星のひとかけ

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『おとなのための星の王子さま』 ちくま学芸文庫

2017-01-25 | 文学にまつわるあれこれ(詩人の海)



 「ねえ、ほくが地球に降り立って……明日は一周年記念日なんだ……」

、、この本のこの部分を読んでいて、 昨日、、わたしにとっても小さな「記念日」だったことを思い出しました。。 王子さまは地球に降り立って一周年、の記念日・・・。 わたしにとっては、 地球でもう一度くらしていいよ、、と 新しい時間をもらった記念日。。。

『星の王子さま』の語り手である 「飛行士」さんは、 

 「こうして、ぼくは六年前、サハラ砂漠で飛行機が故障するまで、心から話しあえる人もなく、ひとりで暮らしていました・・・」

、、と、 6年前に「王子さま」と出会ったときのことを物語り始めます。。 つまり、、 王子さまが飛行士にさよならをして、、 地球から姿を消して、 6年が経った、、という意味です。 「飛行士」は6年前、 砂漠に飛行機が墜落して、 飲料水も残り少なくなって 死にかけていました。。 だけど、、 その砂漠で 王子さまと新しい時間をもらって、 もう一度 地球での命をもらって そうして6年経った、、 ということなんです。

、、 なにが言いたいか というと、、 「王子さま」にとっての たった1年の短い時間も、 「飛行士」に与えられた6年プラスこれからの時間も、、 時間の長さはそれぞれ違っても、 「地球」の上で暮らすものは みんな期限付きの時間を生きている、、という当たり前の事なのですけど・・・ 

その時間を、、 「笑っている星」のようにかがやかせてくれるものは・・・

 ***

ちくま学芸文庫の 『おとなのための星の王子さま』(小島俊明著、2002年)は、 タイトルの通り、 サン=デグジュペリの『星の王子さま』を、 大人が読み解くために解説をしてくださる本です。

たとえば、、
砂漠に不時着し、 壊れた飛行機のそばで疲れて眠っている飛行士のところへ 王子さまがあらわれて、、

 「ぼくに……羊を描いて……」 

と、唐突に王子さまは話しかけるのですが、、 
「羊」と日本語に訳された言葉の、 もとのフランス語の言葉が意味するものも 丁寧に解説がなされていて、、 そして、 飛行士がとまどいながらも 王子さまに描いてあげた 4つの羊の絵についても、 物語の最初に出てくる 「象をのみこんだウワバミ」の奇妙な絵と合わせて、 それらの意味するものを示してくれています。

ほかにも、、 童話などで いじわるでずる賢いイメージで描かれていることの多い 「狐」、、。 『星の王子さま』では 王子さまはキツネに、、

 「一緒に遊ぼうよ」と王子さまは提案しました。 「ぼくはこんなにも悲しいんだよ……」

と話しかけますが、、 その「キツネ」は私たちが想像する [fox] とは違うことを解説してくれています。 だから、、 「悲しいんだよ……」という王子さまに対して、 とてもとても重要なアドバイスを狐はくれるのです。。 このあたりは、 全然いままで読み落としてきた部分で、、 狐と王子さまのやりとりの たいせつな大切な意味にいまさらながらに気づかされて、、 思わず涙・涙・・・ なのでした。。

もちろん、、 「バオバブの木」や、 王子さまが自分の星にのこしてきた「薔薇の花」や、  飛行士と一緒に王子さまが探しにいく砂漠の中の「井戸」や、、 最後にあらわれる「蛇」などについても、 
それから、、 この物語が書かれたいきさつ、 当時の世界の状況、 戦争のこと、 日本のこと、、 それらも丁寧な解説をしてくださっています。

、、この本も、、 長い間、 本棚で眠ってしまっていた本でしたが、 先日、、 ふと手に取ったのは、 今の自分と、 いまの世界と、、 それらに対する想いがわだかまっていたからなのかもしれません。。

 ***

『星の王子さま』には、 とても子供向けとは思われない 深い深い メタファーやアレゴリーがいっぱい含まれていることは、 自分なりにも分かっていたつもりでしたが、、 この本で解説が読めてほんとうに良かったです。 せつない物語に かつても涙したものでしたが、 あらためて解説を味わっているだけでも泣けてきてしようがなかったです、、

、、 何より、 著者のこの本への想い、、 サン=テックスがこの本に込めようとした「想い」を必死で代弁しようとされている気持が文章から伝わってきて、、。 
でも、 その「想い」が余りにも懇切丁寧で、、 「詩的なメタファー」の美しさや重要さ、 詩的表現に対する熱い賞賛を、 繰り返しくりかえし説かれるので、、 (そんなに強調せずとも…) と 苦笑しそうになる部分もあり、、

でも、 末尾の 「おわりに」という著者の文章を読んでその理由がわかりました。 
この本は、 もともとは 大学生への「フランス文学」の講義が基になっていて、、 しかも 「受講生が文学部以外の学生たちなので、 文学とは何か、 文学を読み説く歓びはどこにあるか、 日常語と文学用語はどう違うか、 などと初歩から問い直すことになった」 という理由があったのでした。 だからこそ、 丁寧すぎるほどに 繰り返しくりかえし、 詩的表現を読み解く文学の「感動」を 表しておられたのでした。

、、すばらしい先生は 「感動」を講義の中であたえてくれます。 きっと、 この『星の王子さま』の講義を受けた学生さんたちは、 生涯この物語の意味と、講義を 記憶にとどめることでしょうね。。

 (上記の引用文は 『おとなのための星の王子さま』小島訳のものです)

 ***

最後に、、 つけたし、、

前回、、 「Song For Zula」という歌のことを書いたとき、、 「どんな愛情であれ、、 互いに完全に「自由な」愛のかたちなど有り得ないな、、と 最近痛く感じることがあって・・・」 、、と書いていますが、、

その私の「迷い」にも、、 不思議とこの本が答えてくれている気がします。。 さきほど書いた 「狐」が、 王子さまに教えてくれる 「愛」の意味・・・

王子さまが自分のいた星に残してきた「薔薇」。。 朝は水をやり、 風よけのついたてを立ててやり、、 夜になったら寒くないようにガラスで覆ってあげる、、 まったく「手のかかる」薔薇の花のこと、、 

「狐」は王子さまにこう言いました。

 「きみの薔薇の花がそんなにも大切なものになったのは、きみがその薔薇の花のために時間を費やしたからなんだよ」

、、 時間を費やして、 手間をかけて、、 それが無かったら 王子さまの薔薇は世の中のどこにでもある何万もの薔薇と見分けがつかないただの薔薇、、。 愛とは「手のかかる」ものなんだ。。。 そして 「時間もかかる」ものなんだ、、、ね。


・・・ 逆に言えば、、 


「手をかけさせる」薔薇 でも良いんだろうか・・・(笑)


すみません・・・

、、 それは、、 曲解 というもの ですね。。。

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