いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】汚れた英雄

2011-10-24 | 邦画 や〜わ行
【「汚れた英雄」角川春樹 1982】を観ました

おはなし
へい、SUGOは燃えてるぜ。空前のデッドヒートにSUGOは揺れてるぜ。

いろんな意味で「天才」な角川春樹の初監督作品です。さすが天才だけあって、凡人には、よくワカンナイ部分もありますが、それもまた良しということでひとつ。


最初にテロップが出ます。

マシーンを愛し
ロードレースを愛し
サーキットに散った戦士たちよ
いま
鎮魂の譜を捧げます

さすが天才、角川春樹。開始1秒でネタばらしをするとは、スゴすぎ。

さて、暗い中、座っている男のシルエットが映し出されました。ジーッ。革ツナギのジッパーを首まで上げ、そして「パチッ」。首元のスナップを止めた男はゆっくりと立ち上がり、通路を歩いていきます。目の前の明かりに向って、一歩一歩。そして、ドアを開けると、そこは光と喧騒に満ちたSUGOサーキット。フオン、フオン。オートバイのレーシング(空ぶかし)が響き、メカニックたちがバイクの最終調整に余念がありません。男はゼッケン62のTZ500に向います。そう、男はレーサーの北野晶夫(草刈正雄)といい、これからTZ500を走らすレーシングライダーなのです。ヘルメットをかぶり、グローブをつけ、おっと、そこに音楽が流れてきましたよ。異常にノリのいいオープニング。聞いてるだけでワクワクしてくる「Riding high」(ローズマリー・バトラー)です。ちなみにYouTubeで「Riding high」って検索すると出てきますから、知らない人はぜひ一聴を。

ま、それはともあれ、押しがけでエンジンを始動し、コースに飛び出していくマシンたち。SUGOサーキットを一周してスタートラインにキレイに勢揃いです。おおっと、テディ片岡(伊武雅刀)のノリのいい場内実況が聞こえてきましたよ。

「ナウ、エブリバデー。ジス、イズ、ザ、メインレース。国際A級500cc決勝。全日本選手権ロードレースも迎えて今日で第8戦。2年間のブランクを乗り越えて不死鳥のように蘇った北野晶夫。プライベートエントリーにもかかわらずメーカーチームと互角に戦って、総合ポイント96点は堂々のポイントリーダー。その北野に3ポイントの差を追って、一昨年、昨年と2年連続チャンピオン、ヤマハの大木圭史が第2位……」。エ、エブリバデーって。なんか伊武雅刀の強烈なカタカナイングリッシュに腰が抜けそうな思いですが、ヤマハのファクトリーライダー大木圭史を演じるのが勝野洋ってのも、かなりのインパクトです。なんていうか、勝野洋とか永島敏行みたいなスポーツ刈り系はバイクに乗らんだろみたいな。

それはさておき、レースはスタートしました。ゼッケン62の北野。ゼッケン1の大木。そしてゼッケン20。お金持ちのボンボン、ジュニアこと鹿島(貞永敏)のバイクがレースをリードしていきます。もちろん、このレースシーンは、ヤマハの「ホンモノ」ライダーたちが吹き替えで走らせているので、非常に見応えがあります。もう、このままずっと観ていたいくらい。しかし、そこにテディ片岡こと伊武雅刀の場内実況が入ってきました。

「おっと速報だ。イエーイ。さっきの26週目で北野がついにコースレコード、最高ラップを叩きだした」

しかし、それは大木の策略だったのです。油断させといてドカン。北野がベストラップを刻んだのもつかの間。ワークスマシンのパワーを生かして大木が牙をむきました。「おっと大木が抜いた」「1位大木。2位北野。3位鹿島。まさにグレートレースだぜ。HAHAHA」。イエーイとかHAHAHAとかまったく。

そんなこんなで、ともあれレースは大木の勝ちに終わり、総合ポイントは北野と大木が同ポイント。決着は2週間後、またSUGOで行われるレースで決まるそうですよ。それにしても、スタンドで見ているガングロ女(朝加真由美)が横にいる執事(草薙幸二郎)に何やら耳打ちしているカットが、思わせぶりすぎて泣けてきます。

はい。レースが終わり、つかの間の休息。北野こと草刈正雄がプールサイドで、渋く水面を見つめていると、執事っぽい草薙幸二郎がやってきました。「わたくし、ミキモトグループのミキモトに仕えている亀谷と申します。実は会長のご息女、菜穂子さまがぜひ北野様とお食事したいと申しておりますが、明日のご都合はいかがでしょうか」。

ここで、意味なくテニスをしているガングロな菜穂子さまこと朝加真由美のショットを入れつつも、肝心要のお食事シーンをブッ飛ばすのが、さすが角川監督。エピソードのつながりなんて無視無視。よし、次いくぞ。

ということで、次の画面は新東京国際空港(今は成田国際空港)のエントランスに。ブロロー。草刈正雄の運転するBMWアルピナがやってきましたよ。それを見て、全身白黒の縦じま、フードまで縦じまな女(木の実ナナ)が叫びました。「アキオ」。そう、この着ぐるみというか、全身白黒マトリューシカみたいなカッコをした女は、高名なファッションデザイナーかつ草刈正雄の彼女の斎藤京子だったのです。トホホ。

さすがに車内ではフードを取った木の実ナナは、ハンドルを握る草刈正雄に声をかけます。「UPIの記者から聞いたわ。残念ね。最終戦はかならず見に行くわ」。木の実ナナのムンムン色気が漂いはじめました。「でも何だか疲れたわ」チラッ。木の実ナナが草刈正雄を熱く見つめてますよ。「そばにいて」。木の実ナナのムンムン色気でBMWは桃色マックス。

ということで、オシャレなホテルに投宿したふたり。月明かりの青白い光の中で抱き合っています。とはいえ、ロングショットで見えるのは草刈正雄の尻。木の実ナナのオッパイも見えるような気もしますが、米粒だよ。あくまで「よく」見えるのは草刈正雄の尻。

木の実ナナが寝ているうちに、とっとと部屋を出た草刈正雄はBMWで高速をブッ飛ばします。ブロロー。そして、いきなりイメージショットが挿入。暗い海に人間がポッカリ浮いています。実のところ、あとで、このショットの意味は明かされるものの、あまりにも唐突だ。そして画面はまたも唐突に草刈正雄の尻に。いえ、草刈正雄が室内プールにうつ伏せでポッカリ浮かんでいるんですけどね。とにかく角川監督は尻が好きだ。

クルンと回転してジャバジャバと平泳ぎをした草刈正雄は、室内プールから出ます。もちろんカメラは、プールから上がる草刈正雄の尻を執拗に撮影するのは言うまでもありません。プールから出た草刈正雄が黒いバスローブを着て、黒いタオルを頭からかぶると、そこに「Riding high」のカッチョいいメロディが流れ始めましたよ。プールに隣接するオシャレな部屋を歩き回りつつ、グラスに氷を入れ、ペリエを流し込み、ライムをググっとしぼる草刈正雄。あ、このシーンは「オシャレな生活」という記号みたいなもんですから。そして、草刈正雄はシャワーを浴びるのです。もちろん、カメラが背後から延々と尻を写し続けるのは当然すぎるくらい当然です。じゃじゃー。ついでに、どこのクリーニング屋だと思うくらいの、大量のスーツが回転式ハンガーに掛けられた衣裳部屋で、手際よくタキシードを選び出し、着用に及ぶ草刈正雄。とりあえず裸じゃなくなって良かったね。

はい、どどーんとゴージャスなパーティが開かれています。「レディースアンドジェントルメン」とカメオ出演らしい夏八木勲が声を張り上げましたよ。「今夜のプリンセスを紹介します。ミス、クリスティーン・アダムス」。はい、ゴージャスな金髪のお姉さん、クリスティーン・アダムス(レベッカ・ホールデン)がニッコリと微笑みます。「わが社のパーティにようこそ」。

そんな様子を見ていたタキシード姿の草刈正雄に木の実ナナは言います。「あの若さで10億ドルの遺産を独り占め。世界中に10万人の従業員のいるコングロマリットのオーナー、彼女こそ宇宙人だわ」。はい、説明くさいセリフありがとうございました。しかし草刈正雄はすでにレベッカさんのことを知っていたみたいですよ。「3年前、世界選手権のレセプションで会った」という草刈正雄に、木の実ナナは「そういうわけ」とムキーな感じです。さっそく「またお会いできましたね」とか言いつつレベッカさんに接近する草刈正雄。「二人きりで会いたい」「ムリだわ」。おやフラれたみたいですね。

仕方ないのでパーティ後に、木の実ナナと高級そうな飲み屋に行く草刈正雄。どれくらい高級そうかというと、世良譲が普通にピアノでBGMを弾いているくらいです。と、二人のテーブルに「お邪魔していいですか」とレースで3位だったホテル王の息子なジュニアが彼女連れでやってきましたよ。「北野さん、聞いていただけますか。あなたと初めて会ったのは4年前の世界選手権でした。2輪であなたほど速く走るライダーを見たことがありませんでした。それからずっと意識してきました。2輪の世界に入ったのもあなたという目標があったからです。北野さん、今度の最終戦かならず勝ちますよ」。いきなりの勝利宣言に木の実ナナが言い返します。「んふっ。アキオは今度のレースに全てを懸けてるわ。それでも自信がある?」。「ええ。北野さんに勝ったら、もうこの世界には興味がありません」。草刈正雄は渋くキメます。「ステキだね、ジュニア。いいかい。今の君は運がいいだけだ。怖さを知らない。一度か二度、地獄を見なきゃ」。

ということで、家に帰った草刈正雄は、プールサイドにおかれた、壊れたマシーンを触りながら回想モードに突入。それは世界選手権。コーナリング中にコテっと倒れた草刈正雄のマシーンは、ドッカーンと大炎上。草刈正雄はそのまま病院に担ぎ込まれ……。はい、現在に戻ると、草刈正雄が腕の傷が見えるように、すっごい不自然なポーズで座り込んでいます。ああ、この傷なんですね。

チャンチャチャチャ、チャンチャチャチャ。またも「Riding high」のシビレるオープニングが流れ始め、車道のど真ん中をジョギングしてくる草刈正雄が映し出されます。そしてバタフライマシンをガシガシ動かす草刈正雄。腕立て伏せをする草刈正。腹筋をする草刈。クロールで泳ぐ草。バーベルを持ち上げる"く"。最後はロッキーそっくりな感じで公園をダッシュだ。だあー。

はい、何事もなかったかのように、現代美術館を見物しているレベッカさん。等身大のオブジェがアチコチにおいてあります。と、どう考えても草刈正雄くさいオブジェがあるじゃありませんか。「フフフ。大理石に彫りたいわ。でもモデルに負けてしまいそう」とレベッカがオベッカを言うと、ムクリと動いたオブジェこと草刈正雄もニヤリと笑って言います。「僕がルノワールならすぐキミに脱いでもらうな」。トホホ、何言ってんだ。さらに草刈正雄はコッ恥ずかしいセリフを。「僕は泥棒だ。キミのハートを盗みにきた」。

ブロロー。BMWの助手席に乗っているレベッカさん。なんていい人だ。あんなコッ恥ずかしい台詞でも、デートの誘いに乗ってくれるなんて。そのまま海にやってきた二人は砂浜を歩きます。強引にチューをしようとする草刈正雄にレベッカさんは言います。「甘く見ないで欲しいわ。もうコリゴリ、プレイボーイには」。憤然として言い返す草刈正雄。「僕は違う」「それじゃ何なの?ジゴロ?」「あいあむあれーさー」。ああ、バカだ。バカがここにいる。ともあれ、強引にチューを続けようとした草刈正雄は、レベッカさんにピストルで脅かされてスゴスゴと退散です。

こじゃれたカントリー風の建物や納屋が立ち並ぶ一角。そこが草刈正雄のマシーン整備基地。というか、メカニックの雨宮(林ゆたか)や緒方(奥田瑛二)、奥さん(浅野温子)、こどもが住んでいるおうちです。と、そこに草刈正雄のBMWがやってきましたよ。さすがにレースも近いし少しはマジメにやんないとね。もっとも草刈正雄がムンムンしている間にも奥田瑛二はマジメに整備していたらしく「シリンダを後ろ向きにするのはうまくいったみたいだ」とか言ってますが。えーと、それはTZ500を後方排気に改造したってこと?なんかスゴいな。

ま、それはともあれ、奥田瑛二はマジメにやってますが、もう一人のチャンバー担当メカニックな林ゆたかは、頭の中が桃色状態で、仕事が手につかない状態。「今度は本当なんだ」と草刈正雄に言い訳をしています。「ブルース好きだろ、オレ。本物、歌うんだ、そいつ。えへっ」。いや、えへっじゃないから。そもそも君の趣味なんて知らんよ。今出てきたばかりのキャラの癖に。しかし、こと色事となると草刈正雄としては責める資格がコレっぽちもないので、お財布をまるごと渡して、「行ってきな」と言うのです。ありがとう、ドロドロー。ああメカニックはアメ車に乗って出かけちゃいました。

その後、奥田瑛二は元レーサーだったとか。事故で怪我をして足が不自由だとか。浅野温子は、その事故の時18歳で、事故の1時間後にこどもを産んだとか、かなりどうでもいい知識が手に入ったりします。さらに草刈正雄が勝野洋とグラビア撮影に臨むとか、もっとどうでもいい場面を経て、焦点はレベッカさんに。

はあ。味気ないひとりの食事に、思わずため息をついちゃうレベッカさん。と執事が来て言います。「お嬢様。北野さまからお花が届きましたが」。「運ばせて」とレベッカさんが答えると、執事は指をパッチン。はい、使用人さんたちが花を持ってきます。これでもか、これでもか。やり過ぎと思うくらいにお花で満ち溢れるお部屋。レベッカさんは、思わず「ファーンタスティック」。観てるこっちは、恥ずかしい。

パアアーン。2ストエンジンの咆哮。ゼッケン62、草刈正雄のマシンがテスト走行中です。ききーっ。ピットに戻ってきた草刈正雄は言います。「セッティングがバラバラだ」「全部ダメだ」。まあメカニックの一人が使い物にならないんじゃ当たり前ですよね。レースまであと一週間、間に合うんでしょうか。草刈正雄も厳しい顔です。と、スタンドでレベッカさんが見ているのに気づきましたよ。「じゃ、お疲れ」。イソイソと帰り支度をはじめちゃう草刈正雄。えーと、プロ意識とかはどこに。

一方、スタンドで見ていたレベッカさんは、スローモーションで走りながらつぶやきます。「アキオ、マシーンとセックスしているのね」。なんていうか、バカップルだ、この人たち。

画面が変わると暖炉の前に座っている草刈正雄とレベッカさん。草刈正雄は上半身裸で、レベッカさんは草刈正雄のワイシャツだけを羽織っている状態。えーと、おそらくレベッカさんは日本の、それもワケワカンナイ映画で脱ぐ気はもちろんラブシーンなんか撮られる気はなかったんでしょう。なんとなく、ポワワーンな感じで、画面はウヤムヤに。

はい、一戦終えた(と思ってほしい)翌朝。草刈正雄が外を見ていると、ベッドのレベッカさんが目覚めました。「アキオ」「ん?」「夢を見たわ「オーイヤー」「あなたと私が抱き合ってたの。でも最後に」「俺が死ぬんだろ」「アキオ。アイラブユー」。ずずーん。また、謎の暗い海のイメージショット。

草刈正雄の努力は報われたようです。数日後、執事に「パットン。この小切手を届けて」と命令するレベッカさん。それもなんと10万ドルです。レベッカさんは寂しそうにつぶやきます。「アキオ、ドコにいるの」。

はい草刈正雄は謎の真っ赤な部屋でタバコをくゆらせています。横の赤いソファーには真っ裸で横たわるミキモトのお嬢様こと朝加真由美。そして、映ったらマズイ股間を何で隠しているかというと、赤ワインの満たされたワイングラスですよ、奥さん。なんていうか、これってゴージャス?さて、草刈正雄がスタスタと部屋から出ていくと、あらら、ここは豪華ヨットだったようですよ。執事の草薙幸二郎が横シマシャツにジャケット、マドロス帽子というスタイルで、すっかり船長さん気分みたいです。なぜ執事なのに、こんなカッコ。ミキモトの旦那さまに見つかったらドヤされますよ。

草刈正雄が遊んでいる間にも奥田瑛二は仕事をしていたようです。パアアーーン。テスト走行からピットに戻ってきた草刈正雄に奥田瑛二は聞きます。「どう?」「まあな」。浅野温子が横から言います。「どうにかグランプリに間に合いそうね」「いや、まだ問題は残ってる。雨宮は?」。

はい、その雨宮こと林ゆたかは横浜のオシャレなバーにいました。迎えにいった草刈正雄と、赤レンガ倉庫の前で語り合っちゃいます。「オンナがさ。ブルース歌ってるオンナがゴメンって言うんだよ。男がいるんだって。笑っちゃったよ。ぶん殴る前に笑っちゃったよ」。ゆたか、それオンナとちゃう。ただの片思いや。ともあれ、ゆたかはダメっぽいので、草刈正雄は乗ってきたオフロードバイク(DT200)の鍵を無言で渡します。受け取ったゆたかは言います。「俺、アキオといたかったよ。完璧なレースをするためのパーツでいたかった。アキオが一番大事な時に何もしてやれなくて、今度の最終戦がんばってくれよな」。パララン。パララン。名残惜しそうに草刈正雄の周りをクルクル回ったゆたかは、そのまま去っていくのでした。パララーン。

はい、レースウィークに突入しました。SUGOサーキットには、各チームが勢揃いです。決勝前日も遅くまで作業をしている奥田瑛二。いっぽう、奥さんの浅野温子は草刈正雄の部屋にとつげーき。「少し…いていいかな」。そう、明日のレースが終わると奥田一家と草刈正雄の契約はおしまいなのです。「この2年間、楽しかったわ。アキオと一緒にいたかった」。いかにもオチる気満々な浅野温子に草刈正雄は自分語りを始めましたよ。「ガキの頃、親父とお袋が死んでオジのうちで育てられた。下町の修理工場だ」。で、家の手伝いをしなくてはならなかったので、海で泳げなかったとグチる草刈正雄。せいぜい海に行けるとしたら、仕事がヒマな雨の日だけ。「来る年も来る年も誰もいない海で泳いだ」と渋くキメる草刈正雄。なるほど、時々意味ありげに挿入されるショットはそういう意味だったんですね。まあ、だからどうした感がつよく漂いますけど。あ、これで、このシーンは終わるので、さすがの草刈正雄も浅野温子には手をださなかったようです。と言うか、そうであって欲しい。

プープカプー。鼓笛隊が練り歩き、ポリスの恰好をしたハーレー親父たちがパレードをしています。華やかな雰囲気のなか、いよいよこれから決勝戦です。プップー。クラクションを鳴らしながら木の実ナナがポルシェでやってきました。赤ワインで股間を隠す女こと朝加真由美も運転手つきのベンツで到着。そして「ばばばばば」、おお、レベッカさんもヘリコプターから降り立ちましたよ。

レース前のコンセントレーション儀式を終え、グリッドについた草刈正雄。ハアハア。ヘルメット越しに聞こえる荒い息遣い。ドクドク。高鳴る鼓動。木の実ナナ。赤ワインで股間を隠す女。レベッカさん。みんなが見守る中、スタートシグナルが赤から緑へ。一斉にマシーンを押して走り出すレーサーたち。5歩、6歩。エンジンが始動したバイクは白煙を巻き上げてコースを駆け抜けていきます。ゼッケン1の勝野洋。ゼッケン20のジュニア。ゼッケン62のマシンはまだエンジンに火が入りません。「アキオーっ」。こどもが絶叫すると、ようやくゼッケン62は白煙を巻き上げてスタートしました。だいぶ遅れてしまいました。追いつけるのか。

はい、ここからのレースシーンは文句なく素晴らしい。草刈正雄というか、スタントの平忠彦が長身を折り曲げるようにマシンと一体になって走るさまは、問答無用のカッコよさです。

草刈正雄が猛然と追い上げ、レースはゼッケン20のジュニア、ゼッケン1の勝野洋、そしてゼッケン62の三つ巴の戦いになりました。息詰まる戦い。と、その時、ゼッケン62がヘアピンで転倒。

テディ片岡こと伊武雅刀が叫びます。「エブリバデー、リッスン。アンアクシデント。悲しいアクシデントが起こったぜ。北野晶夫、ヘアピンで転倒」。思わず十字をきるレベッカさん。コースマーシャルが草刈正雄のマシンに駆け寄っていきます。と、草刈正雄はガバっと起き上がり、マシンにまたがりました。よいしょよいしょ。長い脚で強引にマシンを前に進めると、ボボッ、ボボッ、パララーン。エンジン始動。そのままレースに復帰です。「ヘイ、リッスン。フェニックスが飛んだ。北野晶夫がサーキットに戻ってきたぜ。あと36週。ゴー」。どうでもいいけど、カタカナ英語でリッスンはやめてけれ。

猛然と追い上げていく草刈正雄。そしてとうとう先頭の2台が見えるところに。「へい、SUGOは燃えてるぜ。空前のデッドヒートにSUGOは揺れてるぜ。ラスト1周。エブリバデー燃え尽きろ。ラスト1周。ゴーゴー」。

この展開に経験の浅いジュニアは焦ったようです。コーナーで痛恨の転倒。そのうえ、いきなりマシンが大爆発というおまけつき。え、なんで最終ラップで、ガソリン満載なのかって。いや、そんなこと気にしちゃいけません。イキオイがあればいいんです。イキオイが。そしてもちろんイキオイがあるのは草刈正雄。コーナーの切りかえしでとうとうゼッケン1の前に出ました。ジリジリと差をつけ、そして最後の直線。馬力で勝るゼッケン1のワークスマシンは、あらためてゼッケン62に迫っていきます。いけるのか。いけるのか。ゴーール。鼻の差でゴールラインを先に通過したのはゼッケン62、草刈正雄のマシンだったのです。

レベッカさんがうれし泣きをしている中、ウイニングランを終えた草刈正雄のマシンに観客が殺到します。うおおお。いや、すごい人数なんですけど。エキストラ何人いるんだ、これは。と、そんな中、ひっそりと救急車に運ばれていくジュニア。いつの間に抜け出したのか草刈正雄は言います。「地獄を見たかい。また戻ってこいよ」。

全ては終わりました。今は観客も去り、静かなSUGOサーキット。トランスポーターのトラック、ゼッケン62のマシン。そしてBMWがサーキットの上に並んでいます。「じゃあ行くよ」と言う奥田瑛二に、草刈正雄は万感の思いを込めて答えます。「2年間、ありがとう」。ブロロー。BMWに乗って去っていく奥田瑛二一家。って、ええっ?BMWあげちゃったの。っていうか、草刈正雄はトラックで帰るのか?と思いきや、そのままゼッケン62のレースマシンに乗って去っていく草刈正雄。たぶん、サーキットから外に出た瞬間、お巡りさんに捕まると思います。

テロップが出ます。
世界選手権ロードレース-500ccクラス- 北野晶夫
第1戦フランスGP リタイア
第2戦オーストリア リタイア
第3戦イギリスGP 15位
第4戦スペイン 6位
第5戦イタリア 2位
第6戦オランダTT 1位
第7戦ベルギーGP
7月2日午後3時11分 スパ・フランコルシャンサーキットにて北野晶夫死亡


大藪春彦の作品である以上、「絶対に」原作の半分は北野晶夫のおちんちんがらみだと思いますが、角川監督は、そこらへんうまくボカして、気持ちのいいレース映画を作ってくれました。繰り返しになりますが、レースシーンは最高にカッコイイです。オンボードカメラの迫力ある映像はシビれます。

もっとも、それ以外の部分に、「多少の」疑問が残るのも事実。
例えば草刈正雄が木の実ナナと一晩を過ごした翌朝のシーン。草刈正雄が窓の外を見ていると、そこに映るのが町なみと高速道路。すると「向こうから」BMWがやってくるのが映り、今度はBMWを運転している草刈正雄のカットに映ります。これはヨクナイ。この場合、BMWの後ろ姿を映し「向こうへと」去っていくようにすると、窓のカットから車中のカットまで視線の動きが一定になり、安定したシーンになると思います。

これ以外にも、おそらくはイメージ重視、カッコよさ重視で、カットを無造作につなげているシーンが散見されて、さすがデビュー作だし、技術的に荒いなあと思ったりする部分も多いです。もっとも、そういう角川監督を僕は嫌いじゃありません。照れずに、キッチリとカッコつけたシーンを撮るのも才能ですからね。観ている方が恥ずかしくなって、悶絶するのも、また良しです。

しかし、ひと言だけ。

どんだけ草刈正雄の尻が好きなんですか。

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【映画】子連れ狼 冥府魔道

2011-07-27 | 邦画 か行
【「子連れ狼 冥府魔道」三隅研次 1973】を観ました

おはなし
黒田藩のお世継ぎ騒動に巻き込まれる拝一刀(若山富三郎)。いっぽう、大五郎は大五郎で、思いっきりシバかれてしまい……。

若山富三郎版「子連れ狼シリーズ」の第5弾。サブタイトルの割には冥府魔道度の少ない作品です。というか、正確に言うと捨てネタを集めて、無理やり一本をでっち上げたような作品。個々のエピソードがバラバラな感じで、ちょっと残念。

ゴトゴトと乳母カーを押して歩いている拝一刀(若山富三郎)は、滝に打たれている修験者らしき男を見つけました。そして、男のものでしょうか、横に置いてある笠の中には、牛頭馬頭の描かれた布きれが。おお、これは子連れ狼を呼び出すヒミツのサインじゃありませんか。さっそく滝壺に降り、男に話しかける若山先生。

「卒爾ながら、その笠に下げたる牛頭馬頭の絵。子連れ狼をお探しか?」
男(戸浦六宏)はクルっと振り返り言います。「お手前が?」。「そう呼ばれておる」と若山先生が返事をした瞬間、戸浦六宏は斬りかかってきましたよ。しかし、若山先生の条件反射でサクっと斬りかえされてます。かなり弱めです。

「さ、さすがは子連れ狼こと元公儀介錯人、拝一刀どの。百両ござる。一殺、五百両と聞き及ぶ。刺客引き受け料の、これは5分の1。お受け取り願いたい」

「刺客依頼のための腕試しか」。そうそう、よくいるんです。無謀なチャレンジしてくるやつが。

「お手前を探し出すため、藩中の手練れ16名が、このように牛頭馬頭の絵をぶらさげて国元を発し、東海道および水路・海路に散ってござる。それがしは筑前、黒田家中にてあや、綾部右近と申す」

さらに、刺客引き受けの条件である「裏の事情」の説明も、残り4人の侍が若山先生に勝負を挑み、負けたら百両ずつ払って、説明するらしいです。それも、次の侍はあそこにいるよ!みたいな情報はゼロ。会えるかどうかは運しだい。勢い余って即死させたら、はいソレマデヨ。なんていうか、不確実すぎますよね。黒田家には、剣の手練れはいても、頭脳の手練れはいなかったんでしょうか。

ま、ともあれ目印になるという、オシャレな数珠ネックレスを渡して戸浦六宏は死に、若山先生は再び、ゴロゴロと乳母カーを押しながら旅を続けるのです。ゴロゴロ。ゴロゴロ。とある門前町にやってきた若山先生。寺院の塀に、ひとりの乞食がいますよ。もっとも、笠に牛頭馬頭の絵をぶら下げてますけど。これは、もしかして。チャリンと小銭を欠け茶碗に投げ入れると、案の定、乞食が話しかけてきました。「それがしは綾部右近と同じく、黒田藩近習頭、泉数馬と申す」。いや、どうみても、その顔は志賀勝。泉数馬なんてコジャレた名前が「まったく」似合ってないんですけど。ともあれ、そのカズマは伝書バトをカゴから離すと、「次なる刺客依頼人への連絡でござる」と言うのでした。ははあ、なるほど。手練れ16名のうち、志賀勝は単なる連絡要員なんですね。なるほど。

ということで、志賀勝から連絡をうけた刺客依頼人(石山律)が登場。「黒田家中、最上周助。未熟僭越ながら腕試しさせていただく。それがしに勝たれた場合は、その百両をお収めの上、お手数ながら数珠をかけられ、先に進まれい」「承知」。とりゃー、二刀流で斬りかかる石山律ですが、若山先生は得意の卑怯な手、刀投げを。えいっ。ひゅぅーグサっ。「筑前黒田五十二万石のご藩主は五歳の姫君でござる」「もし、このこと、ご公儀に知れればお家は断絶。姫を姫を、くっ」ガクっ。いや、姫をどうしろと。殺せばいいの?

夜、若山先生がたき火でトウモロコシを焼いていると、小柄(こづか)がパシュパシュと飛んできて、トウモロコシにぶっ刺さりました。「三人目の御仁か」と聞く若山先生に、男(内藤武敏)は答えます。「黒田家中、馬渡八郎と申す。百両はそれがしの懐中にござる。勝ち取られよ」。「承知」と言いつつ、ヤリを突き出す若山先生。うわっ、内藤武敏、一発でやられてるよ。やはり劇団民芸系ではアクションはムリだったか。

ま、それはともあれ、たき火に倒れこんだ内藤武敏は言います。「命が尽きるまでは、まだ間がござる。刺客依頼の裏の事情を息の絶えるまでお話いたそう」。いや、それより燃えてます。体が燃えてますってば。そんな燃える男、内藤武敏が語るのは、こんな話。元藩主が側室を寵愛し、どうしても、側室との間に生まれた、まだ五歳の子に後を継がせたくなった。と、ここまではよくある話だけど、問題は正妻との間にすでに嫡男がおり、側室との子は娘だったこと。そのうえ、元藩主は近所のお寺のお坊さん・慈恵和上に、娘を藩主にするというお墨付きを渡してあるとか。いやもう、自爆もいいとこな行動です。なにがしたいのか分からない。

さらに旅を続けている若山先生。今度は、向こうから男(山城新伍)が歩いてきましたよ。すわ、こいつが刺客依頼人、と思ったら、「お待ちなさい。この先の池に物騒な浪人がおりやす。箱車を押した子連れの浪人を待ち伏せているらしいんで。もし、旦那を狙ってるんなら、及ばずながら、あっしが助っ人させてもらいます」とか親切なことを言っています。おかしいなあ。この山城新伍は単なる親切な通行人なのかなあ。

山城新伍の情報どおり、池のほとりに刺客依頼人(天津敏)が待っていました。「黒田家中、菊池弥門と申す。ご貴殿、元公儀介錯人、拝一刀どのと申さば水鴎流の名手と聞き及ぶ。その奥義たる波切りの太刀なるものを見せてはいただけまいか。この目でしかと見届けておきたいのでござる」。しょうがないなあ。ちょっとだけだよ。ずぶずぶと池に入っていく二人。さあ、抜刀します。上段に構える天津敏に対し、徐々に腰を沈めていく若山先生。右手に持った刀も、今や水の中。と、天津敏が斬りかかろうとした瞬間、意外や意外、若山先生の刀が左側から飛び出しました。不意をつかれて斬られる天津敏。そう、波切りの太刀とは水中で、こっそり刀を持ち帰るという、なんていうかトホホな奥義だったみたいです。「お墨付きは慈恵和上が……」と天津敏は苦しい息のもと、語りだします。その語るところによれば、元藩主が尊崇していた慈恵和上とは、実は幕府のスパイマスター。そして鎌倉にある寺の落慶法要を名目に、すでにお墨付きを持って江戸に向っているとか。

ブクブクと天津敏が沈んでいくと、そこに、親切な山城新伍がやってきましたよ。「お疲れでしょう。どうです、良かったらお茶でも」「いただこう」。あ、お茶を飲んだ若山先生が、ズッテーンとひっくり返ってます。うむ、あまりにお約束な展開だ。山城新伍は笠から折りたたまれていた牛頭馬頭の絵を「わざわざ」引っ張り出し、「いかに拝一刀どの。やはり隙がござったな。キレンゲツツジとトリカブトの猛毒を混じた茶を飲んだ以上、もはや助かるすべはない。われらあらゆるすべで貴殿を試す所存でござった、お許しくだされ。筑前黒田家中、小石勘兵衛、とどめを仕る」グサッ。と、刺されているのは山城新伍の方。そして若山先生はプッとお茶を吐き出しています。さすがです。

「じ、慈恵和上を斬って、お墨付きを。お墨付きは慈恵和上が手に持つ経筒の中に」くわっ。

ということで、旅の途中の慈恵和上を追って、とある大寺のある町にやってきた若山先生。さっそく、慈恵和上がお経をあげているところに忍び込みます。刀のつかを握り、「お命頂戴仕る」と言った瞬間、しかし、BGMがヘンなサイケサウンドに。ぬぬぬ、刀が抜けないっ。と、慈恵和上(大滝秀治)が、いかにも大滝秀治な感じで言い出しましたよ。
「無であるものを斬ることはできぬ。主観と客観をひとつにし、己を忘れ、無と己をひとつになし、内外打成の一片となったこの身を斬ることはできぬ。仏に会うては仏を殺し、父母に会うても、これを殺す。しかして無じゃ。ただ刺客道の無門関たらん」。はあ?なに言ってんの、って感じなんですけど、とにかく大滝秀治の、あの錆びたような声で言われると、なんかスゴイ気がしてくるのが不思議です。

そんなこんなで、若山先生がスゴスゴと逃げ帰っている間、大五郎は乳母カーを抜け出し、町の探索に励んでいます。折しも夏祭りの真っ最中。ろくろ首などの見世物、金魚釣り、子供の喜ぶもの満載です。と、ここでもう一人というか二人。夏祭りを満喫している者がいました。江戸から来た美貌の女スリ、早変わりのお葉(佐藤友美)と、その子分、ほくろの留吉(潮健児)です。あちらこちらで財布をスリとっては、後ろ手で、子分の潮健児に渡していく佐藤友美。これなら、仮に騒がれても肝心の財布を持っていないんだから、安心というものです。しかし、この町には、そんな佐藤友美をはるばる江戸から追ってきた、名岡っ引き・心の字の洗蔵(山内明)もいたのでした。って、この映画は、何の映画だっけ。

さて、快調にスリまくっている佐藤友美ですが、侍からスった財布を潮健児に渡そうと思ったら、アレレいないわ。そう、常に背後にいて財布を受け取るはずが、立ちションベンをしてて、いなかったのです。むきー。さらに間の悪いことに、侍がスラれたことに気づき、「あの女、スリだあ。スリだあ」と叫びだしました。その声を聞きつけ、岡っ引きの山内明までダッシュしてきます。ど、ど、ど、どうしよう。路地を逃げまくりながら、あたりを見回す佐藤友美。あっ、あんなところに子供が。それもトロそうなのが一匹。早速、大五郎に駆け寄り財布を握らせ、佐藤友美は言います。「坊や、イイ子だからちょいとコレ、預かっといとくれ。ねえ、誰にも言うんじゃないよ。約束だよ」。スタタと逃げ去った佐藤友美を見るでもなく、大五郎はキリリとした表情で、お財布を持って棒立ちしているのでした。もちろん、後を追ってきた被害者や山内明たちにとっ捕まる大五郎。
「それはワシの紙入れだ。おのれ、小童」「なあぼうず。どんな姉ちゃんがこの紙入れをおめえに預けていった。おいちゃんに教えてくれ」。しかし、完全黙秘を貫く大五郎に、「こいつは臭えな。もしかしたら、お葉の身内かもしれません」と山内明は疑いの目を。ま、そりゃそうだ。よーし、公開敲き(たたき)をするぞぉ。

はい。まるでエルサレムの群集の前にイエスが曝されたように、群集の前に曝される大五郎。ほら、白状しないと叩いちゃうぞ。しかし、大五郎はギロリと睨むだけで、何も言おうとしませんよ。「この子は怯えもせぬ」「恐ろしく気丈な子だぜ」とみんながどよめいている中、執行人が棒を振り上げましたよ。と、その時、群集の中から佐藤友美が飛び出してきました。「お待ちくださいませ。あたしが早変わりのお葉です。どうか、その子を」。これには岡っ引きの山内明もニンマリ。「よく名乗りでたな、お葉。名乗りでたからにゃ、お上にもご慈悲というものがあるぜ」。しかし、ここで問題が。唯一の証人である大五郎があくまで口を割らないこと。「なあぼうず。おめえが紙入れを預かったのは、あのお姉ちゃんだな」「違う」「ぼうや、なぜ」「違う」。キリリとした表情で、「ちぃーがうっ」と言い続ける大五郎に、みんな困り顔です。えーと、どうする。うーん、叩くしかないかなあ。とりゃっ、ビシィーっ。とりゃっ、ビシィーっ。叩かれる大五郎の姿に、みんなドン引き状態。と、山内明は思いつきました。「お葉。てめえ紙入れをこの子に預けるとき、なんて言ったんだ」「ただ、預かっといとくれと。誰にも言うんじゃない。約束だよ、とも申しました」。ピーン、それだっ。この全員がドン引きの状態を脱するにはそれしかない。このぼうずは約束を守ろうと口を噤んでいるんだ。なーんてエライ子なんだろう。ねえ、みなさん。なんかよく分からないまま、帰ることを許される大五郎。もう、群集も拍手で送っちゃいますよ。パチパチ。あ、群集の中に満足そうな顔をした若山先生がいるのはヒミツです。

乳母カーに戻って、若山先生と合流した大五郎。「ちゃん」「……」。無言のまま大五郎を手をつないだ若山先生は、残った手で乳母カーを押しつつ、夕日の中を歩いていくのです。

ま、それはともあれ、大滝秀治ボイスに負けた若山先生は、荒れ寺の御堂で瞑想中。と、そこに色っぽい女がやってきたのです。「黒田藩、松丸君つき不知火」と名乗った女(安田道代)は、若山先生に鎖攻撃を仕掛けてきました。腕に、そして首に、鎖がからみつき、微妙にピンチな感じの若山先生。「なにゆえ挑まんとする。これほどのことをする理由、申されよ」。それに応えて三味線から五百両を取り出した安田道代は、驚く依頼を口にするのでした。「斬っていただきたいのは、五歳の御子、その父、その母」。さあ、子供を斬れるの?と挑発的な安田道代に若山先生は、低い声で答えます。
「我ら親子、共に選びし修羅の道なれば、六道四生順逆の境はもとより覚悟のうえ。冥府魔道に生きておる」。

しかし、まずは大滝秀治をどうにかしないといけませんね。ちょうど、大滝秀治と、そのお供たちは五六艘の舟を連ねて川を渡るところ。対岸にはお墨付き受け取りのため、柳生烈堂(大木実)が待ち構えており、今がラストかつベストチャンス。さっそく、着物を脱ぐ若山先生。髻を解いてザンバラになった髪、そして乳まで隠す下着を見ると、まるで太った水着ギャルみたいなのが、骨の髄まで笑えます。とまれ、乳母カーを川にドボンと入れた若山先生は大五郎に言います。「大五郎。冥府魔道に入る」。ざぶん。川に潜った若山先生は、そのまま潜水状態で、大滝秀治の舟の真下に。そして、巨大ガラス切りのような物体で、船底を丸く切りはじめました。ギーコ、ギーコ。その丸く切った穴の中心に座っていたのは大滝秀治。ちょうど底が抜けた瞬間、「良きかな、道を究めし者。良きかな、無門の関」とつぶやいた大滝秀治は、そのまま垂直に川に落ち、若山先生に刺し殺されるのです。

経筒を奪取した若山先生は、ピチピチとシャケが跳ねるように柳生と戦いつつ、冥府魔道からの脱出を図ります。しかし柳生烈堂だって負けてはいません。「おのれ、拝一刀を討ち取れ」。うわああああ。ワラワラと押し寄せる裏柳生のみなさん、しまった、かこまれた。このままじゃ。と、その時、面頬(戦国マスク)を付けた謎の騎馬隊が突っ込んできましたよ。「拝どの、ここは我らがお引き受け申す」。これがまた強いのなんの。ヤリを手にして、ザクザクと裏柳生のみなさんを突き殺していきますよ。思わず隠れていた烈堂はつぶやきます。「黒田面頬衆」。

お言葉に甘え、せっせと着物を着て、太った水着ギャルから子連れ狼に戻る若山先生。しかし、その隙に敵忍者が大事な経筒を奪ってしまいました。と、そこに忍者装束の安田道代が「拝さま、経筒はわたしが」と登場。シュタタタと敵忍者を追いかけていきます。頑張れよー。ちなみに、あれはスリかえた偽物だけど。

ということで、どこかの荒れ寺で若山先生がまったりしていると、天井裏から安田道代の声が聞こえてきました。「不知火でございます。黒鍬の後を追って、烈堂の宿所に参り、拝さま、鮮やかなお手並み、しかと見届けました。それにつき、今ひとつお願いがございます。事の仔細を問わずお聞き届けくださいますでしょうか」。まあ、翻訳すると、無駄足ふませやがって、言うこと聞けやコラってことですね。仕方ありません。「申されよ」と若山先生が答えると、天井から指示が飛びます。
「されば、そこにお持ちのお墨付き、お出しくださいませ」
はい出しました。
「お開きください」
はいよ、開いた。
と、そこに天井から謎の液体がしたたってきて、お墨付きの文字が、にじむわけでもなくあっという間に消えていくじゃありませんか。とりあえず安田汁と命名しておきますが、これは、いったい何の液体でしょうね。そして、最後に「拝さま、そのまま黒田にお持ちくださいませ」という声と共に、安田道代は安田汁をみやげに消えたのです。

と、そこに、今度は黒田面頬衆がやってきました。リーダー(須賀不二男)はお墨付きをくれと言い出します。さあ、困った。ちょっと前なら、お墨付きを渡して、ミッション完了だったんだけどな。安田汁のおかげで、今じゃお墨付きも単なる真っ白な紙になってしまいましたから、これを渡すわけにもいきません。仕方ない、安田道代が言ったとおり、これは自分で届けよう。

ばばーんと砂漠が映り、そこを馬で疾走する黒田面頬衆と若山先生。あ、もちろん乳母カーもソリをつけて、若山先生が引っ張っています。と、砂丘の向こうから、ギラギラと光が。うわっまぶしい。これは柳生のソーラ・システム。っていうか、みんなで刀で太陽光を反射させてるんですけどね。「拝どの、ここは我らが。いっときも早く黒田へ」。じゃあ、お言葉に甘えて。ハイヨー。パカラッパカラッ。

やってきました福岡城の大広間。左右には家臣が居流れ、中央には元藩主・黒田斉隆(加藤嘉)、松丸君こと実は姫君な5歳児、そして愛妾が並んでいます。「刺客子連れ狼こと拝一刀。これなるは一子、大五郎。ご当家ご依頼のもの、持参のうえ、ただいま推参仕った。お受け取り願いたい」と若山先生は折り目正しく挨拶をして、ついでにイヤミっぽく言います。「黒田ご藩主。松丸君はいずこにおわす」。家老(岡田英次)があわてて、「松丸君は御前に」とフォローしてみるものの、「それにござるは浜千代さま」と若山先生はフフンです。

まあ、そうなると、ああだこうだの後、「斬り捨てい」ってことになるわけで、お楽しみのチャンバラタイム。若山先生は華麗な剣さばきで、再び登場の志賀勝やらをバッサバッサと斬り捨てていきます。もう、イキオイ余って、胴体の輪切りとかもしちゃいますからね。まさに血まみれな感じ。最後には、リーダーの須賀不二男を倒し、ひと段落。ふう、今日もいい汗かいたぜ。

と、大広間でスプラッターな血まみれ大会が開かれている間、加藤嘉たちは、家老の岡田英次に案内され、御霊屋に逃げ込んでいました。さあ安心。と、そうではなかったようです。というのも、ここで家老は加藤嘉たちに切腹を「おすすめ」していますから。「とのっ」「いやだ、切腹はせんぞ」「殿、ご切腹を。なにとぞ、なにとぞ」。言葉のわりに、刀を持ってグイグイと腹に刺そうとしてくるから、真面目な家老はコワイ。「殿。お家のためでござる、なにとぞ」。と、そこに血まみれ大会を終えた若山先生も合流。あ、先生、介錯しちゃってください。こころえた。とりゃあ。加藤嘉の首がごろんごろん。浜千代姫と愛妾の首もごろんごろん。真面目な岡田英次は、丁寧に3つの首を並べて言うのです。「さすがは黒田候。名君でござった。立派にご切腹してお果てなされ申した」。

幽閉から解放されたホンモノの松丸君が見守るなか、乳母カーを押して去っていく若山先生。と、砂浜に着くと、そこに安田道代がいましたよ。ギロリ。安田道代を見た若山先生は言います。「不知火どの、陰腹を召されたな」。と、ここで念のため説明。陰腹とは、家臣が主君を諌めたりする時に、事前にこっそり自分の腹を切っておくこと。これで「私心のなさ」と「命がけ」であることを示すわけです。ま、それはともあれ、「拝さま。亡き殿のおあとに従い、これより黄泉の国へ、お供仕ります」という安田道代を残し、若山先生は小舟を漕ぎ出します。ギーコ、ギーコ。海に入って、それを見送っていた安田道代がくずおれると、海には真っ赤な血の色が広がるのでした。


単純に考えて、5人の刺客依頼人のエピソードは、連載漫画のネタ向きです。これなら、最低5回分は引っ張れるみたいな。また大五郎のエピソードも、唐突にとってつけた感じが否めません。そういった部分を除くと、このストーリーは、おどろくほど平板。拝一刀が依頼を受けた。斬った。終わり。なんですよね。

その分というか、出演者は多彩。佐藤友美と安田道代のダブルヒロインに始まり、大滝秀治、加藤嘉、内藤武敏、山内明など劇団民芸系の演劇人。そして東映の映画かと思うような、大木実、山城新伍、潮健児、志賀勝、天津敏といったメンバー。ついでに、ホンのちょい役で岡田英次まで出てくるんですから、これはどこのお正月ですか、って感じでした。

まあシリーズの中では、箸休め的な作品だと思っていただければ。


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【映画】子連れ狼 親の心 子の心

2011-06-17 | 邦画 か行
【「子連れ狼 親の心 子の心」斎藤武市 1972】を観ました

おはなし
拝一刀(若山富三郎)が、おっぱい刺青娘(東三千)、脱藩の謎を探ります。

今回はちょっと毛色が変わって、刺客の依頼を受けた拝一刀が、おっぱいに刺青を入れた脱藩者を探すという、探偵ものみたいな趣向。結果的に拝一刀がいまいち目立てずに終わった感じです。


ドドーンというほど巨乳でもないものの、いきなりオッパイ(刺青つき)のどアップ画像からです。しかも、これを撮っているのが日本映画界の至宝、宮川一夫カメラマンだと思うと、さらにアリガタイ気分に。
「脱藩者・雪、上意により討ち取る。覚悟っ」。
掛け声とともにカメラが引くと、そこには鳥追笠を目深にかぶり、上半身スッポンポンの女を取り囲む3人の侍が。とりゃー。一斉に斬りかかる侍の攻撃をひらりひらりとかわした女は、瞬く間に三人を斬り殺しました。そして、ゆっくりとカメラにオッパイを見せつつ、侍たちの髷を切り取るのです。えーとヘンタイ?

「お願いでございます。なにとぞお雪を」。そう言いつつ平伏する武家の女。拝一刀(若山富三郎)はムッツリと答えます。「刺客引き受け五〇〇両」。なんか、ここで「キャアーーーッ」とヘンな叫び声が流れて、オープニングタイトルに。ちなみに、テロップを見ると、プロデューサーが前作までの勝新太郎に代わり、若山先生ご自身になったみたいです。

「刺青は、こうやって左の親指で、皮膚をきつーく押さえやす」とか言いながら、若い女の肌にスミを入れているのは、彫り物師の字之吉。しかし演じているのが、内田朝雄なもんで、どうみても仕事をしているというよりヘンタイプレイをしているようにしか見えません。ちなみに、悪い朝雄のもうひとり、コロンボな小池朝雄も後で出てきますよ。ま、それはともあれ、ここは彫り物師の仕事場。お雪の行方を探るべく、若山先生は聞き込みをしているのです。「いい女でしたねえ。あんな肌にスミを入れたのは、後にも先にも初めてだ」と嬉しそうな内田朝雄。「それ、そこんとこにすーっと立ちやしてね」ポワワーン。

内田朝雄は回想します。紫の御高祖頭巾で顔を隠したお雪(東三千)が部屋に入ってきました。するっ。着物を脱ぎオッパイ丸出しに。あれ、こんなのをどこかで見たことが……。うーむ。そうだ、「けっこう仮面」です。まさに頭隠して、身体隠さずな感じだし。
「何でもいいから人の意表を突き、あっと魂消るようなものを彫ってくれと言うことでやした。心の臓が止まるほどに恐ろしい、おどろおどろしたものでも、また男衆が狂おしいまでに欲情するようなものでも、とにかく思い切ってやってくれとの頼みでやした。しかも胸と背中(せな)の両方に。背中にゃ山姥を、胸にゃまさぐりの金太郎童子を彫りこみやした」。当然、内田朝雄の回想中は、画面はひたすらオッパイ、オッパイ、またオッパイ。ともあれ、彫っていれば体に触るわけで、その筋肉の付き方から、女は武芸に秀でた別式女だと断言する内田朝雄。「それにしても、武家出に違げえねえ女が、背中に山姥。前にまさぐり金太郎の彫り物を一生背負っていくなんざ、どういう了見でござんしょうかねえ」。いや、どういう了見も何も、彫ったのはお前だ。それも、こともあろうに「まさぐり金太郎」。

ともあれ、内田朝雄は余計なことはいっぱい思い出すくせに、肝心なことはサッパリ。とんだ無駄足を踏んだなあ。いえいえ、そうではありません。実は無駄足どころの騒ぎじゃなかったようです。なんと若山先生が聞き込みをしている間、外で待たせておいた大五郎が「迷子」になるという大事件が発生していたのです。

ことの起こりは、楽しげな三河万歳がやってきたこと。土地の子供たちが、楽しそうに三河万歳を観ているのを見て、いくら「お利口さん」な大五郎といえども誘惑には耐えられなかったようです。ついフラフラと三河万歳にくっついて行っちゃいました。ほとんど、ハーメルンの笛吹き男の世界ですね。そして、気づけば、あれココどこ?な状態に。「だいごろー」「ちゃーん」。お互いの言葉は届きません。さあ、どうしよう。「♪しとしとぴっちゃん、しとしとぴっちゃん♪」、うわ、寂しい歌まで流れてきたし。

ずんずん田舎方向に彷徨っていく大五郎。とナレーションが聞こえます。「父が古寺を一夜の宿にする時の多いことを知る子であった。刺客の任を果たした父が必ず仏の前に座すことを知る子であった」。ということで、大五郎は荒れ寺に入ってみることに。すると、あ、男の人が背を向けて座っている。ちゃんかも。そんな喜びもつかの間、男はぴよーんと後ろ向きにジャンプしたかと思うと、いきなり刀を抜いてきましたよ。しかし、大五郎はこれくらいでビビる子ではありません。むしろ睨みます。ぎろーっ。「その目。生と死の間に己を置いて無と化す剣客の死生眼のような、幾多の死地、修羅場を潜り抜けてきた者だけが持つ目」と、ひとり勝手にしゃべり続けるのは、柳生軍兵衛(林与一)その人。ま、その人言われても困ると思いますが。あ、大五郎ですか、相変わらずガン飛ばしまくってますよ。ぎろぎろーっ。それを無視して、語り続ける林与一。「年端もゆかぬ子わっぱにそのようなものがあろうはずがない。私の目が鈍ったのか」。あ、大五郎、ナルシストおじさんに飽きたらしく、スタスタと出ていっちゃいました。

しかし、間の悪いことに近所の原っぱでは野焼きの真っ最中。「来年はいい畑になるぜ」「火をつけるぞお」。ぼぼっ。そんなところに大五郎は紛れ込んでいってしまうのです。独り言の好きな林与一は、大五郎を見つつ、つぶやきます。「あのまま進めば火に囲まれる。見過ごすわけにもいくまい。だが、あの死生眼を確かめるには、またとない機会」。じーっ。はい大五郎が思いっきり火に囲まれてます。「どうやら、わしの目に狂いはなかったようだ。これほどの火に囲まれても、助けを求めず、叫ぶでもなく、子供心にもはや逃れられぬと悟ってじたばたせぬは、げにも恐ろしき、その覚悟」。ゆっくりと火の中に沈んでいく大五郎をよそに「不思議な子に出おうたもの」クルッ。うわっ、後ろむいて去っていくよ、このヘンタイさん。

さて、野焼きのあとにやってきた農民のみなさんは、地面から子供の手が覗いているのをみてビックリ仰天。「子供じゃねえか」「野火に巻かれたんだ」「早く手当をしてやんねえと」。えっさほいさ。大五郎をかついで走っていきます。と、そこに「待てっ」とお武家さま、というかヘンタイ林与一だあ。「その子は?」「野火に巻かれて泥の中に潜っておったんで。早く手当をしてやんねえと」「自力で泥の中に潜って助かったと申すか」。クワッと大五郎を見つめた林与一は、「その子を降ろせ」と言いつつ、刀を抜き放ちます。ひぇーっ。逃げていく農民さんたちの代わりに、旅のお坊さんが止めに入りましたよ。「何をなさる。なぜ、頑是ない子に白刃を向けなさる」「確かめずにはおかん。斬るっ」。ざしゅっ。斬られちゃうお坊さん。大五郎はというと、拾った木の棒を斜めに構え、ヘンタイさんを睨んでいますよ。その構えを見て、「水鴎流斬馬刀。もしや狼の連れたる子」と驚きの声をあげる林与一。ピンポーン。「ちゃーん」。あ、若山先生です。大五郎を見つけた若山先生が鬼の形相でやってきます。わわわ、怒ってますよ。それもスゴク。

「拝一刀」「柳生軍兵衛か。やはり生きておったか」。ここで解説すると、この二人はかつて、公儀介錯人を決める試合で、激しく争ったんだそうです。そこで林与一はスルドイ突きを若山先生に寸止めして勝利。かと思ったら、その突きが将軍の方向に向いていたという理由で怒られちゃったそうですよ。つまり、将軍に対する突きを身を挺して止めた若山先生がエライ、ということに。これに困った柳生烈堂は部下を林与一の身代わりに切腹させ、林与一を放浪の旅に出したと。それにしても、公儀介錯人というのは、別に拝家が代々承っている職務じゃなかったんですね。たまにオーディションをひらいて決めるんだあ。ちょっとビックリ。

ま、それはともあれ、刀を抜きあう二人。チャキン、チャキン。刃を打ち合います。と、若山先生が得意のジャンプをかましました。ぴよーん。そして空中から愛刀の胴太貫を投げつけます。アターック。失敗。バレてました。しかしクルクルとニャンコ先生のように回転しながら、乳母カーの横に着地した若山先生は、めげずに乳母カーから仕込み槍を取り出します。ついでに、後ろ手にこっそり脇差を隠しているのはナイショ。おりゃっ。その隠していた脇差を投げつける若山先生。そして林与一がそれを刀で弾いているスキに一気に接近。ばさっ。林与一の片腕を切り落とすことに成功です。ぐ、ぐぬぬ。悔しそうなヘンタイさん。「斬れ、なぜ斬らぬ」「うぬは一度死んでおる。死んだ者を斬ったとて詮無き事」。スタスタと去っていく若山先生ですが、まあ、この時代、片腕ばっさりで放置されたら、まあ出血多量で死亡ですよね。ちなみに迷子になった大五郎はよっぽど寂しかったのか、乳母カーに乗らずに、若山先生にだっこしてもらってます。やっぱり幼児だね。

さて、いつもの「本筋には関係ないけど、追っ手が襲ってくる時間」がやってきました。今回の現場は荒れ寺の本堂。若山先生が入ると、両脇にずらりと仏像が並び、正面には立派な阿弥陀如来が。若山先生は、スタスタと進み、阿弥陀如来の前に額づいて言います。「阿弥陀如来に申し上げる。我ら親子、六道四生順逆の境に立つもの。父母に会うては父母を殺し、仏に会うては仏を殺す。喝あーーーーつ」。阿弥陀如来像を真正面から切り下げる若山先生。そして、仏像はパッカリ割れて、中の忍者さんもパッカリです。ざわざわ。ざわざわ。一斉に動き出す仏像たち。ほとんど江戸川乱歩な世界ですが、これもみんな忍者さんの変装。というかコスプレ。そんな仏像メイクな忍者さんの手足を、若山先生は快調に斬り飛ばしていきます。ごろごろ。ごろごろ。残ったのは芋虫状態の忍者さんたちです。おっと、今度はお堂の外から尺八のメロディが聞こえてきましたよ。外に出てみると、虚無僧コスプレな忍者さんたちがズラリ。一斉に尺八から矢を撃ってきます。ささっ。その攻撃をかわしつつ、若山先生も応戦。乳母カーに仕込まれた矢を撃ちまくります。バシュ、バシュシュ。う、うわーっ。さらに残りを斬り殺しつつ、最後の虚無僧忍者を真正面から唐竹割。とりゃー。しかし、最後の忍者さんも頑張りました。真剣白刃取りで刀を受け止めていますよ。ぬぬっ、やるな。じゃあ、これでどうだ。力をグイッと入れる若山先生。ずり。ずり。若山先生の馬鹿力に押され、下がっていく刀。じわっ。じわっ。忍者さんの脳天に食い込んでいきます。そして。ぷっしゅー。はい、血の噴水だよ。

殺戮タイムも終わり、ゴロゴロと乳母カーを押していく若山先生。おや、いかにもオープンセットくさい村にやってきましたよ。それにしては、なぜか大道芸人さんばかりいるのが不思議です。と、ここでナレーション。「その頃、非人とは異なり、何がしかの大道芸を売って生きる連中を乞胸と呼んだ。鳥追い、辻能。辻芝居、江戸万歳、辻浄瑠璃、辻講釈などなどである。彼らは乞胸仁太夫の支配下に属し、全国的な組織を持つ特別の集団であった」。ふうむ、つまりここは大道芸人さんたちのパラダイスなんですね。

そして、そんなパラダイスに闖入してきた若山先生は、異物もいいとこ。まして、大道芸人さんたちのネットワークは、若山先生がなぜここに来たのかも察知しているようです。「尾張藩の雇われ刺客なんぞに、お雪をやられてたまるかってんだ。やれっ」。と、そこに「静かにせんか」と声が響きました。そう、乞胸たちを束ねる乞胸仁太夫(山村聡)その人です。

客間に向かい合う山村聡と若山先生。「お雪を探し出して、斬る所存かの」「刺客に他の目的はござるまい」「あんたのような手練れに狙われるとは、あれも不憫な奴よのう」。そう言いつつも、山村聡は話し始めます。「いかにもお雪は乞胸ものであった。幼少より小太刀を習い、その技を芸として大道で売った」ぽわわーん。りりしい姿で、小太刀の技を披露しているお雪こと東三千が映ります。というか、けっこう仮面状態じゃないのは初めてかも。「そのお雪の小太刀さばきが、折からお忍びで散策中の尾張候のお目に留まったのじゃ」。ということで、尾張藩に召し抱えられ、小太刀を教える別式女となった東三千。しかし何ゆえに脱藩し、追っ手を斬り殺し続けているのかは、山村聡も知らないそうです。そうは言いつつ、お雪がいるだろう温泉の場所を教えてくれる山村聡。ただ、最後に「拝さま。お雪はわしの娘じゃ」とかボソっと言うんですけどね。ボソっと。

さて、その温泉では東三千が「いい湯だな」の真っ最中。しかし、思い出すのは憎っくきアイツのこと。ぽわわーん。はい、東三千は道場で孤塚円記(岸田森)と対峙しています。「わしに立ち会いを挑むとは笑止」「ほざくな、そのマヤカシの殺人剣の正体を見極めずにはおくものか」。かたやヘンタイ風味全開の岸田森、かたや白鉢巻に白襷もりりしい東三千ですから、もう岸田森が悪いことに決定。ま、それはともあれ、構えた刀からボッと炎を出す岸田森。なんとヘンタイの上に魔法まで使うとは、まさに魔法剣士ですね。そして、その炎についつい見とれてしまう東三千に、岸田森は言います。「どこを見ておる。火を見てるぞ。そなたは敗れるぞ。フフフ、火を見るな」。そりゃあそうです。炎に幻惑されてはいけませんね。「目を見るのだ。火を見るな」。なんて、岸田森って親切なんでしょう。アドバイスに従って、岸田森の目を見る東三千ですが、実はそれこそが岸田森の手口だったのです。目を見ているうちに催眠術にかけられてしまう東三千。はっ!気づいたときには素っ裸にされ、岸田森にオッパイを揉まれていたのでした。それもイヤラシイ手つきで。もーみもみ。

ぽわわーんな回想を終えた東三千。と、いきなり目の前で、若山先生と大五郎がノンキにお湯に浸かっていますよ。げげっ、いつの間に。さらに、大五郎は無邪気な顔をして近づいてきて、黙々と東三千のオッパイを揉んでいます。「母のない子ゆえ、ご容赦願いたい」と渋く言う若山先生。でも、これが若山先生と大五郎父子、言い換えれば冥府魔道親子の手口ですからね。大五郎の愛らしさに騙されて、先生に斬られるというのが。ほら、若山先生は後ろ手にこっそり刀を持っているし。しかし、あまり心配することはなかったようです。さすが小太刀の達人な東三千は、とっくに若山先生の悪巧みなんか見破っていたようですよ。若山先生をガン無視して、さっさと着物をきています。そして東三千が着終わると同時くらいに、「脱藩者雪、上意によって討ち取る。覚悟ぉ!」と尾張藩のみなさんが斬りかかってきました。そして、すごいイキオイで全滅しました。なんだったんだ。

お風呂から出て、着物をきた若山先生に東三千が言います。「あなたさまが私を追っていることは聞いておりました。刺客子連れ狼のお名も」。さすが、大道芸ネットワークはスゴいですね。「尾張藩士たちの髷を切り落とした、その理由が聞きたい」「私は尾張藩脱藩者。激怒した尾張候が上意討ちの追っ手を差し向けるは当然のこと。その追っ手の髷を切り落として送り届ければ、やがて私が倒さんと願っている孤塚円記が、追っ手として差し向けられて参りましょう。それゆえに」。ええっ、そんな理由で。「ならば聞くが、髷を切り落とされし者の家名は断絶、残された家族は恨みを飲んで自害し果てた者もいる。その者の恨みはどうする」。いや、若山先生、いいこと言った。これじゃ、東三千、キミもまた立派なヘンタイだ。

と、そこに誰かやってきました。東三千がハッと振り向くと、そこにはヘンタイ魔法剣士、岸田森がいたのです。「孤塚円記、とうとう参ったか」「フフフ。また一段と美しゅうなったようじゃの」。ボッ。また刀から炎を出す岸田森。「どこを見ておる。火を見るなと教えたはずだぞ」。東三千はクラクラです。ううっ、炎を見まいと目を見れば催眠術にかけられちゃうし、ど、どうすれば。と、しかし、東三千には起死回生の秘策があったのです。えいやっ。小太刀を口にくわえ、着ていた着物をズリズリっと下げます。当然、そうなると、オッパイ丸出し。そして、同時にオッパイ周辺に彫られた、オッパイをまさぐる金太郎の刺青が。クワッ。ヘンタイ岸田森は、この刺青に視線釘づけ。そう、東三千への催眠術も解けてしまいました。その隙に、カンザシをバシュっと投げつける東三千。ズバっ。岸田森のおでこの真ん中、そこにカンザシが刺さり、同時に刀からの炎も止まりました、。よし、今だ。小太刀をドスのように構え、岸田森の懐に飛び込む東三千。グサッ。うわあ。はあはあ、やったよ。仇をやっつけたよ。

ちょっと待ってくださいね。今、オッパイをしまうから。よいしょ。はい、準備完了。東三千にはご苦労なことですが、今度は若山先生と戦っていただきます。よーい、スタート。スタタタ。ばしゅっ。はい、東三千サクっと斬られました。ポロリと小太刀を落としつつ、東三千は言います。「肌を見せずに死ねて、うれしい」がくっ。「キャアーーーッ」。なんか、オープニングにも流れたヘンな叫び声が、また流れましたよ。さっぱり、意味が分かりません。

「二度とそなたの体を、誰の目にも触れさせぬ」と、東三千を火葬する若山先生。お骨を持って、大道芸人のパラダイスに戻ります。待っていた山村聡は言いました。「わざわざお届けくださるとはかたじけのうござる。お尋ねいたすが、あれの最期は見苦しゅうはござりませなんだか」。「見事な最期でござった」と答える若山先生。うん、オッパイも出してなかったしね。そんなこんなで、思い出話もしたいしと、山村聡に引き留められ、若山先生は一泊することにしました。しかし、それがマズかったのです。

「円記とお雪を斬ったと申すか」と怒っている尾張徳川家の義直候(小池朝雄)。そう、柳生烈堂(遠藤辰雄)が小池朝雄にあることないこと、若山先生の悪口を吹きこんでいるのです。「これは幕府のみならず尾張候にまで弓引く魂胆かと思われます」「許さん。おのれぇ」。パカラっ。パカラっ。小池朝雄の命令で大道芸人のパラダイスに押しかけてくる尾張藩のみなさん。火縄銃まで持ち出して、彼らはヤル気です。拝を引き渡せぇ。引き渡さないとこうだぞ。ズダダーン。それに応えて、出ていこうとする若山先生を止める山村聡。出て行ってはなりませぬぞおお。えーと、それを見ていたお役人はメンドクサクなったようです。「無礼者めが」。それ、撃っておしまい。ズドン。うわわわー。撃たれた山村聡は、亡き娘への思いなどを語りつつ、最期に言います。「親の心、子の心でござろう。お雪が、お雪が早く来いと呼んでいるような……」。えーと、無理やりサブタイトルを言わせてるような気もします。

ま、それはともあれ、これには若山先生も軽くキレました。よーし、尾張候に物申してやるぞ。「尾張候にお目通りいたす。案内(あない)せい」。しかし、小池朝雄としては、罪人拝一刀を引き立てて来い、と命令したのに、やけに「威張った」若山先生がやってきたからビックリ。「狂うておるのか。その方。いったい誰に向かって、そのようなことを申しておるのじゃ」と、理解できないようす。でも徐々に分かってきました。えーと、この男、オレのことバカにしてね。そうじゃね。と、思ったら怒りがムクムクとこみあげてきました。「無礼者。余は徳川義直なるぞ。ここをどこと心得ておるっ!」。

はい、ここでシリーズお約束のシーン。若山先生は言います。
「我ら親子、冥府魔道に生きる者なれば、徳川も尾張も、葵の紋すら関わりなき者」。そして、「大五郎っ!」とひと言。カチリ。先生に応えて大五郎が乳母カーのスイッチを押すと、乳母カーからガトリング砲登場。ズガガガガガガガ。みんながビックリしているスキに小池朝雄を人質にして、名古屋城を脱出するのでした。

やってきたのは、採石場みたいなところ。いかにも最終決戦の舞台な感じがプンプンしてきます。ほら、周りの崖の上には敵がズラリ。こちらには人質の小池朝雄がいるというのにグレネードランチャーを撃ちまくってきましたよ。ひゅるる、ドカーン。ひゅるドカーン。「やめーい。撃つなあ」とか言っていた小池朝雄も、軽く消し飛んでいったようです。これはマズイ。このままだと本気でマズイ。覚悟した若山先生は大五郎に言います。「大五郎、よく聞け。父はこれより冥府魔道に入るぞ。もし父が還らぬ時は、お前もここで死ぬのだぞ。よいか」。うなづく大五郎を残し、乳母カーにダッシュする若山先生。ガトリング砲を崖上のグレードランチャー隊に乱射です。しかし、崖上の敵を倒したと思いきや、柳生烈堂と、配下の虚無僧軍団やら忍者軍団がワラワラと出てきました。「かかれっ」「応っ!」。襲い掛かる敵軍団に、若山先生はゲリラ戦で対抗です。塹壕を縦横無尽に駆け回り、敵を倒していく若山先生。なんで、こんなとこに塹壕があるのかなんて、聞かないでくださいね。必要だからそこにある、んです。たぶん。

ともあれ、若山先生は手傷を負いつつも、敵を倒しまくり、とうとう柳生烈堂と向かい合いました。「烈堂っ!見参」と先生が怒鳴れば、「推参!」と烈堂も答えます。とりゃあ。唐竹割を仕掛ける若山先生ですが、烈堂はそれを白刃取りで受け止め、かえって刀ごと先生を投げ飛ばします。しかし、先生はすかさずもう一本の刀で烈堂の目をグサッ。烈堂も負けじと、先生の胸をグサッ。「うおうわっ」とかヘンな声を出しながら画面から消えていく烈堂。ヨロヨロ。立ち上がった若山先生も、そのまま崖からゴロゴロゴローと転げ落ちていきます。さらに、下で待ち構えていた柳生の残党に「拝一刀、柳生無念の刃を受けてみよ」とか言われ、背中に刀をブッスリ刺されてしまう若山先生。どうにか残党を倒したものの、胸を刺されるは、背中には現在進行形で刀が刺さってビヨンビヨンしてるわで、もうダメみたい。ばたっ。

「ちゃーん」「ちゃーん」。大五郎が探しにきました。「だ、大五郎。背中の刀を抜け」と言われ、必死に刀を抜く大五郎。しかし、若山先生、もう死にそう。バビンスキー反射もなさそうな雰囲気です。とはいえ、ここにいても、先は無い。ヨロヨロ、ヨロヨロ。乳母カーを杖替わりに、若山先生は戦場を去っていきます。

そんな姿を崖の上から見ているのは、ナルシストな林与一。っていうか、片手を切り落とされたのに生きてたんですね。さすがヘンタイ。「よくぞ、よくぞ切り抜けた拝一刀。たとえいかなることがあろうとも生き延びよ。うぬを倒すは柳生でも黒鍬でもない。このわしだ。このわしが必ずやうぬを地獄へ送る、その日まで」。なんかすごいドヤ顔で語ってますが、崖の上で独りごと言っても聞こえないって。

ともあれ、ほとんどゾンビ顔になった若山先生は、焦点の合わない目で、ヨロヨロと歩いていくのです。死なないでね。


なんていうか、オールヘンタイ博覧会みたいな映画でしたね。乳母車のガトリング砲など派手な手は打ち尽くして、さあどうしようと思ったときに、残っていたのはヘンタイだったと。でも周りがヘンタイすぎて、肝心の拝一刀の存在感が薄れるというのは、なんていうか誤算だったような。

それにしても、内田朝雄が刺青について熱く語るシーンは、なんだか増村保造の「刺青」を思い出させました。そういえば、どっちもカメラマンは宮川一夫だったなあ。

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【映画】子連れ狼 死に風に向う乳母車

2011-05-19 | 邦画 か行
【「子連れ狼 死に風に向う乳母車」三隅研次 1972】を観ました

おはなし
冥府魔道に生きる父子が今回暴れる場所は、東海道沿いみたいです。

若山富三郎版「子連れ狼」の第3弾です。1では空気だった大五郎も、徐々に存在感を増してきました。


なんかサウンド・オブ・ミュージックのオープニングみたいな爽やかな音楽が流れます。ここは川のほとり。「船が出るぞぉ」。渡し船の船頭が怒鳴りました。あわてて船に乗り込む人々。町人やら、女衒に連れられた娘などさまざまです。と、そこにゴロゴロと乳母車を押しながら拝一刀(若山富三郎)がやってきましたよ。それを見て船頭は苦い顔。「ダメだ。ダメだよ、ご浪人さん。そんなヘンな車、乗せられねえ」。「乗せるのではない」と言った拝一刀は、そのまま乳母カーを川にボチャン。そしてヒモを渡し船に結び付け、息子、大五郎を乳母カーに乗せ、自分は渡し船のソソクサと乗り込むのでした。「へへ、なるほどねえ」と感心している様子の船頭は、そのまま船を出発させます。

ぷかぷか。川面を滑るように進んでいく渡し船ですが、女衒の文句松(名和宏)と売られた娘のお松(加藤小代子*)が何やら言い争っているようです。と、その拍子にお松の荷物が川にジャポン。あれえ。しかし、船の後方には乳母カーが曳航されていますからね。ほら、大五郎が荷物を拾ってくれたみたいですよ。そして、目的地につき、大五郎から荷物を受け取ったお松は文句松に連れられて、いずこかに。しかし、このお松のせいで拝一刀がトンデモない目にあうとは、お釈迦様でも気がつくめえ、です。

ま、それはともあれ、あいかわらず追っ手をバッサバッサ斬り殺しながら旅を続ける父子。そんな中でも野グソをする大五郎のために、葉っぱをよく揉んでトイレットペーパーにしてあげる拝一刀の姿など、親子の情感あふれるシーンなんかもあったりして、いい感じです。もちろん、基本は冥府魔道な父子なんですけど。

さて、街道筋の茶屋では、照りつける炎暑に閉口したのか、胸を大きくはだけダラしなく酒を飲んでいる侍たちが。「あーあ、渋皮のむけたような女か娘が通らねえのかよう」とひとり(山谷初男)が言えば、うんにゃうんにゃと同意する仲間ふたり。残るひとり(加藤剛)は酒も飲まず端然と座っているようですが、どうにも胡乱な侍たちです。浪人でしょうか。いいえだれでも。どうやら、説明くさいセリフによると、この侍たちは渡り徒士(わたりかち)という存在のようですよ。「俺たち渡り徒士はなあ、今日はあっちの大名。明日はこっちの大名と参勤交代の時だけ雇われるお供の飾り人間だ。浮き草稼業の流れ者だな。へへっ」だそうです。要は人件費を抑制するために使われる、臨時雇いの派遣さんみたいなもののようです。なんていうか、今も昔も世知辛いですねえ。

おっと、そんなところに手代を連れたお歯黒のおばさんと、その娘が歩いてきましたよ。ギラリン。加藤剛を除く渡り徒士たち3人は目を輝かせます。よっしゃあ。さっそく後をつけ、手代を殴り倒して、おばさんと娘に迫る3人。「俺たちゃ渡り徒士」「はっ!渡り徒士」「そうよ、渡り徒士だ」。なんだかシュールなセリフとともに、あれえ。母と娘は抵抗むなしく乱暴されてしまっのです。と、そこに失神から覚めた手代が棍棒片手に殴りこんできましたよ。よくも奥様とお嬢様を、殺してやるぅ。刀を差しているとはいえ、しょせん剣術もまともにできない3人は、タジタジです。というか、完全に負けてます。「ま、待ってくれえ」。しかし「許さねえだ」と棍棒をフルスイングする手代。と、そこに加藤剛がやってきましたよ。「か、官兵衛さん。助けてくれえ」。うーん仕方ないなあ。とりゃっ。抜く手も見せずに手代を斬り殺した官兵衛こと加藤剛は、さらに母と娘も斬り殺すのでした。さらに、3人にクジを引かせる加藤剛。そう、代官所を納得させるためには、犯人役が必要ですもんね。はい、あんたが当たり。クジに当たった山谷初男は「何で俺だけが」と逃げようとしますが、後ろからバッサリ。そのまま街道を歩いていた父子連れの乳母カーにすがりつくように絶命するのでした。ん?乳母カー。そう、そこにいたのは拝一刀こと若山先生だったのです。

ギロリ。そこらへんに転がっている手代の死体や、母と娘の死体を見やる若山先生に、加藤剛は折り目正しく言います。「見苦しい有様をお見せした。お許しを願いたい」。「渡り徒士とも思えぬ武士らしきふるまい」とエラそうに答える"ただいま絶賛浪人中、ついでにお尋ね者"の若山先生。「武士らしい。ふっ(苦笑)。拙者、元越前丸岡藩、お駕籠衆を務めし孫村官兵衛と申す。卒爾ながらご姓名は」「拝一刀と申す」。「やはりそうでござったか」と加藤剛はサワヤカ笑顔を全開です。そう、お互いに無類の剣士として、その名前くらいは知りあっているようなのです。と、ニコヤカな談笑タイムはここまで。たとえパートタイムとはいえ、次の職場に迷惑をかけるわけにはいかない。だから勝負していただきたい、と言い出す加藤剛。微妙に武士の意地の張りどころを間違えているような気もします。しかし、その願いに若山先生が沈黙していると、残った2人の渡り徒士たちが、「やいやい官兵衛さんが、これほど頼んでんだ。立ち会ったらどうなんだ」とチンピラ風に言いがかりをつけ、さらには斬りかかってきましたよ。なんていうか、身の程知らず。サクッ。はい、死にました。

あらためて対峙する、加藤剛と若山先生。自然と闘いの機が熟してきます。「もし拙者に勝機があるならば、あのお子のことは身命にかえてお引き受けつかまつる」「そのお気遣いは無用に願いたい。我ら親子、冥府魔道に生きるものなれば、六道四生順逆の境、もとより覚悟のうえ」。「いざ」「まいる」と刀を抜きあう二人。と、いきなり若山先生、「この勝負分けにいたす」と刀を納めてしまいましたよ。「なにゆえに」「真の武士として残しておきたいが故に」。クルッ。後ろを向いてスタスタと行ってしまう若山先生。「俺はまた死にぞこなった」と加藤剛はガックリしています。

さて旅籠でご飯を食べている冥府魔道父子。と、その隣の部屋でも、文句松こと名和宏とお松が食事中でした。食事を終えて、お松に足をマッサージしてやると言い出す名和宏。でもマッサージしているうちに、ほら、名和宏ですからね。欲情スイッチ、オーン。でも無理やりチューをした挙句、舌を噛み切られて悶絶死。出番が少なくても名和宏はオイシイところを持っていきます。

ずずず。若山先生と大五郎が食後のお茶をおいしそうに啜っていると、そこにお松が転げ込んできましたよ。か、匿ってください。おそらく内心ではビックリしているだろう若山先生ですが、なんていうか知らぬ顔じゃないし、押入れに匿うくらいならね。その後やってきた宿場役人をケムに巻き、さ「行くが良い」と言う若山先生。と、そこに土地のヤクザたちがやってきちゃいました。ずらりと並んだヤクザの真ん中には着流し姿も凛々しい男装の麗人(浜木綿子)が。「手前は古四王(こしお)一家の酉蔵と申しやす。この宿場から刈谷までの遊び場所、全てを束ねておりやす亡八もんで。その子は手前どもの女衒、文句松が買ってきたタマでござんす。どうか御引渡しを願いとう存じやす」。折り目正しい挨拶に、若山先生はひとこと「断る」。いや、それじゃ困ります。その後、浜木綿子がいくら懇切丁寧に道理を尽くしても、「くどい」「断る」を連発する若山先生。どうやら、お松がぽろりと落とした位牌を見て、アレを思い出したみたいです。ちなみにアレって言うのは、徳川を呪詛する位牌を持ってるだろ、と裏柳生に言いがかりをつけられ冥府魔道に堕ちた事件のこと。「位牌が結ぶ冥府魔道の因縁。一枚の位牌のために人間としてのあらゆるものを失った我ら親子。引き下がれぬ理由がそこにある」と言いながら若山先生がギロリと浜木綿子をにらむと、大五郎も負けじとギロギロリと浜木綿子をにらんだりして。うっ、カワイイじゃないか。大五郎、キュートすぎだろ。

ま、それはともあれ、浜木綿子は困り果てちゃいました。ピストルを撃ってみれば、ササっと畳を起こして防いじゃうし、せめてお松に水揚げさせて、そのお金をくれれば勘弁してやるけど……と妥協案を出しても若山先生はガン無視。どうにもこうにも若山先生に対抗する手段が思いつきません。うーん。そうだ!折檻を受けてくれたら、こっちのメンツも立つんだけど、どう? おっと、これには若山先生OKなようですよ。ただし、「その責めをわしが代わって引き受ける」。「しかし」と言う浜木綿子に若山先生。「病い身の女郎に代わって、朋輩が責めを受けることもあると聞く。身代わりは駄目だというしきたりもあるまい」。ヘンなとこで若山先生リクツっぽいです。

キリキリ、キリキリ。ジャッポーン。滑車で逆さに吊られ、水桶に頭を突っ込まれている若山先生。キリキリ。ザッポーン。本気で水責めされちゃってますよ。頭に血が上るわ、鼻から水が入るわで、とても苦しいんじゃないでしょうか。いくら撮影とはいえ、やってることは紛れもない拷問そのものですから。しかし、若山先生というか拝一刀は音をあげません。よーし、じゃあ、今度はもっと恐ろしい責めだ。逆さ吊りにしたうえで、寄ってたかって棍棒で殴るという恐ろしい責め。これは、本当にキツイぞお。浜木綿子は子分たちに言います。「次はぶりぶりだっ」。えっ?ぶりぶり。「ぶーりぶり。ぶーりぶり」。早速、棍棒で若山先生を殴り始める子分たち。段々盛り上がってきたのか、お囃子もテンポアップしていきます。「ぶーりぶり。ぶーりぶりのぶーりぶり」。バコっ。バコっ。肉を撃つ音とぶりぶりが交錯して、なんだかもう、なんだかもう、ぶりぶり。

しまいには、「ロッキー」でロッキーがボコってた牛肉の塊みたいになった若山先生。しかし、どうにか「ぶりぶり」に耐えきったようです。「お、お侍さま。おら、おらあ」と泣いているお松。大五郎も「ちゃん」と心配げ。「本当のお侍ってのは少なくなったが、まだこんなお人がいるんだねえ」と浜木綿子は、なんだか他人事のように感心しています。

さようならあ。手を振ってどこか田舎にでも帰るお松。しかし、浜木綿子は若山先生に言うのです。「あの子が女郎になるかならぬかの落とし前はつけていただきやしたが、まだひとつ、文句松を殺したことのケリはついておりやせん」。ええ、またぶりぶりするの。「手前の頼みを聞いてくださりゃ全てをもみ消します。拝さま、あなたさまをぶりぶりにかけている時、ある噂を思い出しました。ご公儀介錯人が柳生一門との確執により、刺客子連れ狼として流浪いたしておること」。カチャッ。浜木綿子が秘密スイッチを押すと、床の間がパカっと開いて隠し部屋が。「こちらへ」。

そこに寝ていたのは隻腕の男(浜村純)。「元掛川藩筆頭家老、三浦帯刀でござる。実は貴殿をお探ししておった」。ついでに言うと、酉蔵こと浜木綿子も、実は家老の双子の妹娘、酉だそうですよ。双子は不吉ということでやくざさんの養女になったそうです。それはともかく、浜村純は殺しを依頼したいそうですよ。ターゲットは遠江の代官、猿渡玄蕃。「事情を承りたい」という若山先生。そして浜村純が語るところによると……。

掛川藩のお殿様はクルクルパー。乱暴狼藉を繰り返していました。そして家臣たちは、そんなお殿様のことがバレないように、必死に取り繕っていたそうですが、お側用人だった猿渡玄蕃が老中にチクってしまったとか。おかげでお殿様は切腹。しかし、猿渡玄蕃はその功績で天領(幕府直轄地)の代官になったのです。なんて悪いヤツなんだ猿渡玄蕃。もうバッサリ斬っちゃってください。ヒートアップしている浜村純ですが、何ていうかなあ。領民からしたらどっちでもいい話というか、どっちもどっちだよなあ。え。若山先生の反応ですか。もちろん、ただひと言。「刺客引き受け五百両」です。

さて、ゴロゴロと乳母カーを押しつつ遠江の天領に入る若山先生。と、タイミングがいいのか悪いのか、代官・猿渡玄蕃の使いがやってきましたよ。ぜひ代官に会って欲しいというのです。そして、その代官・猿渡玄蕃(山形勲)は屋敷で「来るかなあ。来てくれねば困る」と部屋をウロウロしている真っ最中。なんていうか恋する乙女状態。そんなに会いたいですかねえ。すでに二人の遣い手、左門(和崎俊哉)と朽木六兵衛(草野大悟)がいるんだから、何も若山先生に頼らなくても。

おっと、若山先生がやってきました。山形勲は息せき切って言います。「早速じゃが、老中板倉内膳正を斬ってただきたい」。おい早速すぎだ。「お断りいたす」。うわっ、若山先生も早速過ぎ。「まて、こちらの意図を知られたからには生かしては帰さん」。ほれ、行け。しかし、左門と六兵衛は身じろぎもしませんよ。そのまま若山先生は帰っていきました。ムキーっ。怒り出す代官の山形勲。「なぜ斬らなかった」。しかし、左門は静かに答えるのです。「もし拙者が斬りつければ、奴の胴太貫が殿の胸を貫いたでしょう。朽木どのが撃っても同じことだったでしょう。拝は恐ろしい遣い手です」。……すごい。自分の失敗を、かえって恩着せがましく言えるこの才能。これがあれば、何も代官の手先なんかしないでも、江戸とかでハッピーに暮らせるんじゃないでしょうか。ともあれ、左門の言葉に説得されちゃった山形勲は考えます。うーむ。それにしても、なんでアイツ来たんだ?仕事を断るなら来なきゃいいのに……って、まさかっ。そうだ、そうに違いない。俺より先に、老中が俺を殺すように依頼したんだ。そうに違いない。うわーん、どうしよう。

さて、六兵衛こと草野大悟はひみつ特訓場で、ピストルの練習中。バーン。ババーン。愛用の2丁拳銃が火を吹きます。と、パチパチと拍手が聞こえます。見ると、ヘンな髪形の幼児が、こちらを見て拍手しているじゃありませんか。人相が悪いわりに子供好きな草野大悟はうれしくなって、さらにピストルを発射。バン、ババーン。ちらっ。こっそり見ると、幼児がこっちを見て、うれしそうに拍手していますよ。いやーん、カワイイ。よーし、おじさん頑張っちゃうぞぉ。どりゃ。ズババーン。ズババババーン。両手のピストルを思いっきり全力射撃してみました。……。ん? あれ、子供がいない。すっかりロンリーハートになって家に帰ることにした草野大悟ですが、さっきの幼児が川で溺れているのを見て、理性が飛びました。待ってろ坊や、おじさんが今助けるからね。ピストルを置いて、川に飛び込む草野大悟。ジャバジャバ。しかし、何ということでしょう。せっせと泳いでいる草野大悟の前で、その幼児がスックと立ち上がったではありませんか。えーと、自分も立ち上がってみると、とても溺れようもない浅い川。ってことは、罠。慌てて自分のピストルを取りに戻ろうとした草野大悟ですが、待ち構えていた若山先生にサクっと斬り殺されてしまったのです。もちろん、拍手をした幼児が大五郎なのは言うまでもありません。さすが冥府魔道に生きる親子。

パカラパカラ。左門が馬を走らせていると、草原の中に乳母カーを発見しました。あれはもしや。馬を降り、草原を歩くと、ギロリ。案の定、こちらをにらんでいる幼児がいましたよ。うっ、怖い。そして、ヌーっと若山先生も登場。南無三。こうなれば戦うしかない。小柄(こづか)を飛ばしつつ、飛燕のごとく斬りかかる左門。しかし若山先生は小柄を軽く胴太貫で弾き飛ばし、そのまま大ジャンプです。ぴよーん。そして空中から左門の脳天めがけ、胴太貫をシュート。バヒューン。ザクっ。胴太貫は左門の脳天を貫いて、まるで一輪挿しのように突き立っているのでした。

六兵衛、左門を失った代官の山形勲は決意しました。やらなければ、こちらがやられる。だから、打てる手は全部打つ。早速、部下を動員し、江戸の柳生にも急使を立てます。ついでに隣藩にも応援の依頼。なあに数百人の人数を集めれば、いくら拝一刀といえども勝てぬ相手ではない(と思いたい)。さっそく、弓隊、鉄砲隊、などが集結。隣藩からも、腕自慢の渡り徒士などがやってくるようですよ。

高札に書いてあった時と所を見て、指定の地蔵が原にやってきた若山先生と大五郎。なんということでしょう。見渡す限り、敵、敵、敵の大群です。「大五郎、冥府魔道に入ったぞ」というと、大五郎も何かを感じたのでしょう。キリリとした表情です。そんな様子を物陰から見ているのは浜木綿子と、腹心の子分たち。「だめだい、とてものことに勝ち目はねえ」「しかし、なんで進んでいくんだい」、口々に言う子分たちをよそに、浜木綿子はじっと熱視線で見守るのです。

射程距離に入った。そう見て取った山形勲は命令します。「弓隊っ!」。それに応えて、弓隊が一斉射撃を開始しました。ひょう。ひょう。しかし若山先生は断固として言います。「大五郎っ」。すると大五郎が乳母カーのスイッチをポン。カシャン。おお、乳母カーに楯が出てきましたよ。これで矢なんかへいちゃらです。ぐぬぬ、怒りに震える山形勲は続けて命令。「鉄砲隊っ!」。しかし「撃てっ」と命令した時、先に動いたのは乳母カーでした。ガチャリ。カバーが外れたかと思うと、乳母カーからは12本の銃身を持つガトリング砲が。ズガガガガ。はい、鉄砲隊は壊滅です。さらにイキオイに乗った若山先生は手りゅう弾をひょいひょい投げ始めました。どかーん。うわああ。どっかーん。ぎゃああ。まさに阿鼻叫喚とはこのこと。さらに乳母カーの仕込み槍を片手に敵の中心に突っ込んでいきます。縦横無尽。突いて、斬って、ついでにライダージャンプからのキックをかましたりと、まさに暴風のごとく荒れ狂う若山先生。気づけば、残るは代官の山形勲だけです。

しかし、山形勲だって伊達に山形勲じゃありません。エラいんですから。すちゃっ、ピストルを取り出し、馬上から撃ちはじめましたよ。焦って、右に左に逃げ回る若山先生。しかし、両手に持っていた刀を撃ち落とされ、絶体絶命。バーン。とうとう倒れてしまいました。ふふふ、これで最後だ。ゆっくり照準を定め、引き金を引く山形勲。カチリ。なんてことでしょう。弾丸切れです。と、その時、山形勲は見ました。やっつけたと思っていた若山先生が、両手に2丁拳銃を持っているのを。ズババババ。若山先生は気持ちよさそうに全弾を山形勲に叩き込むのでした。

その時、遠くの崖上に、柳生の援軍が到着しました。「よくぞ血路を開いた。よくぞ生き延びた、拝一刀。だがうぬら親子に明日はない。我ら柳生一門の手から逃れることはできぬ。てやーっ」。言うだけ言うと、クルリとUターンして、江戸に帰っていく柳生さんたち。いや、多分、若山先生に聞こえてないし。そもそも、間に合ったとしても、そんな崖の上から何をする気だったの。

そんな柳生さんの負け惜しみを知ってか知らずか、大五郎はピッと一方向を指差しました。そう、彼方から、これも遅刻組の加藤剛がやってきたようです。「重ねてお立合いを願う」と言う加藤剛に若山先生は答えます。「しかと承知」。なんで今回は勝負を受けるのか。そのヒントは残り上映時間。そろそろ終わりですからね。

「参る」と刀の鯉口を切る加藤剛。若山先生もゆっくりと抜刀します。すーっ。刀をまっすぐ体の正面に構える加藤剛に対して、若山先生は刀を持った手、そして反対の手も大きく斜め上に構える変わったスタイル。そう、強いて言えば「お客様は神様ですby三波春夫」剣法でしょうか。しばし静寂。そして、チャキン、ジャキーン。刀の当たった音がしたかと思うと、背中を大きく切り裂かれた若山先生の姿が。しかし、意外と元気な若山先生はゆっくりと振り向きます。そして、それを見ていた加藤剛が、これまたゆっくりと下を見ると、なんと若山先生の胴太貫が自分の体を貫通しているのでした。

貫通した刀を抜けば、そのまま加藤剛は死ぬでしょう。しかし刀を抜こうとした若山先生に加藤剛は言います。「しばらくっ。伺いたいことがござる」。そして、いきなり自分語りのスタート。かつて、お駕籠衆として、大名の駕籠脇で護衛するのが役目だった自分。そんなある日、テロリストたちが駕籠を襲ってきたそうです。たぶん、桜田門外の変みたいなのを想像すればいいんでしょう。そこで、自分は考えた。このまま駕籠脇にいてもじり貧で殿を守りきることはできない。ならば答は一つ。敵中に突撃して、一人でも多く斬る。結果として、敵は壊滅し、殿の命は守られた。ところが、駕籠脇を離れた自分はすっごく怒られちゃった。え、これってどうなのさ。「あの時、たとえ不利と知ってもお駕籠脇を離れず、主君を守って斬り死にすることが武士道の真か。武士道とはいかに生きるかではなく、いかに死ぬかということでござるか。拝どのお答えくだされ」。

「お答えくだされ」とお願いされちゃった若山先生はひと言で答えます。「真の武士道とは死をもって生きることでござる」。「死をもって生きる?」と困り顔の加藤剛。ただでさえお腹を刀が貫通してるんだから、ムズカシイことワカリマセン。これはマズイと思ったのか若山先生は言い直します。「それがしが、もしそこもとの立場だったら、やはり斬って出る」。ぱあっ。加藤剛の顔がうれしさに輝きます。「それを聞き、拙者、心が晴れもうした」。よっしゃ、じゃあ切腹します。もし良かったら、介錯なんかしてもらえないかなあ。ああん、図々しい子って思われないかな。ドキドキしながらお願いしてみる加藤剛。「公儀介錯人であったご貴殿に、拙者ごとき者が介錯を願えるだろうか」。答は……(ドキドキハート)。「真の武士を知る者に隔てはござらん。介錯つかまつる」。やったあ。えいやっ。ポーン。飛んでいく加藤剛の首。ここでスゴイのはカメラが加藤剛の首の視点になること。宙を飛び、ゴロンゴロンと転がっています。そして、転がっている首が映ります。何とはなしに加藤剛の首が笑っているように見えるのは、若山先生に首チョンパしてもらえたからでしょうか。

そんな一部始終を物陰から見ていた浜木綿子は、飛び出して若山先生の後を追おうとしています。きっと先生のワイルドさにハートがズッキューンに違いありません。しかし、そんな浜木綿子を必死で止める子分の伊達三郎たち。「元締め、行っちゃいけねえ」「あれは人間じゃねえ。化けもんですぜ」。そんな子分たちの言葉を真に受けるあたしじゃないけど、確かに子分たちを捨てる事もできない。ウルウルしながら若山先生を見つめる浜木綿子です。

ざっくり斬られて、片肌脱ぎのランボー状態の若山先生は乳母カーを押して歩いていきます。おや、どこかから歌が聞こえてきました。「♪夜烏が鳴いたあ。誰かが死んでるぜえ♪」。これは若山先生ご自身の歌ですね。「♪子連れがやってくるぜえ。くるぜえ。くるぜえ♪」。自分でフェイドアウトなんかしちゃう律儀な若山先生です。


ポイントというか見どころは3つ。

まずは、乳母車の飛躍的な重武装化。今回はガトリング砲まで備えていますから。おそらく報酬の500両は全部、武器代に消えているんでしょうね。あと、何気にそれを操作する大五郎の顔つきも渋くてステキです。

そして、忘れちゃならない若山先生の殺陣。これはいつもながらほれぼれするデキです。日本刀を持たせたら日本一。つまりは世界一ですからね。1作目のような「超」高速な殺陣は見つけられなかったものの、どこをとっても一級品でした。

さらに見どころは、ヒロインの浜木綿子。基本的に香川照之のお母さんくらいの認識しかなかったのですが、いや、お見それしました。何ていうかキレイ。それも自然なキレイさではなく、徹底的に人工的な美です。と、書くと、まるでケナしているみたいですが、そうではありません。うーむ、そう「大衆演劇」的な美とでもいえばいいのかもしれません。古くは梅沢富美男、最近では早乙女太一や橘大五郎につながる計算されつくした美です。スッキリした目元に、ミリ単位の正確さで飛ばされる視線。べらんめえ口調からおしとやか口調まで完璧なエロキューション。とても37歳には見えませんよ。いやあ、あの顔、あの声で「次はぶりぶりだっ」とか言われてみたい。

あと、草野大悟を倒すヤリクチとか、卑怯未練な行動をしまくるくせに、加藤剛には「真の武士とは」を語っちゃう拝一刀。さすが冥府魔道に生きるだけあって、好きです。これからも、もっともっと卑怯になって欲しい。

*キネ旬データベースなどでは小夜子になっていますが、映画クレジット表記では小代子でした

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【映画】子連れ狼 三途の川の乳母車

2011-05-12 | 邦画 か行
【「子連れ狼 三途の川の乳母車」三隅研次 1972】を観ました

おはなし
柳生とのガチンコバトルを繰り広げつつ、拝一刀(若山富三郎)と大五郎は、今日も冥府魔道を全力疾走。

若山先生の子連れ狼シリーズ第2弾です。前作でも快調に手足を斬り飛ばしていましたが、今作でもバッサバッサ行きますよお。



ザッザッザッ、向こうからものすごいイキオイで虚無僧がダッシュしてきます。スペシャル乳母車(以降、乳母カー)の中で目を丸くしている大五郎。そして、それを押していた元公儀介錯人の拝一刀(若山富三郎)は、スーッと愛刀である胴太貫を抜き放ち、ダッシュ虚無僧を待ちます。
走ってくる虚無僧。大五郎。拝一刀。三者の姿が目まぐるしく入れ替わり……

チェーーッ!斬りかかる虚無僧の刀をかわし、拝一刀の斬撃が虚無僧の脳天に襲いかかります。しかし、虚無僧もさる者。発止と胴太貫を真剣白刃取りしていますよ。あ、でも、ちょっと失敗。刀は微妙に前頭葉にめり込んでる。しかし、前頭葉をスッパリ斬られた虚無僧は「大膳っ!」と叫びます。すると、なんてことでしょう。斬られた虚無僧の真後ろに、もう一人の虚無僧がいたのでした。とりゃーーっ。大ジャンプをして襲い掛かってくる後ろの虚無僧。しまった。胴太貫は、前の虚無僧の脳天にめり込んでいて抜けませんよ。しかし、先生は慌てず騒がず乳母カーから仕込み槍を取り出し、後ろの虚無僧を空中で串刺しにするのでした。

ぷっしゅー。噴水のように血をまき散らしている後ろの虚無僧。いっぽう、前頭葉が真っ二つな、前の虚無僧は言います。「柳生一門は天下六十余州にまたがる。いずれへ行こうとも我らの手から逃れることはできぬっ」バタリ。

いやあツカミはばっちりです。ま、それはともあれ、ゴロゴロと乳母カーを押しながら旅を続ける拝一刀。たき火をしながらおにぎりを食べたりと、アウトドアライフを満喫しているようですが、たまには旅籠にだって泊まりたい。しかし、どう見てもコキタナイ浪人と洟垂れ坊主な組み合わせは、旅籠で歓迎されるようなものではないようです。ほら、番頭があからさまにイヤな顔をしてますよ。ムッカー。無表情な拝一刀ですが、それだけに内心の怒りを想像するだに恐ろしい。おっと、拝一刀。これ見よがしに乳母カーから包みを取り出し、番頭に預けたりしています。それを開けてみた番頭はビックリ。なんと、そこには五百両もの大金が入っていたのです。フフン。ついでに息子の大五郎は、足すすぎの水をそのままに、旅籠の廊下をペッタペッタ。むむ、さすが冥府魔道に生きる父子。イジワルっぷりも地獄クラスでしょうか。

「ひとーつ。ふたつ。みっちゅ。いつつ」「大五郎、ひとつ忘れているぞ」。冥府魔道な父子が旅籠のお風呂で、数の勉強に余念がない、ちょうどその頃のこと。遠く離れた明石の地では、影のような男が、ゴージャスな女の人に話しかけています。「黒鍬支配頭の小角(おづぬ)にござります」「明石柳生の鞘香じゃ」。そう、片方は幕府の探索を受け持つ黒鍬一族の小角(小林昭二)で、もう一人は、言わずと知れた極悪柳生一門の中でも、女だらけの暗殺集団、別式女たちのリーダー柳生鞘香(松尾嘉代)なのでした。ちなみに松尾嘉代はやがて、二時間ドラマなどで、熟れきった熟女役とかをいっぱい演じるわけですが、この段階ですでにムンムンしてます。あまりにムンムンしているので、とりあえず呼び名はKAYOにしておくのでひとつ、よろしくお願いします。

それはともあれ、二人の会話を聞いてみましょう。
「江戸裏柳生、烈堂さまのご命令をお伝えに参上仕りましたれば、お人払いを」
「構わぬ。みな、明石柳生の別式女たちじゃ」
「されば」ぽわわーん。ここで、前作の回想シーンが流れますよ。柳生のみなさんが景気よく、拝一刀に斬られていきます。
「なにっ!」。KAYOの目が怒りに燃えます。「おのれぇ、拝一刀」
「果し合いの結果、拝一刀が勝ち、その時の約束によって、江戸の柳生は彼奴(きゃつ)に手出しができません。されば、鞘香さま率いられる別式女たちをもって、必ず拝一刀を討てと、烈堂さまのご命令にございます」
えーと、なんていうか裏柳生は律儀なんだかズルイんだか、よく分かりませんね。東京本店は手を出せないけど、明石支店は別だもんねー、ってことでしょうか。しかしそんな疑問をよそに、KAYOは「討たいでか」と燃えています。どれくらい燃えているかというと、蛮勇をいさめた小林昭二にブチ切れて、黒鍬いちの使い手(一人)を別式女たち(六人)でチョッキンチョッキンの芋虫状態までバラバラにしちゃうくらいです。「未熟者めが、これでも忍びか。キャーハッハッハ」と高笑いするKAYOに、思わず小林昭二もムッとしています。グヌヌ、柳生だからって威張りやがって。

ま、それでも、拝一刀を接触する方法を、怒りをぶちまけず淡々と説明する小林昭二。さすが科特隊のキャップだけあります。
「拝一刀こと子連れ狼に刺客を依頼したいと願う者、魔道の護符を街道沿いの神社仏閣に張り出します。一刀がこの護符を見れば、己の居場所を知らせる道中陣をそこに残していきます」
そんな小林昭二の声をバックに、道中陣をモソモソ作っている拝一刀の姿が。道中陣と言っても、なんか小石を適当に並べているようにしか見えませんが。
「それを辿ることによって、依頼の者は一刀に会えるわけでございます」。
いやあ、それで会うのは至難の業だよなあ。だって子連れ狼は日本全国を放浪しているんでしょ。まだ携帯電話ができる前、飲み会の場所を駅の掲示板にチョークで書いて知らせたものだけど、伝わるかどうかは運任せでしたよ。まして、この広い日本で……
「おお。ご家老。道中陣が」。
あれ、ここに、運よく子連れ狼と接触できたお侍さんたちがいました。

約束の場所にやってきた拝一刀を迎えるお侍さんたち。どうやら、阿波藩江戸家老と、そのご一行さまのようですよ。依頼金の500両を差し出して、江戸家老が語るところによると、阿波藩は藍の製造でガッポガッポ儲かっているそうです。しかし、その儲けに目を付けた幕府がお庭番を送り込んでくるわ、待遇改善のストライキを起こさせようとするわで、どうも困った事態に。「されば、我らも必死となって、潜入しているお庭番どもを駆り出し、一揆を起こさんとした首謀者どもを処刑したのでござる。ところが……」。そう、ところがちょっとヤリ過ぎたみたいです。というのも、阿波藍を作る責任者・幕屋忠左衛門が、自分も粛清されるじゃないかとビビって、お隣の高松藩に亡命しちゃったのでした。「幕府は、この幕屋忠左衛門を受け取るため、公儀護送方、弁天来の三兄弟を高松に差し向けるという知らせが入ったのでござる」。くわっ。微動だにしなかった拝一刀が、目を見開きます。そう、弁天来の三兄弟と言えば、この世界のビッグネーム(らしい)。家老の言葉によると、左弁馬、左天馬、左来馬の三兄弟で、それぞれ手甲鉤(ビヨーンと伸びた鉄の爪)、棍毘(こん棒)、あられ鉄拳(トゲ付グローブ)を使う「すさまじい手練れの者」なのでした。

ということで、冥府魔道に生きる拝一刀は依頼を快諾し、明石から出る四国行きの船に乗り込むために、旅路を急ぐのです。ゴロゴロ。ゴロゴロ。乳母カーを押して歩いていると、おや、にぎやかな太鼓のリズムが聞こえます。ムンムンしたお姉さんたちが角兵衛獅子のカッコで踊っているみたいですね。タムタム、タムタム。おおっと、お姉さんたちが太鼓のリズムに乗って襲い掛かってきましたよ。ざしゅっ。あ、拝一刀、さくっと斬り殺したようです。何事もなかったように、ゴロゴロと乳母カーを押して行く拝一刀。今度は向こうからムンムンしたお遍路さんが二人近づいてきましたよ。と、とりゃっ。菅笠を投げつけてきたじゃありませんか。刃付きの殺人菅笠が拝一刀そして大五郎に迫ります。「大五郎っ!」。先生の叫び声に、ひょいと首をすくめる大五郎。ぱしゅっ。まさに危機一髪。大五郎のちょっとしか生えてない髪をカットしただけで、殺人菅笠はどこかに飛んで行ったみたいです。とりゃー。大五郎の貴重な髪の毛を奪った別式女に、拝一刀の怒りの太刀がさく裂。軽く腕を斬り飛ばし、ついでに二人を串刺しにしちゃうのです。ということで、再び乳母カーをゴロゴロさせる拝一刀。おっと、今度はカゴに大根を満載した3人のお姉さんがやってきました。きっと、ムンムンしているので、この人たちも別式女じゃあるまいか。えいっ。ほら、やっぱり大根を投げてきましたよ。それも刃物を仕込んだデスダイコンを。もちろん、そんなものは避けてしまえばいいだけです。ひょい。すると、別式女たちは二手に分かれて向ってきました。しまった。二人を相手している間に、残った一人が大五郎に襲い掛かります。危ないっ大五郎!と思ったら、大五郎は乳母カーに付けられたスイッチをポン。パシュッ。おお、手すりから刀身が飛び出しお姉さんを貫いています。すごい、スペツナズナイフみたいだ。もちろん、その間に拝一刀も二人の別式女を斃し、また旅を再開。ゴロゴロ。と、こんどはいきなりハープの音が聞こえてきましたよ。ぽろろん。と、木の上から網が降ってきました。ばさあ。網にからめ捕られる拝一刀と乳母カー。そして、その網をせっせと引っ張っているのは、KAYOだ。別式女のボス、松尾KAYOがやってきました。うんしょ、うんしょ。網を引っ張るKAYO。でも、拝一刀も、いつまでも捕まっている義理はないので、刀で網を切り裂いて脱出です。イヤーン。困っちゃうKAYOは叫びます。「柳生鞘香、見参!」。「応!!!」と答える拝一刀。

ジリジリ。ジリジリ。間合いを計る二人。そして機が熟し。えいーっ。うおりゃー。刀を合わせた二人ですが、膂力の差は歴然。ちゅいーん。刀を弾き飛ばされたKAYOは、必死に真剣白刃取りをしたりしつつ、形勢逆転を狙います。しかし、その時、拝一刀の横殴りの剣がKAYOの足元を襲いました。間違いなく、両足は膝の下から真っ二つ。と、思った瞬間、こんどはKAYOの必殺技がさく裂。着物はそのままに、黒のレオタード姿で垂直上昇です。いや、何を言ってるか分からないと思いますが、着物を発射台にして、ムンムンKAYOがロケットのように打ち上げられたと思っていただけれれば。そのまま、後方に着地したKAYOは、無言のまま田んぼを後ろ方向に猛ダッシュ。えーと、これも補足すると、後ろを向いて走り出したんじゃなくて、こちらを向いたまま、後ろ方向にすごいイキオイで走っていくということですからね。ばびゅーん。

KAYOが去り安心したのもつかの間、今度は黒鍬一族が襲ってきました。KAYOのように戦力を小出しにせず、総攻撃です。むむっ、これはマズイ…かも。「大五郎、行くぞっ!」と拝一刀は叫ぶやいなや、敵に向かって乳母カーを蹴り飛ばします。急発進のイキオイで首をのけぞらせている大五郎。いや、これはムチウチになっちゃいますよ。それでも、大五郎はめげずにスイッチをポン。かしゃっ。車軸から抜身の刀身が飛び出し、黒鍬一族の足をスパスパちょん切っていきます。すごいな乳母カー。もちろん、拝一刀も八面六臂の大活躍。トンボを切ってみたり、流れるような刀さばきを見せてみたり、ああ良いものを見させてもらいました。これこそ殺陣だ、って感じです。もうおなか一杯。ごちそうさまでした。

いえいえ、お話はまだまだ続きます。黒鍬一族の総攻撃を父子でみごと撃退。とはいえ、さしもの拝一刀も手傷を負ってしまったのです。ヨロヨロ。ヨロヨロ。やがて見つけた廃屋に転がり込んだのはいいものの、できたのはそこまで。そのまま拝一刀は昏倒してしまいました。「ちゃーん」。愛しい大五郎の呼びかけにも返事すらかないません。しかし、こんな時こそ大五郎の出番。ちゃんが苦しい時は、自分が助ける。川の水を口移しで飲ませてみたり、お地蔵様にお供えしてあったお餅を自分の服と引き換えにもらってきて、ちゃんに食べさせたりと、拝一刀を救うための涙ぐましい努力です。とはいえ、しょせんは乳母カーに乗っている幼児。ドンドンドドンパ。ステテコトントン。なんだか楽しそうな太鼓のリズムが聞こえてくると、もうたまりません。ふらふら。ふらふらー。

うーん。うーん。はっ。拝一刀が目覚めると、そこには大五郎はいませんでした。その代わりにいたのは黒鍬一族の生き残り。そう、まともな手段では拝一刀を斃すことはできないと、小林昭二は大五郎を人質に取って、拝一刀を脅迫することにしたのです。まあ、目の前で人事不省状態だった拝一刀を殺せば、それでいいような気もしますけど、そこは映画的な都合ってことで。

ともあれ、黒鍬一族に案内されてやってきた拝一刀が見たのは、大五郎を井戸のつるべに結び付けて得意げな小林昭二と、横でイヤそうな顔をしているKAYO。思わず拝一刀は叫びます。「柳生汚し。その子をどうするつもりだ」。ニヤリとしつつ小林昭二は答えます。「すでに勝敗はついた。腰の胴太貫を捨ててもらおう。いかに拝一刀」。「断る」。へっ?どういうこと。「この井戸は底なし井戸だ。この綱を離せば、この子の命は無いっ」「殺したくば、殺したがよかろう。だが何のために。うぬら黒鍬衆も柳生一門の配下と成り下がったか」。そうまで言われると、小林昭二にだって言いたいことはあります。ええ、ありますとも。「柳生に逆ろうて妻を殺され、野良犬のように彷徨ううぬはどうじゃ」。つまり、お前に言われたくないよ、ってことですね。しかし、拝一刀は動じません。「我ら親子は冥府魔道に生きる者なれば、常人にあらず。六道四生順逆の境は最初から覚悟のうえ」。り、りくどうししょー。何言ってるか、さっぱりですが、とにかく、俺たちは普通じゃねえんだYO!ってことですね。どりゃー。斬りかかる拝一刀。もちろん、そうなると小林昭二だって応戦しなくちゃいけないので、綱から手を離すわけで、ガラガラ、ひゅーーっ、ボチャン。大五郎、落ちました。

やる気なさげなKAYOは放っておいて、小林昭二と黒鍬一族生き残りのみなさんを虐殺した拝一刀は、遅ればせながら、つるべをカラカラと引っ張っていきます。そうすると、ざざあ。ああ、大五郎が出てきました。びっしょり濡れてるけど、怪我はなさそうです。「ちゃーん」「大五郎っ」。見つめあう二人です。

ざっぱーん。ここは四国に向かう渡海船の甲板。舳の方には謎の侍3人組がいますよ。豪華なぽわぽわが付いた菅笠が、ちょっとソンブレロ風でオシャレな感じです。そんなイカした男たちはもちろん、公儀護送方、弁天来の三兄弟。そして、そんな三兄弟に、こ汚い浪人たちがジリジリと迫ってきました。「兄貴っ」と言う三男の来馬(岸田森)に長男の弁馬(大木実)が答えます。「阿波藩に雇われし、ごろつきどもか」。うぉりゃー。数を頼みに襲い掛かる浪人たち。しかし、鉄の爪やら棍棒やら、さらにはトゲ付グローブでメッタメタ。はい全滅したようです。

しかし、そんな争いを、他人事のように傍観していたのが3人ほど。われらが拝一刀。小悪党の三次(タコ顔の江幡高志)。そして、娘風の変装をしているものの、どうみてもムンムンしている鞘香ことKAYOです。ちなみに、このうち、三兄弟を狙っているのは拝一刀と小悪党の三次だけですけどね。え、KAYOですか。よく分からない。

ま、ともあれ、浪人部隊が全滅して、次は俺の番だとばかりに張り切る三次。ちなみにこいつの特技は放火です。事前に油を船に積み込んでおいて、海の真ん中で船を燃やす作戦。「へっ、弁天来のクソ野郎め」。ボボーッ。船室の入り口に巻いておいた油が燃え上がり、三兄弟、そして拝一刀たちは船室に閉じ込められてしまいました。メラメラ。このままでは、焼け死ぬか、船が沈没して溺死。いずれにしろ、うれしくない展開です。

しかし、弁天来の三兄弟は「こういうことには慣れておる」とマントに身を包み、火中を強行突破。火だるまのようになりながらも、海にダイブしていくのです。しかし、困ってしまったのが拝一刀。うーむ、大五郎もいるしなあ。ということで、愛刀の胴太貫で天井をゲシゲシと突き始めましたよ。そして、天井がいいかげんボロボロになったところで垂直ジャーンプ。天井を突き破って拝一刀は、無事甲板に躍り出るのでした。とはいえ、甲板もかなり火が回って危ない状況なのは言うまでもありません。「大五郎、一時の辛抱ぞ」と声をかけた拝一刀は、乳母カーごと大五郎をぶん投げます。ぴょーん。そのまま、火柱を越え、大海原に飛んでいく大五郎と乳母カーでした。さらに、自分は仕込み槍を使って、そのまま棒高跳び。ぴよーん。はい、拝一刀も燃え盛る船から脱出です。

乳母カーを押しつつ明石海峡を泳ぎ渡る拝一刀。ようやく、浜辺に上陸して海辺のボロ小屋に入ったものの、寒くて寒くて死にそうです。ということで、とっとと着物を脱ぎ始める拝一刀。さらには大五郎も裸にして、ギロリ。なぜか付いてきたKAYOに迫ります。がばっ。KAYOの着物をひんむく拝一刀。「ぐ、ぐぬ、おのれ仇にぃ」と抵抗するKAYOですが、すぐさま甘い声に。「ああーん」。しかし、覚悟していたことは何も起こらず、拝一刀と大五郎に身を寄せられているだけですよ。「火がないのだ。温まらねば三人とも凍え死ぬ」。それはそうかも知れないけど、でも拝一刀は部下を全滅させた仇。そう、リーダーのあたしが頑張らなくてどうするの。頑張れKAYO。心を奮い立たせ、そぉーっと刀に手を伸ばすKAYOですが、大五郎が無邪気にKAYOのオッパイをいじってきましたよ。きゅんっ。思わず力が抜けてしまうKAYO。いくらムンムンしていても、心は乙女みたいです。そうして、よく分かんないまま、抱き合った3人は朝を迎えるのです。

しばし時は流れ、どどーん、ここは大砂丘。弁天来三兄弟に先導された高松藩の護送キャラバンが進んでいます。「兄者、阿波藩の奴ら襲ってくるかな」と尋ねる天馬(新田昌玄)に、弟の来馬が言います。「見渡すばかりの砂丘。人影もなければ、その気配もない」。しかし、そんな弟の油断を戒める長兄の弁馬。「必ず来る。この幕屋忠左衛門を江戸に差し立てられれば阿波藩は二十万石の減収となるのだ。死にもの狂いで襲ってくる。油断いたすな」。と、そんな弁馬が何かの気配を察知したようです。しゅたたた。ひとり前方に走っていった弁馬は、鉄の爪を砂の中にグサッ。おお、砂に血がにじんできましたよ。そしてグイッ。鉄の爪を引っ張ると、なんとタコ顔の小悪党が出てきたじゃありませんか。いや、脳みそに鉄の爪が突き刺さっているので、「出てきた」というか「釣られた」が正確かもしれません。その後もアチコチを走り回って、砂の中に潜んでいた侍たちを狩り出していく弁馬。その様は、まるで潮干狩り状態。そう、デス潮干狩りです。

砂の中にバラバラに潜んでいて、どうやって横の連絡を取ったのかは分かりませんが、20人ほどの阿波藩士が一斉に砂の中から飛び出してきました。一気に幕屋忠左衛門を殺す作戦でしょう。しかし、姿を現してしまえば、ちょっとニブイ天馬、来馬も戦闘力は侮れません。おりゃー。サクサク斬られていく阿波藩士のみなさん。せっかく、熱い砂の中に潜って我慢していたのに残念、あっという間に全滅です。

よし敵は全部斃した。と思ったのもつかの間、オアシスっぽいところに幼児の姿がありますよ。と、その幼児がグイっと指を突き出しました。そして、その指が指し示す砂丘のてっぺんに見える黒い影は……。

ファンファーレが鳴り、ドラムがドムドムと気分を盛り上げます。
「やはり来たか」弁
「よくぞあの火を逃れて」天
「せっかく助かった命をまた捨てに来るとは」来
「参るっ!」冥府魔道親父

シュタタタと走った拝一刀は、まず天馬に襲い掛かります。どりゃー。天馬自慢の棍棒を叩き切り、さらに天馬の刀もへし折る豪刀胴太貫。そして、天馬の脳天を唐竹割りです。頭から首あたりまで半分に裂けた天馬から血しぶきピュー。まず一人。

と、弟の来馬が襲い掛かってきました。しかし拝一刀は慌てず騒がず、持っていた自慢の胴太貫をスローイング。ひょい。ぴゅーん。ぐさっ。「か、刀を投げるとは」バタッ。はい二人。

はい、今度は一番強そうな、長兄の弁馬です。しかし胴太貫は投げちゃったし、拝一刀はどうするつもりなんでしょう。グイっ、と握りこぶしを固めて弁馬にガンと飛ばす拝一刀。じりっ、じりっ。慎重に間合いを計ります。と、いきなり「キェーッ」と叫びつつ拝一刀は大ジャンプ。ぴよーーん。そのまま来馬の死体のそばに着地した拝一刀は胴太貫を回収して、横殴りに弁馬を斬るのです。ざしゅっ。のどを斬られる弁馬。

「首が、わしの首が泣いているように聞こえる。首袈裟に斬った切り口が木枯らしのように鳴るのを虎落笛(もがりぶえ)と言うそうな。一度、そんな音が出るように斬ってみたいとは願っていたが、己の首で聞くとは。笑止っ!」ドバーッ。まるで消防車の全力放水なイキオイで血を吹き出す弁馬でした。はい全滅。

しかし、弁馬の最期の言葉をまったく聞いていなかった拝一刀は、すでに高松藩士が護衛する駕籠に斬りこんでいました。バッサバッサと護衛を斬り、ついでに幕屋忠左衛門も惨殺です。ふう、ミッションコンプリート。

大五郎と手をつないで砂丘を歩いていく拝一刀。この冥府魔道親子に明日はあるのか、って、アレ。なんか忘れているような。そうそうKAYOです。ここは幻想的なシーンで、はっきり何が起こったのかは分かりません。まるで白日夢のような感じですが、歩いていた拝一刀がスラリと胴太貫を抜き放ちます。その刀身がキラリと光り、KAYOの刀のキラメキと十字架のように交錯。慈母のような優しい笑顔を浮かべたKAYOの姿がスローで後ろに倒れていくだけです。


一作目より血まみれ度がアップしました。指、鼻、耳、腕、足、もうなんでも乱れ飛んでます。とはいえ、あまり陰惨にならないのは、血しぶきの量も半端じゃないので、むしろギャグの領域に入っているからでしょう。拝一刀というか若山先生単体で観た時には、満足度はすこし低め。一作目で見せた、超高速抜刀、斬る、納刀みたいな神業が見られませんでした。しかし、その分、大木実率いる弁天来のカッコよさや、KAYOのムンムン路線が映画を盛り上げ、総合的にみると高評価をあたえていいんじゃないかと思います。



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