いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】お勝手の花嫁

2007-10-15 | 邦画 あ行

【「お勝手の花嫁」川頭義郎 1955】を観ました



おはなし
選挙に落ちて悄然としている嵐の家に新しい女中さんが来ました。気立ての良さで、地元の青年にもすぐ惚れられてしまった彼女ですが、面白くないのは嵐家の行き遅れの姉妹たち……

川頭義郎監督のデビュー作です。いわゆるシスターピクチャと呼ばれる、1時間ほどの小品ですが、そこは木下監督の愛弟子だけあって、出演者は豪華です。もちろん、脚本も木下恵介おん自らの提供。まあ、これを過保護と取るか、監督デビューしても木下監督に頭を抑えられている、と取るかは微妙なところですが、ともあれ木下ファミリーは鉄の結束でガッチリまとまっているみたいですね。

「おばあさーん」と湘南の海岸を走っている青年。そのおばあさんはと見ると、今にも海に沈んでしまいそうです。実は、このお婆さん、自殺常習者というか、狂言自殺の常習者なのです。お婆さんの名前はきぬ(三好栄子)、男は血はつながっていませんが、孫の勇(佐田啓二)です。

リンリンと電話の音。「電話がリンリン鳴ってるのが聞こえんのか」と怒っているのは、嵐家の当主、正行(日守新一)です。とは言え、このお父さんは養子なので威厳のないことおびただしく、その上、先日の選挙で片山哲に負けて落選してしまったので、すっかり家人にバカにされているのです。その家人とは、妻の加奈子(岸輝子)、娘の梅子(日塔智子)、ルリ子(山本和子)、それに、ここにはいませんが先ほどの青年・佐田啓二と正行の義母である三好栄子です。

電話は佐田啓二からでした。海に入った三好栄子を助けて、近所の「片山哲」の所に運び込んだというのです。頭を抱えるお父さん。選挙で負けた上に、こんな恥をかくなんて、もう。
ところで、片山哲は社会党の政治家。短命ではありますが、総理大臣も勤めた人です。それを映画でいきなり実名を出していいんでしょうか。当時の状況が分からないので、さっぱり意味不明です。

さて、ゴタゴタ中の嵐家の呼び鈴が鳴りました。出てみると「嵐さんですね」と立っているのは爽やか好青年の谷村繁(田村高廣)です。田村高廣は道に迷っていた女中さんを、親切に案内してきてくれたのです。その女中さんは久子(久我美子)といい、とってもキレイ。嵐家の二人の娘が、かなりアレですから、余計に目立ってしまいます。

<数日後>三好栄子は久我美子がすっかり気に入ってしまいました。今日も、買い物途中の久我美子を誘って、ソバ屋でクダをまいています。曰く、自分は後妻だったので日守新一とは血がつながっていないこと。日守新一は養子なので、妻にまったく頭が上がらないこと。自分を引き取ったのも、選挙対策でカッコつけるためだったことなどです。

そんな話をしていると、三好栄子が「おやまあ、来たよ、来たよ」と素っ頓狂な声を上げました。爽やか好青年の田村高廣がオート3輪で登場です。荷台に乗せてもらう久我美子と三好栄子。田村高廣は♪ぼくの好きなローザ♪といきなり歌い始めてしまいました。上手いけど、いきなり過ぎです。でも久我美子はそれに、すっかり聞き惚れているようす。なんか目なんてトローンとしているんですけど。

町会長さんから電話が入りました。どうやら縁談を持ってくるようです。私よりあなたよ、と押し付け合いながらも、ワクワクドキドキしているオールドミスな姉妹。すっかりその気で、めかし込んだりしています。しかし、蓋を開けてみれば、田村高廣が久我美子をお嫁さんにしたい、という話だったので、怒る姉に、泣く妹。母の岸輝子も「お前は女中ですよ。この家の女中ですよ。その女中が来るそうそう男を作って」と久我美子に怒りをぶつけています。

そんなこんなで、ヒートアップしている嵐家。そこに長男の佐田啓二がフラれたと帰ってきました。それどころじゃない、と日守新一に顔をはたかれ、岸輝子にも顔をはたかれる佐田啓二。久我美子は泣き出し、姉妹も泣き出し、殴られ損な佐田啓二なのでした。

<数日後>三好栄子は、近所でいかに嵐家の人が冷たいか、いかに久我美子が迫害されているかを吹聴しまくっています。あらまあ、と聞き入る近所の人たち。
日守新一が家に帰るなり、「加奈、わしは今、やなことを聞いてきちゃったぞ」と言い出しました。「世間では俺たちのことを何て言ってるか知ってるかい」「お前のことなぞはボロクソだぞ。角が3本生えてるって」

一方、佐田啓二は「そうだ!」と手を叩いています。お婆さんの三好栄子に「あんないい子、ちょっといませんよね」と久我美子のことを聞いて、「そうか、やっぱり僕のインスピレーションは間違っちゃいないんだ」と一人納得しています。そうと決まれば早いほうがいい。母に「久やを貰ってください」と言い出す佐田啓二。とりあえず「馬鹿おっしゃい」と引っぱたく母の岸輝子。どうでもいいんですけど、さすが岸輝子は俳優座の創設メンバー。芝居がリアルです。というか、思いっきり佐田啓二の顔に平手打ちが決まっているんですけど。仮にも松竹屈指の二枚目俳優に何てことをするんだか。

こう噂が広がってしまっては、久我美子を辞めさせたりしたら、ご近所から何を言われるか分かったもんじゃありません。「女中ひとり追ん出すこともできないなんて」と悔しがる岸輝子。でも、そんな言葉は、全部久我美子に筒抜けだったのです。シクシク泣きながら荷物をまとめて出て行く久我美子。ところが、家を出ると、田村高廣が「どうしたんだ、いったい」と声をかけてきたのです。「君が虐められてるって噂を聞いたもんだから」、うーん、やっぱり田村高廣はいい人だ。「実は僕、君の田舎に行ってきたんだよ」、うーん、ちょっとそれはどうなんだろう。

ともあれ、ど貧乏な久我美子の実家を見てもめげず、お互いに助け合って行こうよ、と言う田村高廣。
「ねえ、いいのかい。僕で」「そりゃいいに決まってるわよ」
「いいんだね、ホントにいいんだね」「とってもいいわよ」
久我美子、返事が直球ど真ん中過ぎです。

田村高廣の父は、土方から身を起こしてひとかどの社長になった男。そのお父さんが嵐家に挨拶に来ました。とりあえず、調子よく理解ある主人の振りをしてしまう日守新一。もちろん、裏では母と娘二人が、ぶつくさと文句を言っているのは言うまでもありません。それでも、一応は田村高廣と久我美子の仲は公認されたので、本当に良かったですね。

しかし、久我美子が幸せになった分、嵐家にはフラストレーションが溜まっているようです。ある日、とうとうお父さんとお母さんが大喧嘩を始めました。「出てけ。茶の間に出てけ」と怒鳴る日守新一。あ、ほら養子ですから、家は奥さんのものなのです。むろん岸輝子も負けてはいません。久我美子にクビと言ってみたり、イヤミのし放題。

ぶっちーん。とうとう久我美子もキレました。「あたしもうしばらくいさせていただきます。まさか結婚式もしないで、(田村の家に)入り込むわけにもいきません。谷村さんのお母さんの四十九日が過ぎるまで……その代わり、それまでは谷村さんとお会いしません」

あろうことか、お婆ちゃんの三好栄子は家出して、田村高廣の家に入り込んでしまったようです。まあ、エンジェル田村高廣ですから、気にもしていない(ワケはないでしょう、さすがに)。

とうとう、久我美子が辞める日がやってきました。「明日の朝、お暇をいただきたいと思いまして」と深々とお辞儀をする久我美子。しかし姉妹は、ひたすら悪口を言っています。「イヤな女」「無知で教養が無くて、おまけに気が強いときてるんだから」。

日守新一は、真面目な顔をして岸輝子に言います。
「加奈子。お前、この娘たちの言っていることを聞いて、どう思う」。ここでの岸輝子の演技は絶品。瞬間的に後悔して、自分を恥じた様子が、顔の表面にさっと走るのです。
「俺はつくづく女がイヤになったよ」と言って立ち去る日守新一。岸輝子は娘を叱り付け、「あなた」と日守新一を追うのでした。

最後のご奉公と、夜ひとり洗濯をしている久我美子。あ、もちろん洗濯機なんてない時代ですから、たらいと洗濯板を使ってですよ。と、そこに聞き覚えのあるメロディが聞こえてきました。♪ぼくの好きなローザ♪のメロディです。あわてて、外に飛び出す久我美子。すると、そこには口笛を吹きながら歩いている田村高廣がいたのです。「谷村さん」と声をかけられて、満面の笑みで寄ってくる田村高廣。ほとんど犬です。それも尻尾をちぎれるほどに振っている子犬。

「口笛吹くなんて不良みたい」という久我美子に、「恋をすれば誰だって多少、不良になるさ」というエンジェル田村高廣。うわっ、全然似合ってないです。「まあイヤな人」という久我美子を抱き寄せてキス。ビックリして逃げ出した久我美子は家に戻ると……洗濯を続けるのでした。いやあ、女性は現実を生きているんですねえ。

田村高廣と久我美子は、二人の田舎にあいさつ回りをすることになりました。駅のホームでは、佐田啓二が見送っています。お祝いにあげるよ、とブローチを差し出す佐田啓二。「ぼくサッパリしてるだろ。クヨクヨしないんだ」。素晴らしい!、こんな台詞を吐いてイヤミにならないのは、世界広しと言えども、佐田啓二くらいしかいませんね。

そこに日守新一と岸輝子も見送りにやってきました。自然に「万歳、万歳」と叫びだすみんな。列車は駅を出て行きます。そして、列車には、ペロリと舌をだした三好栄子もチャッカリ乗っているのでした。

まあ、他愛の無い話でした。短い尺に、久我美子の恋愛話と、日守新一一家の話を詰め込んでいるので、どちらも食い足りないし。とは言え、のちの「涙」につながる要素もあるので、見逃せません。

「涙」では、松竹最強の末っ子キャラである石浜朗、どこまで人がいいんだと思わせるエンジェル田村高廣、それに白い歯もまぶしい爽やか好青年の佐田啓二が、3人一組で若尾文子の相手役を勤めていましたが、この映画では田村高廣と佐田啓二のみ。そのため、末っ子キャラの「ぼくちゃん」部分を、田村高廣と佐田啓二で分け合う形になっています。

その結果、田村高廣は人がいいけどファザコン気味。佐田啓二は爽やかだけどマザコン気味と、どうにもヘンなキャラクター造形になってしまったのが惜しいところです。

それに、この映画の目指しているところもよく分かりません。ライトなコメディを作りたいのか、メロドラマを撮りたいのか、なんだか虻蜂取らずになってしまいました。

とはいえ、やっぱり田村高廣や佐田啓二は魅力的ですし、見ていて安心できる作りです。生意気な言い方になりますが、デビュー作としては無難にしあげた佳作ではないでしょうか。

それにしても、摂家に次ぐ清華家にして、侯爵家でもある久我家のお嬢様を、女中にキャスティングしたのは、すごいな。久我美子といえば、どちらかというと奔放なお嬢様役が多いです。中には市川崑の「億万長者」のように土方仕事の合間に原爆を作る不思議少女なんて役もありますが、それにしても召使ではありませんからね。ところが、この映画は女中。それもいびられちゃう女中ですから、かなり思い切ったなあ、と感じました。

ともあれ、久我美子は日本の女優の中で、最大最強のお嬢様です。華族女優として評判だった入江たか子ですら子爵家ですし。そんな久我美子をしのぐお姫様女優が、今後出るとすれば、ぜひ眞子内親王になっていただきたいですね。眞子さまが女優になったら、人気出ると思うんですが。







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