【「出世子守唄」鷹森立一 1967】を観ました

おはなし
遠藤文吾は、一人息子の健一のためにカタギになって、木こりとして働き始めますが……。
浪曲子守唄、続浪曲子守唄に続く、子守唄シリーズの第三弾です。主人公と子供の名前も一緒だし、もちろん演ずるのも千葉真一と真田広之。こういうのは安心して観られますねえ。
夕焼けをバックにドスを振るう二人の男。ぐさっ。一人の男が刺されて倒れました。刺したのは、ご存知、遠藤文吾(千葉真一)。刺された男は息も絶え絶えに言います。「文吾さん。お互ぇ恨みっこなしの勝負だったな。俺の仲間は必ずおめえさんを追う。ヤクザなもんよ。消えてくんな。子供のためによ」。
旅をしている千葉ちゃんと、息子の健一(下沢広之=真田広之)。千葉ちゃんは呟きます。「あれから3年。健一、おめえだけは何とかして明るいお天道様の下で、立派に育ってくれと。だが堪忍してくれ。今日も影が追ってきやがる。また旅だ」。「♪逃ーげたぁ女房にゃあ、未練はなーいぃがぁ♪」、そうそう、この歌が流れないとね、気分が出ません。
テクテク。線路を歩く千葉ちゃんと真田広之。線路なんか歩くとアブナイですよ。ほら看板にも「軌道内通行禁止」って書いてあるじゃないですか。「父ちゃん。これなんて書いてあるんだ」「んーっ。これはな、立小便するなって、書いてあるんだ」。そんな千葉ちゃんは字が読めないのでした。ガタンゴトン、ガタンゴトン。プーッ。あーあ、千葉ちゃんは材木運搬列車の運転士さんに怒られていますよ。でも、運転士さんは優しい人だったんでしょう。千葉ちゃんと真田広之は材木の上に乗せてもらうことができたのです。
そしてやってきたのは、木曽の山奥の飯場。千葉ちゃんは、ここで木こりとして、まっとうに暮らすつもりです。早速、親方の岩崎(石山健二郎)に頼んでみましょう。「おめえさん、戸籍謄本持ってるかい」。えーと、コセキトウホンって何だろう。「いや、そんな厄介なものは」と答える千葉ちゃん。どうしよう。しかし、そこに現れたのが、親方の孫娘の美樹(小川知子)です。すっかり、真田広之のキュートさにKOされた小川知子は、いいじゃないお爺ちゃん、と親方を説得してくれて千葉ちゃんは無事に職にありつくことができたのでした。
木こりの飯場は、キツイ仕事ですが、周りの人はいい人ばかり。一本気な留次(玉川良一)や、その奥さんで鉄火肌のお時(三原葉子)、そしてもちろん、親方に小川知子など、みんなが真田広之をかわいがってくれて、千葉ちゃんもひと安心です。しかし、良かった良かったでは、話が終わってしまうというもので、やはり、こんな平和な山奥でも、揉め事のタネは転がっているのでした。それというのは、この山林の権利を狙っている富高組の存在。木こりを怪我させたり、やりたい放題の挑発をしかけてきます。しかし親方は断固として脅しに屈せず、非暴力主義を貫くのです。
すっかりアイドルの真田広之は、材木列車に乗って、三原葉子とお昼のお弁当を届けに行くことになりました。ガタンゴトン、ガタンゴトン。そして、その帰り道。「おばちゃん、山は高いから空に近いな」と言い出す真田広之。「うん、そりゃまあ、町に比べれば、ちっとは近いさ」。「空から俺のことが見えるかなあ」、そんな言葉にハッとする三原葉子。「健ぼう、寂しいんだね。お母ちゃんがいなくて」「健ぼう。もし何だったら、このおばちゃんがお母ちゃんになってやろうか」。しかし、真田広之はとってもストレートな子供なので、こういうのです。「俺の母ちゃんはなあ、目が細くて、きれいで優しいんだ。夢を壊さないでくれよ」。えーと、三原葉子の立場ゼロ。
さて、山奥の飯場から、町に住む小川知子のところに遊びにきた真田裕之は、途中で怖いオバサン(小畠絹子=小畑絹子)に出会いました。このオバサンは真田広之の竹とんぼを踏んづけても、ろくに謝ってくれないような怖いオバサン。すっかりムカっとする真田広之です。
小川知子にカバンを買ってもらって、ニコニコの真田広之。そう、真田広之も大きくなったので、小学校に通わなくてはなりません。しかし、これにムクレテいるのが千葉ちゃん。「おい、健一。おめえ何かい。学校行きてぇんなら、行きてぇって何で父ちゃんに言わないんだい」。どうやら、自分に最初に言ってくれなかったので、すっかりふて腐れているようです。そんな千葉ちゃんの様子を察した真田広之は言い出しました。「父ちゃん、俺、学校に行かねえや。学校なんか行きたくないもん。だからよ、父ちゃん機嫌なおせよ」。周りの気のいい木こりたちは、千葉ちゃんを責めるような目で見ていますよ。えーと、困ったな。うーん、そうだ。真田広之に一升瓶を持ってこさせた千葉ちゃんは、「さあ、おめえもやれい」とコップ酒を真田広之に差し出します。あわてて止める周りの人たち。しかし、「いいか健一。おめえが学校にあがる祝い酒だ」と千葉ちゃんが言い出したので、ちょっとひと安心です。まったく千葉ちゃんは素直じゃないんだから。
富高組の嫌がらせは増すばかり。とうとう、山にタバコの火をポイっと捨てるという荒技に出てきました。これには千葉ちゃんも、プチーンとキレてしまいます。早速、町にある富高組の飲み屋に乗り込み、親分(遠藤辰雄)に直談判です。「木一本、首ひとつ。これは昔からの木曾谷の掟だ。お山の木は日本人みんなのものじゃねえんですかい。ちょっとした不注意で、お山を焼いちゃ申し訳が立たねえ。親分さん、どうぞこれっきり、不心得者を出さねえように、お願い申します」。さすがに、これには親分も閉口して、シドロモドロに言い訳をするのです。
意気揚々と引き揚げようとした千葉ちゃんは怖いオバチャンこと小畠絹子に出会いました。ハッとする千葉ちゃん。「いつ、この土地に帰ってきた」「帰ってきた?そうだったね、この土地はあんたの故郷。亭主だ、女房だって仲のときもあったんだね」。やっぱり、小畠絹子は千葉ちゃんの元女房だったようです。「子供のことは考えちゃみなかったのかい」と、プイと出て行った小畠絹子を責める千葉ちゃん。もちろん、小畠絹子だって負けてはいません。「男の子は男親。子供がいりゃ、あんたも少しは真っ当な人間になっていると思っていた。でも今日のあんたの目を見て、あたしはゾッとしたよ。5年前と同じヤクザの目だ。かわいそうに。親の道を子供が歩いていってしまう。健一だけは、そんなにさせたくない。あたしが産んだ子だ。あたしがちゃんと育てますよ」。「言いたいことはそれだけかい。健一の夢の中に出てくるお袋はな、酒の匂いはしてねえぜ」。はい、交渉決裂です。
真田広之に、もう町に行くな、と命令する千葉ちゃん。分かったよ、と素直に答えた真田広之は言います。「俺な、大人になったら、木こりになってもいいか。山は空に近いんだ。母ちゃんに教えてやるんだ。かあちゃーん」。グワっと目を見開く千葉ちゃん。さすがにお空にいるはずの母ちゃんが、町で、それも富高組の飲み屋で飲んだくれの酌婦をしているとは、さすがに言えません。
さてさて、一杯飲み屋では、富高組に一人で乗り込んできた千葉ちゃんのことを組員たちが噂しています。それを隅で聞いていた一人の男が、ドスを握り締めました。あれ、このドスは、千葉ちゃんが斃した男のドスじゃありませんか。すると、この男は。
男は辰(丹波哲郎)といって、死んだ男の兄弟分だったのです。ようやく見つけたと、富高組に仁義を切りにいく丹波哲郎。「実はおめえさんのとこのシマで、人を一人斬らしてもらうぜ」。これには、親分も否やはありません。というか渡りに船。ラッキー、な感じです。早速、下にも置かぬ扱いで客人として迎えられた丹波哲郎。酒は飲み放題、ついでに小畠絹子のサービス付きです。
丹波哲郎と小畠絹子が差し向かいで飲んでいるところに、竹とんぼが飛び込んできました。外を見れば、キュートな真田広之がいるじゃありませんか。なんだか、捨てた子供に似ている、と飲み屋を飛び出した小畠絹子は、アレコレと世話を焼きます。「俺の母ちゃん、空にいるんだ」と言い出す真田広之。ハッ。「空……坊や、名前なんて言うの」「健一」。こ、これは。思わず抱きしめちゃう小畠絹子。しかし、真田広之はとってもストレートな子供なので、「オバチャン、お酒の匂いがする。嫌いだ」ピューッ。ガ、ガーンな小畠絹子です。
ヨロヨロ戻った小畠絹子に、「捨てちまったんだろ。ムシが良すぎるぜ」と、何もかもお見通しの丹波哲郎。「あの子の父親が悪いんだよ」と言い訳する小畠絹子に、丹波哲郎は追い打ちをかけます。「俺もガキのころ、棒っ切れみたいに捨てられちまったんだ」「俺は許さねえ。俺にはたった一人、兄弟分がいた。そいつは死ぬまで、俺を捨てなかった野郎だ。そいつが死んだのは、恨みっこなしの勝負の果てだ。だから殺した奴に恨みはねえ。しかし、俺は息の続く限り、そいつを追い続けなくちゃなんねえ」。
「ところが、そいつの横にはちびっこい野郎が一人いた。今度はそいつが俺を追い続ける番だ」。も、もしや、とイヤな予感に震える小畠絹子。「あんた、まさかその男、文吾っていうんじゃないだろうね」。丹波哲郎は何も答えず、ただギロリと小畠絹子を睨むのでした。
名古屋の森林組合の塚田さんを誘拐したものの、なかなか埒が明かないのにイラだった富高組の親分は、思い切った手で、山林の権利を取ることにしました。それは、鉄橋を爆破して、材木運搬列車を谷底に落としてしまえ、という乱暴なもの。ついでに、分教場の子供たちが通る時間を狙って、子供たちも殺してしまおうという鬼畜っぷりです。もう、この時点で理解不能な感じですけどね。だって、鉄橋を爆破したら、自分が山林の権利を手に入れても、どうしようもないじゃないですか。その上、子供たちの大虐殺なんかしたら、警察、というより国家の総力を挙げて追われる立場になると思うんですが。まあ、親分は遠藤辰雄なので、そこまで考えていない可能性もありますけど。
ともあれ、そんな情報を察知した丹波哲郎は、小畠絹子に教えてやることにしました。「一遍でもいいや。おめえの力で子供を救ってみな」。「健一が危ないんだねっ」と叫んだ小畠絹子は猛ダッシュ。ズドドド。ドテッ。コケている小畠絹子を見つけたのは千葉ちゃん。「健一が、健一が危ないんだ。列車が爆破される」。「何っ」と、代わりに走り出す千葉ちゃん。道路を走りぬけ、岩山をよじ登り、そして問題の鉄橋へ。シューシュー。ダイナマイトの導火線が燃えています。止まれ、止まれーっ。列車に向かって叫びながら、ダイナマイトにスライディングした千葉ちゃんは、ダイナマイトをむしりとり、谷底に投げ込むのでした。「健一、けんいちーっ」。しかし真田広之は列車に乗っていませんでしたよ。慌てて崖を滑り降り、真田広之を探して走り回る千葉ちゃん。あっ、いました、いました。真田広之は婚礼の行列にくっ付いて歩いています。バッコーン。真田広之を殴り飛ばして、「バカ野郎っ。こんなとこノンキに歩いていやがって」と怒る千葉ちゃん。「何すんだよ」「何すんだよもクソもあるかい。心配ばかりかけやがって」。そうは言いつつ、すぐに仲直りをして、真田広之を肩車して、楽しそうに笑っている千葉ちゃん。それを恨めしそうに見ているのは、小畠絹子です。
「なあ、健一。二人で山降りるか」「また旅か」「おう」「悪い奴がここまで追いかけてきたのか。俺、ここがいいや、俺、木こりになるんだ。(お空の)母ちゃんと約束したもんな」。そうか、そこまで、こいつは。ぐぐぅっとこみ上げるものを感じる千葉ちゃん。よし、お前の夢は父ちゃんが必ずかなえてやるぞっ。
未遂に終わったとはいえ、富高組が鉄橋爆破まで考えていたことに恐怖している親方と小川知子。もう、山を閉めるしかないんだろうか。でも飯場のひとはどうすれば。と、そこに千葉ちゃんが言い出しました。「親方、その話、あっしにまかしてくれませんか。今度こそ、きっぱりと決着つけてまいります」。「文吾、お前にはかわいい子供がいる」という親方に、その子供のために行くんですと答える千葉ちゃん。なにしろ真田広之は「この山、てめえのものだと思ってやがんですよ」だそうですから。
ドスの準備をして、寝ている真田広之の顔をいとおしそうに撫でた千葉ちゃんは出撃。しかし、道の途中には丹波哲郎が待ち構えていました。「抜けっ」「分かった、だが今日だけ待ってくれ。どうしてもやらなくちゃならねえ用事がある」「抜かねえなら斬る」「逃げも隠れもしねえ。子供を預ける。頼むっ」。火を吹くような男と男のにらみ合いが続き、やがて、丹波哲郎はスチャっとドスを収めるのです。
パチッ。真田広之が目覚めると、そこには知らないおじさんが。「父ちゃんはどうしたんだ。お前がどうかしたな」と怒る真田広之に丹波哲郎もちょっともてあまし気味です。しかし、大事な人質ですからね、見守っていなくてはなりません。トイレの紙持ってこいとか、すずりと筆持ってこいなど、厳しい要求にも、丹波哲郎はガマン、ガマン。なにしろ子供の言うことだし、なによりキュートですからね。貰った筆で、真田広之は板切れに、なにやら書き出しましたよ。へったくそな字で「成田山」と書いています。「お守りか」「父ちゃんの割れちまったからな。父ちゃんがお前に負けないように作ってるんだ」。ズキン。思わずハートがドキドキしちゃう丹波哲郎です。こ、こいつカワイイじゃねえか。
単身、親分のところに乗り込んだ千葉ちゃんは直談判。今度山に手を出したら、「そんときゃ、あんたの命ハッキリといただきますぜ」。そんな千葉ちゃんのイキオイに恐れをなした様子の親分は、無事に名古屋の塚田さんを解放してくれました。いやあ、行ってみるもんですねえ。
一方、その頃の健一といえば、丹波哲郎のもとを脱走。町にいる父ちゃんのもとにひた走っています。「おい待て、坊主。おい坊主、待て待て。その橋は危ねえんだ」。確かに通行禁止の橋は、今にもワイヤーが切れそう。ぐいっとワイヤーを掴み、懸命に真田広之を助けようと必死な丹波哲郎。そんなこととは知らない真田広之は、さっさと橋を渡ってピューです。バチン。その瞬間、ワイヤーが切れました。ふう、どうにか間に合った。思わず、「やーいバカ坊主ぅ」と怒鳴る丹波哲郎です。
町にやってきた真田広之は、怖いオバチャンこと小畠絹子のところを訪ねたところを見つかり、、あっさりと敵の手に。敵からすれば、子供さえ人質にとっておけば「あの」千葉ちゃんだって怖くないですもんね。早速、小川知子に電話、電話。「文吾に伝えてくれ。ガキの命が惜しかったら、契約書にハン突いて、一人で持ってくるようにとな」。それを聞いた千葉ちゃんの怒るの怒らないの。もうグワーッと眦が裂けそうなくらいに、虚空を睨んでいますよ。幸い、親切な小川知子が「こんなものと健ぼうの命、どっちが大切なの」とハンコをくれたのですが、それに甘えちゃ、男が廃るっていうもんです。「あの野郎は生まれて初めて夢を持った。山のおかげだ。子の命は親の命。あっしの身が万が一の時は、健一のことを頼みます。頼みます」。
どりゃあーっ。殴りこむ千葉ちゃん。敵から長ドスを奪い取り、当たるを幸い、斬って斬って斬りまくります。えっ、それじゃ真田広之が危ない。いえいえ、大丈夫。丹波哲郎が助けに来てくれましたから。「おじちゃん、さっきはありがとう」と言われ、「うん」と言いつつ目がデレデレな丹波哲郎。目の毒だからな、と真田広之に目隠しをしてあげちゃうくらい、真田広之がカワイイみたいでえすね。
あっ、父ちゃんの戦っている音がするっ。「父ちゃん、お守りっ」と手作り「成田山」お守りを投げる真田広之。「それ持っとくと負けないぜ」。おう、ありがとよ。さらにパワーアップな千葉ちゃんと、丹波哲郎のダブルアタックに、敵も防戦一方です。しかし、親分は卑怯にも飛び道具を持ち出しましたよ。ダーン。銃声に慌てて身を隠す千葉ちゃんたち。「文吾、辰。出て来い。どっちからでもいいや。順繰りに地獄に送り込んでやる」。ズダーン。銃弾は真田広之めがけて、音の速さで飛んでいきます。「あっ、けんいちーっ」、その銃弾に身をさらしたのは小畠絹子でした。千葉ちゃんはその隙にさっと身を躍らせ、親分をバサッ。敵は全滅です。
さっき聞こえた「けんいちーっ」という声。目隠しをしているけど、真田広之には分かります。「母ちゃんだな。俺見えないけど分かるんだ。ちっちゃい時死んだ母ちゃんが呼んだっ」。目の前で息を殺して泣いている小畠絹子。会っちゃいけない、こんな母親失格の女が。でも、母と名乗りたい。手を真田広之の方に伸ばしていく小畠絹子。あと少し。もう少し。しかし、直前で手を伸ばすのをやめ、小畠絹子は死にました。ガクッ。
「健一、ここを動くんじゃないぜ」「うんっ」。千葉ちゃんは、丹波哲郎と外に出ます。決着をつけなければなりません。ドスを構える二人。シャッ。風がうなりました。カラン。手作り「成田山」お守りが落ち、千葉ちゃんは顔を斬られています。完敗です。ドス捌きでは、丹波哲郎の方が二枚も三枚も実力が上のようです。しかし丹波哲郎は、「拾え。そのお守りにはかなわねえ」と言って、持っていた宿縁のドスをぽーんと投げ捨てるのでした。
夏も終わり、木曽では盆踊りが行われています。「行くの?」と問う小川知子に千葉ちゃんは、「生まれ故郷はおふくろ。そいつを血で染めた裁きは受けなくちゃならねえ。健一の野郎に初めて夢が生まれた。山のみんなのおかげだ。野郎が生まれて初めて……」と絶句します
「待ってるわ。健ぼうと一緒に」、そう言って、踊りの輪に入る小川知子。親方も、三原葉子も、学校の先生(川津祐介)も、みんな千葉ちゃんが見ているのに気づいていますが、ただ真田広之だけはそれを知らないのです。石灯籠の影から、おかめの面で顔を隠した千葉ちゃんが顔を出し、熱い視線で真田広之を見ます。「けんいちっ」、万感の思いをこめて呟く千葉ちゃん。「♪逃ーげたぁ女房にゃあ、未練はなーいぃがぁ♪」、唄が終わったとき、千葉ちゃんの姿はそこに無く、ただ石灯籠にポツンとおかめの面が置いてあるだけでした。
いやあ、もう最高。なんていうか、父と子の心の交流っていいですねえ。不器用な中に滲み出る愛情っていうんでしょうか。クレイマークレイマーのダスティン・ホフマンを髣髴とさせるようです。もちろん、こっちの映画の方がはるかに古いですけど。
それはともかく、助演に丹波哲郎、小畠絹子、三原葉子とかつての新東宝の面々が顔をそろえているのも、新東宝ファンにはうれしいところ。特に、丹波哲郎、三原葉子はともかくとして、小畠絹子は新東宝が倒産してから、出演作が激減しているので、なかなか貴重な一本でした。
もちろん、千葉ちゃんと真田広之の息はピッタリ。ホントの親子じゃないのと思うくらい、細やかな情があふれていて素晴らしいです。千葉ちゃんの場合、細かい演技より、イキオイ、インパクト勝負なところがありますが、この子守唄シリーズでは、実に細かい緻密な演技を見せてくれるんですよね。やっぱり、大スターは違うなあと思います。やればデキル子、とでもいうんでしょうか。
ちなみに、千葉ちゃんが真田広之を洗ってやるシーンで、真田広之はかわいいおちんちんを丸出し状態。今では世界的なスターなのに、こうして永遠におちんちん丸出しが残ってしまうんですから、子役出身って、辛いものがありますねえ。




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おはなし
遠藤文吾は、一人息子の健一のためにカタギになって、木こりとして働き始めますが……。
浪曲子守唄、続浪曲子守唄に続く、子守唄シリーズの第三弾です。主人公と子供の名前も一緒だし、もちろん演ずるのも千葉真一と真田広之。こういうのは安心して観られますねえ。
夕焼けをバックにドスを振るう二人の男。ぐさっ。一人の男が刺されて倒れました。刺したのは、ご存知、遠藤文吾(千葉真一)。刺された男は息も絶え絶えに言います。「文吾さん。お互ぇ恨みっこなしの勝負だったな。俺の仲間は必ずおめえさんを追う。ヤクザなもんよ。消えてくんな。子供のためによ」。
旅をしている千葉ちゃんと、息子の健一(下沢広之=真田広之)。千葉ちゃんは呟きます。「あれから3年。健一、おめえだけは何とかして明るいお天道様の下で、立派に育ってくれと。だが堪忍してくれ。今日も影が追ってきやがる。また旅だ」。「♪逃ーげたぁ女房にゃあ、未練はなーいぃがぁ♪」、そうそう、この歌が流れないとね、気分が出ません。
テクテク。線路を歩く千葉ちゃんと真田広之。線路なんか歩くとアブナイですよ。ほら看板にも「軌道内通行禁止」って書いてあるじゃないですか。「父ちゃん。これなんて書いてあるんだ」「んーっ。これはな、立小便するなって、書いてあるんだ」。そんな千葉ちゃんは字が読めないのでした。ガタンゴトン、ガタンゴトン。プーッ。あーあ、千葉ちゃんは材木運搬列車の運転士さんに怒られていますよ。でも、運転士さんは優しい人だったんでしょう。千葉ちゃんと真田広之は材木の上に乗せてもらうことができたのです。
そしてやってきたのは、木曽の山奥の飯場。千葉ちゃんは、ここで木こりとして、まっとうに暮らすつもりです。早速、親方の岩崎(石山健二郎)に頼んでみましょう。「おめえさん、戸籍謄本持ってるかい」。えーと、コセキトウホンって何だろう。「いや、そんな厄介なものは」と答える千葉ちゃん。どうしよう。しかし、そこに現れたのが、親方の孫娘の美樹(小川知子)です。すっかり、真田広之のキュートさにKOされた小川知子は、いいじゃないお爺ちゃん、と親方を説得してくれて千葉ちゃんは無事に職にありつくことができたのでした。
木こりの飯場は、キツイ仕事ですが、周りの人はいい人ばかり。一本気な留次(玉川良一)や、その奥さんで鉄火肌のお時(三原葉子)、そしてもちろん、親方に小川知子など、みんなが真田広之をかわいがってくれて、千葉ちゃんもひと安心です。しかし、良かった良かったでは、話が終わってしまうというもので、やはり、こんな平和な山奥でも、揉め事のタネは転がっているのでした。それというのは、この山林の権利を狙っている富高組の存在。木こりを怪我させたり、やりたい放題の挑発をしかけてきます。しかし親方は断固として脅しに屈せず、非暴力主義を貫くのです。
すっかりアイドルの真田広之は、材木列車に乗って、三原葉子とお昼のお弁当を届けに行くことになりました。ガタンゴトン、ガタンゴトン。そして、その帰り道。「おばちゃん、山は高いから空に近いな」と言い出す真田広之。「うん、そりゃまあ、町に比べれば、ちっとは近いさ」。「空から俺のことが見えるかなあ」、そんな言葉にハッとする三原葉子。「健ぼう、寂しいんだね。お母ちゃんがいなくて」「健ぼう。もし何だったら、このおばちゃんがお母ちゃんになってやろうか」。しかし、真田広之はとってもストレートな子供なので、こういうのです。「俺の母ちゃんはなあ、目が細くて、きれいで優しいんだ。夢を壊さないでくれよ」。えーと、三原葉子の立場ゼロ。
さて、山奥の飯場から、町に住む小川知子のところに遊びにきた真田裕之は、途中で怖いオバサン(小畠絹子=小畑絹子)に出会いました。このオバサンは真田広之の竹とんぼを踏んづけても、ろくに謝ってくれないような怖いオバサン。すっかりムカっとする真田広之です。
小川知子にカバンを買ってもらって、ニコニコの真田広之。そう、真田広之も大きくなったので、小学校に通わなくてはなりません。しかし、これにムクレテいるのが千葉ちゃん。「おい、健一。おめえ何かい。学校行きてぇんなら、行きてぇって何で父ちゃんに言わないんだい」。どうやら、自分に最初に言ってくれなかったので、すっかりふて腐れているようです。そんな千葉ちゃんの様子を察した真田広之は言い出しました。「父ちゃん、俺、学校に行かねえや。学校なんか行きたくないもん。だからよ、父ちゃん機嫌なおせよ」。周りの気のいい木こりたちは、千葉ちゃんを責めるような目で見ていますよ。えーと、困ったな。うーん、そうだ。真田広之に一升瓶を持ってこさせた千葉ちゃんは、「さあ、おめえもやれい」とコップ酒を真田広之に差し出します。あわてて止める周りの人たち。しかし、「いいか健一。おめえが学校にあがる祝い酒だ」と千葉ちゃんが言い出したので、ちょっとひと安心です。まったく千葉ちゃんは素直じゃないんだから。
富高組の嫌がらせは増すばかり。とうとう、山にタバコの火をポイっと捨てるという荒技に出てきました。これには千葉ちゃんも、プチーンとキレてしまいます。早速、町にある富高組の飲み屋に乗り込み、親分(遠藤辰雄)に直談判です。「木一本、首ひとつ。これは昔からの木曾谷の掟だ。お山の木は日本人みんなのものじゃねえんですかい。ちょっとした不注意で、お山を焼いちゃ申し訳が立たねえ。親分さん、どうぞこれっきり、不心得者を出さねえように、お願い申します」。さすがに、これには親分も閉口して、シドロモドロに言い訳をするのです。
意気揚々と引き揚げようとした千葉ちゃんは怖いオバチャンこと小畠絹子に出会いました。ハッとする千葉ちゃん。「いつ、この土地に帰ってきた」「帰ってきた?そうだったね、この土地はあんたの故郷。亭主だ、女房だって仲のときもあったんだね」。やっぱり、小畠絹子は千葉ちゃんの元女房だったようです。「子供のことは考えちゃみなかったのかい」と、プイと出て行った小畠絹子を責める千葉ちゃん。もちろん、小畠絹子だって負けてはいません。「男の子は男親。子供がいりゃ、あんたも少しは真っ当な人間になっていると思っていた。でも今日のあんたの目を見て、あたしはゾッとしたよ。5年前と同じヤクザの目だ。かわいそうに。親の道を子供が歩いていってしまう。健一だけは、そんなにさせたくない。あたしが産んだ子だ。あたしがちゃんと育てますよ」。「言いたいことはそれだけかい。健一の夢の中に出てくるお袋はな、酒の匂いはしてねえぜ」。はい、交渉決裂です。
真田広之に、もう町に行くな、と命令する千葉ちゃん。分かったよ、と素直に答えた真田広之は言います。「俺な、大人になったら、木こりになってもいいか。山は空に近いんだ。母ちゃんに教えてやるんだ。かあちゃーん」。グワっと目を見開く千葉ちゃん。さすがにお空にいるはずの母ちゃんが、町で、それも富高組の飲み屋で飲んだくれの酌婦をしているとは、さすがに言えません。
さてさて、一杯飲み屋では、富高組に一人で乗り込んできた千葉ちゃんのことを組員たちが噂しています。それを隅で聞いていた一人の男が、ドスを握り締めました。あれ、このドスは、千葉ちゃんが斃した男のドスじゃありませんか。すると、この男は。
男は辰(丹波哲郎)といって、死んだ男の兄弟分だったのです。ようやく見つけたと、富高組に仁義を切りにいく丹波哲郎。「実はおめえさんのとこのシマで、人を一人斬らしてもらうぜ」。これには、親分も否やはありません。というか渡りに船。ラッキー、な感じです。早速、下にも置かぬ扱いで客人として迎えられた丹波哲郎。酒は飲み放題、ついでに小畠絹子のサービス付きです。
丹波哲郎と小畠絹子が差し向かいで飲んでいるところに、竹とんぼが飛び込んできました。外を見れば、キュートな真田広之がいるじゃありませんか。なんだか、捨てた子供に似ている、と飲み屋を飛び出した小畠絹子は、アレコレと世話を焼きます。「俺の母ちゃん、空にいるんだ」と言い出す真田広之。ハッ。「空……坊や、名前なんて言うの」「健一」。こ、これは。思わず抱きしめちゃう小畠絹子。しかし、真田広之はとってもストレートな子供なので、「オバチャン、お酒の匂いがする。嫌いだ」ピューッ。ガ、ガーンな小畠絹子です。
ヨロヨロ戻った小畠絹子に、「捨てちまったんだろ。ムシが良すぎるぜ」と、何もかもお見通しの丹波哲郎。「あの子の父親が悪いんだよ」と言い訳する小畠絹子に、丹波哲郎は追い打ちをかけます。「俺もガキのころ、棒っ切れみたいに捨てられちまったんだ」「俺は許さねえ。俺にはたった一人、兄弟分がいた。そいつは死ぬまで、俺を捨てなかった野郎だ。そいつが死んだのは、恨みっこなしの勝負の果てだ。だから殺した奴に恨みはねえ。しかし、俺は息の続く限り、そいつを追い続けなくちゃなんねえ」。
「ところが、そいつの横にはちびっこい野郎が一人いた。今度はそいつが俺を追い続ける番だ」。も、もしや、とイヤな予感に震える小畠絹子。「あんた、まさかその男、文吾っていうんじゃないだろうね」。丹波哲郎は何も答えず、ただギロリと小畠絹子を睨むのでした。
名古屋の森林組合の塚田さんを誘拐したものの、なかなか埒が明かないのにイラだった富高組の親分は、思い切った手で、山林の権利を取ることにしました。それは、鉄橋を爆破して、材木運搬列車を谷底に落としてしまえ、という乱暴なもの。ついでに、分教場の子供たちが通る時間を狙って、子供たちも殺してしまおうという鬼畜っぷりです。もう、この時点で理解不能な感じですけどね。だって、鉄橋を爆破したら、自分が山林の権利を手に入れても、どうしようもないじゃないですか。その上、子供たちの大虐殺なんかしたら、警察、というより国家の総力を挙げて追われる立場になると思うんですが。まあ、親分は遠藤辰雄なので、そこまで考えていない可能性もありますけど。
ともあれ、そんな情報を察知した丹波哲郎は、小畠絹子に教えてやることにしました。「一遍でもいいや。おめえの力で子供を救ってみな」。「健一が危ないんだねっ」と叫んだ小畠絹子は猛ダッシュ。ズドドド。ドテッ。コケている小畠絹子を見つけたのは千葉ちゃん。「健一が、健一が危ないんだ。列車が爆破される」。「何っ」と、代わりに走り出す千葉ちゃん。道路を走りぬけ、岩山をよじ登り、そして問題の鉄橋へ。シューシュー。ダイナマイトの導火線が燃えています。止まれ、止まれーっ。列車に向かって叫びながら、ダイナマイトにスライディングした千葉ちゃんは、ダイナマイトをむしりとり、谷底に投げ込むのでした。「健一、けんいちーっ」。しかし真田広之は列車に乗っていませんでしたよ。慌てて崖を滑り降り、真田広之を探して走り回る千葉ちゃん。あっ、いました、いました。真田広之は婚礼の行列にくっ付いて歩いています。バッコーン。真田広之を殴り飛ばして、「バカ野郎っ。こんなとこノンキに歩いていやがって」と怒る千葉ちゃん。「何すんだよ」「何すんだよもクソもあるかい。心配ばかりかけやがって」。そうは言いつつ、すぐに仲直りをして、真田広之を肩車して、楽しそうに笑っている千葉ちゃん。それを恨めしそうに見ているのは、小畠絹子です。
「なあ、健一。二人で山降りるか」「また旅か」「おう」「悪い奴がここまで追いかけてきたのか。俺、ここがいいや、俺、木こりになるんだ。(お空の)母ちゃんと約束したもんな」。そうか、そこまで、こいつは。ぐぐぅっとこみ上げるものを感じる千葉ちゃん。よし、お前の夢は父ちゃんが必ずかなえてやるぞっ。
未遂に終わったとはいえ、富高組が鉄橋爆破まで考えていたことに恐怖している親方と小川知子。もう、山を閉めるしかないんだろうか。でも飯場のひとはどうすれば。と、そこに千葉ちゃんが言い出しました。「親方、その話、あっしにまかしてくれませんか。今度こそ、きっぱりと決着つけてまいります」。「文吾、お前にはかわいい子供がいる」という親方に、その子供のために行くんですと答える千葉ちゃん。なにしろ真田広之は「この山、てめえのものだと思ってやがんですよ」だそうですから。
ドスの準備をして、寝ている真田広之の顔をいとおしそうに撫でた千葉ちゃんは出撃。しかし、道の途中には丹波哲郎が待ち構えていました。「抜けっ」「分かった、だが今日だけ待ってくれ。どうしてもやらなくちゃならねえ用事がある」「抜かねえなら斬る」「逃げも隠れもしねえ。子供を預ける。頼むっ」。火を吹くような男と男のにらみ合いが続き、やがて、丹波哲郎はスチャっとドスを収めるのです。
パチッ。真田広之が目覚めると、そこには知らないおじさんが。「父ちゃんはどうしたんだ。お前がどうかしたな」と怒る真田広之に丹波哲郎もちょっともてあまし気味です。しかし、大事な人質ですからね、見守っていなくてはなりません。トイレの紙持ってこいとか、すずりと筆持ってこいなど、厳しい要求にも、丹波哲郎はガマン、ガマン。なにしろ子供の言うことだし、なによりキュートですからね。貰った筆で、真田広之は板切れに、なにやら書き出しましたよ。へったくそな字で「成田山」と書いています。「お守りか」「父ちゃんの割れちまったからな。父ちゃんがお前に負けないように作ってるんだ」。ズキン。思わずハートがドキドキしちゃう丹波哲郎です。こ、こいつカワイイじゃねえか。
単身、親分のところに乗り込んだ千葉ちゃんは直談判。今度山に手を出したら、「そんときゃ、あんたの命ハッキリといただきますぜ」。そんな千葉ちゃんのイキオイに恐れをなした様子の親分は、無事に名古屋の塚田さんを解放してくれました。いやあ、行ってみるもんですねえ。
一方、その頃の健一といえば、丹波哲郎のもとを脱走。町にいる父ちゃんのもとにひた走っています。「おい待て、坊主。おい坊主、待て待て。その橋は危ねえんだ」。確かに通行禁止の橋は、今にもワイヤーが切れそう。ぐいっとワイヤーを掴み、懸命に真田広之を助けようと必死な丹波哲郎。そんなこととは知らない真田広之は、さっさと橋を渡ってピューです。バチン。その瞬間、ワイヤーが切れました。ふう、どうにか間に合った。思わず、「やーいバカ坊主ぅ」と怒鳴る丹波哲郎です。
町にやってきた真田広之は、怖いオバチャンこと小畠絹子のところを訪ねたところを見つかり、、あっさりと敵の手に。敵からすれば、子供さえ人質にとっておけば「あの」千葉ちゃんだって怖くないですもんね。早速、小川知子に電話、電話。「文吾に伝えてくれ。ガキの命が惜しかったら、契約書にハン突いて、一人で持ってくるようにとな」。それを聞いた千葉ちゃんの怒るの怒らないの。もうグワーッと眦が裂けそうなくらいに、虚空を睨んでいますよ。幸い、親切な小川知子が「こんなものと健ぼうの命、どっちが大切なの」とハンコをくれたのですが、それに甘えちゃ、男が廃るっていうもんです。「あの野郎は生まれて初めて夢を持った。山のおかげだ。子の命は親の命。あっしの身が万が一の時は、健一のことを頼みます。頼みます」。
どりゃあーっ。殴りこむ千葉ちゃん。敵から長ドスを奪い取り、当たるを幸い、斬って斬って斬りまくります。えっ、それじゃ真田広之が危ない。いえいえ、大丈夫。丹波哲郎が助けに来てくれましたから。「おじちゃん、さっきはありがとう」と言われ、「うん」と言いつつ目がデレデレな丹波哲郎。目の毒だからな、と真田広之に目隠しをしてあげちゃうくらい、真田広之がカワイイみたいでえすね。
あっ、父ちゃんの戦っている音がするっ。「父ちゃん、お守りっ」と手作り「成田山」お守りを投げる真田広之。「それ持っとくと負けないぜ」。おう、ありがとよ。さらにパワーアップな千葉ちゃんと、丹波哲郎のダブルアタックに、敵も防戦一方です。しかし、親分は卑怯にも飛び道具を持ち出しましたよ。ダーン。銃声に慌てて身を隠す千葉ちゃんたち。「文吾、辰。出て来い。どっちからでもいいや。順繰りに地獄に送り込んでやる」。ズダーン。銃弾は真田広之めがけて、音の速さで飛んでいきます。「あっ、けんいちーっ」、その銃弾に身をさらしたのは小畠絹子でした。千葉ちゃんはその隙にさっと身を躍らせ、親分をバサッ。敵は全滅です。
さっき聞こえた「けんいちーっ」という声。目隠しをしているけど、真田広之には分かります。「母ちゃんだな。俺見えないけど分かるんだ。ちっちゃい時死んだ母ちゃんが呼んだっ」。目の前で息を殺して泣いている小畠絹子。会っちゃいけない、こんな母親失格の女が。でも、母と名乗りたい。手を真田広之の方に伸ばしていく小畠絹子。あと少し。もう少し。しかし、直前で手を伸ばすのをやめ、小畠絹子は死にました。ガクッ。
「健一、ここを動くんじゃないぜ」「うんっ」。千葉ちゃんは、丹波哲郎と外に出ます。決着をつけなければなりません。ドスを構える二人。シャッ。風がうなりました。カラン。手作り「成田山」お守りが落ち、千葉ちゃんは顔を斬られています。完敗です。ドス捌きでは、丹波哲郎の方が二枚も三枚も実力が上のようです。しかし丹波哲郎は、「拾え。そのお守りにはかなわねえ」と言って、持っていた宿縁のドスをぽーんと投げ捨てるのでした。
夏も終わり、木曽では盆踊りが行われています。「行くの?」と問う小川知子に千葉ちゃんは、「生まれ故郷はおふくろ。そいつを血で染めた裁きは受けなくちゃならねえ。健一の野郎に初めて夢が生まれた。山のみんなのおかげだ。野郎が生まれて初めて……」と絶句します
「待ってるわ。健ぼうと一緒に」、そう言って、踊りの輪に入る小川知子。親方も、三原葉子も、学校の先生(川津祐介)も、みんな千葉ちゃんが見ているのに気づいていますが、ただ真田広之だけはそれを知らないのです。石灯籠の影から、おかめの面で顔を隠した千葉ちゃんが顔を出し、熱い視線で真田広之を見ます。「けんいちっ」、万感の思いをこめて呟く千葉ちゃん。「♪逃ーげたぁ女房にゃあ、未練はなーいぃがぁ♪」、唄が終わったとき、千葉ちゃんの姿はそこに無く、ただ石灯籠にポツンとおかめの面が置いてあるだけでした。
いやあ、もう最高。なんていうか、父と子の心の交流っていいですねえ。不器用な中に滲み出る愛情っていうんでしょうか。クレイマークレイマーのダスティン・ホフマンを髣髴とさせるようです。もちろん、こっちの映画の方がはるかに古いですけど。
それはともかく、助演に丹波哲郎、小畠絹子、三原葉子とかつての新東宝の面々が顔をそろえているのも、新東宝ファンにはうれしいところ。特に、丹波哲郎、三原葉子はともかくとして、小畠絹子は新東宝が倒産してから、出演作が激減しているので、なかなか貴重な一本でした。
もちろん、千葉ちゃんと真田広之の息はピッタリ。ホントの親子じゃないのと思うくらい、細やかな情があふれていて素晴らしいです。千葉ちゃんの場合、細かい演技より、イキオイ、インパクト勝負なところがありますが、この子守唄シリーズでは、実に細かい緻密な演技を見せてくれるんですよね。やっぱり、大スターは違うなあと思います。やればデキル子、とでもいうんでしょうか。
ちなみに、千葉ちゃんが真田広之を洗ってやるシーンで、真田広之はかわいいおちんちんを丸出し状態。今では世界的なスターなのに、こうして永遠におちんちん丸出しが残ってしまうんですから、子役出身って、辛いものがありますねえ。




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