【「海底から来た女」蔵原惟繕 1959】を観ました

おはなし
恩返しをするのは鶴。じゃあ復讐をするのは?
石原慎太郎の原作で、蔵原惟繕が監督。肉体派女優の筑波久子が主演した映画です。なんだか、お腹壊しそうな食い合わせですねえ。
夜の海。ウクレレが聞こえてきます。おや、どこかの豪華な別荘でガーデンパーティをやっているようですよ。って、いかにも日活風な滑り出しで映画は始まりました。
お金持ちのパーティに来ているのは、克彦(水谷貞雄)と敏夫(川地民夫)の兄弟。もっとも兄の方は社交的なようですが、弟の川地民夫はいまいち引っ込み思案。結局、パーティになじめず、そのまま自分のヨット・ファラオ号で、夜の海に滑り出ていくのです。「あら、船が出ていくわ」「敏夫だ。どうして逃げちまったんだろう」と騒ぐ金持ち子女たちに、お兄さんはひとこと。「いいんだ、いいんだ。あいつは、いつもああなんだ。あいつがいない方が気が置けなくていいだろ」。
さて、川地民夫は「自分の家の」別荘で、デッキチェアに座りつつ、ウクレレを伴奏に口笛かなんか吹いています。と、そこに近所に住む作家の堤(内田良平)が通りがかりましたよ。って、どうして内田良平が「作家」に。どうみても、ヤクザかアラクレ漁師にしか見えないんですけど。ま、それはともあれ内田良平の様子がヘンです。まるで幽霊でも見たような顔をして、川地民夫に言いましたよ。「君の船に女の子がいたよ」。
「そんなバカな……ああ、じゃあ兄貴だ。兄貴が連れてきたんですよ」と一蹴する川地民夫ですが、内田良平の言いたいことはそういうことじゃない模様。「それが髪の長い、なんか目の……とにかく妙な。いや、よそう。きっと僕の幻覚なんだ」スタスタ。ああ行っちゃった。でも、そんな思わせぶりなこと言われたら、気になりますよね。「ばあや。懐中電灯貸してくれよ」。川地民夫は、ばあやに懐中電灯を借りて、ヨットに出撃です。
奥まった入江のど真ん中にプカプカと浮かべてあるヨットに、ボートで向かう川地民夫。ポチャン。おや水音がしましたよ。「誰だい!。。。なあんだ、やっぱり魚か」と一安心したのもつかのま。確かに魚は魚ですが、ヨットの上にはバラバラに引きちぎられた魚が転がっていたのです。「ちきしょー。ただじゃおかねえぞ」と言ってみる川地民夫ですが、とりあえず犯人が目の前にいるわけでもなく、どうしようもありませんね。
翌朝あらためて、ヨットに行く川地民夫。うわっ、また魚のバラバラ死体がヨットの周りに散らばっていますよ。そして、ついでにビキニお姉ちゃんも。ええっ。そう、舷側にビキニなお姉ちゃん(筑波久子)がいるじゃありませんか。「何してんだい、そんなとこで」「休んでんのよ。ちょっと」。この言い方には川地民夫もちょっとムカっ。「ヒトの船を黙って、そんなに汚してかい。昨夜やったのも君だろ」。でも筑波久子は動じるどころか、魚は生で食べたんだと言い出したのです。それも「持ってきたんじゃない。この下で獲ったのよ」だそうで。さらにビックリしている川地民夫に筑波久子は、ウッフーンと横たわりつつ言います。「あんたに泳ぎ教えてあげようか」。いやあ、できれば泳ぎなんかより別のコトを教えてくれたほうが。いやいやダメだ、ダメだ。ばあやに怒られちゃう。「とにかく、船を下りてくれよ」。そう言いつつも川地民夫はこの謎めいた少女に惹かれる気持ちを抑えることができません。「あんたなんか知らない」くらいずっと前にも、ここに来たことがあるという少女。生魚をバリバリ食べちゃう少女。そしてもちろん、セクシー度バリバリの少女。これに興味ないとか言ったら、ちょっとどうかしてますよね。
「ねえ、あんたのうち行ってもいい」。筑波久子の言葉に川地民夫はドキーン。「え、僕のうち」「そう、いいでしょ。あたし、どこだか知ってる」「そりゃ」「いいわね」。と、向こうからポンポン、ポンポンと焼玉エンジンの音が聞こえてきましたよ。どうやら漁師の漁船がやってくるようです。ハッとした表情になった筑波久子は「じゃ、またね」とそのまま海へドボン。ああ、行っちゃった。
入れ替わりにやってきた漁師が、川地民夫に声をかけてきました。誰か見なかったかと言うのです。どうやらイケスが破られ、お魚さんたちがバラバラにされていたとか。バラバラと聞いて、ピンとくる川地民夫ですが、もちろん筑波久子のことはおくびにも出しません。だってビキニですから。それはそうと「この夏は、入り江にはロクなことがねえ」と嘆く漁師さんたち。「ロクなこと?」「そうよ、ヒトが死んでな」。なんと、村の漁師シンサクが海で行方不明だそうですよ。そして消える前に若い女と一緒だったとか。いったいコレはどういうことだ。この事件に筑波久子は関わっているのでしょうか。
気になった川地民夫は漁村に向かいました。すると、ちょうど浜では駐在さんを囲んで漁師たちがわいわいと事件について話し合っていますよ。というのもシンサクのものと思われる血まみれのシャツの切れはしが見つかったみたいなのです。「喧嘩でも」と言いかける駐在さんを「違うっ!」と鋭く遮る漁師の藤作(浜村純)。「鱶(フカ)だよ。ちきしょう。またアイツが戻ってきやがった」。
そう、浜村純は言います。「うちの爺様の兄貴のヒデ爺がな、昔、この入江に迷い込んだ番いの大鱶の片方を仕留めたことがあるんだ。ある晩、その鱶の死骸に取りすがって泣いている女を見たって話だ」。以来、そのヒデ爺を始め、浜村純の弟、そして今度は息子までもが鱶に食い殺されたそうで。うーんタイヘンそうですねえ。
そんな話を立ち聞きした後、別荘に帰ってきた川地民夫。おや、ヤケに今日は飼い犬が吠えていますね。なんだろう。と、自分の部屋に入ってビックリです。そう、ベッドに筑波久子がセクシースマイルを浮かべつつ横たわっているじゃありませんか。「キミ!」「来たわよ。約束どおり」「どっから入ってきたんだい」「この下」。いや、この下って、断崖絶壁じゃありませんか。ま、そんなことはどうでもいいこと。というのも「今夜、あたしココに泊ってもいい。いいわね。そうしよう」と筑波久子が言い出したのです。「ダ、ダメだよ。だって、ばあやが来て」としどろもどろな川地民夫ですが、筑波久子はさっさとベッドに入ってお休みなさーいです。横にはビキニのセクシーむんむん娘。悶々とした川地民夫は輾転反側を繰り返し、なかなか眠れません。と、ようやく寝込んだと思ったら筑波久子に起こされちゃいました。「さ、行くのよ」「どこへ」「約束したじゃない昨夜。海へよ。魚獲りに」。
ぶろろろー。横にビキニなむんむん娘をのせ、モーターボートを走らせる川地民夫。おや、岸辺を作家(には見えないんだけど)の内田良平が歩いていますよ。「堤さぁーん。散歩ですかああ」。それに答えて、ニコヤカにモーターボートの方を見た内田良平は、筑波久子を見てハッとしたみたいです。ずるずる。後ずさりしたりして。さすが誰が見ても、動揺していると分かる名演技ですね。「ヘンね、あの人」と冷たい筑波久子に川地民夫は言います。「ちょっと、ここ(オツム)が病気なんだよ」。まあいいや。行こうぜ。ぶろろろー。
「ここよ」。筑波久子が教えてくれたヒミツの漁場スポット。魚がウハウハだそうです。よーし。モリを片手にスキューバダイビングをする川地民夫。一方、筑波久子は素潜りで、水中をクルクル回転しています。まあ、水中レビューみたいなものを想像していただければいいかと。しかし残念なのは、ピントがボケボケで誰が誰やら、何が何やらよく分からないこと。どうせ、この映画を見にくるお客さんは、筑波久子のビキニむんむんだけが目当てなんだから、ここで頑張らなくてどうするんだ。なにやってんだよお。
ま、そんな魂の叫びはともあれ、泳いでいた川地民夫は、海底に魚の骨が大量に落ちているのを発見しました。うわあ、なんかイヤな感じだなあ。と、今度は上を見ると巨大なサメがすーっと横切っていくじゃありませんか。さらに海底の別の場所には人間の腕はユラユラ揺れてたりして。わひー。あわてて陸にあがる川地民夫。「おーい。タイヘンだ。鱶だ。鱶だよお」。しかし、後から陸に上がってきた筑波久子は「思い違いでしょ」と冷静もいいとこです。そして「いや、ホントだ。人のここ、人の腕だ。鱶にやられたんだよお」と漁村に報告に行こうとする川地民夫をひき止めて、言うのです。「それより約束して。あんたが見たそのコトは言ってもいいけど、この場所は絶対に言っちゃダメよ。約束破ったら……もうあたし、イヤよ」。いや、普通だと約束破ったら、お前は死ぬ、死ぬのだあみたいな展開になると思うんですけど、「約束破ったら、もうあたし、イヤよ」ですか。まあビキニむんむん娘だからしょうがない。いいともさ、約束は守るよ。
早速、漁村に行って、詳しい場所を除いた一部始終を話す川地民夫。漁民のみなさんはフムフム、エエーッとナイス反応を見せながら聞いてくれています。と、浜村純のお爺さんが筑波久子の顔を見てワナワナし始めましたよ。「どうしただ爺さま」。「……あたし、先帰るわ」。ぴゅー。逃げるように去って行った筑波久子をお爺さんはワナワナしながら見ています。いったい、筑波久子は何者なのでしょう。
そのまま筑波久子は消えてしまいました。ハートブレイクな川地民夫は、気晴らしに日本アルプスに山登りに行くことに。「やっほー。やっほー」。ヤケッパチになってやっほーしています。そんな川地民夫と入れ違いに女連れでやってきたお兄さん。しかし、川地民夫の部屋に(勝手に)入り込んでいた筑波久子を発見してニヤリです。まあむんむんビキニですしね。早速、一緒にやってきた女をニセ電報で追い返し、さあ筑波久子を攻略だあ。
ぞくり。イヤな予感がした川地民夫は、別荘に電話です。リーンリーン。あ、モシモシばあや。いえ、出たのは男です。「なんだ兄貴か。いつ来たの」「おい、おめえにはスゲエ友達がいるんだな。え、おい。俺気に入ったぜ」。や、やばい。プレイボーイの兄貴にかかったら、僕のむんむんビキニちゃんが。
案の定、お兄さんは筑波久子をヨットに乗せてクルージング。へっへっへ。ヨットに乗せて落ちない女はいないぜ。しかし、そんなお兄さんの下心を見抜いたのか、凪いでいた海はイキナリ時化になりザッパーンです。そして、同じ時間、ここ日本アルプスの山荘でもスゴイ雨。ひーっ。飛び込んできた川地民夫に山荘の人が、東京からお電話です、と受話器を差し出してきましたよ。「ああママ」「敏夫、早く帰ってきて。克彦、克彦が!」「兄貴がどうしたの」「海で行方不明に」。
チーン。お兄さんの遺影を見ている川地民夫。しかし、兄の死を悼みつつも川地民夫には、どうしても気になることがあったのです。「ばあや、本当のこと言ってくれる。あの子は毎晩、ここへ来てたんだろ」。「いいえ存じません」と首をぷるぷる振るばあや。「やっぱり、あの子も一緒だったのか」「ぼっちゃま。あのお嬢さんはきっと。いいえ、ただ。……いいえ、ぞんじません」。ふう。多分、ばあやの口ぶりからして、筑波久子は兄と一緒にヨットに乗ったのでしょう。そして、おそらく荒れ狂う海に投げ出されて……。川地民夫は寂しくつぶやきます。「みんな死んじまったんだな」。
しかし、その夜。またも飼い犬がキャンキャン鳴き始めましたよ。もしかして。あわてて川地民夫が自分の部屋に入ると、むんむんビキニの筑波久子がいるじゃありませんか。「やっぱり君は生きてたんだね」ヒシッ。川地民夫は筑波久子を抱きしめます。まあ、お兄さんは死んじゃったみたいですけど、とりあえずむんむんビキニちゃんが生きていればソレでいいや。
と、そこにドヤドヤと物音が。浜村純たちイカレた漁師どもが押し掛けてきたようです。それを聞いて、「あたし帰るわ」とめずらしく筑波久子はソワソワモード。「またね。明日」「明日のいつだい」「そう。今頃。明日船の上で待ってるわ」。じゃっ。ピューン。窓から断崖絶壁に飛び込んで、筑波久子は消えちゃいました。と、入れ違いに漁師たちがドアを開け、部屋に入ってきましたよ。あの女はどうした!と掴みかからんばかりのイキオイです。その上、爺さま漁師は「鱶の番いの片割れの怨霊ですじゃ」とか叫んでるし。「そんな。そんな嘘だよ」と川地民夫は抗弁してみたものの、迷信深い漁師たちは聞く耳を持ちません。渋々、別荘からは退去したものの、交代で別荘を見張ってやるとか言い張ってますもん。ありゃ、本当にやりそうですね。
ということで、ひそかに見張りの目を逃れた川地民夫は、筑波久子に出会うと、言い出しました。「タイヘンなんだよ。漁師の奴ら、君を狙ってるんだよ。奴らは君を殺しに来るんだ」「なんで」「バカな迷信なんだよ。君は鱶なんだって」。このままじゃ危ない。よし逃げよう。夜の11時に、またこの船で。そのまま、この村を脱出しよう。そんな約束をした川地民夫はいったん別荘に。なにしろ、いろいろ準備がありますからね。えーと、まずは食糧だ。「ばあや。夕飯の残りと果物と、あとサンドイッチを3人か4人分、バスケットに入れておいてよ」。ジトーっ。ばあやは不審そうに言います。「どこかへお出かけでございますか」。ま、まずい。ばあやには隠しごとできないよ、ぼく。「ばあや。ばあやだから言うけどね、あの子は化け物なんかじゃないよ」。いったん話しだせば、もう停まりません。ペラペラと全部、話してしまった川地民夫はひと安心したのか、「10時半に起こしてくれよ。ばあや。これは秘密だよ」と言うなりベッドに入って寝ちゃうのでした。ぐーぐー。
はっ、枕元の時計を見ると10時50分。うわ寝坊だ。「ばあやぁ」「……」。返事がありませんよ。おかしい。そしてドアを開けようとすると、ガチャガチャ、ガチャガチャ。あれ開きません。外からロックされているみたいです。しまった、ばあやに裏切られたんだ。
その頃、ばあやの通報を受けた浜村純たちは、モリを片手にヨットに潜伏中。今か今かと筑波久子のやってくるのを待ち構えています。あやうし、むんむんビキニちゃん。
どりゃー。窓から脱出した川地民夫は、一路ヨットを目指します。「ちきしょー」。間に合ってくれよー。しかし、一歩遅かったようです。水から上がってきた筑波久子の目が恐怖に見開き、浜村純たちの必殺のモリがどりゃー。血しぶきがどぱー。
川地民夫がヨットに泳ぎ着くと、漁師たちが「やった、やった」と大喜び中でした。「俺はこの目で見たぞ。でけえ、でけえ鱶だったな」。おっと川地民夫に気付いたようです。「お、坊ちゃんだ」と居住まいを正し、言います。「見なせえ。臭いを嗅いでみなせえ。これは人間の血じゃねえ。魚の血だ」。えーと、そんなこと言われても、ぼく困るよ。ともあれ、分かるのはむんむんビキニちゃんは、もういない。もう永遠にいないってことだね。
夏休みも終わり、川地民夫は東京に帰ることになりました。というか、大学生だったですね。てっきりプー太郎だと思ってました。ま、ともあれ帰る前に、川地民夫は、作家の内田良平にあいさつに行くことに。すると、内田良平は筑波久子がサメに変身するところを見たんだ、と今さらなことを言い出しましたよ。どうやら、自分の見たモノが幻覚じゃなかったと知って、浮かれている風情。「あの子は本当に君のためにいたんだよ。いいんだよ、敏夫くん」と上機嫌に肩をぽんぽん叩いたりして、ペラペラと続けます。「君は選ばれた人だったんだ。君の見た夢は一生、君のもんだ。美しい夏の夢じゃないか。君以外の誰も、その夢を見ることはできやしなかった。君だけがそれをできたんだ」。もしかしたら、原作では感動ポイントなのかもしれませんが、映画では唐突すぎて、何がなにやら。
ともあれ、それを聞いた川地民夫は、うわーん。走り出しました。
さっぱり理解できないまま、海に潜っている川地民夫。骨がいっぱい落ちているところからすると、筑波久子に教えてもらった漁場のようです。そして大量の骨に加え、今は新しい骨が。モリが刺さった大きな骨です。もしかして、これは筑波久子の骨でしょうか。夢か現か、ゆらりと影が射します。川地民夫の上をサメが悠然と泳いでいきます。それに呼ばれるように、川地民夫もせっせと泳いでいくのでした。
新東宝でも、前田通子やら三原葉子。はたまた万里昌代などが出る、似たような路線の映画がいっぱいあったワケですが、あちらは非常に分かりやすい造りです。いわく、よっしゃ可能な限りお見せしましょ。さあ水着を見てってくださいな、みたいな。
しかし、こちらはヘンにゲイジュツしてしまったおかげで、とても半端なできあがりに。誰も川地民夫のことなんて見てないって。まして内田良平の苦悩なんてどうでもいい。そもそも復讐にきたサメが、なんで川地民夫と付き合わなきゃならないの。そうではなく、とにかく筑波久子のビキニをひたすら見せればいいのに、ヘンに出し惜しみしているのがダメな感じです。せっかくの素材を生かさないなんて、もったいない。
ちなみに、筑波久子は慶応女子高から慶応法学部政治学科に進んだお嬢様らしいです。でも、その割には、なんていうかフェロモン全開というか、むんむんな感じ。見かけと異なり、声も低めのハスキーな感じだし、そのギャップがたまらない人も多いんでしょうね。えっ、僕ですか。いや、その。ツボです。



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恩返しをするのは鶴。じゃあ復讐をするのは?
石原慎太郎の原作で、蔵原惟繕が監督。肉体派女優の筑波久子が主演した映画です。なんだか、お腹壊しそうな食い合わせですねえ。
夜の海。ウクレレが聞こえてきます。おや、どこかの豪華な別荘でガーデンパーティをやっているようですよ。って、いかにも日活風な滑り出しで映画は始まりました。
お金持ちのパーティに来ているのは、克彦(水谷貞雄)と敏夫(川地民夫)の兄弟。もっとも兄の方は社交的なようですが、弟の川地民夫はいまいち引っ込み思案。結局、パーティになじめず、そのまま自分のヨット・ファラオ号で、夜の海に滑り出ていくのです。「あら、船が出ていくわ」「敏夫だ。どうして逃げちまったんだろう」と騒ぐ金持ち子女たちに、お兄さんはひとこと。「いいんだ、いいんだ。あいつは、いつもああなんだ。あいつがいない方が気が置けなくていいだろ」。
さて、川地民夫は「自分の家の」別荘で、デッキチェアに座りつつ、ウクレレを伴奏に口笛かなんか吹いています。と、そこに近所に住む作家の堤(内田良平)が通りがかりましたよ。って、どうして内田良平が「作家」に。どうみても、ヤクザかアラクレ漁師にしか見えないんですけど。ま、それはともあれ内田良平の様子がヘンです。まるで幽霊でも見たような顔をして、川地民夫に言いましたよ。「君の船に女の子がいたよ」。
「そんなバカな……ああ、じゃあ兄貴だ。兄貴が連れてきたんですよ」と一蹴する川地民夫ですが、内田良平の言いたいことはそういうことじゃない模様。「それが髪の長い、なんか目の……とにかく妙な。いや、よそう。きっと僕の幻覚なんだ」スタスタ。ああ行っちゃった。でも、そんな思わせぶりなこと言われたら、気になりますよね。「ばあや。懐中電灯貸してくれよ」。川地民夫は、ばあやに懐中電灯を借りて、ヨットに出撃です。
奥まった入江のど真ん中にプカプカと浮かべてあるヨットに、ボートで向かう川地民夫。ポチャン。おや水音がしましたよ。「誰だい!。。。なあんだ、やっぱり魚か」と一安心したのもつかのま。確かに魚は魚ですが、ヨットの上にはバラバラに引きちぎられた魚が転がっていたのです。「ちきしょー。ただじゃおかねえぞ」と言ってみる川地民夫ですが、とりあえず犯人が目の前にいるわけでもなく、どうしようもありませんね。
翌朝あらためて、ヨットに行く川地民夫。うわっ、また魚のバラバラ死体がヨットの周りに散らばっていますよ。そして、ついでにビキニお姉ちゃんも。ええっ。そう、舷側にビキニなお姉ちゃん(筑波久子)がいるじゃありませんか。「何してんだい、そんなとこで」「休んでんのよ。ちょっと」。この言い方には川地民夫もちょっとムカっ。「ヒトの船を黙って、そんなに汚してかい。昨夜やったのも君だろ」。でも筑波久子は動じるどころか、魚は生で食べたんだと言い出したのです。それも「持ってきたんじゃない。この下で獲ったのよ」だそうで。さらにビックリしている川地民夫に筑波久子は、ウッフーンと横たわりつつ言います。「あんたに泳ぎ教えてあげようか」。いやあ、できれば泳ぎなんかより別のコトを教えてくれたほうが。いやいやダメだ、ダメだ。ばあやに怒られちゃう。「とにかく、船を下りてくれよ」。そう言いつつも川地民夫はこの謎めいた少女に惹かれる気持ちを抑えることができません。「あんたなんか知らない」くらいずっと前にも、ここに来たことがあるという少女。生魚をバリバリ食べちゃう少女。そしてもちろん、セクシー度バリバリの少女。これに興味ないとか言ったら、ちょっとどうかしてますよね。
「ねえ、あんたのうち行ってもいい」。筑波久子の言葉に川地民夫はドキーン。「え、僕のうち」「そう、いいでしょ。あたし、どこだか知ってる」「そりゃ」「いいわね」。と、向こうからポンポン、ポンポンと焼玉エンジンの音が聞こえてきましたよ。どうやら漁師の漁船がやってくるようです。ハッとした表情になった筑波久子は「じゃ、またね」とそのまま海へドボン。ああ、行っちゃった。
入れ替わりにやってきた漁師が、川地民夫に声をかけてきました。誰か見なかったかと言うのです。どうやらイケスが破られ、お魚さんたちがバラバラにされていたとか。バラバラと聞いて、ピンとくる川地民夫ですが、もちろん筑波久子のことはおくびにも出しません。だってビキニですから。それはそうと「この夏は、入り江にはロクなことがねえ」と嘆く漁師さんたち。「ロクなこと?」「そうよ、ヒトが死んでな」。なんと、村の漁師シンサクが海で行方不明だそうですよ。そして消える前に若い女と一緒だったとか。いったいコレはどういうことだ。この事件に筑波久子は関わっているのでしょうか。
気になった川地民夫は漁村に向かいました。すると、ちょうど浜では駐在さんを囲んで漁師たちがわいわいと事件について話し合っていますよ。というのもシンサクのものと思われる血まみれのシャツの切れはしが見つかったみたいなのです。「喧嘩でも」と言いかける駐在さんを「違うっ!」と鋭く遮る漁師の藤作(浜村純)。「鱶(フカ)だよ。ちきしょう。またアイツが戻ってきやがった」。
そう、浜村純は言います。「うちの爺様の兄貴のヒデ爺がな、昔、この入江に迷い込んだ番いの大鱶の片方を仕留めたことがあるんだ。ある晩、その鱶の死骸に取りすがって泣いている女を見たって話だ」。以来、そのヒデ爺を始め、浜村純の弟、そして今度は息子までもが鱶に食い殺されたそうで。うーんタイヘンそうですねえ。
そんな話を立ち聞きした後、別荘に帰ってきた川地民夫。おや、ヤケに今日は飼い犬が吠えていますね。なんだろう。と、自分の部屋に入ってビックリです。そう、ベッドに筑波久子がセクシースマイルを浮かべつつ横たわっているじゃありませんか。「キミ!」「来たわよ。約束どおり」「どっから入ってきたんだい」「この下」。いや、この下って、断崖絶壁じゃありませんか。ま、そんなことはどうでもいいこと。というのも「今夜、あたしココに泊ってもいい。いいわね。そうしよう」と筑波久子が言い出したのです。「ダ、ダメだよ。だって、ばあやが来て」としどろもどろな川地民夫ですが、筑波久子はさっさとベッドに入ってお休みなさーいです。横にはビキニのセクシーむんむん娘。悶々とした川地民夫は輾転反側を繰り返し、なかなか眠れません。と、ようやく寝込んだと思ったら筑波久子に起こされちゃいました。「さ、行くのよ」「どこへ」「約束したじゃない昨夜。海へよ。魚獲りに」。
ぶろろろー。横にビキニなむんむん娘をのせ、モーターボートを走らせる川地民夫。おや、岸辺を作家(には見えないんだけど)の内田良平が歩いていますよ。「堤さぁーん。散歩ですかああ」。それに答えて、ニコヤカにモーターボートの方を見た内田良平は、筑波久子を見てハッとしたみたいです。ずるずる。後ずさりしたりして。さすが誰が見ても、動揺していると分かる名演技ですね。「ヘンね、あの人」と冷たい筑波久子に川地民夫は言います。「ちょっと、ここ(オツム)が病気なんだよ」。まあいいや。行こうぜ。ぶろろろー。
「ここよ」。筑波久子が教えてくれたヒミツの漁場スポット。魚がウハウハだそうです。よーし。モリを片手にスキューバダイビングをする川地民夫。一方、筑波久子は素潜りで、水中をクルクル回転しています。まあ、水中レビューみたいなものを想像していただければいいかと。しかし残念なのは、ピントがボケボケで誰が誰やら、何が何やらよく分からないこと。どうせ、この映画を見にくるお客さんは、筑波久子のビキニむんむんだけが目当てなんだから、ここで頑張らなくてどうするんだ。なにやってんだよお。
ま、そんな魂の叫びはともあれ、泳いでいた川地民夫は、海底に魚の骨が大量に落ちているのを発見しました。うわあ、なんかイヤな感じだなあ。と、今度は上を見ると巨大なサメがすーっと横切っていくじゃありませんか。さらに海底の別の場所には人間の腕はユラユラ揺れてたりして。わひー。あわてて陸にあがる川地民夫。「おーい。タイヘンだ。鱶だ。鱶だよお」。しかし、後から陸に上がってきた筑波久子は「思い違いでしょ」と冷静もいいとこです。そして「いや、ホントだ。人のここ、人の腕だ。鱶にやられたんだよお」と漁村に報告に行こうとする川地民夫をひき止めて、言うのです。「それより約束して。あんたが見たそのコトは言ってもいいけど、この場所は絶対に言っちゃダメよ。約束破ったら……もうあたし、イヤよ」。いや、普通だと約束破ったら、お前は死ぬ、死ぬのだあみたいな展開になると思うんですけど、「約束破ったら、もうあたし、イヤよ」ですか。まあビキニむんむん娘だからしょうがない。いいともさ、約束は守るよ。
早速、漁村に行って、詳しい場所を除いた一部始終を話す川地民夫。漁民のみなさんはフムフム、エエーッとナイス反応を見せながら聞いてくれています。と、浜村純のお爺さんが筑波久子の顔を見てワナワナし始めましたよ。「どうしただ爺さま」。「……あたし、先帰るわ」。ぴゅー。逃げるように去って行った筑波久子をお爺さんはワナワナしながら見ています。いったい、筑波久子は何者なのでしょう。
そのまま筑波久子は消えてしまいました。ハートブレイクな川地民夫は、気晴らしに日本アルプスに山登りに行くことに。「やっほー。やっほー」。ヤケッパチになってやっほーしています。そんな川地民夫と入れ違いに女連れでやってきたお兄さん。しかし、川地民夫の部屋に(勝手に)入り込んでいた筑波久子を発見してニヤリです。まあむんむんビキニですしね。早速、一緒にやってきた女をニセ電報で追い返し、さあ筑波久子を攻略だあ。
ぞくり。イヤな予感がした川地民夫は、別荘に電話です。リーンリーン。あ、モシモシばあや。いえ、出たのは男です。「なんだ兄貴か。いつ来たの」「おい、おめえにはスゲエ友達がいるんだな。え、おい。俺気に入ったぜ」。や、やばい。プレイボーイの兄貴にかかったら、僕のむんむんビキニちゃんが。
案の定、お兄さんは筑波久子をヨットに乗せてクルージング。へっへっへ。ヨットに乗せて落ちない女はいないぜ。しかし、そんなお兄さんの下心を見抜いたのか、凪いでいた海はイキナリ時化になりザッパーンです。そして、同じ時間、ここ日本アルプスの山荘でもスゴイ雨。ひーっ。飛び込んできた川地民夫に山荘の人が、東京からお電話です、と受話器を差し出してきましたよ。「ああママ」「敏夫、早く帰ってきて。克彦、克彦が!」「兄貴がどうしたの」「海で行方不明に」。
チーン。お兄さんの遺影を見ている川地民夫。しかし、兄の死を悼みつつも川地民夫には、どうしても気になることがあったのです。「ばあや、本当のこと言ってくれる。あの子は毎晩、ここへ来てたんだろ」。「いいえ存じません」と首をぷるぷる振るばあや。「やっぱり、あの子も一緒だったのか」「ぼっちゃま。あのお嬢さんはきっと。いいえ、ただ。……いいえ、ぞんじません」。ふう。多分、ばあやの口ぶりからして、筑波久子は兄と一緒にヨットに乗ったのでしょう。そして、おそらく荒れ狂う海に投げ出されて……。川地民夫は寂しくつぶやきます。「みんな死んじまったんだな」。
しかし、その夜。またも飼い犬がキャンキャン鳴き始めましたよ。もしかして。あわてて川地民夫が自分の部屋に入ると、むんむんビキニの筑波久子がいるじゃありませんか。「やっぱり君は生きてたんだね」ヒシッ。川地民夫は筑波久子を抱きしめます。まあ、お兄さんは死んじゃったみたいですけど、とりあえずむんむんビキニちゃんが生きていればソレでいいや。
と、そこにドヤドヤと物音が。浜村純たちイカレた漁師どもが押し掛けてきたようです。それを聞いて、「あたし帰るわ」とめずらしく筑波久子はソワソワモード。「またね。明日」「明日のいつだい」「そう。今頃。明日船の上で待ってるわ」。じゃっ。ピューン。窓から断崖絶壁に飛び込んで、筑波久子は消えちゃいました。と、入れ違いに漁師たちがドアを開け、部屋に入ってきましたよ。あの女はどうした!と掴みかからんばかりのイキオイです。その上、爺さま漁師は「鱶の番いの片割れの怨霊ですじゃ」とか叫んでるし。「そんな。そんな嘘だよ」と川地民夫は抗弁してみたものの、迷信深い漁師たちは聞く耳を持ちません。渋々、別荘からは退去したものの、交代で別荘を見張ってやるとか言い張ってますもん。ありゃ、本当にやりそうですね。
ということで、ひそかに見張りの目を逃れた川地民夫は、筑波久子に出会うと、言い出しました。「タイヘンなんだよ。漁師の奴ら、君を狙ってるんだよ。奴らは君を殺しに来るんだ」「なんで」「バカな迷信なんだよ。君は鱶なんだって」。このままじゃ危ない。よし逃げよう。夜の11時に、またこの船で。そのまま、この村を脱出しよう。そんな約束をした川地民夫はいったん別荘に。なにしろ、いろいろ準備がありますからね。えーと、まずは食糧だ。「ばあや。夕飯の残りと果物と、あとサンドイッチを3人か4人分、バスケットに入れておいてよ」。ジトーっ。ばあやは不審そうに言います。「どこかへお出かけでございますか」。ま、まずい。ばあやには隠しごとできないよ、ぼく。「ばあや。ばあやだから言うけどね、あの子は化け物なんかじゃないよ」。いったん話しだせば、もう停まりません。ペラペラと全部、話してしまった川地民夫はひと安心したのか、「10時半に起こしてくれよ。ばあや。これは秘密だよ」と言うなりベッドに入って寝ちゃうのでした。ぐーぐー。
はっ、枕元の時計を見ると10時50分。うわ寝坊だ。「ばあやぁ」「……」。返事がありませんよ。おかしい。そしてドアを開けようとすると、ガチャガチャ、ガチャガチャ。あれ開きません。外からロックされているみたいです。しまった、ばあやに裏切られたんだ。
その頃、ばあやの通報を受けた浜村純たちは、モリを片手にヨットに潜伏中。今か今かと筑波久子のやってくるのを待ち構えています。あやうし、むんむんビキニちゃん。
どりゃー。窓から脱出した川地民夫は、一路ヨットを目指します。「ちきしょー」。間に合ってくれよー。しかし、一歩遅かったようです。水から上がってきた筑波久子の目が恐怖に見開き、浜村純たちの必殺のモリがどりゃー。血しぶきがどぱー。
川地民夫がヨットに泳ぎ着くと、漁師たちが「やった、やった」と大喜び中でした。「俺はこの目で見たぞ。でけえ、でけえ鱶だったな」。おっと川地民夫に気付いたようです。「お、坊ちゃんだ」と居住まいを正し、言います。「見なせえ。臭いを嗅いでみなせえ。これは人間の血じゃねえ。魚の血だ」。えーと、そんなこと言われても、ぼく困るよ。ともあれ、分かるのはむんむんビキニちゃんは、もういない。もう永遠にいないってことだね。
夏休みも終わり、川地民夫は東京に帰ることになりました。というか、大学生だったですね。てっきりプー太郎だと思ってました。ま、ともあれ帰る前に、川地民夫は、作家の内田良平にあいさつに行くことに。すると、内田良平は筑波久子がサメに変身するところを見たんだ、と今さらなことを言い出しましたよ。どうやら、自分の見たモノが幻覚じゃなかったと知って、浮かれている風情。「あの子は本当に君のためにいたんだよ。いいんだよ、敏夫くん」と上機嫌に肩をぽんぽん叩いたりして、ペラペラと続けます。「君は選ばれた人だったんだ。君の見た夢は一生、君のもんだ。美しい夏の夢じゃないか。君以外の誰も、その夢を見ることはできやしなかった。君だけがそれをできたんだ」。もしかしたら、原作では感動ポイントなのかもしれませんが、映画では唐突すぎて、何がなにやら。
ともあれ、それを聞いた川地民夫は、うわーん。走り出しました。
さっぱり理解できないまま、海に潜っている川地民夫。骨がいっぱい落ちているところからすると、筑波久子に教えてもらった漁場のようです。そして大量の骨に加え、今は新しい骨が。モリが刺さった大きな骨です。もしかして、これは筑波久子の骨でしょうか。夢か現か、ゆらりと影が射します。川地民夫の上をサメが悠然と泳いでいきます。それに呼ばれるように、川地民夫もせっせと泳いでいくのでした。
新東宝でも、前田通子やら三原葉子。はたまた万里昌代などが出る、似たような路線の映画がいっぱいあったワケですが、あちらは非常に分かりやすい造りです。いわく、よっしゃ可能な限りお見せしましょ。さあ水着を見てってくださいな、みたいな。
しかし、こちらはヘンにゲイジュツしてしまったおかげで、とても半端なできあがりに。誰も川地民夫のことなんて見てないって。まして内田良平の苦悩なんてどうでもいい。そもそも復讐にきたサメが、なんで川地民夫と付き合わなきゃならないの。そうではなく、とにかく筑波久子のビキニをひたすら見せればいいのに、ヘンに出し惜しみしているのがダメな感じです。せっかくの素材を生かさないなんて、もったいない。
ちなみに、筑波久子は慶応女子高から慶応法学部政治学科に進んだお嬢様らしいです。でも、その割には、なんていうかフェロモン全開というか、むんむんな感じ。見かけと異なり、声も低めのハスキーな感じだし、そのギャップがたまらない人も多いんでしょうね。えっ、僕ですか。いや、その。ツボです。



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