【「3000キロの罠」福田純 1971】を観ました
おはなし
裏日本を駆け抜ける田宮二郎。そして、そのあとには、死体(女性)がごろごろ。
田宮二郎の個人プロダクション、田宮企画が作った第一回作品(映画)。というか、第一回だけど最終回。
ブーン。セスナが九州の空を飛んでいます。どや顔で操縦しているのは、鹿児島の青年実業家、加瀬啓介(田宮二郎)。とりあえず噴火口に急降下してみたりして、冒険家っぷりをアピールしています。
と、シーンが替わると田宮二郎は社長室で、部方たちに演説しています。今度は有能な経営者っぷりをアピールですね。
「近い将来、太平洋沿岸地帯は都市公害、工場廃液に蝕まれスラム化し、日本海沿岸の新たな価値と可能性が大きくクローズアップされてくるはずだ。観光、レジャー産業も日本海に移動し、飛躍的に発展するに違いない。この観点から東北、北陸、山陰各地にさしあたってホテルを一つずつ、そしてゆくゆくは、それぞれをキーステーションに関連事業を広げていく。各パートで至急、検討して計画書を提出してほしい」。
「はいっ!」と去っていく部下たちの代わりに、今度は義父でデパート経営者のカワベ(永井智雄)がやってきましたよ。
「いやあ、いよいよ裏日本進出かね」「僕が父の後を継いでからの夢でしたからね」「わはは。うらやましい限りだ。私なんかデパートひとつ持て余して、きりきり舞いだよ。ところでホテルの用地は自分で下検分に行くんだろ」「はあ、そのつもりですが」「いっそのこと車で北海道まで行ってみたらどうだ?」。
パッ。カットが変わると、いきなり車の前に立っている田宮二郎と永井智雄。
「これですか。ギャランGTO。今、若者の間じゃ一番人気がありますね。どうして、この車を」。うわあ、いかにも説明臭いセリフですねえ。まあ、さすがに三菱自動車とタイアップしてるからだよ、とは言えないので、永井智雄も苦しい説明。
「わはは。実は先日、稚内の丸仙デパートの社長と箱根でゴルフをやってね。負けた方が車をプレゼントするって約束しちまったんだよ」。
いや、意味わかんないし。それに、"わはは"とか言ってる人って、いまいち信用できないんですけど。ともあれ、心配する娘というか田宮二郎の奥さん、麻知子(谷口香)にも「啓介くんは国際A級ライセンスを持ってるんだよ。心配いらんよ。わはは」と、永井智雄は何もかも"わはは"パワーで乗り切る腹のようです。
それはともあれ、旅立つ前に、やることはヤッとけということで、奥さんの麻知子とムフフな田宮二郎。一戦終えて、タバコを吸っていると、奥さんが聞いてきました。「何日かかるの。稚内まで」「ざっと3千キロとして、一日200キロ走るから、15日だな」。プカー。「一日200キロ程度じゃ、お遊びの時間もたっぷりあるわけね」。と、奥さんがキッとにらんでいると、そこに謎の電話が。「あんた、北海道まで行くそうだが、止めることだな」「どうして」「ロクなことが起きないからさ」「誰だっ、キミは」ガチャ。ツーツー。むむむ、いったい誰なんでしょう。
しかし、田宮二郎は脅しに負けるような男ではないのです。そんなことを言われたら、かえって意地になって実行するタイプ。ぶろろー。ほらGTOで出発しちゃった。ぶろろー。ぶろろー。キキーっ。おっと路上にいきなり女(戸部夕子)が飛び出してきましたよ。「お願い。乗せてって」「どうしたんです」「追われてるんです。助けてください」。もちろん若い女のお願いを断る田宮二郎ではありません。よっしゃ、ぶろろー。ニヘっとしながら運転している田宮二郎に女は言います。「あたし里村雪絵。降る雪に絵本の絵です」「ロマンチックな名前だねえ」。すっかりオヤジモードな田宮二郎ですが、バックミラーにデボネア(もちろん三菱自動車)を見つけるやいなや、表情をキリっとさせ、アクセル全開です。ぶろぶろぶぉーーん。「どうしたんですか」「尾けられてるようだ」。
ずざああ。河原にGTOを滑り込ませ、後続のデボネアをやり過ごす作戦に出た田宮二郎。しかし、目の前を通り過ぎていくデボネアの運転席を見てビックリです。「あっ!」「知ってる方?」「うん」。そう、デボネアを運転していたのは、なじみの店のママ、曽根崎朝子(浜美枝)だったのでした。えーと、こいつが犯人ですね。なんの犯人かは知りませんが。
まあ、いいや。細かいことは気にしない、気にしない。ぶろろー。戸部夕子とイチャつきつつ、阿蘇をドライブしたり、湯布院でお神楽見物している田宮二郎。しかし、文無しのはずの戸部夕子が実はお金をたんまり持っていたり、ついでに隠れて電話をしていることに気づき、怒りがマックスです。「誰に頼まれ、どんな魂胆で近づいてきたのかは知らないが面白い。罠にかかってやろう」。おりゃあ。浴衣をむしって、戸部夕子を抱きしめます。あれええ。
はい、また一戦終えて、タバコをくゆらす田宮二郎。「ごめんなさい、ウソついて」と戸部夕子はすっかり田宮二郎にメロメロになった模様。さすが稀代の色男ですね。「あたし、ただ頼まれただけなんです。社長さんの車に乗って行き着いたところから、電話で連絡するようにって」「誰に頼まれた」「男の人です。黒川フミオって人」。ふーん、って感じで特に何をするわけでもなく、漫然とドライブを続ける田宮二郎。関門海峡を渡り、松江城では、その黒川フミオを発見しますが、ただそれだけ。いるはずのない奥さんの麻知子を発見しても、気のせいということで。まあ、確かにここまでに「事件」はまったく起きてないんですよね。だから、今のところ「何か」が起きそうな気がする、というだけ。
そんなこんなで、田宮二郎と戸部夕子がカニを食べたり、イチャついたり、ついでにエッチをしているのを漫然と観ていると、おおっ、そろそろ話が動きそうな気配がしてきましたよ。それは夜のドライブ。「なんだか夢でも見てるみたい」と戸部夕子がウットリしていると、対向車線を走るトラックが、こちらの車線にはみ出してきました。キキーッ。急ハンドルでかわす田宮二郎。でも心臓はバクバクです。そんな疑心暗鬼な状態のままさらにGTOを走らせていると、おや、あれはっ!なんと路肩にデボネアが停まっていて、中で浜美枝がグースカ寝てるじゃありませんか(意味不明)。「ちょっと待っててくれ。すぐ戻るからね」と戸部夕子を残し、デボネアに向かう田宮二郎。コンコン、コンコン。「妙なところでご休息ですね」。寝起きのくせにヤケにしゃっきりしている浜美枝は答えます。「社長さん、お待ちしてましたの」。ぶろろー。え、なんか行っちゃったよ、浜美枝。観てる方もワケ分かりませんが、田宮二郎もワケ分からない気分で、GTOに戻ると、あれれ、戸部夕子がいない。完全にいない。どこにもいない。ちくしょう。ぶろろろー。あわててGTOを走らせ、デボネアを追う田宮二郎。ききーっ。「どうしたの」とビックリする浜美枝に田宮二郎は言います。「連れの女がさらわれたんだ」「さらわれた?」「君と話してた間なんだ。とぼけるのはよせ。君も一味だっ!」。いや一味って、何の?「そんなに仰るなら説明してあげるわ。あたしはあなたのため……」「弁解など聞いてるヒマはないっ。二度と邪魔しないでくれ」。スタスタ。バタム。ぶろろー。ああ、行っちゃいましたよ田宮二郎。ここで話を聞いておけば、被害も少なくて済んだのに。
ともあれ、GTOを走らせた田宮二郎は渋滞に遭遇。もしや。イヤな予感が走り、車を降りて渋滞の先頭に向うと。ガガーン。なんとひき逃げされた戸部夕子の死体が転がっているじゃありませんか。いったい、誰がこんなヒドイことを。
まあ普通なら、ここで警察に相談するなり、旅行を取りやめるところなんでしょうが、我らが田宮二郎はひと味違います。ザッパーン。いきなり能登の富来町(現:志賀町)までやってきて、断崖絶壁に砕け散る波を見たりしていますよ。って、おやっ。遺書を置いて、自殺しようとしている女(加賀まり子)がいる。とりゃー。「いや。お願い、死なせてぇ」。もちろん田宮二郎は、そんな言葉を無視して加賀まり子を羽交い絞めです。
そして、田宮二郎は加賀まり子をそのまま旅館へ連れて行きました。「キミが死のうと生きようと知ったこっちゃないが、夕べある女性に死なれたばかりなんでね。彼女は生きたいと願っていながら死んでしまった」「あたしが代わりに死ねばよかった」「彼女が生きていたら、僕はこっちに来なかった。彼女のおかげでキミは助かったんだよ」。おや加賀まり子はうつむいて震えています。まさか、田宮二郎の言葉に感動でもしたんでしょうか。だとしたら、かなりのウッカリさんですよ。おっと、今度はいきなり男の写真を灰皿で燃やし始めましたよ。しかし、その写真を見た田宮二郎の目がキラリン。これは戸部夕子に自分の監視を依頼したという、松江城で発見した黒川フミオじゃありませんか。なんたる偶然。「キミの恋人か。この男」「君塚、知ってるんですか」「君塚?黒川っていうんじゃないのか」。そう、黒川というのは偽名で、なんと、この君塚は義父の永井智雄が経営している白十字デパートの経理課長だったのです。ついでに、この君塚、そして加賀まり子。さらには義父の永井智雄までもが、ここ能登の富来町出身というオマケつき。
ま、普通、ここまでくれば、義父をはじめ、能登人脈がなんとなくアヤシイと思いそうなものですが、田宮二郎はピュアなハートを持つ男なので、そんな疑いはこれっぽっちも持っていないようです。というか、目の前の女性を落とすことに全力を傾けて、目の前の落とし穴に気づかないタイプっていうんでしょうか。「キミはどうやら君塚に振られたらしいが、そんな男のために自殺を図るなんて愚の骨頂だよ」。ザッパーン。いきなり場面が断崖絶壁に代わると、加賀まり子が反論します。「あなた、男のために自殺を図るなんて愚の骨頂だって、仰いましたわね。あなた、能登の人間を知らないからそんなことが言えるんです」。はい、ここでいきなり能登自慢を始める加賀まり子。よく分かりませんが、能登の人間は、ヒドイ環境に住んでいるので異常に我慢強いと言いたいみたいです。しかし、田宮二郎はロクに話を聞かずにネットリ視線で加賀まり子を見つめるのみ。小さい声で言いますけど、この人、ちょっとバカかも。
ぶろろー。助手席に加賀まり子を乗せて走っていたかと思うと、いきなりカマクラの中で、たき火を前にマッタリしている田宮二郎たち。「人間って、困った時や苦しい時しかいたわり合えないんでしょうか」と加賀まり子が弱音を吐くと、チャンスとばかりに田宮二郎は言います。「キミは能登の人間としてではなく、うまく言えないけど、自分自身に誇りを持っていいんじゃないかな。それが誰にとっても、いちばん大切なことなんだよ」。よし決まった。ほら、加賀まり子はウットリしてますよ。「あ、そうだ。キミの名前、まだ聞いてなかったね」。おい、聞いてなかったのかよ。
ぶろろー。車内はすっかり桃色な空気が漂っていますよ。すっかりデキあがってる感じ。と、おや、パーキングにGTOを入れると、停まっている車から君塚が降りてきたのが見えました。バタム。GTOから飛び降りて君塚に駆け寄る加賀まり子。「良かった、生きてて。もう離れない」。ガガーン。ショックな田宮二郎。「落ち着くんだ。キミはもう、この男とは何の関係もないはずだ」。しかし、恋人を見つけた加賀まり子は聞いちゃいません。
予定が狂って、観光ホテルで、ひとり寂しく寝ている田宮二郎。と、枕元の電話が鳴りましたよ。「もしもし加瀬さん。あたし奈美子です。さっきはごめんなさい。あの時、あたし夢中で」。ムカッ。「キミはもう僕には用はないはずだよ」。思わずキツイ声を出す田宮二郎に、加賀まり子は続けます。「でも、あなたにどうしてもお知らせしたいことがあって。君塚の相手の女の人が分かったんです」「誰だ」「それが、その人は"あ"」……ツーツー」。電話は切れてしまいました。「頭文字は"あ"か」と考え込む田宮二郎。そうだ、朝子だ。曽根崎朝子(浜美枝のことね)に間違いない。
しかし、ここに至っても、まだノンキに旅を続ける田宮二郎。GTOは山形県に入ったようでよす。と、いままで一切聞いていなかったのに、いきなりスイッチを入れたカーラジオからニュースが聞こえてきました。なんと加賀まり子が水死体であがったそうです。遺書があったので自殺だろうと警察は判断しているとのことですが、田宮二郎だけは真実を知っているのです。そう。その遺書は自分が自殺を止めた時に持っていたもの。そして彼女は君塚と再会できてルンルンだった。つまり、彼女は自殺に見せかけて、君塚に殺されたのだ。
で、田宮二郎はどうするのでしょう。警察に駆け込む。いえいえ。GTOに忘れていった加賀まり子の鞄を渓谷に投げ捨て、そのまま旅を続けるのです。さらに謎のダンプにあおられ、関係ない車の女性ドライバーが巻き添えで死のうと、頑固に旅を続ける田宮二郎。すでに当初の目的も失われ、何のためにGTOを走らせているのかサッパリ分かりません。
しかし、そうは言っても、これだけイロイロあると疲れますよね。もう運転しながら寝ちゃうくらいに。グーグー。どっかーん。うわわわ。居眠り運転していた田宮二郎のGTOにアメ車2台が体当たりをかましてきましたよ。もちろん眠気はスッキリ。田宮二郎はGTOをスピンターンさせ、まるでラリードライバーのようにデコボコ道をかっ飛ばしていきます。そして、そのまま車を叢に突っ込ませて隠れました。しめしめ。アメ車軍団はGTOを見失って、去っていくようです……グーグー。ああ、また寝ちゃいましたね。そして、そんな田宮二郎のGTOに静かに近づくのは、浜美枝の乗ったデボネアなのです。
はっ。青森のホテルの一室で目覚めた田宮二郎。横にはなぜか奥さんがいてビックリです。「キミ、ここは」「あなた、まる一日、眠りどおしだって」「そうか」。奥さんの話によると、謎の女が田宮二郎をホテルに連れてきたそうで、奥さんはホテルから連絡をもらって駆けつけてきたそうです。うーん、全然、そこらへんのこと覚えてないんだよなあ。「お医者様の話では、疲労と神経障害が重なったんだそうよ」。つまりイッパイイッパイになっていたということですね。まあムリもないです。
「あなた北海道に行かないで」。ぶろろー。行くなと言われれば行くのが田宮二郎という男。青函連絡船に乗り、目指せ北海道。と、デッキで渋く海を見つめていると、そこにいたのは浜美枝じゃありませんか。早速、いままでに女性が3人死んだんだと、浜美枝を詰問する田宮二郎。「その犯人の親しい女が、僕のよく知ってる女性で、名前が"あ"から始まるということだけ分かりました」「"あ"から?」「ママの名前は朝子。僕の知ってる女性で"あ"から始まる人はキミしかいないんだ」。えー、田宮二郎の手帳には女性の名前が1万人くらい書いてありそうなんですけど。なんか、嘘くさいなあ。もちろん浜美枝も田宮二郎の発言をガン無視の方向で言います。「あなたにお話ししたいことがあったから。あなたを殺そうとしている人は……」。ここで効果を盛り上げるためにザッパーンと舳にぶち当たる荒波のカット。ザパパーン。「……あなたのお義父さん」。ガーン。「そんなっ。バカなっ!」。
どうやら、浜美枝は田宮二郎の義父、永井智雄が田宮二郎殺害を指示している電話を盗み聞きしてしまい「だから、あなたをここまで追ってきたんです」だそうです。なんで変装してデボネアに乗っていたのかは知りませんけどね。しかし、これで田宮二郎はハッキリと理解しました。「オヤジ、オヤジ。もしそうだとすると、狙っているのは僕の財産。そういえば白十字デパートは東京の角丸クレジットに喰われていた。でも、まさか僕の女房のオヤジが。いや、もしかしたら女房も!」。「まさか、あなたの奥さんが」と否定する浜美枝に、田宮二郎は叫びます。「今、何て言った。あなたの奥さんと言ったね。あなたの奥さん。"あ"」。ここぞとばかりに加賀まり子の声がリフレインされます。「あ、あ、あ、あ、あ」。ああ、分かった、分かったよ。でもひどいオチだ。
さて北海道に上陸した二人です。GTOを届ける先の「稚内の丸仙デパート」なんて存在しないのを承知のうえで、GTOとデボネアの2台体制でブロブロ走り続けます。ここまで来ると、そこに山があるから登るんだ、みたいな感じですね。もちろん、田宮二郎と浜美枝はイチャイチャしたりエッチしたり、ほとんど発情期の中学生カップルみたいなもんだんですけどね。
ま、そんなこんなで、サッパリした気分でホテルを出た二人は2台の車で旭川に。おや、一面の雪原の中にポツンとベンチがあるようですよ。ちょうどいい、あそこでお昼にしよう。絶対寒いと思うんですけど、そんなことを気にしない田宮二郎はサンドイッチをパクり。「あ、いけない。ポット忘れちゃったわ」。そんなことを言いつつ、デボネアに戻る浜美枝を、幸せ気分で見送ります。……。……。ん?……。おかしい、浜美枝が帰ってきませんね。田宮二郎が不安になって様子を見に行くと、なんとGTOがポツンとあるだけで、浜美枝のデボネアがいないじゃありませんか。でも、あたりを見回すと、なぜか田舎道を女がひとりフラフラ歩いているのが見えます。あれは、浜美枝をさらった一味に"間違いない"。まあ、それは当然としても、なんか罠くさいですけどね。
ぶろろろー。二本の足で走れば済む距離をGTOで走り出し、女を追い詰める田宮二郎。「ひいっ」「鹿児島のクラブのホステスだなキミは。ここにあった車はどうした」。「知らないわ」ととぼける女をムンズとひっつかみ、GTOに押し込んだ田宮二郎は詰問します。「行先は」「大雪山」ぶろろー。「キミと同様、黒川に頼まれて僕に近づいた女性がいたが、結局、殺されたよ」。ええっマジですかあ。「お願い下ろしてください」と女は叫びつつ、走行中のGTOから飛び降りていきましたが、まあ気にしない、気にしない。ぶろろー。
おっと大雪山とか言ってた割には、ちょっと走るといきなりデボネアが停車していましたよ。ききーっ。いちおう罠を警戒して、あたりを見回しながらデボネアにゆっくり接近する田宮二郎。しかし、野中の一本道、それも一面の銀世界ですから、どこに隠れる場所もありません。そぉーっ。デボネアの後部座席を除くと浜美枝が倒れています。あっ、良かった。「キミっ!」……ゴチーン。いきなり後頭部を何者かに殴られた田宮二郎はそのまま失神するのでした。
うんしょ、うんしょ。失神している田宮二郎を乗せたGTOを君塚がせっせと押しています。おりしも、ここは緩やかなカーブを描きどこまでも続く下り坂。やがてGTOは重力の導くまま、坂を自力で下り始めました。えーと、これは事故に見せかけて殺したいってことなのかな。でも、基本的に緩やかなカーブだし、積もった雪壁にぶつかってもたいした事故にはならないんじゃ。あ。田宮二郎が目覚めましたよ。なんか鬼のような形相でハンドルを右に左に切ってますけど、結局は間に合わなくなり雪壁にぶつかって停止。うん、最初からこうしとけばいいだけだよね。
ちなみに、このシーン。田宮二郎のGTOを君塚の乗ったジープが追いかけているのですが、カットが替わる寸前、後ろのジープが雪壁に乗り上げて、ひっくり返るシーンが映っています。これこそマジの事故。いったいなにやってんだか。
ともあれ、先ほどのマジ事故はなかったことにして、何事もなかったように、ポカスカ殴り合いを始める田宮二郎と君塚。ポカポカ。ゴロンゴロン。とにかく、役者さんは雪上で動くので当社比3倍くらい疲れるんでしょうが、観ている方としてはさっぱり迫力を感じないという可哀そうなパターン。「ドキッ!男だらけの雪上プロレス」みたいな感じさえ漂います。しかし、とにかく正義は勝つ!。ということで田宮二郎が勝利の余韻に浸りつつ鼻水をすすっていると、そこに「加瀬さーん」という浜美枝の声が。そして、なんと、なんと、なーんと義父の永井智雄が、浜美枝に猟銃を突き付けて、やってきたじゃありませんか。横には娘で田宮二郎の奥さんも引き連れています。
「わっはっは。鹿児島からざっと3千キロか。ご苦労だったな」。またワハハだよ。ついでに、田宮二郎にKOされていた君塚も起き上がり、田宮二郎をバカにします。「フフフ。あんたの奥さんは俺と再婚することになってるんだ」。悔しい田宮二郎は「人殺しに裏切り女か」と捨て台詞を吐いてみますが、奥さんから「裏切らせたのは誰?仕事と女遊びに夢中なあなたにとって、あたしは何だったの」と言われてシュンです。
「思えば長かった。だが能登の人間は辛抱強い」と自画自賛する永井智雄。すると君塚も調子に乗って「俺もその能登の人間さ」と便乗して威張っています。と永井智雄が君塚に猟銃を向けつつ言いました。「気の毒だがお前も一緒に死ぬんだよ」。ガーン。動揺する君塚……、おや、ぜんぜん動揺していませんね。むしろ自信たっぷり。「あんたは、俺を撃つことはできないっ!」。さらに「ある組織がこの成り行きに関心を持っているんですよ」とか言い出しましたよ。「あんたが聞いたら、腰を抜かすような人物が俺を見込んで、この筋書きを立てたんですよ」「貴様あ、永年の恩を忘れやがって」。どっちもどっちな二人が、猟銃を取ろうともみ合っています。そして、ガーン。斃れたのは永井智雄でした。しかし、その隙に田宮二郎は君塚にパーンチ。あうっ。猟銃を取り落した君塚と田宮二郎は、再びポカスカ殴り合いモードです。ごろんごろん。なだらかな雪原を転がり落ちながら喧嘩をしている二人。はい、また田宮二郎の勝ちです。今度は復活しないように、念入りに倒れている君塚の腹を蹴飛ばしておいて、田宮二郎は女性二人のもとに戻るのです。
田宮二郎が戻ると、父の遺骸にすがりついて泣いていた奥さんが、田宮二郎と浜美枝の目の前で、そのまま猟銃自殺を遂げました。ふう、苦い結末だったぜ。でも、これで全てが終わっ……、……、終わらないっ!
なんかいきなり「鶴翼の陣」隊形で、大勢の男たちが雪原を近づいてきます。そして、その要の位置にいるのは、カモフラージュジャケットにサングラスをばっちりキメた謎の男(トホホ。名優、三国連太郎です)。どうやら、コレが「腰を抜かすような人物」の正体らしいですよ。もっと仕事を選んで欲しい三国連太郎は言います。「我々の手で後片付けをしてあげよう。3千キロを走り続けてきたキミの闘志に対する敬意とでもいうものかねえ。もちろん見逃すのはこれ一度だけ。豚は太らせて食え。キミが太るのを待つとするかねえ」。「それはいったいどういう意味なんだ」「キミが裏日本の開発に成功した時、きっと私の組織が、キミの事業をそっくりいただかしてもらうよ。フハハ」。なんだかワケが分からなくなってきましたね。「名前を聞かせてくれ」「んあーーっ。かならず知る時があるさ、加瀬君。イヤというほどね。フハハハハ!」。
田宮二郎はGTOの運転席でひとり放心状態。そして、ちょっと涙目になりつつ言います。「負けるものか」。一方、浜美枝もデボネアの運転席で涙をポロりん、そして二台の車は、夕焼けに染まった雪の大地に走り出していくのです。
感想をひとことで言うとすれば、頭悪いなあ、です。偏差値で言うと10くらい? もしくはムーディーズの格付けならCくらい。まあテキトーですけど。
原作は木枯し紋次郎で有名な笹沢左保。監督は「100発100中」やゴジラシリーズなどを撮って、個人的に大好きな作風の福田純。脚本の石松愛弘は大映「黒シリーズ」などを手掛けたベテラン。そして、なんと言ってもカッコイイ田宮二郎。ひとつひとつのパーツは悪いどころか、むしろ一級品なのに、なんでこんな映画になっちまったんでしょう。
まあ原因は想像が付かないでもありません。田宮企画の作品。つまり田宮二郎の俺様作品ですから、そこらへんの歪みが出ちゃったのかあと。橋本忍の「幻の湖」とかもそうですが、いわゆる「現場で誰も止めなかったのか」という疑問が頭の中をグルグルする映画でした。
あ、音楽は良かったです。前田憲男のジャズな劇伴が最高にクールで、映画を盛り上げます。どれくらい良かったかというと、思わずアマゾンでサントラをポチっとしてしまうくらい。ちなみに4月1日現在、アマゾンで「一時的に在庫切れ; 入荷時期は未定です。」になっているのは、最後の一枚を僕が買ってしまったから。本当に、どうもすみません。
ちなみに、永久凍結させようと思っていた「いくらおにぎりブログ」ですが、これを機会に、ゆるゆると更新を再開しようかと思っています。もっとも更新頻度は半年に一本とかかも知れませんが……。なにはともれ、よろしくお願いいたします。
あと、被災地が一日も早く復興できますように。そして、子供たち:次の世代のためにも、みんなで頑張って、前よりいい日本を作りましょう。
いくらおにぎりブログのインデックスはここ
いくらおにぎり日記はここ
おはなし
裏日本を駆け抜ける田宮二郎。そして、そのあとには、死体(女性)がごろごろ。
田宮二郎の個人プロダクション、田宮企画が作った第一回作品(映画)。というか、第一回だけど最終回。
ブーン。セスナが九州の空を飛んでいます。どや顔で操縦しているのは、鹿児島の青年実業家、加瀬啓介(田宮二郎)。とりあえず噴火口に急降下してみたりして、冒険家っぷりをアピールしています。
と、シーンが替わると田宮二郎は社長室で、部方たちに演説しています。今度は有能な経営者っぷりをアピールですね。
「近い将来、太平洋沿岸地帯は都市公害、工場廃液に蝕まれスラム化し、日本海沿岸の新たな価値と可能性が大きくクローズアップされてくるはずだ。観光、レジャー産業も日本海に移動し、飛躍的に発展するに違いない。この観点から東北、北陸、山陰各地にさしあたってホテルを一つずつ、そしてゆくゆくは、それぞれをキーステーションに関連事業を広げていく。各パートで至急、検討して計画書を提出してほしい」。
「はいっ!」と去っていく部下たちの代わりに、今度は義父でデパート経営者のカワベ(永井智雄)がやってきましたよ。
「いやあ、いよいよ裏日本進出かね」「僕が父の後を継いでからの夢でしたからね」「わはは。うらやましい限りだ。私なんかデパートひとつ持て余して、きりきり舞いだよ。ところでホテルの用地は自分で下検分に行くんだろ」「はあ、そのつもりですが」「いっそのこと車で北海道まで行ってみたらどうだ?」。
パッ。カットが変わると、いきなり車の前に立っている田宮二郎と永井智雄。
「これですか。ギャランGTO。今、若者の間じゃ一番人気がありますね。どうして、この車を」。うわあ、いかにも説明臭いセリフですねえ。まあ、さすがに三菱自動車とタイアップしてるからだよ、とは言えないので、永井智雄も苦しい説明。
「わはは。実は先日、稚内の丸仙デパートの社長と箱根でゴルフをやってね。負けた方が車をプレゼントするって約束しちまったんだよ」。
いや、意味わかんないし。それに、"わはは"とか言ってる人って、いまいち信用できないんですけど。ともあれ、心配する娘というか田宮二郎の奥さん、麻知子(谷口香)にも「啓介くんは国際A級ライセンスを持ってるんだよ。心配いらんよ。わはは」と、永井智雄は何もかも"わはは"パワーで乗り切る腹のようです。
それはともあれ、旅立つ前に、やることはヤッとけということで、奥さんの麻知子とムフフな田宮二郎。一戦終えて、タバコを吸っていると、奥さんが聞いてきました。「何日かかるの。稚内まで」「ざっと3千キロとして、一日200キロ走るから、15日だな」。プカー。「一日200キロ程度じゃ、お遊びの時間もたっぷりあるわけね」。と、奥さんがキッとにらんでいると、そこに謎の電話が。「あんた、北海道まで行くそうだが、止めることだな」「どうして」「ロクなことが起きないからさ」「誰だっ、キミは」ガチャ。ツーツー。むむむ、いったい誰なんでしょう。
しかし、田宮二郎は脅しに負けるような男ではないのです。そんなことを言われたら、かえって意地になって実行するタイプ。ぶろろー。ほらGTOで出発しちゃった。ぶろろー。ぶろろー。キキーっ。おっと路上にいきなり女(戸部夕子)が飛び出してきましたよ。「お願い。乗せてって」「どうしたんです」「追われてるんです。助けてください」。もちろん若い女のお願いを断る田宮二郎ではありません。よっしゃ、ぶろろー。ニヘっとしながら運転している田宮二郎に女は言います。「あたし里村雪絵。降る雪に絵本の絵です」「ロマンチックな名前だねえ」。すっかりオヤジモードな田宮二郎ですが、バックミラーにデボネア(もちろん三菱自動車)を見つけるやいなや、表情をキリっとさせ、アクセル全開です。ぶろぶろぶぉーーん。「どうしたんですか」「尾けられてるようだ」。
ずざああ。河原にGTOを滑り込ませ、後続のデボネアをやり過ごす作戦に出た田宮二郎。しかし、目の前を通り過ぎていくデボネアの運転席を見てビックリです。「あっ!」「知ってる方?」「うん」。そう、デボネアを運転していたのは、なじみの店のママ、曽根崎朝子(浜美枝)だったのでした。えーと、こいつが犯人ですね。なんの犯人かは知りませんが。
まあ、いいや。細かいことは気にしない、気にしない。ぶろろー。戸部夕子とイチャつきつつ、阿蘇をドライブしたり、湯布院でお神楽見物している田宮二郎。しかし、文無しのはずの戸部夕子が実はお金をたんまり持っていたり、ついでに隠れて電話をしていることに気づき、怒りがマックスです。「誰に頼まれ、どんな魂胆で近づいてきたのかは知らないが面白い。罠にかかってやろう」。おりゃあ。浴衣をむしって、戸部夕子を抱きしめます。あれええ。
はい、また一戦終えて、タバコをくゆらす田宮二郎。「ごめんなさい、ウソついて」と戸部夕子はすっかり田宮二郎にメロメロになった模様。さすが稀代の色男ですね。「あたし、ただ頼まれただけなんです。社長さんの車に乗って行き着いたところから、電話で連絡するようにって」「誰に頼まれた」「男の人です。黒川フミオって人」。ふーん、って感じで特に何をするわけでもなく、漫然とドライブを続ける田宮二郎。関門海峡を渡り、松江城では、その黒川フミオを発見しますが、ただそれだけ。いるはずのない奥さんの麻知子を発見しても、気のせいということで。まあ、確かにここまでに「事件」はまったく起きてないんですよね。だから、今のところ「何か」が起きそうな気がする、というだけ。
そんなこんなで、田宮二郎と戸部夕子がカニを食べたり、イチャついたり、ついでにエッチをしているのを漫然と観ていると、おおっ、そろそろ話が動きそうな気配がしてきましたよ。それは夜のドライブ。「なんだか夢でも見てるみたい」と戸部夕子がウットリしていると、対向車線を走るトラックが、こちらの車線にはみ出してきました。キキーッ。急ハンドルでかわす田宮二郎。でも心臓はバクバクです。そんな疑心暗鬼な状態のままさらにGTOを走らせていると、おや、あれはっ!なんと路肩にデボネアが停まっていて、中で浜美枝がグースカ寝てるじゃありませんか(意味不明)。「ちょっと待っててくれ。すぐ戻るからね」と戸部夕子を残し、デボネアに向かう田宮二郎。コンコン、コンコン。「妙なところでご休息ですね」。寝起きのくせにヤケにしゃっきりしている浜美枝は答えます。「社長さん、お待ちしてましたの」。ぶろろー。え、なんか行っちゃったよ、浜美枝。観てる方もワケ分かりませんが、田宮二郎もワケ分からない気分で、GTOに戻ると、あれれ、戸部夕子がいない。完全にいない。どこにもいない。ちくしょう。ぶろろろー。あわててGTOを走らせ、デボネアを追う田宮二郎。ききーっ。「どうしたの」とビックリする浜美枝に田宮二郎は言います。「連れの女がさらわれたんだ」「さらわれた?」「君と話してた間なんだ。とぼけるのはよせ。君も一味だっ!」。いや一味って、何の?「そんなに仰るなら説明してあげるわ。あたしはあなたのため……」「弁解など聞いてるヒマはないっ。二度と邪魔しないでくれ」。スタスタ。バタム。ぶろろー。ああ、行っちゃいましたよ田宮二郎。ここで話を聞いておけば、被害も少なくて済んだのに。
ともあれ、GTOを走らせた田宮二郎は渋滞に遭遇。もしや。イヤな予感が走り、車を降りて渋滞の先頭に向うと。ガガーン。なんとひき逃げされた戸部夕子の死体が転がっているじゃありませんか。いったい、誰がこんなヒドイことを。
まあ普通なら、ここで警察に相談するなり、旅行を取りやめるところなんでしょうが、我らが田宮二郎はひと味違います。ザッパーン。いきなり能登の富来町(現:志賀町)までやってきて、断崖絶壁に砕け散る波を見たりしていますよ。って、おやっ。遺書を置いて、自殺しようとしている女(加賀まり子)がいる。とりゃー。「いや。お願い、死なせてぇ」。もちろん田宮二郎は、そんな言葉を無視して加賀まり子を羽交い絞めです。
そして、田宮二郎は加賀まり子をそのまま旅館へ連れて行きました。「キミが死のうと生きようと知ったこっちゃないが、夕べある女性に死なれたばかりなんでね。彼女は生きたいと願っていながら死んでしまった」「あたしが代わりに死ねばよかった」「彼女が生きていたら、僕はこっちに来なかった。彼女のおかげでキミは助かったんだよ」。おや加賀まり子はうつむいて震えています。まさか、田宮二郎の言葉に感動でもしたんでしょうか。だとしたら、かなりのウッカリさんですよ。おっと、今度はいきなり男の写真を灰皿で燃やし始めましたよ。しかし、その写真を見た田宮二郎の目がキラリン。これは戸部夕子に自分の監視を依頼したという、松江城で発見した黒川フミオじゃありませんか。なんたる偶然。「キミの恋人か。この男」「君塚、知ってるんですか」「君塚?黒川っていうんじゃないのか」。そう、黒川というのは偽名で、なんと、この君塚は義父の永井智雄が経営している白十字デパートの経理課長だったのです。ついでに、この君塚、そして加賀まり子。さらには義父の永井智雄までもが、ここ能登の富来町出身というオマケつき。
ま、普通、ここまでくれば、義父をはじめ、能登人脈がなんとなくアヤシイと思いそうなものですが、田宮二郎はピュアなハートを持つ男なので、そんな疑いはこれっぽっちも持っていないようです。というか、目の前の女性を落とすことに全力を傾けて、目の前の落とし穴に気づかないタイプっていうんでしょうか。「キミはどうやら君塚に振られたらしいが、そんな男のために自殺を図るなんて愚の骨頂だよ」。ザッパーン。いきなり場面が断崖絶壁に代わると、加賀まり子が反論します。「あなた、男のために自殺を図るなんて愚の骨頂だって、仰いましたわね。あなた、能登の人間を知らないからそんなことが言えるんです」。はい、ここでいきなり能登自慢を始める加賀まり子。よく分かりませんが、能登の人間は、ヒドイ環境に住んでいるので異常に我慢強いと言いたいみたいです。しかし、田宮二郎はロクに話を聞かずにネットリ視線で加賀まり子を見つめるのみ。小さい声で言いますけど、この人、ちょっとバカかも。
ぶろろー。助手席に加賀まり子を乗せて走っていたかと思うと、いきなりカマクラの中で、たき火を前にマッタリしている田宮二郎たち。「人間って、困った時や苦しい時しかいたわり合えないんでしょうか」と加賀まり子が弱音を吐くと、チャンスとばかりに田宮二郎は言います。「キミは能登の人間としてではなく、うまく言えないけど、自分自身に誇りを持っていいんじゃないかな。それが誰にとっても、いちばん大切なことなんだよ」。よし決まった。ほら、加賀まり子はウットリしてますよ。「あ、そうだ。キミの名前、まだ聞いてなかったね」。おい、聞いてなかったのかよ。
ぶろろー。車内はすっかり桃色な空気が漂っていますよ。すっかりデキあがってる感じ。と、おや、パーキングにGTOを入れると、停まっている車から君塚が降りてきたのが見えました。バタム。GTOから飛び降りて君塚に駆け寄る加賀まり子。「良かった、生きてて。もう離れない」。ガガーン。ショックな田宮二郎。「落ち着くんだ。キミはもう、この男とは何の関係もないはずだ」。しかし、恋人を見つけた加賀まり子は聞いちゃいません。
予定が狂って、観光ホテルで、ひとり寂しく寝ている田宮二郎。と、枕元の電話が鳴りましたよ。「もしもし加瀬さん。あたし奈美子です。さっきはごめんなさい。あの時、あたし夢中で」。ムカッ。「キミはもう僕には用はないはずだよ」。思わずキツイ声を出す田宮二郎に、加賀まり子は続けます。「でも、あなたにどうしてもお知らせしたいことがあって。君塚の相手の女の人が分かったんです」「誰だ」「それが、その人は"あ"」……ツーツー」。電話は切れてしまいました。「頭文字は"あ"か」と考え込む田宮二郎。そうだ、朝子だ。曽根崎朝子(浜美枝のことね)に間違いない。
しかし、ここに至っても、まだノンキに旅を続ける田宮二郎。GTOは山形県に入ったようでよす。と、いままで一切聞いていなかったのに、いきなりスイッチを入れたカーラジオからニュースが聞こえてきました。なんと加賀まり子が水死体であがったそうです。遺書があったので自殺だろうと警察は判断しているとのことですが、田宮二郎だけは真実を知っているのです。そう。その遺書は自分が自殺を止めた時に持っていたもの。そして彼女は君塚と再会できてルンルンだった。つまり、彼女は自殺に見せかけて、君塚に殺されたのだ。
で、田宮二郎はどうするのでしょう。警察に駆け込む。いえいえ。GTOに忘れていった加賀まり子の鞄を渓谷に投げ捨て、そのまま旅を続けるのです。さらに謎のダンプにあおられ、関係ない車の女性ドライバーが巻き添えで死のうと、頑固に旅を続ける田宮二郎。すでに当初の目的も失われ、何のためにGTOを走らせているのかサッパリ分かりません。
しかし、そうは言っても、これだけイロイロあると疲れますよね。もう運転しながら寝ちゃうくらいに。グーグー。どっかーん。うわわわ。居眠り運転していた田宮二郎のGTOにアメ車2台が体当たりをかましてきましたよ。もちろん眠気はスッキリ。田宮二郎はGTOをスピンターンさせ、まるでラリードライバーのようにデコボコ道をかっ飛ばしていきます。そして、そのまま車を叢に突っ込ませて隠れました。しめしめ。アメ車軍団はGTOを見失って、去っていくようです……グーグー。ああ、また寝ちゃいましたね。そして、そんな田宮二郎のGTOに静かに近づくのは、浜美枝の乗ったデボネアなのです。
はっ。青森のホテルの一室で目覚めた田宮二郎。横にはなぜか奥さんがいてビックリです。「キミ、ここは」「あなた、まる一日、眠りどおしだって」「そうか」。奥さんの話によると、謎の女が田宮二郎をホテルに連れてきたそうで、奥さんはホテルから連絡をもらって駆けつけてきたそうです。うーん、全然、そこらへんのこと覚えてないんだよなあ。「お医者様の話では、疲労と神経障害が重なったんだそうよ」。つまりイッパイイッパイになっていたということですね。まあムリもないです。
「あなた北海道に行かないで」。ぶろろー。行くなと言われれば行くのが田宮二郎という男。青函連絡船に乗り、目指せ北海道。と、デッキで渋く海を見つめていると、そこにいたのは浜美枝じゃありませんか。早速、いままでに女性が3人死んだんだと、浜美枝を詰問する田宮二郎。「その犯人の親しい女が、僕のよく知ってる女性で、名前が"あ"から始まるということだけ分かりました」「"あ"から?」「ママの名前は朝子。僕の知ってる女性で"あ"から始まる人はキミしかいないんだ」。えー、田宮二郎の手帳には女性の名前が1万人くらい書いてありそうなんですけど。なんか、嘘くさいなあ。もちろん浜美枝も田宮二郎の発言をガン無視の方向で言います。「あなたにお話ししたいことがあったから。あなたを殺そうとしている人は……」。ここで効果を盛り上げるためにザッパーンと舳にぶち当たる荒波のカット。ザパパーン。「……あなたのお義父さん」。ガーン。「そんなっ。バカなっ!」。
どうやら、浜美枝は田宮二郎の義父、永井智雄が田宮二郎殺害を指示している電話を盗み聞きしてしまい「だから、あなたをここまで追ってきたんです」だそうです。なんで変装してデボネアに乗っていたのかは知りませんけどね。しかし、これで田宮二郎はハッキリと理解しました。「オヤジ、オヤジ。もしそうだとすると、狙っているのは僕の財産。そういえば白十字デパートは東京の角丸クレジットに喰われていた。でも、まさか僕の女房のオヤジが。いや、もしかしたら女房も!」。「まさか、あなたの奥さんが」と否定する浜美枝に、田宮二郎は叫びます。「今、何て言った。あなたの奥さんと言ったね。あなたの奥さん。"あ"」。ここぞとばかりに加賀まり子の声がリフレインされます。「あ、あ、あ、あ、あ」。ああ、分かった、分かったよ。でもひどいオチだ。
さて北海道に上陸した二人です。GTOを届ける先の「稚内の丸仙デパート」なんて存在しないのを承知のうえで、GTOとデボネアの2台体制でブロブロ走り続けます。ここまで来ると、そこに山があるから登るんだ、みたいな感じですね。もちろん、田宮二郎と浜美枝はイチャイチャしたりエッチしたり、ほとんど発情期の中学生カップルみたいなもんだんですけどね。
ま、そんなこんなで、サッパリした気分でホテルを出た二人は2台の車で旭川に。おや、一面の雪原の中にポツンとベンチがあるようですよ。ちょうどいい、あそこでお昼にしよう。絶対寒いと思うんですけど、そんなことを気にしない田宮二郎はサンドイッチをパクり。「あ、いけない。ポット忘れちゃったわ」。そんなことを言いつつ、デボネアに戻る浜美枝を、幸せ気分で見送ります。……。……。ん?……。おかしい、浜美枝が帰ってきませんね。田宮二郎が不安になって様子を見に行くと、なんとGTOがポツンとあるだけで、浜美枝のデボネアがいないじゃありませんか。でも、あたりを見回すと、なぜか田舎道を女がひとりフラフラ歩いているのが見えます。あれは、浜美枝をさらった一味に"間違いない"。まあ、それは当然としても、なんか罠くさいですけどね。
ぶろろろー。二本の足で走れば済む距離をGTOで走り出し、女を追い詰める田宮二郎。「ひいっ」「鹿児島のクラブのホステスだなキミは。ここにあった車はどうした」。「知らないわ」ととぼける女をムンズとひっつかみ、GTOに押し込んだ田宮二郎は詰問します。「行先は」「大雪山」ぶろろー。「キミと同様、黒川に頼まれて僕に近づいた女性がいたが、結局、殺されたよ」。ええっマジですかあ。「お願い下ろしてください」と女は叫びつつ、走行中のGTOから飛び降りていきましたが、まあ気にしない、気にしない。ぶろろー。
おっと大雪山とか言ってた割には、ちょっと走るといきなりデボネアが停車していましたよ。ききーっ。いちおう罠を警戒して、あたりを見回しながらデボネアにゆっくり接近する田宮二郎。しかし、野中の一本道、それも一面の銀世界ですから、どこに隠れる場所もありません。そぉーっ。デボネアの後部座席を除くと浜美枝が倒れています。あっ、良かった。「キミっ!」……ゴチーン。いきなり後頭部を何者かに殴られた田宮二郎はそのまま失神するのでした。
うんしょ、うんしょ。失神している田宮二郎を乗せたGTOを君塚がせっせと押しています。おりしも、ここは緩やかなカーブを描きどこまでも続く下り坂。やがてGTOは重力の導くまま、坂を自力で下り始めました。えーと、これは事故に見せかけて殺したいってことなのかな。でも、基本的に緩やかなカーブだし、積もった雪壁にぶつかってもたいした事故にはならないんじゃ。あ。田宮二郎が目覚めましたよ。なんか鬼のような形相でハンドルを右に左に切ってますけど、結局は間に合わなくなり雪壁にぶつかって停止。うん、最初からこうしとけばいいだけだよね。
ちなみに、このシーン。田宮二郎のGTOを君塚の乗ったジープが追いかけているのですが、カットが替わる寸前、後ろのジープが雪壁に乗り上げて、ひっくり返るシーンが映っています。これこそマジの事故。いったいなにやってんだか。
ともあれ、先ほどのマジ事故はなかったことにして、何事もなかったように、ポカスカ殴り合いを始める田宮二郎と君塚。ポカポカ。ゴロンゴロン。とにかく、役者さんは雪上で動くので当社比3倍くらい疲れるんでしょうが、観ている方としてはさっぱり迫力を感じないという可哀そうなパターン。「ドキッ!男だらけの雪上プロレス」みたいな感じさえ漂います。しかし、とにかく正義は勝つ!。ということで田宮二郎が勝利の余韻に浸りつつ鼻水をすすっていると、そこに「加瀬さーん」という浜美枝の声が。そして、なんと、なんと、なーんと義父の永井智雄が、浜美枝に猟銃を突き付けて、やってきたじゃありませんか。横には娘で田宮二郎の奥さんも引き連れています。
「わっはっは。鹿児島からざっと3千キロか。ご苦労だったな」。またワハハだよ。ついでに、田宮二郎にKOされていた君塚も起き上がり、田宮二郎をバカにします。「フフフ。あんたの奥さんは俺と再婚することになってるんだ」。悔しい田宮二郎は「人殺しに裏切り女か」と捨て台詞を吐いてみますが、奥さんから「裏切らせたのは誰?仕事と女遊びに夢中なあなたにとって、あたしは何だったの」と言われてシュンです。
「思えば長かった。だが能登の人間は辛抱強い」と自画自賛する永井智雄。すると君塚も調子に乗って「俺もその能登の人間さ」と便乗して威張っています。と永井智雄が君塚に猟銃を向けつつ言いました。「気の毒だがお前も一緒に死ぬんだよ」。ガーン。動揺する君塚……、おや、ぜんぜん動揺していませんね。むしろ自信たっぷり。「あんたは、俺を撃つことはできないっ!」。さらに「ある組織がこの成り行きに関心を持っているんですよ」とか言い出しましたよ。「あんたが聞いたら、腰を抜かすような人物が俺を見込んで、この筋書きを立てたんですよ」「貴様あ、永年の恩を忘れやがって」。どっちもどっちな二人が、猟銃を取ろうともみ合っています。そして、ガーン。斃れたのは永井智雄でした。しかし、その隙に田宮二郎は君塚にパーンチ。あうっ。猟銃を取り落した君塚と田宮二郎は、再びポカスカ殴り合いモードです。ごろんごろん。なだらかな雪原を転がり落ちながら喧嘩をしている二人。はい、また田宮二郎の勝ちです。今度は復活しないように、念入りに倒れている君塚の腹を蹴飛ばしておいて、田宮二郎は女性二人のもとに戻るのです。
田宮二郎が戻ると、父の遺骸にすがりついて泣いていた奥さんが、田宮二郎と浜美枝の目の前で、そのまま猟銃自殺を遂げました。ふう、苦い結末だったぜ。でも、これで全てが終わっ……、……、終わらないっ!
なんかいきなり「鶴翼の陣」隊形で、大勢の男たちが雪原を近づいてきます。そして、その要の位置にいるのは、カモフラージュジャケットにサングラスをばっちりキメた謎の男(トホホ。名優、三国連太郎です)。どうやら、コレが「腰を抜かすような人物」の正体らしいですよ。もっと仕事を選んで欲しい三国連太郎は言います。「我々の手で後片付けをしてあげよう。3千キロを走り続けてきたキミの闘志に対する敬意とでもいうものかねえ。もちろん見逃すのはこれ一度だけ。豚は太らせて食え。キミが太るのを待つとするかねえ」。「それはいったいどういう意味なんだ」「キミが裏日本の開発に成功した時、きっと私の組織が、キミの事業をそっくりいただかしてもらうよ。フハハ」。なんだかワケが分からなくなってきましたね。「名前を聞かせてくれ」「んあーーっ。かならず知る時があるさ、加瀬君。イヤというほどね。フハハハハ!」。
田宮二郎はGTOの運転席でひとり放心状態。そして、ちょっと涙目になりつつ言います。「負けるものか」。一方、浜美枝もデボネアの運転席で涙をポロりん、そして二台の車は、夕焼けに染まった雪の大地に走り出していくのです。
感想をひとことで言うとすれば、頭悪いなあ、です。偏差値で言うと10くらい? もしくはムーディーズの格付けならCくらい。まあテキトーですけど。
原作は木枯し紋次郎で有名な笹沢左保。監督は「100発100中」やゴジラシリーズなどを撮って、個人的に大好きな作風の福田純。脚本の石松愛弘は大映「黒シリーズ」などを手掛けたベテラン。そして、なんと言ってもカッコイイ田宮二郎。ひとつひとつのパーツは悪いどころか、むしろ一級品なのに、なんでこんな映画になっちまったんでしょう。
まあ原因は想像が付かないでもありません。田宮企画の作品。つまり田宮二郎の俺様作品ですから、そこらへんの歪みが出ちゃったのかあと。橋本忍の「幻の湖」とかもそうですが、いわゆる「現場で誰も止めなかったのか」という疑問が頭の中をグルグルする映画でした。
あ、音楽は良かったです。前田憲男のジャズな劇伴が最高にクールで、映画を盛り上げます。どれくらい良かったかというと、思わずアマゾンでサントラをポチっとしてしまうくらい。ちなみに4月1日現在、アマゾンで「一時的に在庫切れ; 入荷時期は未定です。」になっているのは、最後の一枚を僕が買ってしまったから。本当に、どうもすみません。
ちなみに、永久凍結させようと思っていた「いくらおにぎりブログ」ですが、これを機会に、ゆるゆると更新を再開しようかと思っています。もっとも更新頻度は半年に一本とかかも知れませんが……。なにはともれ、よろしくお願いいたします。
あと、被災地が一日も早く復興できますように。そして、子供たち:次の世代のためにも、みんなで頑張って、前よりいい日本を作りましょう。
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