荷様でお祈りをした鶴子。帰ろうとすると、前と同じようによろけてしまいました。グッと、たくましい男の手が鶴子を支えます。ハッとする鶴子。しかし、それは木越ではありませんでした。

片目のその男は、謙吉(山下洵一郎)といい、熊田鍼灸マッサージ療院に弟子入りを志望してきた青年でした。あの方が遣わせてくれたに違いない。根拠のないことですが、鶴子はなぜか、その謙吉のことが気になって仕方なかったのです。そしてトラブルメーカーの糸子を連れて、夏がやってきました。悪びれずに鶴子の前に現れた糸子は、先生に渡して、と手紙を押し付けていきます。いくら先生が示談にしてくれたからといって、とても顔の出せる立場ではないはず。それでも、現れたということは、糸子と先生の関係は切れていなかったのでしょうか。

ひそかに糸子と先生が密会をし始めるのと同じ頃、鶴子と謙吉の間にも変化が起こります。端的に言ってしまえば、鶴子はだまされ汚されたのですが、そんな中にも、一種の快さを感じてしまったのです。「私は自分をもう少し、気位が高くて希望を持った女だと思っていました。でもいつの間にか、普通の女のはまり込む道に入り込んでしまっていたのです」。鶴子は、かいがいしく謙吉の世話を焼き、学費まで出してやっているようです。しかし、師匠相手にキレる様子や、出て行くといいながら鶴子のとりなしを待っているズルそうな顔を見ると、どうも、この謙吉という男、鶴子にはふさわしくないようですが。

お母さんが実の姉の看病のため田舎に帰ると、糸子は公然と家に居座るようになりました。「先生が呼んだんだ、見逃してやれよ」と謙吉は鶴子の体を、夜となく日となく求めるだけですし、鶴子としてはどうしようもありません。と、そんなある日のこと。療治に出かけた鶴子が、「あ、アルコール忘れた」と家に戻ると、謙吉と糸子の嬌声が聞こえるではありませんか。「計画どおりごっそりいただいちゃうから」という声も聞こえますから、どうやら二人で組んで先生のお金を狙っているようなのです。思わず、部屋に入り謙吉を引っぱたく鶴子です。開き直った糸子は、憎々しげに鶴子を罵り、あろうことか「あなただって、人の男を取ったのよ。覚えておきなさい」と言い出しました。「ねっ、手切れ金いくら出す。たとえ二月でも三月でも貸してあげたんだから、ただで別れるわけにはいかないわよ。いくら出すのさ」。

やり場のない怒りと、とめどもない惨めさに襲われた鶴子は家を飛び出します。いつものお稲荷様に行くつもりです。しかし、急いだために石段で転んでしまいました。夕立が降りだして、倒れた鶴子の体を濡らしていきます。

「どうしたんですか。気分でも悪いんですか」。夢でしょうか。あの方の声です。「木越さん」「鶴ちゃん」。なんと木越は生きていたのです。思わず泣きだした鶴子を支えるようにして、木越は料理屋に連れて行ってくれました。債権者に追われた木越は、あのとき、そのままホテルから逃げ出し、今はあちこちの友人を頼って、再起を図っているそうです。安堵と、そして木越を待てずに、謙吉などどいう男のオモチャになってしまった自分を恥じて、大粒の涙をこぼす鶴子。「どうした、美しい目が、大きな汗をかいているよ」と木越は茶目を言いますが、それどころではありません。どうしたら、どうしたらいいの。

鶴子は決心しました。「木越さん、怒らないで。お願いがあるんです。私の貯金を使ってくださいませんか。ほんの少しなんですけど」。もちろん木越は、はいそうですか、というような男ではありません。鶴子の気持ちを受け止めた上で、むしろ、田舎に一緒に行こうと言い出しました。今さら再起を願うより、むしろ鶴子と一緒に田舎に隠れるように暮らした方が幸せかもしれない、そう思ったんでしょう。「二人で幸せに暮らそうじゃないか」「でも私、昔の私じゃないんです」。時のいたずらは残酷です。かつての鶴子なら、黙って木越の胸に飛び込めたかもしれません。しかし、今はどうしても。

鶴子の叱咤に、木越も少し考えを変えたようです。確かに鶴子と暮らすというのは、甘え、それ以外の何ものでもないのかもしれない。「鶴ちゃん、ありがとう。君の気持ち、無駄にしないよ」。うれしそうに、じゃあ貯金通帳を持ってきます、と腰をあげた鶴子でも、その前に。「私、もう一つお願いがあるんです」「なんだい」「私、まだお顔知らないんです。一度だけ、触らせてください。触らせて」。いとおしそうに、両手で包み込むように木越の顔を触る鶴子。「やっぱり思ったとおりだったわ。やっぱり」、と、その鶴子の両手をつかんだ木越は、鶴子を引き寄せキスをしました。ゆっくり、優しいキスを。

家に戻ると、お母さんが呆然としています。なんと、糸子と謙吉が金庫を荒らして去ったというのです。ズキン。慌てて、通帳をまさぐって探す鶴子。たしか、ここに。「ああ、良かったぁ」。通帳をつかんで、元の道を急ぐ鶴子。しかし、店にはすでに木越はいませんでした。「あのお客さんなら帰りましたよ。あなたに、ありがたいけど、自分でやってみるから、よろしくって」。会釈をする鶴子の頬には涙が光ります。

石段の上にたたずむ鶴子。「あの方はきっと立ち直られることでしょう。そして、いつかまた、私を呼んでくださるでしょう、お客と按摩として。私には何だか、様々な悩みから抜け出し、めくらとしての安心感が得られたように思います。私もこれでどうやら、一生按摩として、胸を張って生きていくことができそうです」。コツコツ。石段を降りていく鶴子の足音が響きます。


なんとも味のある映画でした。ハッピーエンドではありませんが、しみじみとした悲しみ、そう、透明な悲しみみたいなものが、伝わってきます。若尾文子のモノローグが多用されるのも、またいい感じです。あの若尾文子独特の蠱惑的な声で、しっとりと語るモノローグ。もう、それだけで一つの芸術です。

宇津井健は、あまり良くなかったかな。任にあっていないというか。宇津井健は借金取りの前から逃げ出すようなイメージではないし、宇津井健に惚れられた女性は「絶対に」幸せになると、個人的に確信しているので、すこし違和感があります。

この映画の若尾文子は、とてもしっとりとした、ひたむきな女をうまく演じていました。同じようなひたむきな女を演じた「波影」では、若尾文子のキャスティングに少し疑問を感じたりもしたのですが、この映画に関しては、まったく文句のつけようがありません。というのも、若尾文子を引き立てる相手役がいたからです。それは糸子役の渚まゆみ。なんていうか、しゃべり方から態度から、これ以上ないというほど、憎たらしいです。もう悪女中の悪女。汚い言葉ですが、これこそビッチと言わざるを得ません。この人は、「濡れた二人」でも、ビッチぶりを発揮していて、若尾文子を引き立てていましたが、スゴイ人ですねえ。キレイな顔から、どこまでも汚い言葉が悪意を込めて吐き出される。なんていうか、ビッチの中のビッチ。クイーンオブビッチの称号をあげたいくらいです。

ともあれ、若尾文子が好きなひと。せつないラブストーリーを観たいひと。そして、ビッチ好きな人には外せない映画だと思いました。







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