いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】3000キロの罠

2011-04-01 | 邦画 さ行
【「3000キロの罠」福田純 1971】を観ました

おはなし
裏日本を駆け抜ける田宮二郎。そして、そのあとには、死体(女性)がごろごろ。

田宮二郎の個人プロダクション、田宮企画が作った第一回作品(映画)。というか、第一回だけど最終回。

ブーン。セスナが九州の空を飛んでいます。どや顔で操縦しているのは、鹿児島の青年実業家、加瀬啓介(田宮二郎)。とりあえず噴火口に急降下してみたりして、冒険家っぷりをアピールしています。

と、シーンが替わると田宮二郎は社長室で、部方たちに演説しています。今度は有能な経営者っぷりをアピールですね。
「近い将来、太平洋沿岸地帯は都市公害、工場廃液に蝕まれスラム化し、日本海沿岸の新たな価値と可能性が大きくクローズアップされてくるはずだ。観光、レジャー産業も日本海に移動し、飛躍的に発展するに違いない。この観点から東北、北陸、山陰各地にさしあたってホテルを一つずつ、そしてゆくゆくは、それぞれをキーステーションに関連事業を広げていく。各パートで至急、検討して計画書を提出してほしい」。

「はいっ!」と去っていく部下たちの代わりに、今度は義父でデパート経営者のカワベ(永井智雄)がやってきましたよ。
「いやあ、いよいよ裏日本進出かね」「僕が父の後を継いでからの夢でしたからね」「わはは。うらやましい限りだ。私なんかデパートひとつ持て余して、きりきり舞いだよ。ところでホテルの用地は自分で下検分に行くんだろ」「はあ、そのつもりですが」「いっそのこと車で北海道まで行ってみたらどうだ?」。

パッ。カットが変わると、いきなり車の前に立っている田宮二郎と永井智雄。
「これですか。ギャランGTO。今、若者の間じゃ一番人気がありますね。どうして、この車を」。うわあ、いかにも説明臭いセリフですねえ。まあ、さすがに三菱自動車とタイアップしてるからだよ、とは言えないので、永井智雄も苦しい説明。
「わはは。実は先日、稚内の丸仙デパートの社長と箱根でゴルフをやってね。負けた方が車をプレゼントするって約束しちまったんだよ」。

いや、意味わかんないし。それに、"わはは"とか言ってる人って、いまいち信用できないんですけど。ともあれ、心配する娘というか田宮二郎の奥さん、麻知子(谷口香)にも「啓介くんは国際A級ライセンスを持ってるんだよ。心配いらんよ。わはは」と、永井智雄は何もかも"わはは"パワーで乗り切る腹のようです。

それはともあれ、旅立つ前に、やることはヤッとけということで、奥さんの麻知子とムフフな田宮二郎。一戦終えて、タバコを吸っていると、奥さんが聞いてきました。「何日かかるの。稚内まで」「ざっと3千キロとして、一日200キロ走るから、15日だな」。プカー。「一日200キロ程度じゃ、お遊びの時間もたっぷりあるわけね」。と、奥さんがキッとにらんでいると、そこに謎の電話が。「あんた、北海道まで行くそうだが、止めることだな」「どうして」「ロクなことが起きないからさ」「誰だっ、キミは」ガチャ。ツーツー。むむむ、いったい誰なんでしょう。

しかし、田宮二郎は脅しに負けるような男ではないのです。そんなことを言われたら、かえって意地になって実行するタイプ。ぶろろー。ほらGTOで出発しちゃった。ぶろろー。ぶろろー。キキーっ。おっと路上にいきなり女(戸部夕子)が飛び出してきましたよ。「お願い。乗せてって」「どうしたんです」「追われてるんです。助けてください」。もちろん若い女のお願いを断る田宮二郎ではありません。よっしゃ、ぶろろー。ニヘっとしながら運転している田宮二郎に女は言います。「あたし里村雪絵。降る雪に絵本の絵です」「ロマンチックな名前だねえ」。すっかりオヤジモードな田宮二郎ですが、バックミラーにデボネア(もちろん三菱自動車)を見つけるやいなや、表情をキリっとさせ、アクセル全開です。ぶろぶろぶぉーーん。「どうしたんですか」「尾けられてるようだ」。

ずざああ。河原にGTOを滑り込ませ、後続のデボネアをやり過ごす作戦に出た田宮二郎。しかし、目の前を通り過ぎていくデボネアの運転席を見てビックリです。「あっ!」「知ってる方?」「うん」。そう、デボネアを運転していたのは、なじみの店のママ、曽根崎朝子(浜美枝)だったのでした。えーと、こいつが犯人ですね。なんの犯人かは知りませんが。

まあ、いいや。細かいことは気にしない、気にしない。ぶろろー。戸部夕子とイチャつきつつ、阿蘇をドライブしたり、湯布院でお神楽見物している田宮二郎。しかし、文無しのはずの戸部夕子が実はお金をたんまり持っていたり、ついでに隠れて電話をしていることに気づき、怒りがマックスです。「誰に頼まれ、どんな魂胆で近づいてきたのかは知らないが面白い。罠にかかってやろう」。おりゃあ。浴衣をむしって、戸部夕子を抱きしめます。あれええ。

はい、また一戦終えて、タバコをくゆらす田宮二郎。「ごめんなさい、ウソついて」と戸部夕子はすっかり田宮二郎にメロメロになった模様。さすが稀代の色男ですね。「あたし、ただ頼まれただけなんです。社長さんの車に乗って行き着いたところから、電話で連絡するようにって」「誰に頼まれた」「男の人です。黒川フミオって人」。ふーん、って感じで特に何をするわけでもなく、漫然とドライブを続ける田宮二郎。関門海峡を渡り、松江城では、その黒川フミオを発見しますが、ただそれだけ。いるはずのない奥さんの麻知子を発見しても、気のせいということで。まあ、確かにここまでに「事件」はまったく起きてないんですよね。だから、今のところ「何か」が起きそうな気がする、というだけ。

そんなこんなで、田宮二郎と戸部夕子がカニを食べたり、イチャついたり、ついでにエッチをしているのを漫然と観ていると、おおっ、そろそろ話が動きそうな気配がしてきましたよ。それは夜のドライブ。「なんだか夢でも見てるみたい」と戸部夕子がウットリしていると、対向車線を走るトラックが、こちらの車線にはみ出してきました。キキーッ。急ハンドルでかわす田宮二郎。でも心臓はバクバクです。そんな疑心暗鬼な状態のままさらにGTOを走らせていると、おや、あれはっ!なんと路肩にデボネアが停まっていて、中で浜美枝がグースカ寝てるじゃありませんか(意味不明)。「ちょっと待っててくれ。すぐ戻るからね」と戸部夕子を残し、デボネアに向かう田宮二郎。コンコン、コンコン。「妙なところでご休息ですね」。寝起きのくせにヤケにしゃっきりしている浜美枝は答えます。「社長さん、お待ちしてましたの」。ぶろろー。え、なんか行っちゃったよ、浜美枝。観てる方もワケ分かりませんが、田宮二郎もワケ分からない気分で、GTOに戻ると、あれれ、戸部夕子がいない。完全にいない。どこにもいない。ちくしょう。ぶろろろー。あわててGTOを走らせ、デボネアを追う田宮二郎。ききーっ。「どうしたの」とビックリする浜美枝に田宮二郎は言います。「連れの女がさらわれたんだ」「さらわれた?」「君と話してた間なんだ。とぼけるのはよせ。君も一味だっ!」。いや一味って、何の?「そんなに仰るなら説明してあげるわ。あたしはあなたのため……」「弁解など聞いてるヒマはないっ。二度と邪魔しないでくれ」。スタスタ。バタム。ぶろろー。ああ、行っちゃいましたよ田宮二郎。ここで話を聞いておけば、被害も少なくて済んだのに。

ともあれ、GTOを走らせた田宮二郎は渋滞に遭遇。もしや。イヤな予感が走り、車を降りて渋滞の先頭に向うと。ガガーン。なんとひき逃げされた戸部夕子の死体が転がっているじゃありませんか。いったい、誰がこんなヒドイことを。

まあ普通なら、ここで警察に相談するなり、旅行を取りやめるところなんでしょうが、我らが田宮二郎はひと味違います。ザッパーン。いきなり能登の富来町(現:志賀町)までやってきて、断崖絶壁に砕け散る波を見たりしていますよ。って、おやっ。遺書を置いて、自殺しようとしている女(加賀まり子)がいる。とりゃー。「いや。お願い、死なせてぇ」。もちろん田宮二郎は、そんな言葉を無視して加賀まり子を羽交い絞めです。

そして、田宮二郎は加賀まり子をそのまま旅館へ連れて行きました。「キミが死のうと生きようと知ったこっちゃないが、夕べある女性に死なれたばかりなんでね。彼女は生きたいと願っていながら死んでしまった」「あたしが代わりに死ねばよかった」「彼女が生きていたら、僕はこっちに来なかった。彼女のおかげでキミは助かったんだよ」。おや加賀まり子はうつむいて震えています。まさか、田宮二郎の言葉に感動でもしたんでしょうか。だとしたら、かなりのウッカリさんですよ。おっと、今度はいきなり男の写真を灰皿で燃やし始めましたよ。しかし、その写真を見た田宮二郎の目がキラリン。これは戸部夕子に自分の監視を依頼したという、松江城で発見した黒川フミオじゃありませんか。なんたる偶然。「キミの恋人か。この男」「君塚、知ってるんですか」「君塚?黒川っていうんじゃないのか」。そう、黒川というのは偽名で、なんと、この君塚は義父の永井智雄が経営している白十字デパートの経理課長だったのです。ついでに、この君塚、そして加賀まり子。さらには義父の永井智雄までもが、ここ能登の富来町出身というオマケつき。

ま、普通、ここまでくれば、義父をはじめ、能登人脈がなんとなくアヤシイと思いそうなものですが、田宮二郎はピュアなハートを持つ男なので、そんな疑いはこれっぽっちも持っていないようです。というか、目の前の女性を落とすことに全力を傾けて、目の前の落とし穴に気づかないタイプっていうんでしょうか。「キミはどうやら君塚に振られたらしいが、そんな男のために自殺を図るなんて愚の骨頂だよ」。ザッパーン。いきなり場面が断崖絶壁に代わると、加賀まり子が反論します。「あなた、男のために自殺を図るなんて愚の骨頂だって、仰いましたわね。あなた、能登の人間を知らないからそんなことが言えるんです」。はい、ここでいきなり能登自慢を始める加賀まり子。よく分かりませんが、能登の人間は、ヒドイ環境に住んでいるので異常に我慢強いと言いたいみたいです。しかし、田宮二郎はロクに話を聞かずにネットリ視線で加賀まり子を見つめるのみ。小さい声で言いますけど、この人、ちょっとバカかも。

ぶろろー。助手席に加賀まり子を乗せて走っていたかと思うと、いきなりカマクラの中で、たき火を前にマッタリしている田宮二郎たち。「人間って、困った時や苦しい時しかいたわり合えないんでしょうか」と加賀まり子が弱音を吐くと、チャンスとばかりに田宮二郎は言います。「キミは能登の人間としてではなく、うまく言えないけど、自分自身に誇りを持っていいんじゃないかな。それが誰にとっても、いちばん大切なことなんだよ」。よし決まった。ほら、加賀まり子はウットリしてますよ。「あ、そうだ。キミの名前、まだ聞いてなかったね」。おい、聞いてなかったのかよ。

ぶろろー。車内はすっかり桃色な空気が漂っていますよ。すっかりデキあがってる感じ。と、おや、パーキングにGTOを入れると、停まっている車から君塚が降りてきたのが見えました。バタム。GTOから飛び降りて君塚に駆け寄る加賀まり子。「良かった、生きてて。もう離れない」。ガガーン。ショックな田宮二郎。「落ち着くんだ。キミはもう、この男とは何の関係もないはずだ」。しかし、恋人を見つけた加賀まり子は聞いちゃいません。

予定が狂って、観光ホテルで、ひとり寂しく寝ている田宮二郎。と、枕元の電話が鳴りましたよ。「もしもし加瀬さん。あたし奈美子です。さっきはごめんなさい。あの時、あたし夢中で」。ムカッ。「キミはもう僕には用はないはずだよ」。思わずキツイ声を出す田宮二郎に、加賀まり子は続けます。「でも、あなたにどうしてもお知らせしたいことがあって。君塚の相手の女の人が分かったんです」「誰だ」「それが、その人は"あ"」……ツーツー」。電話は切れてしまいました。「頭文字は"あ"か」と考え込む田宮二郎。そうだ、朝子だ。曽根崎朝子(浜美枝のことね)に間違いない。

しかし、ここに至っても、まだノンキに旅を続ける田宮二郎。GTOは山形県に入ったようでよす。と、いままで一切聞いていなかったのに、いきなりスイッチを入れたカーラジオからニュースが聞こえてきました。なんと加賀まり子が水死体であがったそうです。遺書があったので自殺だろうと警察は判断しているとのことですが、田宮二郎だけは真実を知っているのです。そう。その遺書は自分が自殺を止めた時に持っていたもの。そして彼女は君塚と再会できてルンルンだった。つまり、彼女は自殺に見せかけて、君塚に殺されたのだ。

で、田宮二郎はどうするのでしょう。警察に駆け込む。いえいえ。GTOに忘れていった加賀まり子の鞄を渓谷に投げ捨て、そのまま旅を続けるのです。さらに謎のダンプにあおられ、関係ない車の女性ドライバーが巻き添えで死のうと、頑固に旅を続ける田宮二郎。すでに当初の目的も失われ、何のためにGTOを走らせているのかサッパリ分かりません。

しかし、そうは言っても、これだけイロイロあると疲れますよね。もう運転しながら寝ちゃうくらいに。グーグー。どっかーん。うわわわ。居眠り運転していた田宮二郎のGTOにアメ車2台が体当たりをかましてきましたよ。もちろん眠気はスッキリ。田宮二郎はGTOをスピンターンさせ、まるでラリードライバーのようにデコボコ道をかっ飛ばしていきます。そして、そのまま車を叢に突っ込ませて隠れました。しめしめ。アメ車軍団はGTOを見失って、去っていくようです……グーグー。ああ、また寝ちゃいましたね。そして、そんな田宮二郎のGTOに静かに近づくのは、浜美枝の乗ったデボネアなのです。

はっ。青森のホテルの一室で目覚めた田宮二郎。横にはなぜか奥さんがいてビックリです。「キミ、ここは」「あなた、まる一日、眠りどおしだって」「そうか」。奥さんの話によると、謎の女が田宮二郎をホテルに連れてきたそうで、奥さんはホテルから連絡をもらって駆けつけてきたそうです。うーん、全然、そこらへんのこと覚えてないんだよなあ。「お医者様の話では、疲労と神経障害が重なったんだそうよ」。つまりイッパイイッパイになっていたということですね。まあムリもないです。

「あなた北海道に行かないで」。ぶろろー。行くなと言われれば行くのが田宮二郎という男。青函連絡船に乗り、目指せ北海道。と、デッキで渋く海を見つめていると、そこにいたのは浜美枝じゃありませんか。早速、いままでに女性が3人死んだんだと、浜美枝を詰問する田宮二郎。「その犯人の親しい女が、僕のよく知ってる女性で、名前が"あ"から始まるということだけ分かりました」「"あ"から?」「ママの名前は朝子。僕の知ってる女性で"あ"から始まる人はキミしかいないんだ」。えー、田宮二郎の手帳には女性の名前が1万人くらい書いてありそうなんですけど。なんか、嘘くさいなあ。もちろん浜美枝も田宮二郎の発言をガン無視の方向で言います。「あなたにお話ししたいことがあったから。あなたを殺そうとしている人は……」。ここで効果を盛り上げるためにザッパーンと舳にぶち当たる荒波のカット。ザパパーン。「……あなたのお義父さん」。ガーン。「そんなっ。バカなっ!」。

どうやら、浜美枝は田宮二郎の義父、永井智雄が田宮二郎殺害を指示している電話を盗み聞きしてしまい「だから、あなたをここまで追ってきたんです」だそうです。なんで変装してデボネアに乗っていたのかは知りませんけどね。しかし、これで田宮二郎はハッキリと理解しました。「オヤジ、オヤジ。もしそうだとすると、狙っているのは僕の財産。そういえば白十字デパートは東京の角丸クレジットに喰われていた。でも、まさか僕の女房のオヤジが。いや、もしかしたら女房も!」。「まさか、あなたの奥さんが」と否定する浜美枝に、田宮二郎は叫びます。「今、何て言った。あなたの奥さんと言ったね。あなたの奥さん。"あ"」。ここぞとばかりに加賀まり子の声がリフレインされます。「あ、あ、あ、あ、あ」。ああ、分かった、分かったよ。でもひどいオチだ。

さて北海道に上陸した二人です。GTOを届ける先の「稚内の丸仙デパート」なんて存在しないのを承知のうえで、GTOとデボネアの2台体制でブロブロ走り続けます。ここまで来ると、そこに山があるから登るんだ、みたいな感じですね。もちろん、田宮二郎と浜美枝はイチャイチャしたりエッチしたり、ほとんど発情期の中学生カップルみたいなもんだんですけどね。

ま、そんなこんなで、サッパリした気分でホテルを出た二人は2台の車で旭川に。おや、一面の雪原の中にポツンとベンチがあるようですよ。ちょうどいい、あそこでお昼にしよう。絶対寒いと思うんですけど、そんなことを気にしない田宮二郎はサンドイッチをパクり。「あ、いけない。ポット忘れちゃったわ」。そんなことを言いつつ、デボネアに戻る浜美枝を、幸せ気分で見送ります。……。……。ん?……。おかしい、浜美枝が帰ってきませんね。田宮二郎が不安になって様子を見に行くと、なんとGTOがポツンとあるだけで、浜美枝のデボネアがいないじゃありませんか。でも、あたりを見回すと、なぜか田舎道を女がひとりフラフラ歩いているのが見えます。あれは、浜美枝をさらった一味に"間違いない"。まあ、それは当然としても、なんか罠くさいですけどね。

ぶろろろー。二本の足で走れば済む距離をGTOで走り出し、女を追い詰める田宮二郎。「ひいっ」「鹿児島のクラブのホステスだなキミは。ここにあった車はどうした」。「知らないわ」ととぼける女をムンズとひっつかみ、GTOに押し込んだ田宮二郎は詰問します。「行先は」「大雪山」ぶろろー。「キミと同様、黒川に頼まれて僕に近づいた女性がいたが、結局、殺されたよ」。ええっマジですかあ。「お願い下ろしてください」と女は叫びつつ、走行中のGTOから飛び降りていきましたが、まあ気にしない、気にしない。ぶろろー。

おっと大雪山とか言ってた割には、ちょっと走るといきなりデボネアが停車していましたよ。ききーっ。いちおう罠を警戒して、あたりを見回しながらデボネアにゆっくり接近する田宮二郎。しかし、野中の一本道、それも一面の銀世界ですから、どこに隠れる場所もありません。そぉーっ。デボネアの後部座席を除くと浜美枝が倒れています。あっ、良かった。「キミっ!」……ゴチーン。いきなり後頭部を何者かに殴られた田宮二郎はそのまま失神するのでした。

うんしょ、うんしょ。失神している田宮二郎を乗せたGTOを君塚がせっせと押しています。おりしも、ここは緩やかなカーブを描きどこまでも続く下り坂。やがてGTOは重力の導くまま、坂を自力で下り始めました。えーと、これは事故に見せかけて殺したいってことなのかな。でも、基本的に緩やかなカーブだし、積もった雪壁にぶつかってもたいした事故にはならないんじゃ。あ。田宮二郎が目覚めましたよ。なんか鬼のような形相でハンドルを右に左に切ってますけど、結局は間に合わなくなり雪壁にぶつかって停止。うん、最初からこうしとけばいいだけだよね。

ちなみに、このシーン。田宮二郎のGTOを君塚の乗ったジープが追いかけているのですが、カットが替わる寸前、後ろのジープが雪壁に乗り上げて、ひっくり返るシーンが映っています。これこそマジの事故。いったいなにやってんだか。

ともあれ、先ほどのマジ事故はなかったことにして、何事もなかったように、ポカスカ殴り合いを始める田宮二郎と君塚。ポカポカ。ゴロンゴロン。とにかく、役者さんは雪上で動くので当社比3倍くらい疲れるんでしょうが、観ている方としてはさっぱり迫力を感じないという可哀そうなパターン。「ドキッ!男だらけの雪上プロレス」みたいな感じさえ漂います。しかし、とにかく正義は勝つ!。ということで田宮二郎が勝利の余韻に浸りつつ鼻水をすすっていると、そこに「加瀬さーん」という浜美枝の声が。そして、なんと、なんと、なーんと義父の永井智雄が、浜美枝に猟銃を突き付けて、やってきたじゃありませんか。横には娘で田宮二郎の奥さんも引き連れています。

「わっはっは。鹿児島からざっと3千キロか。ご苦労だったな」。またワハハだよ。ついでに、田宮二郎にKOされていた君塚も起き上がり、田宮二郎をバカにします。「フフフ。あんたの奥さんは俺と再婚することになってるんだ」。悔しい田宮二郎は「人殺しに裏切り女か」と捨て台詞を吐いてみますが、奥さんから「裏切らせたのは誰?仕事と女遊びに夢中なあなたにとって、あたしは何だったの」と言われてシュンです。

「思えば長かった。だが能登の人間は辛抱強い」と自画自賛する永井智雄。すると君塚も調子に乗って「俺もその能登の人間さ」と便乗して威張っています。と永井智雄が君塚に猟銃を向けつつ言いました。「気の毒だがお前も一緒に死ぬんだよ」。ガーン。動揺する君塚……、おや、ぜんぜん動揺していませんね。むしろ自信たっぷり。「あんたは、俺を撃つことはできないっ!」。さらに「ある組織がこの成り行きに関心を持っているんですよ」とか言い出しましたよ。「あんたが聞いたら、腰を抜かすような人物が俺を見込んで、この筋書きを立てたんですよ」「貴様あ、永年の恩を忘れやがって」。どっちもどっちな二人が、猟銃を取ろうともみ合っています。そして、ガーン。斃れたのは永井智雄でした。しかし、その隙に田宮二郎は君塚にパーンチ。あうっ。猟銃を取り落した君塚と田宮二郎は、再びポカスカ殴り合いモードです。ごろんごろん。なだらかな雪原を転がり落ちながら喧嘩をしている二人。はい、また田宮二郎の勝ちです。今度は復活しないように、念入りに倒れている君塚の腹を蹴飛ばしておいて、田宮二郎は女性二人のもとに戻るのです。

田宮二郎が戻ると、父の遺骸にすがりついて泣いていた奥さんが、田宮二郎と浜美枝の目の前で、そのまま猟銃自殺を遂げました。ふう、苦い結末だったぜ。でも、これで全てが終わっ……、……、終わらないっ!

なんかいきなり「鶴翼の陣」隊形で、大勢の男たちが雪原を近づいてきます。そして、その要の位置にいるのは、カモフラージュジャケットにサングラスをばっちりキメた謎の男(トホホ。名優、三国連太郎です)。どうやら、コレが「腰を抜かすような人物」の正体らしいですよ。もっと仕事を選んで欲しい三国連太郎は言います。「我々の手で後片付けをしてあげよう。3千キロを走り続けてきたキミの闘志に対する敬意とでもいうものかねえ。もちろん見逃すのはこれ一度だけ。豚は太らせて食え。キミが太るのを待つとするかねえ」。「それはいったいどういう意味なんだ」「キミが裏日本の開発に成功した時、きっと私の組織が、キミの事業をそっくりいただかしてもらうよ。フハハ」。なんだかワケが分からなくなってきましたね。「名前を聞かせてくれ」「んあーーっ。かならず知る時があるさ、加瀬君。イヤというほどね。フハハハハ!」。

田宮二郎はGTOの運転席でひとり放心状態。そして、ちょっと涙目になりつつ言います。「負けるものか」。一方、浜美枝もデボネアの運転席で涙をポロりん、そして二台の車は、夕焼けに染まった雪の大地に走り出していくのです。


感想をひとことで言うとすれば、頭悪いなあ、です。偏差値で言うと10くらい? もしくはムーディーズの格付けならCくらい。まあテキトーですけど。

原作は木枯し紋次郎で有名な笹沢左保。監督は「100発100中」やゴジラシリーズなどを撮って、個人的に大好きな作風の福田純。脚本の石松愛弘は大映「黒シリーズ」などを手掛けたベテラン。そして、なんと言ってもカッコイイ田宮二郎。ひとつひとつのパーツは悪いどころか、むしろ一級品なのに、なんでこんな映画になっちまったんでしょう。

まあ原因は想像が付かないでもありません。田宮企画の作品。つまり田宮二郎の俺様作品ですから、そこらへんの歪みが出ちゃったのかあと。橋本忍の「幻の湖」とかもそうですが、いわゆる「現場で誰も止めなかったのか」という疑問が頭の中をグルグルする映画でした。

あ、音楽は良かったです。前田憲男のジャズな劇伴が最高にクールで、映画を盛り上げます。どれくらい良かったかというと、思わずアマゾンでサントラをポチっとしてしまうくらい。ちなみに4月1日現在、アマゾンで「一時的に在庫切れ; 入荷時期は未定です。」になっているのは、最後の一枚を僕が買ってしまったから。本当に、どうもすみません。

ちなみに、永久凍結させようと思っていた「いくらおにぎりブログ」ですが、これを機会に、ゆるゆると更新を再開しようかと思っています。もっとも更新頻度は半年に一本とかかも知れませんが……。なにはともれ、よろしくお願いいたします。

あと、被災地が一日も早く復興できますように。そして、子供たち:次の世代のためにも、みんなで頑張って、前よりいい日本を作りましょう。 



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【映画】復活の日

2010-11-19 | 邦画 は行
【「復活の日」深作欣二 1980】を観ました



おはなし
悪魔のようなウィルスが席捲し、世界は死にました。

角川映画ひとつの頂点と言っても、差し支えのない作品です。ちなみにもうひとつの頂点は、「REX 恐竜物語」ということで。もちろん異論は認めます。

「1983年12月」。潜望鏡が映りました。どうやら潜水艦がいるみたいですね。あ、字幕によると「英国原子力潜水艦 ネレイド号」が「日本・東京湾」に来たみたいです。ところで、この映画すごく字幕が多いです。それを親切と取るか、うるさいなあと取るかは微妙なところですが。ともあれ、ネレイド号は東京湾で空気を採取。なにやら分析を始めましたよ。あわせて無人観測ヘリが発進して、東京の様子をビデオ中継してきます。「ヨシズミは」とマクラウド艦長に呼ばれ、地震学者の吉住(草刈正雄)もやってきました。

ぶーん。無人観測ヘリは東京上空を飛びます。特に代わり映えのしない東京の風景。いや、待ってください。それにしては、どこにも動きがありません。そして良く見れば、停まった車には白骨死体が座っていて、建物の周りも骸骨でいっぱいです。と、草刈正雄の脳裏に女性の声がフラッシュバックしましたよ。「子供ができたの」。女(多岐川裕美)がアップになって言います。「子供ができたの。でもあなたには関係のないことね」。

「1982年の秋 人類は死滅した 南極大陸に863人の人間を残して― 一体なぜこんなことに―?」。ということで、タイトルロールと共に、静々と南極に帰ってくるネレイド号の姿が映ります。

「1982年2月」。ここは東ドイツ・ライプチヒにある秘密研究所のゲート。いましも、クラウゼ教授が検問所を通過しようとしていますよ。コーヒーの魔法瓶をチェックする兵士にぶつくさ文句を言うクラウゼ教授ですが、えてして、こういう魔法瓶に何か隠していたりするんですよね。案の定、検問を通過し、人里離れた一軒家にやってきたクラウゼ教授は待ち構えていたスパイたちに魔法瓶を渡しました。そして、二重底の中から出てきたのは厳重に冷凍された一本の試験管です。「ライゼナウ博士に手渡す。チューリッヒの研究所で」とスパイたちに命令するクラウゼ教授。なんと、中身はMM−88といってアメリカが開発したウィルス兵器だそうですよ。それも、おそろしい毒性の。と、そこに警備兵の一団が襲ってきました。「全員逮捕する」と言いつつサブマシンガンを乱射しています。うわあ。ハチの巣になるクラウゼ教授ですが、さすがスパイたちは身が軽いらしく、ウィルスを持ってスタコラと逃亡に成功したようです。そのまま飛行機でアルプス越えをはかる、実はアメリカのスパイたち。しかし、しょせんスパイなので、飛行機の操縦はうまくなかったみたいです。あれえーー。折からの悪天候に、そのまま山中に墜落。ウィルスの入った試験管は山中にぶちまけられてしまうのでした。

「1982年3月」。アメリカ軍のランキン大佐が、メリーランド大学の細菌研究所にやってきました。どうやら研究員のマイヤー博士に会いに来たようです。早速、「あれを取り戻してくれましたか」と息せき切って尋ねるマイヤー博士に、ランキン大佐は、部下のスパイを送ったけど奪還に失敗したことを伝え、逆に言います。「一刻も早く、ワクチンが必要だ」。それを聞いて、真っ青になるマイヤー博士。「あの細菌を抑えるのは不可能です!」。えーと細菌じゃなくてウィルスですけどね。それにしてもワクチンなしのウィルス兵器とか、何考えて作ったんだか。ともあれ、良心の呵責からか、防衛監視委員会のバークレー上院議員に全てを告白しようとしたマイヤー博士は、そのままランキン大佐によって精神病院にぶち込まれてしまいましたとさ。

「1982年4月」。ソ連のカザフ共和国。パカラっパカラっ。牧童の少年が大人たちを案内していますよ。「こっちだよー(多分)」。なるほど、馬が向かう先に何かあるようです。「ほら、羊が死んでるよお(多分)」。ロシア語は分かりませんけど、確かに羊さんたちがバタバタと死んでいます。一方、その頃イタリアのミラノでは「イタリアかぜ」が大発生。赤ちゃんを抱っこしたお母さんたちが病院に詰めかけ、パニック状態です。そしてイタリアかぜは、そのまま拡散し、世界中に蔓延していくのです。もちろん、このイタリアかぜの正体がMM−88ウィルスなのは言うまでもありません。

「1982年5月」。南極の昭和基地に無電が入りました。無線係の辰野(渡瀬恒彦)が受話器を取ると、どうやらお隣さんのオーストラリア基地がウィルス情報を教えてくれるみたいです。ふむふむ。ええーっ。なんとウガンダのお医者さん情報によると、中部アフリカは全滅。それも人間だけではなく、象さんを始めとする動物も死滅したそうです。あわてて、受話器を奪い取り細かい話を聞くドクターの山内博士(千葉真一)でした。それにしても、この南極基地は凄いです。そもそも隊長の中西が夏(八)木勲だし、他にも草刈正雄だの永島敏行だのギラギラ系のひとばっかり。これだけで、ひと合戦できそうなイキオイです。

さて、遠く離れた日本。ここ昭和医科大学病院は、まさに戦場です。急患が列をなし、先生や看護婦さんも疲労困憊。と、看護婦さんのひとりが、おえっぷと口を押さえながらトイレにダッシュしています。おや、よく見ると、吉住こと草刈正雄の妄想に出てきた女の人じゃないですか。そう、彼女は則子(多岐川裕美)といって、看護婦さんだったんですね。そして、おえっぷしているのはもちろん、草刈正雄の子供を妊娠しているから。おえー。多岐川裕美がえずいていると、そこに「則子さんじゃない?」と声がかかりました。「好子さん」と驚く多岐川裕美に、男の子を連れた好子(丘みつ子)は言います。「どうしたの。真っ青よ」。いや、正確に言うと、眼の下のクマも巨大だし、真っ黒です。んあーーっ。バタリ。変な絶叫をあげて、そのまま多岐川裕美は倒れこみました。「則子さんっ。のりこさーん」。

多岐川裕美が目覚めると、横には心配そうに見ている丘みつ子が。「……!」。多岐川裕美は気づきました。ああ、流産したんだわ。ちなみに、この丘みつ子の方は、無線係・渡瀬恒彦の奥さんだったりするみたいです。

どどーんとホワイトハウスの大統領執務室が映りました。リチャードソン大統領(グレン・フォード)やら、ライバルのバークレイ上院議員(ロバート・ボーン)がテレビを観ています。そこに映るのはイギリス、スペイン、フランス、西ドイツそれに日本などの暴動の風景。イタリアかぜは、ここまで世界の治安を悪化させているようです。もちろんアメリカとて例外ではなく、ワシントンには大規模デモが頻発し、早いとこワクチンを量産しないとタイヘンなことになりそうです。「ワクチンはいつ量産できる」と部下に聞いてみる大統領。しかし、なんてことでしょう。よくよく聞いてみると、ワクチンと称して政府高官や軍人たちに配っているのは、単にインフルエンザ用のワクチンを混ぜ合わせた気休めだそうですよ。というか、そもそも今回のイタリアかぜ、その原因ウィルスの特定すらできてないのが現状だとか。ががーん。大統領がショックを受けていると、そこに統合参謀本部議長(ヘンリー・シルバ)がやってきました。いかにもファナティックな軍人タイプのようです。彼は言います。「単なる疫病ではなく、細菌兵器かもしれません」。そして大統領に”お願い”をするのです。ぜひARSのスイッチを入れてくださいと。ちなみに、このARS(全自動報復装置)というのはソ連の核攻撃を察知すると、自動で報復ミサイルを発射する装置だそうですよ。

「1982年8月」。昭和基地の怒れる無線係・渡瀬恒彦は、ひたすら日本を呼び出し続けています。しかし応答はまったくなし。すでに日本との交信がとだえて20日経つそうです。と、ザザー。やったあ。反応があったと興奮する渡瀬恒彦ですが、それは日本からではなく、ニューメキシコ州の少年トビー君からの通信だったみたいです。スイッチの切り替え方法を知らず、一方的に話し続けるトビー君。えーとお父さんが死んじゃったの。ぼくも寂しいよお。お父さんのピストルがここにあるの。これで自分の頭を撃っちゃうぞ。ガーン。どさっ。ただでさえ、日本に残した家族が心配でしかたない渡瀬恒彦は、こんなものを聞かされて、ほとんど放心状態。うがあああ。ほら暴れだしちゃいました。

ゴミだらけで、荒れ果てた感じの大統領執務室。そこの主である大統領は「何かなさねばならぬ」と統合参謀本部議長らを相手にグチっています。と、そこに政敵でもあり親友でもあるバークレイ上院議員がやってきましたよ。そして統合参謀本部議長を睨んで言います。「フェニックス作戦というのは何だね。将軍」。ギクっとする将軍に、上院議員は調査結果を暴露します。そう、今回のイタリアかぜがアメリカの開発したウィルス兵器MM−88であることを。「上院議員、あなたの中傷は我慢できぬ。根拠があるなら伺いたい」と将軍は逆ギレしていますが、精神病院に入れられていたマイヤー博士が証人として呼ばれてしまっては、トボけることもできませんね。もっとも、大統領はこの事実に激怒しつつも、とりあえず世界には秘密にしておくことに。まあ、いまさら発表もできません。ましてワクチンもないのに。

「1982年9月」。リーン、リーン。昭和医科大学病院の電話が鳴りました。しかし、倒れこんでいる医師、看護婦たちはピクリともしません。どうやら全滅…おや待ってください。ノロノロと動き出す看護婦さんがいますよ。多岐川裕美です。眼の下真っ黒メイクの多岐川裕美が生きていたみたいです。鳴りやんでしまった電話をじっと見た多岐川裕美は、そのままヨロヨロと病院の外にでました。人はおろか動くものとてない死の町。そんな中、どこに行こうと言うのでしょう。はい、それはお友達の丘みつ子のところ。でも、どうでしょう。丘みつ子は生きていますかねえ。って、もちろん死んでましたよ。しかし、なんと丘みつ子と、南極基地のイカれた無線係・渡瀬恒彦の一人息子が生き残っていたみたいです。「アキラちゃん、あんた生きてたの」と言う多岐川裕美。それは生きていたことを喜ぶというより、むしろ憐れんでいるようです。アキラちゃん、お父さんのところ行きたい?。まあ、そりゃ、そんなこと聞かれれば、うんと答えるのが当たり前。よーし、お姉ちゃんが連れて行ってあげるわ。ズバババ。いきなり東京湾をモーターボートで疾走している多岐川裕美とアキラくん。ああ、まあ確かに東京湾を出て南に向かえば、南極には近づきますけどね。「これ飲んでごらん」「なあに」「これ飲むと寒くなくなるの」。そう言いつつ、多岐川裕美はアキラちゃんと一緒にクスリをぐいっと飲みました。「アキラちゃん、パパを呼んでごらん」「ぱぱー」「もう一度。もっと大きく」「ぱぱーーっ」「もう一度」「ぱぱあーーーっ。ぱぱあーー」。

ハッ! 無線機の前に座っていた渡瀬恒彦は、アキラくんの声を聞いたような気がしました。尋常じゃない目つきで、そのまま家族の写真をひっつかんで昭和基地の外に飛び出していく渡瀬恒彦。ルームメイトの草刈正雄たちは後を追いますが、折悪しく外はブリザードで探しようもありません。そのまま渡瀬恒彦は消えてしまいました。映画でもその後は描かれないので、どうなったかはサッパリですが、せめてあの世で家族と一緒になれるといいですね。

さて、気を取り直して、再び大統領執務室。もはやスタッフすら死滅したらしく、散らかり放題の部屋で、ズタボロの大統領とライバルで親友の上院議員がゲホゲホしながら思い出ばなし中です。と、上院議員が言いました。「雪が降るといい。時間を稼げる」。そう、すでに死んでしまったもののマイヤー博士が言っていたそうですよ。「ウィルスは低温では毒性を失うと、博士が言った」。ピカリン。この時、大統領はヒラメキました。そうだ、南極だ。南極にパーマー基地があるじゃないか。早速、受話器を取って「パーマー基地につなげ」と命令する大統領。ワクワク。待っている間にお友達の上院議員が死にましたが、気にしない、気にしない。おっと、ようやく無電がつながったみたいです。早速、パーマー基地の隊長、コンウェイ提督(ジョージ・ケネディ)に命令して、世界各国の南極基地にも回線をつながせましょう。ワクワク。よーし訓示だ、訓示。「諸君はその聖域を離れず、外部から来る人間を入らせてはならぬ。戻って来てはならぬ」。よし、今オレいいこと言ったよな。満足している大統領ですが、うっ、心臓が苦しい。むぎぎ。と、そこに顔も見たくない統合参謀本部議長がやってきました。さらに大統領のオレ様が苦しんでいるのに"ARSを作動させていいですか…と言うかさせろ"とかゴネてますよ。「将軍、君は愚か者だ」と言った瞬間、大統領に心臓発作が。むぐぐ、うーむ。死んでしまった大統領に敬礼をした統合参謀本部議長は、そのままホワイトハウス地下のひみつ基地に行き、ARSのスイッチをポンするのです。わはは。わははは。ついでに高笑いまでしたりして。

「1982年11月」。パーマー基地のコンウェイ提督の呼びかけに応じ、南極会議が開催されることになりました。もちろん、日本の昭和基地からも隊長の夏木勲、そして草刈正雄が参加することに。ぶろろろろ。雪上車で道を急ぐ二人ですが、運の悪いことに雪上車がスタックしてしまったようです。仕方ないな、ノルウェイ基地で雪上車を借りよう。こんにちわあ。誰かいませんか。こんにち、わああっ!なんとノルウェイ隊の皆さんは無残に殺されてるんですけど。いったい、何が起こったんでしょう。どうにか生き残っていた女性隊員のマリト(オリビア・ハッセー)によると、無線係が狂って自殺したのをキッカケに、みんなが狂って殺し合いを始めたとか。なんていうか、渡瀬恒彦といい無線係は気が狂いやすいんですかね。ま、それはともあれ、オリビア・ハッセーは妊娠中。仕方ないので、夏木勲だけ会議に出かけ、草刈正雄は出産のお手伝いをすることになったみたいです。

さて南極会議が開かれました。とは言え、ポーランド代表とソ連代表がいがみ合ったり、血の熱いチリ代表とアルゼンチン代表が殴り合いのケンカをしたりと、前途多難な幕開けです。そしてさらに重大な問題は、南極にいるのが男性855人、女性8人というバランスの悪さ。こっち方面でも暴行事件が起きたり、あれやこれやタイヘンみたいです。

さて、そんなある日、潜水艦からの救難信号が飛び込んできました。ソ連のT232号が上陸させろと言うのです。話を聞けば、ウィルスに感染してバタバタと乗組員が倒れている状態だとか。世界でただひとつ残った人類の希望、南極。惨いようですが、ここを汚染させるわけにはいきません。ということで、コンウェイ提督は上陸を断りますが、ソ連潜水艦は「我々は上陸します」と強気ですよ。確かに南極には武力がありませんから、ソ連潜水艦が上陸を強行したら止めようがありません。どーしよう。

「いけない」。そこに声が割り込んできました。だ、だれだっ!とキョロキョロするソ連潜水艦の中のひと。いや、これは無線だから。潜水艦の中でキョロキョロしてどうするんだ。ま、それはともあれ相手は「英国原子力潜水艦ネレイド号、マクラウド艦長」と名乗ってますよ。よし、英国潜水艦を探せ。ソ連潜水艦の中のひとは懸命にクルクル潜望鏡を回して、敵の姿を探し求めます。でもね、潜水艦ってのは潜るのが商売ですからね。潜水艦相手に潜望鏡やレーダーは役に立たない……「発見しました。方位180」。うわっ、いたよ。さすが英国紳士の乗る潜水艦。潜るなんて卑怯なマネはしないみたいですね。よーし「潜航。全速潜航」と命令するソ連潜水艦の中のひとですが、一足早くネレイド号の対潜ミサイルがチュドーン。はいソ連潜水艦は撃沈されました。「諸君の基地はこれで安全です。提督、お別れを」と、コンウェイ提督に別れを告げるマクラウド艦長(チャック・コナーズ)。しかし、コンウェイ提督は逆に質問します。「病菌に感染した者がいますか」。「いません」と答えるマクラウド艦長。ちょっと期待にワクワクした表情ですよ。「上陸しますか」「許されるなら」。英国紳士なので冷静なふうを装っていますが、内心はひゃっほうですね。

「そして一年後 − MM−88菌は依然として地球を占領し、人々を氷の大陸に閉じ込めていた」。だそうです、はい。

とはいえ、映画の冒頭に東京湾で採取したウィルスをもとにラツール博士がワクチンの研究をしていたり、8人の女性はそれぞれ子供を作ったりと、まあ寒いながらも楽しい我が家状態の南極のみなさん。しかし、そんな「安定状態」を脅かす事態が起こったのです。それは地震学者の草刈正雄の書いたメモが発端でした。草刈正雄の研究によると、近いうちにワシントン辺りに大地震が起こるそうです。そして、その地震の衝撃はまさに、核爆発なみ。するとどうなるか。そう、イカれた統合参謀本部議長がスイッチポンしたARSが作動し、自動的にソ連に報復ミサイルが降り注ぐことになるのです。そうすれば、ソ連にある同様のシステムが、やっぱり自動的に報復の核ミサイルをズバズバ発射することに。しかし、ここで重要な問題は、ソ連の核ミサイルの標的に、ここ南極パーマー基地が入っていることです。せっかくパーマー基地に集まって、細々と暮らしている人類の生き残り。それが全滅しちゃうじゃありませんか。

よし、これを防がなくては。ということで、都合よく南極にいた国防省情報局の参謀、カーター少佐(ボー・スベンソン)と、ついでになぜか草刈正雄がワシントンのホワイトハウスに潜入して、スイッチを切ってくることに。さらにタイミング良く、ラツール博士が作ったワクチンの試作品もできたし、これを打っておけば(多分)死ななくてすみそうな予感です。もちろん念のために、子供たちと女性は砕氷船でパーマー基地から避難しておきます。こうしておけば、万が一の時でも人類の最後の種子は残りますからね。

しゅっぱーつ。二人はネレイド号に乗って一路ワシントンに。ポトマック川からはゴムボートに乗って進撃だ。どりゃあー。ぐらぐら。ぐらぐら。まずい、予想より早く本格的な地震がやってきそうです。急がなくてはいけません。ホワイトハウスに潜入した二人は、プラスチック爆弾でドアを爆破しながら、ひみつ基地に急ぎます。よし、爆弾セット。隠れろ。ドカーン。よし、爆弾セット。隠れ…うわっコケた。ドカーン。大変です。カーター少佐、無念の重傷。草刈正雄はカーター少佐に聞きます。「何かできることが?カーター少佐」。「行け」。ま、そりゃそうだ。よっしゃ行くぜ、行くぜ。イカレた統合参謀本部議長の白骨を乗り越え、ARSのスイッチに手を伸ばす草刈正雄。しかし、その瞬間、巨大な直下型地震の衝撃が。ぐらぐらぐら。そしてブーブーブー。うわっ、装置が作動しちゃったよ。装置の横にある15インチくらいのブラウン管モニターには次々と発射されていく核ミサイルが映っています。

ヨロヨロと瀕死のカーター少佐のところに戻った草刈正雄は言います。「遅かった。少佐、遅かった」。それに、かすかに頷き、虫の息のカーター少佐は聞きます。「ヨシズミ、どういうんだ、ライフイズワンダフル。日本語で」。「人生はいいものだ」。「ジンセイ、ワ、イイ…」ガクリ。ホワイトハウスでひとりぼっちというとんだ目にあった草刈正雄ですが、報告の義務だけは果たさないといけません。「潜水艦ネレイド、こちらヨシズミ」「こちらネレイド」「手遅れでした。すぐ退避してください、パーマー基地に警告を」。あ、そうだ、思い出した。「無駄かもしれませんが、船のラツール博士にワクチンが効いたようですと伝えておいて下さい」。以上、交信オワリ。

ソ連に着弾した核ミサイルは、報復の核ミサイルを呼び、ワシントン記念塔が吹き飛んでいきます。世界各地にひろがるキノコ雲。もちろんパーマー基地も核に焼かれました。

「世界は二度死んだ/そして/数年の歳月が流れた」

広大な北米大陸をよろめき歩いている男がいます。あれはもしや。そうです、草刈正雄です。まさに野を超え谷越え、ひたすらに歩いていく草刈正雄。徐々にホームレス化を進行させつつ、目指すは南。どこまでも南。さいわい、北米から南米はそのまま陸続きで歩いていけますからね。てくてく、てくてく。途中、神と対話したりしつつ、どこまでも歩いていく草刈正雄です。

一方、こちらはアルゼンチン突端のとある集落。砕氷船で避難した人類最後の生き残りたちが定住した村のようです。しかし、おかしいですね。みんなダルそうな感じでやる気ゼロっぽいですよ。「まもなく冬がやってくる。食糧が心細い。北に向かうべきだ」とラツール博士が声をかけても、「どうでもいいわ」と動こうとすらしません。やはり4年におよぶ希望の持てない生活が、みんなの心を蝕んでしまったようです。そんな様子を辛そうにみていたオリビア・ハッセーは、ひとり小屋をでました。海辺に行き、暖房のための木切れを拾うオリビア・ハッセー。ん? おや? 何か向こうからやってきます。ホームレスでしょうか。いえ、違う。あれは、あれは……「ヨシズミ。ヨシズーミ。ヨシズーミ」叫びながら駆けよっていくオリビア・ハッセー。草刈正雄もヨロヨロと走りだします。それを聞いたラツール博士も「奇跡だ。奇跡が起こった」と走りだしました。ついでにみなさんもウワーっと走りだします。もう、みんなで走っちゃえ。

オリビア・ハッセーと抱き合った草刈正雄は言います。「ライフイズワンダフル。ライフイズワンダフル」。感動的なテーマ曲が盛り上がり、たくさんのペンギンさんたちがワシワシしたり、キレイな南極の風景が映ったりするのです。おしまい。


最初に言っておきますと、この映画好きです。今から考えるとかなりバカっぽいところも目立ちますが、公開当時は感動しながら観たものです。ま、どこらへんに感動したかは覚えてないんですけど。

それはともあれ、この映画、テーマが壮大だし、これだけのスケールの映画を日本人が作ったというのは褒めていいんじゃないかと。当然CGなんかありゃしないので、実際に南極でフィルムを回し、本物の潜水艦を借りてくる。俳優だって、ナポレオン・ソロなロバート・ボーンをはじめ、ジョージ・ケネディやグレン・フォードなどメジャーどころをそろえてます。ジャパン・アズ・ナンバーワンが書かれたのは、この前年の1979年ですが、なんていうか、この頃の日本のイケイケな雰囲気も伝わってくるようです。もちろん、金を使えば、そして色んな意味でハデにやりさえすれば傑作ができるワケではありません。その点で、この映画も「二流のハリウッド映画」と言えないこともないでしょう。だけど、ちょっと待ってください。今までの日本の映画でホワイトハウスの地下にひみつ基地を作っちゃった映画があるでしょうか。その気概を考えると、トホホと苦笑しつつも、この映画を観る価値はあるというものです。



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【映画】高校生ブルース

2010-11-13 | 邦画 か行
【「高校生ブルース」帯盛迪彦 1970】を観ました



おはなし
高校2年生の美子(関根恵子)は、妊娠してしまい……

関根恵子のデビュー作で、大映レモンセックス路線の第一弾です。配給はダイニチ映配だし、いよいよ大映も末期症状のころですね。

小奇麗な家から出てきて、スタスタと歩き出したのは高校生の北原美子(関根恵子)。なんか視線がまっすぐで、顔がこわばっているのはデビュー作だからでしょうか。

ともあれ、美子が学校に着くと、「あ、ミス百合ケ丘高校が来たぞ」「イカすなあ。北原は」とか声が聞こえてきますよ。そんなのを無視して、まっすぐ歩き続ける美子。と、いかにも優等生な感じの昇(内田喜郎)が「おはよう」と声をかけてきました。そんな昇にチラっと表情を動かす美子。ああ、間違いない。この二人デキてますね。

さて、体育の授業中。女子生徒たちはランニングです。太ももやら胸を執拗にアップで撮るという、とっても分かりやすいサービスカットに続いて、走っていた美子がズルズルと隊列から遅れはじめましたよ。ヨロヨロ、ヨロヨロ。バッタリ。お腹を押さえて昏倒した美子は、そのまま医務室に運ばれるのでした。

英語の授業中に美子が教室に戻ってきました。そんな美子をクワッと見ている昇。何か言いたそうですが、さすがに昼休みまで待たなくちゃね。ということで、ようやく昼休みになり、昇は早速、美子を校舎裏に呼び出しました。
「あのね、君の最近の生理いつだった」
「えっ」と驚く美子に、昇は続けます。
「僕たち、まだ高校生だからできちゃったらマズイだろ」
確かにデキるのはいいけど、できちゃったらマズイですよね。
「あたし……」「あたし、もう妊娠してるかも。もう2か月も生理が無いんですもん」
ガガーン。「何だって。どうして今まで言わなかったんだ」と驚く昇ですが、美子はおっとりと答えるのです。
「だってハッキリ分からなかったから。そういうことは、みんな昇さんが教えてくれると思って、安心してたんだわ」
「無知すぎるよ、君は」
「一度や二度なら大丈夫だと、昇さんだって、そう言ってたじゃない。どうしたらいいの」
いや、どうしたらいいのって言われても、どうしよう。キンコンカンコーン。あ、昼休みが終わったみたいです。

タイムリーなのか皮肉なのか、その日のホームルームのテーマは「男女交際 恋愛論」。しかし昇はそれどこじゃありません。脳裏によぎるのは美子とのことです。

ぽわわーん。「おじさま」とお出かけをした美子をチャリで追跡したなあ。そして、テニスをしている美子を物陰からガン見したっけ。くすくす。

ぽわわーん。仲良くなった僕らは、二人でテニスをしたっけ。くすくす。

ぽわわーん。体育倉庫に美子を連れてきて、そして……「君が好きだ」ちゅー。イキオイで押し倒しつつ、「君の胸に触りたいんだ。いい?」と聞いたら、小さな声で「うん」と言いながら、美子はうなづいたっけ。にへにへ。そしてそのまま。

ぽわわーん。一戦終えて、二人は生まれたままの姿のまま、背中合わせに座ったっけ。美子は恥ずかしそうに言ったんだ。「みんな、こんなことするの?」。僕は答えた。「うん。愛しあう者同士なら、世界中どこでも、こうして喜びを分かち合うんだ」。うわっ、オレ今いいこと言ったんじゃね。そして美子は言った。「あたし、喜びなんて、何も感じなかった」。どっかーん。

「今日のホームルームはこれで終わります」。はっ! しまった。妄想モード全開で終わってしまった。それどころじゃないのに。ということで、放課後、あらためて体育倉庫で話しあう二人です。

「ともかく堕ろすんだ」「怖いわ」「大丈夫さ。僕に任せろよ」「昇さん、まだあたしのこと好き?」「……好きだよ」。ちょっと、その間は何よ。なんで、即答できないのよ。むきー。「私たち、もう離れないわね」「うん」。むちゅー。なんていうか、キスなんかしてる場合じゃナイダロ。

結局、話がまとまらなかったので、昇はクラスいちのイケメン野郎な五十嵐(篠田三郎)に相談してみることにしました。「実はお前に相談があるんだ」「オレにか。なんだい。優等生の加藤が、最劣等生のこのオレに相談って言うと。ふーん。まあ勉強以外のことだな」「うんっ」。いや、そこで即答するのは失礼だと思うぞ。ともあれ、昇は聞きます。「僕の小学校時代の友人のことなんだが、最近付き合ってた女の子を妊娠させちまったんだ」。ヘタな言い訳ですが、五十嵐は信じてるみたいです。「お前なら、堕ろし方なんかや、そんなこと色々と知ってると思って」。そんな失礼な質問に怒りもせず、「ハハ。そうか。そうだよな。このオレに相談に乗れることなんて、どうせソレぐらいのところだな」と心の広い五十嵐。しかし、五十嵐は困ったように続けます。「だけど、オレは相当のワルに見えるらしいけどよ、実は正直言って、いくらかかるのか、どこに良い秘密の医者がいるのかなんて具体的なことは何も知らねえんだ。残念だけど」。ほら、やっぱり篠田三郎はいい人だったみたいです。そんな無責任なことする訳がないじゃないですか、バカだなあ。とか思ったら、女中さんを妊娠させたけど、お母さんが全部始末してくれたみたいですけどね。ああ、篠田三郎なのに。

一方、街を歩いていた美子は、妊婦さんを見た瞬間に、オエーっ。ばったりと倒れてしまいます。そこにたまたま近くを歩いていたクラスメートが駆け寄り「北原さん、どうしたの。大丈夫」と介抱してくれましたが、まだ気持ち悪いわ。おえっぷ。そのまま、なんとなく世間話をする二人。なんだか話題は「おじさま」のことになりましたよ。そう、お父さんを早くに亡くした美子は、お父さんの親友の「おじさま」に可愛がってもらって育ったらしいです。画家の「おじさま」は、美子をモデルに絵を描いてくれたり、まるで実のお父さんのような存在なのです。と、クラスメートは聞きます。「愛してるの。愛し合ってるの」「誰が?」「お母さんとその人」。何ですってぇ、そんなワケないじゃないの。「そうかしら。きっと何か秘密があると思うわ」「失礼ねっ。絶対にそんなことないわ」。怒りに任せてドスドスと家に帰った美子ですが、ちょっと気になります。そーっ。お母さんの鏡台をあさる美子。するとなんてことでしょう。鏡台からは、「おじさま」とお母さんが楽しそうに笑っている写真が出てきたじゃありませんか。もっとも、別にイヤラシイ写真でもないんですけどね。しかし美子は妄想爆発です。もわわーん。美子の妄想の世界では、「おじさま」とお母さんが、裸でクネクネとイヤラシく絡み合っているのです。

五十嵐から有効な情報をゲットできなかった昇は、自力でなんとかすることにしました。とりあえずお父さんのネクタイとメガネを拝借して大人に変装です。どりゃー。よし、出撃だ。「妊娠と安産」という本を立ち読みしたり、さらに産婦人科に行って情報収集です。
「君は大学生か」「はい」「相手の子は」「大学生です」。シメシメ、高校生には見えてないみたいだ。「医者としては、同意書の内容が整っていれば、どこでも手術してくれるよ。その内容が嘘かホントか調べる術が医者にはないからね」「同意書ですか」「これだよ。本人たち二人のサインがあればいいんだ」。ふむふむ。「あのう、いくらくらいかかるんでしょうか」「そう、3か月以内なら1万円だな。やっかいなことでなければな」。そうか、問題は金だな。

ちなみに昇が、実際的な諸問題に集中しているころ、美子は家で思い悩んでいました。「交尾」と題された写真集でカエルやその他もろもろの交尾写真を見ながら、バラの花びらを食っていますね。なんていうか、コメントのしようがない。

ともあれ、利己的な理由も含め堕ろさせたい昇と、愛とは何、人間と動物の違いは何、みたいな哲学的な方向に走ってしまった美子は、まったく平行線のまま。しかし、そうも言ってられないので、昇は牛乳配達のアルバイトを始めました。サワヤカに飛び散る汗。ああ、労働って気持ちいい、みたいな展開です。ここらへん、ちょっと監督のセンスを疑いますけど。

美子の方と言えば、脳内お花畑が少し収まったらしく、そっと産婦人科に行ってみたりするものの、ちょうど中絶を終えた女の子が、泣きながら出てくるのを目撃してUターン。さらに、家にやってきた「おじさま」を見るなり平手打ちです。ばしーん。「嫌いっ」。そのまま部屋に閉じこもった美子はパンツいっちょになって、鏡を見つめます。そして、そのまま鏡に映った自分にちゅーをしたりして。えーと、ここは関根恵子のオッパイを見せる以外に、何か目的というか、意味はあるんだろうか。

相変わらず、会うたびに「堕ろせ」「愛してないの?」と、平行線かつかみ合わない話を続ける二人。しかし、そうは言っても、美子だって高校生で出産することの難しさは分かっているのです。なにしろ高校中退の二人が、子供を抱えてどうやって暮らしていけるというのでしょう。それに、そんなことになったら自分たちの青春はどうなってしまうのか。

ということで、中絶じゃなくて流産をすればいいんじゃないと思った美子は、不良グループに接近して、ゴーゴー喫茶に連れて行ってもらうことに。なんていうか、アマゾン奥地のひとみたいな、トンデモメイクをした美子は、ガシガシとゴーゴーを踊りまくります。それ、ズンダズンダ。それ、ゴーゴー。いや、そんな簡単に流産しないって。

さて、学校では化学の実験中。昇がふと気づくと、美子がアヤシイ動きを見せています。そーっと準備室に行った美子は、なんと硫酸をガメちゃいましたよ。もちろん、授業後には、硫酸が消えたと大騒ぎ。しかし美子は何食わぬ顔です。うわーん。ガクブルな昇ですが、さらに五十嵐がデッカイ声でみんなに言い出しましたよ。「きっと犯人は女だぜ」「男に復讐しようって、顔にぶっかける気じゃねえだろうな」。ギクッ。昇はガクガクブルブルになってしまうのです。

しかし、逃げていても仕方ありません。というか、逃げていて、かえって怒りを買ってもなんですからね。ということで、放課後、帰り道を急ぐ美子を追いかけました。「北原くん。お金用意してきたんだ。とってもいい医者なんだ」。しかし、美子は冷たい目で「このお金で人間を殺せって言うの」と言い放って、そのままスタスタと帰ってしまうのでした。いったいどうすれば。

翌日、珍しく美子の方から昇に声をかけてきましたよ。「今日、放課後、話したいことがあるの」。「何の話?」「きっと待っててよ」。そして放課後。入り口から恐る恐る体育倉庫の中を覗き込んでいると、暗がりの美子が言い出しました。「何をビクビクしてるの」。「硫酸、隠してるだろ」「そんなものは、ここにはないわ。勘違いしないで」「ホント?」「今まで、そんなことばっか心配してたの。ずいぶん臆病なのね」。そうまで言われちゃ仕方ありません。オズオズと昇が体育倉庫の中に入ると、美子は「あなたに頼みがあるの」と体操マットレスの上に、ゴロンと横になりましたよ。えっと、どういうこと。まさかねえ。「何をすればいいんだ」「ここへ来て、あたしのお腹を思いっきり踏みつけて欲しいの。あなたがそうしてくれれば、あたし流産するのよ」。予想の斜め上な展開に「そんな」と唖然とする昇。「どうしたの。あなたが踏んでくれれば、誰にも知られずに流産できるのよ」「……」「早く。何を考えているの」「……」「踏んで。早くっ」。

とことん躊躇ったのち、一発ゲシッと美子のお腹を踏みつける昇。しかし、一発踏みつけたら、抑制が外れました。うわーっ。叫びながらゲシゲシと美子のお腹を蹴りまくります。ゲシ、ゲシ。「ああ、痛い」「うわーっ」。ゲシゲシ、ゲシゲシ。まあ数えている自分もなんですが、キックの総数40発。さすがに、死にそうな美子は、ヨロヨロと手を伸ばしつつ言うのです。「昇さん、忘れないで欲しい。あたしたちがしたこと殺人よ。あたしたち殺人犯よ。うっ、ぐはぁあ。この罪は一生ついてまわる。うぐっ、げはぁ」。なんだかケダモノのように、苦痛にのたうち回っている美子が怖くなった昇は、そのままスタコラと逃げ出すのです」。ひぇーーっ。

ヨロヨロと家に帰るなり、そのまま倒れこむ美子。往診してくれたお医者さんは、心配そうに見ているお母さんに言います。「流産です」。「り、流産」。ショック死しそうな気分のお母さんは確信しました。そうだ、うちの子は美人だから、レイプされたんだわ。
しかし、意識が戻った美子は、さらにお母さんが仰天するようなことを言い出したのです。「お母さん、あたし、どうして妊娠したか知ってる?」「さあ」「男と寝たから妊娠したのよ。決まってるじゃない。そんなこと。あたしも男と寝たのよ。別に無理やり犯されたってワケじゃないわ」。「あなた何てこと」と絶句しているお母さんに追い打ちをかける美子。「お母さん、お父さんと佐伯のおじさまと、どっちがステキだった」「美子、何を言うの」「お母さんたちって、ケダモノみたいね」。うわーん。お母さんは可哀想に涙目で部屋を出て行くのです。

お母さんが出ていって、ゆっくりベッドから起き上がる美子。なんていうか、オッパイ丸見えなスケスケネグリジェなんですけど。普通、高校生か着るか、こんなの。ま、それはともあれ、盗んだ硫酸のビンを顔に押し当て、恍惚とした表情を浮かべていた美子は、ビンの口をあけて、硫酸をおじさまの描いてくれた絵にぶっかけました。じゅじゅー。まだ何も知らなかったころの美子の姿が、ドロドロと溶けていきます。さらに、金魚鉢に硫酸を投入。巻き添えをくった金魚ちゃんも白くなって死んでいきます。ついでにぶちまけた硫酸に、そっと指を這わせる美子。くっ。熱い。って当たりまえだ。

数日休んだのち、美子は学校に復帰しました。手に包帯を巻いて、颯爽と歩く美子に、五十嵐たち劣等生グループは崇拝のまなざしです。そんな視線をガン無視した美子は、まっすぐ昇に歩み寄りました。「終わったわ。全て、これから始まるのよ」「えっ?」「愛。喜び。悲しみ。痛み。あたしの青春」。そのままスタスタと去っていく美子を、ホロホロと涙目で見送る昇です。


なんていうか、「高校生の中絶」というテーマを掲げたりしている割には、作りは「完全に」興味本位。どう言い訳しようと、結局は、いかに関根恵子のオッパイを出すかにかかっている映画でした。まあ大映の場合、若尾文子ですら「性典女優」と呼ばれるデビュー期を送らされたくらいですから、けっして上品な映画ばかり作っているというワケでもないんですけどね。

もっとも、東映があっけらかんと裸を出すのに対し、大映の場合は、テーマや芸術を隠れ蓑にするというか、裸を出すのにも講釈を垂れたがるところがあるのも事実。例えて言えば、東映がスケベオヤジなら、大映の場合変態紳士とでも言えばいいんでしょうか。どうも腹が座っていないところがあるようです。

関根恵子は当時15歳とは思えない発育っぷり。さすがに台詞まわしはつたないし、表情も固い。でも、腹をゲシゲシ蹴られるときのホラー演技は圧巻でした。

それにしても名門の大映が、その末期には15歳の女の子のオッパイに社運を賭けたというのが、哀れというか、倒錯した気分になれるというか、なんていうか諸行無常ですねえ。







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大事なおしらせ

2010-11-11 | お知らせ・お詫び
大事なお知らせがあります。
1600日以上に亘って、みなさまのお目を汚してきた「いくらおにぎりブログ」ですが、無期限休載することにしました。えーと、雑誌でいうと休刊みたいなものでしょうか。つまり、実質的な廃刊ということです。

正直言って、疲れました。前にも書いたことがありますけど、このブログの記事を一本書くのには、肝心の映画を観る時間は別として、メモ取りをしたり、うんうん言いながら文章を書いたりで、ざっと6時間くらいかかります(90分の映画の場合)。

「はあ?毎日更新じゃあるまいし、一週間に一本の更新くらいならできるだろ」というご意見もおありかと思いますが、それがムズカシイ。というのも文才があるわけじゃないので、書いては消し、書いては消し、あんなバカっぽい文章でも書くのはタイヘンなのです。そして、6時間かけて、どうにか書いたと思っても、やっぱりデキに満足できなくて、そのままお蔵入りというパターンも。これは、とても消耗します。そして、そんな消耗が5年近く続いて、とうとうダメになりました。そう、書けなくなったんです。

続けるには続ける理由、やめるにはやめる理由が、いくらでもあげられます。そして、今日この日まで「やめる理由」をせっせとつぶし「続ける理由」だけを見つめて、やってきました。それこそ、いったん始めたことを途中で投げ出すなんてヒトとして最低だ、みたいに自分を追い込んで、どうにか書いてきたのです。

でも、それも終わりました。もうきれいさっぱり、なーんにも書けません。もちろん映画のメモ取りは、苦痛ではあるけど、基本的に単なる作業なのでできます。しかし、そのメモ帳を目の前に置いて、さあテキストエデイターを開いても……、打つべき文字が見つからないのです。なんていうか、頭が空っぽな感じで、言葉が出てきません。まあ、こうなっては、どうしようもありませんね。おしまいです。

現在、記事のストックが10本ほどあります。とはいえ、正直、ボロボロの文章ばかり。そんな中から、だいぶ以前に書いて、どうにか公開に耐えられそうな2本を選んでアップすることにしました。「高校生ブルース」と「復活の日」です。それを適当な間隔をあけて、順次公開したら、この「いくらおにぎりブログ」は、そのまま冬眠状態に入ります。

みなさま、それでは、ちょっと早いですが、さようなら。

【映画】BEST GUY

2010-11-05 | 邦画 は行
【「BEST GUY」村川透 1990】を観ました



おはなし
おっす、オラ悟空。オラの自慢話を聞いてくれよな。

言わずと知れた、かの名作「トップガン」にインスパイアされた作品です。まあ、それは大人の言い方であって、「裸の王様」の小さな子どもなら、「パクリだよ」とか「劣化コピーじゃん」と言いそうですが。

ピカッ、ゴロゴロ。空中を走る稲光。その中を戦闘機が飛んでいるようです。しかし落雷でメーターパネルは真っ暗。危ない状況です。そして、さらに危ないことに。
「バーティゴに入った。梶谷、背面飛行だ。早く元に戻せ。落ちるぞぉ」と叫ぶ後席のレーダー迎撃士官。「待ってくれ。もう少しだ」「梶谷。しっかりしろ。俺によこせ。ダメなら俺によこせ、かじたにー」。しかし、梶谷が操縦桿をユーハブする前に、ぷぷぷぷとアラームが鳴り始めましたよ。レーダー迎撃士官は叫びます。「もうダメだ。ペイルアウトだあ」……

はっ。悪夢から目覚める吉永三佐(古尾谷雅人)。横では妻が「あなた」と心配そうに見ています。「あなた、もうすぐね。亡くなった梶谷さんの弟さんが赴任するの。だから?」。「そんなことないよ」と言いつつ、吉永三佐は妻とモーニングちゅーをするのです。むちゅー。

いきなりシェリルとかいう金髪おねえさんがバリバリ歌っているシーンに。どうやら野外の特設ステージでビデオクリップの撮影中のもよう。と、上空をF15が轟音をたてて通過していきますよ。ビデオディレクターの水野深雪(財前直見)は頭をかかえますが、シェリルはさらにノリがヒートアップしているみたいです。はっ。「これよ。この迫力が欲しかったの。これだわ」。深雪はなにかヒラメイタみたいです。

「ドアオープン」。がらがら。格納庫の扉があき、差し込んできた光がF15のキャノピーに反射します。牽引車に引きだされていくF15の雄姿。そう、ここは千歳にある航空自衛隊の千歳基地で、F15は第201飛行隊の所属機のようです。

さて、その201飛行隊では隊長の山本二佐(黒沢年男)が班長の吉永三佐と、壁を見ながらなにやらお話し中。壁にはトップガン、アーリーバード、それぞれにパイロットの写真が飾ってありますが、頂点のベストガイのところだけ空欄のようです。
「久しぶりにここが埋まるのが楽しみだな」と言う山本隊長に、吉永班長は答えます。「3年ぶりですから」。ふむふむ、トップガンというのはいつもいるけど、ベストガイっていうのは、よっぽどじゃないと選ばれないんですね。なるほど。と、話題が変わりました。「それから、今日か。あの梶谷の弟が赴任するというのは」「ええ。多分。まだ現れませんが」。

はい。ということで、いよいよ主役のODAこと梶谷二尉(織田裕二)がシトロエンの2CVに乗って登場。とはいえ、身分証を忘れて基地に入れず、フェンスを乗り越え警務隊にとっ捕まったりしていますけどね。んもう。小芝居はいいから、とっとと話を進めてください。

さて、201飛行隊のみなさんがフライトを終えて帰ってくると、ひとのロッカーを勝手に開けまくっている梶谷二尉を発見しましたよ。「おいおいおい、ドブネズミが南の方から一匹迷い込んだみたいだぞ」と小学生並みのイヤミをいうパイロットさんに、梶谷二尉も負けてはいません。「第五航空団から来た梶谷だ。わざわざ来たのにロッカーも用意していないのか。ここは」。なんだとお。一触即発の雰囲気が漂うなか、梶谷二尉は、さらにイケメンなトップガン、名高一尉(長森雅人)にガンを飛ばしてます。「名高輝司一尉。TACネームイマジン。トップガンか。噂だけは聞いているよ。防大出のお坊ちゃんにしちゃ、珍しくいい腕してるそうじゃねえか」。イマジン(ぷぷ)こと名高一尉も負けじと言い返します。「貴様の噂も聞いてるよ。梶谷英男二尉。門限破りの常習犯。幹部候補生学校でもドンケツでやっと任官できた落ちこぼれだそうだな」。バチバチ。ああ、火花が散ってるみたいです。

と、そこに山本隊長はじめ隊の幹部がやってきました。「何してんだあ。お前ら」と怒鳴る吉永三佐を梶谷二尉は睨みながら言います。「吉永三佐、お久しぶりです。班長の下で飛べることになるとは思ってもみませんでしたよ」ジロリ。うわあ、殺伐とした職場だなあ。と、山本隊長が取りなすように言います。「さっそく、明日から飛んでもらう。TACネームは五空団からきたからゴクウだ」。「サル。さるー」とはしゃぐパイロットのみなさん。おい、猿って言うな。俺は世界のODAだぞ、まったく。

さあ、映画「トップガン」のようにこじゃれたバーでゴクウとビデオディレクターの水野深雪が出会ってみたり、イマジンが彼女の柴田晶子三尉と乳繰り合ったりするシーンをグダグダに挟みつつ、もう少し辛抱すればF15が飛びそうな予感。それまで我慢、我慢。

「この201飛行隊では、この3年間、ベストガイの席が空席のままになっている。貴様らも知ってのとおりベストガイはトップガンのさらに上に位置する名誉だ。パイロットとしての技量はもちろん全人格を含めて、全てにおいて超一流と認められた者だけに贈られるイーグルドライバー最高の勲章だ」。そんなお説教を訓練幹部の屋敷三佐がしていますが、ゴクウは聞く耳もたず。「そんなものに興味ありません」とかフテてますけど。まあ全人格が超一流と言われても、ゴクウは猿ですしね。関係ないっちゃ関係ない。

さあ、みなさんが部屋を出ていきます。いよいよですね。いよいよ飛びますね。と、思ったら外には深雪が率いるビデオクルーが撮影の真っ最中。はいはい。ラブストーリーはあとでね。

きゅううううう。エンジンの音が高まり、可変ノズルが閉じたり開いたり、さらに空気取り入れ口もガッコンガッコン上下してますよ。おお、なんだか凄そうだ。そして滑走路を駆け抜けたF15は空に。キーン。しかし、仲間の離陸がゴクウには不満のようです。「お嬢さんみてえな離陸だ」。そう猿たるもの、生半可な離陸はしてられませんよ。滑走をはじめ、ふわりと浮きあがったゴクウは叫びます。「はいれーとくらいむっ!!」。ガコン。ミリタリーパワーからアフターバーナーまでスロットルをぶち込まれたゴクウのF15は、垂直にズーム上昇をしていくのです。……それにしても必殺技じゃないんだから、掛け声はやめてほしい。

空に上がったゴクウは、まさに筋斗雲に乗ったも同然。なに、地上目標。よっしゃバルカンだ。バリバリ。おっと、次はF1が引っ張る標的だな。「20秒で命中だ。やってやるっ!」。バリバリ。ほとんどF1に接触しそうになりながらダート型標的(TDU−10B)を撃破するゴクウ。みごとイマジンと同じ20秒だそうです。ちなみに、この秒数になんの意味があるのかはサッパリ。

ともあれ訓練が終われば、あとは自由時間。ゴクウは深雪を呼び出し、吉永班長の悪口モード。「あの男は俺の兄貴が事故で死んだとき、F4ファントムの後ろに乗ってた奴だ」。一方ライバルのイマジンは、彼女の柴田三尉とエッチの真っ最中。あっはーん。ま、若いんだし、人生いろいろです。

「本日より三週間の予定で特別強化訓練を実施する。通常の訓練をスケールアップし、隊を二分して戦技訓練を行う。隊は吉永班長率いるベアチームと、山本隊長率いるホークスチームに二分。本日より完全な敵同士となる」。訓練幹部の屋敷三佐によると、この訓練の結果がベストガイ選出にむけての重要な判断要素になるそうですよ。そして予想どおりクマさんチームにはイマジンが、タカさんチームにはゴクウが入ったのでした。「いい機会だ。こんどこそハッキリ勝負つけてやる」と息巻くゴクウに、「お前の弱点はもうつかんだ。戦う前から勝負は決まっている」と返すイマジン。なんだか少年ジャンプみたいになってきました。

うりゃりゃりゃあ。快調にクマさんチームのF15をロックオンしていくゴクウ。一方、イマジンも山本隊長をロックオンするなどノッているようです。そしてとうとう激突のときが。キーン。キーン。それぞれ僚機を引き連れ、正面から向かっていくゴクウとイマジン。「先にブレイクした方が負けだ」「このままだと正面衝突だぞ」。キーンキーン。キキーン。激突寸前、ブレイクするイマジン。よっしゃ、俺の勝ちだぜ、とゴクウはご満悦です。

しかし着陸するとイマジンがとっても怒っていますよ。ポカリ。ゴクウを殴ったイマジンは言います。「バカ。一人で死ね。他人を巻き込むな。俺たちは全員、自信過剰のパイロットだ。それくらいじゃなきゃイーグルドライバーの資格はない。だが、その自信過剰が同時に自分の弱点になるってこともよく知ってるんだ。お前はそれくらいわきまえているファイターだと思っていたが、ただの暴走族だったようだな」。さらにゴクウの僚機を務めていたダック(米山善吉)までもゴクウを見限り、ゴクウはひとりショボーンです。

さびしくなって夜の千歳空港を見ているゴクウ。と、そこに深雪がやってきましたよ。「梶谷さんのお兄さんの話、聞いたわ。北陸の上空でファントムが故障して、民家に墜落するのを避けようと海まで飛んでって緊急脱出できずに亡くなったんですってね」。暗い顔で「そして兄貴は空の英雄になった」とつぶやくゴクウ。「その時、複座の後ろに乗っていたのが吉永班長だった。どうしてお兄さんだけが亡くなったの?」。

その質問に答えようとせず、「バーティゴ、空間識失調って知ってるか」というゴクウ。要は平衡感覚が狂って、ひどいときには、飛行中にどっちが上だか下だか分からなくなるという恐ろしい状態らしいです。そして、それはどんなベテランパイロットにでも起こりうると。「この基地に来てから、ずっとそのバーティゴにかかっているような、妙な気分が抜けないんだ。あんたのせいかも知れない」ちらり。おお、深雪はうっとりモードですよ。なにしろ「ねえ、もう少しで今日の撮影が終わるの。あとで少し飲まない」と自分から言い出すくらいです。でも残念。特別強化訓練中なのでゴクウは基地の外に出られないのでした。

さて一夜明けて訓練再開。今度はゴクウとイマジンの一騎打ちです。「来たなイマジン」「ルールを守れよ、ゴクウ」。猛スピードでドッグファイトをする二人のF15。しかしゴクウには必殺技があったのです。行っけー。機種を上げ垂直上昇に入るゴクウ。F15はそのままグングンと上昇し、その頂点で制止すると、その姿勢のまますーっと落下しはじめました。よく分かりませんがテールスライドという技らしいです。「どこ行ったんだ」と焦るイマジン。そこに姿勢を立て直したゴクウのF15が猛然と背後から襲いかかるのです。「今すぐキルしてやるからな」と叫ぶゴクウ。しかしイマジンも伊達にトップガンはしていません。「よしっ」といきなりエアブレーキを全開しました。急速に減速したイマジンのF15をオーバーシュートしてしまうゴクウ。一気に形勢逆転です。「うっ、やられる。スプリットSだ」。ゴクウは背面飛行から方向転換をしようとしますが、すでにイマジンにロックオンされていたのです。

「キルされてない」。訓練後のデブリーフィングで駄々をこねるゴクウ。クマさんチーム代表の吉永班長はキルされたと言っていますが、タカさんチーム代表の山本隊長は「私もそう思うな。操縦不能になったがコクピットに被害はなかった。ペイルアウトしてパラシュート降下したとみるのが妥当だろう」とか言い張っています。ミサイル食らったとしたら、どっちにしてもキルされたと見るのが普通な気もしますけど、タカさんチームにその理屈は通用しないみたいです。ほとんど「「まだだ! まだ終わらんよ!」の世界な気もしますけど。あ、イマジンですか。微妙にあきれ顔です。

それはそれとして、自衛隊は訓練だけしてる組織ではありません。お仕事だってちゃんとするのです。悪の帝国ソビエト連邦が領空侵犯してきたときに備え、アラート待機も必要ですからね。おっと、スクランブルがかかりました。ずどどど。列線に並ぶF15に飛び乗るゴクウとイマジン。さあ、悪の帝国ソビエト連邦を撃破だ。←そんなことをしちゃいけません。

おそろしく模型くさいツポレフ16バジャーがもっさり飛んでいます。早速、警告をしなくては。えーと、ここは日本の領空なので、帰ってください、ぷりーず。しかし、日本の自衛隊がなにもしない(できない)ことを熟知しているプラモデルくさいバジャーは進路を変える気配もなく悠然と飛んでいますよ。と、レーダー警戒受信機が反応しました。うわっ、ロックオンされてる。そう、バジャーに続き、(当時の)最新鋭機なSu-27フランカーがやってきたのです。げげっ。これはたいへんだ。早速、後続のF15、そして三沢からはF1も離陸しましたが、今ここにいるのは2機のみ。これでどうにかしなくては。「やるならやってみろ」、ゴクウは叫びます。はい、そのままプラモデルなドッグファイトが始まりましたよ。うりゃ、ロックオン返し。ウララー。悪の帝国ソビエト連邦は逃げて行きました。よく分かりませんが、正義は勝つ。

しかし、悲劇はそのあとに起こったのです。「帰りは雲の中になる」と言うイマジンに「りょーかい」と答えるゴクウ。しかし、ちっとも了解じゃありませんでした。そう、ゴクウはバーティゴに入ってしまったのです。「計器を見るんだ。水平飛行に戻せ」とイマジンは指示しますが、もとより野生の本能で飛行機を飛ばしているゴクウですから、それは無理な相談。「なんで背面になってんだ。……。やっぱりダメだ。どっちが上か下か分からない」。さらに、さっきまで激しい機動を繰り返したため、燃料警告灯までついちゃいました。これでゴクウは完全にパニックに。「燃料がない。墜落する。墜落する。アンコントロール。アンコントロール」。ばしゅっ。はい、ゴクウはペイルアウトしたようで、あわれF15は海の中。ゴクウは海水浴です。

飛行禁止をくらいヘコんでいるゴクウ。そこに吉永班長がやってきました。もちろん、めっちゃ怒っています。しかし、班長はさらに意外なことを言い出したのです。それは、班長とゴクウの兄の事故の話でした。その時、落雷を受けたファントムは計器を失いました。そして、さらに二人そろってバーティゴに。しかし、陸地で墜落したら民間人を巻き込むことになる。必死にファントムを海上まで持ち出し、そこでペイルアウト。「その時、お前の兄貴は恐怖のあまり錯乱しきってた」「うそだーーっ」」「あいつは結局、レバーを引くことができなかった。俺はパラシュート降下しながら、奴が海に突っ込んでいくのをただ見てるしかなかったんだ」。わなわな。兄を英雄だと思っていたゴクウのプライドは粉々です。「お前はその兄貴にも及ばない最低の脱出をした」。ギクリとするゴクウ。「たまたま落ちたのが海の上だったというだけのことだ。お前は自分が助かりたい一心で、民家に落ちる危険も考えずにイーグルを放棄した。俺たちは殉職したパイロットの奥さんが子供を連れて土下座までして謝っていた姿を決して忘れることはないんだ」。

ガックリ。今こそ自慢の鼻をポッキリへし折られたゴクウは虚ろにつぶやきます。「エリミネートですか(パイロットを馘ですか)」。しかし吉永班長は言うのです。「訓練再開でベストガイを決める最後のフライトが行われる。もし未だイーグルドライバーでいたいと思うのなら、そこで待ってる」。

謹慎中のゴクウは鹿児島にやってきました。昔の恋人に慰めてもらうためです。しかし、恋人にはすでに新しい彼氏が。がっくし。今度は東京の深雪に会いに行くゴクウ。しかし、深雪もまたビデオ製作プロジェクトが暗礁に乗り上げてヘコんでいる真っ最中だったのです。とりあえず慰めるわけでもなく、仕事を下ろされた深雪をバカにしまくるゴクウ。これには深雪だってブチ切れですよね。「ハッキリ言ったら。飛ぶのが怖くなったんでしょ」「そっちこそハッキリ言えよ。あたしは才能がなくて下ろされました」「いま分かった、あなたは負けるのが怖い人なのよ。死んだお兄さんに負けるのが怖い。吉永班長に負けるのが怖い。名高さんに負けるのが怖い。いつでも勝ちたいと思ってるけど、自信がない。だからベストガイなんかいらないよって、負けないうちに予防線を張っておく。そして肝心な時になるといつも安全なところに逃げ出して嵐が通り過ぎるのを待つ。今度はそれが私の部屋だったんだわ」。いや、実は2軒目なんですけどね。ま、それはともあれ、捨て台詞全開で深雪を泣かせて、部屋を出ていくゴクウ。なんていうかパイロット以前に、人としてどうかと思うんですが。

女性は強いです。プロジェクトを下ろされた深雪ですが、組織の力を頼らず、個人の力で201飛行隊の撮影を続行することにしました。もちろん許可がないので、基地に入れてもらえず、フェンスを乗り越えて警務隊に捕まっているあたりはゴクウと同レベルですが。そして、その201飛行隊では、特別強化訓練の最終フライトを前にブリーフィング中。

訓練幹部の屋敷三佐は発表します。「特別強化訓練もいよいよ本日で終了する。これまでの個人総合得点ベスト3を発表する。イマジン、1000点満点中987点。ゴクウ976点」。しかし、肝心のゴクウは行方不明のままです。「ゴクウが姿を現さない以上、戦いは成立しようがない」とイマジンに言う屋敷三佐。そうベストガイは不戦勝ではなれないらしいです。もっとも、その前にゴクウの脱柵について問題意識を持ったほうがいいような気もしますが。と、そこにノコノコとゴクウがやってきましたよ。「来たか」と熱い視線を送る吉永班長。現実だとそのまま脱柵問題について追及が始まるところですが、これは映画。それもかなりトンデモ風味なので、何事もなかったかのように、イマジンとゴクウのACM(対戦闘機戦闘)が始まり始まり。

ぎゅいーん。初手から激しいマニューバの応酬が始まりました。「よし、後ろを取った。ロックオン」とイマジンが勝ちを誇れば、「そうはいくか。そっちの得意技だ」とゴクウはエアブレーキを全開にしてイマジンをオーバーシュートさせます。「入れ替わったぞ」とゴクウが威張ると、イマジンが「今度はそっちの得意技だ」と垂直上昇。すーっ。テールスライドで自由落下していくイマジンの愛機。しかし、アレ、アレレ。「ゴクウがどこだ。おかしい、いない」。ふはは。「お前の作戦は読めてんだよ、イマジン」。どうやらゴクウも同時にテールスライドしていたみたいです。

そのまま海面スレスレで激しいマニューバを繰り返す二人。と、その時。ぷっしゅー。「Gホースが抜けた。あと少しだったのに」と悔しがるイマジン。そう、激しいGに耐えるためのGスーツにエアを供給するホースがすっぽ抜けたみたいです。クラっ、ああ目の前が暗くなる。これはブラックアウトだっ。しかし、絶好のデッドシックスにいたゴクウはイマジンをロックオンしませんでした。「ゴクウ、どうしてロックオンしなかった。その時間はあったはずだ」。しかし、そんなことを言ってる場合でもありません。気を取り直したイマジンは再びホースがすっぽ抜けたまま激しい機動を開始。「イマジン、やめろ。今度は失神するぞ」。しかしイマジンは”とっても頑張った”ので、ど根性で魂のロックオーーーーン。「やったあ」。ゴクウも今はサワヤカに負けを認めます。「おっけー。あいむキルド」。

空白だったベストガイの欄にイマジンの写真が貼られました。ちなみにトップガンの欄にはゴクウの写真が。みんな、よく頑張ったね。おしまい。

……。おしまいかと思ったら話はまだ続くみたいです。
撮影を終え、ホテルにいた深雪のところに国際電話が。電話は外タレのシェリーからで、自分のビデオクリップをぜひミユキに撮って欲しいという願ってもない話です。喜びに輝く深雪の横顔。と、アレレ。窓の外を自衛隊の救難ヘリが飛んでいますよ。そして、その中には制服をパリっとキメて、敬礼をしているゴクウが。ずどどど。シェリーからの電話を放り投げホテルの外に飛び出していく深雪。もちろんヘリを降りたゴクウもずどどどと走っています。そのまま、ホテルの前で抱き合う二人。深雪を抱っこした姿勢のままゴクウはくるくると回り、二人はむさぼりチューをするのでした。むっちゅー。「国家公務員が正式に民間人を口説きにきた」「りょーかい」。おしまい。

……。おしまいかと思ったら話はしつこく続くみたいです。部下に訓練で負けてハートブレイクな山本隊長が六本木の防衛庁に栄転する日がやってきました。愛用のヘルメットを持って、感慨深げに滑走路に出る山本隊長。と、そこには201飛行隊のみなさんがずらりと一列になって待っていたのです。びしっと敬礼する部下たちにうるっとしつつ輸送機に乗り込む山本隊長。しかし、もちろんお楽しみはこれからです。隊長の乗った輸送機をエスコートすべく離陸するゴクウとイマジン。ゴクウは言います。「隊長の餞別だ。ひとつ派手にキメてやるか」。「うっす」と答える”上官の”イマジン。ぎゅいーーーん。2機のF15はハイレートクライムをかましています。蒼穹を駆けていくF15。と、ゴクウがスロットルをガッコンと押し込むと、イマジンも「いえーす、おっけー」とアフターバーナーを全開にするのでした。ズゴーン。世界最強の制空戦闘機F15は、今日も元気です。


なんていうか、織田裕二がファイターパイロットに見えないんですけど。とりあえず、湘南爆走族の飛行機版としか言いようがないし。ノリとしては山本隊長がヘッドで、吉永班長が親衛隊長。で、ゴクウとイマジンが次期特攻隊長の座を争ってバイクテクを競っているくらいな感じでしょうか。もちろん、これを日本国の自衛隊を描いた作品だと思わず、目本国の白衛隊のお話だ、くらいに思っておけばいいのかもしれませんけど。

それにしても、得意技の名前を叫んじゃうセンスとか、こっ恥ずかしいTACネーム。さらにイキオイだけの展開は、本気でスゴイとしか言いようがありません。ちょうど、この頃はバブルが弾けかかっていたころですが、まさにイケイケドンドンな最後の映画な感じもします。

ちなみに当時は最強の制空戦闘機だったF15Jイーグルも、今ではショボーンな雰囲気。お隣の国がストライクイーグルの自国仕様、F-15Kスラムイーグルを買ったことでもあるし、日本としても、いっちょドカーンとスゴイのを買って、またベストガイの続編でも作ってもらいたいところです。希望順としては、

F22を買って、「ベストガイ2 見えない翼」。F35を買って、「ベストガイ2 稲妻の誓い」。タイフーンを買って、「ベストガイ2 ヨーロッパからきたアイツ」。F-15FXを買って、「ベストガイ2 老兵は蘇る」。あたりでしょうかね。

ところで気づきましたか。タイトルが「ベストガイ」なのに、織田裕二はベストガイになってないんですよね。まあ、あの状況でなったら、それはそれで驚きですが。

ふろく
今回は航空用語が多かったので、用語説明をつけてみます。
F15Jイーグル 言わずと知れた日本の主力戦闘機。つよい。
F4Jファントム 言わずと知れた日本のかつての主力戦闘機。かっこいい。
F1 言わずば分からない日本のかつての支援戦闘機。ミツビシ製。緑色がステキ。
Su-27フランカー 悪の帝国の戦闘機。コブラ飛びが得意。