日本専門評論

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日蓮とナショナリズム、そして創価学会

2006年11月15日 22時20分30秒 | 創価学会

(私のコメント)

今回は、引用無しで色々と。

日蓮は、歴史的にナショナリストに支持されました。血盟団事件の井上日召、桜会の大川周明、北一輝、石原莞爾と、 戦前の右翼の大物が列挙します。それに日蓮系ナショナリズムの中心となった国柱会の田中智学は、創価学会の牧口常三郎が傾倒した1人です。

では、何故、日蓮が、ナショナリストに支持されたのでしょうか?

まず日蓮は、比叡山で修行していますから天台宗系です。天台宗系の特徴として、徹底した自己否定があります。最澄、道元、法然(親鸞) 、日蓮は、皆、自分を愚かでくだらない存在として自己否定をし、その上でそれでも成仏できると言っています (欲を抱く醜い自分を否定するのが天台宗系で、小欲より大欲を抱けと自己肯定するのが真言宗の空海です)。有名なのは親鸞の愚禿ですが、 日蓮宗系の信徒ならば日蓮のセンダラの子は知っているでしょう。ちなみに創価学会は、 現世利益を掲げて幸福である自分という自己肯定をするので、日蓮宗を真言宗として読み解いたということになります (日蓮は法華経を自己否定で読み解きましたが、創価学会は法華経を自己肯定で読み解くわけです)。

さてセンダラの子は血縁の自己否定ですが、日蓮は地縁での自己否定もしています。日本の片田舎で生まれ育ったって話です。 そして日蓮の凄さは、日本の片田舎が日本の中心であり世界の中心でもあると切り返すとことにあります。ナショナリストが、 日蓮に惚れる理由はここです。

広大な世界のハートランドであるユーラシア大陸に対して、日本は大陸の片隅のちっぽけな島国に過ぎません。日蓮は、 その日本こそが世界の中心であるというわけです。ナショナリストにとって、世界の片隅の日本という島国根性ではなく、 世界の中心である日本という意識の方が好ましいですし、むしろナショナリストであるがゆえに当然抱く感情でしょう。 だからナショナリストの意識は、日蓮のそれとシンクロするのです。

ところで牧口常三郎は、「人生地理学」の中で、陸路偏重の地理学から海路重視の地理学への転換を提唱しています。 つまり陸路重視でユーラシア大陸の片隅の日本という地理学から、 四方を海洋に囲まれてどこへでも行ける世界の中心である日本という地理学への転換です。牧口は、大英帝国を例に、日本が島国根性から脱して、 国を富ませるには必要なことと言っています。これも日蓮の世界の片隅の日本から世界の中心の日本への切り替えしとシンクロします。

また立正安国論も、ナショナリストに好まれる一因です。立正安国論は、法華経に帰依しないと、国が乱れ外的に攻められるという論です。 ナショナリストの掲げる主張を実現しないと内憂外患で国が滅びるという論と同期します。創価学会の戸田城聖のマッカーサーは仏であるや、 池田大作の原爆は仏罰であるという主張は、法華経に帰依しなかったからというものでしょう。

このように日蓮はナショナリストに親近しているのです。そして日蓮根本主義を徹底しようとすれば、井上日召のように、日蓮の 「生きて法謗を続けさせるよりも殺して法謗を止めさせた方が当人にとっては功徳である(秋元御書)」を実践してしまいます。 そうでなくても日蓮根本主義の徹底は、日蓮の思想性から、ナショナリズムへの転換を意味します。

公明党のラムズフェルドと呼ばれた冬芝の登場は、公明党・創価学会によるナショナリズムの扇動の象徴です。思えば、 創価学会が日蓮正宗から破門され、独自路線を模索する中で日蓮根本主義を掲げた時に、種が蒔かれていたのかもしれません。 良いか悪いかは別として、藤原弘達が「創価学会を斬る」の中で「いずれ創価学会・公明党は、自民党の補完勢力として、 ナショナリズムの流れを作る」と予測したことは正しかったのです。