【「子連れ狼 三途の川の乳母車」三隅研次 1972】を観ました
おはなし
柳生とのガチンコバトルを繰り広げつつ、拝一刀(若山富三郎)と大五郎は、今日も冥府魔道を全力疾走。
若山先生の子連れ狼シリーズ第2弾です。前作でも快調に手足を斬り飛ばしていましたが、今作でもバッサバッサ行きますよお。
ザッザッザッ、向こうからものすごいイキオイで虚無僧がダッシュしてきます。スペシャル乳母車(以降、乳母カー)の中で目を丸くしている大五郎。そして、それを押していた元公儀介錯人の拝一刀(若山富三郎)は、スーッと愛刀である胴太貫を抜き放ち、ダッシュ虚無僧を待ちます。
走ってくる虚無僧。大五郎。拝一刀。三者の姿が目まぐるしく入れ替わり……
チェーーッ!斬りかかる虚無僧の刀をかわし、拝一刀の斬撃が虚無僧の脳天に襲いかかります。しかし、虚無僧もさる者。発止と胴太貫を真剣白刃取りしていますよ。あ、でも、ちょっと失敗。刀は微妙に前頭葉にめり込んでる。しかし、前頭葉をスッパリ斬られた虚無僧は「大膳っ!」と叫びます。すると、なんてことでしょう。斬られた虚無僧の真後ろに、もう一人の虚無僧がいたのでした。とりゃーーっ。大ジャンプをして襲い掛かってくる後ろの虚無僧。しまった。胴太貫は、前の虚無僧の脳天にめり込んでいて抜けませんよ。しかし、先生は慌てず騒がず乳母カーから仕込み槍を取り出し、後ろの虚無僧を空中で串刺しにするのでした。
ぷっしゅー。噴水のように血をまき散らしている後ろの虚無僧。いっぽう、前頭葉が真っ二つな、前の虚無僧は言います。「柳生一門は天下六十余州にまたがる。いずれへ行こうとも我らの手から逃れることはできぬっ」バタリ。
いやあツカミはばっちりです。ま、それはともあれ、ゴロゴロと乳母カーを押しながら旅を続ける拝一刀。たき火をしながらおにぎりを食べたりと、アウトドアライフを満喫しているようですが、たまには旅籠にだって泊まりたい。しかし、どう見てもコキタナイ浪人と洟垂れ坊主な組み合わせは、旅籠で歓迎されるようなものではないようです。ほら、番頭があからさまにイヤな顔をしてますよ。ムッカー。無表情な拝一刀ですが、それだけに内心の怒りを想像するだに恐ろしい。おっと、拝一刀。これ見よがしに乳母カーから包みを取り出し、番頭に預けたりしています。それを開けてみた番頭はビックリ。なんと、そこには五百両もの大金が入っていたのです。フフン。ついでに息子の大五郎は、足すすぎの水をそのままに、旅籠の廊下をペッタペッタ。むむ、さすが冥府魔道に生きる父子。イジワルっぷりも地獄クラスでしょうか。
「ひとーつ。ふたつ。みっちゅ。いつつ」「大五郎、ひとつ忘れているぞ」。冥府魔道な父子が旅籠のお風呂で、数の勉強に余念がない、ちょうどその頃のこと。遠く離れた明石の地では、影のような男が、ゴージャスな女の人に話しかけています。「黒鍬支配頭の小角(おづぬ)にござります」「明石柳生の鞘香じゃ」。そう、片方は幕府の探索を受け持つ黒鍬一族の小角(小林昭二)で、もう一人は、言わずと知れた極悪柳生一門の中でも、女だらけの暗殺集団、別式女たちのリーダー柳生鞘香(松尾嘉代)なのでした。ちなみに松尾嘉代はやがて、二時間ドラマなどで、熟れきった熟女役とかをいっぱい演じるわけですが、この段階ですでにムンムンしてます。あまりにムンムンしているので、とりあえず呼び名はKAYOにしておくのでひとつ、よろしくお願いします。
それはともあれ、二人の会話を聞いてみましょう。
「江戸裏柳生、烈堂さまのご命令をお伝えに参上仕りましたれば、お人払いを」
「構わぬ。みな、明石柳生の別式女たちじゃ」
「されば」ぽわわーん。ここで、前作の回想シーンが流れますよ。柳生のみなさんが景気よく、拝一刀に斬られていきます。
「なにっ!」。KAYOの目が怒りに燃えます。「おのれぇ、拝一刀」
「果し合いの結果、拝一刀が勝ち、その時の約束によって、江戸の柳生は彼奴(きゃつ)に手出しができません。されば、鞘香さま率いられる別式女たちをもって、必ず拝一刀を討てと、烈堂さまのご命令にございます」
えーと、なんていうか裏柳生は律儀なんだかズルイんだか、よく分かりませんね。東京本店は手を出せないけど、明石支店は別だもんねー、ってことでしょうか。しかしそんな疑問をよそに、KAYOは「討たいでか」と燃えています。どれくらい燃えているかというと、蛮勇をいさめた小林昭二にブチ切れて、黒鍬いちの使い手(一人)を別式女たち(六人)でチョッキンチョッキンの芋虫状態までバラバラにしちゃうくらいです。「未熟者めが、これでも忍びか。キャーハッハッハ」と高笑いするKAYOに、思わず小林昭二もムッとしています。グヌヌ、柳生だからって威張りやがって。
ま、それでも、拝一刀を接触する方法を、怒りをぶちまけず淡々と説明する小林昭二。さすが科特隊のキャップだけあります。
「拝一刀こと子連れ狼に刺客を依頼したいと願う者、魔道の護符を街道沿いの神社仏閣に張り出します。一刀がこの護符を見れば、己の居場所を知らせる道中陣をそこに残していきます」
そんな小林昭二の声をバックに、道中陣をモソモソ作っている拝一刀の姿が。道中陣と言っても、なんか小石を適当に並べているようにしか見えませんが。
「それを辿ることによって、依頼の者は一刀に会えるわけでございます」。
いやあ、それで会うのは至難の業だよなあ。だって子連れ狼は日本全国を放浪しているんでしょ。まだ携帯電話ができる前、飲み会の場所を駅の掲示板にチョークで書いて知らせたものだけど、伝わるかどうかは運任せでしたよ。まして、この広い日本で……
「おお。ご家老。道中陣が」。
あれ、ここに、運よく子連れ狼と接触できたお侍さんたちがいました。
約束の場所にやってきた拝一刀を迎えるお侍さんたち。どうやら、阿波藩江戸家老と、そのご一行さまのようですよ。依頼金の500両を差し出して、江戸家老が語るところによると、阿波藩は藍の製造でガッポガッポ儲かっているそうです。しかし、その儲けに目を付けた幕府がお庭番を送り込んでくるわ、待遇改善のストライキを起こさせようとするわで、どうも困った事態に。「されば、我らも必死となって、潜入しているお庭番どもを駆り出し、一揆を起こさんとした首謀者どもを処刑したのでござる。ところが……」。そう、ところがちょっとヤリ過ぎたみたいです。というのも、阿波藍を作る責任者・幕屋忠左衛門が、自分も粛清されるじゃないかとビビって、お隣の高松藩に亡命しちゃったのでした。「幕府は、この幕屋忠左衛門を受け取るため、公儀護送方、弁天来の三兄弟を高松に差し向けるという知らせが入ったのでござる」。くわっ。微動だにしなかった拝一刀が、目を見開きます。そう、弁天来の三兄弟と言えば、この世界のビッグネーム(らしい)。家老の言葉によると、左弁馬、左天馬、左来馬の三兄弟で、それぞれ手甲鉤(ビヨーンと伸びた鉄の爪)、棍毘(こん棒)、あられ鉄拳(トゲ付グローブ)を使う「すさまじい手練れの者」なのでした。
ということで、冥府魔道に生きる拝一刀は依頼を快諾し、明石から出る四国行きの船に乗り込むために、旅路を急ぐのです。ゴロゴロ。ゴロゴロ。乳母カーを押して歩いていると、おや、にぎやかな太鼓のリズムが聞こえます。ムンムンしたお姉さんたちが角兵衛獅子のカッコで踊っているみたいですね。タムタム、タムタム。おおっと、お姉さんたちが太鼓のリズムに乗って襲い掛かってきましたよ。ざしゅっ。あ、拝一刀、さくっと斬り殺したようです。何事もなかったように、ゴロゴロと乳母カーを押して行く拝一刀。今度は向こうからムンムンしたお遍路さんが二人近づいてきましたよ。と、とりゃっ。菅笠を投げつけてきたじゃありませんか。刃付きの殺人菅笠が拝一刀そして大五郎に迫ります。「大五郎っ!」。先生の叫び声に、ひょいと首をすくめる大五郎。ぱしゅっ。まさに危機一髪。大五郎のちょっとしか生えてない髪をカットしただけで、殺人菅笠はどこかに飛んで行ったみたいです。とりゃー。大五郎の貴重な髪の毛を奪った別式女に、拝一刀の怒りの太刀がさく裂。軽く腕を斬り飛ばし、ついでに二人を串刺しにしちゃうのです。ということで、再び乳母カーをゴロゴロさせる拝一刀。おっと、今度はカゴに大根を満載した3人のお姉さんがやってきました。きっと、ムンムンしているので、この人たちも別式女じゃあるまいか。えいっ。ほら、やっぱり大根を投げてきましたよ。それも刃物を仕込んだデスダイコンを。もちろん、そんなものは避けてしまえばいいだけです。ひょい。すると、別式女たちは二手に分かれて向ってきました。しまった。二人を相手している間に、残った一人が大五郎に襲い掛かります。危ないっ大五郎!と思ったら、大五郎は乳母カーに付けられたスイッチをポン。パシュッ。おお、手すりから刀身が飛び出しお姉さんを貫いています。すごい、スペツナズナイフみたいだ。もちろん、その間に拝一刀も二人の別式女を斃し、また旅を再開。ゴロゴロ。と、こんどはいきなりハープの音が聞こえてきましたよ。ぽろろん。と、木の上から網が降ってきました。ばさあ。網にからめ捕られる拝一刀と乳母カー。そして、その網をせっせと引っ張っているのは、KAYOだ。別式女のボス、松尾KAYOがやってきました。うんしょ、うんしょ。網を引っ張るKAYO。でも、拝一刀も、いつまでも捕まっている義理はないので、刀で網を切り裂いて脱出です。イヤーン。困っちゃうKAYOは叫びます。「柳生鞘香、見参!」。「応!!!」と答える拝一刀。
ジリジリ。ジリジリ。間合いを計る二人。そして機が熟し。えいーっ。うおりゃー。刀を合わせた二人ですが、膂力の差は歴然。ちゅいーん。刀を弾き飛ばされたKAYOは、必死に真剣白刃取りをしたりしつつ、形勢逆転を狙います。しかし、その時、拝一刀の横殴りの剣がKAYOの足元を襲いました。間違いなく、両足は膝の下から真っ二つ。と、思った瞬間、こんどはKAYOの必殺技がさく裂。着物はそのままに、黒のレオタード姿で垂直上昇です。いや、何を言ってるか分からないと思いますが、着物を発射台にして、ムンムンKAYOがロケットのように打ち上げられたと思っていただけれれば。そのまま、後方に着地したKAYOは、無言のまま田んぼを後ろ方向に猛ダッシュ。えーと、これも補足すると、後ろを向いて走り出したんじゃなくて、こちらを向いたまま、後ろ方向にすごいイキオイで走っていくということですからね。ばびゅーん。
KAYOが去り安心したのもつかの間、今度は黒鍬一族が襲ってきました。KAYOのように戦力を小出しにせず、総攻撃です。むむっ、これはマズイ…かも。「大五郎、行くぞっ!」と拝一刀は叫ぶやいなや、敵に向かって乳母カーを蹴り飛ばします。急発進のイキオイで首をのけぞらせている大五郎。いや、これはムチウチになっちゃいますよ。それでも、大五郎はめげずにスイッチをポン。かしゃっ。車軸から抜身の刀身が飛び出し、黒鍬一族の足をスパスパちょん切っていきます。すごいな乳母カー。もちろん、拝一刀も八面六臂の大活躍。トンボを切ってみたり、流れるような刀さばきを見せてみたり、ああ良いものを見させてもらいました。これこそ殺陣だ、って感じです。もうおなか一杯。ごちそうさまでした。
いえいえ、お話はまだまだ続きます。黒鍬一族の総攻撃を父子でみごと撃退。とはいえ、さしもの拝一刀も手傷を負ってしまったのです。ヨロヨロ。ヨロヨロ。やがて見つけた廃屋に転がり込んだのはいいものの、できたのはそこまで。そのまま拝一刀は昏倒してしまいました。「ちゃーん」。愛しい大五郎の呼びかけにも返事すらかないません。しかし、こんな時こそ大五郎の出番。ちゃんが苦しい時は、自分が助ける。川の水を口移しで飲ませてみたり、お地蔵様にお供えしてあったお餅を自分の服と引き換えにもらってきて、ちゃんに食べさせたりと、拝一刀を救うための涙ぐましい努力です。とはいえ、しょせんは乳母カーに乗っている幼児。ドンドンドドンパ。ステテコトントン。なんだか楽しそうな太鼓のリズムが聞こえてくると、もうたまりません。ふらふら。ふらふらー。
うーん。うーん。はっ。拝一刀が目覚めると、そこには大五郎はいませんでした。その代わりにいたのは黒鍬一族の生き残り。そう、まともな手段では拝一刀を斃すことはできないと、小林昭二は大五郎を人質に取って、拝一刀を脅迫することにしたのです。まあ、目の前で人事不省状態だった拝一刀を殺せば、それでいいような気もしますけど、そこは映画的な都合ってことで。
ともあれ、黒鍬一族に案内されてやってきた拝一刀が見たのは、大五郎を井戸のつるべに結び付けて得意げな小林昭二と、横でイヤそうな顔をしているKAYO。思わず拝一刀は叫びます。「柳生汚し。その子をどうするつもりだ」。ニヤリとしつつ小林昭二は答えます。「すでに勝敗はついた。腰の胴太貫を捨ててもらおう。いかに拝一刀」。「断る」。へっ?どういうこと。「この井戸は底なし井戸だ。この綱を離せば、この子の命は無いっ」「殺したくば、殺したがよかろう。だが何のために。うぬら黒鍬衆も柳生一門の配下と成り下がったか」。そうまで言われると、小林昭二にだって言いたいことはあります。ええ、ありますとも。「柳生に逆ろうて妻を殺され、野良犬のように彷徨ううぬはどうじゃ」。つまり、お前に言われたくないよ、ってことですね。しかし、拝一刀は動じません。「我ら親子は冥府魔道に生きる者なれば、常人にあらず。六道四生順逆の境は最初から覚悟のうえ」。り、りくどうししょー。何言ってるか、さっぱりですが、とにかく、俺たちは普通じゃねえんだYO!ってことですね。どりゃー。斬りかかる拝一刀。もちろん、そうなると小林昭二だって応戦しなくちゃいけないので、綱から手を離すわけで、ガラガラ、ひゅーーっ、ボチャン。大五郎、落ちました。
やる気なさげなKAYOは放っておいて、小林昭二と黒鍬一族生き残りのみなさんを虐殺した拝一刀は、遅ればせながら、つるべをカラカラと引っ張っていきます。そうすると、ざざあ。ああ、大五郎が出てきました。びっしょり濡れてるけど、怪我はなさそうです。「ちゃーん」「大五郎っ」。見つめあう二人です。
ざっぱーん。ここは四国に向かう渡海船の甲板。舳の方には謎の侍3人組がいますよ。豪華なぽわぽわが付いた菅笠が、ちょっとソンブレロ風でオシャレな感じです。そんなイカした男たちはもちろん、公儀護送方、弁天来の三兄弟。そして、そんな三兄弟に、こ汚い浪人たちがジリジリと迫ってきました。「兄貴っ」と言う三男の来馬(岸田森)に長男の弁馬(大木実)が答えます。「阿波藩に雇われし、ごろつきどもか」。うぉりゃー。数を頼みに襲い掛かる浪人たち。しかし、鉄の爪やら棍棒やら、さらにはトゲ付グローブでメッタメタ。はい全滅したようです。
しかし、そんな争いを、他人事のように傍観していたのが3人ほど。われらが拝一刀。小悪党の三次(タコ顔の江幡高志)。そして、娘風の変装をしているものの、どうみてもムンムンしている鞘香ことKAYOです。ちなみに、このうち、三兄弟を狙っているのは拝一刀と小悪党の三次だけですけどね。え、KAYOですか。よく分からない。
ま、ともあれ、浪人部隊が全滅して、次は俺の番だとばかりに張り切る三次。ちなみにこいつの特技は放火です。事前に油を船に積み込んでおいて、海の真ん中で船を燃やす作戦。「へっ、弁天来のクソ野郎め」。ボボーッ。船室の入り口に巻いておいた油が燃え上がり、三兄弟、そして拝一刀たちは船室に閉じ込められてしまいました。メラメラ。このままでは、焼け死ぬか、船が沈没して溺死。いずれにしろ、うれしくない展開です。
しかし、弁天来の三兄弟は「こういうことには慣れておる」とマントに身を包み、火中を強行突破。火だるまのようになりながらも、海にダイブしていくのです。しかし、困ってしまったのが拝一刀。うーむ、大五郎もいるしなあ。ということで、愛刀の胴太貫で天井をゲシゲシと突き始めましたよ。そして、天井がいいかげんボロボロになったところで垂直ジャーンプ。天井を突き破って拝一刀は、無事甲板に躍り出るのでした。とはいえ、甲板もかなり火が回って危ない状況なのは言うまでもありません。「大五郎、一時の辛抱ぞ」と声をかけた拝一刀は、乳母カーごと大五郎をぶん投げます。ぴょーん。そのまま、火柱を越え、大海原に飛んでいく大五郎と乳母カーでした。さらに、自分は仕込み槍を使って、そのまま棒高跳び。ぴよーん。はい、拝一刀も燃え盛る船から脱出です。
乳母カーを押しつつ明石海峡を泳ぎ渡る拝一刀。ようやく、浜辺に上陸して海辺のボロ小屋に入ったものの、寒くて寒くて死にそうです。ということで、とっとと着物を脱ぎ始める拝一刀。さらには大五郎も裸にして、ギロリ。なぜか付いてきたKAYOに迫ります。がばっ。KAYOの着物をひんむく拝一刀。「ぐ、ぐぬ、おのれ仇にぃ」と抵抗するKAYOですが、すぐさま甘い声に。「ああーん」。しかし、覚悟していたことは何も起こらず、拝一刀と大五郎に身を寄せられているだけですよ。「火がないのだ。温まらねば三人とも凍え死ぬ」。それはそうかも知れないけど、でも拝一刀は部下を全滅させた仇。そう、リーダーのあたしが頑張らなくてどうするの。頑張れKAYO。心を奮い立たせ、そぉーっと刀に手を伸ばすKAYOですが、大五郎が無邪気にKAYOのオッパイをいじってきましたよ。きゅんっ。思わず力が抜けてしまうKAYO。いくらムンムンしていても、心は乙女みたいです。そうして、よく分かんないまま、抱き合った3人は朝を迎えるのです。
しばし時は流れ、どどーん、ここは大砂丘。弁天来三兄弟に先導された高松藩の護送キャラバンが進んでいます。「兄者、阿波藩の奴ら襲ってくるかな」と尋ねる天馬(新田昌玄)に、弟の来馬が言います。「見渡すばかりの砂丘。人影もなければ、その気配もない」。しかし、そんな弟の油断を戒める長兄の弁馬。「必ず来る。この幕屋忠左衛門を江戸に差し立てられれば阿波藩は二十万石の減収となるのだ。死にもの狂いで襲ってくる。油断いたすな」。と、そんな弁馬が何かの気配を察知したようです。しゅたたた。ひとり前方に走っていった弁馬は、鉄の爪を砂の中にグサッ。おお、砂に血がにじんできましたよ。そしてグイッ。鉄の爪を引っ張ると、なんとタコ顔の小悪党が出てきたじゃありませんか。いや、脳みそに鉄の爪が突き刺さっているので、「出てきた」というか「釣られた」が正確かもしれません。その後もアチコチを走り回って、砂の中に潜んでいた侍たちを狩り出していく弁馬。その様は、まるで潮干狩り状態。そう、デス潮干狩りです。
砂の中にバラバラに潜んでいて、どうやって横の連絡を取ったのかは分かりませんが、20人ほどの阿波藩士が一斉に砂の中から飛び出してきました。一気に幕屋忠左衛門を殺す作戦でしょう。しかし、姿を現してしまえば、ちょっとニブイ天馬、来馬も戦闘力は侮れません。おりゃー。サクサク斬られていく阿波藩士のみなさん。せっかく、熱い砂の中に潜って我慢していたのに残念、あっという間に全滅です。
よし敵は全部斃した。と思ったのもつかの間、オアシスっぽいところに幼児の姿がありますよ。と、その幼児がグイっと指を突き出しました。そして、その指が指し示す砂丘のてっぺんに見える黒い影は……。
ファンファーレが鳴り、ドラムがドムドムと気分を盛り上げます。
「やはり来たか」弁
「よくぞあの火を逃れて」天
「せっかく助かった命をまた捨てに来るとは」来
「参るっ!」冥府魔道親父
シュタタタと走った拝一刀は、まず天馬に襲い掛かります。どりゃー。天馬自慢の棍棒を叩き切り、さらに天馬の刀もへし折る豪刀胴太貫。そして、天馬の脳天を唐竹割りです。頭から首あたりまで半分に裂けた天馬から血しぶきピュー。まず一人。
と、弟の来馬が襲い掛かってきました。しかし拝一刀は慌てず騒がず、持っていた自慢の胴太貫をスローイング。ひょい。ぴゅーん。ぐさっ。「か、刀を投げるとは」バタッ。はい二人。
はい、今度は一番強そうな、長兄の弁馬です。しかし胴太貫は投げちゃったし、拝一刀はどうするつもりなんでしょう。グイっ、と握りこぶしを固めて弁馬にガンと飛ばす拝一刀。じりっ、じりっ。慎重に間合いを計ります。と、いきなり「キェーッ」と叫びつつ拝一刀は大ジャンプ。ぴよーーん。そのまま来馬の死体のそばに着地した拝一刀は胴太貫を回収して、横殴りに弁馬を斬るのです。ざしゅっ。のどを斬られる弁馬。
「首が、わしの首が泣いているように聞こえる。首袈裟に斬った切り口が木枯らしのように鳴るのを虎落笛(もがりぶえ)と言うそうな。一度、そんな音が出るように斬ってみたいとは願っていたが、己の首で聞くとは。笑止っ!」ドバーッ。まるで消防車の全力放水なイキオイで血を吹き出す弁馬でした。はい全滅。
しかし、弁馬の最期の言葉をまったく聞いていなかった拝一刀は、すでに高松藩士が護衛する駕籠に斬りこんでいました。バッサバッサと護衛を斬り、ついでに幕屋忠左衛門も惨殺です。ふう、ミッションコンプリート。
大五郎と手をつないで砂丘を歩いていく拝一刀。この冥府魔道親子に明日はあるのか、って、アレ。なんか忘れているような。そうそうKAYOです。ここは幻想的なシーンで、はっきり何が起こったのかは分かりません。まるで白日夢のような感じですが、歩いていた拝一刀がスラリと胴太貫を抜き放ちます。その刀身がキラリと光り、KAYOの刀のキラメキと十字架のように交錯。慈母のような優しい笑顔を浮かべたKAYOの姿がスローで後ろに倒れていくだけです。
一作目より血まみれ度がアップしました。指、鼻、耳、腕、足、もうなんでも乱れ飛んでます。とはいえ、あまり陰惨にならないのは、血しぶきの量も半端じゃないので、むしろギャグの領域に入っているからでしょう。拝一刀というか若山先生単体で観た時には、満足度はすこし低め。一作目で見せた、超高速抜刀、斬る、納刀みたいな神業が見られませんでした。しかし、その分、大木実率いる弁天来のカッコよさや、KAYOのムンムン路線が映画を盛り上げ、総合的にみると高評価をあたえていいんじゃないかと思います。
いくらおにぎりブログのインデックスはここ
いくらおにぎり日記はここ
おはなし
柳生とのガチンコバトルを繰り広げつつ、拝一刀(若山富三郎)と大五郎は、今日も冥府魔道を全力疾走。
若山先生の子連れ狼シリーズ第2弾です。前作でも快調に手足を斬り飛ばしていましたが、今作でもバッサバッサ行きますよお。
ザッザッザッ、向こうからものすごいイキオイで虚無僧がダッシュしてきます。スペシャル乳母車(以降、乳母カー)の中で目を丸くしている大五郎。そして、それを押していた元公儀介錯人の拝一刀(若山富三郎)は、スーッと愛刀である胴太貫を抜き放ち、ダッシュ虚無僧を待ちます。
走ってくる虚無僧。大五郎。拝一刀。三者の姿が目まぐるしく入れ替わり……
チェーーッ!斬りかかる虚無僧の刀をかわし、拝一刀の斬撃が虚無僧の脳天に襲いかかります。しかし、虚無僧もさる者。発止と胴太貫を真剣白刃取りしていますよ。あ、でも、ちょっと失敗。刀は微妙に前頭葉にめり込んでる。しかし、前頭葉をスッパリ斬られた虚無僧は「大膳っ!」と叫びます。すると、なんてことでしょう。斬られた虚無僧の真後ろに、もう一人の虚無僧がいたのでした。とりゃーーっ。大ジャンプをして襲い掛かってくる後ろの虚無僧。しまった。胴太貫は、前の虚無僧の脳天にめり込んでいて抜けませんよ。しかし、先生は慌てず騒がず乳母カーから仕込み槍を取り出し、後ろの虚無僧を空中で串刺しにするのでした。
ぷっしゅー。噴水のように血をまき散らしている後ろの虚無僧。いっぽう、前頭葉が真っ二つな、前の虚無僧は言います。「柳生一門は天下六十余州にまたがる。いずれへ行こうとも我らの手から逃れることはできぬっ」バタリ。
いやあツカミはばっちりです。ま、それはともあれ、ゴロゴロと乳母カーを押しながら旅を続ける拝一刀。たき火をしながらおにぎりを食べたりと、アウトドアライフを満喫しているようですが、たまには旅籠にだって泊まりたい。しかし、どう見てもコキタナイ浪人と洟垂れ坊主な組み合わせは、旅籠で歓迎されるようなものではないようです。ほら、番頭があからさまにイヤな顔をしてますよ。ムッカー。無表情な拝一刀ですが、それだけに内心の怒りを想像するだに恐ろしい。おっと、拝一刀。これ見よがしに乳母カーから包みを取り出し、番頭に預けたりしています。それを開けてみた番頭はビックリ。なんと、そこには五百両もの大金が入っていたのです。フフン。ついでに息子の大五郎は、足すすぎの水をそのままに、旅籠の廊下をペッタペッタ。むむ、さすが冥府魔道に生きる父子。イジワルっぷりも地獄クラスでしょうか。
「ひとーつ。ふたつ。みっちゅ。いつつ」「大五郎、ひとつ忘れているぞ」。冥府魔道な父子が旅籠のお風呂で、数の勉強に余念がない、ちょうどその頃のこと。遠く離れた明石の地では、影のような男が、ゴージャスな女の人に話しかけています。「黒鍬支配頭の小角(おづぬ)にござります」「明石柳生の鞘香じゃ」。そう、片方は幕府の探索を受け持つ黒鍬一族の小角(小林昭二)で、もう一人は、言わずと知れた極悪柳生一門の中でも、女だらけの暗殺集団、別式女たちのリーダー柳生鞘香(松尾嘉代)なのでした。ちなみに松尾嘉代はやがて、二時間ドラマなどで、熟れきった熟女役とかをいっぱい演じるわけですが、この段階ですでにムンムンしてます。あまりにムンムンしているので、とりあえず呼び名はKAYOにしておくのでひとつ、よろしくお願いします。
それはともあれ、二人の会話を聞いてみましょう。
「江戸裏柳生、烈堂さまのご命令をお伝えに参上仕りましたれば、お人払いを」
「構わぬ。みな、明石柳生の別式女たちじゃ」
「されば」ぽわわーん。ここで、前作の回想シーンが流れますよ。柳生のみなさんが景気よく、拝一刀に斬られていきます。
「なにっ!」。KAYOの目が怒りに燃えます。「おのれぇ、拝一刀」
「果し合いの結果、拝一刀が勝ち、その時の約束によって、江戸の柳生は彼奴(きゃつ)に手出しができません。されば、鞘香さま率いられる別式女たちをもって、必ず拝一刀を討てと、烈堂さまのご命令にございます」
えーと、なんていうか裏柳生は律儀なんだかズルイんだか、よく分かりませんね。東京本店は手を出せないけど、明石支店は別だもんねー、ってことでしょうか。しかしそんな疑問をよそに、KAYOは「討たいでか」と燃えています。どれくらい燃えているかというと、蛮勇をいさめた小林昭二にブチ切れて、黒鍬いちの使い手(一人)を別式女たち(六人)でチョッキンチョッキンの芋虫状態までバラバラにしちゃうくらいです。「未熟者めが、これでも忍びか。キャーハッハッハ」と高笑いするKAYOに、思わず小林昭二もムッとしています。グヌヌ、柳生だからって威張りやがって。
ま、それでも、拝一刀を接触する方法を、怒りをぶちまけず淡々と説明する小林昭二。さすが科特隊のキャップだけあります。
「拝一刀こと子連れ狼に刺客を依頼したいと願う者、魔道の護符を街道沿いの神社仏閣に張り出します。一刀がこの護符を見れば、己の居場所を知らせる道中陣をそこに残していきます」
そんな小林昭二の声をバックに、道中陣をモソモソ作っている拝一刀の姿が。道中陣と言っても、なんか小石を適当に並べているようにしか見えませんが。
「それを辿ることによって、依頼の者は一刀に会えるわけでございます」。
いやあ、それで会うのは至難の業だよなあ。だって子連れ狼は日本全国を放浪しているんでしょ。まだ携帯電話ができる前、飲み会の場所を駅の掲示板にチョークで書いて知らせたものだけど、伝わるかどうかは運任せでしたよ。まして、この広い日本で……
「おお。ご家老。道中陣が」。
あれ、ここに、運よく子連れ狼と接触できたお侍さんたちがいました。
約束の場所にやってきた拝一刀を迎えるお侍さんたち。どうやら、阿波藩江戸家老と、そのご一行さまのようですよ。依頼金の500両を差し出して、江戸家老が語るところによると、阿波藩は藍の製造でガッポガッポ儲かっているそうです。しかし、その儲けに目を付けた幕府がお庭番を送り込んでくるわ、待遇改善のストライキを起こさせようとするわで、どうも困った事態に。「されば、我らも必死となって、潜入しているお庭番どもを駆り出し、一揆を起こさんとした首謀者どもを処刑したのでござる。ところが……」。そう、ところがちょっとヤリ過ぎたみたいです。というのも、阿波藍を作る責任者・幕屋忠左衛門が、自分も粛清されるじゃないかとビビって、お隣の高松藩に亡命しちゃったのでした。「幕府は、この幕屋忠左衛門を受け取るため、公儀護送方、弁天来の三兄弟を高松に差し向けるという知らせが入ったのでござる」。くわっ。微動だにしなかった拝一刀が、目を見開きます。そう、弁天来の三兄弟と言えば、この世界のビッグネーム(らしい)。家老の言葉によると、左弁馬、左天馬、左来馬の三兄弟で、それぞれ手甲鉤(ビヨーンと伸びた鉄の爪)、棍毘(こん棒)、あられ鉄拳(トゲ付グローブ)を使う「すさまじい手練れの者」なのでした。
ということで、冥府魔道に生きる拝一刀は依頼を快諾し、明石から出る四国行きの船に乗り込むために、旅路を急ぐのです。ゴロゴロ。ゴロゴロ。乳母カーを押して歩いていると、おや、にぎやかな太鼓のリズムが聞こえます。ムンムンしたお姉さんたちが角兵衛獅子のカッコで踊っているみたいですね。タムタム、タムタム。おおっと、お姉さんたちが太鼓のリズムに乗って襲い掛かってきましたよ。ざしゅっ。あ、拝一刀、さくっと斬り殺したようです。何事もなかったように、ゴロゴロと乳母カーを押して行く拝一刀。今度は向こうからムンムンしたお遍路さんが二人近づいてきましたよ。と、とりゃっ。菅笠を投げつけてきたじゃありませんか。刃付きの殺人菅笠が拝一刀そして大五郎に迫ります。「大五郎っ!」。先生の叫び声に、ひょいと首をすくめる大五郎。ぱしゅっ。まさに危機一髪。大五郎のちょっとしか生えてない髪をカットしただけで、殺人菅笠はどこかに飛んで行ったみたいです。とりゃー。大五郎の貴重な髪の毛を奪った別式女に、拝一刀の怒りの太刀がさく裂。軽く腕を斬り飛ばし、ついでに二人を串刺しにしちゃうのです。ということで、再び乳母カーをゴロゴロさせる拝一刀。おっと、今度はカゴに大根を満載した3人のお姉さんがやってきました。きっと、ムンムンしているので、この人たちも別式女じゃあるまいか。えいっ。ほら、やっぱり大根を投げてきましたよ。それも刃物を仕込んだデスダイコンを。もちろん、そんなものは避けてしまえばいいだけです。ひょい。すると、別式女たちは二手に分かれて向ってきました。しまった。二人を相手している間に、残った一人が大五郎に襲い掛かります。危ないっ大五郎!と思ったら、大五郎は乳母カーに付けられたスイッチをポン。パシュッ。おお、手すりから刀身が飛び出しお姉さんを貫いています。すごい、スペツナズナイフみたいだ。もちろん、その間に拝一刀も二人の別式女を斃し、また旅を再開。ゴロゴロ。と、こんどはいきなりハープの音が聞こえてきましたよ。ぽろろん。と、木の上から網が降ってきました。ばさあ。網にからめ捕られる拝一刀と乳母カー。そして、その網をせっせと引っ張っているのは、KAYOだ。別式女のボス、松尾KAYOがやってきました。うんしょ、うんしょ。網を引っ張るKAYO。でも、拝一刀も、いつまでも捕まっている義理はないので、刀で網を切り裂いて脱出です。イヤーン。困っちゃうKAYOは叫びます。「柳生鞘香、見参!」。「応!!!」と答える拝一刀。
ジリジリ。ジリジリ。間合いを計る二人。そして機が熟し。えいーっ。うおりゃー。刀を合わせた二人ですが、膂力の差は歴然。ちゅいーん。刀を弾き飛ばされたKAYOは、必死に真剣白刃取りをしたりしつつ、形勢逆転を狙います。しかし、その時、拝一刀の横殴りの剣がKAYOの足元を襲いました。間違いなく、両足は膝の下から真っ二つ。と、思った瞬間、こんどはKAYOの必殺技がさく裂。着物はそのままに、黒のレオタード姿で垂直上昇です。いや、何を言ってるか分からないと思いますが、着物を発射台にして、ムンムンKAYOがロケットのように打ち上げられたと思っていただけれれば。そのまま、後方に着地したKAYOは、無言のまま田んぼを後ろ方向に猛ダッシュ。えーと、これも補足すると、後ろを向いて走り出したんじゃなくて、こちらを向いたまま、後ろ方向にすごいイキオイで走っていくということですからね。ばびゅーん。
KAYOが去り安心したのもつかの間、今度は黒鍬一族が襲ってきました。KAYOのように戦力を小出しにせず、総攻撃です。むむっ、これはマズイ…かも。「大五郎、行くぞっ!」と拝一刀は叫ぶやいなや、敵に向かって乳母カーを蹴り飛ばします。急発進のイキオイで首をのけぞらせている大五郎。いや、これはムチウチになっちゃいますよ。それでも、大五郎はめげずにスイッチをポン。かしゃっ。車軸から抜身の刀身が飛び出し、黒鍬一族の足をスパスパちょん切っていきます。すごいな乳母カー。もちろん、拝一刀も八面六臂の大活躍。トンボを切ってみたり、流れるような刀さばきを見せてみたり、ああ良いものを見させてもらいました。これこそ殺陣だ、って感じです。もうおなか一杯。ごちそうさまでした。
いえいえ、お話はまだまだ続きます。黒鍬一族の総攻撃を父子でみごと撃退。とはいえ、さしもの拝一刀も手傷を負ってしまったのです。ヨロヨロ。ヨロヨロ。やがて見つけた廃屋に転がり込んだのはいいものの、できたのはそこまで。そのまま拝一刀は昏倒してしまいました。「ちゃーん」。愛しい大五郎の呼びかけにも返事すらかないません。しかし、こんな時こそ大五郎の出番。ちゃんが苦しい時は、自分が助ける。川の水を口移しで飲ませてみたり、お地蔵様にお供えしてあったお餅を自分の服と引き換えにもらってきて、ちゃんに食べさせたりと、拝一刀を救うための涙ぐましい努力です。とはいえ、しょせんは乳母カーに乗っている幼児。ドンドンドドンパ。ステテコトントン。なんだか楽しそうな太鼓のリズムが聞こえてくると、もうたまりません。ふらふら。ふらふらー。
うーん。うーん。はっ。拝一刀が目覚めると、そこには大五郎はいませんでした。その代わりにいたのは黒鍬一族の生き残り。そう、まともな手段では拝一刀を斃すことはできないと、小林昭二は大五郎を人質に取って、拝一刀を脅迫することにしたのです。まあ、目の前で人事不省状態だった拝一刀を殺せば、それでいいような気もしますけど、そこは映画的な都合ってことで。
ともあれ、黒鍬一族に案内されてやってきた拝一刀が見たのは、大五郎を井戸のつるべに結び付けて得意げな小林昭二と、横でイヤそうな顔をしているKAYO。思わず拝一刀は叫びます。「柳生汚し。その子をどうするつもりだ」。ニヤリとしつつ小林昭二は答えます。「すでに勝敗はついた。腰の胴太貫を捨ててもらおう。いかに拝一刀」。「断る」。へっ?どういうこと。「この井戸は底なし井戸だ。この綱を離せば、この子の命は無いっ」「殺したくば、殺したがよかろう。だが何のために。うぬら黒鍬衆も柳生一門の配下と成り下がったか」。そうまで言われると、小林昭二にだって言いたいことはあります。ええ、ありますとも。「柳生に逆ろうて妻を殺され、野良犬のように彷徨ううぬはどうじゃ」。つまり、お前に言われたくないよ、ってことですね。しかし、拝一刀は動じません。「我ら親子は冥府魔道に生きる者なれば、常人にあらず。六道四生順逆の境は最初から覚悟のうえ」。り、りくどうししょー。何言ってるか、さっぱりですが、とにかく、俺たちは普通じゃねえんだYO!ってことですね。どりゃー。斬りかかる拝一刀。もちろん、そうなると小林昭二だって応戦しなくちゃいけないので、綱から手を離すわけで、ガラガラ、ひゅーーっ、ボチャン。大五郎、落ちました。
やる気なさげなKAYOは放っておいて、小林昭二と黒鍬一族生き残りのみなさんを虐殺した拝一刀は、遅ればせながら、つるべをカラカラと引っ張っていきます。そうすると、ざざあ。ああ、大五郎が出てきました。びっしょり濡れてるけど、怪我はなさそうです。「ちゃーん」「大五郎っ」。見つめあう二人です。
ざっぱーん。ここは四国に向かう渡海船の甲板。舳の方には謎の侍3人組がいますよ。豪華なぽわぽわが付いた菅笠が、ちょっとソンブレロ風でオシャレな感じです。そんなイカした男たちはもちろん、公儀護送方、弁天来の三兄弟。そして、そんな三兄弟に、こ汚い浪人たちがジリジリと迫ってきました。「兄貴っ」と言う三男の来馬(岸田森)に長男の弁馬(大木実)が答えます。「阿波藩に雇われし、ごろつきどもか」。うぉりゃー。数を頼みに襲い掛かる浪人たち。しかし、鉄の爪やら棍棒やら、さらにはトゲ付グローブでメッタメタ。はい全滅したようです。
しかし、そんな争いを、他人事のように傍観していたのが3人ほど。われらが拝一刀。小悪党の三次(タコ顔の江幡高志)。そして、娘風の変装をしているものの、どうみてもムンムンしている鞘香ことKAYOです。ちなみに、このうち、三兄弟を狙っているのは拝一刀と小悪党の三次だけですけどね。え、KAYOですか。よく分からない。
ま、ともあれ、浪人部隊が全滅して、次は俺の番だとばかりに張り切る三次。ちなみにこいつの特技は放火です。事前に油を船に積み込んでおいて、海の真ん中で船を燃やす作戦。「へっ、弁天来のクソ野郎め」。ボボーッ。船室の入り口に巻いておいた油が燃え上がり、三兄弟、そして拝一刀たちは船室に閉じ込められてしまいました。メラメラ。このままでは、焼け死ぬか、船が沈没して溺死。いずれにしろ、うれしくない展開です。
しかし、弁天来の三兄弟は「こういうことには慣れておる」とマントに身を包み、火中を強行突破。火だるまのようになりながらも、海にダイブしていくのです。しかし、困ってしまったのが拝一刀。うーむ、大五郎もいるしなあ。ということで、愛刀の胴太貫で天井をゲシゲシと突き始めましたよ。そして、天井がいいかげんボロボロになったところで垂直ジャーンプ。天井を突き破って拝一刀は、無事甲板に躍り出るのでした。とはいえ、甲板もかなり火が回って危ない状況なのは言うまでもありません。「大五郎、一時の辛抱ぞ」と声をかけた拝一刀は、乳母カーごと大五郎をぶん投げます。ぴょーん。そのまま、火柱を越え、大海原に飛んでいく大五郎と乳母カーでした。さらに、自分は仕込み槍を使って、そのまま棒高跳び。ぴよーん。はい、拝一刀も燃え盛る船から脱出です。
乳母カーを押しつつ明石海峡を泳ぎ渡る拝一刀。ようやく、浜辺に上陸して海辺のボロ小屋に入ったものの、寒くて寒くて死にそうです。ということで、とっとと着物を脱ぎ始める拝一刀。さらには大五郎も裸にして、ギロリ。なぜか付いてきたKAYOに迫ります。がばっ。KAYOの着物をひんむく拝一刀。「ぐ、ぐぬ、おのれ仇にぃ」と抵抗するKAYOですが、すぐさま甘い声に。「ああーん」。しかし、覚悟していたことは何も起こらず、拝一刀と大五郎に身を寄せられているだけですよ。「火がないのだ。温まらねば三人とも凍え死ぬ」。それはそうかも知れないけど、でも拝一刀は部下を全滅させた仇。そう、リーダーのあたしが頑張らなくてどうするの。頑張れKAYO。心を奮い立たせ、そぉーっと刀に手を伸ばすKAYOですが、大五郎が無邪気にKAYOのオッパイをいじってきましたよ。きゅんっ。思わず力が抜けてしまうKAYO。いくらムンムンしていても、心は乙女みたいです。そうして、よく分かんないまま、抱き合った3人は朝を迎えるのです。
しばし時は流れ、どどーん、ここは大砂丘。弁天来三兄弟に先導された高松藩の護送キャラバンが進んでいます。「兄者、阿波藩の奴ら襲ってくるかな」と尋ねる天馬(新田昌玄)に、弟の来馬が言います。「見渡すばかりの砂丘。人影もなければ、その気配もない」。しかし、そんな弟の油断を戒める長兄の弁馬。「必ず来る。この幕屋忠左衛門を江戸に差し立てられれば阿波藩は二十万石の減収となるのだ。死にもの狂いで襲ってくる。油断いたすな」。と、そんな弁馬が何かの気配を察知したようです。しゅたたた。ひとり前方に走っていった弁馬は、鉄の爪を砂の中にグサッ。おお、砂に血がにじんできましたよ。そしてグイッ。鉄の爪を引っ張ると、なんとタコ顔の小悪党が出てきたじゃありませんか。いや、脳みそに鉄の爪が突き刺さっているので、「出てきた」というか「釣られた」が正確かもしれません。その後もアチコチを走り回って、砂の中に潜んでいた侍たちを狩り出していく弁馬。その様は、まるで潮干狩り状態。そう、デス潮干狩りです。
砂の中にバラバラに潜んでいて、どうやって横の連絡を取ったのかは分かりませんが、20人ほどの阿波藩士が一斉に砂の中から飛び出してきました。一気に幕屋忠左衛門を殺す作戦でしょう。しかし、姿を現してしまえば、ちょっとニブイ天馬、来馬も戦闘力は侮れません。おりゃー。サクサク斬られていく阿波藩士のみなさん。せっかく、熱い砂の中に潜って我慢していたのに残念、あっという間に全滅です。
よし敵は全部斃した。と思ったのもつかの間、オアシスっぽいところに幼児の姿がありますよ。と、その幼児がグイっと指を突き出しました。そして、その指が指し示す砂丘のてっぺんに見える黒い影は……。
ファンファーレが鳴り、ドラムがドムドムと気分を盛り上げます。
「やはり来たか」弁
「よくぞあの火を逃れて」天
「せっかく助かった命をまた捨てに来るとは」来
「参るっ!」冥府魔道親父
シュタタタと走った拝一刀は、まず天馬に襲い掛かります。どりゃー。天馬自慢の棍棒を叩き切り、さらに天馬の刀もへし折る豪刀胴太貫。そして、天馬の脳天を唐竹割りです。頭から首あたりまで半分に裂けた天馬から血しぶきピュー。まず一人。
と、弟の来馬が襲い掛かってきました。しかし拝一刀は慌てず騒がず、持っていた自慢の胴太貫をスローイング。ひょい。ぴゅーん。ぐさっ。「か、刀を投げるとは」バタッ。はい二人。
はい、今度は一番強そうな、長兄の弁馬です。しかし胴太貫は投げちゃったし、拝一刀はどうするつもりなんでしょう。グイっ、と握りこぶしを固めて弁馬にガンと飛ばす拝一刀。じりっ、じりっ。慎重に間合いを計ります。と、いきなり「キェーッ」と叫びつつ拝一刀は大ジャンプ。ぴよーーん。そのまま来馬の死体のそばに着地した拝一刀は胴太貫を回収して、横殴りに弁馬を斬るのです。ざしゅっ。のどを斬られる弁馬。
「首が、わしの首が泣いているように聞こえる。首袈裟に斬った切り口が木枯らしのように鳴るのを虎落笛(もがりぶえ)と言うそうな。一度、そんな音が出るように斬ってみたいとは願っていたが、己の首で聞くとは。笑止っ!」ドバーッ。まるで消防車の全力放水なイキオイで血を吹き出す弁馬でした。はい全滅。
しかし、弁馬の最期の言葉をまったく聞いていなかった拝一刀は、すでに高松藩士が護衛する駕籠に斬りこんでいました。バッサバッサと護衛を斬り、ついでに幕屋忠左衛門も惨殺です。ふう、ミッションコンプリート。
大五郎と手をつないで砂丘を歩いていく拝一刀。この冥府魔道親子に明日はあるのか、って、アレ。なんか忘れているような。そうそうKAYOです。ここは幻想的なシーンで、はっきり何が起こったのかは分かりません。まるで白日夢のような感じですが、歩いていた拝一刀がスラリと胴太貫を抜き放ちます。その刀身がキラリと光り、KAYOの刀のキラメキと十字架のように交錯。慈母のような優しい笑顔を浮かべたKAYOの姿がスローで後ろに倒れていくだけです。
一作目より血まみれ度がアップしました。指、鼻、耳、腕、足、もうなんでも乱れ飛んでます。とはいえ、あまり陰惨にならないのは、血しぶきの量も半端じゃないので、むしろギャグの領域に入っているからでしょう。拝一刀というか若山先生単体で観た時には、満足度はすこし低め。一作目で見せた、超高速抜刀、斬る、納刀みたいな神業が見られませんでした。しかし、その分、大木実率いる弁天来のカッコよさや、KAYOのムンムン路線が映画を盛り上げ、総合的にみると高評価をあたえていいんじゃないかと思います。
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