いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】スーパージャイアンツ 鋼鉄の巨人 怪星人の魔城

2009-09-18 | 邦画 さ行
【「スーパージャイアンツ 鋼鉄の巨人 怪星人の魔城」1957 石井輝男】をみたよ





おはなし
なぞの空とぶ円ばんが現れて、日本は大さわぎだよ。

スーパージャイアンツの3作目。石井かんとくの本りょう発きで、とてもグロテスクな映画ができあがったね。

「弾丸よりも速く、鋼鉄よりも強く、ぼくらのスーパージャイアンツ!」、お約束のかけ声がかかって、物語は始まります。

「この恐ろしい事件が起こったのは、1957年の初めの頃、東洋航空のいちパイロットによって報告されたひとつの事件に始まる」というナレーションとともに、飛行場が映りました。パイロットたちが、息をきらせて走ってきます。そして、とんでもないことを言いだしました。「不思議な円盤2台に、天城山付近で出会いました」「目測距離20キロ。推定速度6千キロくらいでした。あんな速い飛行力をもったものは、この地球上にないはずです」。あわてて追跡にかかる航空自衛隊のお兄さんたち。でも、円ばんはすばらしい速度でどこかに飛びさってしまったのです。

「空飛ぶ円盤現る」の見出しが新ぶんにおどり、国会では「円盤対策委員会」がひらかれて、えらい人たちが、いろんな話し合いをしました。でも、はっきりした結ろんが出ないまま、今度は東京に、脳炎に似たしょう状のきみょうな病気がはやりだしたのです。

「この奇病にかかった家には、軒に赤旗が立てられ、立ち入りが厳重に禁止された」
あちこちの家に、赤いはた(白黒の映画だけど)が立てられて、ものものしい防ご服を着たひとたちが消毒をしています。町の人たちは、みんな恐怖に怯えているようです。なんだか、観ていてぞっとするようなシーンです。

さて、ここは浅山天文研究所。天文学者の浅山はかせのところに、生物学者の深見はかせがおとずれています。じつは二人は、大のしん友。浅山はかせには、3人のお子さんがいます。高校生の美子さん。小学生の亮くんに、次郎くんです。そして深見はかせには小学生のおじょうさん、典子さんが。家ぞくぐるみのお付き合いなので、亮くんに次郎くん、そして典子さんは仲良しさんにん組なのです。そんな子どもたちは円ばん探しに夢中で、ぼうえん鏡にかじりついていますが、お父さまたちは難しい顔。それというのも、浅山はかせは円ばん問題に、そして深見はかせは病気の治りょうに、頭をなやませていたのでした。

その夜、浅山はかせがお部屋で研究をしていると、黒マスクをつけた謎のおとこが案内も請わずにやってきました。そして、その黒マスクを取ると。ああ、なんてことでしょう。ケロイドにおおわれた顔に、大きくさけた口。「ハッ」とおどろいた浅山はかせに、謎の男は言います。「キミはわれわれの円盤の秘密を探っている。そのくせ、世間には円盤の存在を否定している。怖いのだ。キミは恐れているのだ。円盤やわれわれの存在を。世間のものが知った、その時の混乱を。フフフ。フフフ。キミのような天文学者がいると、われわれの仕事がやりにくくてたまらないのだ。フフフ」。ガーーッ。怯えているはかせに、怪星人は謎の光線を吐きかけるのです。

円ばん監視のために、天体かんそくをしている仲良しさんにん組。おや、何かがとんできます。「スーパージャイアンツのおじさんが飛んでくるよ」「ああ、ホント、こっちに飛んでくるわよ」「ヘンだね。スーパージャイアンツのおじさんは、原水爆実験を禁止するようにアメリカやソビエットに交渉に行ったはずでしょ。どうして日本に帰ってきたのかな」。ふしぎですね。もしかして、スーパージャイアンツのおにいさんは、日本で起こっている異変に気がついたのでしょうか。

怪星人はあやしく手をヒラヒラさせながら、催眠じょうたいになってしまった浅山はかせをゆう導しています。ヒラヒラ。ヒラヒラ。と、怪星人が空を見上げました。サッ。虚空に手をふる怪星人。浅山はかせはバタっと倒れました。そのまま逃げ出した怪星人ですが、そこに上空よりの声が聞こえてきましたよ。「お待ちなさい」。スーッと空から降りてくるのは、われらがヒーロー、スーパージャイアンツのおにいさんです。あわてて変身をする怪星人。なんてことでしょう。人間に変装していても恐ろしかったのに、その正体といえば。ああ、気持ちがわるいです。カッパというか、スワンプシングというか、ともあれ沼地に巣くう怪物そのものでした。橋げたの上で、格闘をするスーパージャイアンツと怪星人。まるで歌舞伎のようなユックリとした動きが、かえって不気味さを強ちょうするのでした。しかし、スーパージャイアンツのおにいさんに勝てないと悟った怪星人は、ザバーンと川にとびこんで、逃げました。そう、水の中こそ彼らの王国なのです。おにいさんはつぶやきます。「カピアだ。月の裏側にある小さな惑星カピア。彼は全宇宙の中ででも、もっとも邪悪。奸智にたけた侵略者だ。彼らは何を企んでいるのか」。

怪我をしたものの、浅山はかせは、さいわいカピア人にさらわれずに済みました。でも、もうこれで疑いはありません。やはり各地で目げきされている円ばんは、カピア人の乗っているものなのでしょう。さっそく、助手の館野さんに相だんをする浅山はかせ。「頼む。日本の安全のために、いや地球の平和のために、私に協力してもらいたい」「分かりました、先生。私のできることなら何でもやります」。

もっとも、この件は子どもたちにはナイショです。しかし、子どもたちは、家で謎のウロコを拾って、うすうす、ふしぎなことが起きていることに気がついているようですよ。でも助手の館野さんに聞いても、きっとはぐらかされるに決まっています。と、お姉さまがいいます。「そうね、じゃあ雄一さんにご相談してみたらどうかしら」。「うちのお兄さまに」とおどろく典子さん。そうだ。お兄さまは生物学がご専門だから、ウロコを見せれば、その正体を教えてくれるにちがいありません。しかし、お兄さまがウロコを見ても、その正体はわかりません。ただ、何か画期的な発見であることは間違いないようです。

その頃、円ばん騒ぎと奇病にあえぐ東京に、さらなる怪事態がおこりました。どこからともなく、ギーギーと嫌な音が聞こえてきたのです。それを聞いた人は、小学生だろうと、立派な大人のひとだろうと、いちように頭をおさえて苦しがるのでした。

さっそく、国会ではえらい人たちが、対策会ぎをひらきました。そんなのは気のせいだという意見がたいはんを占めたところ、いちばんえらそうな人が叫びます。「ギーの音だ」「聞こえる」「聞こえる」。国会議事堂もパニックです。と、そこにスーパージャイアンツのおにいさんが現れましたよ。「みなさん静かに。静かにして、私の言うことをお聞きください。みなさんが今、お聞きになっているように、ギーの音は確かにあるのです。みなさん、この音は世間の人々が騒いでるとおり、宇宙でも侵略者として有名なカピアが放した怪円盤のためです。このカピアという星は、星全体が泥沼の海のような星で、そして、そこに住む怪星人は体にウロコが生えており、水の中は自由自在です。彼らは地球を乗っ取るためにやってきたのです」「ええっ」。「ギーの音で、地球の人々を極度に刺激したり、また不思議な病気をはやらしたりするのは、みな、地球を不安に陥れるためのゲリラ戦術なのです。私は地球と星の平和のために、この邪悪な侵略者カピアを粉砕するために、再びやってきたのです」「おおー」。「カピアは私が粉砕します。皆さんは、治安の回復に努めてください」。おにいさんは、ガッツポーズを取りつつ、国会ぎじ堂からどこかに、飛びさっていくのでした。ぴゅーん。

飛んでいるスーパージャイアンツのおにいさんは、カピア人の円ばんをはっ見。ピーピーと撃ってくる光線をかわしつつ、円ばん内に侵入してやっつけました。しかし、「この円盤は偵察用の円盤にすぎない。かならず、今ひとつの円盤がどこかに潜んでいるに違いない。一刻も早く彼らの円盤の行方を突き止めなければならないのだ」だそうですよ。

そうこうするうちにも、奇病のまん延は止まりません。町は赤旗で満ち、公園ではたった今まで元気に遊んでいた子どもが倒れ、電車の中では通きん中のお姉さんがバタリと卒倒しています。しかし、深見はかせと、その助手の下村さんは、着々と研究を進めているのです。国会ぎ員のおじさんたちの前で発ぴょうをする下村さん。「東京A型伝染病場所別発生表」によると、山野ホールでの発症が、群を抜いて多いそうです。早速、調さにむかう深見はかせと下村さん。そこでは謎の舞踊団が公演をやっているのですが、それはナントモ奇妙なものでした。これは必見ですよ。まるで暗黒舞踏のような踊りをする舞踊団。ほとんど前えい芸じゅつです。そう、それは、まさに悪魔の前えい芸じゅつなのでした。

すごい踊りに圧倒されて、ぼうっとしたまま、ロビーにでてきた深見はかせと助手の下村さん。「先生、不思議な舞踊ですね。あの跳躍力は、とても人間わざとは思えません」「下村くん。わしは今、あるひとつの想像をしたのだが、これは単に想像にすぎない。しかし、もしかしたら」「なんです。先生、仰ってください」「下村くん。例の奇病に倒れた患者のうち、もっとも重患と見られる人びとはみな、この劇場に来たあとで、病気に犯されている。もしかしたら、この舞踊団の人びとが怪星人ではないだろうか」。

「それはありうることです」。いずこからともなく、声がきこえてきました。キョロキョロする深見はかせと下村さん。アッ!!。なんと、天井にへばりついていたカピア人が次々と、深見かかせたちの目の前に飛びおりてきます。ガーーーッ。カピア人が口から吐いた怪光線で、二人は操られてしまうのです。

「深見博士、謎の失踪」、そんな新ぶん記事が都民を驚かせる一方で、政府は子どもたちの学童疎開をはじめました。まるで10数年前の悲劇がよみがえったかのようです。そんな学童で溢れかえっている駅のホーム。そこには、浅山はかせの二人の息子さんと、お父さまが失踪してしまった典子さんもいたのです。見送りのお姉さまが言います。「典子ちゃん、元気を出さなきゃダメ。おじ様の行方が分かったら、すぐ知らせてあげるわ。大丈夫。きっとおじ様、どこかへ元気でいらっしゃるわ」。と、そこにスーパージャイアンツのおにいさんがやってきましたよ。「そうです。典子ちゃんのお父さんは、きっと近いうちに帰ってきますよ」。「スーパージャイアンツのおじさん」と喜ぶ男の子たち。おじさんが深見はかせを探してあげるからね、というスーパージャイアンツのおにいさんに、典子ちゃんは涙目です。「きっと、きっとよ」「大丈夫。おじさんは必ず約束を守るよ。それから、この玉をあげるから、いつでも放さずに持ってらっしゃい」。そう言って、おにいさんが取り出したのは、キラキラ光る透明の玉。えーと、もしかして里見八犬伝?空にすかすと、「鋼鉄」とか文字が入ってますか。「その玉は、典子ちゃんのお父さんが見つかったとき、私が合図すると鳴るんだよ」。なあんだ、ケイタイの代わりですか。「それからおじさんに用事があったら、この玉を地面にでも、どこでも、ぶつけるといい。おじさんはすぐ飛んでいってあげるからね」。

話の流れが読めない男の子たちは大騒ぎ。疎開先についたら、すぐ玉をぶつけてみると言い出しましたよ。これには、さすがに温和なスーパージャイアンツのおにいさんも困ってしまいます。「いやあ、この玉は一回しか使えないんだ。だから、よほど急な用事のときしか、使っちゃならないんだ。それにおじさんは、典子ちゃんのお父さんを探す大切な仕事があって、とっても忙しいんだ。分かったね、キミたち」「はーい」。ふう、分かってくれたようです。

疎開先の田舎についた子どもたち。仲良しさんにん組は虫取りにでかけることにしました。森の奥へ奥へとすすみます。おや、霧が出てきました。その上、道を見失ってしまいましたよ。ドンドコ、ドンドコ。なんだか、太鼓のリズムが聞こえてきました。それに誘われるように、道なき道をすすむ仲良しさんにん組。どどーん。森の奥には、気持ちわるい顔の形をした城がそびえています。そしてたくさんのカピア人があらわれました。グルグル。グルグル。子どもたちをかこんで踊るカピア人たち。大勢のカピア人たちは、ググッと手を伸ばしてきて……。

スーパージャイアンツのおにいさんは山野ホールにやってきました。コツコツ、コツコツ。くつ音をひびかせながらホール正面の階段をのぼるおにいさん。支配人室にいったおにいさんは無表情に言います。「もう開演時間を過ぎています。始めてください」。謎の支配人もウツロな声で答えます。「ご覧にいれましょう。当舞踊団が今日はじめて発表する素晴らしい踊りを」。
なんだかシュルレアリスムなてん開です。客席にただ一人座っているスーパージャイアンツのおにいさんの前で踊り始める舞踊団。くるくる回転をするその顔が、人間からカピア人。そしてカピア人から人間にめまぐるしく変化し。ワッハッハ。変身したスーパージャイアンツのおにいさんも、席から席へとしゅん間移どう。実にふしぎな、そして実に幻想てきな戦いは、いつ果てるともなく続くのです。

その頃、謎の城では、つかまっている深見はかせたちが、カピア人におどされていました。カピア人1は言います。「さあ言え。キミたち科学者の研究している兵器の種類を」。カピア人2も言います。「キミたちが、どこかに秘密の兵器工場を作って、われわれに対抗する武器の研究をしていることは分かっているんだ」。ついでに、カピア人3(以下同文)「見ろ、あれを見ろ」。ああっ、なんてことでしょう。ブクブクと毒ガスをふきだす底なし沼のはるか上。眼もくらむようなところに、典子ちゃんが、一本の頼りないロープでぶら下げられているではありませんか。「典子っ、典子っ」「お父さま、助けてぇ」。「娘がかわいかったら言え」、ついでに、浅山はかせの息子たちも、誘拐してあるんだぞ。ほれ。「おじさまぁ」「おじさまぁ」。その時、おにいちゃんは思い出しました。そうだ、スーパージャイアンツのおじさんがくれた玉がある。えいやっ。玉をカピア人に投げつけるおにいちゃん。ピーピピピー。スーパージャイアンツのおにいさんは、頭のアンテナで、その電波を受信しました。山野ホールでの戦いを切り上げて、空にとびたつおにいさん。

「お父さまぁ」と泣き叫ぶ典子ちゃん。ひたひたと迫るカピア人。空をすごいイキオイでとぶスーパージャイアンツのお兄さん。果たして、典子ちゃんの運命は? 「完」


おどろおどろしさが増して、なんだか江戸川乱歩というヘンタイおじさんの小説みたいになってきました。おじさん的には、とってもオッケーです。こういう映画をみると、とてもワクワクドキドキしてきます。つづきが、とっても楽しみですね。







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【映画】続 鋼鉄の巨人 スーパージャイアンツ

2009-09-14 | 邦画 さ行
【「続 鋼鉄の巨人 スーパージャイアンツ」石井輝男 1957】をみたよ



おはなし
教会をおそってきたアトムAB団。たすけて、スーパージャイアンツのおじさん。

鋼鉄の巨人」の続へんです。一本分の映画を二回にわけてじょうえいするなんて、新東宝もしっかりしてますね。でも、おじさんも一本分の労力で、感想を二つ書いたことになるので、ちょっとうれしいです。

「新東宝」のテロップがでると、子供たちの声が聞こえます。
「弾丸よりも速く、鋼鉄よりも強く、ぼくらのスーパージャイアンツ!」。

まずは、前のおはなしのおさらいです。ここを読んでいるよい子のみなさんは、おじさんが書いた前のおはなしを読んでね。そして、教会でシスターたちが、わるいアトムAB団におどかされているシーンに。

「いいか、10数える間に返事しなければ、あの小鳥(ヤキトリ)のようにしてやる。ワン、ツー、スリー」。恐怖におののくシスター。「シックス、セブン、エイト、ナイン」。と、神父さまが「待て。待ってください。カバンは命令どおりにお渡しします」と言い出しました。かなしくなって、顔をおおって泣き出してしまうシスターに、神父さまはやさしく続けます。「人間の命はなにより尊いのです。スーパージャイアンツという方もきっと許してくださるじゃろう」。

しかし、なっとくいかないのが、子どもたち。うりゃあ。カバンをガメようとしていますよ。怒るわるものたち。あ、あぶない。身をていしてかばった神父さまは、頭をゴチンとなぐられて昏倒してしまうのです。

わるものたちは、意気ようようと、取り上げたカバンと、前のお話でつかまえた麗子さんを連れてどこかに行ってしまいました。こんな大事なときに、スーパージャイアンツのお兄さんはいったい、何をしているんでしょう。

はい、スーパージャイアンツのおにいさんは、汽車から救いだした弘くんをかかえて、空を飛行ちゅう。おや、頭のアンテナで何かをさっちしたようですよ。
「弘くん。カバンはアトムAB団に奪われたらしい。だが皆のことが心配だ。すこし速く飛ぶから怖がらないで我慢してくれたまえ」。あいかわらず丁寧なひとです。

氷まくらで、ウンウンうなっている神父さま。「私がカバンをお預けしたために、皆さんに迷惑をかけてしまいました」と謝るスーパージャイアンツのおにいさんに、シスターはかえって恐しゅくしてしまいます。「いいえ、私たち、たいせつなカバンを悪人たちに取られてしまって」。「カバンは必ず取り戻しますから心配しないでください。それより神父さまのことが……。朝まで私が看護いたしますから」とおにいさん。変身ヒーローが、まくら元で看病してくれるなんて、あまり聞きませんよ。もっとも、ちょう能力で、パパっと神父さまのケガを治してくれるほうが、ありがたいですけどね。

よく朝、メラポリア大使館からでてきた車のまえに、スーパージャイアンツのおにいさんが立ちはだかりました。おこってブーブーとクラクションをならす大使館のひと、というかアトムAB団のわるものは言います。「キミは正気か。聞こえないのか警笛が」。「たいへんよく聞こえます」「貴様は誰だ」「あなた方の敵。そして正義の味方スーパージャイアンツです」。ビックリしてアクセルをグィっと踏み込むわる者たち。しかし、鋼鉄よりもつよいスーパージャイアンツのお兄さんは、車をガシっとおさえてびくともしないのです。

降参したわる者たちの車にのりこむおにいさん。このまま本拠まで案内してもらおう。しかし、敵のうごきは、もっとすばやかったのです。バシュッ、バシュッ。わる者たちは、口ふうじのために、ころされてしまいました。

ここは死体ほかん所。スーパージャイアンツのおにいさん、岡本刑事をはじめとするけいさつのおじさんたち。そして、あやしい外人さんが、二つの死体をみています。外人さんは言います。
「ぜんぜん見たこともないヒトたちデス。その死骸の側にいた青年がナニを考えているか知りません。そのヒト、ぜんぜんデッタラメ。メラポリア大使館、たいへんメイワーク。メンドなこと、コレっきりにしてクダサーイ。いいですね。それでないと、日本の外務省にイイマス。抗議シマース」。

ということで、犯人あつかいをされてしまったスーパージャイアンツのおにいさん。岡本刑事だけは、スーパージャイアンツのおにいさんを信じているようですが、他の刑事さんたちは、おにいさんをキチガイか何かと思っているようです。ああだこうだで、なかなか結論がでない捜さ会ぎ。とうとう一番えらい刑事さんが、自分が取り調べをしようと言い出したのです。
「どちらにお住まいですか?」「……」「では国は?」。その質問に空を指さすおにいさん。「えっ!」「星です。エメラルド彗星」。「マジメに答えてください」とえらい刑事さんは、カンカンになって怒り出してしまいました。

ラジオで、メラポリア大使館員がころされたニュースをきいているシスターと子どもたち。「当局は現場付近でピストルを持っていたスーパージャイアンツと名乗る精神異常の青年を逮捕し、もっか取調べ中であります」。「ウソだい。ジャイアンツのおじさんが人殺しなんかするもんか」と憤激する弘くん。シスターをはじめ、みんなも、そうだそうだと怒っています。よーし、警察にいって、おにいさんの疑いを解いてこなくちゃ。しかし、シスターがでかけようとすると、そこにピストルをもったわる者が。

「ハッ」とおどろくシスター。「いいか、警察へ告げ口したりすれば、すぐ死刑だぞ」とわる者はシスターの腕をねじりあげました。「もうじきボース爆弾が完成する。日本はアトムAB団のものになるんだ。それまで秘密を守るために、今夜から俺がここに寝泊りする。誰が来ても、俺を牧師だということにしておくんだ。いいな」。えーと、ここはカトリックの教会なので、いるのは神父さまです。牧師さんがいるのはプロテスタントの教会ですよ。

ま、それはともかく、酒をあおってえらそうにしているわる者。と、神父さまの看病にいっていた正雄くんが、そーっと階段をおりてきましたよ。手にはおおきな燭台をもっています。高まるきんちょう。ここは名ばめんです。そーっ、ギシっ。階段がきしみます。あわてて、机をどたばたさせて正雄くんをカバーする子どもたち。正雄くんが、わる者の背後に近づきます。そうだ。物音をごまかすために、子どもたちは、大きな声で賛美歌を歌いはじめました。あと、少し。と、その瞬間、わる者はガラスに映った正雄くんの姿にきづいたのです。わーっ。ゴチンゴチンゴチン。重い鉄の燭台をわる者の頭にふりおろす正雄くん。もちろん、他の子どもたちもわる者にむしゃぶりつくのでした。わる者をしばりあげた子どもたち。あとは警察にこのことを知らせるだけです。みんなの代表で正雄くん、弘くん、そしてテツオくんが、急いで教会を飛び出していくのでした。

いっぽう、警察の牢やに入れられているスーパージャイアンツのおにいさん。「地球の人たちに私のことを知ってもらうには多くの時間がかかるんだ。こうしてる間にも、悪人たちの恐るべきボース爆弾の完成は進んでいるのだ。こうしてはいられない」。何ごとにも丁寧なおにいさんは、壁に「地球と星の世界の安全を守る重大な使命がある。そのため自由行動を取るものなり」と書置きを残し、鉄ごうしをグンニャリまげて、牢やから脱出するのです。バヒューン。

教会をとびだした3人の勇かんな子どもたちは、向こうから歩いてくる岡本刑事を見つけました。「あ、おじちゃんだ」「おじちゃーん」。走りよった子どもたちは、次々にうったえます。「悪漢が来て、俺たちが捕まえたんだよ」「よし、行こう」。

教会についた岡本刑事と子どもたち。しかし、わる者の動きは、一歩はやかったようです。教会の外には見はりが立ち、中にもたくさんいるふん囲気。警察てちょうに走り書きをして、「正雄くん、交番へこの手紙を届けてくれたまえ」と頼んだ岡本刑事は、ひとり残って様子をかん察します。おっと、バレちゃいました。バーン、バーン。撃ちあいです。あっ、やられたー。腕を撃たれてしまった岡本刑事に、わる者たちは、勝ちほこったように言うのです。
「お前が岡本刑事だな」「妹の命を助けたければ、すぐ手を引け」「我われは秘密を守るためなら、どんなことでもする。いいか、ヘタなマネをすると妹は死刑だぞ」。

ブロロー。車で去っていくわる者たち。岡本刑事を殺さないなんて、いがいと良いひとたちなのかも。しかし、岡本刑事に車の外交官ナンバーをバッチリ見られてるんですけど。もちろん、岡本刑事は、車が去ると、すぐ連らくをして、「外544」の車を非常警戒してもらうのでした。

ピューン。海のうえを飛んでいるスーパージャイアンツのおにいさん。小島が見えてきました。「アヤシイ。この島には何かひみつがある。地球計が私に、そのことを知らせているのだ」。そのまま、科学者にばけて、アトムAB団のひみつ基地にせん入するおにいさんです。

そのころ、メラポリア大使館ではせい大なパーティの真っさい中です。日本政府のえらい人たちも招待され、その中には警視総監のおじさんも入ってます。しかし、警視総監のおじさんは、岡本刑事のほうこくをうけて、ひそかに警官隊を大使館の周辺にきんきゅう配備していたのです。さあ、どうなるんでしょう。

スーパージャイアンツのおにいさんは、ひみつ基地の心ぞう部。ボース爆弾をつくっている実けん室に紛れ込みました。ヒョイ。何食わぬ顔で、X14ウラニウムを取り上げるおにいさん。科学者たちはビックリして言います。「冗談はよせ。団長に知れたらタイヘンなことになるぞ。今夜11時の完成が遅れたらお前は死刑確実だ。早く出せ。早く出せというのが分からんのか。貴様だれだ。M何番だ。番号を言え」。「M0番だ」と言いつつ、もっさりと戦うおにいさん。まるでジャアイントロボのような動きです。駆けつけた警び兵が機かん銃を乱射してきました。ズガガガガガ。しかし撃たれたおにいさんは、ニッコリと天使のようなほほ笑みを浮かべると、スーパージャイアンツに変身です。えーと変身しても、動きはもっさりのままですね。

3人の勇かんな子どもたちは、メラポリア大使館にしのびこみました。しかし、警備に見つかってしまいましたよ。口々にアトムAB団の悪だくみを叫ぶ子どもたちを、「お待ちください」と警視総監さんがかばってくれました。でも、このままじゃ。と、そこにタキシードをばっちりキメたおにいさんが現れましたよ。「あ、スーパージャイアンツのおじさんだ」とよろこぶ子どもたち。「みなさん、この少年の言葉には、ひとつの誤りもありません。平和な日本に原水爆製造の秘密基地を作り、世界を征服しようと企てているアトムAB団の団長は」と言って、大使をピッと指さすおにいさん。「お前だっ!」。

見れば時間は10時59分。安心したわる者の団長は、あと1分でボース爆弾が完せいすることや、その爆弾がアメリカの水爆の50倍の威力があるんだぞ、と自慢をはじめました。しかし、おにいさんは高笑いです。「みなさん、ボース爆弾の完成は幸いにも、そしてアトムAB団にとっては不幸にも阻止されました」。「ウソいうな、貴様キヤスーメ言ってもダメ」「気休めではない。これがなければボース爆弾の完成はできまい」。懐からX14ウラニウムを取り出したおにいさん。いや、周りの人が被曝するから、軽々しくださないほうが。

悔しそうな団長ですが、しかし、まだ切り札があるのです。ピッとスイッチを押すと、さっきまでスーパージャイアンツのおにいさんがいたひみつ基地が映りました。そして、そこに囚われている麗子お姉さんの姿が。「ムスメ助けたければ、今から1時間あとに、X14ウラニウムもって、一人でキナサーイ。待ってマース」。ゾロゾロと一列になって、暖炉の隠し通路からにげていくアトムAB団の幹部のみなさんです。

はい、ここはひみつ基地。そろそろ1時間がたちます。「うーん、アト1分。ジャイアンツこなけれバ。すぐ日本基地爆破、ヒマラヤ第2基地イク」とイライラしている団長。あわれ麗子さんは、電動ギロチン台にしばられて、失神寸前です。と、そこにスーパージャイアンツのおにいさんが現れましたよ。「お約束どおりやってきました」。こんなときにも丁寧なおにいさんは、懐からX14ウラニウムを出して、団長にわたします。確かに間違いない。じゃあ、ということで電動ギロチンのスイッチをきるわる者。しかし、その瞬間に壁がガラガラぐわっしゃーんと落ちてきて、スーパージャイアンツのおにいさんと麗子さんは、小部屋に閉じ込められてしまったのでした。

「ハッハッハ。われわれは日本のカイジョク警察で追いつけない、かいそーく潜水艇で日本サルー」とよく分からないことをいいつつ、小窓からバクダンをポイっと、小部屋に投げ入れる団長。タイヘンです、あと1分で爆発するみたいです。うーん、うーーん、なんてことでしょう。力持ちなスーパージャイアンツのおにいさんがいくら押しても、カベはびくともしませんよ。コチコチ、コチコチ。そうしている間にも、どんどん時間はすぎていきます。
「麗子さん。まだ私の体も爆弾に耐えられるかどうか試したことがありません。しかしもう、時間がないのです」、ガバッ。麗子さんに覆いかぶさるおにいさん。ドカーン。爆発とともに、もうもうたる煙が立ち込めます。どうでしょう、スーパージャイアンツのおにいさんは、そして麗子さんは無事でしょうか。

煙が晴れると麗子さんを抱っこしているスーパージャイアンツのおにいさんが映りました。「麗子さん、しっかりつかまっていてください」。爆発でこわれた屋根から外に飛んでいくおにいさん。麗子さんを安全なところに置いたおにいさんは、再びひみつ基地内部にもどります。「あ、ジャイアンツだ」とビックリするわる者たち。おにいさんは、もっさりもっさりと敵にパンチを繰り出すのです。

そのころ、警察の手配した船もひみつ基地にせっきん中です。「総監、あの島です」と言う岡本刑事に、「ウム」とうなづく警視総監さん。いよいよ大づめですね。

団長をおいつめたおにいさんは、団長のおなかに連ぞくパンチ。むぎゅー。気絶した団長をしばりあげ、カバンを取り返したおにいさんは、麗子さんに言います。「アトム団の始末は警察の方々にまかせましょう。神父さんや、子供たちが待っています。さあ、いきましょう」、ピューン。

はい、教会です。「ジャイアンツのおじさん、また来てねえ」と寂しそうな子どもたち。「約束するよ。世界の平和のため、原水爆を持っている国に話し合いに行く役目が済んだら、また来るからね」。おにいさんは岡本刑事にカバンをわたします。「そのカバンの中にX14ウラニウムが入っています。平和のために使ってください」。ガッシリと握手をする二人。シスターが言い出します。「じゃあ、みんなジャイアンツのおじさんのために、お別れの歌、うたいましょうね」。「はーい」と返事をして、賛美歌を歌う子どもたち。それをニコニコと聞いていたスーパージャイアンツのおにいさんは、ゆるゆると昇天していくのでした。宇ちゅう空間をマントをなびかせ、どこまでも飛んでいくスーパージャイアンツのおにいさんです。


おじさんはすっかり心が汚れちまったので、いろいろツッコミを入れたいところなんですが、今日はやめておくことにしましょう。宇津井健おにいさんの、ぜん良な笑がお。ドキドキするおはなし。そして、なにより子どもたちのガンバリがあれば、あとは何もいらないですもんね。







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【映画】スーパージャイアンツ 鋼鉄の巨人

2009-09-11 | 邦画 さ行
【「スーパージャイアンツ 鋼鉄の巨人」石井輝男 1957】をみたよ




おはなし
エメラルドすいせいのスーパージャイアンツは、地球で大かつやく

へんな映画をいっぱいとった石井かんとくのさくひんです。スーパージャイアンツをやった宇津井健おにいさんは、とてもカッコイイよ。

どっかぁーん。水ばくがばく発しています。ナレーターのおじさんの声がきこえますよ。
「みなさん。原水爆実験による被害は今や、地球全土に広がって、世界の人たちを恐怖のどん底に陥れておりますが、その被害は地球上だけにとどまらなかったのです」。

エメラルドすいせいが映りました。
「そして、この実験が行われるたびに、星の世界は、その放射能のために、たくさんの病人が出たりして、たいへんな迷惑です。それで、星世界ではエメラルド彗星に代表を集めて、宇宙人会議を開きました」。

ロボットみたいなうちゅう人やら、「宇宙人東京に現わる」にでていたパイラ人そっくり(パクリといいます)のうちゅう人たちが、一生けん命に会ぎをしています。おや、話し合いがおわったようです。
「そして、長い会議が続きました。その結果、エメラルド彗星から一人の代表が地球へ原水爆実験をすぐやめるよう、話し合いに行くことになりました。その使いに立つものには、宇宙人の素晴らしい発明品である地球計という機械が与えられました」。

地球の地図が文字ばんにえがかれた腕時計が映ります。
「右横についているボタンを押すと自由に空を飛ぶことができます。左横のボタンはガイガー計数機のような役目を果たすのです。この素晴らしい機械を腕にはめて、地球へ大事な使いに立つひとは誰でしょう。その人こそ、エメラルド彗星でも一番の優れた人です。その人の名をスーパージャイアンツといいます」。

じゃじゃーん。スーパージャイアンツ(宇津井健おにいさん)が映りました。
「彼は弾丸をはじいてしまう鋼鉄の体の持ち主です」。ちょっと恥ずかしそうに眼を伏せたスーパージャイアンツは、時計のボタンをおして、バビューンと飛んでいくのです。

地球にやってきたスーパージャイアンツが、ぼう風雨の中を飛んでいると、地球計がはんのうしましたよ。見ると、方向だのこわれた旅客機がひょろひょろと飛んでいます。しゅたっ。つばさの上に降り立つおにいさん。うんとこどっこいしょ。風にあおられながら、おにいさんは方向だの修理をするのです。それにしてもヒドイ雨です。ずぶぬれになったおにいさんは、パンツのらいんはもちろん、乳首までまる見えになっちゃいました。でも、これでハッキリしたことがひとつ。オッパイがあるいじょう、エメラルドすいせい人は哺乳類だということです。あと、パンツの前が、みょうにモッコリしているので、スーパージャイアンツはオスですね、まちがいなく。

それにしても、この地球計の反のうは、いったい。黒い背広に、黒い帽子のダンディな紳士に変身したスーパージャイアンツのおにいさんは、機内にのりこみました。あ、あれにちがいない。飛行きにのっていたメラポリアの使節団があやしさプンプンです。

羽田ひこう場から、黒塗りのくるまに乗り込んだ、インチキくさい外人さん。スーパージャイアンツのおにいさんも、ちゃっかり乗り込みましたよ。「Get Out! ケイカンヨブ」と怒る外人さんですが、おにいさんは平気。「どうぞ、どうぞお呼びください。あなたさえ、ご都合が悪くなければ」。グヌヌ。ピストルをつきつける外人さん。しかしおにいさんは冷静です。「それは消音ピストルではないから、大きな音がするでしょう。警官たちが驚くでしょうね」。
えーと、おにいさんの勝ちです。「私が欲しいのは、そのカバンです。そのカバンの中に入っているものが、あなたの仲間に渡ったとき。恐ろしいことです。それは地球上の不幸だけではなく私たちの世界にも大きな影響を及ぼすのです」「オオゲサな言い方をするオットコねえ。ちょうどアナタ、チキュウの人ではないようなコト、言いますねえ」「そうです、私は星の世界の者です」。

車はひとけの無い原っぱにやってきました。なぐりかかる悪者たちを、もっさりと投げ飛ばすおにいさん。そんな様子を、もの陰から子供たちが見ています。あっタイヘンです。悪者がピストルを出しましたよ。でも、おにいさんは平気です。「あなたたちには、私を倒すことはできません。無駄なことはお止めなさい」。バーンバーン。嗚呼、おにいさんが撃たれた……と、思ったらおにいさんはピンピンしています。さすが、鋼鉄の巨人。悪者からヒョイとピストルを取り上げたおにいさんは、それをポイと投げ捨てました。

「あっ、取ってこようか」とピストルを拾う子供たち。ついでに、大事なカバンも拾って(ガメるとも言う)、一目散ににげだすのです。よい子のみんなは、こんなことしちゃダメだからね。悪者たちをボコボコにしたおにいさんは、その後を追います。でも、おにいさんは知らなかったのです。悪者たちが、まだ元気だったことを。そして、子供たちのひとり弘くんが、けつまずいて逃げ遅れていたことを。

悪者は弘くんをつかまえました。「アナタ、悪イ子供ねえ。なぜカバントリマシタ。ボーヤ、オトーサンダレ。言イナサーイ」「お父さん、いないよ」「オカーサン名前言イナサーイ」「お母さんもいないよ」「Oh! ボーヤ、浮浪児ねえ」「違うよ。浮浪児じゃないよ。神父さまや敏子姉ちゃんがいるんだから」。ニヤリと笑う悪者。「教エナサーイ」「蒲田のイマヌエル教会」。

はい、そのイマヌエル教会に逃げ帰ってきた子供たち。「でも悪漢なんてまぬけだねえ。友達どうしでケンカしてる間に、オレたちにやられちゃったんだもんね」。と、そこにピョーンとスーパージャイアンツのおにいさんが降りてきましたよ。「おじさんは、ギャングじゃない。キミたちの拾ったカバンをもらいにきたんだよ」「なぁんだ。そうだったのかあ」。あ、あと「ピストルはキミたちが持っていてはいけないから、おじさんが預かっておこう」。そこにシスターの敏子(池内淳子)がやってきました。おにいさんの持っているピストルをみて、ドン引きしています。「あ、今子供たちに手品を見せるところです」とおにいさんは、ピストルをグンニャリ。「おもちゃでしたの」とシスターはひと安心するのです。ばひゅーん。消えるおにいさん。子供たちはびっくりです。

そこに「みんな、なにしてんのぉ」と声がかかりました。「あ、岡本刑事のオジチャンとお姉ちゃんだ」と子供たちは大よろこびです。みんなは口々に今あったふしぎなことをおはなしします。「ホントだよ、うそつかないよ。ホラ」。グンニャリ曲がったピストルを見て、岡本刑事は叫びます。「あ、これはホンモノだ」。ま、それはそれとして、お昼ご飯ができたから教会にかえりましょ。あれ、あれれ。シスターは言います。「あら、弘ちゃんは」。えーと、弘ちゃんは、ひごろ影がうすいんですかね。

原っぱでカバンをあけて、金ぞくのかたまりを地球計にあてているスーパージャイアンツのおにいさん。「やはりX14ウラニウムだ」。そこにシスターと子供たちがはしってきました。「弘ちゃんがいないんです」「弘くんは私が探してまいります。彼らはこのカバンを取り戻すために弘くんを人質にしたに違いありません」。それまで、このカバンを預かっておいてください、とおにいさんは言います。でもね、そんなカバンを預かっていたら、みんな被曝しちゃいませんかね。もう、手遅れかもしれませんけど。

「おじちゃん、ひとりで大丈夫」「ハハハ。大丈夫だとも。おじちゃんはねスーパージャイアンツだ」。空を飛んでいくおにいさん。「うわーっ飛んだ、飛んだ。スーパージャイアンツだ」「スゴイなあ」。

ここはメラポリア絶海の孤島。アトムAB団のひみつ基地です。団長がえんぜつをしています。ちょっと聞いてみましょう。「ショクン、ワレワレの仕事もM5番、M6、二人持ってくるX14ウラニウムくればオワリ。えー、このつよいバクダンがデキレバ、世界のどの国もワレワレに向うことデキナーイ。ワレワレ、このつよいバクダン持って、最初のプランどおり、まずニホン攻める。ニホン、アジアでも一番の工業国、ワレワレ、ニホン攻め、オールアジア、ヨーロップ、ソビエト、ァメリカ、ゼーンブ征服する」。そこに、メラポリア大使館にいる部下から無電が入りましたよ。なんと、謎の男にX14ウラニウムが奪われたというじゃありませんか。団長はひとこと、「M5死刑」。

「まだ帰らぬ弘ちゃんが、どうぞ無事でありますように」「アーメン」、お祈りをしているシスター、子供たち、そして岡本刑事の妹な「お姉ちゃん」。しかし、悪者の行動は、予想の斜め上をいっていました。教会をでたお姉ちゃんは、悪者にさらわれてしまったのです。大丈夫でしょうか。

さて、メラポリア大使館の地下牢に捕まっているM5番。そこにぼくらのスーパージャイアンツがやってきました。「子供はどこに隠してあるのです。教えてください」と、M5番の頭をやさしく撫でるおにいさん。「さあ、教えてください」。おにいさんの平和な優しい顔をみていたM5番は反省してしまいました。「オレはだまされていたんだ。あんな冷酷なやつらの手先に使われて。少しでも失策があれば虫けらのように殺されてしまう。オレはキミになら何でも話す。子供は汽車で連れて行かれたんだ」「汽車で、どこへ」「本拠だ」。と、いきなりリーンリーンとひじょうベルが鳴りだしました。「おい、こっちだ、こっちだ」。ワラワラとやってくる悪者たち。ズダダーン。鋼鉄の体をもつおにいさんは無事ですが、あわれ、M5番は死んでしまったのです。おにいさんは、悪者とたたかいます。でも、おにいさんは良いひとなので、きほん的に殺したりはしないのです。おすもうみたいに、張り手やつきとばしで悪者をやっつけるのです。あ、あとニコニコしながらフェンシングで戦ったりもしてますよ。スゴイや、おにいさん。

走る汽車にのりうつったおにいさんは、M6番に捕まっている弘くんを発見しました。あわててピストルをかまえるM6番のおなかにパンチをするおにいさん。安心した弘くんは、とってもワザとらしく泣きはじめましたよ。「おじさん、ボク、ピストルで脅かされて、教会のことや神父さまのこと教えちゃったよ」。思わずハッとするおにいさん。しまったカバンを預けてある。

はい、そのころ教会は悪者におそわれていました。「カバン、ドコ隠シマシタ。出シナサーイ」。悪者たちは、謎のこうせん銃で、トリカゴの小鳥をヤキトリに変えたりしています。

弘くんを抱えて、フルスピードで飛んでいるお兄さん。

「さ、早くカバンを出せ」。シスターにこうせん銃をつきつける悪者。ジリジリ、シスターは何気なく神父さまの後ろに隠れようとします。高まるきんちょう。シスターの恐怖にゆがんだ顔がアップになって……

「第一部 完」


とくさつは、けっこうカッコイイですよ。スーパージャイアンツが飛ぶシーンとかも、スピードかんがあって、いいと思います。もちろん、ぎじゅつ的には東宝(円谷プロ)にまけているかもしれませんが、そこは工夫でのりきっているかんじです。おじさんは、このとくさつ、好きです。


(ほら、パイラ人ににてるでしょ)


(おにいさん、腰がひけてるよ)


(雨で眼があけられないよ)

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【映画】新鞍馬天狗 五條坂の決闘

2009-09-07 | 邦画 さ行
【「新・鞍馬天狗 五條坂の決闘」黒田義之 1965】を観ました



おはなし
鞍馬天狗は山嶽党相手に大暴れ。

前作は桂小五郎が出てきたり、相手が新撰組だったりしたので、比較的に地味かつマッタリとお話が進みましたが、今回の敵は、謎の組織「山嶽党」。そのため、気持ちハデ目になっていい感じです。


朝もやに煙る、どこかの寺の門前。新撰組のみなさんが大勢、早朝出勤です。「土方さん、本当に鞍馬天狗は現れますか」と平隊士に聞かれた土方歳三(伊達三郎)は、自信満々に答えました。「来る。必ず現れる。これまでにも、こいつの情報に一度も狂いはないのだ」。「見たまえ、これを」と言いつつ、謎の怪文書を差し出す土方。そこには、鞍馬天狗がやってくることが書いてあり、文の末尾には真っ赤な字で「山」と入っています。「山という字は?」「山嶽党だよ」。おっと、鞍馬天狗がやってきたようですよ。それっ。襲い掛かる新撰組のみなさん。しかし、捕まえてみれば、全くの別人。そして、はるか向こうを、謡曲を謡いながらホンモノの鞍馬天狗(市川雷蔵)が悠々と歩き去っていくのです。ああ、やっぱり。「情報に一度も狂いはない」というのは、つまり毎度まいど逃げられてるってことですもんね。

「何っ、また逃がした」と血圧が上がっちゃいそうなのは、京都所司代の駒木根監物(須賀不二男)。「はっ、さすがの新撰組も鞍馬天狗は手に余るようでございますな」と、お付の志賀(山本学)がワレカンセズな態度なのに、余計に腹が立ちます。さらに、志賀が言うのには、将軍上洛に際し、鞍馬天狗が大政奉還を迫る計画があるとかないとか。「何っ。それほどの一大事を、なぜもっと早く申さん。このバカモノめが」。まったく、昼行灯な部下を持つと、本当にタイヘンですね。と、侍女の小雪(万里昌代)が謎の書状を持ってきましたよ。えーと、どれどれ。「新撰組、頼むに足らず。我が山嶽党にて鞍馬天狗暗殺の役目、お引き受けすべし。ただし、金三千両にて 山」。ふん、新撰組にもできないのに、なんだよ山嶽党って、と鼻で笑う所司代。そこに、いきなり矢文が撃ち込まれてきました。お疑いなら裏の小屋を吹き飛ばしてご覧にいれようと書いてあります。ドッカーン。いきなり小屋が大爆発。
「山嶽党。恐ろしい奴だ」とつぶやく所司代。やっぱり頼もうかなあ。ヨロヨロと所司代が隣室に行くと、そこには墨痕鮮やかに「山嶽党は暴力の徒。断じて許すべからず 鞍馬天狗」と書いてあるじゃありませんか。うわーん。まずは、屋敷の警備を一から見直したほうが良さそうです。

いきなりのにわか雨。ある者は道を急ぎ、ある者は雨宿り。って、前作とまったく同じシチュエーションなんですけど。ともあれ、雨宿りに入った所司代のお付き・志賀は、まったり飲んでいる倉田典膳こと鞍馬天狗から声をかけられたのです。「まあ、おひとつ」。勧められるままに、杯を重ねる二人。うーん、前と一緒だ。

さて、アジトである吉兵衛の傘屋に帰る鞍馬天狗。「あ、おじちゃん。お帰んなさい」と杉作(二宮秀樹)が言えば、吉兵衛(清村耕次)も「今、お茶淹れますから」とイソイソ。どうやら二人とも元気なようでなによりです。と、そこに紫の御高祖頭巾という定番ファッションの謎の女が傘を買いに来ましたよ。まあ、声からして所司代の侍女、小雪なのはバレバレですが。「吉兵衛、今の女を尾けてくれ」と鞍馬天狗は命令し、自身は薩摩屋敷に急ぐのです。いったい、小雪にはどんな秘密があるのでしょう。

小雪を尾けた吉兵衛は謎の廃屋へ。しかし、そこで小雪の姿は消えてしまいました。「女狐め、どこ消えやがった。化け物屋敷じゃねえか。気味が悪いうちだぜ」。そう、鞍馬天狗の子分にして、元盗賊の吉兵衛ですら怖気を感じる、嫌な雰囲気が廃屋には漂っているようです。

一方の鞍馬天狗は薩摩屋敷に。目当ては、薩摩屋敷に保管されている膨大な書類の山です。せっせと調べ物をする鞍馬天狗。「これだっ!」。それは文久三年のこと。幕府がフランスから買い入れた火薬や兵器が、幕府の軍艦から強奪されるという事件があったそうです。先日の所司代屋敷での大爆発は、その時に盗んだ火薬を使ったにちがいない。つまり、山嶽党はまだまだ大量の武器弾薬を所持しているということでしょう。うーむ、これは由々しい一大事です。もし、この武器弾薬を使って、桂、西郷といった面々が襲われたら、維新が遅れるどころか、頓挫しかねません。とりあえず目的を達して、鞍馬天狗は夜道を急ぎます。しかし、道端に謎の白髪老人が座っていますよ。こんな夜中に何をしているのでしょう。それに、何か不穏な雰囲気が漂っています。ニヤリと笑って闇の中に歩き去っていく白髪老人。分かりました。こいつがラスボスに決まってます。

鞍馬天狗が家に帰ると、なんと吉兵衛が縛りあげられています。あわてて猿轡を外してやると、吉兵衛は「か、火薬」とワナワナしてるじゃありませんか。確かにアヤシイ樽からシューシューと煙が出ています。とりゃー。樽を外に投げる鞍馬天狗。どっかーん。間一髪、間に合ったようです。もっとも、家はムチャクチャになってしまいましたが。と、そこにバシュンと矢文が。「今夜、亥の刻、糺の森に来い杉作を受け取りに来い 山」。ぐぬぬ、山嶽党は杉作をさらったようです。

「おい来たぞ」「よし」。糺の森で待ち構えていた忍者装束の男たちに緊張が走ります。確かにイカ頭な人がやってきましたよ。ガガーン。ずだだーん。人影はバッタリと倒れました。「やった」「天狗はしとめたぞー」。と、思ったら鞍馬天狗は木の上にいて、そこからピストルを乱射です。うわ、うわ、うわわーっ。倒れた人影に声をかける鞍馬天狗。「吉兵衛、大丈夫か」「いや、体は大丈夫ですが、肝を潰しました」。っていうか、ひどいな鞍馬天狗。仮に胴回りに鉄板でも入れていたとしても、顔に弾が当たったらどうするんですか。そもそも吉兵衛に働かせて、自分はお気楽三昧だし。ヒモより性質が悪いような気がしますよ。ま、それはともあれ、刀で次々と忍者軍団を斬り殺し、白髪老人と対峙する鞍馬天狗。ひゅんひゅん。白髪老人は鎖鎌を回しています。ばひゅん。分銅が鞍馬天狗の刀に巻きつきました。あやうし、鞍馬天狗。と、思ったらサクっと白髪老人に斬りかかっていますけど。「うわあ。退け、退け」。あれれ、みんな逃げていきました。

「杉作っ」「おじちゃんっ。うわーん」。良かった、杉作は無事のようです。その上、隙を見て、謎の地図まで拾っていたようです。しっかりした子供ですね。「うーん、何か、山の見取り図のようだな」「おじさん、役に立つでしょうか」「ああ、立つとも」。おじさんの役に立てることが、何よりの喜びな杉作は狂喜乱舞。「ホントっ。うれしいな。ばんざーい」と走り出しましたよ。危ない、危ない。まだ山嶽党がそこらにいるかもしれないのに。ずががーん。ぎゃーっ。ほら、撃たれた。

イキナリ現れた謎の浪人(五味龍太郎)と協力して、残っていた敵を蹴散らす鞍馬天狗。さらに、その浪人が近所の医者を紹介してくれたので、あわてて杉作を運び込みます。すぎさく、傷は浅いぞ。がんばれー。イカ頭のままで、お医者さんに頭を下げる鞍馬天狗。「お願いします。この子は親の無い子で、私はわが子のように思っています。私でできることなら、何でも言ってください」。

さて、謎の浪人は京都所司代と面会をしています。「何、鞍馬天狗の行方を知っておると」「はっ。知っているのは、おそらく私だけでありましょう」。鞍馬天狗は、絶対に杉作のお見舞いに顔を出すはず。ついては、今なら300両で天狗の居場所を教えるキャンペーン実施中です。よし、買った。

雲助たち(芦屋雁之助、芦屋小雁)に小金を渡して、病院を見晴らせている謎の浪人。しかし、頼んだ相手が悪かったんでしょうか、それとも渡した金が少なすぎでしょうか。もう、飲み屋で自分たちのやっていることを喋る、喋る。やくざに変装した鞍馬天狗が横で聞いているとも気づかず、喋りまくってます。ほら、名前が大前田ってこともバレちゃったし。鞍馬天狗が酒代を奢って、「その侍に会わしてくれよ」と言うと、何の疑問もなく、案内してくれちゃいましたよ。

「大前田さん、あんたは武士として恥ずかしくないか。三百両で私を売ろうとした。浅ましい男だ」「なんとでも言え。俺は金のためなら、なんでもやる」。二人は屋根を上で斬り合いです。チャキン、シュバッ。押されぎみの大前田。しかし、幸いなことに新撰組がワラワラと駆けつけてきましたよ。「今夜のところは、預けておくぞ」と屋根をピョンピョン跳んで去っていく鞍馬天狗。ふぅ、助かった。

とはいえ、鞍馬天狗に名前も顔を覚えられちゃったし、このままじゃヤバイ。ということで、大前田は新撰組に保護を求めてみましたが、あっさり門前払い。どうするんだよオレ。そこに、謎の白髪な易者が声をかけてきました。「あんたには死相が現れておりますぞ」。えーと、そうなんだよ。どうすればいいでござりますか。「山嶽党に入りなさい」。ははあ、そうですか。

怪我の癒えた杉作が家に帰ってきました。よかったなあ。大喜びの吉兵衛。「お前、おなか空いてるんだろ」とご飯作りを開始です。と、そこに御高祖頭巾の女、再び。ガクガクブルブル。怯える杉作ですが、吉兵衛はご飯作りに夢中ですし、おじさんはいません。「おじさんの役に立つかもしれない。おいら、逃げてはいけないんだ」と、一人で尾行を始めちゃいました。やめといたほうがいいのに。小雪に導かれるように、廃屋に向う杉作。「おいら、臆病もんじゃないぞ」。いや、臆病でもいいから、逃げとけって。吉兵衛の時と、同じように小雪の姿は消え、杉作は廃屋に一人です。おや、地下から灯りが漏れていますよ。なんだろう。そーっと覗く杉作。そこには、世にも恐ろしい光景が広がっていたのです。

大勢のドクロたちが取り囲む中に、大前田がひとり立っています。どうやら、これは山嶽党の入党の儀式なもよう。艱難辛苦に耐える試験と称して、ロープに吊りさげらる大前田。ギリギリ、巨大な歯車が回り、そしてクローズアップなドクロの顔が回り始め、ぐるぐる、ぐるぐる……。杉作は、あまりの恐怖に、気を失ってしまいました。

目が覚めると、杉作は縛られて駕籠の中。どうやら、山嶽党の山のアジトに運ばれてきたようです。「確かにこの子です。天狗がわが子のようにかわいがっている杉作に相違ありません」と言う大前田に、白髪老人は深くうなづきます。「わしもこの小僧なら覚えている。こいつを囮に呼び出しをかければ、鞍馬天狗は必ず来るだろう」。ギロリと杉作を睨む白髪老人。「小僧、殺しはせん。だが逃げると殺すぞ」。うえーん、結局、どっちなんですか。

洞窟に放り込まれる杉作。しかし、基本的に利発な子ですから、油皿の火を使ってロープを焼ききり、脱出に成功です。目もくらむような断崖絶壁を恐る恐る歩いていく杉作。「小僧が逃げたぞー」。たいへん、バレちゃいました。と、目の前にロープがスルスルと下りてきましたよ。「あっ、おじちゃん」。そう、鞍馬天狗が助けに来てくれました。「おじちゃん。どうして、ここが分かったんですか」「いつかお前が持ってきた絵図面があっただろ。あれがここだったんだ」。いや、ノンキに話している場合じゃないです。下からも上からも銃弾が飛んできているんですから。足裏の幅しかないような絶壁をカニ歩きする二人。「杉作、大丈夫か」「はい大丈夫です。角兵衛獅子です。こんなとこくらいヘイチャラです」、ズルッ。言ってるソバから足を踏み外す杉作。ガシッ。鞍馬天狗の手が、杉作の手を握ります。ぐぬぬ、ズルッ。あれー。ガシッ。杉作は鞍馬天狗の足に、かろうじてぶら下がっていますよ。「杉作、手を放すんじゃないぞ」と鞍馬天狗は言っていますが、内心はどうなんだか。ともあれ、二人はどうにか脱出できたようで、良かった、良かった。

「申し上げます。上様には、上洛のため、江戸表をお発ちにございます」。使者の報告を聞いて愕然とする京都所司代。このままでは、鞍馬天狗が上様に大政奉還を強訴しかねない。というか、そんなことになったら、自分の立場はどーなるの。早速、侍女の小雪に、山嶽党に行き鞍馬天狗を殺すように命じます。さらに、念のため、お付の志賀は、新撰組に派遣することに。どちらか一方でも鞍馬天狗の暗殺に成功してくれれば。

なぜか、志賀に尾行されつつ、御高祖頭巾を被った小雪は、一路、山嶽党に。と思いきや鞍馬天狗のアジトに現れましたよ。ギクッとする杉作をよそに、「倉田様」と声をかける小雪。「事は急となりました。将軍家茂は江戸を出発いたしました」。そう、実は小雪は薩摩方のスパイだったのです。

その足で、何食わぬ顔をして山嶽党の廃屋アジトに向う小雪。しかし、敵ボスの白髪老人には、鞍馬天狗のアジトに寄ったことがバレていました。もしかして、志賀がチクったのでしょうか。よーし、裏切り者は裁判じゃ。でも、ちょっと待っててね。イソイソとドクロの服に着替える山嶽党のみなさん。はい、準備OK。次々と小雪の罪を糾弾するドクロたち。「よって極刑を要求します」と言われ、白髪老人ドクロは重々しく答えます。「よし。極刑じゃ。女としていちばん恥ずかしい思いをさせるんだ。裸にして残酷な殺し方をしてやれ」。いや、絶対に趣味が入ってるよな。キレイな万里昌代をひん剥いてみたいだけじゃないでしょうか。

「兄上、ご覧ください。小雪は立派に死んでみせます。兄上、そして倉田様、どうか、この私をご覧ください」と、目をつぶる小雪。しかし、その時、ドクロの一人が立ち上がってピストルをズガーンと撃ち出したのです。「乱心者」と怒鳴る白髪老人に、ドクロは言い返します。「乱心者とは、お前たちのことだ」。「ハッ、貴様は」。ドクロマスクを取ると、そこには宗十郎頭巾が。ああ、鞍馬天狗じゃありませんか。いつものようにピンと張ったイカ頭っぷり。きっと、形状記憶合金が内蔵されているに違いありません。カットが変わった瞬間にドクロスーツも脱ぎ捨てた鞍馬天狗はバッサバッサと敵を斬り斃します。ドサクサ紛れに大前田も斬られたもよう。しかし、白髪老人は余裕の高笑いを響かせながら言うのです。「鞍馬天狗、お前の負けだ。今頃はお前の大事な杉作や吉兵衛も火薬小屋で、木っ端微塵に吹っ飛んでいるところだ。フハハハハ」。じゃ、そういうことで。あっという間に逃げ去る白髪老人。さあ、タイヘンなことになってきましたよ。

「倉田様、どうしましょう」と心配そうな小雪に鞍馬天狗は言います。「あきらめるのはまだ早い。私はともかく杉作と吉兵衛を助けに。あんたは、薩摩屋敷に逃げてくれ」。パカラパカラ。馬を飛ばす鞍馬天狗。えーと、か弱い小雪は、ここから自力で脱出しろってことですね。

捕まった杉作と吉兵衛は火薬小屋に放置されています。シューシューと導火線が燃えていたりして、かなりピンチな雰囲気。そこに、多数の追っ手を斬り伏せて鞍馬天狗が飛び込んできましたよ。さあ、逃げるんだ。しかし、小屋の外には白髪老人を初めとする山嶽党のエリートメンバーが勢ぞろい。

ジリジリ、ジリジリ。白髪老人との間合いを計る鞍馬天狗。瞬間、白髪老人の必殺の漸撃が鞍馬天狗を襲います。しかし、かわしざまに鞍馬天狗の刀は白髪老人の顔を捉えました。ザシュッ。顔を斬られ、うずくまる白髪老人。しかし、おかしいですね、血が出ていません。「ついでにみんな取ったらどうだ。志賀さん」。その言葉に答えるように白髪老人は自分の顔をベリベリとはがしましたよ。おっと、下から出てきたのは、紛れもなく志賀の若々しい顔です。てっきり昼行灯な男と思っていたのに、まさか山嶽党の首領だったとは。「倉田さん、死んでもらおう」と不意打ちを仕掛ける志賀。しかし、鞍馬天狗の正義の刃の方が先に、志賀の体を切り裂いたのでした。「今一歩で、私の大望は成るところだった」「あんたは道を間違っていたんだ」「いや、私の道は、このひとすじしかない。無かったのだ」ガクッ。

火薬小屋に火を放ち、山嶽党のアジトを跡形も無く吹き飛ばした鞍馬天狗は、二人に向って言います。「杉作、おじちゃんはまだ大事な役目が残ってるんだ。吉兵衛と先に帰ってるんだぞ」。ぱからっぱからっ。白馬にうちまたがり、ススキの原を駆けていく鞍馬天狗。杉作は「おじちゃーん、おじちゃーん」と言いながら、いつまでも手を振っています。


えーと、イカ頭のおじちゃんが大活躍でしたね。敵がドクロだったりして、どことなく「少年探偵団」風味なのもステキです。ただ、惜しむらくは、大人のお友達に対する配慮が少ないこと。というのも、万里昌代のピンチを救うのが早すぎでしょう。もう少し遅ければ、楽しいことになったのに。こういうところは、70年代の東映を見習えというか、後ろ向きでかまわないので、万里昌代が脱がされるシーンが無くっちゃ。んもう。









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【映画】新鞍馬天狗

2009-09-04 | 邦画 さ行
【「新鞍馬天狗」安田公義 1965】を観ました



おはなし
鞍馬天狗(市川雷蔵)のおじさんは、今日も幕府と大喧嘩。

なんていうか、盛り上がりに欠ける脚本です。次回作は荒唐無稽風味が増して、多少面白くなるのですが、これはちょっとなあ。

夜の京都。通りを志士たちが走っています。「各自、藩邸に逃げ込め」。「逃がすな」と追っているのは新撰組。ああ、あぶない。このままでは志士たちは全滅。と、そこにヘンなのが出てきて、新撰組に立ちはだかりましたよ。「おのれ、何者っ!」「鞍馬天狗」。イカの頭みたいな頭巾(宗十郎頭巾)で顔を隠し、片手に刀、片手にピストルを持った鞍馬天狗(市川雷蔵)は、あっという間に敵をなぎ倒し、白馬に乗って去っていくのでした。パカラッパカラッ。

いきなりの豪雨。道行く人たちは、あるいは小走りに駆け出し、あるいは目に付いた店に飛び込みます。江戸から出てきたばかりの村尾真弓(中村敦夫)は、飲み屋での雨宿りを選んだようです。「京の雨はいつもこんなですか」と、横で静かに飲んでいる侍に声をかける村尾。「京の雨?」「いや、私は昨日、江戸から着いたばかりなので」。なるほどと侍はうなづきます。ちなみに、この侍は倉田典膳(市川雷蔵)と言って、まあ見たまんま、鞍馬天狗の表向きの姿です。貧乏旗本の三男で、新撰組に入って一旗あげるんだと、目をキラキラさせている村尾に、倉田はあいまいに微笑むのです。まあ、ここでイキナリ正体を明かすわけにもいきませんしね。

意気投合した二人は、雨の上がった町をお散歩中。と、向こうからトボトボと角兵衛獅子の少年・杉作(二宮秀樹)がやってきましたよ。「どうしたんだ」と声をかける倉田。「稼ぎを落としちゃったんだ」と杉作はションボリです。このままじゃ、親方に殴る蹴るのお仕置きを受けるのは必定。そこで倉田は「私が出してあげてもいいよ」と太っ腹なところを見せるのです。わーい、ありがとう。「おじちゃんのうち、どこ。もし見つかったら、きっとこのお金返しに行くよ」。

ここは「ふか川」という飲み屋。女将のおとよ(中村玉雄)が、用足しから帰ってくると、弟で新撰組隊士の休之助(平泉征七郎)が待っていました。「姉さん、俺、隊を辞めたいんだ」「どうしたの。何かあったの」。弟の言うには、貧乏とはいえ旗本出身の彼は新撰組の中で、浮いちゃっているそうです。「そんなことぐらいで」と弟を叱りつけるおとよ。もっと頑張って、偉くなるのよ。まあ、それはいいとして、なんで旗本の娘が京都で、飲み屋をやっているのか。ちょっと謎ですね。

さて、またまた志士たちを追跡中の新撰組。しかし、このままだと志士たちは逃げ切りに成功しそうな感じ。と、そこに謎の男二人が志士の前に立ちはだかりました。とりゃー。志士の一人は斬られ、一人は峰打ちで昏倒しています。「お待ちください。あなたは」と声をかける新撰組隊士。「宗像。と近藤に言えば分かる」と、リーダー格の宗像(佐々木孝丸)は悠然と去っていくのです。えーと、局長を「近藤」と呼び捨てにするくらいですから、きっと偉い人なんでしょうね。

ま、それはともあれ、捕まえた志士の早坂を拷問する新撰組のみなさん。おとよの弟も、頑張って拷問に参加してます。しかし、早坂だって維新の志士。そう簡単に口は割りませんよ。「どうしても、口を割りません。気を失うほど責めたのですが」「よーし、俺が責めてやる」。そんな会話をしつつ、偉い人たちが拷問プレースに赴くと、あれ、あれれ。おとよの弟たちが斬り殺されているばかりか、早坂がいないじゃありませんか。そして、壁には墨痕鮮やかに「鞍馬天狗」の四文字が。くっそー、またやられた。

手先(岡っ引き)の長次(遠藤辰雄)は、ひそかに山の中にある小屋を偵察中。ここが鞍馬天狗のアジトという情報があるのです。「おかしいな、確かに灯がついとったけどな」。しかし、藪の中にいつまでも隠れていたって蚊に食われるばかり。勇気をふりしぼって、小屋に飛び込んでみることにしました。とりゃー。おや、中には角兵衛獅子の子供たちがいるばかりです。「やいやい、なんじゃいワレは」と聞かれ、「角兵衛です」と答える杉作。いや、それは分かってるんだけど、なんでこんなとこにいるんだよ。ネチネチと子供たちをいたぶる長次。「とにかく、調べるさかい。一緒に来い」。親方に殴られると悲しんでいる子供たちを連れて、小屋からでる長次。えーと、なんかイカみたいな人がいますけど。こ、これは鞍馬天狗。

ここは吉兵衛(本郷秀雄)の荒物屋。というのは、表の姿。実は鞍馬天狗のアジトです。そして、吉兵衛は鞍馬天狗の忠実な部下。えーとバットマンの執事みたいなもんですかね。もちろん、鞍馬天狗こと倉田典膳はバットマンのようにお金持ちじゃないので、せっせと内職のお札書きに精を出しているところです。と、そこにおとよがやってきました。「ねえ倉田さん。こんな嫌な世の中に幸せな人っているのかしら」。クローズアップかつソフトフォーカスぎみな画面で、うっとりした表情をみせるおとよこと玉緒ちゃん。「幸せは自分たちの手で作るもんだ」と、雷蔵の顔もステキ系のクローズアップでどどーん。そんな、いい雰囲気のところに、連絡が入りましたよ。なんと、おとよの弟が殺されたというのです。えーと、殺したのはもちろん。

さて、吉兵衛と共に敵組織の全貌を探るべくガンバッテいる鞍馬天狗。今日も夜の町をあっちにウロウロ。こっちにウロウロ。と、誰か尾けてくる者がいますよ。「吉兵衛、誰か尾けてる」。ハッとその場を離れた吉兵衛は、やがて一人の子供を連れてきましたよ。あれ、角兵衛獅子の杉作じゃありませんか。「鞍馬天狗のおじちゃんだね」「うん」。あのね、鞍馬天狗のおじちゃん。杉作は語り始めます。どうやら、杉作は親方の暴力に耐えかねて逃げ出してきたようです。それというのも、親切なお侍さんに恵んでもらったお金で、仲間とお餅を食べていたところ、売り上げをごまかしていると思われてしまった模様。だけど、親切なお侍さんのところには行けない。だって、借りたお金を返せないもの、と杉作は悲しみの表情です。ううっ、かわいそうな子や。鞍馬天狗は言い出します。「吉兵衛、今夜からこの子をうちの子にするぞ」。ババッとイカマスクをとる鞍馬天狗、というか倉田典膳。「あっ、おじちゃん。おじちゃんが鞍馬天狗。わーい」。喜びの杉作は、その場でトンボ返りを始めちゃいました。くるくるー。

「倉田さん、やっと新撰組に入ることができました」と、村尾がうれしげに報告にきました。もちろん、ダンダラ模様の羽織を自慢げに着ています。しかし、それを鞍馬天狗に自慢するのもなんだかねえ。ともあれ、倉田は不快感なの微塵も見せずに、心底からアドバイスをするのです。「血気に逸って軽はずみなことはしないことですな」。えーと、村尾はろくすっぽ聞いちゃいません。今度は、おとよの店に行く村尾。すると、おとよまでもが新撰組に入るなんて、とお説教開始。実は弟も新撰組だったんです。「で、今は」「死にました。いいえ、鞍馬天狗に殺されたんです」。ビックリする村尾。しかし、怯えるかわりに、ヘンに闘志が燃え上がったみたいです。「よーし、私がこの手で天狗を斬ってみせる」。

村尾が根拠もなく張り切っているところに、新撰組の密偵が飛び込んできました。愛人の芸子・幾松のところに、長州の桂小五郎が来ているというじゃありませんか。ついては、村尾に、新撰組の屯所に走って隊士を呼んできて欲しいというのです。「待て。見張りは俺がする。屯所へはお前が走れ」と言い捨てるや、ズドドドと走り出す村尾。鞍馬天狗も大物ですが、長州の巨魁、桂小五郎捕縛に成功したら、大出世間違いなしです。ひゃっほー。

そんな桂小五郎(藤巻潤)は、幾松の家で鞍馬天狗と歓談中。しかし、村尾がだんだら羽織で家の前をウロウロしたことから、危険を察知してスタコラ逃げ出したのです。異変に気づいて村尾が家に踏み込んだときには、桂も鞍馬天狗も逃げた後。えーと、これはやってしまいましたね。もちろん、隊に戻った村尾は、ムッチャ怒られています。このままだと、詰め腹を切らされそうなイキオイ。しかし、秘密機関の宗像から、長州藩士集結の報が入り、その一番手として突っ込むことで、どうにか許してもらえそうです。

おりゃー。会合の席に突入する新撰組。しかし、そこには長州藩士以外に、もうひとり、トンデモない敵がいたのです。そう、イカ頭の鞍馬天狗です。片手のピストルを撃ち放し、片手の刀を振るってくる鞍馬天狗に、新撰組のみなさんは次々と斃れていきます。ぎゃー。む、無念。しかし、なぜか村尾だけは峰打ちだけで済んだみたいです。まあ、後になって、仲間からボッコボコにされるんですけど。

それにしても、どうして、こんなに志士サイドの情報が漏れるんだろう。鞍馬天狗は、吉兵衛を使って、新撰組の連絡員から秘密書類をスリ取ることに成功しました。そこには、トップシークレットである桂と北大路卿の会合予定が書いてあります。よーし。桂と北大路卿に連絡を取り、会合を取りやめてもらおう。そして、そこに張り込んでいれば、敵のスパイが現れるに違いない。じーっ。おや、紫の御高祖頭巾をかぶった怪しい女がウロウロしています。さささ。暗闇から進み出て、刀を一閃。御高祖頭巾を切り払う鞍馬天狗。しかし、その顔を見てビックリです。「おとよさん」。一方、おとよも、鞍馬天狗の声を聞いてビックリです。「倉田さん」。「いかにも倉田だ」「あなたが……。あなたが天狗。仇っ」。「何っ」とおとよの攻撃をかわす鞍馬天狗。そう、さすがの鞍馬天狗も、自分が斬った新撰組の隊士がおとよの弟だったとは知らなかったのでした。さすがに、自分の実力で鞍馬天狗を斃すことはできないと悟ったおとよは言います。「斬って。私を斬って」。「女は斬らん。まして、おとよさんを斬るわけにはいかんからね」と言い、鞍馬天狗はヒラリと去っていきます。「……」、なんだか潤んだ視線で、それを見送るおとよです。

おとよのおかげで、敵の正体がハッキリ分かりました。元大目付の宗像左近。これが、新撰組を初めとして、数多くの手先を使い、志士たちの包囲網を敷いていたのです。早速、藪の中で、桂小五郎と密談する鞍馬天狗。えーと、なんでそんな場所で。多分、監督にもイロイロ都合があるんでしょう。ほら、新撰組の村尾がいきなり襲い掛かってきましたよ。桂は脱兎のごとく逃げ出し、ひとり残った鞍馬天狗は、村尾の剣を軽くあしらっています。ひょひょいのひょい。うわーん。ヤケになった村尾は、どっかりと座り込んで言い始めました。「斬れっ。なぜ、俺を斬らん」。「村尾君。君を斬りたくない」。はっ。その声はもしや。鞍馬天狗は村尾に言います。新撰組を辞めて、江戸に帰れ。「君にその気があるなら、勝海舟先生に添え書きを書こう」。「倉田さんっ」。

パカラッ、パカラッ。密書を持って大阪城に向う宗像の部下。しかし、突然、白馬にまたがった鞍馬天狗に襲われ、瀕死の重傷。密書も奪われてしまいました。宗像はそれに気づくも、後の祭り。今から馬を飛ばしても追いつけそうにありません。ということで、伝書鳩に頼むことにしました。くるっくう。バタバタ。ガンバッテ飛んでいけよー。

一方、密使に化けた鞍馬天狗はまんまと大阪城への潜入に成功。宗像の部下と信じている城代から、ひみつリストを見せられて生唾ゴックンです。と、そこに伝書鳩が。もはや、これまで。大阪城代を人質に、虎口からの脱出を図る鞍馬天狗。しかし、敵もさるもの、引っかくもの。城代の機転で、鞍馬天狗は一転ピンチに。ワラワラと押し寄せる大阪警護の侍たちに追われるまま、地下の連絡通路に押し込められてしまったではありませんか。京都からは宗像も駆けつけ、蟻の這い出る隙もない包囲網が完成しちゃいましたよ。

しかたありません。密使の姿から、律儀にイカ頭に着替えた鞍馬天狗は出口に向って突進。ズダーン。ズダダーン。必殺の銃弾を潜り抜けた鞍馬天狗は、縦横無尽に斬りまくります。ちなみに、ここはハンディカメラの一人称視点。ちょっと酔いそうです。うりゃりゃ。なんか下っ端と一緒に、宗像も斬られていたような気がしますけど、気にしない、気にしない。と、「引けっ。私が相手をしよう」と新撰組局長、近藤勇が登場です。がきーん。ちゃりーん。さすがに近藤はひとあじ違います。いずれ劣らぬ、剣の名手。互いに一歩も譲らず、つばぜり合いが続くのです。しかし、気を利かせたつもりでしょうか。大阪城の警備隊が銃をいかけてきましたよ。ずだだだーん。ハッと飛びのく近藤。しかし、次の瞬間には、すでに鞍馬天狗は大阪城の高い塀の上にあったのです。一体全体、どうやって、あんなとこに。というか、こんな跳躍力があれば、とっとに逃げ出しておけば良かったのに。

ま、それはともあれ、「近藤さん、また会おう」と鞍馬天狗は跳躍します。ばひゅん、ばひゅー。なんか、あっという間にスゴイ距離を飛んでます。さすが天狗の名前は伊達じゃない。迎えに来ていた杉作を後ろに乗せて、愛馬「白雪」を飛ばす鞍馬天狗。「杉作、桂さんにいい土産ができたぞ。いいか、しっかり捕まってるんだぞ」。ぱからぱからっ。

いきなり「おとよさん」と声をかけられ、ビックリする旅姿のおとよ。「村尾さんっ」。その村尾は、異様にサワヤカな笑みを浮かべ言います。「倉田さんに、あんたを一緒に江戸までって、頼まれたんです」。

森の中、イカ頭の鞍馬天狗が歩いています。おや、朗々と謡曲を吟じ始めました。なぜかポンと鼓の音が聞こえてきたりしつつ、鞍馬天狗がどこかに歩いていくのです。ポン。


なんだか、展開がムチャな映画でした。玉緒ちゃんや中村敦夫の扱いも中途半端だし。少しエピソードを刈り込んだほうが、もっと面白くなった(かもしれない)のに。まあ、そうは言っても、当時の観客にとっては、「鞍馬天狗」は説明の必要もないくらいに有名だったろうし、お目見え作品としては、杉作との出会いのシーンがあれば、それでOKだったのかもしれません。

ただ、現在の視点からすると、あまりお勧めの映画とは言えません。特に雷蔵ファンでなければ、アラカンの鞍馬天狗を見た方がいいのかなあ、と思いました。もっとも、次回作は少し面白くなります。ヒントはドクロ。







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【映画】ずべ公番長 東京流れ者

2009-08-31 | 邦画 さ行
【「ずべ公番長 東京流れ者」山口和彦 1970】を観ました



おはなし
ひょんなことからテキヤに「就職」したリカ(大信田礼子)は、女オヤブンの仇をとるために……。

もちろん、鈴木清順監督の「東京流れ者」とは関係ありません。ずべ公シリーズの第2弾で、1作目より「任侠」成分を増量しての登場です。

どどーん。いきなり「女性生殖器図」のアップ。国立性病センターの高崎(南利明)が、ご存知、赤城女子学園の生徒たちに、講義をしているようです。「以上、ご説明申し上げたごとく、女性の体には山あり谷ありトンネルあり。ハヤシもあるでよぉ」。いきなり、これですか。前作の冒頭では、美しい橘ますみのウエディングドレスだったのに。東映インフレの法則(ただし下品方向に限る)は健在のようです。

「そこで、これから諸君の身体検査を綿密に始めたい」と高崎はムフフな身体検査を開始。しかし、メリーという子だけは、どうしても裸になろうとはしなかったのです。それもそのはず、彼女は妊娠していたのでした。強引に迫る高崎に、「よしなよ、みっともない」と猛反発したのは、はまぐれのリカこと影山リカ(大信田礼子)。はい、そのまま乱闘に。

このあと、リカがメリーを脱走させるシークエンスなどを挟みつつ、はい「一年後」。出所したリカはおもちゃ工場で働いているようですよ。とはいえ、仕事はミスばかり。そのうえ、おさわりをしてくる課長(由利徹)にキレたリカは工場を飛び出したのです。

行く当てもなく、縁日をブラブラしているリカ。おや、ハンサムなテキヤ・常次郎(渡瀬恒彦)が、口上を述べていますよ。これは面白いと、のんびり見物していたリカは、自分のお財布がスリに取られたことにも気づいていません。しかし、それに目ざとく気づいたのが、ハンサムなテキヤ。「俺の客からスリ取ろうってのが気に食わねえんだよ」とお財布を取り返してくれたのです。「兄ちゃんよ、これやるよ」とお守りを差し出すリカ。二人はそのまま別れるのでした。どうせ、ここぞという場所で渡瀬恒彦は再び出てくると思いますけどね。

さて、新宿にやってきたリカは、チョボ松というテキヤ男にスカウトをされて、仕事をすることに。今度は、ガセ寅一家というテキヤ稼業のようですよ。オヤブンは、ガセ寅蘭子(宮城千賀子)と言って、やっぱり赤城の卒業生。見事にパターン化してますね。しかし、このオヤブン、なんだか頼りないです。リカがとうもろこしを売っている間に、ホストクラブとかに出入りしているみたいだし。

ちなみに、蘭子のお気に入りは、ホストクラブ「美男館」のナンバー1。ジミーことツナオ(左とん平)です。ようやく、願いがかなってツナオとラブホテルに行った蘭子。「うーん、ぼく怖いん」「まあウブなのねえ」。と、そこに長子(橘ますみ)がやってきましたよ。「なんだい、お前さん」「なんだとは、なんやねん。おうオバハン。うちの男、どないさらすちゅうんじゃい」。えーと、これは典型的な美人局じゃないですか。「じゃかましい」と怒鳴って、モロ肌脱ぎに刺青を見せる蘭子。「おう、ガセ寅一家五代目。うわばみのお蘭と知ってのことだろうな」。とりあえず長子とツナオはヘヘーッと平伏です。

はい、シーン変わって、ここは黒江組の事務所。組長の黒江(南原宏治)に、浜村という組員がボコられています。「足を洗いてぇだと」ボカリ。「実弾だ。実弾で100万持って来い」。と、そこに「錦糸町のオヤブンがやってきました」との報告。浜村をボコり終えた黒江は、さっそく錦本(上田吉二郎)と密談です。新宿のカンバンが欲しいと言い出す黒江。しかし伝統的に、新宿はガセ寅一家の縄張りということになっているようです。「何とかしてガセ寅のカンバンを取り上げねえといけないな」「何分、よろしくお願いいたしやす」。はい、つまり黒江組と錦本組が敵になるってことですね。了解です。

ほら、言ってるそばから、黒江組の妨害が始まりました。とうもろこし売りのリカに、黒江組のチンピラたちが因縁をつけてきましたよ。とりあえず、リカキックで対抗だ、とりゃー。しかし多勢に無勢。このままじゃやられちゃう。と、そこに「大の男が女ひとりに4人がかりかい」と助太刀が。そう、リカと赤城で同級生だった知床のオタマ(夏珠美)です。うりゃー。よかった、チンピラたち(小林稔侍など)は逃げていきました。

「悔しいねえ。あたしに力がないばっかりに」。黒江組に屋台をメチャクチャにされたと聞いて、嘆くガセ寅お蘭。「大丈夫ですよ、姐さん。それに、ここにもう一人、助っ人があらわれましたしね」とリカは知床のオタマを紹介します。「あたしもね、二人ばかりスカウトしてきたんだよ」。はい、長子とツナオです。「長子!」「リカ!」。そう、みんな赤城の卒業生だったのです。って、前作とまったく同じ展開なんですけどね。さらにオカマのはるみ(六本木はるみ)やセンミツ(集三枝子)といった仲間も加わって、賑やかになっていくガセ寅一家周辺です。もっとも、トルコ嬢をしているセンミツは、カレと結婚するので協力できないそうですが。「で、そいつ何してんの」「組員なのよ」。えーと、もしかして。

「ただいま」と部屋に帰るセンミツ。ああ、やっぱり。相手は黒江組を退職希望な浜村でした。「俺よぉ、オヤジさんに思い切って言ってきたんだ。足を洗わしてくれって」。しかし100万が必要だという浜村にセンミツは言うのです。「いいわ。それであんたがカタギになってくれんなら、あたしが何とかする」。ヒシッ。抱き合う二人です。

さて黒江組の妨害が本格化してきました。テキヤ稼業に必要なネタの供給を止めてきたのです。売るものが手に入らなければ、テキヤ稼業は成り立ちません。それに、今度は新宿で大きなタカマチ(縁日)が行われる予定。思わず「ボンがいてくれたらなあ」とつぶやくチョボ松。そう、ガセ寅蘭子には、家出をした息子がいるそうです。って、どう考えても渡瀬恒彦だと思うんだけどなあ。

リカが勤めていたおもちゃ工場や、怪しげな漢方薬屋などを回るみんな。ほとんど脅迫同然にネタをかき集めます。ガセネタだろうが、おかまいなし。とにかく売るものを集めなくては。錦本組の妨害もあったものの、どうにかタカマチを終えることができたガセ寅一家。しかし、それはさらなる悲劇への幕開けに過ぎなかったのです。

センミツの頑張りのおかげで、どうにか100万円をそろえた浜村。さっそく黒江に持って行きます。「それじゃ私はこれで」。イソイソと去ろうとする浜村を黒江が呼び止めました。「俺は確かに100万で、おめえの足を洗わせてやると言ったが、だがスケの足抜けまでさせてやると言った覚えはないぜ」。ガガーン。足を洗ったらセンミツと田舎に帰る計画がバレてます。どうしてもスケの足抜けをさせたいなら、ひとつだけ条件がある、と持ちかける黒江。「条件?」「殺しをやれ。うまくやったらスケはくれてやる。どうだ」。ワナワナと震える浜村です。

「4時に上野だ。いいな」とセンミツに言う浜村。どうやら、殺しをしたら、その足で逃げる気のようです。もちろん、殺しのターゲットは。グサッ。墓参り中のガセ寅蘭子を刺す浜村。やっぱり、そうでしたか。

一方、墓参りに行ったガセ寅蘭子を待っているみなさん。「姐さん、遅いねえ」。しかし、迎えに行ったチョボ松は蘭子の死体を担いで帰ってきたのです。「姐さんっ」。

上野駅、午後4時。人待ち顔のセンミツのところに、浜村がやってきました。手を振るセンミツ。しかし、浜村の横に二人の男がスッと近づいてきましたよ。グサッ。浜村を刺し、何食わぬ顔で雑踏に消えていく二人の男。「ケンちゃん、しっかりして」「バカだった、オレが。ガセ寅をやった。お前を……。騙されたんだ、黒江に」、ガクッ。「ケンちゃーん」。絶叫するセンミツ。と、そこに「突然」、赤城の卒業生のマリ(賀川雪絵)がダッシュしてきました。「センミツ、センミツ、センミツー」。

ガセ寅蘭子の遺体の周りに集まっているみんな。そこに、マリに抱きかかえられたセンミツがやってきました。「ここのオヤブンをやったの、黒江組の……」うわーん。リカ、長子、そしてマリは深くうなづきます。そう、これから殴りこみですね。みんなは、そろいの真っ赤なレインコートを羽織り、出撃していくのです。もちろん、カメラがそんなみんなを、前から後ろから横から、縦横無尽に捉えます、とりあえず、血がたぎる瞬間。東映の映画はこうでなくっちゃ。

みんなが出撃したあと、ノコノコと帰ってきた常次郎。「ボン、遅かったぜ」とチョボ松に言われ、「いったい誰がやったんだ」と目をクワッと見開いています。というか、とっとと殴りこみに行きなさい。

黒江と錦本は、まんまと邪魔なガセ寅を殺して、祝杯をあげています。と、ドアが蹴破られました。「誰だっ」「ガタガタ言うない。ずべ公番長の殴りこみだい」。ババッと赤いレインコートを脱ぐみなさん。すると、その下には、刺青がプリントされた揃いのダボシャツがキラリン。さらに、長ドスまで持っているみたいですよ。どりゃー。斬って斬って斬りまくるみなさん。ピンチになったらオッパイポロリンで度肝を抜く作戦です。おっと、常次郎も駆けつけて、バッサバッサ斬り始めました。「黒江、親の仇だ」、グサグサグサリ。おっと、連続刺しです。常次郎は返り血で真っ赤になってます。

ぴーぽーぴーぽー。警察が駆けつけてきました。「お騒がせしました」と素直に手錠をはめられる常次郎。「ボンっ」「チョボ松、後は頼むぜ」。「常さんっ」「また、どっかのタカマチで会おうぜ」。常次郎はパトカーに乗せられ、連行されていきます。えーと、ずべ公たちは?かなり、斬り殺してるみたいですけど。

「常さーん」と、走るパトカーを追いかけるリカ。しかし、パトカーには追いつけません。地面に転び、リカは叫ぶのです。「つねさぁーーーーん」。


前作は、大信田礼子、橘ますみ、賀川雪絵の3人で主役を張っていたのが、今作では大信田礼子が一歩抜け出したようです。そのかわり、橘ますみはオッパイ要員に、そして賀川雪絵に至っては最後の殴りこみ要員に格下げですよ。まあ、そうは言っても、オイシイところは渡瀬恒彦が持って行っちゃうんですけどね。

それにしても、刺青プリントなダボシャツ。ユニクロあたりで売り出したら、バカ売れしそうなんですけど。すくなくとも僕は即買いです。もっとも、イキオイで買ったはいいものの、外には着ていけそうにないですが。







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【映画】ずべ公番長 夢は夜ひらく

2009-07-10 | 邦画 さ行
【「ずべ公番長 夢は夜ひらく」山口和彦 1970】を観ました



おはなし
女ネリカンを出た影山リカ(大信田礼子)は、やはり同じ女ネリカン出身のママがやっているキャッチバーのホステスになって……。

山口和彦監督のデビュー作です。いかにも東映の新人監督らしく、コテコテの東映流な演出と、新人らしい感性がブレンドされた映画でした。

壇上で花嫁衣裳を着ている女の子(橘ますみ)。画面が引いていくと、おや、ここは講堂のようです。それも、そろいの制服を着た女の子たちがいっぱい。騒ぎ立てる女の子たちに、やはり壇上の先生が言い出しました。「世間では、この赤城女子学院を女ネリカンと呼ぶ。しかし、諸君はそんな色眼鏡に屈してはいかん、世間には諸君をもっと暖かい目で見守って下さる方が大勢いる」。そう、壇上の女の子が花嫁衣裳を着ているのも、チャームスクールの人がやってきて、みんなに花嫁さんのステキさを教えるためだったようですよ。しかし、そんな大人の見え透いた手には引っかからないぞと、暴れだす女の子(夏純子)。そして、それを止める女の子(大信田礼子)。もう、講堂は乱闘騒ぎです。結局、花嫁衣裳の子、暴れた子、それを止めようとした子の三人は独房に入れられてしまうのでした。

テーマ曲「圭子の夢は夜ひらく」をバックにしたタイトルロールが終わると、独房の第1号房が映りました。パンツを丸出しにして逆立ちしているのは、先ほど、乱闘を止めようとしていた子。ここに東映流のテロップがどーん。「影山リカ 19才 横浜出身 傷害」。ははあ、そうですか。

次は第2房。頭に包帯を巻いているのは、花嫁衣裳を着ていた子。「八尾長子 19才 大阪府八尾出身 詐欺」だそうです。

そして、第3房は暴れだした女の子。「ミラノのお春 18才 東京出身 恐喝」です。

はい。それから1年後。赤城学園を出たリカ(大信田礼子)は、まじめにクリーニング屋さんで働いています。もちろん、ミニスカートで自転車を漕ぐというサービスカットつき。ま、ミニスカはどうでもいとして、こういった境遇の子に付き物なのは、周りの偏見。リカはまじめに働いているにもかかわらず、店主から言い寄られるは、店主の奥さんからはスーツを盗んだ疑いをかけられてしまったりと散々です。ぶちーん。「よお、クソババア。耳の穴かっぽじって、よーく聞いときな。本来なら、このリカさんをコケにした奴はとっくに鼻そがれてるんだい。だけど、お前さん、その値打ちもないね」。大見得を切ったリカは、そのまま店を飛び出すのでした。

やってきました、新宿の歌舞伎町。今ではシネシティ広場なんてカッコイイ名前がついていますけど、要はミラノ座の前のヤバそうな場所です。ほら、さっそく男(左とん平)がナンパしてくるわ、怖いお姉さんたちがカラんでくるわ。歌舞伎町はこうでなくっちゃ。とりあえず、怖いお姉さんたちを軽くボコっておいたリカは、男に仕事を紹介してもらうことに。

渉外部長(実はただのバーテン)の綱夫に連れてこられたのは、バー「紫」。なんと、そこには長子(橘ますみ)がいたじゃありませんか。「このお店の人な、みーんな赤城出身ばっかなんやで」「そんじゃ、ママも」。「そうよ。あんたたちの先輩ってわけ」と言いつつ、タバコをぷかーっと吹かすママ(宮園純子)。「渡辺梅子 26才 東京出身 傷害」だそうです。えーと、宮園純子の場合、実年齢も27くらいですが、どうみても30代中盤な感じ。っていうか、迫力あり過ぎだろうと。

とりあえず、紫はキャッチバーなので、適当なお客を物色して店に連れてこないと話になりません。いたいた。ゴールデンハーフが「黄色いさくらんぼ」を熱唱しているゴーゴークラブに、スケベそうなオヤジ(坊屋三郎)がいましたよ。お客さんゲーット。さっそく、オヤジが紫に連れて来られると、そこでは流しの歌手が熱唱中。っていうか、藤圭子が「命預けます」を唄っているんですけどね。いやあ、豪華だなあ。「あ、リカちゃん、紹介するわ。圭子ちゃん。あんたの先輩で、赤木の卒業生よ」とママに言われて感激したリカは、とりあえず「命あずけますぅぅー」と歌マネです。これがまたスゴクうまいんですけどね。さすが、大信田礼子も歌手になっただけあります。

と、そこに安室奈美恵ソックリな女の子・バニー(五十嵐純子=淳子)がやってきました。「お店に来ちゃダメじゃないか」と困り顔なホステス(賀川雪絵)の妹のようです。「お金ちょうだい」「またクスリ」。そんな様子を見ていると、どうしてもひとこと言わないと気がすまないのがリカ。「よお、今の妹かい。見たところヤクボケみたいだけどよ、いいのかいネカ(金)なんてやって」。「余計なこと言わないでよ」フンッ。怒っているホステスにテロップがどどーん。「冬木マリ 21才 名古屋出身 傷害」だそうです。

千客万来というか、なんというか、今度は悪そうな人たちが大挙してやってきましたよ。歌舞伎町を牛耳る大羽興行の大羽(金子信雄)と、その子分たちです。しかし、ここでの金子信雄のメイクが最高。褐色の肌に、ちょこんとカールした髪の毛。それに原色のヘンなシャツ。どうみても、コロンビアマフィアにしか見えないんですけど。ともあれ、この大羽は、ママのお父さんの兄弟分でありながら、ママの幼馴染を使ってママのお父さんを殺し、今はまたママのお店を狙っている悪ドイ奴なのです。

さて、リカが買い物をしていると、幼馴染のトニー(谷隼人)と出会いましたよ。なんか二人はいい感じです。これはくっつくな。さらにトニーと別れたリカがテクテク歩いていると、今度はヤクボケのバニーが猛ダッシュで走ってきました。バニーは売人のずべ公たちからクスリをかっぱらって追われているようです。先輩の妹だし、そもそも困っている人間を見たら助けなきゃ気のすまないリカは、さっそく手近な場所にバニーを匿うことに。ずどどどど。バニーを追ってずべ公たちが走ってきましたよ。よく見ると、それはミラノ座前でリカにケンカを売ってきたずべ公たちじゃありませんか。それにもう一人、懐かしい顔が。そう、赤城でケンカ相手だったミラノのお春(夏純子)です。そうか、ミラノってのは縄張りのことだったんですね。「おう、今、ここに女が逃げてきたろ」「来なかったぜ」。「こいつだよ、昨日の女」と口々に訴えるずべ公たちの言葉に、リカをギロリと睨むお春。子分をよくもかわいがってくれたなあ。

はい、リカとお春はは新宿の空き地で決闘することに。ばばっ。巻きスカートを放り投げると、二人はパンツ丸見えの超ミニです。とりゃー。おりゃー。サービスカットのハイキックなどを見せつつ戦う二人。まあ、志保美悦子じゃないんで、二人のアクションといっても形ばかりですが、そこは山口監督のカット割りで、それなりにカッコイイ感じに。どさっ。倒れるお春。リカの勝ちです。しかし、そこに大羽興行のチンピラたちが大挙してやってきましたよ。そう、お春のずべ公グループは、大羽興行の手先だったのです。衆寡敵せず、ボコボコにされて拉致されてしまうリカ。当然、バニーが盗んだクスリも、リカのせいにされてしまいました。

リーン、リーン。さっそくママに脅迫電話が。リカを返して欲しかったら、クスリ代300万円をもってこい。「分かりました。しかし、明日まで待ってください」。もちろん、大羽の真の狙いが「紫」の土地なのを百も承知のうえで、ママは300万円を作ることにしたのです。それを聞いて、困っちゃったのがマリ。なにしろ、もとは自分の妹のしでかしたことですから。しかし、素直になれない性格なので、ついリカに当たってしまいます。「リカ。あんたたち頼みもしないのに余計なことしないでよ」「余計なこと」「バニーがスリク(薬)盗んだことは悪いわよ。だけど、あんたやママがノコノコ大羽興行に出て行って、300万払うだなんて約束、してもらう筋合いはないわ」。がーん。ママが自分を解放するために300万を払う約束をしたなんて。ショックを受けるリカ。さらに親友の長子から、バニーは元「紫」のホステスで、大羽興行のチンピラに輪姦されたショックからクスリに手を出すようになったと聞いて、さらにががーんです。し、知らなかった。

姿を消した妹のバニーを懸命に探すマリ。しかし、どこにも見つかりません。それもそのはず、バニーはお経が鳴り響き、ヌードダンサーがクネクネ踊っているサイケデリックな秘密クラブでラリっていたのですから。しかし、ラリってヘロヘロなところを、ミラノのお春一味に発見され、バニーはそのまま地下室に拉致監禁。さあ、タイヘンなことになってきました。

タイヘンといえば、ママもタイヘン。亡き父の旧友から、店の権利書を担保に300万円借りたママは。それを持って大羽興行に向いました。しかし、大羽は利子が一日で50万とかトンデモないことを言い出しましたよ。そのうえ、大羽の手には店の権利書が。そう、父の旧友は裏で大羽と手を結んでいたのです。ぐぬぬ。悔しいけど、大羽に権利書がある以上、さらにお金を作らなくては。

傷心のママは、父の墓参りに行くことにしました。しかし、そこには先客がいたのです。「慎さんっ」と呼ばれ、ピクっと固まる慎二郎(梅宮辰夫)。「あんたが憎い。あたしを捨てたあんたがっ」。そう、ママの恋人だった慎二郎は、渡世の義理からママのお父さんを殺し、たった今まで刑務所に入っていたのです。なんか、だんだん先の展開が見えてきましたね。

一方、リカはお気楽モード。幼馴染のトニーとデートです。オープンのマスタングに乗りブラジャーいっちょになってみたり、砂浜をキャハハと走り回ったり、さらに「あんたにあげる」と、テトラポッドの陰で抱き合ったり。

ところが、リカのお気楽には理由があったのでした。意を決して大羽のところに向ったリカ。「何しに来た」「あたいを買って」。そう、自分の体と引き換えに、借金を棒引きにしてもらおう。でも、せめてその前に、トニーに処女を捧げたいという女心だったのです。下着になって目をつぶるリカ。ニヤリと笑う大羽。

懸命にバニーを探し続けているマリ。おや? ずべ公の一人が、バニーのブレスレットをつけていますよ。もしかして、バニーはこいつらに。とりあえず、ずべ公軍団をボッコボコにして締め上げるマリ。バニー、待ってて。廃屋の地下室からバニーを救い出したマリ。しかし、時すでに遅し。ミラノのお春たちに強力なクスリを打たれていたバニーは「姉ちゃん、姉ちゃん」と言いつつ息を引き取ったのです。ガクッ。

吐き気がしそうな行為に耐えたリカに、大羽は一万円札をぽい。「とぼけないでよ。約束が違うじゃないかよ」「甘く見るな。お前にゃ一万円でも出しすぎだ」。横でお春が高笑いをしている中、リンチされたリカは、そのまま事務所から放り出されたのです。ボロボロのヨロヨロになりながら、下宿先のママの部屋に戻ったリカは、無言でドスを引っ張り出します。ぜったい、やってやる。しかし、そんな姿をママに見つかってしまいました。「どしたの、そのカッコは。それに、そんな危ないもの持って」「……」「黙ってないで、言ってごらん」。

バニーの死でキレたリカは、一人でビリヤード場にいた大羽たちのもとに殴りこみ。「バニーが死んだわ」「それがどうかしたか」「死ねーっ」。しかし側近(曽根晴美)がキューを一閃させると、服が破けておっぱいポロリです。「やめてぇーっ」。

バニーの遺体を前に、ヘコンでいるみんな。って、ここらへんは東映のお約束。そして、ママがそっと一人で、長ドスを持って出かけましたよ。土砂降りの雨の中、傘も差さずに歩くママ。しかし、橋の上で番傘を差して立っている男が。もちろん、慎さんこと梅宮の兄ぃです。って、なんだか、このシーンはよく見たような気がしますよ。歩いてくるのが健さんで、待っているのが池部良。そう、まるで「昭和残侠伝」の世界じゃありませんか。ちなみに、この映画の併映は「昭和残侠伝 死んで貰います」だったりします。いや、「昭和残侠伝 死んで貰います」の併映が、この映画だと言ったほうがいいのかな。

「親分。たった今、親子の盃、けぇさしてもらうぜ」と盃を叩きつける慎さん。「じたばたするんじゃないよ」とママ。大羽の「叩っ斬れ」を合図に乱闘開始です。リカたちも棒やフライパンを片手に助太刀にやってきました。ジャズのメロディとともに、あちこちで戦いが続きます。あっ、ママが大羽に斬られるっ。そこに割り込んで背中をざっくり切られた慎さんは、振り向きざま、ドスを横に一閃。そして、ママ必殺の長ドス突きが大羽の腹に突き立ちます。ぐわー。「慎さん。慎さん、しっかりして」「梅子。おらぁ、足を洗っておめえと。おめえと……」ガクッ。遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきます。

護送バスに乗せられているみんな。これじゃ、また赤城に再入学だね、わっはっは、と大笑いです。そんな中、ママはひとり寂しげな笑みを浮かべていますよ。藤圭子の「夢は夜ひらく」が流れてきました。明け方の新宿を護送バスが走っていきます。♪恋ははかなく 過ぎて行き 夢は夜ひらくー♪


いちおう、大信田礼子のシリーズということになりますが、「不良番長」から梅宮辰夫と谷隼人が参戦。さらに姐御の宮園純子の迫力がありすぎて、なんだか目立てないまま終わった感じが。さらに、脇の橘ますみ、賀川雪絵、夏純子もビッチな存在感を示しているうえに、藤圭子まで唄ってますからね。これじゃあ、大信田礼子としても、いかんともしがたいところでしょう。

同じ東映の「女番長(スケバン)」シリーズのシリアス路線に比べて、「昭和残侠伝」と「不良番長」を足して2で割ったような、不思議な味わいです。もちろん、パンチラやおっぱいなどのサービスカットも抜かりなく、とても新人監督の撮った作品とは思えない手堅い作品でした。

強いて言えば、少しくらい破綻してもいいから、もっとハチャメチャな勢いがあったら良かったとは思いますが、それは傍目八目な、好き勝手な言い草っていうもんでしょうね。







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【映画】錆びた炎

2009-06-29 | 邦画 さ行
【「錆びた炎」貞永方久 1977】を観ました



おはなし
病院から血友病患者の男の子が誘拐された。早く発見しないと、子供の命が危ない。しかし、病院長は身代金の支払いを拒否し……。

出演者は豪華。筋立ても大きい。なのに、このショボサはなんなの、って感じの映画でした。まあ、いろんな意味で、熱意の空回りというか。


シャムネコのアップ。画面が引いてくと、なんとそのシャムネコは鳥かごの中に入っているようですよ。どうやら、ここはラブホテルの一室のようです。女の手が映りました。女はストッキングをベッドの端に結びつけ、そして、寝ている男の首に巻きつけてから、片方を……グイッ。ウグググ。ムギュッ。と、ここで「二月六日 午後三時二十二分」のテロップが。この後も煩雑に、日付・時刻のテロップが挿入されますが、基本的に「何のためにいれてるのか疑問」なので、以後は割愛させていただきますね。

渋谷医大セミ学院のトイレで、浪人生の多木(中島久之)が双眼鏡を使ってノゾキをしています。アイタタって感じですが、これが趣味なんだからしょうがない。と、一人の女が目に入りましたよ。まあ、女がトリカゴにシャムネコを入れて歩いていたら、ノゾキマニアじゃなくても見ちゃうでしょうけど。しかし、どうも多木の様子がヘンです。毛皮につば広の帽子、それにサングラスという素顔ガッチリガードな女ですが、多木はその女を知っているようです。あわててトイレを飛び出し、シャムネコ女のところにダッシュしていく多木。なにやら、二人は話し合っているようですから、やはり知り合いだったみたいですね。

ぼろアパートに帰った中島久之は、とりあえずラジオのスイッチをポチ。ニュースが流れてきました。なんと、渋谷でサン・ジョルジュ病院の医師・佐島が殺され、トリカゴにシャムネコを入れた女が重要参考人だというじゃありませんか。とりあえず、思わせぶりな顔をしてみる多木です。

それから一週間ほど経って、種村総合病院から血友病患者の丸山和也ちゃんが誘拐されるという事件が起きました。副院長の種村光晴(大林丈史)は「丸山和也ですか」と絶句していますが、院長の誠一郎(丹波哲郎)は「外部にもらすな。医大設立の認可に差し支える」と冷酷な感じです。もっとも、和也ちゃんの母親・雅子(二宮さよ子)が「すぐ警察に届けてください」と半狂乱になっているので、届けないワケにはいかないかなあ。あ、お父さんですか。いちおう横にいますけど、影が薄いです。

しばらくすると犯人から丹波哲郎に電話がかかってきましたよ。って、声からノゾキ浪人の中島久之だというのはバレバレなんですけどね。「警察へ届ければ子供の命はない。交渉の相手はあんたと、あんたの家族以外には認めない。いいな」ガチャ。えーと、遅いよ。もう連絡しちゃったよ。

高台にある豪邸(なんと天文台つき)に、スキール音も勇ましくやってきたガス会社の車。キキーッ。一群の男たちが、辺りを見回しながらサササッと豪邸に入っていきます。はい、もちろん豪邸は丹波哲郎のお屋敷で、やってきたのは刑事さんたちです。しかし、せっかくガス会社の社員に変装しても、なんかヘンに目だってますけど。

そんな愉快な刑事さんたちは、以下のとおり。まず、リーダーの遠丸警部(平幹二朗)。おじいちゃん刑事の池広(村田正雄)、若造刑事の浦山(重田尚彦)、そして顔がコワイ永本刑事(綿引洪=勝彦)です。

愉快な刑事さんたちは、柱の陰にササッと隠れたり、匍匐前進したりと、なんだかヒートアップぎみ。きっと、初めての誘拐事件なんでしょうかね。まあ、そのペースに乗るとバカをみるので、副院長の大林丈史は淡々と和也ちゃんの病気について説明します。それによると、和也ちゃんは血友病のため、今日の午後7時に輸血をする予定だったようですよ。「きょう!!!!」と驚愕の表情を浮かべる平幹二朗。って、あんた驚きすぎだ。いやいや、でもね、明日の午後7時までに輸血できれば大丈夫だから、と大林丈史がいうと、今度は「どうしてすぐ知らせてくれなかったんですか」と逆ギレしちゃってます。どうも、平幹二朗警部は血が熱いというのか、そそっかしいというのか。しかし、ここで院長の丹波哲郎が、ポソっと言います。「バカげてる。誘拐された子供の身代金をどうして、私が払わなくちゃならないんだ」。キリッ。平幹二朗は、いかに身代金を払う必要があるのかを「熱く」語りだしました。もう、暑苦しいくらいに。これには、さすがの丹波哲郎も、「命令か。フフ。まあいいだろう」と答えるしかありません。えーと、平幹二朗の「勝ち」ってことでいいんですかね。

と、そこに光晴の奥さんである登志子(梶芽衣子)が、シャナリシャナリと降りてきて、お手伝いの比佐子(原田美枝子)に、「比佐子さん、お食事にするわ」と言い出しましたよ。いやあ、相変わらずのクールビューティぶりです。これには、ヒートアップした平幹二朗も、少し頭が冷えたようす。リーンリーン。種村家の金ピカ・ウルトラゴージャスな電話機が鳴り始めました。せっかく落ち着いた雰囲気は壊れ、意味もなくドタバタ走り回る愉快な刑事さんたち。「種村さん。種村さんっ!!」。いや、いいから少し落ち着け。

丹波哲郎が電話を取ると、案の定、それは犯人からのもの。「まず3600万、用意しろ」と要求しています。「冗談言っちゃいかん。なぜ、私が払わなくちゃいけないんだ」と丹波哲郎が言っている横では、平幹二朗が必死に手振り身振りで払え、払えといってます。って、ジェスチャーゲームですか、これは。

お腹が空いたので、原田美枝子の作ったカレーをパクパク食べている愉快な刑事さんたち。コワイ顔の刑事さんが、「ボーイフレンドはいるの」と原田美枝子に声をかけてきましたよ。「……」、無言で立ち去った原田美枝子のかわりに、若造刑事が答えます。「永本さん、ヒドイなあ」「何が?」。いやね、事前の調査で、お手伝いの原田美枝子は、恋人に死なれたってあったじゃないですか。しかし、怖い顔の刑事さんは「フーン」といいつつ、カレーをムシャムシャ食べているのです。なんていうか、緊張感ゼロ。まあこれは伏線なんですけどね。どうも張り方がスマートじゃないです。

はい、またゴージャス電話機が鳴り始めましたよ。意味なく右往左往する愉快な刑事さんたち。悠然としていた丹波哲郎がおもむろに受話器を取ると、やっぱり犯人からの連絡です。「警察に連絡をしたようだな」と犯人、というか中島久之。お昼にガス会社の車が入ったのに、作業員たちは帰る様子もない。あれは警察だろ、とすっかりバレバレみたいです。「すまん、私が連絡した」と謝る丹波哲郎ですが、きっと内心ではすごくムッとしているに違いありません。「金は用意したか」と犯人が聞くと、横で平幹二朗が「用意した」というメモを書いて、しきりにアピールしています。さすがの丹波哲郎も空しくなったのか、投げやりに用意したと答えてます。もう好きにしてくれ。えっ、逆探知ですか。もちろん、失敗ですよ。

そうこうするうちに、夜も更けました。バイオリン協奏曲かなんかを聴きつつ、優雅に画集をめくっている梶芽衣子に、葉巻をふかしている丹波哲郎。しかし、愉快な刑事さんたちには、どうもバイオリンは苦手のようです。特におじいちゃん刑事さんは、演歌しか興味がないんでしょうね。「音楽を切っていいでしょうか」とか言い出しました。ひとのうちなのにね。無言でステレオを切る梶芽衣子。ほら、イヤーな感じの沈黙が部屋に充満してきちゃったじゃないですか。と、そこにゴージャス電話機がリーン。「子供が血友病関節を起こした」と犯人。「知っていたのか」と唖然とする丹波哲郎に、犯人は「すぐに適切な治療が必要だ」と言い捨て、電話をガチャンです。……。……。犯人は医者なんだろうか、と悩む愉快な刑事さんたち。

ピンポーン。ピンポーン。呼び鈴がなり、女が乱入してきました。これは和也ちゃんのお母さんじゃないですか。「和也を助けてくださいっ!」と叫びだす二宮さよ子。横で梶芽衣子が怖い顔をしているのに気づいているのか、いないのか、「光晴さん、あなたがお父様に頼んでみて下さい」と言い出しましたよ。「こんどこそ、お父様に負けないでください」と光晴こと大林丈史に迫ったりして、どうも穏やかではありません。そう。二宮さよ子と大林丈史は昔付き合っていたらしく、丹波哲郎が金を渡して、強引に別れさせたのでした。「あたしのお腹に和也ができたと知って、慌てて別れさせたくせにぃ」と、自ら壁に激突しつつ泣き崩れる二宮さよ子。っていうか、なんで、この映画にでてくる人はテンション高めなんだか。ま、結局、丹波哲郎がお金を「貸してあげる」ということで、話がついたみたいで、よかったですね。

その夜中。お屋敷のリビングにあるソファーで雑魚寝をしている愉快な刑事さんたち。と、若いのが、ふと目覚めると、シャムネコを抱いた梶芽衣子が部屋をスーッと出てきたじゃありませんか。そのまま、梶芽衣子は丹波哲郎の部屋に。あっはーん。もう、こうなるとしゃべられずにはいられませんよ。翌朝、おじいちゃん刑事に、その話をする若造刑事。「嫁とオヤジがぁ。どうなってんだ、このうちは」と歯磨きをしながらボヤクおじいちゃん刑事。っていうか、人間だから噂話をしたいのは分かるけど、誘拐事件の捜査で泊り込んでいる家で、その家人の噂をしている図っていうのは、いかがなものかと。分かった。この人たちは、本当は刑事じゃないんだ。大人気刑事ドラマでも、そんな話があったぞ。

さて、犯人の中島久之ですが、いくら誘拐の真っ最中だろうと日課はやめられません。あ、もちろんノゾキね。双眼鏡で向かいのマンションをじーっ。やった、女の着替えだ。オッパイ丸見えだ。ひゃっほう。しかし、相手にバレちゃいましたよ。ギクッ。

まあ、それはともあれ、電話、電話。「金を持ちやすい黒いカバンにつめろ。そして、それをすぐお手伝いの伊山比佐子に持たせるんだ」「比佐子に」「そうだ、比佐子だ。カバンを持たせたら、今日の午後4時ジャストに、高田馬場駅、西武新宿寄りの広場にある公衆電話の右端のボックスに入らせろ。もちろん、警察の張り込みは許さん」。

他の刑事に任せればいいのに、大慌てで高田馬場に散っていく、愉快な刑事さんたち。いや、普通、別の刑事がその任務にあたるだろ、なんて思ってはいけません。なぜなら、彼らは愉快な刑事さんたちだから。指示通り、高田馬場ビックボックス前にやってきた原田美枝子を、喫茶店の中から、隣の公衆電話ボックスから、はたまた通行人のふりをして見張る愉快な刑事さんたち。おっと、原田美枝子が誰かと話をしています。きっと、犯人からの指示を受けているんです。よっしゃ、後を尾けるぞぉ。

ちなみに、土地鑑のない人には、どうでもいい話ですが、高田馬場ビッグボックスは、西武新宿寄りではなく、反対側。所沢寄りにあります。自分がよく知っている場所だと、気になります。

はい、券売機にある「子供運賃表示板」の裏をまさぐっては、次々と地下鉄を乗り継いでいく原田美枝子。当然、血が熱いだけでオバカサンな平幹二朗はまったく気づく様子もありませんが、本部から応援に来ていた刑事(稲葉義男)は気づきましたよ。「点字っ」。そうです、表示板の裏には点字のテープが張ってあり、次の行動を指示していたのです。カワイイ原田美枝子と、オバカサンな平幹二朗をよそに、稲葉義男は近くにいた盲人の人を連れまわし、どうにか先回りをしようとアセルのです。

しかし、先回りをするのはムリでした。さらに、折悪しく、夕方のラッシュで地下鉄は大混雑。同じ電車に乗っている平幹二朗ですら原田美枝子を見失ってしまいそうです。見失ってしまうかも。ウガッ。見失った。原田美枝子は謎の白人女性に声をかけられ、現金の入ったカバンを渡し、その瞬間を平幹二朗は見過ごしてしまったのです。もちろん、犯人の後を追うなんて、夢のまた夢。金を渡してシクシク泣いている原田美枝子をパトカーに乗せて、平幹二朗は困り顔。で、これからどうしよう。と、そこに無線が。「モーテル"ダン"に向ってください。和也ちゃんが発見されました」。

どうにか和也ちゃんも助かり、最悪の事態は避けられました。とはいえ、オマヌケな警察の対応にマスコミは非難の嵐。ま、そりゃそうですね。それにしても、いったいどこから捜査をすればいいのやら。

はい、ここで無意味に平幹二朗のシャワーシーンが。さらに洗濯シーン。そして、バスローブ姿の平幹二朗が湯上りのビールをクイクイッと飲むシーンへと、怒濤の展開。えーと、これは誰に対するサービスカットなんだ。まあいいや。ともあれ、そこに電話が鳴りました。「遠丸です。君か……」。どうやら別れた奥さんからの電話みたいですね。ぽわわーん。ここで回想シーン。実は平幹二朗の子供は交通事故に遭い、病院をたらいまわしされた挙句、死んだのです。そのおかげで夫婦仲も悪くなり離婚。うーん、強引な態度の陰には、そんなツライ過去があったんですね。

事件は思わぬ展開に。というのも、ノゾキ魔にオッパイを覗かれたお姉さんが、腹いせに双眼鏡で覗きかえしたところ、ノゾキ魔の部屋に男の子が監禁されていたのを目撃したという有力情報が入ったのです。えーと、話にムリがありますか。そうですよねえ、ボクもそう思います。ともあれ、その部屋になだれ込む愉快な刑事さんたち。すると、なんてことでしょう。ノゾキ魔こと中島久之が、目をくわーっと見開いたまま死んでいるじゃありませんか。「青酸カリだ。杏の匂いがする」と重々しくいう平幹二朗。なんてこでしょう。ノゾキ魔が犯人の一人なのは間違いないとして、お金はどこに。そして、謎の白人女性の正体は?

愉快な刑事さんたちがウロウロしている間に、またも別の方角から事件の突破口が見えてきましたよ。それはラブホテル医師殺人事件を捜査している北原警部(藤岡弘)からもたらされたものです。独自の捜査を続けていた藤岡弘は、殺人事件の犯人が梶芽衣子ではないかと疑いました。それというのも、ラブホテルから逃げた犯人はトリカゴにシャムネコを入れていましたが、梶芽衣子の趣味もシャムネコをトリカゴに入れておくこと。ほら、なんて偶然。そのうえ、事情聴取に行ったところ、梶芽衣子は死んだシャムネコをトリカゴに入れたまま、優雅に部屋をウロウロしているんですから。さらにさらに、ネコからは青酸カリの匂いまで。これは、ちょっと怪しいんじゃないでしょうか。(すごく怪しいと思う)

えーと、梶芽衣子が犯人だと思うでしょ。これだけ怪しければ。しかし、そうならないのが、この映画のエライところ。それというのも、若造刑事がこんな証言を手に入れてきたのです。いわく、原田美枝子の死んだ恋人っていうのが、腸閉塞で死んだんだけど、病院をたらいまわしにされなければ助かったかもしれない。そして、たらいまわしにした病院は、いずれも丹波哲郎の経営する病院だった。ががーん。なんですとー。

話を聞いて、閃いた平幹二朗。っていうか、これで閃かないと、一生閃く機会はないでしょうね。比佐子の逮捕状を請求しよう。重々しく語ってみる平幹二朗です。

何の迷いもなく、原田美枝子は犯行を自白。ラブホテルで殺した医師は、たらいまわしにした病院の医師だったそうですよ。そして、いかにも梶芽衣子な変装をしたのは、丹波哲郎を困らせるためだったそうです。ついでに言うと、ノゾキ魔の中島久之は幼馴染で、犯行を手伝ってもらったところ、医大の寄付金目当てに金を独り占めしようとしたので、梶芽衣子の青酸カリを盗んで殺したと。さらに、謎の白人女性は、何も知らない点字サークルのお友達だったそうです。「ごめんなさい」と平幹二朗に謝りつつ、今はなき恋人について熱く語りだす原田美枝子。その背後には、意味不明ですが炎が燃え盛っています(完)。


いやあ、(完)を観て唖然です。なんだ、こりゃ。血友病の少年を救え、タイムリミットはあと何時間!みたいなドキドキに、地下鉄を使った現金受け渡しのトリック。そのうえ、丹波哲郎に平幹二朗。梶芽衣子に原田美枝子の豪華メンバー。

これだけの、言ってみれば、ガチガチに本命な要素を組み合わせて、どうしてこんな映画が作れるのか。ある意味、つまらなく撮るほうが難しそうなんですけど。まあ、ツッコミどころ満載すぎて、別の意味では面白いんですけどね。

ちなみに、原作、製作、そして脚本は、松竹の助監督からプロデューサーに、そして乱歩賞を取って「推理作家」に転進した小林久三。「推理作家」の小林久三。「推理」の小林。……。ど、どこが推理やねん。逆に、この人の書いた推理小説をちょっと読んでみたくなりました。ワクワク。どんなトンデモワールドが展開するんだろう。

ついでに言うと、この人原作の「皇帝のいない八月」も、最初はどんなスゴイ映画なのかとワクワクして見始めると、最後は脳死になっちゃいそうな、かなりスカタンなお話ですので、念のため。

あと、強いて、この映画の見所を挙げるとすると、平幹二朗のシャワーシーン!なワケもなく、ざっくりしたセーターでも隠しきれない原田美枝子の巨乳っぷりです。これは、ちょっと譲れません。あと、ゴージャスな電話機もステキなので、これも目に焼き付けておきたいですね。







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【映画】女医絹代先生

2009-06-22 | 邦画 さ行
【「女医絹代先生」野村浩将 1937】を観ました



おはなし
女医の絹代ちゃんは、幼馴染のお医者さんにドッキドキ。

70年以上前の作品ですが、作りは完全に「アイドル主演のラブコメ」で、今観ても、何の違和感もありません。まあ、PCやケイタイなどのガジェットがあるかないかだけの差で、人間そのものは70年前からちっとも変わっていないんだから当然ですね。

「絹代ちゃーん」と呼ぶ声に、クルっと振り返ってニッコリ笑ったのは、山岡絹代(田中絹代)です。角帽姿も凛々しい女子医専の制服を身にまとい、颯爽としていますね。

「どうしたの」と言う絹代に、同級生のメガネっ子な神田和子(東山光子)は答えます。「さっき、教わったところ、ちょっと忘れちゃったのよ」。「頭がお悪いわね、カズボウは」と和子の角帽をつつきながら、ドイツ語を訳しはじめる絹代ちゃんでした。

って、スゴイ。もうノリノリにアイドル映画になってます。

さて、和子と別れ、地元のバス停を降りた絹代ちゃん。ふと見ると、幼馴染で医大生の浅野(佐分利信)が、友人と一緒に歩いてるじゃありませんか。もちろん、絹代ちゃんは、浅野に軽く会釈をしたんですけど、浅野はドギマギしつつ無視してますよ。思わずムットした絹代ちゃんはスタスタと浅野を抜きにかかりました。抜かれた浅野もムキになって早足になり、気づけば二人は競走に。ゴキっ。おっと、靴のヒールが折れて、絹代ちゃんがよろめきましたよ。慌てて抱きかかえる浅野。ハッ。浅野に抱きかかえられているのに気づいた絹代ちゃんは、ツンとした顔をして、ヒョコヒョコと歩き去るのでした。

って、なんなの。このお約束な展開は。とても戦前の映画とは思えない。

「なんでえ、あれは。男だったぶん殴ってやるんだ」と息巻く友人の小山(大山健二)に、浅野は言います。「どうだい、癪な奴だろ。あいつだよ、例の山岡って医者の娘は」。そう、絹代ちゃんのお父さんと、浅野のお父さんは、漢方医と西洋医の差はありましたが、ライバル同士。しかし、浅野の父は、競争が祟ったのか、過労で早くに死んでしまったのでした。つまり、二人の家は、犬猿の仲なのです。まるでロミオとジュリエットのように。

絹代ちゃんの壊れてしまった靴を見て、お父さんの山岡鉄斎(坂本武)はガックリ。なにしろ、浅野の家と患者を取り合ったのも今は昔。今では漢方も廃れて、すっかり閑古鳥なのですから。しかし、理由を聞いて納得です。そうか、山岡の倅と張り合ったんだな。それで抜いたんだな。そうか、よしよし。

一方、浅野のやっぱり壊れてしまった靴を見て、お母さんのよね(吉川満子)もタメイキ。どうにか、この靴を卒業までもたせようと思ったのに。しかし、絹代ちゃんと競走したと聞いたら話は別です。「抜き返しましたよ」「そうかい、そりゃ良かったねえ」。なにしろ、お母さんにとっては、山岡の家は、夫の仇も同然。浅野は胸を張って言うのです。「あんな娘なんか、今にギューッと言わせてやるから」。

「約一年ののち?」。山岡医院には、真新しい看板がかかっています。「内科 小児科 山岡医院」。一年前までの閑古鳥がウソのような大繁盛で、まさに門前市を成すのイキオイ。それというのも、やはり美人の女医さんというのが評判になって、若い男がワンサカ押しかけているのです。もっとも、繁盛しているからといって、これじゃあね。絹代ちゃんは嘆息して、相棒の和子にグチります。「どうして、うちはこう、客種が悪いのかしら」。「どうしてって、聞く手はないでしょ。いい女よ、あんたは」。そんなこと言われても、心は晴れない絹代ちゃんです。

一方、浅野は大学を卒業したあと、外科を究めるために大学に残りました。しかし、やることといえば、来る日も来る日も切り傷や擦り傷の治療ばかりで、つまらないことおびただしいようです。もっとも、友人の小山にいたっては、実験用の動物の世話しかさせてもらえないので、まだマシかもしれませんね。

さて、仕事にウンザリな絹代ちゃん。「こんないいお天気。また一日中、働くのかなあ」「どっか、遊びに行きたいなあ。ねえ、カズボウ」。どうも、これから仕事だっていうのに、朝からやる気ゼロです。なんか、よく分かりませんが、和子が絹代ちゃんに寄りかかって歌をうたいだし、絹代ちゃんは絹代ちゃんで和子の首に手を回したり、なんだか百合っぽい映像が展開してますけど。ノリは吉屋信子の少女小説って感じでしょうか。えーと、現在なら「マリア様が見てる」みたいな。(まあ、読んだことはないですが)

絹代ちゃんの医院に、足しげく通ってくる青年(谷麗光)がいます。前田総一郎といって、お金持ちな前田家の御曹司。この総一郎は絹代ちゃんにモーションかけまくっていますが、当然、絹代ちゃんにはその気はゼロ。その代わり、和子がこの総一郎を好きだったりするという、ラブコメ王道な展開が。ほら、今日も総一郎が「ハロー」とかいって、やってきましたよ。「ねえ、カズボウ。あの人、あんたが診てあげなさいよ」と和子に振る絹代ちゃん。「困るわ」と和子はモジモジしていますが、マンザラでもなさそうです。と、そこに前田家から電話が入りました。なんだか、総一郎のお父さんの具合が悪いそうですよ。

いちゃついてくる総一郎を後ろの狭い席に押し込んで、ダットサンを颯爽を運転する絹代ちゃん。っていうか、戦前なのに自家用車ですよ。それもオープンカー。どうしてくれよう。ぼくだって、ダイハツのコペンでいいから欲しいです。ぶろろー。はい、それはともあれ、前田家のお屋敷に到着です。しかし、何事かと思ったら、お父さんは元気もいいとこ。単に絹代ちゃんの顔が見たくて、呼び出しただけのようですね。そんなデレデレのお父さんを見て、総一郎は苦い顔。思わず書生にグチるのです。「オヤジの奴、先生にラブしてるんじゃないかなあ」。「してますね、あの様子じゃ」と断言した書生は、「別な主治医を探すんですね」とアドバイスするのでした。ふーむ。別な主治医ね。

山岡医院に「午後休診」の看板がかかっています。和子をお供に、気晴らしのドライブ中の絹代ちゃん。ルームミラーに延々と、絹代ちゃんの笑顔が映し出されていますよ。おそらく、ここは当時の男性ファンへのサービスカットじゃないかと思われます。ポンッ。おや、タイヤがパンクしました。「あーあ、たまの休みに」と和子が嘆いてますが、ともあれタイヤ交換しないとね。せっせとジャッキアップして、タイヤを外してと。うんしょ。外してと。うんしょ。タイヘンです。ボルトが全然回りません。と、そこに浅野が通りがかりました。黙って絹代ちゃんからレンチを取り上げ、顔を真っ赤にしてボルトを回す浅野(モノクロなので、イメージですが)。どうにか、交換が終わったようです。汚れた手で顔をこすったものだから、顔を真っ黒にしつつ、「あまり得意になって飛ばして、怪我でもしないよう、用心なさい」と言って去っていく浅野。絹代ちゃんは「憎いなあ」と言っていますが、顔は全然憎そうじゃないのがミソってもんです。しかし、和子にからかわれると、「嫌いよ、あんな男。フン。あんな高慢ちきな浅野なんか」と強がりを言うのは忘れません。いや、ラブコメはこうじゃなくっちゃね。

将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、って言います。お坊ちゃんの総一郎は、早速、絹代ちゃんのお父さんに接触。酒を飲ませ、「ぼくは絹代さんのために、こんな大きな病院を建ててあげるつもりなんですよ」と図面を見せてきました。お父さんはすっかりその気になっちゃいました。お父さんが家に帰ってくると、偶然にも浅野のお母さんと遭遇。ほろ酔い気分の舌はよく回ります。「いよう、これはこれは、浅野の奥方。お宅のご子息はいつご開業ですかな」。「……」。何も言い返せない浅野のお母さんに、お父さんは続けます。「ハハハ。どうやら、この勝負はうちの娘に軍配が上がったようですな」。

はい、上機嫌なまま、絹代ちゃんに総一郎のことを切り出すお父さん。しかし、意外なことに絹代ちゃんは「あたし、いやあよ。お断りして」とケンもホロロです。もちろん、その時、絹代ちゃんの心には、顔を真っ黒にしてパンクを直してくれた浅野の姿が浮かんでいることは言うまでもありません。ぽわわーん。

「そりゃ、おじさん。絹代ちゃんが怒るのもムリないわ」と和子が絹代ちゃんのお父さんに説教しています。「おじさん、あんまりムリ言うと、絹代ちゃん死んじゃうわよ。飲み薬でも注射でもお手の物ですからね。死ぬくらい、ワケないわ」。そんなこと言われても、お父さんにはサッパリです。「ワケを聞かせろよ」「おじさん、怒らない。怒らないなら聞かせてあげるわ」。いいから、早く教えてプリーズ。「絹代ちゃんはね、浅野さんが大好きなのよ」「バ、バカな」「ほら怒った。いいわ、私、絹代ちゃんに同情して、同性心中しちゃうから」。そう言われてしまうと、お父さんとしては、まず娘の命第一ですよね。

さて、前田家の書生は若主人のために、新しい主治医を見つけてきました。近所に住んでいて医大出身の秀才。もう、お分かりですね。浅野です。そして、浅野と絹代ちゃんが前田家で鉢合わせをしたから、さあタイヘン。ぽわわん気分な絹代ちゃんは、ひざをまげて、かわいらしく挨拶をしたものの、浅野はムスっとしたまま。もっとも、浅野の場合、コレが素で悪意はないようなんですが、さすがの絹代ちゃんもムカッです。

機械的に診察をしていた浅野は、やがておもむろに言い出しました。「山岡さん、これを見逃してはいかんですねえ」。「だって、患者さんが訴えて下さいませんもの」という絹代ちゃんの言い訳を押しのけるように、浅野は続けます。「それはそうでしょうけど、この患者にゴルフを許してはいかんですよ」。というのも、患者である前田家のお父さんは、リュウマチをわずらっていて、ゴルフなどの運動をすると、弁膜症になる危険があるそうなのです。医者としての未熟さを思い知らされ、屈辱のまま前田家を出た絹代ちゃんは、家に帰るなりサメザメと泣き出すのでした。

「どうして、ああ急にメソメソし始めたかなあ」「決まってんじゃないの。察しが悪いなあ」。お父さんと和子は、絹代ちゃんの落ち込みを、浅野との恋愛問題と勘違いしているようです。これはタイヘン。慌てて、浅野の家に向かうお父さん。もちろん、絹代ちゃんと浅野を結婚させようというのです。しかし、浅野のお母さんは、山岡憎しで凝り固まっているうえに、お父さん自身が、つい最近、浅野のお母さんをバカにしたばかりですからね。これはうまくいくハズがありません。門前払いもいいとこです。

浅野が歩いていると、絹代ちゃんがダットサンに乗って、やってきました。思わず、その前に立ちはだかって、車を止める浅野。「先日はたいへんすまんことをしてしまいました。あの時はぼくもあがっていたもんで、つい言いたいことをズケズケと言ってしまったんですが、後で考えてみると男として、あまりいい図ではなかったと思うんです」。しかし、ボタンの掛け違いというんでしょうか。珍しく素直で優しい浅野の言葉も、絹代ちゃんには届かず、二人は結局、ケンカ別れをしてしまうのです。とりあえず、ここらへん、ラブコメの必須条件ということで。

浅野が家に帰ると、お母さんがハッスルしています。いきなり、山岡の娘をどう思うと聞かれ、「母さんだって、ぼくがあんな女、大嫌いなのをよく知っているじゃありませんか。まかり間違ったら。坊主になってお詫びしますよ」と答える浅野。っていうか、そう答えるしかないですよね。ソレ見たことか、とうれしそうな表情のお母さん。実は縁談の話があったと言い出しました。「えっ、ホントですか。まさか担ぐんじゃないでしょうね」。いや、ホント。断ったけど。「そうですかあ」。浅野は深いタメイキをついて、頭をかかえちゃうのです。

「おい、絹代のやつ、どこか気の晴れるところに連れ出してやってくれないか」とお父さんが和子に言い出しました。それもそのはず、すっかり落ち込んだ絹代は、医院を開く元気もないのです。ということで、金持ちの総一郎をお供にスキーにしゅっぱーつ。

はい、スキー場です。場所も変わって、少し元気になった絹代ちゃん。と、絹代ちゃんが滑っていると、誰かにゴチーンとぶつかってしまいました。見ると、それは浅野のお友達の小山じゃないですか。ってことは。うわっ。横には浅野もいます。浅野たちは、スキー部のOBとして、現役の合宿に付き合っていたのでした。すかさず、「ねえ、浅野さん、ご一緒に滑りません」と和子がナイスフォロー。絹代ちゃんもうるんだ目で、浅野を見つめてみますが、浅野はぶっきらぼうに「ぼくは断るよ」とシュプールを描いて滑っていってしまうのです。しゅしゅー。

夜。ヘコんだ絹代ちゃんを中心に、和子と総一郎が、盛り上がらない食事をとっていると、そこに電報が。なんと前田家のお父さんが重態だそうですよ。キラリン。和子の目が光ります。「ねえ絹代ちゃん。いいことがある。浅野さんにも来てもらいましょうよ」。そうねえ、と煮え切らない絹代ちゃんに和子は言います。「そうねじゃないわよ。そう決めた」。

気まずい雰囲気の中、みんなは東京に戻ります。戻ってみると、前田家のお父さんは、本当に重態でした。どうやら、浅野の禁止を守らず、雨の中ゴルフをやったのが命取りだったようです。二人は懸命に治療をしたものの、このままだと、今日明日がヤマでしょう。後は天にまかせ、二人は夜通し見守るだけです。「どうです、少し休んだら」「いいえ、あなたこそ」。浅野に押し切られ、別室のソファーで横になる絹代ちゃん。とはいえ、なかなか眠れるものじゃありません。眠るのをあきらめて、病人のいる部屋に戻ると、疲れが出たんでしょうか。浅野が椅子でウトウトしています。浅野にそっと毛布をかけてあげる絹代ちゃん。ハッ。目を覚ました浅野は、横に絹代ちゃんがいるのに気づきました。「ダメですねえ。言うことを聞いてくれなくちゃ」。そういって、ごく自然に、絹代ちゃんの腕を取った浅野は、絹代ちゃんをソファーに連れて行き毛布をかけてあげました。ふむ。さらに、自分のコートをそっと絹代ちゃんにかけてあげる浅野。「これなら風邪もひくまい。こんど起きてくるとコレですよ」と、ゲンコを落とすフリをする浅野に、絹代ちゃんも屈託の無い笑顔を浮かべます。「浅野さん」「何です」「いいえ、お休みなさい」。毛布をかきあげ、恥ずかしそうに顔をかくす絹代ちゃんです。って、書いてて恥ずかしくなってきた。

翌朝、病人はすっかり元気になりました。これなら、もう大丈夫でしょう。一足先に前田家を辞去した浅野を、絹代ちゃんが追ってきましたよ。思わず見つめあう二人。絹代ちゃんは思い切って言います。「浅野さん、あなた一生、私のうちとは仲直りしてくださいませんの」「仲直り?」「ダメですの」。「ぼくたちはもう、ケンカなんかしてないじゃありませんか」と言った浅野を、「ホント、ホントですの」と背が低い絹代ちゃんは、じっと見上げます。「しつこいなあ。ぼくは君が好きなんだ。あまり聞かないでくれたまえ」と言って、恥ずかしそうにスタスタと歩き去っていく浅野。思わず走って浅野を追いかける絹代ちゃん。あっ。ヒールが折れてバランスを崩した絹代ちゃんは、浅野の腕の中にスッポリです。

家に帰った浅野は、帽子も取らないままお母さんの前でウロウロしています。「どうしたのさ。うちの中じゃないか。帽子くらいお取りな。ねえ」。「ええ、それが」と浅野が帽子を取ると、なんと浅野は坊主頭に。「ぼく、エライことをしちゃったんですよ」「どうしたの」「母さんの一番嫌いな女が好きになったんです。お詫びします」。

「どうも、ぼくは初めから、こういうことになると思ってたよ」と総一郎が和子に言っています。二人はデート中のようす。総一郎は、ポケットかた図面を取り出して言います。「こういう病院、建てようよ」。

山岡のお父さんが医院の看板を架け替えています。「内科 小児科 外科 浅岡医院」。横で見守っている浅野のお母さんに「どうです」と尋ねる山岡のお父さん。「お宅の浅野の浅。うちの山岡の岡。あわせて浅岡医院」。ひとしきり笑いあった二人は、「どうです、一杯いきましょ」「けっこうですねえ」と、建物に戻っていくのでした。


どうです。このラブコメっぷり。ライバル同士のうちに生まれ、いつもケンカをしている二人の恋。恋のキューピッドになるメガネっ娘。道具立ては、お医者さんに、オープンカーにスキーですからね。なんていうか、直球ど真ん中な作りで、キャストさえ替えれば、今でも通用しそうですね。

田中絹代は、原節子や入江たか子といった美人女優に比べると、美しいというより可愛いといったタイプ。そのため、こういった役柄がとても似合います。前の二人に比べ、あきらかに背が低いというのも、この映画においては高ポイントなんじゃないかと。

一方、相手役の佐分利信も、戦後に見せた重厚な雰囲気からは想像がつかない感じです。もちろん、堅物でもっさりしているんですが、そこに面白みがあって、なかなか素晴らしかったと思います。

さて、盧溝橋事件によって、日本が日中戦争の泥沼にはまり込んだのは1937年の7月のこと。そして、この映画はそれを遡ること、2ヶ月ほど前に公開されています。そう考えると、とても感慨深いものがあります。なにしろ、「戦前」の映画というと、どこか軍国調のものを想像しますが、この映画にはカケラもそういった部分が見当たりません。というか、能天気すぎるくらい。そう考えると、一般的にいわれる「戦前」というのが、それこそ1937年から45年までのわずかな期間だったこと。そして、逆にいうと、そのわずかな期間にもかかわらず、いかに多くの影響を文化・芸術に与えたのか、そう思ってしまいます。

われわれは(ぼくだけかも知れませんが)、つい十把一からげに「戦前」とはこんなものだ、という思い込みがありますけど、つい昨日までラブコメ観て笑っていた人が、いきなり軍国主義が来ましたよー、と言われて、本当のところ、どう思ったのか知りたいです。個人的には、人間なんてそう変わるものではないと思うので、最初のうちはイケイケドンドン、気づいたら戦争に負けてたなあ、あたりじゃないかと踏んでいます。

まあ、この映画を観て、そんな感想を持つのもどうかとは、思いますけど。

ちなみに、まったくの偶然ですが、この映画を観るまえに、熊井啓監督の「サンダカン八番娼館 望郷 」を観ました。田中絹代末期の作品で、田中絹代は元娼婦のおばあさん役でした。そのおかげで、両者のイメージが混ざって、混乱すること、すること。なにしろ、年をとっても声は同じなので、ワケが分からなくなってきます。食い合わせというか、観合わせって、大事だなと思いました。









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【映画】惜春鳥

2009-04-24 | 邦画 さ行
【「惜春鳥」木下恵介 1959】を観ました



おはなし
不始末をしでかして、故郷の会津に帰ってきた青年を、暖かく出迎えた4人の幼馴染。彼らの辿る運命は……。

会津を舞台にした5人の青年の友情譚です。当然、会津なので「白虎隊」が重要なアクセントになっていることは言うまでもありません。

ぽー。汽笛を響かせ汽車が疾駆しています。車窓の外に広がる雄大な磐梯山を眺めているのは、岩垣(川津祐介)。と、「キミは康夫の友達だったね」と翳りをおびた男(佐田啓二)が声をかけてきました。「ああ、牧田くんのおじさんでしたか」と返事をする川津祐介。しかし、佐田啓二に「キミは大学に行ったんだってね」と言われて、思わず「はぁ」と目を伏せちゃいます。きっと東京で問題でも起こしたんでしょうね。もっとも、佐田啓二もなんかワケありげで、「キミ、知らないの」「康夫に会ったら聞いてごらん」とか言ってますので、こちらも問題ありそうです。

さて、会津の東山温泉にやってきた川津祐介は、早速、友人の峯村卓也(小坂一也)の実家がやっている旅館を訪ねました。大喜びの小坂一也の手を握って、「懐かしいな」と見つめる川津祐介。とりあえず一緒にお風呂に入って歌ったりして。はい、そこに川津祐介の帰郷を待ち構えていたんでしょう。友人の馬杉(山本豊三)や、牧田康夫(津川雅彦)が駆けつけてきました。風呂をがらっと開けて、「会いたかったよ」と川津祐介に抱きつく山本豊三。なんか、いきなり川津祐介の背中をさすりさすりしているのが気になるんですが。

後からやってきた手代木(石浜朗)を加え、幼馴染の5人組が勢ぞろいで、宴会開始。しかし、やってきた芸者のみどり(有馬稲子)を見て、津川雅彦はヘンな顔をしていますよ。「みどりっていうんだろ、キミは」「おじさん、帰ってきたよ」。どうやら、有馬稲子と佐田啓二の間に「何かが」あったようですね。っていうか、実は二人は駆け落ちをしたものの見つかり、みどりは連れ戻され、佐田啓二は肺結核でボロボロって、設定なんですけど。ま、それはともあれ、有馬稲子が「白虎隊の歌」をバックに剣舞を始めました。♪戦雲暗く 陽は落ちて 孤城に月の 影かなし♪ えーと、有馬稲子の剣舞がうまいのかどうかは、サッパリ分かりませんが、有馬稲子の性格を考えると、きっと猛特訓をしているでしょうから、きっとスゴイんだと思います。はい、これで宴会シーンは終わり。

翌日、飯盛山の白虎隊墓前に詣でる5人。「墓前祭の剣舞を思い出すよ」「19人か、みんな散り散りばらばらになっちゃって、どうしてるかなあ」「オレが詩吟をやるから、4人で剣舞をしてみろよ」「キチガイかと思われるぞ」「バカっ。お前はそんな気持ちで、奉納剣舞をしてきたのかっ!」。口々にそんなことを言いつつ、踊りだす4人と詩吟担当ひとり。♪少年団結す白虎の隊♪ ここで、各自剣舞のシーンと働いているシーンを交差させつつ、さりげなく(もないけど)、各人のプロフィールを紹介。

まず詩吟担当の山本豊三は、ビッコのため外に働きに出られないので、実家の会津塗りのお手伝い。津川雅彦は、母のやっているバー「サロンX」でバーテン修行。川津祐介は苦学生らしく、学帽をかぶって肉体労働。小坂一也は実家の温泉旅館で、板前修業。そして、工場労働者の石浜朗は赤旗をバックにデモの真っ最中です。

さて、シーンが変わると、「白虎隊奮戦の地」碑の前にいるみなさん。おや、川津祐介がさめざめと泣き始めました。地元の有力者、鬼塚さんの書生になって、大学に通っていたのに、そこを追い出されたというのです。「あのこと、本当なのか。女中とヘンなことになったって」と聞く石浜朗に、川津祐介ラブな山本豊三は「やめろよ」と血相を変えています。「いいんだよ、馬杉。本当だよ。大学にやってもらってる書生が、女中に手をつけたんだよ」と語る川津祐介。「オレみたいな田舎出の小僧をいじめてじめて、いじめぬきやがったんだ」「一番、癪に障ったのは、いちいちオレの会津訛りをマネしやがるんだ」。これには、他の4人も思わず同情の表情。うん、それはヒドイ。結局、川津祐介は女中を誘惑して捨てました。それがささやかな復讐だったそうです。「自分を傷つけて、相手を倒したってとこか。偉いよ、会津の男らしいよ」と津川雅彦はすっかり感心しちゃうのでした。

さて、遠方から朋(友)が来るのは楽しいことですが、それでも日常生活は進むのです。今、ちょっと問題になっているのは、蓉子(十朱幸代)のお婿さん問題。って、蓉子って、いったいダレだよ?ですね。順を追って説明しましょう。津川雅彦はお妾さん(藤間紫)の子供。お父さん(伴淳三郎)は、手広く商売を営むお金持ちですが、正妻との間には子供がいません。ということは、このままだと財産は津川雅彦のものに。到底、それに納得できない正妻は、自分の姪である十朱幸代を養子にして、そこに婿を取ろうという計画なのです。で、そのお婿さん候補が、貧乏士族の息子である石浜朗だったと。実は津川雅彦と十朱幸代はラブラブだったりするので、このままだと津川雅彦と石浜朗が対立する関係になるのは必至な状況です。

さらに、おじさんの佐田啓二が駆け落ちに失敗して、家でゴロゴロしているので、津川雅彦としては、なかなか気が休まる暇もない、っていうところでしょうか。

一方、川津祐介の方は、人のいい小坂一也や、川津祐介ラブな山本豊三に、しきりに借金を申し込んでいます。なんか最初は、かわいそうな苦学生って雰囲気だったのに、陰でニヤリと笑ったりして、なんだかアヤシイ感じですよ。このままだと、人のいい小坂一也やら山本豊三はどうなっちゃうんでしょう。しかし、そんな川津祐介の正体を見抜いたのは芸者の有馬稲子でした。「騙そうたってダメよ。あんた大学に行ってるなんて嘘だべ」「どうして」「卓也さんならごまかされっけど、芸者の目はダメよ。なんさ、この手は。甘えるようなフリをして。ほうら、人相が悪くなったじゃないか」。確かに、さっきまで甘えん坊な表情で、有馬稲子の手をさすりさすりしていた川津祐介が、いかにも憎々しげな、邪悪な表情になってますよ。まあ、しかし、有馬稲子は酸いも甘いも噛み分けた芸者なので、黙っててやるから、とっとと出て行くようにとだけ諭すのです。

有力者、鬼塚さんを仲人に、小坂一也の旅館で、石浜朗は十朱幸代とお見合い中。しかし、十朱幸代がいきなりバックレちゃいました。シラーっとした雰囲気が漂うなか、鬼塚さんに電話が入ります。なんと、東京の本宅に警察が来たというのです。かつて書生だった川津祐介が詐欺の容疑で手配されているというじゃありませんか。「わしから警察に電話をしてもいいんだが」という鬼塚さんですが、とりあえずは石浜朗に下駄を預けてくれました。友達同士で、うまくヤレってことみたいです。

早速、小坂一也と相談をする石浜朗。どうやら、逃がしてやることに決めたようです。しかし、野生の勘で危険を察知した川津祐介は、逃亡準備中。行きがけの駄賃とばかりに、小坂一也の腕時計をポケットに入れたりして。そこに、小坂一也と石浜朗がやってきました。「卓ちゃん、世話になったけど、今夜の汽車で帰るよ」と言う川津祐介の嘘を信じているフリをして、汽車の時間を調べる小坂一也ですが、アレ、アレレ、腕時計がないぞ。「何か無くなったのか」という石浜朗の固い声音に、川津祐介は知らんぷり。と、いきなり小坂一也がメソメソと泣き始めましたよ。「岩垣、ひどすぎるよ」。「そっか、知ってて逃がしてくれるのか、アリガト」と腕時計をポケットから出す川津祐介を、しかし小坂一也は憎みきれず、クルマを手配してあげちゃうのです。

駅に向かって去っていった川津祐介。後に残された石浜朗は、拳をプルプルさせていましたが、意を決したように警察に電話。もしもし、詐欺の犯人が駅に向かいました。それを見た小坂一也は「バカっ。お前は友達を」と受話器のフックを連打です。「そうだけど、この時計を見たら……。オヤジさんの形見だろ」と弁解する石浜朗を相手にせず、小坂一也は津川雅彦のところに電話しました。カクカクシカジカ。ここからじゃ間に合わないけど、お前のところからなら、駅に行った川津祐介を呼び止めることができるはず。自首を勧めてくれー。ラジャー。津川雅彦と、遊びに来ていた山本豊三が飛び出します。「馬杉、岩垣が詐欺をしたんだって。捕まる前に自首させるんだ。先行くぞ」とダッシュする津川雅彦。山本豊三も、不自由な足を引きずり、引きずり商店街を走ります。ちなみに、ここのシーン、「惜春鳥」のテーマ曲が叙情的に盛り上がり、木下監督の「陸軍」で、田中絹代が群集をかき分けて走る名シーンを思い出しちゃいました。

ま、それはともかく、駅についた二人。しかし、時すでに遅し、川津祐介は警察に逮捕され連行されていくところです。思わず、悲しむ山本豊三の肩を優しく抱く津川雅彦でした。

翌日、城跡でタソガれている津川雅彦たち。「手代木は蓉子の養子(婿?)になるんだよ」と告白する津川雅彦に、「あいつはそういうヤツだ」と山本豊三は吐き捨てるように言います。「いや、俺にはあいつの気持ちが分かるような気がするんだ。さみしいけど」と答えた津川雅彦は、寂しそうに嘆息して言います。「そういうもんさ。友情なんて、消えてゆく春の雲みたいなもんだよ」。

小坂一也が旅館に戻ると、芸者の有馬稲子が消えたと大騒ぎ。どうやら、佐田啓二も消えたようなので、二人は再び駆け落ちでもしたんでしょうか。

一方、ラブラブだった川津祐介を警察に逮捕された山本豊三は、怒りのあまり、石浜朗の勤務先に押しかけました。なんで、警察に売った。友達じゃないか。しかし、石浜朗は冷たく言うのです。「なんでもいいよ。友達だの友情だの、何甘ったれたこと言ってんだ。あの赤旗を見ろよ。戦って生きていくしかないんだ」。うん。確かに、ストライキ中の工場には赤旗が翩翻とひるがえっていますね。そんな石浜朗に山本豊三は決闘を申し込みます。「明日は日曜だ。戸ノ口原で待ってるぞ」。

いきなり、裏磐梯の中ノ沢では、佐田啓二の詩吟で、有馬稲子が剣舞中。月が冴え冴えと、そんな二人を照らしています。えーと、なんですか。

温泉で、裸になって見つめ合っている津川雅彦と小坂一也。なんか、佐田啓二と有馬稲子のことを話しています。と、そこに「ちょっと話があるんだ」と、石浜朗が訪ねてきました。十朱幸代との縁談に心が動いていると言う石浜朗。「金に何不自由ない牧田と卓ちゃんが、それを責めるなら責めてもいいよ。もう一つ、ゆんべ、蓉子さんに会って、ワガママなカワイイ、とても貧乏人の我々じゃ付き合うことのできなかった人に会って、牧田には悪いけど、俺もこんな人と一緒になれるんならって思った。それだけだよ」。津川雅彦は言います。「それでいいよ、それで」。間髪入れずに「そうか、ありがとう」と言う石浜朗。「じゃ、馬杉に会いにいってくるよ」、12時に戸ノ口原で決闘の約束をしているんだ、じゃあねえ。

去っていった石浜朗を見送りもせず、マッタリしている津川雅彦と小坂一也。と、そこに電話が入りました。「えっ、分かったの」うんうん。「卓ちゃん。おじさん、みどりと心中しちゃったよ。裏磐梯だよ。中ノ沢だって。雪の中で抱き合って」。いきなり服を着替えだす津川雅彦。「卓ちゃん。戸ノ口原行こう。俺、気が変わったんだ。手代木に会って、取り消すよ」「何を」「承知できなくなったんだ。俺もおじさんみたいに、恋に生きたくなった。蓉子が好きだ。むざむざ、手代木にやってたまるもんか」。

びゅーん。車で急ぐ津川雅彦たち。やってます。やってます。山本豊三と石浜朗が決闘中です。とは言え、ノタノタ木刀で殴りかかる山本豊三を、石浜朗が華麗なるステップでかわしているようですが。「手代木、俺が相手になるぞ」と駆け寄る津川雅彦。「よし、久しぶりだ。やろう」と石浜朗も本気モード。そんな二人を見て、ううっと泣き出す山本豊三。小坂一也はいつものように「牧田、よせよう」と宥め役に。なんか、意味不明ですが、津川雅彦もううっと泣き始めました。よく分かりませんが、みんなは肩を組んで車に乗り込みます。ぶろろー。車は去っていきます。


まるでミルフィーユのように細かくシーンが積み上げられ、叙情的な映画に仕上がっています。白虎隊のゆかりの地や歌を多用して、無垢な青年の心を象徴させたのも、素晴らしい。ヘタをすれば、ただの観光地とのタイアップ映画みたいになってしまうところですが、木下監督の手腕で、宣伝くささは皆無です。

しかし、困っちゃうのは、木下監督の趣味丸出しなところ。というか、はっきり言ってしまうと、妙にホモっぽいんですよ。何かと言うと、手を握り合い、肩を抱く。さらに、無意味なお風呂シーンとかがあったりして、友情の映画なのか、(禁断の)恋愛映画なのか、観ていて分かんなくなっちゃいました。ほとんど「モーリス」みたいなノリです。

もちろん、松竹の男優は、(あくまで実際の人物像じゃなくて役のイメージとして)、美形だがデクの坊ばっかりなので、こういった耽美的な映画には向いているのは事実なんですけどね。

ゲホゲホとかいってるだけの、佐田啓二の憂いを帯びたハンサムっぷり。津川雅彦のプリンスっぷり。さらに山本豊三や石浜朗の美しさは、美形にうるさい女の人も文句はないんじゃないかと思いました。

ちなみに、大島渚がデビュー作の「愛と希望の街」を撮るまえに手がけた、松竹期待の新人を紹介する5〜6分の短編映画「明日の太陽」というものがあります。そこでは、ナビゲーター役の十朱幸代を初め、川津祐介、山本豊三、小坂一也など、「惜春鳥」の出演者が勢ぞろい(他には桑野みゆきや、杉浦直樹なんかも)。

その短編で、最後に飛行機のタラップからジャジャーンと降りてきて、「日本の恋人、スクリーンのプリンス」とか紹介されていたのは、津川雅彦でした。やっぱり、これだけ期待されたプリンスが、松竹に移籍して第一作目ですからね。まして、美少年好きの木下監督がメガホンを取るとなれば、「惜春鳥」がホモっぽくなるのも仕方ないのかもしれません。

なんかホモホモ言ってますけど、映画としてデキがいいのは間違いありませんから、誤解なきよう。







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【映画】地獄花

2009-04-03 | 邦画 さ行
【「地獄花」伊藤大輔 1957】を観ました



おはなし
平安末期。琵琶湖に程近い山の中には、盗賊が跋扈していて……。

舞台は平安時代。主演はグランプリ女優の京マチ子とくれば、どうしたって「羅生門」「地獄門」「雨月物語」あたりと比較したくなります。しかし、その点ではちょっと残念なデキと言わざるをえません。もっとも、期待の大きさゆえか、お金はすごくかかっている感じです。


霧のなか、馬にのった野伏りの一団が進んでいきます。「おーい、どうだぁ」「見つかったかぁ」「この霧でとんと見通しがきかないんだが、いまだに姿を見せないぞぉ」。ここは、琵琶湖の北側で、各種野伏り、山賊、さらには湖賊が跳梁跋扈するデンジャラスゾーン。そして、声を交し合っているのは、袴野の麿(香川良介)を首領とする野伏りの一団(党)です。狙っているのは、輿を中心にした貴族の行列。これを襲えば女はもちろん、お宝ザクザクでしょう。

「ミヤノマキ(字不明)に回れば峡(かい)の御坊の手に落ちるぞ。せっかくここまで獲物を追い込んで、むざむざと馬介の党に盗られてたまるか」

さあ、ライバルに盗られる前に、貴族の行列に追いつかなくては。歩みを急ぐ袴野の党でした。

一方、こちらは貴族の行列。「いよいよ九十九坂にかかるぞ。これさえ越せば本街道だから、もう野伏りどもに狙われる心配はない。今、一息だぞ。がんばれ」。しかし、危地を脱したという一瞬の油断があったのでしょうか。キャー。女官の悲鳴が聞こえたかと思うと、向こうからワラワラと僧兵の一団が襲ってきたのです。これこそ、馬介率いる峡の御坊の一団。一歩遅れて、袴野の党も行列に襲い掛かりました。いくら貴族が護衛の侍を伴っていても、二つの野伏りに、同時に襲い掛かられてはひとたまりもありません。男たちは散々に討ち取られ、残ったのは女官たちと輿に乗った姫だけです。

山の掟で、緩やかな協力関係があるとはいえ、袴野の党と峡の御坊はしょせんライバルですから、戦利品を巡って一触即発です。場所的には、ぎりぎり袴野の党の縄張り。しかし、先に襲ったのは峡の御坊。このままでは、血で血を洗う争いに……なるかと思いきや、峡の御坊の馬介(山村聡)はあっさりと引きました。「ただし、麿どのにご不要のもの。一品だけいただいて参る」。「なに、不要の品」といぶかしそうな表情を見せる麿。「さよう。それなる輿の中のにょしょう、一人だけ我ら申し受ける」。ふむ。悪い取引ではありません。よし、その話乗った。

ひめー。オイオイ泣いている女官たちから引き離され、輿は僧兵たちの手によって運ばれていきます。と、輿の中の二ノ姫(市川和子)が「お願いが。聞いてたもれ」と言い出しました。それを聞きつけたのが、袴野の党のステの姫(京マチ子)です。女だてらに刀を佩き、馬に乗ったステは、立派な野伏りにしか見えません。それもそのはず、ステは袴野の麿の養女でもあり、女房でもあるのですから。しかし、そんな男勝りのステも、二ノ姫の必死な呼びかけには、少し心動かされるものがあったようです。

「何の御用」「この数珠の珠を。これをあの女たちに分けてやってはたもらんか。生きてはもう二度と逢えないだろうが、せめては死んでまた、あの世で巡りあって、みんなでこの珠を一つに綴りながら……」。ううっ、と泣き伏す二ノ姫。これには、ステもすっかり同情してしまいました。主従の強い結びつき。そして、自分自身が盗賊の養女にされ、さらにムリヤリに女にされた境遇を思ったのかも知れません。「おーい、馬介どのー」と馬を飛ばすステ。「馬介どの、お願い。あの姫をステに譲ってくだされ。助けてあげたい」。

「姫と引き換えに何をよこされるの」と問う馬介に、ステは答えます。「今、急に思いつけないが、後でそなたの得心のいくものをなんなりと」。しばし、思案した馬介は言います。「よし、確かに聞いた」。

「ステどの。形見にもお礼にも、ただこれ一つしかお贈りできるものとてございません。もしも、何かの場合、都に御用がおありでしたら。いつなんなりと、この品を証に」と虫垂衣を差し出す二ノ姫。ちなみに虫垂衣って、笠にベールみたいのがついたやつです。さらに、姫は岩清水を手ですくってステに差し出しましたよ。えーと、よく分からないけど飲めってことですかね。ゴクゴク。そのまま、固まってる姫。えーと、どうしろと。あっ、そうか。姫の手を握って、残った岩清水を飲ませてあげるステ。ゴクゴク。おっ、いきなり姫が和歌を詠みはじめました。

「むすぶ手の 雫に濁る 山の井の あかでも人に 別れぬるかな」

テロップも出ますが、ハッキリ言って、達筆すぎて読めませーん。調べてみたところ、この歌は古今和歌集にある紀貫之の歌で、まあ「お別れが寂しい」くらいの意味だそうです。って、そんなの知るかぁ。劇中のステ、そしておそらく、この映画を観たほとんどの人をキョトンとさせながら、去っていく二ノ姫。さすが平安時代です。

さて、その頃、袴野の麿たちは、国司の館を襲う計画を検討中。これは、旅の貴族を襲うのとは違って、ビッグプロジェクトですよ。なにしろ警備の侍もたくさんいるでしょうし。と、そこにステが帰ってきました。姫から貰った虫直垂をかぶって、いきなり踊りだすステというか京マチ子。その情熱ダンスに、麿はメロメロです。「これは一段と」「一段とどう?」「一段とカワイイ」。もう、部下たちは、やってられねえよな気分です。

さあ、しゅつげきー。意気揚々と国司の館に向かう袴野の党の面々。しかし、その留守を狙って馬介がやってきました。「何の御用で」と尋ねるステに、「はて、都の姫と引き換えに、なんなりと得心のいくものをと約束した。それをいただきに」。馬介の目が妖しいですよ。もしかして、もしかして。あれー。刀で抵抗するステですが、馬介は弓の先で、ステの帯をクイッと引っ掛けました。とりゃっ。あれれー、クルクル。帯が解けてクルクル回るステ。なんてこと、下着になっちゃいました。スタコラ、スタコラ。ステは逃げ出します。そのまま、山間を流れる急流にドボン。おっと馬介も追ってきます。ドボン。

国司の館は手ごわかった。ズタボロになって帰ってきた袴野の党の面々。おやっ、川原でうめいている男がいますよ。「誰だ」「峡の馬介だ」「死に掛けてる。舌を噛み切られてる」。ワイワイガヤガヤ。「おっ、ステの姫じゃないか」。こちらを向いたステは放心状態で、口にはダラリと血をつけています。

それからというもの、麿のステに対する愛情は倍増です。自分に操を立てて、馬介の舌を噛み千切ってまで抵抗したステが、かわいくてならないのです。その上、ステが懐妊したことを知り、愛メーターは青天井にヒートアップ。オレの子供ができる、ひゃっほー。しかし、妊娠の月数を数えてみたら。ん。んん。んんん。えーと妊娠したのは、国司の館を襲った時だよな。でも、あの時、オレはズタボロでステを抱いてないぞ。「相手はいぬでか、小熊か、名彦か、まさかガキの信夫……野伏の勝か、相手は誰だ」「相手は死んだ。峡の馬介」。ガガーン。「ぬしはあの時、わしへの操を立て通して、あいつの舌を噛み切ったのではなかったのか」。可愛さ余って憎さ百倍とはこのことでしょうか。ステをぐるぐる巻きに縛り上げ、裸馬に乗せる麿。「寿命があったら、勝手に助かれ。無ければそれまで。地獄へなり、極楽なり、好きなとこへ行け」、とりゃっ。尻を蹴られてヒヒーンと走り出す馬。ここで伊福部昭の「ラドン追撃せよ」の音楽が高まります。っていうか、伊福部昭の場合メロディラインの使いまわしがムチャクチャ多いので、こういう愉快な偶然が起きちゃうんですね。別に京マチ子がラドンってワケじゃなくて。

暴れ馬に運ばれたステを助けたのは野伏の勝(鶴田浩二)。この男、麿の台詞にもチラリと出てきたように、一応は袴野の党の一員ですが、その実は一匹狼。腕が立ち、軍略をわきまえ、その上ハンサムという三拍子そろった勝が、どうして袴野の党にいるのか。それは誰も知りません。もしかしたら都で、名のある侍ででもあったのでしょうか。

それはともあれ、勝にかくまわれ、洞窟で暮らすことになったステ。無事に男の子を産んだそうです。もっとも、いくら追放されたとはいえ、同じ山の中に暮らしていれば、なんとなく動向は分かるもの。袴野の党の子分たちは、口々に噂します。「姫は子供を産んでから、びっくりするほど色気が出てきてよ、ぼってりと女らしゅう、それこそ見る目もとろけるばかりだとよ」「麿殿は知ってるのかなあ」「知ってる。かといって、ああして、いったん放り出したものをよう」。

はい、子供をあやしているステがいます。おおっ。確かに色っぽくなっている。というか、前半は褐色メイクで、ここからは美白メイクってだけですけど。そこに、麿がやってきましたよ。「入らないで」というステに、ヒッヒッヒと下卑た笑いを浮かべながら迫ってきます。言うことを聞け、聞かないと子供を殺しちゃうぞ。ちくしょー。子供を抱いて逃げ出すステ。ああ、勝が帰ってきました。「あっ、野伏。麿がこの子を。ステが言うことを聞かないから、この子を殺すと」。「なにっ、子供を。よしっ」、うなづくや、勝はお説教を開始しました。やっぱり、前職は侍ででもあったんでしょう。理路整然とまくしたててるのです。「麿、もとより正道でない野伏り、切り取りの世界にも自ずから道をいうものがあるぞ。人間の道をいうものが」。しかし、これで恐れ入るような人間が野伏りの首領になれるでしょうか、いいや、なれません。「ほざいたなあ」。

はい、戦いが始まりました。それはもう延々と。やっぱり、鶴田浩二にだって見せ場が必要ですからね。……。……。それにしても長いな。あ、勝が麿の杖を叩き落しました。「麿、杖のない片輪を相手にするわけにはいかん。待っていてやるぞ」。覚えてろー。逃げていく麿。さあ、この隙にステと子供を逃がしてしまいましょう。

さ、都に逃げるんだ。そして、二度と山に来るんじゃない。「都へ」といぶかしげな表情をするステ。「ああ、そう。藤原の二ノ姫さまを頼ってか」。そうです。姫からは、何か困ったことがあったら、虫垂衣を証に都に来るように言われていたじゃありませんか。でも、勝、あなたは。オレはここで追っ手を食い止める。さあ行くんだ。そう言われてもねえ。今まで、いっさいステに手を出そうとせずに、面倒だけをみてくれた勝の真情は、ステも理解しているつもりです。唇を突き出すステ。そこに勝の唇が近づきます。あと、5センチ。あと1センチ。あと5ミリ。と、勝は体を翻しました。「命さえあったら。な」。

やっぱり、ここでもスペクタキュラーなシーンが展開。子供を抱いて逃げるステ。カッコイイ勝。まあ、擬音でいうと、ズドドーンで、バッキューンな展開とでも言えばいいんでしょうか。全然、意味が分かりませんが。

さあ、追っ手を逃れて、琵琶湖に漕ぎ出した勝とステと赤ん坊。スローなテンポの「ゴジラのテーマ(にソックリな曲)」が流れ、否が応でも緊張感が高まってきましたよ。「勝どの。あれは追っ手の船では」。確かに、ワラワラと船が近づいてきます。どうやら、袴野の麿は、湖賊にわたりをつけて、二人を追撃してきたもよう。もはや、これまでか。

小舟をみっしりと取り囲んだ、湖賊の軍船。舳先には麿が得意げに立っていますよ。「罪は一人、死ぬのは一人でいいはずだ。麿どの、麿どの、男の話は男でつけよう。女子供は知ったことか」と言ってみる勝。コクッ。麿がうなずいています。結構、イイ人かもしれません。「かたじけない」と、石を抱きかかえて琵琶湖に飛び込む勝。ドボン。おおーっ、と取り囲んだ湖賊たちがどよめいています。みんな、結構、イイ人かも。

そんな様子をみていたステは、そっと赤ん坊を小舟において、ドボン。おおーっ。二人が消えた波紋もすぐに消え、琵琶湖は何も飲み込まなかったかのように、静まりかえっています。それをウルウルした目で見つめている麿。時間が流れていきます。……。……。「おーい、助けろー」と麿が叫びました。待ってましたとばかりに、湖に飛び込んでいく湖賊のみなさんです。

「野伏よ、頼んだぞー。末始終、二人を守ってやってくれよー。わしの娘の産んだ、わしの孫だ。人間らしゅう、立派な人間に育てあげてくれよ。よいか、二度と再び、山には戻るでないぞ。ステ、分かってくれたなー」。麿や湖賊のみなさんは去っていきます。それを見送っている勝とステ。いつまでもいつまでも、二人は船に手を振って、湖畔の道を歩いていくのでした。


まあ、「羅生門」「地獄門」「雨月物語」と比べたらいけませんね。確かに船が集まるシーンを始めとして、スゴク金がかかってるなあと思わせますが、逆にいうとそれだけ。しかし、ぼくが思うに、この映画の価値はそこにはありません。

伊藤大輔監督の前作は「いとはん物語」。これは、顔はちょっと不細工ですが、心のきれいないとはん(京マチ子)が、ハンサムな番頭(鶴田浩二)を好きになるものの、番頭に恋人がいることを知って、身を引くお話です。そんないとはんが夢想したお話だと、この映画を考えてみるとどうでしょう。大好きな鶴田浩二と繰り広げる冒険、そして愛。いかにも、オトナシイいとはんが、白昼夢に描きそうな話じゃありませんか。

もちろん、実際のところはグランプリ狙いとか、大人の事情にあふれているんでしょう。だけど、伊藤監督が、「京クン、こんどは鶴田クンとの恋愛を成就させてあげるよ」と笑っているような、そんな気がする作品でした。

あ、京マチ子ですか。もちろん、いつものとおり、全身全霊を入れ込んだ演技で圧倒されますよ。大物になっても、手を抜く姿勢がいっさい無いところが、素晴らしいと思います。まあ、たまに「そこまでやらなくても」と思いますが。


(野生児、京マチ子)


(浦島太郎かと思った)


(美白系、京マチ子)
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【映画】セクシー地帯

2009-03-09 | 邦画 さ行
【「セクシー地帯」石井輝男 1961】を観ました



おはなし
普通のサラリーマン吉岡(吉田輝雄)と女スリ(三原葉子)は、コールガール組織の内実を探ったことから……。

地帯(ライン)シリーズの一本です。サブタイトルには「call girl sexy line」とあるとおり、コールガール組織を巡る殺人のお話ですが、別段セクシーすぎることもなく、フランス映画みたいな雰囲気のある映画です。

銀座にある服部の時計塔(銀座和光)が5時半を指しています。そのまま画面が下にさがると、銀座の雑踏の中を走っているひとりの女スリ・まゆみ(三原葉子)が。たまたま歩いていた東洋貿易のサラリーマン・吉岡(吉田輝雄)はまゆみに腕をつかまれ、グイグイ。「キミ、君はいったい誰だい」「あなたすごいハンサムね。じゃあまた今度、一緒に遊ぼうね。バイバーイ」。よく分からない展開に唖然としている吉岡。しかし、そこに刑事たちがドヤドヤと走ってきて吉岡は捕まってしまったのです。えーと、あれっ。なんか、懐には誰のものとも知れないお財布が入っているし。その上、部長から預かった大事な書類がすられてるぅ。俺じゃない。俺だって被害者だよう。そんな叫びも空しく、吉岡はスリの一味に間違われて逮捕されてしまうのでした。

時計塔がお昼の12時を指しています。ここ東洋貿易では、スリに疑われて捕まってしまった吉岡の噂でもちきり。「迎えに行くんでしょ。吉岡さんのこと」と同僚にからかわれているのは、タイピストの玲子(三条魔子)。どうやら、吉岡と玲子は周りも公認のカップルのようですね。しかし玲子は「あら、そのことなら課長さんが貰い下げに行ったはずでしょ」と、急いでいる様子でお昼休みの銀座に飛び出していくのでした。

それもそのはず、玲子はお昼休みを利用して、大阪のパトロンと密会していたのです。一方、散々な目にあった吉岡は、出社してさらにショッキングな事態に。屋上に呼び出された吉岡は、お使いを頼まれた森川部長から、大阪支社への転勤を命じられちゃいました。ガーン。やっぱり書類を盗まれたからですか。「出発は明後日、月曜日」。ガガーン。7時の第一こだまの切符も用意しといたから。ガガガーーン。放心した表情で、銀座の町並みに見つめる吉岡の前には、時計塔が一時を指しています。

時計塔が夕方の5時半を指しています。こっそり待ち合わせた吉岡と玲子は、そのままボート乗り場に。気が重いけど、言っておかなくちゃね。えーと、大阪に左遷されることになりました。ほら、書類無くしたりしちゃったし。しかし、玲子はこともなげに言うのです。「頼みに行けばいいのよ」「何を?」「大阪行きはイヤだって」。いや、そんな簡単にはいかないんじゃないんでしょうか。しかし、「あたしが保障してあげるわよ」と妙に自信ありげな玲子の気迫に押された吉岡は「分かったよ。じゃ、行ってくる」と重い腰をあげるのです。イヤだなあ。

さて、まゆみが銀座のショーウインドーを見つめていると、誰やら肩をポンポンと叩く男がいますよ。パッと振り返ると、そこにいたのは刑事の須藤(細川俊夫)じゃありませんか。どうやら、昨日のスリ事件を調べているようです。もちろん、証拠があれば逮捕するはずですし、こうやって探りを入れてくるってことは、まだまだ大丈夫ね。ということで、須藤刑事の警察手帳をスリ取って、からかってみたりするまゆみです。

はい、玲子は森川部長に会って脅迫中です。吉岡さんの転勤を取り消さないと、二人の関係をバラスわよ。ほほう、これだったんですね、玲子の自信の源は。しかし、部長も負けてはいません。「うん、ぼくが肯定すればね。だが、ぼくが否定して、君が普通のタイピストじゃなく、会社がある組織から雇っている接待用の特殊の女性だと発表したら、第三者がどっちの言うことを信用するかな」。えーと、説明くさい台詞ありがとうございました。っていうか、ええっ、何ですって。そんな秘密がっ。

まあ、発表したら浮気は否定できたとしても、部長だって会社の秘密をバラしたんですから馘。玲子だってマズイことに。しかも、事はたかだか平社員の転勤問題ですからね。ここで、こだわるのはお互いに損ってもんじゃないでしょうか。えーと。えーと。やめとく。うん、やめとこ。よかった、転勤話はウヤムヤになりそうです。

そんなことが起きているとは知らずに、部長の高級アパートに行ってみたりウロウロしている吉岡。しかし玲子は行動力抜群です。自らが所属しているクロッキークラブに乗り込んで、辞めたいと言い出しましたよ。ここは、名前のとおり、女性の裸体をクロッキー(速写。スケッチみたいなもん)するクラブですが、それは表向きの姿。実は、スケベなおじさんたちが、写生しつつ女の子を品定めして、ムフフなことを楽しむ売春組織なのでした。もちろん、それだけではありません。「じゃ、どうしても辞めさせないと言ったら」というボスに、言い返した玲子の言葉を聞いてみましょう。
「警視庁保安課へ無記名で当初一本出せば解決がつくでしょ。一流商社へ特殊な接待婦を提供する秘密組織、ビザール・クロッキークラブ。電話一本で、いつでも、何人でも素晴らしい美女がお相手します……なんて書いてね」。あっ、ボスがニヤリと笑っていますよ。これは、マズイ兆候かも。

やっぱり、そんなことが起きているとは知らずにウロウロしている吉岡。玲子のアパートに行ってみたところ、玲子が不在だったので、またも部長の高級アパートに逆戻りです。しかし、アパートのフロント女性が聞いているラジオが聞こえてきてビックリ仰天。なに、玲子が殺されたって。容疑者はその直前に、玲子の部屋の前でウロウロしていた男だって。さらに、森川部長が警察に出頭して、吉岡が犯人だと言っているって。えーと、吉岡って。……。うわーん、オレじゃん。

とりあえず、スタコラとその場を逃げ出す吉岡。と、逃げていたところまゆみに鉢合わせです。「君だな。君のためにぼくは」と腕をつかむ吉岡。「手、離してよ。みっともないじゃない。逃げないから大丈夫。ちょうどいいわ、自家用車で行きましょう。ヘーイ」。ヘーイじゃないよ、まったく。って言うか、呼び止めたのはパトカーじゃないですか。やっぱり、スタコラとその場を逃げ出す吉岡でした。

銀座の裏路地を、追いつ追われつする二人。「待って。鬼ごっこはもうたくさん」と言うまゆみに、立ち止まる吉岡。よし、警察はいないよな。えーと、盗んだもの返してくれよ。いいわ、でも二つだけ、条件が。とりあえず、ここじゃなんだから、どこかお店に入りましょ。ということで、二人は「バーばっかす」のカウンターに座るのです。

「じゃ、質問が二つ。あんた、あたしがポリを呼んだとき、なぜ逃げ出したの」「……」。まあ、答えにくい質問ですね。じゃあ、ということでスリ取った封筒から紙片を取り出すまゆみ。「なんなの、こんなもの大切がっているワケは」。えーと、真ん中にBの文字が大きくうかび、下にはクロッキー・クラブとNo18って書いてありますね。会員証でしょうか。「こんなものだったの」と逆に唖然とする吉岡。しかし、その会員証を見たバーテンが、いきなり態度を変えて「あのう、場所と時間をどうぞ」と慇懃に尋ねてきましたよ。こ、これは。

「サンライズホテル6号室。10時キッカリにして」「かしこまりました」。まゆみとバーテンの意味ありげなやりとりに、吉岡はワケが分かりません。「なんの真似だい、いったい」「うーん、分かんない。でも面白そうじゃない」。えーと、テキトーに言ってみただけみたいですね。「あたしのね、一番好きなのはスリル。それからハンサムな男の子」「ぼくのことかい」。なんか、ずっとボケーっとしているのに、ここだけはすばやいリアクションの吉岡がおかしいです。「うん、今んとこはね。じゃ、スリルの方、一緒にやってみようか」。れっつごー。

時計塔が10時を指しました。ノコノコやってきたコールガールを脅す二人。「さ、怪我をしないうちに、素直に答えなさい」。しかしコールガールは、クロッキークラブが売春組織であることは認めたものの、ボスの名前も知らないようです。ただ、そのコールガールは明日の朝、別のお客さんと会うようですから、そっち方面から手がかりがつかめるかもしれませんね。

「あーあ、君とこんな道草食ってる時じゃないんだ、ぼくは」とぼやいている吉岡は、自分が置かれている状況を包み隠さずにまゆみに告白しました。まゆみは「森川部長がクサイわね」とひとこと。ショボーン。吉岡はヘコんでいます。「元気お出しよ、キミ。明後日の7時の第一こだまに乗るはずだったのね。あたし、この事件解決して、きっとその汽車に乗せてあげる」。「だからさ、キミはさっきの"ばっかす"っていう酒場を当たってみたら」「それでキミは」「うん、明日の朝。うふっ、東京駅に行って、あの女の客に当たってみるわ」。

翌朝、まゆみは目印のウインキーちゃん(ダッコちゃん)を腕につけて東京駅に。そのまま、客と旅館にしけこむものの手がかりはまったく得られません。もっとも、スケベな客がお風呂に入っているあいだに、お財布を失敬したので、まったくムダではなかったようですけど。

一方、吉岡は"ばっかす"に。なんか手がかりはないかなあ。うーん。おやっ。店先に小さく「B」のバッチが張ってるじゃありませんか。こ、これは。銀座の裏路地を彷徨い、他にバッチをつけている店がないか探す吉岡。あ、ありました。ル・フランセスという喫茶店にもバッチがありましたよ。ゴリゴリ。ゴリゴリ。コッソリと鍵でバッチをはがし、店内で様子を伺う吉岡。案の定、バッチがないことに気づいたマネージャーがウエイトレス(池内淳子)になにやら話をしています。さりげなく別のウエイトレスから、そのウエイトレスが秋子という名前だと聞き出した吉岡は、早速秋子の尾行を開始。きっと、秋子はクロッキークラブに行って、新しいバッチを貰ってくるに違いないのだあ。……。……。見失ってしまいました。……。

手がかりをつかむのに失敗したまゆみは、銀座の場外馬券売り場に。おや、札束でポケットをパンパンにしている男がいますよ。むずむず。職業意識がうずきます。むずむず。むずむず。よし、いただいちゃえ。そぉーっとね。グィっ。うわっ、腕をねじ上げられちゃいました。それもそのはず、この男はただの男じゃありません。なんとクロッキークラブのボスだったのです。そのままクロッキークラブに連行されてしまうまゆみ。でも、これってラッキーなんじゃ。ボスは、まゆみをコールガールにしようとしているらしいので、ここは調子を合わせておいた方が良さそうですね。

「体、良さそうだな」「うっふーん。バスト99、ウエスト64、ヒップ99よ」。「外人好みだね」「国際的水準よ」「なるほど、お前さん、野郎泣かせのオッパイしてるね」。じゃあ味見、味見と手を出そうとするボスをバコーンと殴り飛ばして、「ダメっ。商品に手をつけるなんて、チンピラのやることよ」と啖呵をきるまゆみでした。しかし、このままじゃ体を売らなければいけなくなっちゃう。どうにか脱出しなくちゃ。しかし、チンピラががっちり見張っていて、とても逃げられそうにありません。困ったわ……。そうだ。画用紙に「新橋ビル四階のクロッキークラブにカンキンされています。これを拾った方は警察に知らせてください 小田まゆみ」と書いて、紙ヒコーキにして窓から飛ばすまゆみ。どうか、うまくいきますように。スーッ。紙ヒコーキは、屑屋のリヤカーの上にポトッ。リヤカーに乗っていた子供が、うれしそうに紙ヒコーキを見ています。飛ばすまねなんかしちゃったりして。おいおい。ダメです。紙を開いてみようという気はゼロの模様。

さて、秋子の尾行に失敗した吉岡は、しかたなく喫茶店を張っています。おや、秋子が帰ってきましたよ。入れ替わるように店の外に出てきて、クロッキークラブのバッチを取り付けているマネージャー。うわーん。やっぱり、秋子はクロッキークラブに行ってきたんだ。俺のバカ、バカ。仕方ありません。別の手を考えましょう。うーん。うーん。ユリイカっ。いいこと思いついた。持っている会員証を使って、会員のフリをする吉岡。クラブにピンハネされるのバカらしいじゃないかと、秋子を誘い出すことに成功です。あとは世間話を装って、クラブの場所やボスの名前などを聞き出せば完璧じゃないの。俺って頭いい。

なんと秋子から、玲子がクロッキークラブに勤めていたことも聞き出し、勇躍クロッキークラブに向かう吉岡。しかし、ホテルに呼び出して脅しつけたコールガールの口から、「会員番号18番」のカードが吉岡たちに渡っていることはバレバレだったのです。そんなことも知らずに会員証を自慢げに出した吉岡は、はい、捕まっちゃいました。芋づる式にまゆみも吉岡の仲間だとバレて、そのまま地下室に監禁。ピストルの銃口がギラリと光り、大ピーンチ。

とっさの機転で、「ねえ、やるにしてももう少し、後にしない。最終が1時半でしょ」と切り出すまゆみ。地下室で撃ったら、銃声が反響して外に聞こえるわよ。うーん、それもそうか、とボス。よし、じゃあ、終電が通って人気の無くなるまで生かしておいてやろう。

吉岡とまゆみは、背中合わせに椅子にグルグル巻きに縛られちゃいました。さあ、二人は脱出できるのでしょうか。「ね、ジッパーはずしてよ」とまゆみ。さすが、スリが本職、まゆみは、ちゃっかりボスから爪きりナイフをスリ取っていたのです。もぞもぞ、もぞもぞ。「女の子って、不思議なところにポケットがあるんだね」「スペッシャルよ。あん、少し横」、もぞもぞ、もぞもぞ。後ろ手でまゆみのズボンをまさぐる吉岡。あ、あった。ナイフだぁ。ポロっ。うわっ、吉岡はナイフを落としてます。つかえないヤツですねえ。「うーん、ついてないわ。しょうがない。行くわよ。ワン、ツー、スリー」、どってーん。椅子もろともひっくり返った二人は、ズリズリ移動して、どうにかナイフを拾ってロープを切ることに成功したのです。

時計塔は12時20分を指しています。「どうだい、指が自由に使えるようになった気分は」「はじめてエレベーターに乗ったときみたい」「なんだい、そりゃ」「フクザツよ」。さあ、それはともかく逃げなくちゃ。1階に続く階段は、見張りがいるでしょうし、どこか逃げ道はないものか。「こっちから出られるかもしれない」、地下室の奥へ奥へ進む二人。やった、ドアがあります。ここから出られそうですよ。「お父さんが錠前破り専門だったの」とゴソゴソ始めるまゆみ。さあ、鍵は開くのでしょうか。

空から降ってきた紙ヒコーキで遊んでいる子供。しかし、こんな夜中に道路で遊んでいると危ないよ。キキーッ。ほら、タクシーに轢かれそう。危機一髪の子供を助けたのは、刑事さんでした。さあ、どうなる、どうなる。そのまま、子供と紙ヒコーキで遊んでいた刑事さんが、ハッとした顔で紙ヒコーキを広げています。さあ、どうなる、どうなる。

時計塔が1時20分を指しています。鍵はまだ開きません。あきらめ気分の吉岡は言い出しました。「まゆみちゃん。ぼくはキミみたいないい子にあえて、人生悔いなしって感じだよ」「なにゴソゴソ言ってんの。気が散ってしょうがないじゃないの」。カリカリ、カリカリ。なかなか開きませんね。ドンガラガラ、グワッシャーン。吉岡はコケて、ものすごい音を立ててますよ。まったく使えないヤツです。

真剣なときの癖でしょうか。唇をかわいらしく突き出して鍵穴を探っているまゆみ。カチリ。「開いたわよ」。ギギーッ。錆付いたドアをあけると、そこは川。いえ、正確には川の埋め立て現場です。細く渡された道板を歩き出す二人。タイヘンです。敵が追ってきました。「ダメだ、下降りよう」、地下の工事現場に逃げる二人。ずんずん進むと、上りの階段が。やったあ。ちょうど警察車両が駆けつけてきました。あの刑事さんもいます。悪者たちは、そのまま捕まるのでした。

翌日の早朝。取調べを終えた二人が銀座四丁目の交差点に立っています。「これでやっと、こだまに間に合うわ」「ぼくをひとりで行かす気かい」「え、なんて言ったの、さっき聞こえなかったから、もういっぺん言って」「ぼくは同じことは二度言わない主義なんだ」。「もう知らない」と駆け出すまゆみ。「待てよぉ」、吉岡がまゆみを追いかけていきます。


全編をつらぬくジャズのビートに酔い、銀座の裏町を始めとする「盗み撮り」の迫力に圧倒されます。月並みな感想ですが、お洒落な映画としかいいようがありません。新東宝の末期ですから、予算もなかったんでしょう。苦肉の策ともいえるゲリラロケが、なんともいえない効果を生んだようです。

ハンサムなのに、どことなくマヌケな主人公をやらせたら天下一品の吉田輝雄。まあ、演技というより地なんでしょうが、これが最高にハマっています。

そして、なんといっても三原葉子のカワイサ。もちろん、この人より美人な女優さんはいくらでもいますが、新東宝いち、いえ日本の女優さんの中でも、この人の愛らしさは最高レベルでしょう。演技の背後に、性格の良さと、一生懸命さがにじみ出ています。その点で、今回の役どころは、三原葉子のカワイサを余すところなく引き出しました。

ともあれ、色々な要素が、偶然にも完璧にかみ合い、奇跡的な映画ができたようです。







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【映画】零戦燃ゆ

2008-10-29 | 邦画 さ行
【「零戦燃ゆ」舛田利雄 1984】を観ました



おはなし
世界に冠絶した完成度を誇った零戦。しかし、徐々に旧式化していき……。

柳田邦男の原作を、笠原和夫が脚本化したものです。さすがに調査魔の笠原和夫だけあって、零戦の発進シーンなどは、かなり細かく書き込まれています。もっとも、それでもかなりカットされたらしく、舛田監督にぶーぶー不満をもらしていますけど。

夜中の飛行場。居並ぶ零戦にとりついて点検に余念のない整備兵たち。ブー。搭乗員起こしのブザーが鳴り、興奮で寝られなかっただろう搭乗員たちが、次々飛び出していきます。「台湾 高雄基地 午前三時」、整備員たちの手によって、一斉に零戦のエンジンが始動しました。轟々と響く爆音。全開テストも問題ないようです。増槽をつけ、20ミリの60発ドラムをガチャっと取り付ける整備兵たち。いっぽう、搭乗員たちは、おにぎりをほお張り、別杯をかわし、さあ出撃です。時間の整合をし、「かかれ」の合図。浜田正一(堤大二郎)は、三舵の点検をしたあと、友人の整備員、水島(橋爪淳)と笑顔をかわしました。「頼むぞ」「まかしとけ」。

操縦席に乗り込んだ浜田は、さっそく三舵の動きを確認して、命じます。「イナーシャ回せー」。整備兵が二人がかりで、イナーシャの重いハンドルを回しはじめます。「前、離れー」「前よろし」。「コンタクト!」。ズドドド。零戦の栄一二型エンジンが唸り始めました。

スルスルと列線に並んだ零戦たちは、轟音とともに、一機、また一機と飛び立っていきます。朝焼けの空を進撃していく零戦。OPLのスイッチを入れ、照準器の具合を確認します。そして機銃の試射です。まずは、7.7ミリ。タタタタタ。そして20ミリ。ドドドド。ここまで、やってようやく、操縦員たちは、一息ついて、これから始まる戦いに、思いを馳せるのです。

って、ここまで書いたことは、興味のない人にとっては、どーでもいいこと。「零戦が台湾から飛び立った」で、いいじゃんと思われそうです。しかし、ここにこそ、この映画の真髄があります。というか、笠原和夫脚本の真髄、といったほうが正確かもしれません。

「昭和十六年十二月八日 太平洋戦争 開戦第一日」、零戦と一式陸攻からなる戦爆連合が一斉にフィリピンにある米軍基地に襲い掛かりました。迎撃にあたったカーチスP40なんて、あっさり撃破です。しかし、マッカーサー将軍は、事実を認めることができません。参謀長に「シェンノート将軍のレポートをご存知ですか」(中国にいた合衆国義勇軍「フライイングタイガース」の親玉)と、言われても、まさか日本軍が高性能機を持っているだなんて、信じられないのです。「デタラメだ。自動車も満足に作れん日本人に、航続距離の長い戦闘機が作れるはずがない」。まあ、そうはいっても、実際にやってきちゃった日本軍。実際に落ちてきちゃった爆弾。そして機銃掃射。まあ、そういうことです。

さて、お話はいきなり戻って、昭和14年。二人の水兵が夜の町を走っています。浜田と水島です。「おい、ホントに脱柵(脱走のこと)するつもりなのか」とビビっている水島に、浜田は言います。牛みたいに殴られているのはマッピラだ。おまえ、怖いのか。えーと、そりゃまあ怖いです。と、いきなりやってきたサイドカーから、「待てっ。こんな時間に何をしとる。官姓名を名乗れ」と声がかかりました。ギクッ。タイヘンです、相手は海軍大尉みたいですよ。「横須賀海兵団、第18分隊、海軍四等航空兵、浜田正一であります」「同じく、海軍四等航空兵、水島国夫であります」。背中に鉄の棒でも入れられたように、直立不動で申告をする二人。しかし、海軍大尉(加山雄三)は、「初めての外出で、帰る道が分からなくなったのか」と、意外と優しい感じです。「俺は横須賀航空隊の下川大尉だ。道を教えてやるからついてこい」。

つれてこられたのは格納庫。そこには、ジュラルミンの地金の銀色もまぶしい、ピカピカの戦闘機が静かに羽を休めていました。見たこともない戦闘機に、口をアングリ開けている二人。下川大尉は愉快そうに言います。「ハハハ、お前たちは初めてだろ。これは、わが海軍が近々、正式採用することになっておる新型の戦闘機だ。来年は我国の皇紀2600年にあたるので、その末尾のゼロをとって、零式艦上戦闘機と呼ぶことになっておる」。超々ジュラルミンでできた全金属製。1000馬力のエンジン。500キロを越える速度。引き込み脚。そして、20ミリ機銃の凄さ。しかし、そんな説明は、二人の耳に入っていません。ただただ、その零戦の美しいたたずまいに圧倒されていたのです。

「お前たちが、何を考えながら夜道をうろついておったのか分かっておる」。ガーン。いきなり現実に引き戻される二人。そうだった。脱走しようとしていたんだった。もし、下川大尉がコトを荒立てたら、二人は身の破滅です。しかし、下川大尉は言います。「よーく、聞け。今のお前たちの身分で月給いくらもらえるか知っておるか。四等水兵の月給は5円60銭だ。この零式戦は一機、5万5千円する。お前たちの月給だと880年、働きづめに働かないと、こいつは買えないワケだ」。ポンポンと浜田の肩をたたく下川大尉。「しかしだ。お前たちが、ここ一二年辛抱すれば、国がお前たちに、この零式戦の新品を一機ずつ、黙ってタダでくれるのだ。どうだ、欲しくはないか」。そりゃ欲しいに決まってます。零戦を欲しがらない男の子が、この世に存在するでしょうか。しかし、二人は気づいていません。零戦を手に入れる代償は、5万5千円なんかではなくて、まさに命そのものだということに。「こいつに乗って、田舎の空、飛んでみてえな」とつぶやく浜田。水島も言います。「海兵団に戻ろう。なっ、浜田」。

適性検査の結果、浜田はパイロットに。そして、水島は整備に回されることになりました。猛訓練が続きます。そして、2年経った「昭和十六年四月」、二人は久々に再会したのです。二人の目的はひとつ。かつてお世話になった下川大尉にお礼がてら、今の自分たちを見てもらいたい、それだけです。おう、と優しく迎えてくれた下川大尉。しかし、今はちょっと時間が取れないんだ、とのお言葉です。というのも、零戦には、補助翼のタブバランスが起こすフラッターという厄介な症状があり、これからテストで飛ばなくてはならないのです。

やはりテストパイロットの小福田大尉(あおい輝彦)や、浜田、水島が見守る中、下川大尉の零戦は蒼穹に舞い上がっていきました。高度2千からの急降下。急激なGの変化に、下川大尉は失神しそうになりながらも機体を引き起こします。そして、もう一度。「下川さん、無理しないでください」という小福田の声が、無線で聞こえたのかどうか。最再度、急降下をした下川大尉の零戦は、補助翼が吹き飛び、キリモミ状態になって海に突っ込むのでした。

早速、設計主務の堀越次郎(北大路欣也)や、副主務の曽根嘉年(大門正明)たちは、風洞実験を始めました。確かに、補助翼のフラッターは深刻です。しかし、欧米の飛行機に比べ、ギリギリまで軽量化を進めた零戦にとって、強度不足は宿命だったようです。食って掛かる浜田に、堀越は言います。「先進国の欧米に比べたら、国産機はエンジンひとつ取ってみても、まだまだ力不足です。特にアメリカと戦争にでもなったら……」。

はい、戦争中です。真珠湾で、南の島々で、そして南方資源地帯で、零戦はP39、スピットファイア、F4Fといったライバルたちを叩き落しています。しかし、そこに登場したのが、空の要塞B17でした。いくら銃弾を叩き込んでも落ちないB17。業を煮やした浜田は、ギリギリまで接近して、自らの翼で相手の尾翼を叩き切ったのです。

フラフラとした姿勢で降りてくる零戦。隊長・宮野善治郎(目黒祐樹)の「体当たりしたんか」という質問に、「いえ、避け損なってぶつかっただけであります」と元気に答える浜田。宮野は笑って、「これから気をつけろ」と言うだけでしたが、しかし、問題は別のところにあったのです。

それは墜落したB17の防弾板をテストしてみたところ、一目瞭然に明らかになりました。なにしろ零戦の誇る20ミリの九九式一号銃では、防弾板を撃ち抜けないのです。「これじゃ落ちんな。かすり傷しか、付いとらんやないか」と嘆息する宮野です。と、「緊急ちゃくりーく」と声が響きます。どうやら、負傷した搭乗員が着陸してくるようです。滑走路を猛然と走り出すトラック。って、これはサニー。サニートラックじゃありませんか。戦前に、こんなものがあるかあ。まあ、いいや。ともあれ、ほとんど墜落と大差ない着陸をした零戦に、みんなが駆け寄ってみると、搭乗員はすでに絶命していました。「ペラペラの紙みたい」な防御版は、搭乗員の命を守らなかったのです。

ミッドウェイで大敗した日本軍は、大量の機体と、そしてなにより大切なベテラン搭乗員を数多く失いました。ここ、海軍航空本部では緊急の対策会議が行われています。飛行機が足りない、と文句を言う参謀たちに、小福田大尉は発言します。今は防弾板の充実など、搭乗員の生命を守る方策が必要じゃないんでしょうか。しかし、空技廠担当官(森次晃嗣)も、航空本部の担当官(中山昭二)も否定的です。というか、ここは絶対に狙ってますね。セブンとキリヤマ隊長を出してくるなんて、嬉しすぎです。ともあれ、結局のところは、軍令部参謀(神山繁)の鶴の一声で会議は終わりました。「防御など気にすることはない。攻撃こそ最大の防御だ。アメリカは個人主義の国だから、消極的な防御力に頼っているだけだ。こっちには大和魂があるじゃないか。攻撃力を犠牲にしてまで、余計な改修などする必要はない」。

さて、たまたま内地に帰ってきた水島は、自転車のチェーンがはずれて困っている少女を見つけ、助けてあげました。そして、曽根技師や、東条輝雄技師(宅麻伸)と意見を交換している時にも、その少女・吉川静子(早見優)と再会。もう運命感じちゃいます。ま、それはそうとして、天下の三菱の技師と、堂々と論じ合う若い下士官っていうのも、かなり設定としてはスゴイと思うんですが。

ま、それはともあれ、静子(しーちゃん)にひと目惚れした水島は、やっぱり内地に帰っていた浜田に頼み、零戦の曲芸飛行をみせてあげることに。すっかり大喜びのしーちゃんの笑顔には、水島も癒されちゃうのです。

なんて、楽しい時も夢のように過ぎ去り、二人はまた最前線に。ガダルカナル島を巡る日米の戦いは、ラバウルの海軍航空隊を消耗させ、ソロモン海をまさに零戦の墓場にしていきました。というか、ハッキリ言って、日本はジリ貧になりつつあります。そんな中、前線激励のために、山本五十六長官(丹波哲郎)がラバウルを訪れます。浜田たちが食べていたウミガメスープに舌鼓をうつなど、気さくなおじさんの山本は、そのまま、さらに前線のブインに視察に行くことに。えーと、ラバウルまででも危ないのに、やめてくださいよ長官。護衛はいらないと言い出した山本に、どうにか納得してもらって、わずか6機の零戦が護衛につくことになりました。もちろん、その中にはエースの浜田も入っています。

ブーン。うわっ、敵機だ。なんと暗号を解読していた米軍は、双発双胴の悪魔P38を送り込んできたのです。奮闘する浜田たちですが、衆寡敵せず。哀れ、山本長官の乗った一式陸攻はブーゲンビル島に墜落していくのでした。

長官を守れなかったと、暗い顔の零戦搭乗員たち。そんなみんなに、浜田は言います。「長官への詫びは、俺たちが明日も明後日も生き残って、一機でも多く敵機を撃墜することだけです。他に何がありますかっ」。「浜田の言うとおりや」と宮野隊長。「ただし、海軍には海軍の伝統がある。出処進退の伝統いうもんがな。誰も何も言わんが、俺たちの進むべき道は、ハッキリ決まっとる。生きている限り、内地の土は踏めんという覚悟だけは決めておけ」。ますます、ドヨーンとする搭乗員たちです。

それからは連日の出撃。サニートラックも、ますます元気に走りまわっていますよ。そして櫛が欠けるように、死んでいく仲間たち。もちろん、死んでいくのは零戦搭乗員だけではありません。一式陸攻の搭乗員たちは、火の吹いた機体から、悲しそうにこちらを見て死んでいきます。逆に、零戦が庇ったおかげで助かった一式陸攻の搭乗員たちは、悲しそうに墜落する零戦を見送ります。まあ、いずれにしても一式陸攻に乗っている搭乗員たちは、なんだかやるせない気分いっぱいのようです。

そんな中、まずは水島が負傷して内地に帰り、そして浜田もF4Uコルセアとの戦闘中、大火傷を負って内地に帰ることになりました。水島の方は怪我も軽傷で、そのまま内地の小福田のもとで働くことになりラッキーです。なにより、しーちゃんと再会できたので、ルンルン気分がスロットル全開な雰囲気。

一方、浜田の方はひどい火傷で、もう二度と飛べない体になってしまいました。傷心のまま実家に帰る浜田。しかし、貧乏なお母さん(南田洋子)を見ていると、とても、ここで厄介にはなれません。それに、そもそも、ここは俺のいる場所じゃない。俺のいる場所は空なんだ。浜田は懸命にリハビリに励むことにしました。

水島、浜田、しーちゃんの夢のような日々が始まりました。戦時中、楽しいことの少ない青春が、つかの間燃え上がった瞬間でもあります。三人一緒に、自転車をこいで、ただもう楽しく笑っている。たった、それだけのことでも、彼らにとってはかけがえのない時間なのです。

リハビリを終え、前線に戻るという浜田。水島としては、どうして内地で教官にならないんだ、なんで前線に戻りたいんだ、と不思議でたまりません。きっと、結婚でもすれば浜田の考えも変わるんじゃないか。そう思った水島は、一計を案じて、しーちゃんと浜田をくっつけようとするのですが、浜田はそれにのらず、そのまま前線に戻っていくのでした。

サイパン、テニアンが失陥しました。米軍がフィリピンに上陸を開始します。さらには特攻が始まり、B29は本土を爆撃。菊水作戦で大和は轟沈。日本は急坂を転げ落ちるように敗戦への道をまっしぐらです。しかし、そんな中、浜田は不死身の戦いを続けていました。そして、再び、水島と再会したのです。補充機を取りに来たと笑っている浜田に水島は言います。「お前、まだ零戦に乗るつもりなのか。あいつじゃもうB公(B29のこと)もグラマンも落とせんぞ。紫電改なら太刀打ちできるだろうが」。「バカ。ここが違うよ、ここが」と腕を叩いてみせる浜田。「ヘタクソなジャク(若年搭乗員)が零戦に乗ったら、たちまち棺おけだがな。第一、この期に及んで零戦を見捨てたんじゃ、下川大尉に会わせる顔がねえよ」。

自然と、二人の話は、しーちゃんのことに。こんな火傷だらけの男に惚れる女はいない、と言う浜田。「あの人は、お前がしっかり捕まえていてやれ」。怒る水島ですが、浜田の屈託のない笑顔を見ると、何も言えなくなってしまうのです。

と、しーちゃんこと静子は、三菱の工場にいます。折からの空襲で、工場は疎開することになったので、九州にいる浜田を追いかけていくつもりです。結局、しーちゃんは水島ではなく浜田を選んだようです。曽根技師に祝福されるしーちゃん。しかし、突然の空襲で、しーちゃんは爆死です。

九州の築城基地では、連日の邀撃戦闘が行われています。浜田も、非力な零戦で立ち向かっています。高空の薄い空気の中、なかば失神しながらの背面急降下。ぶつかる直前まで接近して20ミリの連射。やった、落ちました。しかし、基地に降りると、すぐにまた敵襲が。「発進急げ」の命令に、「まわせー」と愛機に駆け寄る搭乗員たち。いかん、敵はすぐそこです。これでは間に合わない。「発進中止」「発進中止」「搭乗員たいひー」、命令が変わり、バラバラと退避壕に駆け込む搭乗員たち。しかし、浜田はただ一人、離陸しました。敵は大馬力のF6F。相手にとって不足はありません。速度の乗らない状態で、すれ違いざまに一機撃墜する浜田。しかし、浜田にできるのはここまででした。大量の機銃弾が浴びせかけられ、浜田はズタズタになって機上で死んだのです。

第5航空艦隊の宇垣纏中将(加藤武)が、感状を読んでいます。個人撃墜70機、共同撃墜40機。母の前で、浜田の功績が称えられ、そして「よって、ここにその殊勲を認め、全軍に布告する」だそうです。お母さんは泣き崩れ、そして帰りの汽車の中、鉄橋の下で無心に遊ぶ子供たちを見たとき、また涙するのでした。

そして迎えた8月15日。プロペラを外された零戦が、一機、また一機と整備兵に運ばれていきます。もはや、飛ぶ力を失った零戦たちです。そんな有様を見ていた水島は、小福田に直訴することにしました。「小福田少佐。お願いがあるんですが、零戦を一機いただきたいんです」。なにっ、と目をむく小福田に、水島は続けます。「私の手で最後を飾ってやりたいんです。あいつが、あんな古道具みたいに処分されたんじゃ、あいつに乗って死んでいったやつら。浜田のやつだって、泣くにも泣けんでしょ。最後くらいは使い捨てじゃないと言って、逝かせてやりたいんです」・

ブロロロロ。エンジン音を轟々と立てている零戦。燃料コックを開き、水島は機関銃を撃ちました。ボッとガソリンが引火します。メラメラ。炎が零戦をおおっていきます。主翼が火に包まれ、エンジンカウルにも火が回りました。水島、小福田、そして整備兵たちが泣きながら敬礼するなか、零戦は、死にたくない、まだ空を飛びたい、と訴えるかのようにプロペラを回し続けるのです。


この映画のために零戦のレプリカが作られたそうです。それも三菱で。ということは、ある意味、ホンモノと言っても差し支えないかもしれません。そのため、冒頭の発進準備シーンなどは、とてもリアル。一方、空中戦などは、過去作品の流用らしく、かなりチープ。このギャップがものすごいです。とは言え、イナーシャを回したり、20ミリのドラム弾倉を装着するシーンなど見所も多く、かなりの満足度でした。

堤大二郎が演じる浜田正一は、杉田庄一という実際の人物がモデルになっています。実際に70機撃墜の戦果を誇り、最後は離陸中止命令を無視して離陸、被撃墜というところまで同じです。もっとも、杉田さんは、最後は紫電改に乗っていたそうで、それだと「零戦燃ゆ」にならないので、架空の人物ということにしたんでしょう。それにしても堤大二郎は、いかにもヤンチャなパイロットという感じがよく出ていました。俳優としてウマイヘタの部分はともかく、浜田正一という人物になりきっていたように思います。

一方、しーちゃんこと早見優。えーと、初々しいですね。もっとも、ぼくは同い年なので、リアルタイムのアイドルだったイメージが強くて、イマイチ評価が甘くなるんですけど。まったく早見優を知らない人からしたら、「なんだこりゃ」という演技かもしれません。

映画としては、ポイントはただ二つ。三人の若者の青春ストーリーという側面と、プロジェクトX、零戦版の側面です。前者は、ジャニーズの映画を多く手がけた舛田監督が得意とするところ。後者は笠原和夫という脚本家の得意とするところ。結果、それぞれの、持ち味がうまく出て、良かったんじゃないかなあ、と思うんですが。

ちなみに、浜田のお母さんが、鉄橋下の川で遊んでいる子供を見て、涙するシーン。これは笠原和夫が、実際に杉田さんのお母さんに会って聞いた実話だそうです。しかし、舛田監督は、お葬式でお母さんに泣かせてしまった。そうじゃない、それじゃダメなんだ。葬式からしばらくして、ふっと無心に遊ぶ子供たちを見て、泣くのがキモなんだと笠原和夫は怒っています。その著書で「本当にお前はバカか」と舛田監督に言ったとまで、書いています。一方、舛田監督の本では、わざわざ、そのことに触れ、「でも、そんな話は本人からは、いっぺんも聞いたことなかったけどね」だそうです。

まあ、娯楽映画の巨匠と、脚本界の大御所。言ってることは、正反対ですが、これでいいんだと思います。とにもかくにも、それだけアツクなるくらい、映画が好きだという証明ですから。







いくらおにぎりブログのインデックスはここ

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【映画】地獄(1979)

2008-10-20 | 邦画 さ行
【「地獄」神代辰巳 1979】を観ました



おはなし
姦通の罪で地獄に堕ちたミホ(原田美枝子)の娘、アキ(原田美枝子)。彼女もまた、近親相姦の罪で地獄に真っ逆さま。

「地獄」というと、中川信夫監督版、石井輝男監督版も存在するわけですが、なんていうか、そのテーマが映画監督のイマジネーションを怪しく刺激しちゃうんでしょうか。とにかく、全開バリバリな怒涛の展開に、唖然とするばかりです。

「人はいつか死なねばならぬ。死に至るまでに多くの罪を犯す。法の裁きは仮の罰となる。死後の世界そのものが、真の刑罰として存在するのではないかと、人々は何千年もの長きにわたって夢想してきた。それが地獄である。地獄は恐怖の夢である。人は今も地獄を道連れにして生きているのだ」。地獄絵を映し出しつつ、そんなナレーションが語られます。語っているのは、天本英世。って、その段階で怖いんですけど。

「昭和30年」、山崎ハコの歌をバックに、手に手を取って逃げている二人の男女が映し出されました。お腹の大きな女は生形ミホ(原田美枝子)。そして男は生形竜造(西田健)です。ミホにとって竜造はダンナのお兄さん。つまり、二人は不倫の果てに子供ができてしまい、こうして道無き道を逃げているのです。

「あの人が追ってくる。殺される、私たち」と心配するミホに、「大丈夫だよ。誰も山越えなんかすると思っちゃいない」と宥めすかして、山小屋に逃げ込んだ竜造。しかし、全然、大丈夫じゃなかったようです。いきなり踊りこんできた雲平(田中邦衛)が猟銃をぶっ放し、さらには猟銃を棍棒代わりに竜造をボッコボコ。哀れ、竜造は撲殺されてしまうのでした。ひぃー。小屋を逃げ出したミホですが、いきなり獣罠(トラバサミ)に足をバックリと挟まれてしまいました。なにしろ、大型のトラバサミは人の足の骨だってくだいてしまうくらい強力ですからね。これは痛い。ついでに追いかけてきた雲平に腹を足蹴にされ、これまた痛い。「腹の子は兄貴の胤だ」と腹をグリグリされたミホは、そのまま雲平に見捨てられ、野垂れ死にを待つしかないようです。

家に戻った雲平は、竜造の妻のシマ(岸田今日子)に報告です。「ミホは獣罠にかかったまま死にかけてる。朝まで持つまい」。しかし、「殺さなかったの」とシマは不満げ。早速、死にかけてるミホを見物に出かけます。いるいる。ミホが死にかけてます。「許して、子供だけは」と哀願するミホに、「地獄で産めばいい」と悪態をついたシマは嬉しそうに去っていくのでした。

ここからが最初の驚愕シーン。「ミホさんがいたぞー」「見つかったぞー」。ワラワラと村人たちがやってきました。時既に遅し。ミホはすでに死んでいるようです。しかし、股がぐぐぅっと開き、羊水があふれ出し、赤ん坊が股間からせり出してきました。オンギャア。そして、赤ん坊を残したまま、ミホの死体がスルスルと滑り出しましたよ。それも坂の上の方に。そのままミホの死体は断崖絶壁からジャーンプ。まるで、鳴門の渦潮みたいなところに、ドンドンと落ちていくのです。

はい、ここは地獄です。正確に言うと、三途の川と賽の河原なので、まだ冥途になりますけどね。そこには、懸衣翁(浜村純)と懸衣嫗(毛利菊枝)が、ミホを待ち構えていました。衣領樹という、罪の重さを測る樹に、ミホの着物を引っかけてみます。ぐぃー。うわっ、思いっきりしなっていますよ。うわーん。これだけ衣が重いと、ミホの地獄行きは間違い無さそうですよ。ぽわわーん。空のスクリーンに、現世の光景が映し出されました。ミホに懸衣翁が言います。「生まれながらに地獄を背負った赤子の生き様、見届けるのだっ」。

ということで、赤ちゃんは、村人の手によって、生形の屋敷に運ばれました。「まさか、死人から子供が生まれるなんて」と愕然としているシマ。シマの幼い二人の息子は、母の愕然っぷりをよそに、突然の妹出現に大喜びです。え、雲平ですか。雲平は「似てる。ミホに似てる」と言いながら、横でゲロを吐いていますよ。しかし、連れてこられた以上、いりません、とは言えずに赤ん坊を引き取るシマ。しかし、見れば見るほどムカツキます。赤ん坊のお尻にある、赤い牡丹の痣も気に入りません。いっそ、このまま風呂に沈めてやろうかしら。そぉーっと。と、いきなり風呂の窓から使用人の山尾(加藤嘉)が顔を出しました。「いけません、奥様。それでなくても村の連中は奥様が赤ん坊をどんな具合に育てるか、面白がって見物してるんだ。その赤ん坊が風呂の中で溺れ死んだりしたら、みんな何て言いますかね」。この山尾というのは、とても気の利く召使というか、悪人なので、背中の駕籠に、ちゃんと身代わり用の赤ん坊を運んできていたのです。持つべきものは、加藤嘉ですね、まったく。じゃあ、赤ん坊をすりかえて、ミホの子供はどこかに捨てておきましょう。

「20年後」。いきなりですが、ここは鈴鹿サーキット。今しもフォーミュラ選手権が始まろうとしています。ここに出場するのは、水沼アキ(原田美枝子 二役)や、生形松男(石橋蓮司)といった面々。もちろん、もうお分かりですよね。アキは、ミホの子供が大きくなったもの。松男は、シマの息子のお兄さんの方です。さあ、因縁の対決、いったいどうなるでしょうか。ブオンブオン。排気音が高まり、レース開始。周回遅れのアキのマシンに、「どけえ。一周遅れ」と怒鳴り、抜きにかかる松男のマシン。しかし、その時、どこからか「アキィ。アキィー」と不気味な声が響いたかと思うと、いきなり白い霧が立ち込めてきちゃいましたよ。あっ、デカいミホが登場しました。その上、アキのマシンのノーズに、(多分)ミホの生首がチョコンと乗っています。うわーん。接触したアキの松男のマシンは、そのまま爆発するのでした。それも、かなりいいイキオイの大爆破です。

事故のショックを癒すために、ローカル線に乗って、センチメンタルジャーニーなんかしちゃっているアキ。しかし、デッキで外を見ていたところ、いきなり「アキィ。アキィー」と不気味な声が再び聞こえてきましたよ。ガタン。いきなりドアが開いて、外に転げ落ちそうになるアキ。ウギャーッ。しかし、捨てる神あれば拾う神があるもので、列車にぶらさがって絶叫するアキの声を聞いたハンサムな青年が走ってきて、落ちそうになっているアキを救ってくれたのでした。

行く当てのないアキを、自分の出身地に誘ってくれたハンサム青年。名前を生形幸男(林隆三)と言います。もちろん、シマの息子で、松男の弟だったりするのは、言うまでもありません。

都会での生活に疲れ生形村に戻ってきた幸男を、喜んで迎えるシマですが、連れてきた娘の顔を見てビックリ。まるでミホに生き写しじゃありませんか。まあ、一人二役だから当然ですけどね。その上、幸男とアキはいきなりイチャついているので、怒りすら覚えちゃいます。ど、どういうこと。早速、入浴中のアキの裸をノゾキ見る、忠実な使用人の山尾。おお、あるある。お尻に見事な牡丹の形をした痣が。「説明して、どういうことなの」と山尾に食って掛かるシマ。「まさか、お前が呼んだんじゃないでしょうね」。「そんな。私は奥様のためを思って、赤ん坊を取り替えて、東京の養護施設に預けてきたんですぜ。しかも、こっちの身元も何も明かしちゃいねえんです」とベランメエな口を聞く山尾ですが、なんだろうなあ。ベランメエ口調で、やたらと風呂場を、あの黒目がちの目でウルウル覗いている加藤嘉っていうのが、とりあえずオカシクてたまらない気分です。

ま、加藤嘉の子犬のような目付きは横に置いて、シマはアキが村から出て行くように、山尾に命じました。「村には若い者が大勢います。精力を持て余した若い男がね」と言って、ニヤリと笑う山尾。うーん、やっぱり、加藤嘉には似合ってない。

さて、生形村の名物と言えば、笠卒塔婆と金輪。よく分かりませんけど、卒塔婆の真ん中に、鉄の回転する輪っかがついているものです。で、この金輪と呼ばれる鉄の輪っかを回して、そのまま止まれば良し、逆回転を始めると、その人は地獄に落ちるそうなのです。なんか、よく分からないけど怖いですねえ。ぞろりとした母の形見の着物を着て、墓場に行き、その金輪の回転にチャレンジしてみるアキ。止めとけばいいのに。案の定、金輪は思いっきり逆回転です。ぎゃあー、と叫ぶアキ。ついでに地面までがグラグラ。うわっ、地震です。あれー。崖から落ちたアキは、たまたま首に巻いていた包帯で、宙ぶらりんになってしまうのです。首が絞まり、クラクラするアキ。鳴門の渦潮な地獄の入り口が見えてきちゃいましたよ。遥か下方の地獄では、針山地獄にいる母のミホが叫んでいます。「アキィー。私は雲平に殺されたのよぉー(ちょっと違う、見捨てられただけ)」「アキィー。私をこんな目に合わせたのはシマよぉー(いや、自業自得)」「アキィー。よくお聞き。お前は私の分も生きるのよぉー。私の恨みを受け継ぐのよー」。

はっ。気がつくとアキは、小屋に横たわっていました。横には大事故以来、久々に再会した松男が「大丈夫か。また会ったな」と心配しています。はあはあ。いきなり喘ぎ始めたアキは、「早く抱いて。骨が軋むほどに」と松男にむしゃぶりつくのです。いったい、何事が。

はっ。もう一回、目覚めたアキ。「どこなの」とか寝ぼけたことを言っていますよ。そして、自分の体の異変というか、情事の名残に気づいた様子です。「あたし、何てことを。あたし、どうしたんだろう」と言うアキに、「首つってたんだよ。ガケっぷちで」と極めて冷静な松男。とりあえず、「地すべりがして、地獄を見たんだわ」とアキは、自分の世界に没頭しちゃうのです。

そのまま松男につれられ、生形の屋敷に帰るアキ。幸男は、アキと松男の間になにかあったんじゃないかとイライラ。シマは、またも帰ってきたアキに、「汚い」と言い捨てムカムカ。そして、アキの代わりに娘として育てられた久美(栗田ひろみ)は、大好きなお兄ちゃん(幸男の方)がアキに取られそうでツンツンです。

そんな久美にアキは言い出しました。シマに借りていた着物がミホの形見だったこと。そして、袂に入っていたお守りを落としてしまったことをです。「お守りは久美さんが探してくださいね」。そう、あなたが本当にミホの「実の娘」なら、あなたがミホの着物を着て、ミホのお守りを探さなければならない。まあ、よく分からないリクツですが、負けじ魂で、着物を着て出かける久美。しかし、そこには山尾こと加藤嘉が手配した、村の「精力を持て余した若い男」たちが、精力マックスで待ち構えていたのです。わっしょい、わっしょい。顔に布切れをかぶせ、お神輿のように久美を担いでいって、レイプする村の精力あふれる若い男たち。かわいそうに、さっきまでアキが着ていた着物で出歩いたため、久美はズタボロにされてしまうのでした。ちょっと、展開が強引すぎるような気が、しないでもないんですけど。

廃人のようになった久美の頭をナデながら、「久美はうちの子よ。赤ん坊の時から育てた娘なのよ。百倍にして、あの女に返してやるわ」と気合を入れているシマ。さあ、だんだん怖くなってきましたね。

さて、タタリを恐れて、人里離れたところにポツンと一つだけ建てられたミホのお墓。そこに、アキはやってきました。おっと、たまたま通りがかった尼さん(佐藤友美 特別出演)が、「ミホさんのお墓です」とか、案内を始めましたよ。それを聞いて、卒塔婆についた金輪をそっと回してみるアキ。「信じておいでですか。カネの輪を回して、止まれば極楽。もし逆に回ったら地獄」と尼さんが言っている側から、ものすごいイキオイで逆回転を始める金輪。止めようとしたアキの手から血しぶきが飛ぶほどのイキオイです。ごごー。

思わず、ちょっとビビル尼さん。アキが言い出しました。「私には地獄が見えるんです。血のつながった兄を愛して、愛してもいない別の兄と、男と女の交わりをしたり。地獄に落ちないんですか。地獄に落ちないんですかああああぁぁぁぁー」。そのあまりの迫力に、完全にビビって、尼さんはスタコラ逃げ出しちゃいました。「分かったわ、母さん」と言いつつ、猛回転する金輪をパシッと止めたアキ。「救いなんて、ありゃしないってことが」。

開き直ったアキは、幸男を誘うことにしました。イヤイヤと言いつつ横たわれば、あっけないほど簡単に、幸男は欲情しちゃったみたいです。と、そこに久美が棍棒を持って乱入。ドカスカ。二人を殴り始めましたよ。もう、完全に瞳孔が開ききっています。「殺してやる、殺してやる」と殴りかかってくる久美に、さすがに辟易した二人は川に逃げ出し、そこでイチャイチャ。さらに、カットが変わると、いきなり滝つぼで、裸になって抱き合っていたりするのです。しかし、そんな二人を、遠くからグワーッと久美が睨んでいたりするので、物騒でしかたありません。とりあえず、「久美さんが見てる。今夜来てっ。離れで。約束して」と幸男と約束をして、アキはその場を去るのでした。

さて、シマに呼び出されたアキは、蔵に出かけました。「ミホさんの形見を見せてあげようと思って」と三味線を取り出すシマ。「ミホさん、温泉を流れて歩く女芸人でね。この辺にやってきたのは、あなたの生まれる三年前」と語りだすシマ。アキの写真を見せつつ、罵詈雑言の嵐です。思わず髪を掻き毟りながら、それを聞いているアキ。「母親だけ見せたんじゃ不公平ね。父親も見せてあげなくちゃね」と言って、床下をあけるシマ。なんと、床下には大きな地下室があるじゃありませんか。とりゃっ。アキを突き落とすシマ。「竜造は?父親はどこっ」「そこよ」。ふぎゃー。なんと、そこにはミイラ化した竜造がいるのでした。「体の中は防腐剤でいっぱーい。だけど、こうしておけば、いつまでたっても、私だけの竜造。もう浮気も駆落ちもできやしない」と言いながら、クスクス笑い出したシマは、三味線を地下室に投げ捨てるのでした。岸田今日子ちょっと怖すぎ。

一方、約束の時間になっても離れにやってこないアキを、ぼけーっと待っている幸男。と、そこに松男がやってきました。寝転がっている幸男にまたがり、「どこが気に入ったんだよ。体か」と、腰をグラインドしたりしてますよ。さすがに石橋蓮司に、そんなことされても嬉しくともなんともないので、パンチを繰り出す幸男。そのまま、拳と拳で語り合う兄弟げんかの始まりです。ドカッ。ボコッ。バシッ。あ、シマがやってきて、絶叫しています。「やめなさい。やめて、久美がかえってこないのよー」。「匂う、匂う」と言うシマにくっ付いていく兄弟二人。陶芸用の窯にやってきた三人は、ドッカン、ドッカンと窯を壊し始めます。あ、いました。久美がいました。と、その瞬間、ズゴーッと久美は燃え上がるのです。どうしてなんて、聞かないでくださいね。

地下室のアキは三味線を弾いています。「母さん、不思議だわ。あたしにも三味線が弾ける」。ついでに歌い始めます。「この歌、なにっ?」「地獄が呼んでるの?」と、デンパな発言を繰り返していたアキですが、ふと気づくとミイラが泣いていますよ。メキメキ。おや、ミイラが急速に白骨化しはじめ、あわせるように壁が崩れてきましたよ。ドカーン。なんと、ミイラの奥には、どこまでも広がる地下道が続いているじゃありませんか。もう好きにして。穴から洞窟に入ったアキは三味線を弾きながら歩きます。「地獄に行く道なの。うがあ」。しかし、それは地獄への道ではなかったようで、気づけば古井戸の真下に出ていました。「助けて、誰か助けてぇ」。「誰かいるのか。アキじゃねえか」と答えたのは雲平。そう、竜造を殺した雲平です。

なんか、いきなりキレイな着物に着替えて、雲平と座敷に座っているアキ。もう、さっぱり分かりません。ともあれ、そこで雲平はアキに欲情しました。「殺してぇなあ。抱きてぇなあ」とアキにのしかかる雲平。しかし、そこに「アキィ。アキィー」と不気味な声が響き、力を貰ったアキは、三味線のバチを横一閃するのでした。バシュッ。両目を切り裂かれる雲平。しかし、欲情しているので、ゾンビのようにアキに迫ってきますよ。ボロン。ボロン。三味線を弾きながら後ずさりをするアキ。ボロン。ボロロン。いつのまにか、三味線だけがズルズル、ズルズルと進み、それを追っていった雲平は、ガケから真っ逆さまに転げ落ちるのでした。

久美の葬式に、雲平の死体が担ぎこまれました。そして、三味線の音がボロロン。「ミホっ」と呟きつつ、フラフラ歩き始めるシマ。そのまま蔵に行き、「まだ生きてたのね、ミホっ」と階段を降ろして地下室に降りていきます。見れば、夫のミイラは白骨化しています。ズゴゴ。いきなり地震が起きて洞窟が埋まりました。そして、頼みの階段も上に、引き上げられてしまいます。ボロロン。ボロロン。地下室を見下ろしているのは、ミホじゃなくて三味線片手のアキ。「あなたが瀕死のミホを見殺しにしたように、私もあなたを見殺しにする」ボロロン。「負けない。あなたには絶対、負けないっ」と夫の頭蓋骨を抱きしめて叫ぶシマ。「地獄で待ってるわ」というシマに、アキも負けじと言い返します。「そうよ、ミホが地獄で待ってるわ。私はあなたを、そこへ送る案内人なのよ。ミホの恨みの落とし子なのよ。私はあなたをミホと同じ苦しみを味あわせるために生まれてきたのよ。私はミホなのよ。死ねばいい。死んで地獄に行けばいい。死んでしまえばいい。死ねーっ。死んでしまえーっ」。髪を振り乱しているアキ。「あたしはどこにもいなくて、ミホだけがここにいるのよ。死ね。死んでしまえ。死ね。死んでしまえーーーーーーーっ」。こ、怖い。

幸男と逃げ出したアキ。岩場だらけの荒野をひたすら歩みます。そして、それを松男たちが追ってきました。やめましょうよ、と説得する山尾こと加藤嘉を猟銃でボコボコに殴り殺して、気勢を上げた松男は、ドッカンドッカン、猟銃を乱射しはじめましたよ。目の前には、いかにも危なっかしげな岩の塊。ズゴゴゴ。ほら、言わんこっちゃない。松男たちはみるみるうちに岩に体を潰され、一人、また一人と息絶えていきのでした。

さて、どうにか危機を脱した幸男とアキは、岩場に張り付くように建っている、これまたイカニモな小屋に入りました。止めておけばいいのに、そこで愛し合いはじめる二人。ズモモモモ。うわっ、小屋が、小屋が。山を滑ってる。「落ちていく」「いいの、いいの、殺してぇ、いやああああ」と絶叫するアキ。もう、小屋はなんだか尋常じゃないスピードで地面に落下していくのでした。

はい、鳴門の渦潮を抜けて地獄にやってきたアキ。ここからは、いよいよお楽しみの地獄めぐりの始まり。とりあえずアキは閻魔大王(金子信雄)に、どんなヒドイ地獄に落とされてもいいから、ひと目だけでもお母さんに会いたい、とお願いをしてみたところ、OKをもらえました。ということで、茶吉尼天(天本英世)を案内人に歩きだすアキ。石臼で、グチャグチャにミンチにされているシマや山尾がいます。幻のアキを求めて、体をズタズタに切り裂かれつつ木登りをしている幸男、松男、そして竜造、雲平兄弟もいます。さらに進む、アキと茶吉尼天。「やっと着いた。ここがお前の母の地獄。そこだ」。おお、確かに、そこにはケモノと化したミホがいるじゃありませんか。角が生えているけど、どちからというと、ミュージカル「キャッツ」っぽいです。

「これが地獄だ。ひと目会いたいと願った母親は、もはやわが子の判別さえつかぬ。ただのエサにしか思えぬのだ。戦え、さもないと餌食にされるぞ」と言って、剣をくれる茶吉尼天。しかし、アキは母と戦う気はありません。「お母さん」、返事の代わりにパクッと噛まれるアキ。「声を出すな。戦え」と茶吉尼天が言うと、ミホがアキをさらにパクッ。そう、地獄では声を出しちゃいけないお約束みたいなのです。そんなことを無視して、「お母さん」と絶叫するアキ。何てことでしょう。アキの足が木になっていくじゃありませんか。見る見るうちに一本の桜の木になってしまうアキ。うごー、うごー。ケモノ化したミホが、桜の木に体当たりをかまします。うごー、ドカン。うごー、ドカン。ペキッ、ペキペキッ。木が割れて、そこからまばゆい光がほとばしります。やがて、その光は全てを覆いつくし……

どこかの、陽光降り注ぐ海岸。生まれたばかりの赤ん坊が砂浜で泣いています。オギャー、オギャー。お尻には赤い牡丹の痣が。「あきーーーぃ」とどこかから声が聞こえます。


まあですね、ムリヤリまとめれば、男と女の愛の行き着くところは地獄。そして、親子の愛の究極は天国に通じるとか、言えないこともないと思うんですよ。でもね、それはあくまで比喩的な話であって、閻魔大王がいらないような気もします。ということで、やっぱり、この映画はなにかトンデモないものを観てしまった、という満足感に浸るのがよろしいんじゃないでしょうか。なにしろ、矢島信男のチープでいながら、ツボをおさえた特撮は、一見の価値がありますしね。

それにしても、原田美枝子ですよ。ダメな母と、その犠牲になった娘。それを一人二役で演じるというのが凄い。まんま平山秀幸監督の「愛を乞うひと」そのまんまですから。「愛を乞うひと」はぼくにとって、お気に入りを越えた、本当に感動に心震えた作品なんですが、その20年前に、こんなことやってたなんて。なかったことにしたい。観なかったことにしておきたい、そんな風に思ってしまいます。

もちろん、それは原田美枝子さんの名演技を汚したくないという意味からで、この映画の原田美枝子さんだって、怒涛の迷演技ではあるんですけどね。「愛を乞うひと」が、自陣から果敢に打ち込んだ、猛スピードのシュートだとすれば、この映画は、自分のゴールに向かって打ち込んだ猛スピードのシュートな感じです。壮烈な自爆点とでも言えばいいんでしょうか。いずれにしろ、原田美枝子さんが素晴らしいことには変わりないので、結果オーライということにしておきます。

ちなみに、岸田今日子、田中邦衛、石橋蓮司、加藤嘉などの助演も、ヘンな方向にピカピカ光っています。うーん、素晴らしい。







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【映画】新選組始末記

2008-10-01 | 邦画 さ行
【「新選組始末記」三隅研次 1963】を観ました



おはなし
近藤勇に惚れこんで新選組に入った山崎烝ですが、土方歳三の陰険な策略に遭って……。

もちろんフィクションなので、現実の歴史とは違うことを念頭においてください。これから書くのは、あくまでこの映画の中の「新選組」ですから。

四条河原(多分)では、群集が集まって磔を見物しています。どうやら、磔にされた侍は、新選組の天誅に遭ったようです。「崩壊寸前の徳川幕府と、それに代わろうとする新勢力との激突地帯となった京の巷では、暗殺事件が横行していた」というテロップが流れます。

さて、それを見ていた志満(藤村志保)は、家に帰り、想い人の山崎烝(市川雷蔵)に不満をぶちまけています。「分かりません。あなたが新選組に入るというお気持ちが。いいえ、勤皇方が正しいのか、徳川を守るのが良いのか、それも私には分からないんです。ただ、どちらも気が狂ったように人を殺して、中でも新選組は、あれが武士の集まりでしょうか。町の人たちが新選組を何と呼んでるか知ってるでしょ。壬生狼、壬生狼。牙をむいて野良犬のように。イヤです、イヤ、イヤ。あなたがそんな人殺しの群れに入るなんて。ねえ、何のためにあなたは自分を殺しに行くんです」。と、志満の顔のアップのまま、山崎の声だけが聞こえます。「違うよ、志満さん。俺は今日、見たんだ。そして心が定まった」。

偶然、二人の侍が斬りあっている現場に出くわした山崎。どうやら勤皇方と新選組の隊士が戦っているようです。勝負は新選組の隊士の勝ちで終わったようですが、その隊士も深傷を負って助かりそうにありません。それを見て介錯を申し出る山崎ですが、隊士は、死ぬのはイヤだと見苦しく転げまわるのでした。

それから数刻。隊士の遺品を持って、新選組の屯所にやってきた山崎。しかし局長の芹沢鴨(田崎潤)は、隊士の死を嘆くわけでもなく、はたまた山崎の労をねぎらうでもなく、とにかく傲慢なイヤーな男だったのです。しかし、そこに「あっ、君」と現れたのが、新選組副長の近藤勇(城健三朗=若山富三郎)でした。「ありがとう、わざわざ届けてくれて」と、行き届いた挨拶をする近藤に機嫌を直した山崎は、隊士は立派に死んだと報告するのです。

しかし、そんな山崎に近藤は言います。「武士らしく、武士らしく。私は百姓の生まれだから、よけいそれにこだわるんですなあ」。「なぜ、それを私に言うんです」といぶかしげな山崎に近藤は続けます。「君が森を立派に死んだとかばってくれたが、あれはそういう男ではなかった」。そういうことか、と納得した山崎は答えます。「腑抜けが立派に死ぬこともある。百姓が武士らしく死ぬこともあるように」。これには、今度は近藤が呵呵大笑する番です。「これはまいった。私のいつものお株を取られてしまった。山崎君。私は言っているんだ。武士というやつは形じゃない。男子の心意気だとね」。

「武士とは心意気だと、その男が言った。俺は京に来て、あのように澄んだ目を初めて見た。近藤という男が信じられる気がした。このままでは俺は駄目になる。志満さんは女ながら医術という人の命を救う仕事がある。生きる道がある。俺にあるのは剣だ。それしかないんだ」と、今度は山崎のアップのまま、志満の声だけが聞こえます。「捨てて、捨てて欲しゅうございます」「俺に武士を捨てろというのか。俺にはできん」。

そんなこんなで、新選組に入った山崎烝。しかし、芹沢鴨、新見錦(須賀不二男)といった、いわゆる水戸派の腐敗は目を覆うばかりで、山崎は今日も理由を告げられないまま豪商のところに使いに遣らされるのでした。行ってみれば何のことはない、隊費の名目での押し借りです。もちろん、その金が隊のために、ひいては徳川のために使われるならまだしも、実際は芹沢や新見の遊興費に充てられるのですから、真面目な山崎としては、やってられないよ、といった気分でしょう。

芹沢に金を渡しに行くと、部屋では犯された女が泣いています。なにやってんだ、こいつ。憤然として立ち去ろうとする山崎に「どうした」と近藤が声をかけてきました。「中に獣がいるんです」と答える山崎です。

これは見過ごせない。近藤は芹沢に直談判をすることに。しかし芹沢は金を前にしながら、「わしは知らん。山崎に新見が命令したんじゃろ、新見が」と責任逃れなことを言うのです。「局長、借用金の取立てに来た商家の女房を力ずくで犯す。この件については、返答がありますか」。さすがに、これについては芹沢も言い逃れができません。なにしろ横で女が泣いているんですから。うがあーっ。とりあえず、金をぶちまけて、暴れてみることにする芹沢でした。

道場で、隊士たちが汗を流しています。そこに、「やめろ、稽古をやめて座に戻れ」と土方歳三(天知茂)の声がかかりました。ガヤガヤ、ガヤガヤ。何事だろう。土方は言います。「隊規によって、新見さんに切腹していただくことになりました」。ワナワナしている新見。激怒する芹沢。しかし、土方が理路整然と新見の悪行を述べ立てるに及んでは、芹沢も何も言い返せません。「局長、裁決を」と近藤が迫ります。見れば、隊士たちがスゴイ目で芹沢を睨んでいます。ウカツなことを言うと、自分の身にも危険が及びそうな不穏な雰囲気。うーん。うーん。「切腹っ」。

しかし、新見が切腹させられた後も、芹沢の放蕩はやむことがありません。山崎も近藤、土方に、またも直談判をしたりしていますよ。「歳さん、あの男の言うのは道理だね」と土方に言う近藤。土方も「この機会にやりましょう」「粛清するなら今です」と同意しました。「局長らしく最期を飾らせるんだね」「立派に切腹させるんだよ」と念押しする近藤に、「そうです。隊の規約ですから」と答える土方。ところが、蓋を開ければ思いっきり闇討ちで芹沢は死んだのです。

そんな卑怯な振る舞いに怒り出す山崎。さらには、芹沢の葬式を利用して、近藤、土方一派が自分たちの権力を磐石なものにしようとしているのを見て、すっかりイヤになってしまいました。ということで、隊を抜け出し志満に会いに行っちゃうのです。まあ、それもどうかと思いますけど。

恋をしている女は敏感。まして、シャーマンというかイタコ体質な藤村志保です。志満は山崎に会った瞬間に「何かあったんですの。新選組に入ると言った時、あなたの目は生きて光っていました。だのに今は……死んでいる」と言い出しました。「あなたは新選組にいても幸せじゃない。いいえ、嘘っ。分かります。近藤勇という人は信じられる相手ではなかったんでしょ」。「近藤さんはそんな人じゃないんだ。立派な武士だぞ。立派な武士だ」と、自分自身の迷いを切り捨てるかのように、言ってみる山崎。しかし志満に「では、なぜそんな悲しい目をして、仰るんです」と言い返されて、思わず絶句しちゃうのでした。

とりゃーっ。いきなり勤皇方の侍がひとり斬り込んできました。果敢に立ち向かい、それを斬り斃した山崎。しかし、志満はギャーッ、グワーッと絶叫中です。別に斬られたわけじゃないんですけどね。なんか狐でも憑いたんじゃないかと思うくらいのイキオイですよ。「志満さん、志満さん」と山崎が抱き起こしても、志満は絶叫中。パシッパシッ。二三回引っぱたいて、どうにか志満は落ち着いたようです。そんな志満と思わず抱き合ってしまう山崎ですが、大丈夫かなあ。かなりエキセントリックな性格っぽいですよ、志満は。

高級料亭で飲んでいる「局長」の近藤勇と、「副長」の土方歳三。田舎を出てから10年。ようやく、ここまでのし上がることができました。「あんたは何にも言わず、そうやって微笑んでいさえすれば、自ずから衆望は集まり、やがて天下一方の頭領になる」と遠慮の無いことをいう土方。「ハハっ。まるで俺は木偶(でく)だな」と言う近藤に、さらに遠慮のないことを。「木偶でいながら、俺はいつまでたっても、何となくあんたが怖い。これも格というもんかねえ」。

一方、山崎も場末の飲み屋でいっぱい引っかけています。こっちは、鬱屈したマズイ酒です。と、そこに沖田総司がやってきました。「君は腕が立つのに、どうしてそう物事にムキになるかなあ。結局、損だよ」。ムカッ。小僧っ子のくせに、妙に老成したことを言う奴です。ますます酒がまずくなるじゃないですか。

ある日のこと、沖田が「おーい、山崎。手を借りたいんだ」と言ってきました。ある隊士が力士を問答無用で斬り殺して捕まったので、報復に奉行所の役人を斬り殺そうというのです。しかし、いくら「近藤さんの命令だよ」と言われたって、できないものはできません。と、思ったら沖田の姦計にハメられてやむなく、山崎は役人を斬り殺すはめに陥ってしまうのです。その上、土方は会津藩の叱責に、「犯人は山崎という男ですが、とにかく隊規に反抗しがちな暴れ者でしてね」などど言い出す始末。やっぱり江戸からの仲間じゃないと、こんな扱いしかしてもらえないんでしょうか。

役人を斬り、脱走したことにされてしまった山崎は、そのまま探索方(スパイ)をやらされることに。まあ、うがって考えれば、山崎を探索方にするために土方が仕組んだ深謀遠慮と言えなくもありませんが、実際のところは行き当たりばったりに探索方にさせられてしまった感じです。とは言え、仕事は仕事。助手の大津の協力も受け、薬売りにバケて勤皇方の動静を探っていた山崎は、とんでもない情報を入手しました。それはなんと、勤皇方が祇園祭に乗じて、御所に火を放って帝を拉致し、ついでに一橋慶喜たちを暗殺するという、仰天の計画だったのです。

早速、それを隊に報告して、そのまま志満のもとに身を隠す山崎。いやあ、こうしてみると、志満と暮らしているのも平和だなあ。ぼけーっ。「何を考えてらっしゃるの。ねえ、ねえ」「ん、何か言ったか」「いやん、知らない」。しかし、「やっぱり私のところに帰ってきてくれたのね」と言われて、サッと素に戻っちゃいます。そうだ、志満は俺が隊を辞めたと思っているんだ。でも、俺はしがない探索方。そして、今さら、俺が密偵をしてますなんて、志満に言ったら……。はい、とりあえず置手紙を残して、志満のところから逃亡する山崎です。もちろん置手紙を見た志満は、ハァーンッ。アッハァーン。ヘンな泣き声で号泣です。いや、ホントにヘンな泣き声なんですよ。というか泣き声というより鳴き声、いや咆哮かも。さすが藤村志保、一味も二味も違います。

山崎の報告で、長州間者の親玉、古高俊太郎を捕らえることに成功した新選組。土方が嬉々として拷問を開始しました。「俺はな。腹が立つとどんなことでもできる男だぞ。吐けば命だけは助けてやる。誓って助けるが、どうだ」。しかし、古高も筋金入りの志士ですから、簡単に吐くものじゃありません。「おい、足の甲から五寸釘を刺せ。それに蝋燭を立て、火をつけろ」。いやあ、なかなか吐きませんね。むしろ、勤皇方の策略で、食中毒になった隊士たちが、次々に吐いている始末です。これはこまった。しかし、しばらくして土方が喜色満面で出てきました。「とうとう吐きましたよ。やつらが今夜集まるのは、三条繩手の四国屋です」。しかし、近藤はちょっと困り顔。「いや、今、大津が山崎からの報告をもたらした。それによると池田屋だが」。ぷぅーっとする土方。「四国屋に間違いない。古高は俺が責めたんだ。あの血みどろの告白に偽りはないよ」。それでも近藤は言うのです。「やはり俺は池田屋を取りたい」と。

「総司。出動できる隊士は何名残っているんだ」と聞いてみる近藤。「我々を含めて二十七人」。むう、いかにも少ないです。その上、応援を頼んだ会津藩も、いつまで経っても来やしません。仕方ない。隊を割ろう。「君は二十名連れて四国屋に行け」と土方に言う近藤。「大丈夫か、あんた。六人で」「君の判断が正しいかもしれん。俺はアホかもしれんが、やはり侍よ。山崎を信じよう」。

その頃、池田屋の向かいで、いつまで経っても来ない新選組に山崎と大津がジリジリしています。私が連絡に行ってきますと、飛び出す大津。と、いきなり勤皇方とバッチリ目が合っちゃいましたよ。うわっ。そのまま池田屋に引きずり込まれる大津。山崎はあわてて、隠れ家を飛び出し、池田屋に飛び込みます。しかし、その時、既に大津は斬られて虫の息だったのです。バラバラ。敵に囲まれる山崎。まさに絶体絶命。どうしよう。

ドンドン。ドンドン。新選組だ、開けろ。ああ、その声は懐かしの近藤じゃありませんか。山崎が戸を開けると、「山崎よくやった」と近藤がのっそりと入ってきました。良かった、これで助かった。「局長、味方は?」「俺たち六人だ」「えっ!」。敵は二十名以上で守ってるのに、こっちは六人ですか。えーと、ダメだ、死亡だ。

とは言え、そこは市川雷蔵の華麗なる剣さばき。そして若山先生の変幻自在な体さばきです。とりゃー。それー。負けてません。いや、むしろ押してるかも。それに遅ればせの土方隊も到着して、戦況は一気に逆転です。「一人も逃がすなー」。

「俺の負けだ、山崎。近藤さんはあくまで君を信じぬいた。兜を脱ぐよ」とサワヤカに言う土方。「私も脱がなくちゃなりませんかね」と沖田も笑っています。沖田と握手をしつつ、近藤勇を見る山崎。ぽわわーん。やっぱり、やっぱり、この人について行こう。山崎は今までの行きがかりを忘れて、初めて新選組のみんなと一体になったような気がするのです。

夜が明け、隊伍を組んで京の町を行進する新選組。京の町人たちが、その様子を恐るおそるうかがっています。もちろん、その中には志満もいます。隊列について歩く志満。しかし山崎はわき目も振らずに歩いていき、残された志満はトボトボと家路につくのでした。


いやあ、主役にもかかわらず市川雷蔵がぜんぜん目立てない映画でした。なにしろ相手が悪すぎるというものです。新選組、さらには近藤勇さえも自分の「作品」として扱い、極めて怜悧に策謀を巡らせる土方歳三を演じた天知茂は、まさにハマリ役。それに、豪放磊落なようでいて、あえて土方歳三に「乗せられてみせる」近藤勇のズルさ。これを演ずるには、大胆なようでいて慎重。粗暴なようでいて繊細な若山先生以外には、やっぱり考えられません。その上に、藤村志保の何かに取憑かれたような演技が加わってしまうんですから、雷蔵としてはどうしたらいいのか、ってところでしょう。

さらに、ここに芹沢鴨を演じる田崎潤の、野獣派な演技まで加わり、さながら、どれだけ目立てるかを競う場と化したこの映画。文句なく、傑作の予感です。あ、傑作じゃなくて、あくまで傑作の「予感」ですからね。ぼく個人としては、今挙げた俳優さんたちはみんな大好きなので、最高だなあと思いますが、特に思い入れがない人に取っては、まとまりのない映画な予感がするので。







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