いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】脂のしたたり

2007-03-20 | 邦画 あ行

【「脂のしたたり」田中徳三 1966】を観ました



おはなし
怪しい値動きをする明昭工機の株に不信を持った八代証券調査部員の仲田は、早速調査を開始します。すると浮かび上がったのは、名和雪子という謎の女。調査を進めるにつれ、人が一人また一人と死んでいきます。事件の背後に蠢く三国人の影。果たして仲田の運命やいかに。

とりあえず「三国人」という言葉がたくさん出てきます。まあ、石原都知事が言い出す前は、実質的に死語だったのですが、この頃はバリバリ現役の言葉だったのですね。

証券取引所の風景から映画は始まります。場面変わって兜町を颯爽と歩く仲田(田宮二郎)。しかし会社に戻ると、調査と称してフラフラしているのを課長に怒られてしまいます。まあ、田宮二郎が、会社のために滅私奉公をするわけはないので、課長の怒りももっともですけど、それで田宮二郎が恐れ入るはずもありません。

と、そこに美人のお客さん(富士真奈美)が来ました。とりあえず聞き耳を立てる田宮二郎。富士真奈美は、どうやら名前を隠して明昭工機の5万株を買いたいと言っているようです。美人と金儲けの匂い、この二つが揃って黙っている田宮二郎ではありません。早速、会社をでた富士真奈美の後を尾けて、明昭工機の株なら持っている人を知っているんだけどと、ナンパ兼情報収集にかかりました。

しかしアッサリと一蹴。しかたなく田宮二郎は明昭工機に直接乗り込むことにします。株式課長に探りを入れた田宮二郎は、そこで株式課長とコソコソ話をしている謎の男(成田三樹夫)を見つけました。なんか怪しい、そう田宮二郎の勘は告げています。

翌日、理由も告げられないまま明昭工機の1万8千株をホテルに届けるように課長から命令された田宮二郎。約束の場所にいたのは、昨日の謎の男、成田三樹夫でした。届けたついでに、色々と聞き出そうとする田宮二郎ですが、またまたアッサリと一蹴されてしまいます。取り付くシマのないままホテルを出た田宮二郎の目の前には富士真奈美が。もう、完璧に怪しい。これは絶対、買占めだと確信した田宮二郎はお客の金を突っ込んで、とりあえず明昭工機の株を買い漁ることにしたのです。

しかし、どんな裏があるのだろう。そう思った田宮二郎は、昔の彼女を頼ることにしました。今は雇われマダムをやっている敏子(久保菜穂子)は、かつて田宮二郎の恋人でしたが、田宮二郎が株で大損をした時に、身を持って金を調達してくれたのです。その時、金を借りたのが凄腕情報屋の風間(鈴木瑞穂)。もちろん、直接お金で久保菜穂子を売ったわけではありませんが、以来なんとなく久保菜穂子とは疎遠になり、久保菜穂子は鈴木瑞穂の愛人になっているのです。

ともあれ、凄腕情報屋の力が必要な田宮二郎は、行きがかりを捨てて鈴木瑞穂に再会しました。すると鈴木瑞穂もさすが凄腕、明昭工機に絡む何かきな臭い匂いを感じていたようで、
「お互いに狙っとる獲物は同じだろ」と共同戦線を張ることにしたのです。

鈴木瑞穂のつかんでいる情報によると、明昭工機の買収事件の裏には、難波証券の社長・難波(須賀不二男)と、三国人の李石尚(金子信雄)、さらに氏名不詳の男がからんでいるようです。彼らに共通するのは、戦前に特務機関に関係していたこと。だんだん謀略の匂いがしてきました。同じ特務機関に関係していた男が大坂にいる、と鈴木瑞穂に教えられ、早速大坂に乗り込む田宮二郎。新聞記者に変装したりして、もはや証券会社の調査員の範疇を越えているような気もしますけど。ところが、大坂の不動産屋・滝沼(守田学)は一味の一人で、あやしい奴が嗅ぎまわっているという警告を貰っていたから、さあタイヘン。田宮二郎はあっさり正体を見破られ、ボコボコにされてしまいました。

しかし、田宮二郎がボコボコにされたのも意味があったようです。滝沼が一味であること、さらに明昭工機の株式課長も仲間らしい、と聞いた鈴木瑞穂は、瞬間的に真相を見抜いてしまいました。今は、業績のパッとしない農機具メーカーの明昭工機ですが、戦前は軍需企業。つまり、会社を買収すれば、すぐにでも武器の生産は可能です。それをアジアの紛争地域にこっそり売り込めば、莫大な利益が上がるはず。それが、彼らの目的に違いない、というのです。
正義のために「かならず暴いてみせる」と言う鈴木瑞穂に、田宮二郎も「だんだん、あんたが好きになりそうだ」と固く協力を誓うのでした。

しかし真相に迫ってきた田宮二郎は、成田三樹夫の部下に拉致され、「明昭から手を引け」と、またまたボコボコに。
さらに富士真奈美から電話が入ると、またノコノコと出かけていく田宮二郎。まったくコリていません。どうやら富士真奈美は三国人の金子信雄の「奥さん」らしいのです。相手が敵か味方かも良く分からない(というか敵っぽい)のに、情報交換を持ちかけられた田宮二郎は、調査結果を喋る、喋る。挙句の果ては「あなたが欲しい」と一緒にホテルに行ったはいいものの、睡眠薬を飲まされて昏倒です。どうも、脇が甘いような気がしますね。

一方、鈴木瑞穂は株式課長に電話をします。買占めの証拠は握っている、重役にバラされたくなかったら、全てを教えろというのです。「ヘタな真似はしなさんなよ」と、念を押すのも忘れません。ところが電話を切った直後に、さっそく成田三樹夫に電話をしてしまう株式課長。いかん、鈴木瑞穂もツメが甘かったようです。
結局、約束の場所に現われたのは一味の人間。哀れ鈴木瑞穂と株式課長は、成田三樹夫に殺されて、海に浮かぶハメになってしまったのです。

悲しみに沈む久保菜穂子。そう、最初は金のためと割り切っていたのですが、いつしか鈴木瑞穂の誠実な性格にすっかり惚れていたのです。田宮二郎は懸命に慰めますが、久保菜穂子は「あたしが探ってみる」と言い出しました。もちろん田宮二郎も協力を申し出ます。金儲けのため、と久保菜穂子に聞かれ「それだけじゃ済まなくなったんだ」と答える田宮二郎。三国人が「痩せた日本人の血を吸ってブクブクと太っているんだ」と正義の戦いをアピールです。でも「それだけじゃ済まない」ってことは金も欲しいということですよね。やっぱり田宮二郎らしいや。

手がかりはひとつあるんだ、と言い出す田宮二郎。それは、ときおり姿を現す謎の男(成田三樹夫)の正体を探ることです。
「蛇のような男。能面のような無表情で冷たい顔をした男なんだ。名前は分からない」
久保菜穂子は答えます「うちのクラブのマネージャーもそんな男だわ。桂って言う名前なんだけど」
ついでに、そのクラブのオーナーが三国人だということも分かり、もう謎の男が桂、というか成田三樹夫であることが確定しました。しかし、「蛇のような男」で特定されてしまう成田三樹夫って可哀想すぎます。

田宮二郎は拉致されました。もう何回、拉致されたら気が済むんだよ、と思わないでもありません。ところが、今回連れて行かれたのは、明昭工機の社長の家。寝たきりの女社長は、田宮二郎に持っている株を高値で買い取ると持ちかけます。しかし、断わる田宮二郎。「ぼくは自分ひとりで買占めの全貌を暴きたいんです」と大見得を切っています。「日本の企業を三国人に乗っ取られないように注意してください」と言わずもがなの忠告を与えて去っていく田宮二郎。内心は、金儲けがしたかったんでしょうね。

さて、久保菜穂子は「蛇のような男」成田三樹夫のおびき出しを計画します。しかし、敵もさるもの。そんな久保菜穂子の魂胆を見抜き、あっさりとガス中毒に見せかけて殺してしまいました。愕然とする田宮二郎。まあ、愕然としているだけで何の役にも立ちませんが。

「クラブのマダム 浴室でガス中毒死」という記事を読んで愕然としている人が、もうひとりいました。富士真奈美です。成田三樹夫の店のマダムが死んだので、何か思い当たるところがあったんでしょう。そっと、ハンドバックにピストルを忍ばせた富士真奈美は、自室を出て階下に。すると、そこでは何やら密談の最中です。どうやら邪魔な田宮二郎を殺す相談らしいと気づいた富士真奈美は、あたしがおびき出す、と言い出しました。田宮二郎はあたしに惚れているから、あたしが誘えば完璧よ、というのです。

もちろん、田宮二郎は学習能力がないので、富士真奈美におびき出されました。そこで、富士真奈美は全てを話し出します。中国の青島にいたとき、敗戦の二日後、男たちが乱入して両親を殺したこと。それは、金子信雄や成田三樹夫の4人組が戦争中の不正を隠すためだったこと。田宮二郎がかぎまわった結果、今まで見たことの無かった仲間の顔を見ることができたこと。それで、ようやく両親を殺したのが金子信雄たちだと確信を持てた、と言うのです。
そして、成田三樹夫があなたを殺すために、小河内ダムにいるから、一緒に来てちょうだいとも。

「雪子さん、もっと早くに知り合いたかった」「あたしも」などと悠長な会話をかわす二人。いや、そうじゃなくて、このままノコノコ出かけたら殺されちゃうでしょうが。

さて、小河内ダムにやってきた田宮二郎と富士真奈美。成田三樹夫が待ち構えています。
「キサマ、三国人の手先になって恥ずかしくないのか」と怒鳴る田宮二郎。しかし、成田三樹夫が「ごめんね」と言うわけも無く、ピストルで田宮二郎を撃ちました。ばきゅーん。とうっ、とジャンプして弾丸をかわす田宮二郎。確かに身のこなしは軽いかもしれませんけど、いったいどうする気だったんでしょう、彼は。

と、ハンドバックからピストルを取り出した富士真奈美が成田三樹夫を撃ちました。成田三樹夫は腕を打ちぬかれてモガモガしています。怖い顔をして「お前はあの時いたね」と言い出す富士真奈美。あくまでシラを切る成田三樹夫の顔にライターの炎を浴びせかけ「お前はあの時いたね」と繰り返します。怖いです。予想外の展開に、田宮二郎はただ唖然としているだけです。ともあれ、富士真奈美の狂気の形相に、成田三樹夫は全てを白状しました。

よし、用は済んだ、と言わんばかりにピストルを構える富士真奈美。田宮二郎はハッと気づいて「雪子さんいけない。復讐は終わったんだ、これからは二人だけの生活を築こうじゃないか」とどさくさ紛れに言い出します。ばきゅーん。富士真奈美は全然、聞いていなかったみたいです。
「あたしに付いてこないで」と言い残しクルマで去っていく富士真奈美。小河内ダムに田宮二郎一人っきりです。

とりあえず親切なトラック運転手さんに助けてもらって、田宮二郎は東京に戻ります。急がないとさらなる悲劇が待っています。急げ、急げ。しかし、屋敷についた田宮二郎が見たのは、難波証券の社長と不動産屋の滝沼の死体でした。ガクガクブルブル震えている使用人に聞くと、奥さんは2階にいるとのこと。慌てて田宮二郎が2階に駆け上がると、そこには毒薬をあおったらしく虫の息の富士真奈美がいました。
「仲田さん、終わったわ。全てが」カメラが横にパンすると、もうグワーっと目を見開いた金子信雄の死体が。金子信雄、出番が少ないからってハリキリ過ぎです。医者を呼ぼうという田宮二郎に「それより、あたしをしっかり抱いて」と言う富士真奈美。
「仲田さん、遅すぎたわ。あたしたちの愛が……」ガクっ、と富士真奈美は死にました。

日常が戻ってきました。以前のように田宮二郎は出社してきます。しかし彼の気持ちは苦いままです。
「三国人による買占めは失敗した。日本の企業がひとつ助かった。しかし俺の青春は終わった」とモノローグもビターな感じ。ついでに社長から呼ばれる田宮二郎。あっさりクビです。モアビターです。まあ、顧客の金を勝手に使って明昭工機の株を買ってましたしね。

「これからどうするんですか」と後輩に聞かれた田宮二郎は
「おれはここで生きていくよ。兜町にかならず戻ってくる。そのときは頼むぜ」と言って、ニヤリと笑うのでした。

いや、いろんな意味でツッコミどころ満載な映画なんですけど……半端なんですよ。

まず、富士真奈美が美女っていうのはどうなんだと。まあ妖艶と言えば言えないことも無いんですが、ちょっと育ちすぎな気もします。なにしろオーガンジーの袖から見える二の腕がパッツン、パッツン。少なくとも田宮二郎が一目惚れするという設定はキツイものがありました。

田宮二郎は主役ですが、とんでもなく情けない役回り。基本的にノサれてばかりの主人公ってどうなんでしょう。それに、分かっていても拉致されてるし。なんかやたらと悪漢にさらわれてしまうお姫様のようです。

それにそもそも、株式業界を舞台にした謀略サスペンスだと思うんですけど、株式業界の実態が描かれるわけでもなく、悪役側も中途半端なのが気になります。だいたい、企業を買収して、武器を作らせるって。アジアの紛争地帯には米軍、ソビエトの横流し兵器がごろごろしているのに、今更武器を作ってどうしようというんでしょう。少なくとも武器の世界にはメイド・イン・ジャパンの神通力は通用しないと思うんですけどね。

タイトルの「脂のしたたり」も意味不明。「何の」脂が「いつ」したたったんだよ、と思ってしまいます。

まあ、ここらへんのタイトルの付け方と言い、内容のおかしさも含めて、おそろしく新東宝テイスト。ただ、大映なので、どこかマジメになってしまっているところが痛いです。もっと、ハチャメチャだと面白かったんでしょうが。

ちなみに連呼される「三国人」ですが、1966年当時は充分、差別的なニュアンスで使われていたようです。この点だけには、歴史的な価値があるかも。





いくらおにぎりブログのインデックスはここ
いくらおにぎり日記はここ

『映画・DVD』 ジャンルのランキング
この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 【映画】亀は意外と速く泳ぐ | トップ | 【バイク】XT125 »
最近の画像もっと見る

あわせて読む