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ミスをなくすにはアナログ情報管理が必要な理由 小山昇のもうかる整頓(第6回)

2017年05月14日 19時32分14秒 | 市場動向チェックメモ
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO16091410Y7A500C1000000/?n_cid=DSTPCS001

ミスをなくすにはアナログ情報管理が必要な理由
小山昇のもうかる整頓(第6回)
(1/3ページ)2017/5/14 6:30日本経済新聞 電子版

日経トップリーダー
小山昇 株式会社武蔵野 代表取締役社長。日本経営品質賞を2度受賞し、多くの企業の経営指導を手掛ける(写真:菊池一郎)

 「会社の儲けの7割は整頓で決まる」と説くのは、自ら「落ちこぼれ集団」だという武蔵野を率いて高収益企業に変身させた小山昇社長。武蔵野で実践してきた整理・整頓術を公開する連載の第6回。

【Q】マグネットを使ったチェック表、何が便利?

 下の写真のチェック表、どこがすごいか分かるでしょうか。ルートセールスを手掛ける、ダスキン事業の法人部門で使っています。武蔵野が業務改善の取り組みを始めた時期の歴史的な作品です。

入金チェックの手間が8分の1に。マグネットを活用した、小さいながらも画期的な工夫とは?

 この表は、左端に8人の営業スタッフの名前を並べ、それぞれが、お客様から受け取ったレンタル料の入金を済ませたかどうかを、黄色のマグネットを使ってチェックしています。基本的にはミスを防止する仕組みです。

 始業時は、「入金してない~」と一番上に表示された列に、黄色のマグネットが8つ並びます。そして営業スタッフが外回りを終えて事務所に戻り、入金を済ませると、マグネットを左側の「入金しました~」の列に移します。だから、終業時には8つのマグネットが左側に縦一列に並ぶことになります。

 問題は、次のステップです。

 翌朝には、8つのマグネットは再び、「入金してない~」という列に移っていなければなりません。こういうとき、ほとんどの会社は、マグネットを1つずつ移します。移動回数は、合計8回です。

 我が社の仕組みでは、マグネットの移動1回で済ませます。チェック表の上部にある「入金してない~」と「入金しました~」の項目もまた、マグネットです。2つのマグネットを入れ替えれば、それでおしまい。

 些細(ささい)なことと、侮ってはいけません。こういう小さな手間を徹底して潰してきたから、赤字続きの零細企業だった武蔵野が、30年後の今は高収益企業です。8個のマグネットを1個ずつ移動する仕事を、最初は「面倒臭い」とちらりと感じても、3回繰り返せば、社員は慣れて忘れます。その手間を省く手段を考案するなど、まずできません。相当にレベルが高いことです。

 ある会社に経営指導に行ったときのことです。本社の1階が事務所で、2階が倉庫でした。1階で、事務職の女性社員に尋ねました。

 「朝、出勤してから退勤するまでに何回くらい、事務所の外に出ますか?」

 「せいぜい1回か2回でしょうか」彼女はそう答えました。私は、さらに尋ねました。

 「この事務所には毎日、お客様がいらっしゃいますか」

 「ほとんど来ません」

 そう彼女が答える間にも、2階は頻繁に人が出入りしています。

 なんと愚かなことでしょう。それなら1階を倉庫にして、2階を事務所にすればいい。商品の入出荷で階段を上り下りするのは、健康にはいいですが、儲ける観点で考えれば、バカバカしいことこのうえありません。

 しかし、この会社を笑い飛ばせる資格のある人など、ほとんどいません。こういう類のムダが放置されている会社は、数限りなくあります。

 人間は本質的に、だらだらと効率悪く働くのが好きです。そして多くの社長は、そんな社員の姿を見て「頑張っている」と、勘違いします。

 社員が面倒臭いことをやるのが好きなら、社長も面倒臭いことをやらせるのが好き。これでは儲かるはずがありません。そういう意味で、前の写真は試金石です。この写真を一目見て、移動の手間を8分の1にする工夫に気づけるか。そもそも社長が気づけるか。そして社員はどうか。現場の底力が問われます。

【A】移動の手間が8分の1に。大幅な効率アップ

【Q】大事な情報はアナログで共有。それはなぜ?

 下の写真は、仕事の「見える化」の実例です。同じ職場で働くスタッフのスケジュールを、オフィスの壁に大きく貼り出し、情報共有しています。この部署が手掛けているのは、飲食店などのお客様に、ゴキブリなどの害虫獣駆除のサービスを提供する「ターミニックス事業」です。

スケジュールを管理するボード

 スタッフは、お客様の店舗を定期的に訪問します。青や白のマグネットを使ったスケジュール表から、3人のスタッフが各自、何月何日の何時に、どのお客様を訪問してサービスを提供するかが、一覧できます。

 青や白のマグネットに、お客様の店名が書かれています。片面が青で、裏が白です。サービスを提供する前は青い面を表にして、終わると、裏返して白にします。だから、担当者が予定通りに仕事を進めているかが一目瞭然。ヌケモレを防げます。

得意先の名前と所在地、請求金額をマグネットに表示。仕事が終わると裏返し、青から白に色を変える。進捗状況が一目で分かる

 マグネットから分かる情報は、それだけではありません。上の写真を見てください。お客様の店舗の所在地と、1回当たりのサービス単価が書かれていて、請求のミスなどを防いでいます。

 さらに、オレンジや赤、白など、様々な色の丸いシールが貼られているのに、気づかれたでしょうか。これらは色ごとに意味があり、「お客様からカギを預かっている」「このお客様は、特に丁寧にあいさつしないとダメ」といった具合です。こうしておけば、新人スタッフも初日から、何に注意したらいいかが明確に分かります。礼儀にうるさいお客様に、新人がおざなりな挨拶でクレームを招くといった事態が防げます。上司がこと細かに教えなくても仕事のコツが分かり、指導の手間が省け、新人のストレスも軽減できます。

 最近では、このような職場での情報共有に、グループウェアの「サイボウズ」をはじめ、IT(情報技術)ツールを導入する企業も増えていて、我が社も積極的に活用しています。しかし、本当に大事な情報は、絶対にアナログで共有します。なぜなら、ITツールを活用したデジタル情報の使いこなしは、誰にでもできないからです。

 自分から「サイボウズ」にアクセスして、明日の仕事のスケジュールを確認する。こういう働き方は、ITが使いこなせるだけでは不十分で、高度な自己管理能力が求められます。一方、壁に大きく掲示されれば、誰だって嫌でも目に入ります。自己管理能力が低くても、必ず、自分のスケジュールを確認し、それに従って行動する。

 こんな話をすると、次のような勘違いをする人が出てきます。

 「うちの会社(職場)は、自己管理能力が高い人ばかりだから大丈夫」

 「自己管理能力が低い人だけ、アナログで管理すればいい」

 「そもそも自己管理能力を高める教育をすることが重要ではないか」

 このような考えが間違っているのは、なぜか。

 まず、会社の仕組みは、基本的に能力が低い人を基準に設計すべきです。今いる社員が高い能力を持っていても、です。

 会社は絶えず、新しい人材を入れます。ITで管理をしている職場に、ITスキルが低い新人が入ってきたら、どうなるか。仕事を教えられません。能力が低い新人でも、最初からある程度の仕事をしてもらわなくては、会社は儲かりません。だから、最初から必要なことは、絶対にアナログで情報共有する。

 そして、アナログで情報共有する仕組みをつくったら、全員が同じ仕組みを使う。自己管理能力が高い社員に例外を認めたら、仕組みの運用が面倒です。

 そもそも、自己管理能力は、一朝一夕に身につきません。個人差も大きく、頑張っても、一生、身につかない人もいます。そういう人が会社にとって不要か。そんなことはありません。自己管理能力は低いが、コミュニケーション能力は非常に高い。そういう人には、弱みを潰すより、強みであるコミュニケーション能力の発揮に力を入れてもらったほうが、会社のメリットは大きいです。

 会社の仕組みは、能力が低い人でも成果を出せるようにつくる。多くの経営者や幹部は、「社員全員が、仕事ができる人」の前提で、仕組みをつくります。ここに落とし穴があります。「仕事ができる人」を前提とした仕組みに、「仕事ができない人」を置くと、まったく身動きが取れない。しかし、「仕事ができない人」を前提とした仕組みのなかに「仕事ができる人」を置いても、ほとんど問題は起きません。

 そして、「仕事ができない人」を前提とした仕組みは、超アナログ。壁に色とりどりのマグネットを貼ったスケジュール表は、その一例です。

【A】「能力の低い人」に合わせたら、アナログになる

[『小さな会社の儲かる整頓』を基に再構成]
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