【「彼奴を逃すな」鈴木英夫 1956】を観ました

おはなし
殺人事件を目撃してしまった男の恐怖を描きます。
サスペンス映画の名手、と言われている割には、初期の映画はあんまり面白くなかったりしたのですが、果たしてこの映画はどうでしょう。
走り去る汽車と共にタイトルが横にスライドして登場。オープニングクレジットも、全部この形式で中々おしゃれです。
高架を汽車が轟音を立てて通り過ぎていきます。場所は夕暮れのひなびた商店街。男がトボトボとやって来て、一軒の店に入りました。そして帰って来た男を妻が出迎えます。男の名は藤崎哲夫(木村功)。そして妻は君子(津島恵子)。二人は小さな店を間借りして、哲夫はラジオ修理、君子は洋裁の仕立物を作っているのです。哲夫は、友人で銀行の課長に会ってきたということで、「もう一度、就職の運動をしてみようと思うんだがね」と妻にぼやきますが、せっかく始めた仕事なんだから、もう少し頑張りましょうと妻にたしなめられてしまうのです。哲夫はかなり意思が弱くて、どうも妻の尻にひかれているようです。
重苦しい気分を変えようとして妻は、映画館に行きましょうよ、と言い出しました。招待券を持っているのです。しかし、そこにラジオの飛び込みの修理が入り、哲夫は一足遅れて映画館に行くことにしたのです。
黙々と修理をする哲夫。と、その時、哲夫は偶然に店の前に佇む不審な男の顔を見てしまったのです。しかし、そんなことを気にせず修理を終えた哲夫は、7時半ちょうどに隣家の豆腐屋さんに直したラジオを届け、映画館に急ぐのでした。
向かいの不動産屋では、男が虫の息で110番をダイヤルしています。しかし、一言も話すことなく息絶えました。それからは大騒ぎ。警視庁捜査一課の永沢主任刑事(志村喬)や白石刑事(土屋嘉男)の初動捜査で、男はどうやら麻薬がらみで撃ち殺されたこと、犯行は高架を汽車が通り過ぎた7時10分に行われたらしいことが分かってきましたが、汽車の轟音で銃声を聞いた者もなく、目撃者が見つからないのです。
翌日、アパートの隣室に住むタクシー運転手・松永が、哲夫のアパートを訪ねてきました。もちろん話題は、哲夫の店の向かいで起きた殺人事件についてです。まさか哲夫が犯人を目撃しているとは知らない松永は「係わり合いにならない方がいいですよ」と忠告をして去っていきます。そこで初めて、哲夫は君子に犯人を目撃したことを告げ、警察に届けようかと恐るおそる持ちかけてみました。答えはあっさり、
「ダメよ。そんなことに関わりあって、もしも恨みでも買ったらどうするの」です。哲夫は「君子、ぼくもそいつに顔を見られたんだよ」と言ってみますが、どうやら無視の模様。
二人が仲良く出勤すると、近所を聞き込んでいる刑事の姿が。ビビリつつ店に入った哲夫は、さらに恐ろしいものを見つけてしまいました。それは脅迫状。「昨夜見たことを喋るな 余計なことをすると君だけではなく奥さんが不幸になる」と書いてあるのです。もう完全にビビリまくった哲夫です。
白石刑事の聞き込みに、知らぬ存ぜぬを押し通した哲夫ですが、妻の君子が7時前に店を閉めたと口を滑らせたので真っ青になってしまいました。なにしろ7時半に、隣の豆腐屋に直したラジオを届けていたのですから、刑事が隣に聞き込みに行けば嘘がバレてしまいます。
思わず、店を逃げ出す二人。何やってんだと思いますけど、実際にこんな状況に巻き込まれたら、誰でもそういった行動を取ってしまうかもしれませんね。
案の定、豆腐屋さんの証言から哲夫が犯行時刻に店にいたことがバレ、二人が恐るおそる店に戻ってくるとすぐ、白石刑事が呼出状を持ってきたのでした。
警察署に呼び出された二人は、永沢主任刑事に事情を聞かれます。ごまかそうとして、余計なことをポロポロ言い出す君子。それを海千山千の永沢主任刑事が聞き逃すはずもありません。しかし「主人は何も見なかったと申し上げてるじゃありませんか」と君子が金切り声でヒステリーを起こし、とりあえずその場は逃れることができたのです。
またもや殺人事件が起こりました。同じ拳銃で麻薬組織の男が殺されたのです。そして、顔を見られたためか、タクシーの運転手まで。そう、殺されたのは哲夫の隣室に住む運転手でした。哲夫は恐怖と自責の念におののきます。犯人の顔を見た自分も殺されるかもしれない、そして、自分が早めに証言していれば運転手は死なずに済んだかもしれない。
哲夫は君子に、やはり証言しようかと相談します。しかし返ってきたのは「イヤよ、イヤイヤ」「今から届けたって、松永さんはどうにもなりやしないわ」という自己中な言葉だったのです。
結局、哲夫は君子に内緒で、こっそり警察署に行って証言することにしました。モンタージュ写真を作り終え、部屋に戻ってきた哲夫。奥さんが怖いのか、部屋に入れずに躊躇しているのがあわれです。意を決して部屋に入ると「警察行ったんでしょ」という君子の声。とりあえず「行くもんか、警察なんか」とひたすらとぼける哲夫です。
翌朝の新聞を見て哲夫はビックリ。なにしろ、でかでかと「目撃者現る」の文字が躍っているのですから。とりあえず君子の目に触れないように新聞を隠し、哲夫はビクビクしながら君子と店に向かいます。途中、ソフト帽の男が後を尾けているような気がして、君子に「後ろから誰か尾けてないかい」と聞いてみたりしますが、君子はまったく気づいていないようです。
店についても哲夫の心臓はバクバク。おや、チンドン屋がやってきました。店の前で演奏をしています。そこに、隣の気のいい豆腐屋さんがやってきて、あのクラリネット吹き、犯人に似ていないかい、と言い出しました。そう言われれば似ているような気がする。哲夫はビビりつつ、ひたすらチラ見をします。見られれば、見返すのが人の常。クラリネット吹きもこちらを見てきました。カネや太鼓の音がフェードアウトして、ひたすらクラリネットの音だけが鳴り響きます。
どうやらクラリネット吹きは犯人ではなかったようです。イヤーな汗をかいてしまった哲夫は、君子にお使いを頼まれました。町を歩き出す哲夫。するとはるか後ろの方にはソフト帽の男。そして真後ろには、お題目の書かれた団扇太鼓を叩きながら歩いてくるお坊さんがいるではありませんか。ドンドン、ドンドン。太鼓の音が鳴り響きます。こいつか、こいつなのか。もうパニックになって走り出してしまう哲夫です。
そのころ店に男(宮口精二)がやってきました。駅の向こうの山田と名乗った男は、壊れたラジオを預け、7時ごろに取りに来ると言い残して去っていったのです。
ヨロヨロのヘロヘロになって帰ってきた哲夫は、預かり物のラジオを黙々と直し始めました。急がないと7時に間に合いません。
一方、店の外では永沢主任刑事や白石刑事が、こっそり張り込みを続けています。必ず犯人が哲夫を殺しに来ると踏んでいるのです。まあ、一言で言えば一般市民を囮にしているんですけどね。
7時近くにラジオを預けた男がやってきました。男は待たせてもらうよ、と言いながら哲夫の前に座り込みます。「この辺はうるさいでしょうね、汽車の通るときには」とつぶやく男。そう言えば、向かいの店で殺人があったときも、7時10分の汽車が通ったときでしたよ。「まもなく通るころですね」と重ねてつぶやく男。時計は刻々と7時10分に近づいています。「直りました」と言う哲夫。しかし、男は隠した銃をチラっと見せて「もう一度直していただこう」と不敵に笑うのでした。チクタク、チクタク。時計は確実に7時10分に近づいていきます。
外にお使いに出ていた君子が戻ってきました。あわてて「君子、タバコ買ってきてくれないか」と哲夫は君子を外に出します。そーっとコンセントに手を伸ばし、看板の灯りをオンオフする哲夫。しかし、表に張り込む刑事たちはまったく異常に気づかず、戻ってきた君子は「看板の電気ヘンね」と、つくづく間の悪いことを言い出すのです。その後も、哲夫は配線の切れ端で「ニゲロ」と君子にサインを出したり、ラジオをいじって近所のラジオに雑音を起こさせたりと、あの手この手を使いますが、すべてダメ。
頼みの刑事たちが「客にしても少し長いね」「20分にはなります」とのんきな会話をしている中、とうとう7時10分になってしまいました。ポーッ、汽車の警笛が聞こえてきました。「来たね」とつぶやいて、入り口のカーテンを閉める男。ここで、ようやく永沢主任刑事が不審の念を覚えたようで、店にそっと近づきます。シュッシュッ、汽車が近づいてきました。外でドラム缶を転がす主任刑事。ガランガラン、ものすごい音に、男は一瞬銃口を離して、外を見ました。その隙に、店の電気を消して、君子と共にしゃがみこむ哲夫。轟々という音と共に、汽車が高架の上を通過するなか、何発かの銃声が聞こえました。ゆっくり倒れていく男。汽車が通り過ぎたあとの全くの静寂の中、倒れた男をじっと見つめる刑事たち。
新聞に「ヘロイン密売団検挙」の記事が大見出しで踊っています。向かいの殺人があった不動産屋は新しい借り手がついたのでしょう、看板の書き換えの真っ最中です。「おはようございます」と近所に挨拶しながら、哲夫と君子が店にやってきました。小さな商店街を睥睨するようにそびえる高架に、いつものように汽車が通っていきます。
いやあ、これは中々のサスペンスぶりでした。特に音を効果的に使っているところが素晴らしいです。汽車の轟音の使い方も巧みですし、チンドン屋のクラリネットや、お坊さんの団扇太鼓など、一見(一聴?)すると恐怖に無縁なような音も、恐怖のネタにしてしまうところは、さすがに鈴木監督です。
そして、もちろんこの映画を支えたのは主役の木村功。気が弱そうな木村功のビビリまくり演技がなければ、この映画は成立しなかったんじゃないでしょうか。
さらに、津島恵子の自己中っぷりも素晴らしい。もともと津島恵子は、どこか「自分と家族に危害が及ばない限り」は親切な女性、というイメージがあるので、まさにこの役にピッタリでした。(あくまでも役のイメージですよ)
くわえて志村喬の刑事っぷり。まるで黒澤監督の「野良犬」で演じたような、たたき上げの刑事っぽい風貌でありいながら、実はあんまり役に立ってないところが、意外性があっていい感じです。
とりあえず「その場所に女ありて」や「悪の階段」ほどの傑作とは思えませんでしたが、鈴木監督の映画としては平均レベルなのかなあ、というのが感想です。


いくらおにぎりブログのインデックスはここ
前田有一の超映画批評←こちらには最新映画情報満載です(ランキングに参加しているので、お駄賃代わりにポチっとお願いします)

おはなし
殺人事件を目撃してしまった男の恐怖を描きます。
サスペンス映画の名手、と言われている割には、初期の映画はあんまり面白くなかったりしたのですが、果たしてこの映画はどうでしょう。
走り去る汽車と共にタイトルが横にスライドして登場。オープニングクレジットも、全部この形式で中々おしゃれです。
高架を汽車が轟音を立てて通り過ぎていきます。場所は夕暮れのひなびた商店街。男がトボトボとやって来て、一軒の店に入りました。そして帰って来た男を妻が出迎えます。男の名は藤崎哲夫(木村功)。そして妻は君子(津島恵子)。二人は小さな店を間借りして、哲夫はラジオ修理、君子は洋裁の仕立物を作っているのです。哲夫は、友人で銀行の課長に会ってきたということで、「もう一度、就職の運動をしてみようと思うんだがね」と妻にぼやきますが、せっかく始めた仕事なんだから、もう少し頑張りましょうと妻にたしなめられてしまうのです。哲夫はかなり意思が弱くて、どうも妻の尻にひかれているようです。
重苦しい気分を変えようとして妻は、映画館に行きましょうよ、と言い出しました。招待券を持っているのです。しかし、そこにラジオの飛び込みの修理が入り、哲夫は一足遅れて映画館に行くことにしたのです。
黙々と修理をする哲夫。と、その時、哲夫は偶然に店の前に佇む不審な男の顔を見てしまったのです。しかし、そんなことを気にせず修理を終えた哲夫は、7時半ちょうどに隣家の豆腐屋さんに直したラジオを届け、映画館に急ぐのでした。
向かいの不動産屋では、男が虫の息で110番をダイヤルしています。しかし、一言も話すことなく息絶えました。それからは大騒ぎ。警視庁捜査一課の永沢主任刑事(志村喬)や白石刑事(土屋嘉男)の初動捜査で、男はどうやら麻薬がらみで撃ち殺されたこと、犯行は高架を汽車が通り過ぎた7時10分に行われたらしいことが分かってきましたが、汽車の轟音で銃声を聞いた者もなく、目撃者が見つからないのです。
翌日、アパートの隣室に住むタクシー運転手・松永が、哲夫のアパートを訪ねてきました。もちろん話題は、哲夫の店の向かいで起きた殺人事件についてです。まさか哲夫が犯人を目撃しているとは知らない松永は「係わり合いにならない方がいいですよ」と忠告をして去っていきます。そこで初めて、哲夫は君子に犯人を目撃したことを告げ、警察に届けようかと恐るおそる持ちかけてみました。答えはあっさり、
「ダメよ。そんなことに関わりあって、もしも恨みでも買ったらどうするの」です。哲夫は「君子、ぼくもそいつに顔を見られたんだよ」と言ってみますが、どうやら無視の模様。
二人が仲良く出勤すると、近所を聞き込んでいる刑事の姿が。ビビリつつ店に入った哲夫は、さらに恐ろしいものを見つけてしまいました。それは脅迫状。「昨夜見たことを喋るな 余計なことをすると君だけではなく奥さんが不幸になる」と書いてあるのです。もう完全にビビリまくった哲夫です。
白石刑事の聞き込みに、知らぬ存ぜぬを押し通した哲夫ですが、妻の君子が7時前に店を閉めたと口を滑らせたので真っ青になってしまいました。なにしろ7時半に、隣の豆腐屋に直したラジオを届けていたのですから、刑事が隣に聞き込みに行けば嘘がバレてしまいます。
思わず、店を逃げ出す二人。何やってんだと思いますけど、実際にこんな状況に巻き込まれたら、誰でもそういった行動を取ってしまうかもしれませんね。
案の定、豆腐屋さんの証言から哲夫が犯行時刻に店にいたことがバレ、二人が恐るおそる店に戻ってくるとすぐ、白石刑事が呼出状を持ってきたのでした。
警察署に呼び出された二人は、永沢主任刑事に事情を聞かれます。ごまかそうとして、余計なことをポロポロ言い出す君子。それを海千山千の永沢主任刑事が聞き逃すはずもありません。しかし「主人は何も見なかったと申し上げてるじゃありませんか」と君子が金切り声でヒステリーを起こし、とりあえずその場は逃れることができたのです。
またもや殺人事件が起こりました。同じ拳銃で麻薬組織の男が殺されたのです。そして、顔を見られたためか、タクシーの運転手まで。そう、殺されたのは哲夫の隣室に住む運転手でした。哲夫は恐怖と自責の念におののきます。犯人の顔を見た自分も殺されるかもしれない、そして、自分が早めに証言していれば運転手は死なずに済んだかもしれない。
哲夫は君子に、やはり証言しようかと相談します。しかし返ってきたのは「イヤよ、イヤイヤ」「今から届けたって、松永さんはどうにもなりやしないわ」という自己中な言葉だったのです。
結局、哲夫は君子に内緒で、こっそり警察署に行って証言することにしました。モンタージュ写真を作り終え、部屋に戻ってきた哲夫。奥さんが怖いのか、部屋に入れずに躊躇しているのがあわれです。意を決して部屋に入ると「警察行ったんでしょ」という君子の声。とりあえず「行くもんか、警察なんか」とひたすらとぼける哲夫です。
翌朝の新聞を見て哲夫はビックリ。なにしろ、でかでかと「目撃者現る」の文字が躍っているのですから。とりあえず君子の目に触れないように新聞を隠し、哲夫はビクビクしながら君子と店に向かいます。途中、ソフト帽の男が後を尾けているような気がして、君子に「後ろから誰か尾けてないかい」と聞いてみたりしますが、君子はまったく気づいていないようです。
店についても哲夫の心臓はバクバク。おや、チンドン屋がやってきました。店の前で演奏をしています。そこに、隣の気のいい豆腐屋さんがやってきて、あのクラリネット吹き、犯人に似ていないかい、と言い出しました。そう言われれば似ているような気がする。哲夫はビビりつつ、ひたすらチラ見をします。見られれば、見返すのが人の常。クラリネット吹きもこちらを見てきました。カネや太鼓の音がフェードアウトして、ひたすらクラリネットの音だけが鳴り響きます。
どうやらクラリネット吹きは犯人ではなかったようです。イヤーな汗をかいてしまった哲夫は、君子にお使いを頼まれました。町を歩き出す哲夫。するとはるか後ろの方にはソフト帽の男。そして真後ろには、お題目の書かれた団扇太鼓を叩きながら歩いてくるお坊さんがいるではありませんか。ドンドン、ドンドン。太鼓の音が鳴り響きます。こいつか、こいつなのか。もうパニックになって走り出してしまう哲夫です。
そのころ店に男(宮口精二)がやってきました。駅の向こうの山田と名乗った男は、壊れたラジオを預け、7時ごろに取りに来ると言い残して去っていったのです。
ヨロヨロのヘロヘロになって帰ってきた哲夫は、預かり物のラジオを黙々と直し始めました。急がないと7時に間に合いません。
一方、店の外では永沢主任刑事や白石刑事が、こっそり張り込みを続けています。必ず犯人が哲夫を殺しに来ると踏んでいるのです。まあ、一言で言えば一般市民を囮にしているんですけどね。
7時近くにラジオを預けた男がやってきました。男は待たせてもらうよ、と言いながら哲夫の前に座り込みます。「この辺はうるさいでしょうね、汽車の通るときには」とつぶやく男。そう言えば、向かいの店で殺人があったときも、7時10分の汽車が通ったときでしたよ。「まもなく通るころですね」と重ねてつぶやく男。時計は刻々と7時10分に近づいています。「直りました」と言う哲夫。しかし、男は隠した銃をチラっと見せて「もう一度直していただこう」と不敵に笑うのでした。チクタク、チクタク。時計は確実に7時10分に近づいていきます。
外にお使いに出ていた君子が戻ってきました。あわてて「君子、タバコ買ってきてくれないか」と哲夫は君子を外に出します。そーっとコンセントに手を伸ばし、看板の灯りをオンオフする哲夫。しかし、表に張り込む刑事たちはまったく異常に気づかず、戻ってきた君子は「看板の電気ヘンね」と、つくづく間の悪いことを言い出すのです。その後も、哲夫は配線の切れ端で「ニゲロ」と君子にサインを出したり、ラジオをいじって近所のラジオに雑音を起こさせたりと、あの手この手を使いますが、すべてダメ。
頼みの刑事たちが「客にしても少し長いね」「20分にはなります」とのんきな会話をしている中、とうとう7時10分になってしまいました。ポーッ、汽車の警笛が聞こえてきました。「来たね」とつぶやいて、入り口のカーテンを閉める男。ここで、ようやく永沢主任刑事が不審の念を覚えたようで、店にそっと近づきます。シュッシュッ、汽車が近づいてきました。外でドラム缶を転がす主任刑事。ガランガラン、ものすごい音に、男は一瞬銃口を離して、外を見ました。その隙に、店の電気を消して、君子と共にしゃがみこむ哲夫。轟々という音と共に、汽車が高架の上を通過するなか、何発かの銃声が聞こえました。ゆっくり倒れていく男。汽車が通り過ぎたあとの全くの静寂の中、倒れた男をじっと見つめる刑事たち。
新聞に「ヘロイン密売団検挙」の記事が大見出しで踊っています。向かいの殺人があった不動産屋は新しい借り手がついたのでしょう、看板の書き換えの真っ最中です。「おはようございます」と近所に挨拶しながら、哲夫と君子が店にやってきました。小さな商店街を睥睨するようにそびえる高架に、いつものように汽車が通っていきます。
いやあ、これは中々のサスペンスぶりでした。特に音を効果的に使っているところが素晴らしいです。汽車の轟音の使い方も巧みですし、チンドン屋のクラリネットや、お坊さんの団扇太鼓など、一見(一聴?)すると恐怖に無縁なような音も、恐怖のネタにしてしまうところは、さすがに鈴木監督です。
そして、もちろんこの映画を支えたのは主役の木村功。気が弱そうな木村功のビビリまくり演技がなければ、この映画は成立しなかったんじゃないでしょうか。
さらに、津島恵子の自己中っぷりも素晴らしい。もともと津島恵子は、どこか「自分と家族に危害が及ばない限り」は親切な女性、というイメージがあるので、まさにこの役にピッタリでした。(あくまでも役のイメージですよ)
くわえて志村喬の刑事っぷり。まるで黒澤監督の「野良犬」で演じたような、たたき上げの刑事っぽい風貌でありいながら、実はあんまり役に立ってないところが、意外性があっていい感じです。
とりあえず「その場所に女ありて」や「悪の階段」ほどの傑作とは思えませんでしたが、鈴木監督の映画としては平均レベルなのかなあ、というのが感想です。


いくらおにぎりブログのインデックスはここ
前田有一の超映画批評←こちらには最新映画情報満載です(ランキングに参加しているので、お駄賃代わりにポチっとお願いします)











実はどうしても見たくて、でもDVDはもちろん、ビデオさえ出ていないようなので、どうしたらよいやら・・・と途方にくれておりました。
もし差し支えなければ、是非おしえていただけますと嬉しいです。
お問い合わせの件ですが、この映画はスカパー!で観ました。多分、日本映画専門チャンネルあたりじゃないかと。