いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】海底から来た女

2010-10-31 | 邦画 か行
【「海底から来た女」蔵原惟繕 1959】を観ました



おはなし
恩返しをするのは鶴。じゃあ復讐をするのは?

石原慎太郎の原作で、蔵原惟繕が監督。肉体派女優の筑波久子が主演した映画です。なんだか、お腹壊しそうな食い合わせですねえ。

夜の海。ウクレレが聞こえてきます。おや、どこかの豪華な別荘でガーデンパーティをやっているようですよ。って、いかにも日活風な滑り出しで映画は始まりました。

お金持ちのパーティに来ているのは、克彦(水谷貞雄)と敏夫(川地民夫)の兄弟。もっとも兄の方は社交的なようですが、弟の川地民夫はいまいち引っ込み思案。結局、パーティになじめず、そのまま自分のヨット・ファラオ号で、夜の海に滑り出ていくのです。「あら、船が出ていくわ」「敏夫だ。どうして逃げちまったんだろう」と騒ぐ金持ち子女たちに、お兄さんはひとこと。「いいんだ、いいんだ。あいつは、いつもああなんだ。あいつがいない方が気が置けなくていいだろ」。

さて、川地民夫は「自分の家の」別荘で、デッキチェアに座りつつ、ウクレレを伴奏に口笛かなんか吹いています。と、そこに近所に住む作家の堤(内田良平)が通りがかりましたよ。って、どうして内田良平が「作家」に。どうみても、ヤクザかアラクレ漁師にしか見えないんですけど。ま、それはともあれ内田良平の様子がヘンです。まるで幽霊でも見たような顔をして、川地民夫に言いましたよ。「君の船に女の子がいたよ」。

「そんなバカな……ああ、じゃあ兄貴だ。兄貴が連れてきたんですよ」と一蹴する川地民夫ですが、内田良平の言いたいことはそういうことじゃない模様。「それが髪の長い、なんか目の……とにかく妙な。いや、よそう。きっと僕の幻覚なんだ」スタスタ。ああ行っちゃった。でも、そんな思わせぶりなこと言われたら、気になりますよね。「ばあや。懐中電灯貸してくれよ」。川地民夫は、ばあやに懐中電灯を借りて、ヨットに出撃です。

奥まった入江のど真ん中にプカプカと浮かべてあるヨットに、ボートで向かう川地民夫。ポチャン。おや水音がしましたよ。「誰だい!。。。なあんだ、やっぱり魚か」と一安心したのもつかのま。確かに魚は魚ですが、ヨットの上にはバラバラに引きちぎられた魚が転がっていたのです。「ちきしょー。ただじゃおかねえぞ」と言ってみる川地民夫ですが、とりあえず犯人が目の前にいるわけでもなく、どうしようもありませんね。

翌朝あらためて、ヨットに行く川地民夫。うわっ、また魚のバラバラ死体がヨットの周りに散らばっていますよ。そして、ついでにビキニお姉ちゃんも。ええっ。そう、舷側にビキニなお姉ちゃん(筑波久子)がいるじゃありませんか。「何してんだい、そんなとこで」「休んでんのよ。ちょっと」。この言い方には川地民夫もちょっとムカっ。「ヒトの船を黙って、そんなに汚してかい。昨夜やったのも君だろ」。でも筑波久子は動じるどころか、魚は生で食べたんだと言い出したのです。それも「持ってきたんじゃない。この下で獲ったのよ」だそうで。さらにビックリしている川地民夫に筑波久子は、ウッフーンと横たわりつつ言います。「あんたに泳ぎ教えてあげようか」。いやあ、できれば泳ぎなんかより別のコトを教えてくれたほうが。いやいやダメだ、ダメだ。ばあやに怒られちゃう。「とにかく、船を下りてくれよ」。そう言いつつも川地民夫はこの謎めいた少女に惹かれる気持ちを抑えることができません。「あんたなんか知らない」くらいずっと前にも、ここに来たことがあるという少女。生魚をバリバリ食べちゃう少女。そしてもちろん、セクシー度バリバリの少女。これに興味ないとか言ったら、ちょっとどうかしてますよね。

「ねえ、あんたのうち行ってもいい」。筑波久子の言葉に川地民夫はドキーン。「え、僕のうち」「そう、いいでしょ。あたし、どこだか知ってる」「そりゃ」「いいわね」。と、向こうからポンポン、ポンポンと焼玉エンジンの音が聞こえてきましたよ。どうやら漁師の漁船がやってくるようです。ハッとした表情になった筑波久子は「じゃ、またね」とそのまま海へドボン。ああ、行っちゃった。

入れ替わりにやってきた漁師が、川地民夫に声をかけてきました。誰か見なかったかと言うのです。どうやらイケスが破られ、お魚さんたちがバラバラにされていたとか。バラバラと聞いて、ピンとくる川地民夫ですが、もちろん筑波久子のことはおくびにも出しません。だってビキニですから。それはそうと「この夏は、入り江にはロクなことがねえ」と嘆く漁師さんたち。「ロクなこと?」「そうよ、ヒトが死んでな」。なんと、村の漁師シンサクが海で行方不明だそうですよ。そして消える前に若い女と一緒だったとか。いったいコレはどういうことだ。この事件に筑波久子は関わっているのでしょうか。

気になった川地民夫は漁村に向かいました。すると、ちょうど浜では駐在さんを囲んで漁師たちがわいわいと事件について話し合っていますよ。というのもシンサクのものと思われる血まみれのシャツの切れはしが見つかったみたいなのです。「喧嘩でも」と言いかける駐在さんを「違うっ!」と鋭く遮る漁師の藤作(浜村純)。「鱶(フカ)だよ。ちきしょう。またアイツが戻ってきやがった」。

そう、浜村純は言います。「うちの爺様の兄貴のヒデ爺がな、昔、この入江に迷い込んだ番いの大鱶の片方を仕留めたことがあるんだ。ある晩、その鱶の死骸に取りすがって泣いている女を見たって話だ」。以来、そのヒデ爺を始め、浜村純の弟、そして今度は息子までもが鱶に食い殺されたそうで。うーんタイヘンそうですねえ。

そんな話を立ち聞きした後、別荘に帰ってきた川地民夫。おや、ヤケに今日は飼い犬が吠えていますね。なんだろう。と、自分の部屋に入ってビックリです。そう、ベッドに筑波久子がセクシースマイルを浮かべつつ横たわっているじゃありませんか。「キミ!」「来たわよ。約束どおり」「どっから入ってきたんだい」「この下」。いや、この下って、断崖絶壁じゃありませんか。ま、そんなことはどうでもいいこと。というのも「今夜、あたしココに泊ってもいい。いいわね。そうしよう」と筑波久子が言い出したのです。「ダ、ダメだよ。だって、ばあやが来て」としどろもどろな川地民夫ですが、筑波久子はさっさとベッドに入ってお休みなさーいです。横にはビキニのセクシーむんむん娘。悶々とした川地民夫は輾転反側を繰り返し、なかなか眠れません。と、ようやく寝込んだと思ったら筑波久子に起こされちゃいました。「さ、行くのよ」「どこへ」「約束したじゃない昨夜。海へよ。魚獲りに」。

ぶろろろー。横にビキニなむんむん娘をのせ、モーターボートを走らせる川地民夫。おや、岸辺を作家(には見えないんだけど)の内田良平が歩いていますよ。「堤さぁーん。散歩ですかああ」。それに答えて、ニコヤカにモーターボートの方を見た内田良平は、筑波久子を見てハッとしたみたいです。ずるずる。後ずさりしたりして。さすが誰が見ても、動揺していると分かる名演技ですね。「ヘンね、あの人」と冷たい筑波久子に川地民夫は言います。「ちょっと、ここ(オツム)が病気なんだよ」。まあいいや。行こうぜ。ぶろろろー。

「ここよ」。筑波久子が教えてくれたヒミツの漁場スポット。魚がウハウハだそうです。よーし。モリを片手にスキューバダイビングをする川地民夫。一方、筑波久子は素潜りで、水中をクルクル回転しています。まあ、水中レビューみたいなものを想像していただければいいかと。しかし残念なのは、ピントがボケボケで誰が誰やら、何が何やらよく分からないこと。どうせ、この映画を見にくるお客さんは、筑波久子のビキニむんむんだけが目当てなんだから、ここで頑張らなくてどうするんだ。なにやってんだよお。

ま、そんな魂の叫びはともあれ、泳いでいた川地民夫は、海底に魚の骨が大量に落ちているのを発見しました。うわあ、なんかイヤな感じだなあ。と、今度は上を見ると巨大なサメがすーっと横切っていくじゃありませんか。さらに海底の別の場所には人間の腕はユラユラ揺れてたりして。わひー。あわてて陸にあがる川地民夫。「おーい。タイヘンだ。鱶だ。鱶だよお」。しかし、後から陸に上がってきた筑波久子は「思い違いでしょ」と冷静もいいとこです。そして「いや、ホントだ。人のここ、人の腕だ。鱶にやられたんだよお」と漁村に報告に行こうとする川地民夫をひき止めて、言うのです。「それより約束して。あんたが見たそのコトは言ってもいいけど、この場所は絶対に言っちゃダメよ。約束破ったら……もうあたし、イヤよ」。いや、普通だと約束破ったら、お前は死ぬ、死ぬのだあみたいな展開になると思うんですけど、「約束破ったら、もうあたし、イヤよ」ですか。まあビキニむんむん娘だからしょうがない。いいともさ、約束は守るよ。

早速、漁村に行って、詳しい場所を除いた一部始終を話す川地民夫。漁民のみなさんはフムフム、エエーッとナイス反応を見せながら聞いてくれています。と、浜村純のお爺さんが筑波久子の顔を見てワナワナし始めましたよ。「どうしただ爺さま」。「……あたし、先帰るわ」。ぴゅー。逃げるように去って行った筑波久子をお爺さんはワナワナしながら見ています。いったい、筑波久子は何者なのでしょう。

そのまま筑波久子は消えてしまいました。ハートブレイクな川地民夫は、気晴らしに日本アルプスに山登りに行くことに。「やっほー。やっほー」。ヤケッパチになってやっほーしています。そんな川地民夫と入れ違いに女連れでやってきたお兄さん。しかし、川地民夫の部屋に(勝手に)入り込んでいた筑波久子を発見してニヤリです。まあむんむんビキニですしね。早速、一緒にやってきた女をニセ電報で追い返し、さあ筑波久子を攻略だあ。

ぞくり。イヤな予感がした川地民夫は、別荘に電話です。リーンリーン。あ、モシモシばあや。いえ、出たのは男です。「なんだ兄貴か。いつ来たの」「おい、おめえにはスゲエ友達がいるんだな。え、おい。俺気に入ったぜ」。や、やばい。プレイボーイの兄貴にかかったら、僕のむんむんビキニちゃんが。

案の定、お兄さんは筑波久子をヨットに乗せてクルージング。へっへっへ。ヨットに乗せて落ちない女はいないぜ。しかし、そんなお兄さんの下心を見抜いたのか、凪いでいた海はイキナリ時化になりザッパーンです。そして、同じ時間、ここ日本アルプスの山荘でもスゴイ雨。ひーっ。飛び込んできた川地民夫に山荘の人が、東京からお電話です、と受話器を差し出してきましたよ。「ああママ」「敏夫、早く帰ってきて。克彦、克彦が!」「兄貴がどうしたの」「海で行方不明に」。

チーン。お兄さんの遺影を見ている川地民夫。しかし、兄の死を悼みつつも川地民夫には、どうしても気になることがあったのです。「ばあや、本当のこと言ってくれる。あの子は毎晩、ここへ来てたんだろ」。「いいえ存じません」と首をぷるぷる振るばあや。「やっぱり、あの子も一緒だったのか」「ぼっちゃま。あのお嬢さんはきっと。いいえ、ただ。……いいえ、ぞんじません」。ふう。多分、ばあやの口ぶりからして、筑波久子は兄と一緒にヨットに乗ったのでしょう。そして、おそらく荒れ狂う海に投げ出されて……。川地民夫は寂しくつぶやきます。「みんな死んじまったんだな」。

しかし、その夜。またも飼い犬がキャンキャン鳴き始めましたよ。もしかして。あわてて川地民夫が自分の部屋に入ると、むんむんビキニの筑波久子がいるじゃありませんか。「やっぱり君は生きてたんだね」ヒシッ。川地民夫は筑波久子を抱きしめます。まあ、お兄さんは死んじゃったみたいですけど、とりあえずむんむんビキニちゃんが生きていればソレでいいや。

と、そこにドヤドヤと物音が。浜村純たちイカレた漁師どもが押し掛けてきたようです。それを聞いて、「あたし帰るわ」とめずらしく筑波久子はソワソワモード。「またね。明日」「明日のいつだい」「そう。今頃。明日船の上で待ってるわ」。じゃっ。ピューン。窓から断崖絶壁に飛び込んで、筑波久子は消えちゃいました。と、入れ違いに漁師たちがドアを開け、部屋に入ってきましたよ。あの女はどうした!と掴みかからんばかりのイキオイです。その上、爺さま漁師は「鱶の番いの片割れの怨霊ですじゃ」とか叫んでるし。「そんな。そんな嘘だよ」と川地民夫は抗弁してみたものの、迷信深い漁師たちは聞く耳を持ちません。渋々、別荘からは退去したものの、交代で別荘を見張ってやるとか言い張ってますもん。ありゃ、本当にやりそうですね。

ということで、ひそかに見張りの目を逃れた川地民夫は、筑波久子に出会うと、言い出しました。「タイヘンなんだよ。漁師の奴ら、君を狙ってるんだよ。奴らは君を殺しに来るんだ」「なんで」「バカな迷信なんだよ。君は鱶なんだって」。このままじゃ危ない。よし逃げよう。夜の11時に、またこの船で。そのまま、この村を脱出しよう。そんな約束をした川地民夫はいったん別荘に。なにしろ、いろいろ準備がありますからね。えーと、まずは食糧だ。「ばあや。夕飯の残りと果物と、あとサンドイッチを3人か4人分、バスケットに入れておいてよ」。ジトーっ。ばあやは不審そうに言います。「どこかへお出かけでございますか」。ま、まずい。ばあやには隠しごとできないよ、ぼく。「ばあや。ばあやだから言うけどね、あの子は化け物なんかじゃないよ」。いったん話しだせば、もう停まりません。ペラペラと全部、話してしまった川地民夫はひと安心したのか、「10時半に起こしてくれよ。ばあや。これは秘密だよ」と言うなりベッドに入って寝ちゃうのでした。ぐーぐー。

はっ、枕元の時計を見ると10時50分。うわ寝坊だ。「ばあやぁ」「……」。返事がありませんよ。おかしい。そしてドアを開けようとすると、ガチャガチャ、ガチャガチャ。あれ開きません。外からロックされているみたいです。しまった、ばあやに裏切られたんだ。

その頃、ばあやの通報を受けた浜村純たちは、モリを片手にヨットに潜伏中。今か今かと筑波久子のやってくるのを待ち構えています。あやうし、むんむんビキニちゃん。

どりゃー。窓から脱出した川地民夫は、一路ヨットを目指します。「ちきしょー」。間に合ってくれよー。しかし、一歩遅かったようです。水から上がってきた筑波久子の目が恐怖に見開き、浜村純たちの必殺のモリがどりゃー。血しぶきがどぱー。

川地民夫がヨットに泳ぎ着くと、漁師たちが「やった、やった」と大喜び中でした。「俺はこの目で見たぞ。でけえ、でけえ鱶だったな」。おっと川地民夫に気付いたようです。「お、坊ちゃんだ」と居住まいを正し、言います。「見なせえ。臭いを嗅いでみなせえ。これは人間の血じゃねえ。魚の血だ」。えーと、そんなこと言われても、ぼく困るよ。ともあれ、分かるのはむんむんビキニちゃんは、もういない。もう永遠にいないってことだね。

夏休みも終わり、川地民夫は東京に帰ることになりました。というか、大学生だったですね。てっきりプー太郎だと思ってました。ま、ともあれ帰る前に、川地民夫は、作家の内田良平にあいさつに行くことに。すると、内田良平は筑波久子がサメに変身するところを見たんだ、と今さらなことを言い出しましたよ。どうやら、自分の見たモノが幻覚じゃなかったと知って、浮かれている風情。「あの子は本当に君のためにいたんだよ。いいんだよ、敏夫くん」と上機嫌に肩をぽんぽん叩いたりして、ペラペラと続けます。「君は選ばれた人だったんだ。君の見た夢は一生、君のもんだ。美しい夏の夢じゃないか。君以外の誰も、その夢を見ることはできやしなかった。君だけがそれをできたんだ」。もしかしたら、原作では感動ポイントなのかもしれませんが、映画では唐突すぎて、何がなにやら。
ともあれ、それを聞いた川地民夫は、うわーん。走り出しました。

さっぱり理解できないまま、海に潜っている川地民夫。骨がいっぱい落ちているところからすると、筑波久子に教えてもらった漁場のようです。そして大量の骨に加え、今は新しい骨が。モリが刺さった大きな骨です。もしかして、これは筑波久子の骨でしょうか。夢か現か、ゆらりと影が射します。川地民夫の上をサメが悠然と泳いでいきます。それに呼ばれるように、川地民夫もせっせと泳いでいくのでした。


新東宝でも、前田通子やら三原葉子。はたまた万里昌代などが出る、似たような路線の映画がいっぱいあったワケですが、あちらは非常に分かりやすい造りです。いわく、よっしゃ可能な限りお見せしましょ。さあ水着を見てってくださいな、みたいな。

しかし、こちらはヘンにゲイジュツしてしまったおかげで、とても半端なできあがりに。誰も川地民夫のことなんて見てないって。まして内田良平の苦悩なんてどうでもいい。そもそも復讐にきたサメが、なんで川地民夫と付き合わなきゃならないの。そうではなく、とにかく筑波久子のビキニをひたすら見せればいいのに、ヘンに出し惜しみしているのがダメな感じです。せっかくの素材を生かさないなんて、もったいない。

ちなみに、筑波久子は慶応女子高から慶応法学部政治学科に進んだお嬢様らしいです。でも、その割には、なんていうかフェロモン全開というか、むんむんな感じ。見かけと異なり、声も低めのハスキーな感じだし、そのギャップがたまらない人も多いんでしょうね。えっ、僕ですか。いや、その。ツボです。







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【映画】恐怖女子高校 不良悶絶グループ

2010-10-29 | 邦画 か行
【「恐怖女子高校 不良悶絶グループ」志村正浩 1973】を観ました



おはなし
ズガガガガ。カ・イ・カ・ン。

恐怖女子高校シリーズの第三弾です。とはいえ、今作からは監督が鈴木則文じゃなくなってしまったので、毛色がガラっと変わってしまったんですけど。

「聖愛女子学園」の外観が映りました。中央に時計台のあるいかにもな学校です。それにしても、いつも不思議なんですが、こういう撮影に協力する学校って何を考えてるんでしょうね。

ま、それはともあれ、そこの「三年A組」では女教師が生徒に訓話中。「幸いにしてみなさんは、良家の子女であり、才媛の誉れ高く、多大の寄付金を納めてこの名門高に学ぶ限り、その将来は約束されているのです」。しかし、その話を聞いているのが、野中鷹子(池玲子)やら速水絹枝(衣麻遼子)だったりするので、どう考えても眉唾なんですけど。

一方、「三年D組」では男教師(大泉滉)がやる気ゼロで出席を取っています。もちろん出席を取っても授業はそのまま自習に。というのも、エリートのA組に対して、こちらは貧困家庭の集まるクラスなのです。特に基地の町ということもあり、山崎リンダ(叶優子)をはじめ、父親がいないハーフが多いようです。

もちろん、エリートA組とごみ溜めD組との仲が良いはずもなく、A組のずべこうグループ「紅ばら会」と叶優子たちは一触即発みたいですよ。「いいかい、聖愛学園で番を切るのは紅ばら会と決まってるんだ。それ以外のグループはいっさい認めないからね」と池玲子が脅しをかけても、「知ったこっちゃねえよ」と叶優子はうそぶいています。と、衣麻遼子が「お前たち、踊ろうって言うんだね。今日ははっきりケリをつけてやるよ」と先端をツンツンにとがらせた赤い傘をスチャっとかまえました。

「やめろ」。そこに現れたのは紅ばら会の番長、西園寺美也(太田美鈴)。「こんな連中と踊ってる暇はねえはずだろ。絹枝(衣麻遼子)、今日は紅ばら会の番長を決める大事な日じゃないか」。そうそう、現番長の太田美鈴が北海道に転校するので、新しい番長を投票で決めるみたいですよ。それも教室の机で、みなさんせっせと投票用紙に名前を記入して、黒板に結果を書いていくみたいな。

学級委員決めるんじゃないから、それはないよなあと思いつつ見守っていると、結果は一票差で池玲子が衣麻遼子を破り、次の番長になったみたいですよ。良かったね、池玲子。しかし、寸善尺魔じゃないですが、いいことは続かず、たちまち悪いことが起こるのが、映画のお約束ということで。

グワッシャーン。泥酔した池玲子のお父さんが、自動車事故を起こして死ぬという事件が起こりました。「無残!!恐怖の三重衝突」「野中市議泥酔運転」「妊娠五カ月の女性を道連れ」などの扇情的な見出しが紙面を飾ります。しかし、実はこれは仕組まれた罠。なにやらアヤシイ外人たちが、泥酔させたお父さんと女の人を、ブレーキに細工した車に乗せて殺したのです。

お母さん(三原葉子)と一緒に嘆き悲しむ池玲子ですが、さらに辛い運命が待っていたようです。「野中クン。君を今日から三年D組に編入することに決まった」と校長先生(遠藤辰雄)は言います。「スクラップコースに」と愕然とする池玲子。「君はもう2カ月も所定の寄付金を納入しておらん」。ガガーン。あんなにバカにしていたD組に行けだなんて……。もちろん紅ばら会はA組の生徒だけという掟なので、池玲子は番長をクビ。D組でもイビられたのは言うまでもありません。

ところで、衣麻遼子のお父さんで聖愛女子学園のPTA会長でもある速水勇策(名和宏)が、なにやら外人と密談中ですよ。どうやら二人は麻薬の密輸、密売をしているようですね。おや、それに、そのシェパードという外人は、なんと池玲子のお父さんを殺した犯人じゃありませんか。密談も終わり、シェパードは言います。「ところで速水サン。おナがいしてオッたレディどーなりましたか?」。それにニヤリと笑うことで答える名和宏。ふっふっふ。

はい。シェパードがお願いしていたレディとは池玲子のお母さんな三原葉子だったようです。名和宏の甘言に乗って、ついシェパードに抱かれてしまう三原葉子。もちろん最初はお金のためだったはずですが、そこは三原葉子のこと。気づけば自宅で、それも昼間からわんわんスタイルでアッハーンです。と、そこに池玲子が帰ってきましたよ。ガーン。まさにビッチ(雌犬)な姿のお母さんを目撃してショックです。

ヨロヨロ。自棄になって町をさまよう池玲子。おやD組の面々が歩いてきましたよ。どかん。叶優子と肩がぶつかったみたいですが、気にしない、気にしない。「待ちな」。しかし叶優子は気にしたみたいですね。「お前も一度は紅ばら会で番を張ったんだろ。このメリケンリンダとのタイマン、受けないとは言わさないよ」。「るさい、このヤロ」。池玲子のイライラパンチがさく裂。このヤロ、このヤロ、このヤロ。あう、あう、あう。あっというまに叶優子はコテンパンです。「あんた、なかなかやるじゃない。気に入ったよ」。勝者の池玲子を称える叶優子。というか、そうでもしないとカッコがつきませんもんね。

まあ、そんなこんなで意気投合して、D組の仲間に入れてもらうことができた池玲子ですが、聞くと見るとでは大違い。パパのスキャンダルでヘコんでいる池玲子に比べ、D組の子たちの生い立ちはより悲惨です。ハーフと言えば聞こえがいいものの、要は混血児の集まり。米兵である父の顔はおろか、名前すら知らない子ばかり。さらに叶優子にいたっては、お母さんが米兵に犯されて生まれた子だったのです。「リンダ。あんたたちの仲間になって初めて、学園や紅ばら会のインチキさが分かってきたよ」と言う池玲子。「戦うんだよ」。ははあ。「番はあたしが切る」。要は人のいい叶優子たちをだまして、自分が番長になって紅ばら会に復讐したいだけなんですけどね。

さっそく、混血児軍団を連れて三年A組に乗り込む池玲子。「よーく聞きな。恐竜会結成のあいさつに来たんだ」。きょ、恐竜会すか。すごいネーミングだ。ともあれ、仁義を切り終えた池玲子は衣麻遼子に言います。「なお、わたし野中鷹子。番張るに当たりまして、その名も"隼お鷹"と名乗らせていただきます」。いや、隼と鷹って同じようなモノを並べなくても。どうせなら恐竜会なんだし、プテラノドンお鷹とかの方が良かったんじゃ。

ともあれ宣戦布告も終え、抗争開始です。まず動いたのは衣麻遼子率いる紅ばら会。ひとりで電車に乗っていた順子(早乙女りえ)を取り囲み、素っ裸にするという荒業に出ちゃいました。もちろん恐竜会も黙ってはいません。トイレでシンナーをスーハーしていた紅ばら会を二人ほど捕まえて、裸にしてみたり酒を飲ませてみたりしています。なんか、微妙にスケールの小さい抗争ですよね。

よーし。衣麻遼子は直接、池玲子を狙うことに。帰宅途中の池玲子をジープで追い回しています。ぶろろろー。きゃあ。必死に逃げる池玲子を、追いかけて楽しむ衣麻遼子たち。ぶろろろ。ちくしょーー。ぶろろー。ごちん。ああっ、池玲子はコケたひょうしにハネられてますけど。「ヤバイよ。逃げなきゃ」。ぶろろー。衣麻遼子たちは逃げていき、後には池玲子が転がっています。と、そこにダンプがやってきて、イケメン(白石襄)が降りてきました。「おいっ、おいっ」。池玲子を介抱していた白石襄は、ふと池玲子の生徒手帳を見てつぶやきます。「野中鷹子……」。

はっ! 池玲子が失神から覚めると、そこは白石襄のアパート。「どうしてあたしを助けてくれたの?」と茫然としている池玲子に白石襄は言います。「偶然さ。でも君とはまんざら縁が無くもないんだ。俺は尾形二郎」「尾形?」「君の親父さんと死んだ尾形雪子の弟さ」。ということで白石襄の言うには、これは作られたスキャンダルで、真犯人は鋭意調査中だそうです、はい。

さて衣麻遼子は、PTA会長のパパに、うざったい池玲子たちを退学にするよう頼んでみました。しかし、結果はムリだそうです。仕方ない。じゃあ、パパのビジネスパートナーなシェパードさんにお願いしちゃおう。ねえん、シェパードさぁん。

チリンチリン。叶優子がママチャリを漕いでいると接近するジープが。そこにはシェパードの子分たちが乗っています。「ハーイ、カワイコちゃん、はうあーゆー」「何しやがるんだ。放せぇ」。あれええ。強姦されてしまう叶優子です。ビリビリに破けた服、尋常じゃない目つき。家に帰ってきた娘を見て、お母さんは何があったかを悟りました。まさに、自分が昔されたことを娘もされたんでしょう。「こんなことに負けちゃダメだよ。この町の女はね、みんな同じように辛い思いをして生きてきたんだ。ねっ」。しかし叶優子はそれを聞いていないようです。鬼気迫る表情で台所の包丁を引っこ抜くと、お母さんの制止を振り切って出かけていくのです。

うりゃー。外人のたまり場に乗り込み、自分をレイプした外人の一人をブッ刺す叶優子。しかしシェパードは命令します。「シュート・ハー」。いえすボス。バキュバキューン。はい、叶優子は死にました。それもおびただしい銃弾でズタボロになって。

この件について、学校に猛抗議をする恐竜会のみなさん。しかし、学校側は正当防衛だと言い切り、さらに強姦についてもシェパードの意見のまま、証拠がないとの立場で取り付く島もありません。ちくしょう。「そっちがその気なら、こっちにも考えがあるからね」と握りこぶしを固める池玲子ですが、そもそも、叶優子が死んだのを学校に抗議すること自体が、微妙に間違っている気がします。

聖愛女子学園では「創立27周年記念式典」が行われています。やけにハンパですね。その式典で校歌斉唱の時に、「ひとつ出たホイ」とかヘンな歌をうたいまくる恐竜会のみなさん。なるほど、これが「こっちにも考えがある」の正体でしたか。スケールの小ささに涙が出そうです。

イケメンな白石襄とアッハーンなことをしたりしつつも、池玲子は叶優子の死について調べています。その結果、強姦犯の生き残りと思われる男(ユセフ・オスマン)を割り出しました。さっそく、子分を使って男をおびき出します。ノコノコとホテルについてきたオスマンは、「さあ、ここでSM遊びをするのよ」と言われイソイソと縛られていますが、そこに隠れていた池玲子たちがワラワラと出てきましたよ。揃いの赤い胴に、赤い面、さらに赤い竹刀を持った剣道姿です。おりゃあー。みんなでメッタ打ちにしつつ「白状しな。リンダを強姦したのはお前たちだね」と尋問する池玲子。「俺たち、頼まれた」「絹江だね。速水絹枝に頼まれたんだろ」。「(こっくり)」。うなづくオスマンに、池玲子の怒りはまさに頂点に達しました。「この決着は必ずつけてやる。いいかい、みんなの命はこの隼お鷹が預かるよ」。

さて、覚えてますか、紅ばら会の前番長を。北海道に転校していった太田美鈴は、早速むこうの学校を退学して、演歌歌手になったみたいです。そして、再び舞い戻ってきて、名和宏の経営しているキャバレーで熱唱中。「いやあ、見違えちゃったよ。絹枝と同級生の君がこんな立派なタレントになって戻ってくるとはね」と名和宏はデレデレみたいです。

白石襄は苦労の甲斐あって、名和宏やシェパードの麻薬倉庫を見つけました。よし、これで奴らもおしまいだ。と、喜んだのもつかの間、名和宏たちに見つかっちゃいます。ばきゅーん。あうっ。撃たれてしまう白石襄。しかし、死んでいませんでした。たまたま、その麻薬倉庫を通りがかった太田美鈴が発見してくれたので、一命を取り留めたみたいです。なんだか太田美鈴はストーリー上、重要な役みたいですね。

電車で全裸プレイをさせられちゃった早乙女りえが、紅ばら会に使者として出向いてきました。「喧嘩状」を渡された衣麻遼子は早乙女りえに言います。「分かった。帰って鷹子に伝えな。しかと、このタイマン引き受けたと」。しかし、よく分からないんですが、そのまま早乙女りえを捕まえちゃってますが。早速、池玲子に電話をする衣麻遼子。「紅ばら会がお前たちみたいな奴らと血を流すわけにはいかない。順子の命が欲しけりゃ、恐竜会の解散状を持ってきな。一人ひとりの血判を添えてだ」ガチャリ。「番長どうする」と困り果てる恐竜会のみなさん。うーん、どうしよう。と、そこに太田美鈴がやってきましたよ。どうでもいいけど、大活躍だな。「久しぶりだね、鷹子」「美也っ」「尾形二郎って知ってるかい?」。なんと白石襄が瀕死の重体だと聞いて、ビックリの池玲子。ああん、待ってて、すぐ行くわぁ。

大活躍の太田美鈴は、今度は紅ばら会のアジトに。「その子は私が預かる。文句はないだろうね。いきさつは全部聞いた。あたしはお前をもう少しマシな奴だと思っていたよ。お前も紅ばら会の番長なら、正々堂々と恐竜会のタイマンを受けな。OB番長として、しかと、このスペードのお美也が見届けさしてもらうよ」。

冗談みないなぶっとい注射で、白石襄に献血してあげた池玲子は、「二郎、これからどうしても行かなくちゃならないとこがあるの。ううん、すぐ帰ってくるわ。待っててね」と別れを告げると、決闘場所へダッシュ。いえ、大量献血したので、ヨロヨロですね。

しかし、池玲子を待たずに喧嘩は始まっているみたいです。木刀や角材を手に手にドツキ合いをしている恐竜会と紅ばら会のみなさん。げしっ、ごすっ。ぼこっ、ばきっ。ほとんど喧嘩というより、戦国時代の合戦みたいなんですけど。ま、それはともあれ、池玲子がようやく駆けつけてきましたよ。「どけー。どけどけーっ」ズドドド。「勝負はこれからだ。行くよっ」。うりゃー。子分の手助けもあって、衣麻遼子をギッタギッタにドツキまくる池玲子です。「お前はこれで終わったわけじゃないよ。さ、来なっ」。

絶賛活躍中の太多美鈴は名和宏を電話で口説いています。もう、喜びまくってホテルにやってくる名和宏。さっそく太田美鈴を抱こうとすると、可愛いことを言うじゃありませんか。「あたしベッドで顔を見られるのがとっても恥ずかしいの」。そう言って、仮面舞踏会のマスクをしちゃいましたよ。よっしゃ、よっしゃ。おじさんシャワーを浴びてくるからね。待ってるんだよ。シャワーから戻ると太田美鈴は薄暗いベッドにじっと横たわっています。いただきまーす。早速、あの手この手で責め始める名和宏。まるで麻酔でも効いているかのように反応の鈍かった太田美鈴も、超絶テクニックの前に興奮してきたようですよ。ハアハア。喘いでいる太多美鈴を見て、名和宏はどことなく違和感を感じました。なんだろう、このイヤな感じ。名和宏が恐る恐るマスクを取ってみると、「ひいっ」。なんと、それは娘の衣麻遼子じゃありませんか。朦朧としていた衣麻遼子も、自分を抱いていたのが父の名和宏だと気づき、「んあーーーっ」と絶叫しています。と、そこにドヤドヤと警官やらマスコミが駆けつけてきました。ひーっ、見るな、写真を撮るなあ。

叶優子の復讐を遂げた池玲子は病院に戻ってきました。しかし、アレ?うそ。やめて。なんと白石襄がたった今、様態が急変して死んでしまったみたいです。ガックリしつつ、 白石襄のアパートに向かう池玲子。目当ては、彼の形見のサブマシンガン。そう彼の代わりに復讐しなくちゃ。やはり彼の残したダンプに乗って出撃する池玲子。目指すはラスボスのシェパードということでひとつ。

ズガガガガ。秘密倉庫でトラックに麻薬積み込み中のシェパードたちを見つけると、池玲子はサブマシンガンの引き金を絞りました。ズガガガ。倒れていく子分たち。そしてシェパード。さらに弾丸を叩き込み続けると、ボンッ。おお、トラックも爆発だ。燃え上がる炎に照らされながら、池玲子は一心不乱に撃ち続けるのです。ズガガガガ。


正直に言って、アレコレ盛り込みすぎな映画だと思いました。まあ、監督デビュー作で、あれもやりたい、これもやりたいという気持ちは分かるんですが、話を詰め込みすぎです。ま、太田美鈴を都合よく使い過ぎているのはともあれ、話としては重層的にできていて悪くありません。それに混血児の問題を入れてみたり、近親相姦で幕というオチも斬新です。でも、コレ「恐怖女子高校」シリーズですよ。芸術ではなく、ピンキーバイオレンスですから。その点で、うーむ、惜しい作品だと思いました。

ちなみに薬師丸ひろ子がセーラー服姿で機関銃(というかサブマシンガン)を撃ちまくるのは、この映画から8年後のこと。その意味では、この映画は先を走っていたかもしれません。







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【映画】ハナ子さん

2010-10-15 | 邦画 は行
【「ハナ子さん」マキノ正博 1943】を観ました



おはなし
ハナ子さん(轟夕起子)と五郎さん(灰田勝彦)が歌いまくります。ま、ミュージカルですから当然っちゃあ当然。

日本において、ミュージカル映画っていうのは、どうも亜流というか継子扱いみたいなところがあります。もちろん皆無じゃありませんけど、ひとつのジャンルを成すほどのマーケットがないってことなのかもしれませんね。個人的にはミュージカル映画が大好きなので、悲しい限りです。その点で、この映画は「戦時中としては」なんて枕詞をつけなくても、立派なミュージカル映画になっていて、素晴らしいのひと言です。

まずはお約束の「撃ちてし止まむ」が映ったあと、東宝舞踊隊の演舞が。くるくる、くるくる。踊っている女の子たちのパラソルが開くとタイトルが現れるオシャレさです。おっと、ステージ上にハナ子さん(轟夕起子)が登場して歌い始めましたよ。「♪わたしは、わたしは健やかな娘♪」。微妙にピンポンパン風味を漂わせつつ、家族を紹介していきます。書き割りに描かれた等身大のマンガ絵がクルっと回転すると、まずはお父さん(山本礼三郎)とお母さん(英百合子)が登場。さらに、背広姿の男性の絵が回転すると、軍服姿の絵にチェンジ。ああそうか。お兄様は出征中だそうですよ。そして、お兄様の帰郷を待っている、嫂さん(山根寿子)に、オチビさんな甥っ子の部隊長坊や(加納桂三)などが、手際よく紹介されていくのです。

「昭和十四年から昭和十六年までのハナコさんの歌物語」のテロップが出たあと、場面はスタジオからオープンセットに。「♪とんとんとんからりの、となりぐみ〜♪」。ご近所のみなさんが歌う、陽気なナンバーです。おばあさんが歌い、近所の夫婦が歌い、酒屋さんが名刺屋さんが、そして豆腐屋さんが。歌詞の内容に合わせた寸劇を演じながら、歌い継いでいきます。なんだか楽しくなってきました。いや、ホントにうまいなあ。

さて、お次はハナ子さんのナンバー。ハナ子さんが自転車を走らせつつ、「お使ひは自転車に乗って」を歌います。これまた気持ちがウキウキしてくるナンバー。自転車の疾走感と歌のテンポがピッタリで素晴らしい。

自転車を走らせたハナ子さんは、出来て間もない馬事公苑にやってきました。広い馬場を駆けて行く人馬一体の妙技が映し出されたあと、ハナ子さんは大きな声で叫びます。「ごろーさーん」。パカラっパカラっ。パカパカ。ポクポク。その五郎さん(灰田勝彦)が馬から降りてきましたよ。「五郎さん、いい話があんのよ」「なんだい」「あのねっ。……言わない」「なんだい、言えよ」「お父さんがね。んふっ。あのね。お父さんがね。五郎くんは立派な青年だなあって。それからね、どうだ?ハナ子、って」。「えっ」と驚く五郎さん。それもそのはず、婚約している二人は、結婚式を一日千秋の思いで待っているのです。もしかしたら、お許しが出るのかも。思わずススキの野で歌い始める五郎さん。やがて、ハナ子さんも歌い出し、二人の声がハーモニーを醸しだします。「♪望みは何時の日も捨てずに生きようよ。ススキの丘に、今日も来て、歌え青い鳥♪」。

その頃、ハナ子さんの家では、お父さん、お母さん、お嫂さんが、まさにその話題の真っ最中。「ねえお父さん。ハナ子と五郎さんのこと、いつまでも婚約のままにしておくわけにはいきませんよ」と言うお母さんに、お父さんは反論します。「ハナ子も五郎くんと適当に青春時代を楽しんでおるよ。それでいいんだ。そういう時代があっていいんだよ」。一聴すると、いいコト言っているみたいですが、本音はやっぱり娘を嫁に出したくないんでしょうね。と、そこにハナ子さんが帰ってきましたよ。お嫂さんはそっと言います。「あのね、結婚式がだいぶ手間取るのよ」「手間取るって」「お義父さんが、婚約時代がいちばん楽しい時だから長い方がいい。結婚式は慌てずに来年の春でいいよって」。ががーん。そんなあ。ガックシするハナ子さんですが、お母さんとお嫂さんに秘策を授けられニッコリ。よーし、お父さんに五郎さんとの結婚式を認めてもらうわよぉ。

お父さんにお灸をすえる花子さん。でっかいお灸ですが、お父さんはやせ我慢。「お灸なんてものは熱いと思っちゃいかんよ」。焦り焦り。ぬぬぬ、熱いけど我慢我慢。「ねえ、お父さん。五郎さんとの結婚は」「ぬぬぬ」「ねえ、今年の秋でいいでしょ」「ぬぬぬ」「ねえ、ねえ」。お父さん、あまりの熱さについ「はい」と言っちゃいましたよ。「いいですね」「はい」。やったあ。これで五郎さんと結婚できるわ。

「五郎さん、うまくいったわよ。今年の秋でいいって」「あ、そうかい。バンザーイ」「バンザーイ。あたしたちの、新しいうちを見つけましょう」「どんなうちがいい」「そうねえ」。ということで、次のナンバーは「楽しい我が家」。二人は夢中になって、夢を歌い続けます。はっ。気づけば、周りにはご近所さんがいっぱい集まって見物中。恥ずかしさに真っ赤になる二人にご近所さんは、声を揃えて言うのです。「おめでとぉー」。

はい、いきなり新婚さんな二人。朝ごはんをつくらなきゃね。トントン。トントン。ハナ子さんの包丁の音が響きます。五郎さんは箒で掃除中。サッサッ。サッサッ。トントンサッサッ。トントンサッサッ。そのまま、それは音楽に。楽しい朝食を終えて、五郎さんは丸の内にお勤めに。「あ、ハナ子。今日は賞与もらうんだよ」「そうお。じゃあ、ご馳走してね」「よし、じゃあお前は今日、お父さんやお母さん、それから嫂さんや部隊長坊や、誘ってくるんだね」「大丈夫、そんなに賞与ってくれんの」「くれるさぁ。何でも奢ってやるよって、言ってくるんだね」。

ルンルン歌いながら実家に行くハナ子さん。「えー、さてみなさま。今日は主人が、五郎さんのことよ、ご馳走しますっ」「お言葉ではございますが、ご遠慮いたしましょう」。始めての賞与なんだから二人で楽しんでおいで、というお父さんの親心に、ハナ子さんはニッコリ。うん分かったわ。ルンルン。歌いながら約束の丸の内へ。「さ、ご馳走してよ」「お父さんたちは」「うーん。それが来ないのよ。二人の邪魔をしちゃ悪いからって」「あ、そう。そりゃ良かった」「どして」「実は賞与を国債でくれたんだよ」「国債なの」「賞与もお国へのご奉公なんだってさ」。むむう、なかなかキビシイですねえ。いっそ、現物支給の方が、まだマシな気も。なにしろ、戦後になると国債なんか紙切れですもんね。ま、そんなことを映画で匂わしたら、検閲官にむっちゃ怒られそうですが。

さて、シーンが変わると、いきなりハナ子さんは妊娠してるみたいですよ。さっそく様子を見に行くお父さん。しかし、どうでしょう。出かけてみれば、五郎さんが門柱の陰にしゃがんで、「もういいかい」とかくれんぼの真っ最中。「何をしているの」「へへ、やってんですよ」「バカバカしい。何をしているんだ」「これにはワケがあるんです」。話を聞くと、お父さんも納得。なんと若い二人は、「かくれんぼ ツモリ貯金」をしていたのです。映画を見たツモリで一円五〇銭。銀ブラをしたツモリで三円。ハイキングをしたツモリで三円五〇銭。そして芝居見たツモリで五円だそうですよ。ハナ子さんは、エッヘンと言います。「どうお、お父さん。おかしくないでしょ」「ほほう、立派」。さっそく、お父さんもかくれんぼ開始。「もういいかい」「まあだだよ」「♪もういいかい♪」「♪ったら、まあだだよぉ♪」。と、今度は五郎さんの妹、チヨコさん(高峰秀子)がやってきましたよ。「おじさん、おじさん、どうしたの」「ああ、チヨコさんかい」「あきれたわね。大人のくせにかくれんぼなんかして」。お父さんとチヨコさんの掛け合いで、楽しい歌がはじまりました。こんなところもステキです。

さて、節約するなら「新体制」ってことで、ハナ子さんの実家に引っ越すことにした若夫婦。よいしょ、よいしょ。リヤカーを押していると、自然にご近所さんが「おかえりなさい」の大合唱です。おや、そこに出征していたご近所の勇さん(中村彰)が帰ってきたみたいですよ。「武運つたなく、こんな姿になって帰って参りました」。たしかに足を引きずっているようですね。「あー。いや結構」ワーッハッハ。豪快に笑う近所のみなさん。えーと、ここは笑うところなんですか。どうも戦前はよく分からん。ま、それはともあれチヨコさんは、勇さんを見て。ポッと頬を染めたりしているようです。

「歩るけ歩るけの道」とかいう看板が映り、ご近所のみなさんは、総出でピクニック。愉快な音楽とともに、ガンガン歩いています。と、ここで、何の前触れもなく東宝舞踊隊のダンスが映し出されました。一糸乱れず、華麗に踊りまくる東宝舞踊隊の娘さんたち。なんか見事すぎて、北朝鮮のマスゲームみたいですね。はい、マスゲームが終わると、杖をついている勇さんと、そんな勇さんを助けながら歩いているチヨコさんが映りました。「♪朝だ夜明けだ。潮の息吹ぃー。うーんと吸い込ーむ、銅色の 船にぃ若さの漲る誇り。うみーの男の艦隊勤務。月月火水木金金♪」。

「というようなワケで」。勇さんとチヨコさんの仲睦まじい様子を紙芝居にして見物しているご近所のみなさんに、隣組の組長さんは言います。「帰還勇士の勇くんとチヨコちゃんとを、隣組でお仲人しようと言うことになりました」。わー、パチパチ。

今だと、余計なお世話もいいとこですが、この当時はこれでOKなんでしょう、きっと。「どうか、子宝部隊を作ってください」と言われ、恥ずかしがるチヨコさん。これも、今、こんな発言をしたらフェミニストのみなさんが、大挙して襲ってくるの間違いなしです。ま、それはともあれ、勇さんとチヨコさんをイジっていると、そこに号外が届きました。お父さんはそれを見て、「ほほう」とつぶやいて、ご近所のみなさんに静粛を求めました。「これはこれはたいへんな発表ですぞ。日本とドイツとイタリーが三国同盟を締結いたしました」。期せずして、沸き起こるバンザイの嵐。「バンザーイ」「バンザーイ」。いや、後世から見ると、それはあんまりバンザイじゃなかったんだよ。むしろバンザイ突撃を生んじゃったし。

さて、帝都を敵の飛行機が襲うなんてことはありえません。ありえませんが、いちおう訓練はしとかないとね。ということで、ご近所のみなさんは総出でバケツリレーの真っ最中。とはいえ、ほとんどノリは運動会です。「♪警報だぁ、空襲だぁ♪」。ヤバイ、すごく楽しそうだ。まあ、そりゃそうです。だって敵の飛行機が、この万全に守られた帝都を襲えるワケはないんですから。ましてドーリットルなんてふざけた名前の陸軍パイロットが帝都を襲うなんて、想像にしても荒唐無稽すぎるっていうもんです。

さらに空襲警報の訓練が行われます。灯火管制のなか、円谷な飛行機が轟々と飛び、高射砲の音が響きます。ズシーン、ズシーン。そんな中、ハナ子さんは、陣痛に耐えていました。やがて、朝がやってきて、ご近所さんの声が聞こえてきます。「空襲警報かいじょー」「訓練空襲警報かいじょー」。その時、五郎さんは素っ頓狂な叫び声を上げました。「できたーー」。どうやら、ハナ子さんは玉のような男の子を産んだみたいです。

たくさんのオモチャのアップ。いろいろなぜんまいオモチャがぐりぐり動いています。そして、東宝舞踊隊のみなさんの素晴らしい踊りが。オモチャの兵隊をモチーフにした幻想的な一編です。これまた見事。

家族が増えて幸せいっぱいなハナ子さんたちですが、五郎さんが出征することに。早速、千人針を求めて、セーラー服の女学生のみなさんに針を持ってもらうハナ子さん。と、そこに会社の送別会を終えた五郎さんがやってきましたよ。おませな女学生たちは、二人を取り囲んで口々に言います。「おじさん出征するの」「ええ、そう」「おじさん、しっかりね」「頑張ってね」「勝ってね」「元気でね」「バンザーイ」「バンザーイ」。

よちよち歩きの子供を連れて、ハナ子さんたちは、思い出の馬事公苑にやってきました。ハナ子さんは思いつめたような表情で言います。「お父ちゃん。ねえお父ちゃん。あたし、お父ちゃんに何をしてあげたらいいのかしら」「何もしなくていいよ」「だって、それじゃあたし寂しいのよ。ね、お父ちゃんの喜ぶことなら何でもしてあげたいの」「何でもうれしいよ。お前のすることなら」。うーん、困ったなあ。そうだ。「お父ちゃん、でんぐり返しするわ」。そういうと、ハナ子さんは芝生の上を、ごろん。ごろん。何回もでんぐり返しします。さらに、ベロを出してヘンな顔をしたり、踊ってみたり。
そして、二人は声をそろえて、昔と同じススキの野で歌をうたうのでした。


この映画が公開された1943年2月25日というと、ミッドウェーはもちろん、ガダルカナルから日本軍が「転進」したあとだったりします。つまり、敗北への急坂を、加速度をつけて転がっている真っ最中。まあ、だからどうしたということもないんですけどね。

そもそも、この映画を語るに当たって、「戦争中に作られた映画としてはスゴすぎる」と必要以上に持ち上げたり、もしくは「ミュージカルの仮面をかぶりながら、実のところ国民の目をあざむくプロパガンダ映画だ」と批判したりするのは、どうかと思います。

どうしても、我々は戦後日本の価値観なり基準で、戦前の映画を「採点」したい欲望にかられがちですが、単純に、良くも悪くも1943年初頭という時代状況の中で作られたミュージカル映画の傑作と観るのが正しいんじゃないかと。

ま、そんな堅苦しい話はさておき、主演の轟夕起子は素晴らしいです。戦後の肥満して、性格悪そうな役どころしか知らなかったので、うわっ、こんなに可愛いのかとビックリしました。宝塚出身だけあって歌もうまいし、まさにミュージカルスターの貫禄たっぷりです。灰田勝彦の、なんともいえない声質もいいし、高峰秀子の歌も折り紙付き。歌う場面はありませんが、山根寿子もとてつもなくチャーミングで、まさに大満足の映画でした。







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【映画】恐怖女子高校 暴行リンチ教室

2010-10-08 | 邦画 か行
【「恐怖女子高校 暴行リンチ教室」鈴木則文 1973】を観ました



おはなし
世の中には、色んなリンチがあるものです。

恐怖女子高校シリーズの第二弾です。かなりエロさが増し、観ててツライ部分も。個人的に、おっぱいくらいはウエルカムですが、あんまりエロイのはちょっと。

東映の三角マークをバックに、キャアアという叫び声が。画面が変わると、女子高生の秋山道代(城恵美)がセーラー服を剥ぎ取られていますよ。おどろおどろしい科学実験室、そして城恵美を囲むのは、同じセーラー服の一団。ただし、赤いマスクに赤い手袋。そして、腕には「風紀」の腕章を付けているようです。

城恵美を抑えつけ、腕に採血用の針をぶっさす風紀委員たち。ポタ。ポタ。フラスコに血液がたまっていきます。それを城恵美に見せつけつつ、リーダー(ってスルドイ視線で衣麻遼子なのはバレバレなんですけど)が言います。
「人間はね、体の中の血液の3分の1が無くなったら死ぬんだ。生物の授業で習ったろ。今、お前の体の中の血はだんだん少なくなっている。そう、フラスコの、この線まで血がたまったらお前は死ぬ。死ぬんだよ。それまで時間はたっぷりある。ふふふ」。

衣麻遼子がちゃんと授業を聞いているというのがすでにホラーなんですが、それにしても、これはキツイ。ポタ。ポタ。フラスコに自分の血がたまっていくのを、為す術も無く見ている気持ちは想像もできません。もっとも、フラスコにたまっていく血は、陰で別の風紀委員が、デカイ注射器で注入してるだけなんですけどね。

ポタ。ポタ。城恵美は恐怖のあまりガクガクブルブルし始めました。ポタ。ポタ。目を見開いて、フラスコを見つめる城恵美の表情に、狂気の影が差します。ポタ。ポタ。うぎゃああ。狂ったように暴れて、風紀委員たちの手から逃れた城恵美は、そのまま屋上にダッシュです。しかし、あっという間に追い詰められ、両手で屋上の端にぶらーん。ぷるぷる。両手の感覚が無くなっていきます。でも、手を離したら、墜落死。と、風紀委員たちが、必死に体重を支えている両手をゲシゲシと蹴り始めましたよ。あっ痛い。つるっ。あれぇーー。ぐしゃっ。

パトカーの赤色灯がクルクルと回っている横で、女子高生たちが血溜まりに砂をかけています。やはり大事件に発展したのでしょうか。しかし、待ってください。校舎から出てきた刑事(近藤宏)は、こんなことを言っていますよ。「じゃ、教頭先生。事故死ということで処理しますからご心配なく」。うむ。軽くうなずいた教頭(今井健二)は、生徒たちに命じました。「門を閉めろ」。ぎぎー、ガチャン。と、そこでタイトルがどどーん。

うん、つかみはバッチリですね。なんかスゴそうな映画です。ここで整理すると、この学校の名前は「希望女子学園」。政治家の佐藤茂が設立した高校で、校長先生の中田角造はお飾り。と、や実権はやり手の教頭先生・石原千太郎が握っているようです。もちろん、この名前は政治家の名前のもじりなのは言うまでもありません。

さて、そんな希望女子学園に3人の転校生がやってくることになりました。もっとも、それぞれ事件を起こし、手錠をはめられての登校です。まずは、群馬から来たカミソリレミこと北野レミ(太田美鈴)。これは武闘派のようです。そして大阪からはシロシロお京こと久保京子(佐分利聖子)。こちらは、打って変わってナンパというか、エロ担当。そして、最後の一人は、見るからにスゴそうな女(杉本美樹)。3人を検分していた教頭は言います。「で、お前が風間典子か。横浜セントマリア女学院中退。補導歴4回。暴行傷害にて保護観察処分。街へ着くなり、学園の恥をさらすようなことしやがって。いいか、お前たち。世間では、この学園のことをなんと呼んでるか、念のために教えてやる。この希望学園はな、スケバンの墓場と呼ばれてるんだ。風紀委員っ」。呼ばれて、さささっと野坂洋子(衣麻遼子)たち風紀委員がやってきましたよ。「転入した3人を引き渡す。今日から寮に入れて、集団生活の規律を徹底的に叩き込め」。

さて、衣麻遼子たち風紀委員が鉄の規律で管理している寮ですが、もちろん、反対派もいるようです。ほら、今も、そんな3人がうわさ話をしていますよ。「どう。便りになると思う、あの3人。あの風間典子ってヤツ、頼りになりそうよ」。そう言うのはカツアゲ純子(早乙女りえ)。うーん、と悩んでいるのは優等生のとも子(浅野由紀子) です。

エロ担当の佐分利聖子がシャワーを浴びています。どうでもいいんですけど。この人、若い頃の高岡早紀っぽくて、童顔なのにセクシー。観ていると、鼻血が出そうです。もっとも、鼻血が出そうなのは、風紀委員の敏江(叶優子)も同様。大きな目を見開いて佐分利聖子の裸身を覗いています。と、クルっ。佐分利聖子が振り向いて、言いましたよ。「あんたレズやろ」。ぎくぅ。「なんだって」「うちの目はごまかせへんで」「うるさいね。このシャワーは風紀委員専用。今度、勝手に使ったらリンチだよ」。

ということで、3人まとめてリンチ兼セックスチェックをされることに。「風紀のシャワーなんか使いやがって」「13年早いよ」。まあ、要は裸見せタイムなんですけどね。

さて、特別奨学金という名前のワケ前を配りつつ、教頭の今井健二は風紀委員に激を飛ばしています。「創立記念日も間近に迫ってきたし、佐藤理事長も次の総選挙の準備を兼ねて、近々お国入りをなさるはずだ。こんな重大な時期に何か事件でも起きたら、俺の責任だ。みんなしっかり頼むぞ」。「はいっ」と答えて去っていく風紀委員たち。会議室に残ったのは、今井健二と、婚約者の三島先生(碧川ジュン)です。うっふーん。むちゅー。さらに、会議室を出た今井健二は、図書室で衣麻遼子と、うっふーん、むちゅー。なんていうか、これは羨ましいのか羨ましくないのか、微妙すぎて判断できません。

特別奨学金を貰って懐の温かい風紀委員たちは、今井健二の情婦・孝子(三原葉子)がやっているバーで豪遊中。いや、いちおう高校生だろ。まあ、そうは見えないですけど。特に衣麻遼子あたりは。ともあれ、そこにサングラスをかけた謎のトップ屋・若林(渡瀬恒彦)が声をかけてきました。「君たち、希望学園の生徒か」。「はい」と意外に素直な返事をする風紀委員たちに、さらに問いかけます。「秋山道代って女の子が死んだ事件、知ってるだろ。詳しいこと知りてぇんだ。いいネタなら買うぜ」。もちろん、それで教えてくれたりするワケもなく、渡瀬恒彦は仕方なくママの三原葉子に事情を聞きつつ、ついでにむちゅーっとキスをしたりしてますよ。

転校生3人組の杉本美樹たちが、屋上でくつろいでいると、優等生の浅野由紀子が声をかけてきました。「あのう。寮入り検査の時、ちらっと見てしまったんですけど、あなたは確か、十字架のペンダント……」。「これかい」と胸元から十字架を杉本美樹が引っ張り出すと、なんと優等生も同じペンダントを出してきましたよ。「これは」「亡くなった秋山道代さんのものです。あの人をご存知ですね」。そう、秋山道代こと城恵美は、自分に何かあったら、これを杉本美樹に渡してくれと言い残していたそうです。と、カミソリレミがビックリした表情で杉本美樹に言います。「あんた確か、新宿スケバン同盟が最後まで手を出せなかったっていう、十字架番長」。「そうさ、あたしはハマの十字架番長。殺された道代は、あたしの片腕でね。腕も度胸も超一級の番格だった。滅多なことで死ぬような子じゃなかったんだよ。よっぽどひどい仕打ちをされたんだ」。キリっ。いや、キリっじゃないから。ハマの十字架番長ですよ。ネーミングがステキすぎて、どう反応していいのか分かりません。

ともあれ、エロ担当の佐分利聖子が「あんたやる気やね」とキリっ。腕力担当のカミソリレミも「手伝うよ、あんたがここの番長だ」とキリっ。さらに、「番長。話は聞いちまった。あたしは静岡生まれのカツアゲの純子って言うんだ」と早乙女りえがキリっ。ついでに美人局のお伸(水沢夕子)も「列組むよ」とキリっ。あっというまに、グループが出来上がり。

さて、風紀委員の叶優子が女子トイレで用を足していると、そこにエロな佐分利聖子が乱入してきました。「な、何すんだ」とビックリしている叶優子に、「好きなんや。欲しいんや、あんたが」と佐分利聖子はネットリちゅーをしてきます。えーと、ここからはちょっと自粛。とりあえず、AVなみのシーンが展開していると思っていただければ。ともあれ、佐分利聖子の超絶テクに、叶優子は「おねえさまーん」と色んなところがトロトロです。「教えて。秋山道代は殺されたんやろ」と聞かれて、うなずく叶優子。「風紀委員がやったんやろ。どこでやった」「化学実験、し、つ。あっはーん」。

報告を受け、「やっぱりそうか」と腕組みをしている杉本美樹。「いっちょやるか」とメンバーが盛り上がっていると、そこに「はっはっは。甘いよ、甘いんだ。そんなことじゃ、あいつらを叩きのめすことはできんな」と渡瀬恒彦が乱入してきました。えーと、どうする? 無視無視。はい、無視されてますけどね。

ということで、渡瀬恒彦をサクっと無視した杉本美樹は、ホームルームの時間に叫びます。「先生。緊急の議題がありますっ」。秋山道代の死を、「事故死ではありません。リンチ殺人事件です」と断言してみる杉本美樹ですが、それでみんなが恐れ入るなら、警察はいりません。というか、この場合は警察もグルだし。うぉー、やっちまえぇ。衣麻遼子たち風紀委員と乱闘になる杉本美樹グループです。

その結果がうやむやなまま、シーンが変わると、そこは化学実験室。どうやら、秘密を喋ったことがバレた叶優子が衣麻遼子たちにリンチを受けているようです。「レズなんかにメロメロになりやがって。今度はこれでもたっぷり味わうんだね」。ぐいっ。股間に裸電球を突っ込まれちゃいました。「暴れるんじゃない。電球が破裂するよ。よーし、そのままで腕立て伏せ50回」。1、2、3、4。「50回やりとおしたら許してやるよ。いいかい、少しでも腰を落としたら、中の電球が破裂して、お前のボックスはめちゃめちゃになるんだよ」。

また、いきなりシーンが変わると、そこは「反省室」という名の牢屋。杉本美樹、佐分利聖子、それにカミソリレミが収監されているようです。「飯抜き、水抜きで三日目かぁ」とぼやくレミに、杉本美樹が「しっ」と言います。バタン、ぎぎーっ。おお、カツアゲの純子こと早乙女りえが差し入れに来てくれたようですよ。じゃ、番長、また来るからね。しゅたた。忍者のように去っていく早乙女りえですが、あっさり風紀委員に見つかってるんですけど。

ということで、またも化学実験室に。みんなに押さえつけられ、早乙女りえは水を飲まされています。ごぼごぼ。おえーっ。ごぼごぼ。おえーっ。「トイレには絶対行かせない。みんなの見てる前で、思いっきり弾きだすんだ」と衣麻遼子が般若の形相で言っていますが、早乙女りえは聞いてませんね。というか、真剣におえーっとしてるんですけど。うら若い女の子なのに、仕事とはいえムゴすぎる。

さて、仕込みは終わったので、教室に戻された早乙女りえ。う、うう。うううっ。膨れ上がる尿意に顔は真っ青。というか女優どころか人間を捨てた変顔です。ぐぬぬぬ。ぐぬぬぬぬ。「はっ、はっ。あぎゃー」。じょじょじょーー。あーあ、漏らしちゃった。

知らぬ間に反省室から出ていたらしいカミソリレミが、校長室に駆けこんできました。「先生、タイヘンです。すぐ来て下さい。学校の名誉にかかわる一大事なんです」。そのまま、カミソリレミに連れられラブホテルに行く校長先生。そして、待ち構えていた杉本美樹たちに逆レイプされちゃいましたよ。「やめて、やめてぇ」と言いつつ、その気になっていく校長先生。「うほーっ。天国だ。極楽だあ」「わしゃ、女学生とヤリたかったんじゃあ。天国だあ」。

はい、その様子を取ったテープを学校放送で流す杉本美樹。校長先生のハレンチな叫び声が、そのまま学校中に流れちゃいましたよ。お前はクビだ。教頭に怒られ、ショボショボと学校を去っていく校長先生のために、生徒はみんなで「仰げば尊し」と歌うのです。

ブロロロー。金色のジャンパーを着た女(池玲子)がバイクで疾走中。そのまま、希望女子学園に入り、さらには廊下を走ってますよ。ガラッ。3年A組に入ってきた池玲子は、杉本美樹を見つけてニヤリ。「ご一統さん、お高いところよりの、突然の仁義失礼いたします。わたくし、訳ありましてそちらの十字架典子さんにタイマン仁義発します」。池玲子がスチャっと手を出すと、反射的に杉本美樹も手を出しました。「わたくし、生まれも育ちも関東です。関東は、太宰治がグッドバイした桜上水に生まれ落ち、ネオンきらめく東京の副都心、ジュクの巷に育ちました。目と鼻の先のネリカン出たり入ったり。今じゃ、関東スケバン同盟、38グループおさえましてのスケバン。多岐川・ま・きです。お前さんとサシのタイマン、お願いいたします」。おっと池玲子が仁義を切った以上、こっちもそれなりの返事をしなくちゃいけませんね。「仁義受けさしてもらいます。わたくし、みなと横浜伊勢佐木生まれ。ガキのころよりミッション育ち。小学中学高校と、流れ歩いた学校十と四つ。男泣かせの十字架に、女を捨てたスケバン稼業。ひと呼んで十字架典子。お前さんのタイマン仁義、しかとお受けいたします」。ということで、二人は人気のないタイマン場所に向かうのですが……。

とはいえ、今はタイマンしてる場合じゃないんだよねえ。「頼みがある。逃げも隠れもしない。だからしばらく時間を」。事情を説明すれば、そこは池玲子もひとかどの女。「いいだろう。ただし条件がある。おいで」と言ってくれました。さ、このドラム缶をバイクで飛んだら、待ってやるよ。へっ、これを飛ぶんすか。こんないっぱいあるのに。「さ、どうする」。むきー。飛ぶよ、飛びますよ。ブロロロー。バイクを走らせる杉本美樹。ぴよーん。はい、飛べました。「さすがだね、十字架番長」「約束は」「いいともさ、5日後にまたやってくるよ」。と、そこにキザ全開のトップ屋、渡瀬恒彦が襲来。よく分かんないまま、杉本美樹と共闘することになったみたいですよ。

渡瀬恒彦と組んだ杉本美樹グループは、ハニートラップを仕掛けることにしました。希望学園を支える市長や署長一派をハメてやるう。えーと、どうやって。それは乱交ですよ。乱交パーティ。まんまと引っかかった市長たちが、杉本美樹グループと楽しく乱交しているところを渡瀬恒彦が写真に収める作戦です。パチリ、パチリ。よーし、これで、親玉の国会議員・佐藤茂をゆすってやるう、と大喜びの渡瀬恒彦ですが、杉本美樹たちにいったい何の得があるのか。むしろ損してるんじゃ。そのうえ、怒った学園側の逆襲を受けて、お漏らし早乙女りえたちは捕まっちゃってるし。

さあリンチだあ。なんだか嬉しそうな衣麻遼子は、「アメリカさんがね、ベトナムで使った拷問さ」と発電機のダイヤルをグリグリとひねります。ブーン。「ちょいとした電気遊びってヤツさ」。早速、お漏らし早乙女りえのおっぱいに片方の電線をくっつける衣麻遼子。「ミルクボタンの次はボックスのかわいいクリちゃんにつなぐんだ」。にへへ。変態だ、この人、間違いなく変態だ。とそこに、「待ちなっ」と杉本美樹、カミソリレミ、そして佐分利聖子が乗り込んできましたよ。「お前ら、この化学実験室で、こんな風にして道代を死に追いやったのかい」。「規律に従わぬ者は、全てリンチによって総括する。それが掟だ」と不気味に笑う衣麻遼子に、杉本美樹は言い返します。「そうかい。それじゃリンチにはリンチで答えてやる。お前らの掟が、どんなにインチキかってことを思い知らせてやるよぉ」。どりゃっ。はい、杉本美樹陣営敗退。早乙女りえの代わりに、杉本美樹が電気遊びのリンチを受けちゃうのです。ビリビリビリ。あうーっ。

さて衆議院が解散ということで、真の黒幕、悪の理事長、ついでに悪徳政治家な佐藤茂がお国入りをしてきました。って、演ずるのは金子信雄ですけど。早速、生贄に差し出されることになったのは、優等生の浅野由紀子。「おいで、おいで、とも子ちゃん。六法全書、知っとるか」「はい」「おい、ちょっと読んでみて」。そのまま憲法第9条を読ませつつ、優等生を強姦する金子信雄です。「やめてください。おかあさーん」。ハラリ。六法全書がめくれると、そこには刑法177条、強姦の罪が映るのです。ここらへんは、鈴木則文監督の悪趣味全開ですねえ。ま、それはともあれ、レイプされた優等生がシクシクしているところに、渡瀬恒彦がやってきました。どうやら、乱交パーティの写真をネタに金子信雄をゆすろうとしているみたいですね。確かに、市長たちのスキャンダルは、選挙戦を前にした金子信雄にとって、ぜひ避けたいところ。明日までに5千万円ちょーだい。うーん、分かったよ。

ブロロロ。5日経ったので、また池玲子がバイクでやってきました。と、その前に渡瀬恒彦が立ちはだかります。「おめえのライバルの十字架典子、今、学校に捕まってる。助けてやってくれ」。ははあ、そうですか。じゃあ、ちょっくら。

ドカーン。教室に乗り込んだ池玲子は、風紀委員たちをパンチでノックアウト。縛られているグループのみなさん。そしてオッパイ丸出しの杉本美樹を救出しました。

シーンが変わると、学校で首吊り自殺をしている優等生。黒板には「さようなら、とも子」と書いてあります。これには、今まで黙っていた一般生徒たちも激昂しました。「今こそ、なんとかしなきゃいけないのよ」「でも、どうやって戦うの」「できるわ」「そうよっ」。と、そこに今井健二が悪徳刑事たちをつれてやってきましたよ。ふふふ。「はっきり言ってみろぉ」。思わず黙りこむ一般生徒たち。しかし、「はっきり言ってやろうじゃないか」と教室のスミにいた杉本美樹が声を上げましたよ。おっと、いつの間に。「この学校は正真正銘の動物園だ。理事長以下、みんなケダモノが生徒の生き血をすすって生きてるんだよぉ」。よく分からないまま、今井健二たちを教室から追い出し、衣麻遼子とタイマンを始める杉本美樹です。ぽか、ぽか。げし、げし。いや、それでも、この戦いは熱いです。両者がっぷり四つの戦い。お互いにつかみ合い、一進一退の攻防。冗談抜きで、演じている二人は、かなり体力を使ってると思いますよ。まさに、ピンキーバイオレンス映画史上のベストバウトと言っていいと思います。ま、それはともあれ、最後には衣麻遼子がおっぱいポロリで失神するんですけどね。

金子信雄はオカンムリです。それもそのはず。今井健二に、地元の裏工作を一手にまかせておいたのに、トップ屋ごときに弱みを握られるはめになるとは。まったくあいつはケシカラン。あいつはクビにしてやるう。と、そこに今井健二の婚約者、碧川ジュンがやってきました。「夫の不始末を償うのは妻の務め」と言いつつ、服を脱いでいきます。ゴクリ。えーと、いただきまーす。まさに「金子信雄の楽しい夕食」ですね。東ちづるじゃないけど。もっとも、ここからは激しくエロかつ売国的なので自粛ですが、ヒントは金子信雄の電マ攻撃と、日の丸の歌。

……。……。ま、そういうことで、そこに渡瀬恒彦と杉本美樹グループがやってきました。突然の訪問に、碧川ジュンは大事なところが痙攣。金子信雄とくっついて、離れない状態に。あれー。そのまま運搬されちゃいます。

一方、今井健二は怖い顔を、さらに怖くして苦悩中。それというのも、学園の創立25周年記念式典だっていうのに、理事長の金子信雄はなぜか来ないし、ついでに生徒たちまでも式典をボイコットしているからです。これじゃ、来賓たちの手前、カッコつかないったらありゃしない。むむう。仕方ないので、ガランガランの講堂であいさつを始めます。えー、理事長の佐藤先生は、急きょ東京に戻ることになり……。と、講堂の天井から声がカミソリレミの声が聞こえましたよ。「理事長は、ここにおるで」。スルスル。裸でくっついた二人が下ろされてきましたよ。さらにロープを伝って、杉本美樹たちもスルスル。「石原さん、あんたたちがいくらこうやって学園の体面を取り繕ったって、希望学園は潰れ始めてるんだよぅ」。確かに杉本美樹の言うとおり、あちこちでガラスの割れる音が聞こえてきました。「ほら聞こえるだろ、あの音が」。

うわーっ。一般生徒たちの暴動が始まりました。とは言え、東映の怖い顔をしたお姐さんたちではないので、わりとみんな楽しそう。さらに池玲子も、子分たちを連れて、ザッザッと乗り込んできます。早速、機動隊が駆けつけますが、校門はバリ封済み。「帰れぇ」。棒と投石で攻撃してくる生徒たちに、さすがの機動隊もタジタジです。「よーいしょ」。理事長車もひっくり返され、爆発炎上。ゆすった5千万円が一緒に燃えていく渡瀬恒彦は涙目ですが、みなさんはキャンプファイヤー気分で、エンジョイしているみたいです。

まるで修学旅行に出かけるような雰囲気で、警察の護送車に載せられていくみなさん。ふと、杉本美樹は池玲子につぶやきます。「最後の勝負がまだ残ってたね」。池玲子はニヤリと笑いつつ答えます。「ネリカンまでお預けさ」。「行こうか」「行こう」。


この映画。おそらく、相当にボリュームたっぷりの脚本だったんじゃないでしょうか。でも、それを適当につないでいるので、シーンがつながらない、つながらない。裏切ってリンチされた叶優子は、次のシーンでは、普通に風紀委員の中に入ってるし、お漏らし早乙女りえに至っては、リンチを受けた次のシーンでは、これまた普通に校長先生を逆レイプしたりしていますからね。他にも、細かくみると「なんじゃこりゃ」満載です。

もっとも、そんなことは瑣末な話。鈴木則文監督の映画は、「バカだなあ」と笑いながら観るのが正しいスタイルだと思うので、面白ければそれでいいのです。

池玲子と杉本美樹がバイクに乗る姿は単純にカッコイイし、衣麻遼子の怪演も絶好調。エロ気が強すぎるのが、個人的には残念だけど、その分、杉本美樹と衣麻遼子のバトルが素晴らしいので、差し引きプラスです。

とにかく、無条件に面白い。鈴木則文監督が、東映京都から東映東京に異動する直前の、まさに爛熟期にある映画だと思いました。







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【映画】私たちの結婚

2010-10-01 | 邦画 や〜わ行
【「私たちの結婚」篠田正浩 1962】を観ました



おはなし
正確に言うと「お姉ちゃんの結婚」かもしれません。

松山善三と篠田正浩の共同脚本。ってあたりで、なんだかヘンな感じです。木下恵介の愛弟子で松竹らしさを体現している松山善三に、もう一方は松竹ヌーベルバーグの篠田正浩ですからね。どんな作品になるんでしょうか。

煙突が立ち並ぶ川崎の工業地帯。いすゞ自動車の川崎工場もその一画にあります。おや、おりしも職工の駒倉(三上真一郎)が事務所に続く階段を駆け上り、会計課に飛び込んでいきましたよ。「キミ、キミ」と事務員の日比野圭子(牧紀子)を怒鳴りつける駒倉。「なんですか」「サラリーの計算、キミがやっているのか」「そうです」「俺の月給、足りないんだ。調べてくれないかな」。そう言いつつ、月給袋をポーンと放り出す駒倉に、圭子も微妙にムカツキモード。「足りないって、いくら足りないんですか」「10円だ」。と、圭子の同僚が、「ああ、あたしが入れたやつかもしれないわ」と引き出しから10円を取り出して、バチンと叩きつけて言います。「はい10円」。うーん、この態度はいけませんね。もっとも、駒倉の方も、もう少し大人な態度で言えばいいのにとは思いますけど。ともあれ、駒倉と圭子の出会いは、最悪だったということでひとつ。

一日の仕事を終え、圭子が帰りのバスに揺られていると、「お姉ちゃん」と妹の冴子(倍賞千恵子)が寄ってきましたよ。そうだ、現場勤務の冴子なら知ってるかも。「冴子の方に、駒倉信三郎って人、いる?」「駒倉信三郎。いるわよ。釣りキチガイ」「何してる人」「エンジンの組み立て」「だから、あんな汚い服を着てたのかあ」。同じ工場勤務でも、きれいな事務所と現場では、微妙に差があるみたいですね。と、冴子が言います。「今度の日曜日、みんなで魚釣り行くのよ。お姉ちゃんも行かない?」。

さて、圭子・冴子姉妹の家は、羽田で海苔の養殖をやっています。今日もお父さん(東野英治郎)が海岸で仕事をしていると、そこにパリっとした身なりの男がやってきました。「日比野さん」「おお。松本さんじゃないか」。どうやら、松本(木村功)は、お父さんの古い知り合いのようですね。「懐かしいですねえ。10年前とちっとも変わらない」「いやいや、海はもうだめだ。昔は、海の色は子どもが青い色で書いたもんだが、今じゃ真っ黒だ。今日もアレだけだ」。確かに、羽田空港の拡張工事などで、海苔養殖はキビシイようです。ま、そんなことはともあれ、松本を家に連れて行き、飲み始めるお父さん。お母さん(沢村貞子)は困り顔ですが、お客さんとあっては仕方ありません。

と、そこに圭子たちが帰ってきましたよ。あらお客さん。でも誰だろう。お母さんに「松本さんだよ」と言われても、「はあ?」って感じです。「覚えてないかね。もう10年になるもんね」。いや、まったく覚えてないっす、私たち。「今はね、日本橋の生地屋さんに勤めてて、係長さんなんだよ」。ははあ、それで。「誰、松本さんって」「昔、うちによく来た担ぎ屋だよ」。なーるほど、汚いカッコをしてた闇屋もどきと、今のスーツをパリっと着た男では、イメージが一致しないのはあたりまえです。「担ぎ屋ぁ。イヤんなっちゃうな、お父さん」と潔癖な圭子は、思いっきりイヤな顔です。さらに、お母さんからお酒代に千円を無心され、イヤさ倍増な気分。「あーあ。どっかに落っこってないかな、百万円くらい」と圭子がグチると、冴子が言い出します。「お姉ちゃん。二人でお金持ちのおじさま族でも引っ掛けちゃおうか」。「そうね。やっちゃおうか。ストリップでも」。いや、ここで期待した人、残念でした。これは東映じゃなくて松竹の映画ですからね。なんか、二人が踊りながらシュミーズ姿になるくらいのもんです。

適齢期とでも言うんでしょうか。圭子の身辺がいきなり賑やかになってきました。まずは、お父さんに、組合長さんの息子が圭子と結婚したがっているという情報が。相手は奥さんと死別したみたいですが、組合長と親戚になれれば、借金とか色々と都合がいいなあ。一方、冴子に誘われ駒倉と釣りに行った圭子は、なんかトキメクものを感じてモヤモヤ気分。うーん、駒倉さんってステキかも。さらに、圭子に一目惚れした松本は、プレゼントの洋服生地を持ってきたりして。

そんな中、圭子はお使いで東京の本社に行きました。そして、その帰り道に、学校時代の友人、有島さん(春川ますみ)と出会ったのです。「あら圭子じゃないの」「有島さん」。有島さんに誘われ、お茶をする圭子。それにしても、派手だなあ、この人。ミンクのコートとか着てるし。「あんたも恋人作るなら、青い目がいいわよ」と言い出す有島さん。どうやら、有島さんは外人と「自由」恋愛をしてお金をもらっているみたいですね。「気持が悪いわ。青い目の外人なんて」「あら、あんたズレてるわね。雪村いづみだって、松本弘子だって、みーんな外人と結婚して、青い目はステキだって言ってるじゃない」。出ました。みんな攻撃。それもサンプル数がたったの2件。「相変わらずね、有島さんって。学校時代とちっとも変わらない」。

そうは言ったものの、布団に寝ころがって考えちゃう圭子。うーん、贅沢もいいなあ。そして冴子に言います。「冴子、こーんな大きなショートケーキ、食べたことある。イチゴが二段に入ってるの」。眉間にシワをよせ、じっくり考えた冴子は答えます。「見たことはあるわ」。ナイスな反応すぎ。「あたし、今日食べたのよ」「誰に奢ってもらったの」「有島さん。学校時代の友達よ」。「へえ、あの人、今なにしてんの」と聞く冴子に圭子は言います。「毛皮の外套着て、皮の手袋はめてたわ。月に5万も取るんだって」「5万円!」「うらやましいと思うでしょ。あんただって」。そりゃもちろんですよ。「だんぜん、うらやましいわ。ね、どうすれば5万円も月給取れるの」「それが問題よ。つまりね、ひとくちで言えば美貌を売るってことよ」「つまりアレか」「そうよアレよ」。うーんアレか。でもアレしてまでお金欲しいと思わないなあと言う冴子に圭子も答えます。「あたしだって思わないけど、なんだか腹がたつのよ。あたしたちの生活って、靴一足買えないじゃない」。と、そこに「圭子、圭子」とお母さんがやってきました。「明後日返すから、千円貸しとくれよ」。ほらね。

ま、それはともあれ、海辺で駒倉と話し込んでいる圭子。俺は貧乏だけど、希望はいっぱいだぜ、みたいな感じで夢を語る駒倉を見ていると、これもいいなあと思っちゃいます。アレをしてまでお金を貰うより、こういった人と一緒になった方が幸せなのかもしれないわ。

その同時刻に、妹の冴子はインタビュー中。というのも、近所のみよ子さんがやっぱり貧乏な日通のドライバーと結婚したので、お姉ちゃんのために、貧乏暮らしは、どんなもんなのかを調べようと思ったのです。
「主食はたいしたことないのよ。問題は副食費よね」
ふむふむ。
「主食、副食、あわせて8千円。一日250円。それから電気代、水道代、お風呂代。旦那さんのタバコ、奥さんの化粧品代。たまには映画だって観たいでしょ。だから、どんなに安く見積もっても1万3千円はかかるわよ」
「1万3千円」とメモメモした冴子は、またまた眉間に皺を寄せて聞きます。
「それだけあれば、やってけるのね」
「苦しいけどね」
「やればやれるもんね?」
なんか倍賞千恵子、怖いんですけど。違ってたら、あとで責任を取れとか言い出しそうなイキオイ。ま、それはともあれ、一日に使えるお金を、最初から割り当てちゃえばいいのよ、と言い出すみよ子さん。「割り当てが無くなったら、あとは何もしないで寝ちゃうのよ」。ほほう、それはいいことを聞きました。「そうね。寝ちゃえばいいわね。お腹も空かないし」。そんな冴子にみよ子さんは、フフッと笑いながら言います。「寝ちゃうって言ったって、一人で寝るわけじゃないでしょ。いいものよ、結婚って。お金が無くたって。あんたも早くしなさい」。おっと、「寝る」違いだったようです。それは、かえってお腹が減りそうな気もしないでもありません。

松本からお母さんに手紙が来ました。圭子さんをお嫁にくださいと言うのです。これには、鷹揚に構えていたお父さんもヒートアップ。しまった。とっとと組合長の息子とお見合いをさせねば。もちろんお母さんに、「おい、この手紙のことは内緒にしとけよ」と口止めするのも忘れません。しかし、夜になって、圭子にお見合い話を切り出すと、横から冴子が言い出しました。「なんだあ。お姉ちゃんのことなら心配いらないわよ。ちゃんと好きなひと、見つけたもん」。「何い」と怒るお父さんに、冴子は続けます。「そうよ。お父さんもお母ちゃんも安心しなさい。駒倉さんってね、とっても会社で評判いいの」。「バカなこと言うな。職工なんかと一緒になって、どうすんだ」と怒りまくるお父さんに、またも冴子は勝手に言います。「職工だっていいじゃないの。恋愛しちゃったのよ。好きになっちゃったのよ。好きになっちゃったらしょうがないじゃない」。と、今まで黙っていた当の本人の圭子は静かに聞きます。「お父さん、どうして、そんなにあたしをお見合いさせたいの」「い、い、いい話だからよ」とドギマギするお父さん。横からお母さんが言います。「組合長の息子さんだよ」。これで圭子にはピーンときました。「お金借りたいためね」。「何を、このぉ」。図星を指されたお父さんは、圭子を殴ります。あれえ。

家を飛び出した圭子は、夜の海に向かって叫んでいます。「やい、貧乏。貧乏のバカぁあああ」。うううっ。そこに冴子が駆けつけて言います。「お姉ちゃん、やっぱり駒倉さんのこと好きだったのね。お姉ちゃん、どんなことがあっても結婚しちゃいなさいよ。うち飛び出したってかまやしないわ。みよ子さんがね、二人で1万3千円あれば、なんとかやってけるって言ってたわよ。愛しあってれば、ご飯なんか食べなくたって、楽しいって言ってたわよ」。うわあ、やっぱりみよ子さんの発言を「絶対視」してるし。しかも、最後の方、ちょっと曲解してます。倍賞千恵子、危険すぎ。

さらに倍賞千恵子の暴走は続きます。翌日、働いている駒倉のところにドスドスやってきた冴子は言い出しました。「駒倉さん、あなたは、あたしのお姉ちゃんのこと、どう思ってるの」「どうって」「今日はあたし真剣なのよ。駒倉さんも真面目に返事してちょうだい。お姉ちゃんのこと、好き?嫌い?」。いや、二者択一なら「好きだよ」。「本当に」「ああ」「じゃあ、なぜ結婚申し込まないのっ」。倍賞千恵子、トップギア。「いいこと。今度の日曜日、駒倉さんの寮へ、二人で遊びに行くわよ」。じゃっ、ドスドス。ああ、行っちゃった。

さて、圭子は有島さんに誘われてお出かけです。「ねえ、どこ行くの」「ボーイハントよ」。「怖いわ」とか言いつつ、豪華なバーに連れられてきた圭子は、そこで松本と出会ってビックリ。なんとなく話してみると、松本はとてもいい人でした。そして、松本は言います。「僕は昔、あなたから闇屋って罵られたことがある。覚えてますか」。そんなこと、さっぱり覚えていなかった圭子ですが、松本にはその言葉がショックだったようです。そして、その悔しさをバネに奮起し、闇屋を辞め、苦労して今の仕事についたそうですよ。「僕はもう闇屋じゃない。貧乏の奴隷になって無気力になりたくないっ」。キリっとした表情の松本は圭子を見つめて、続けます。「うれしいんだ。こんな風にあなたに会えるなんて思ってもみなかったから」「あたしもです」「ホントですか」。

次の日曜日。冴子は駒倉のいる寮にやってきました。「今日ねえ、お姉ちゃん来られなくなっちゃったのよ」。せっかく、ウキウキして掃除をしていた駒倉もガックリ。「どっか行ったの」「有島さんと約束があるんだって」。言いたいことを言った冴子は、「じゃっ、さいなら」ズドド。ああ、行っちゃった。

しかし、実のところ、圭子は松本とデート中でした。貧乏の苦労を人一倍知っていながら、努力して今のサラリー3万円をゲットした松本。さらに、親切でスマート。そのうえ靴まで買ってくれたりして、とりあえず嫌いになる理由は皆無というものです。

翌日のお昼休み。姉妹がそろって走っていると(なぜ走る?)、たまたまみよ子さんを目撃しちゃいました。なんだか旦那さんと言い争っています。とりあえず立ち聞きしてみると、話題はヘビー。「あたしイヤよ。どんなことがあったって、赤ちゃん産むわ」「そんな無理言うんじゃないよ」。どうやら子供を堕ろす堕ろさないでモメているみたいですね。「イヤよ、イヤよ。そんなことイヤ」。うううっ。泣いているみよ子さんを、じぃーーーーーーっっと見つめる姉妹。いや、ちょっと遠慮しないと。それにしても、貧乏ってツライですね。

そんな空気も読まず、冴子に煽られまくっていた駒倉は圭子にプロポーズをすることに。「すぐ返事をしなくたっていいんだ。僕にだって、今、結婚を申し出る資格があると思っちゃいない。でも、僕はどうしようもないくらい、圭子さんが好きだ。圭子さんが付いてきてくれるのなら、どんなギリギリの暮らしにも負けないで働くつもりだ。俺たちは檻の中に入ってるワケじゃないんだ。俺たちの周囲がばい煙で覆われていたとしても、その向こうは青い空とつながっているんだ。青い空があるうちは僕は決してあきらめないっ」。うわっ、今、俺いいこと言いまくったんじゃね。圭子さん、感動しまくってんじゃね。しかし、貧乏の辛さを目の当たりにしたばかりの圭子は、まったく感動してなかったみたいです。

さらに、姉妹が帰りのバスに乗っていると、みよ子さんが産婦人科からヨロヨロ出てくるのを目撃。まあ狂信的な冴子はともかく、圭子はすっかりドン引きモードです。

そのうえ、家に帰ると、松本に買ってもらった靴を片手に、お父さんが激怒中。「圭子、この靴は誰に買ってもらったんだ」。言い訳してみたものの、しつこい追求に圭子もキレて、松本にもらったことを告白しました。何が悪いのよっ、まったく。あたしだって、幸せになる権利はあるわよっ。

早速、目の据わった冴子は行動開始。翌日、松本の仕事場に押しかけましたよ。「なんです。話っていうのは」と穏やかに言う松本に、冴子はわめきます。「松本さん、お姉ちゃんに結婚を申し込んだでしょ」。「ハハ。圭子さんから聞いたの」「お姉ちゃんと結婚するのはやめて下さい。お姉ちゃんは好きな人がいます」。「好きな人?」とガガーンな松本に冴子はさらに言います。「お願いだからもう会わないでください。私はそれを言いに来たの。美しい恋愛をお金なんかで汚さないでください」ズドド。ああ、また行っちゃったよ。おっと、唖然としている松本のところに速達が届きましたよ。なんだろう。ふむふむ。ええっ。

リーン、リーン。会社の電話を取った圭子は、相手の声を聞いてビックリ。松本じゃありませんか。「圭子さんですね。明日の朝、僕と一緒に田舎、行ってくれませんか。岡山です」。そう、さっきの速達は松本の母が倒れたという連絡だったのです。そのため、松本としては、ひと目だけでも圭子を自分の母に会わせたいと思ったみたいですよ。「行ってくれますか? 実はさっき冴子さんが来て、あなたには好きな人がいるから、あなたとは付き合わないでくれって言うんです」「冴子がっ」「いやあ、そんなことはいいんです。僕はあなたを信じています。僕と一緒におふくろに会ってください」。圭子は少し考えたあと、ハッキリと答えるのでした。「あたくし、行きます」。

となれば、駒倉とのことをキチンとしておかなくては。早速、夕方の海辺に駒倉を呼び出した圭子は言います。「あたし結婚します。明日、その人と、その人の田舎に行きます。この間、考えさせてくださいって言いましたね。あたし、一生懸命考えたんです」。以上。いや、以上じゃ困るのが駒倉。「僕とでは幸せになれないって言うんですね」と恨み節を言ってみたり、さらには「分かった。君は負けたんだ」と脅してみたり、あの手この手。しかし圭子の決心は揺らぎそうにありません。「君はわざわざ、それを知らせに来てくれたんだね」と駒倉は肩を落とすのです。「そんな風に言わないでください」「どんな風に言えっていうんだ。お幸せにって言うのかい。元気でねって言うのかい。俺はイヤだ。君がいつか後悔する日を祈ってる。君のような考え方がいいハズがない。そんなはずはないよ」ズドドド。行っちゃいました。

「ただいまあ」、冴子が家に帰ると、両親がずどーんと暗い顔です。「どうしたの」。「姉ちゃん、姉ちゃん、うちを出て行くんだって」とお母さん。「出て行くって、どこへ」「松本さんと結婚するんだって」。ムキーッ。「お姉ちゃんが松本さんと。そんなのダメよ。あたし、絶対反対よ」。いや、それは圭子に言わないと。

それもそうねと、部屋に押しかける冴子。荷物をパッキング中の圭子の前に立ちはだかります。「お姉ちゃん、駒倉さんとのこと、どうすんのっ。お姉ちゃんは駒倉さんのこと好きだったんじゃないのっ」。目が怖い。目が怖いよ、倍賞千恵子。さらに説明をする圭子を無視して、「何よっ、こんなもの」とバッグを取り上げちゃいましたよ。「あたしね。さっき駒倉さんとハッキリ別れてきたのよ。返して。ねえ、返して」。ここまで言われれば、思い込み大魔神の冴子も、どうしようもありません。「駒倉さんもそれでいいと言ったのね」とショボーンです。良かった、刃物とか振り回さなくて。

一方、駒倉は行きつけのおでん屋で、友人のスズキクンをお供に、やけ酒の真っ最中。おでん屋のおばさん(清川虹子)が「この頃の若い子はね、みんなそうだよ。仕方ないじゃないか」と慰めても、聞く耳を持ちません。さらに「そんなに惚れてんなら、キッスぐらいしちゃえば良かったのに」とおばさんが言うと、「したよ」と仰天発言。「した。お前、キスしたのかよ」とスズキクンが興奮しているのは、まあ置いておいて、おばさんは「そうかキスまでしたのにねえ」と同情モードです。もっとも清川虹子の場合、キスでダメなら襲っちまいなよくらい言いそうなのが怖いところです。しかし、ここで怖いのは、清川虹子ではなくて、外から覗いている貞子のような黒い陰。じぃーーーーーーっ。うわっ、貞子じゃなくて冴子だ。ズルズルと冴子がおでん屋に入ってきて、言います。「お姉ちゃん、行っちゃうわよ」。えーと、こいつもか。倍賞千恵子なら、お姉ちゃんを監禁しちゃいなさいよくらい言いそうだから怖い。アキレス腱を切っちゃえば動けないわよ、とか。しかし、フラれて悲しんでいる駒倉は、冴子なんかを相手にしている余裕はないのです。ちっくしょう。「一万七千円の俺に、何ができるっていうんだ。ええっ」。負けじと言い返す冴子。「一万七千円がなによ。あたしなんか、一万円の給料も取ってないわ」。えーと、なんで給料の比べっこをしてますか、あなたたち。「駒倉さんのバカ。意気地なしっ」と言う冴子の頬に、駒倉のビンタが飛びます。ばしっ。時が止まります。凝固するみなさん。と、冴子が叫びました。「あたしのホッペタぐらいしか引っぱたけないんでしょ。お姉ちゃんをなぜ引っぱたかなかったのよ。意気地なし。意気地なし。うわーん」ズドドド。

店を飛び出して、外でエグエグしている冴子のところに、おばさんがやってきて言います。「冴ちゃん、あんたは本当は、駒倉さんが好きだったのね」「うえーん。ぴくっ」「そうなんでしょ」「……」「そうなのよ。あんた、いつの間にか駒倉さんを愛していたのよ。自分でも分からない心のどっかで駒倉さんが好きだったのよ。姉さん、恨んじゃいけないわ。ねっ。姉さんには姉さんの行く道があるのよ。あんたにはあんたの行く道があるようにね。あんたの恋愛はこれから始まるのよ。いい男、見つけんのよ。大きな目開けてね。分かったわね」。それを聞いて、ぱーっと明るい顔になる冴子。なんだか別の意味で突っ走りそうで怖い。

電車に乗って、愛する松本といっしょに、彼の故郷に向かっている圭子。どうぞ、お幸せに。一方、いつものように、工場に向かう道を歩いている駒倉。しかし、その斜め後ろからは冴子が接近中です。キッと前を向いて、何を考えているのか分からない冴子は、今度は何をやらかすのやら。煙突からは、快調に煙が出ています。モクモク。


なんか、どうしてそうなるんだろう。って感じの映画でした。おそらくは松山善三が考えた骨格部分は、木下恵介の「この天の虹」や、山田洋次の「下町の太陽」みたいな、良くも悪くも「松竹流」の映画だったんじゃないかと想像するんですが、篠田正浩監督の手が入ったことによって、不思議な映画に変身してしまったようです。それはまるで、穏やかな日常の皮を一枚めくってみたら、そこにはおどろおどろしいウネウネした気持ちの悪いモノが眠っていたみたいな。

そもそも山田洋次監督の映画での「品行方正」な役はともかく、倍賞千恵子はかなりの才能の持ち主。日常から微妙にズレた、半分狂気に足を突っ込んだような役でも、軽々とこなせる女優さんです。ですから、この映画のキチガイっぷりもガチなうまさ。あくまで松竹流でいながら、よく見ると、松竹ダークサイドに入っているのが最高でした。

それはともあれ、キャスト順ではトップを倍賞千恵子に譲っているものの、お姉さん役の牧紀子はとてもキレイ。松竹には珍しいクールビューティっぷりで、すっかり惚れました。ちょっと万里昌代に似ているところもあって、新東宝なり東宝にいれば、もっと活躍できたんじゃないかと残念な気もします。







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