arudenteな米

食と映画感想とその他もろもろ個人の趣味と主張のだらだら日記

サンキュー・スモーキング

2006年11月24日 | 映画
サンキュー・スモーキング(THANK YOU FOR SMOKING)
http://www.foxjapan.com/movies/thankyouforsmoking/

≪ストーリー≫
タバコ研究アカデミーのPRマンをするニック・ネイラーは、厳しさを増すタバコへの攻撃をかわすため連日マスコミの矢面に立って戦い続ける業界の顔。中でも、パッケージにドクロマークを、と息巻くフィニスター上院議員は目下最大の懸案事項。そんなある日、ニックは映画を使ってタバコのイメージアップを図る“スモーキング・ハリウッド作戦”の指揮を任される…


煙草に対するヒステリックな嫌煙活動が加速している今だから煙草業界の宣伝マンが主人公になっているのが既に皮肉で風刺なのですが物語の内容から言って相手が攻撃的であれば業種は何でも良かったと思う。

だからこそ今、煙草を持ってきたところにセンスを感じる。

非常に軽妙で終始ニヤニヤできる心地良いテンポのピガロ作品です。

ネタバレが混じる感想は下に







ピガロ(picaro)はスペイン語で悪漢・ならず者に由来していて、主人公が時に激しく、時に華麗に、一般的に悪と言われる行為を成す内容の物で社会の矛盾を風刺すると言う側面もあります。

先に書いた様に煙草でなくとも本作に登場した主人公の友人のアルコール業界でも銃業界でも成り立つ物語だがやはり今の旬は煙草だと思う。

口先三寸で正解はださず議論を横滑りさせ、文字通り煙に巻くその姿勢はピガロそのもの。

しかし彼は大きな意味でアメリカ人の精神に忠実で「自分で判断してください」と正論を出している。

これは責任転化社会の風刺である。

この映画の素晴らしい所は主人公のニックは最後まで反省をしないという悪漢な部分である。
多少気弱なところやマヌケなところも見せるが彼は生き方を変えない。
そうでなくては風刺にならない。

息子役のキャメロン・ブライトは『ウルトラヴァイオレット』では可愛気げはなかったが今作では当たり役とも言えるほど親父役のアーロン・エッカートと息があっていた。

アルコール業界代表のマリア・ベロ、銃業界のデヴィッド・コークナー 、ケイティ・ホームズの記者やウィリアム・H・メイシーの上院議員等の脇を固める俳優も非常によい

特にウィリアム・H・メイシーは出てくるだけで困難と苦難を期待させる役者で彼が出てくると彼の苦労を期待してしまうのだがまったく見事に答えてくれた。

会話も楽しく(というか、物語の性質上、会話が楽しくなければ絶対にいけないのだが)ポリーとボビー、ニックの会話や息子とニックの会話とか、とにかく会話だけでも、だらだらと聞いていたくなる。

途中で挿入されるイメージ映像や回想の選択も見事で個人的に画面的小ネタで笑ったのはラスト付近の検査機械で引っ掛かるボビー。
銃業界の代表で最初の回想で撃たれた場面があるのだが細かく気を配っている。

また、最後の登場人物達のその後までちゃんと作っていて落ちも素晴らしかったと思う。

軽妙な作品と言う事ではかなり上位に来ると思う。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ピガロ (とらねこ)
2006-11-27 14:43:26
こんにちは!TB&コメント、ありがとうございました
もともとスペイン語であるピガロを、演劇や小説の技法としてイギリスでは“ピカレスク”なんて言ったりして、自分にはこの言い方の方がシックリきたりします。
ウィリアム・H・メイシーは、見るからにイジメたくなる顔してますよね~(笑)
ハムスター顔って、なんとなく自分の中のサド感を煽ります
ピカレスク (arudenteな米)
2006-11-27 20:22:31
・ とらねこ 様

英国風ピカレスクは悪党物語より定義が広く悪党になってしまった人のピカレスクロマンが一般的に多いのであえて自分はピガロにしてみました。

ウィリアム・H・メイシーのドルーピーな眼の雰囲気は昔から気になる顔でありました