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日米欧の距離感、理論と感性の間で揺れ動く時代  欧州総局長 大林尚

2017年01月30日 18時26分42秒 | 市場動向チェックメモ
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO12196890X20C17A1000000/

日米欧の距離感、理論と感性の間で揺れ動く時代  欧州総局長 大林尚
(1/2ページ)2017/1/30 6:30日本経済新聞 電子版

 広辞苑で理論という語を引くと、2番目の意に「実践を無視した純粋な知識」とある。欧州連合(EU)からの離脱が英経済を失速させるだろうという考え方は、その一例かもしれない。英国の国内総生産(GDP)は2016年10~12月期に年率換算で実質2.4%の高い成長を記録した。16年通年では2%成長だ。6月に有権者がブレグジット(英国のEU離脱)を選択したあとも、主要7カ国(G7)のなかで特筆すべき好景気が続いている。

経済が好調な英米両国の指導者は一方で先行きのリスクも意識している=ロイター=UPI共同

 米国も似ている。25日のニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均は2万ドルの大台を初めて突破した。26日付のフィナンシャル・タイムズ紙(FT)が載せた対数目盛りのグラフからは、1900年以降の米株式相場の転換点が見て取れる。経済と安全保障に関する政策で保護主義を前面に押し出すトランプ大統領のやり方が株式相場の足かせになるという理論は、これまでのところ「純粋な知識」にとどまっている。

■「欧米」と呼ぶ時代、過去になる可能性

 とはいえ英米とも17年の経済は多難だ。特にEUからの強硬離脱を唱えるメイ英首相の政治信条が英・EU双方の経済にマイナスの影響を及ぼすのは避けがたい。首相は「もの」「お金」「サービス」そして「人」が域内を自由に行き来する欧州の単一市場から去ると宣言した。「純粋な知識」が現実化する場面が来るかもしれない。27日にメイ、トランプ両氏がワシントンで開いた首脳会談で自由貿易交渉の開始に意欲をみせたのは、そうしたリスクをともに意識している証しだ。

 この先を展望すると、日本発の視点で西欧主要国と米国をひとくくりにして「欧米」「米欧」と呼ぶ時代は過去のものになると思えてくる。ドイツ、フランスなどEUのリーダー国と英国との間には経済外交上の明確な一線が画される。特別な関係を保ってきた「英米」という概念と、欧州大陸の主要国を念頭に置いた「米EU」という概念とは、区別が必要になる。

 もちろんロシアの軍事脅威に対抗するために、東欧やバルト3国を含めた欧州大陸の国々と英国とが安全保障上の緊密な同盟関係を保つ必要性は不変だ。その礎が北大西洋条約機構(NATO)だが、トランプ大統領はNATOへの関与を弱める意向を表明した。メイ首相は会談でこの点にくぎを刺したが、「英EU」というくくりでみると、安全保障面では欧州と米国との関係が一筋縄で行かなくなる事態を想定しておくべきだ。

 さらに突きつめれば、G7を「日米欧」の主要国とくくってきた日本発の視点が通用しにくくなる時代が来るのではないか。民主政治の尊重や法の支配による国家統治など普遍の共通言語は残るが、7カ国が結束してことに当たる場面は先細りにならざるを得まい。5月にイタリアのシチリア島で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)が試金石になる。

 さて日米である。経済連携にフォーカスすると、安倍晋三首相は多国間の環太平洋経済連携協定(TPP)を第一に考えると強調しつつ、TPPから抜ける米国との間で自由貿易・経済連携交渉に臨む選択肢を残している。かつての日米摩擦を思い起こすと両国政府間の交渉は苛烈を極めるだろう。他方、交渉は日本にとって米側の不条理をただす好機にもなり得る。多国間協定から2国間協定への衣替えをうまく成し遂げるなら「日米」というくくりがいっそう強固になる可能性がある。

■切れ目なく続く日本の対英投資

 日英はどうか。日米関係に比べると日本からみた優先度は下がるが、英国がブレグジットを決めたあとも日本企業の対英投資は活発だ。ケンブリッジ州に本拠を置く半導体設計会社アーム・ホールディングスのソフトバンクによる買収は、7月の発表時点の外為相場で3兆3000億円を上回る超大型案件だ。ソフトバンクの孫正義社長は「英国は政治的に難しい状況にあるが、今が対英投資のよい機会だと考えた」と語っていた。

 英北東部の港湾都市サンダーランドに生産拠点を持つ日産自動車は、カルロス・ゴーン社長がメイ首相と会談しブレグジットに関する「懸案事項を素早く解決した」(25日付本紙「私の履歴書」)。欧州の生産拠点としての優位性は揺るがないという示唆だ。

ケンブリッジ大での和食うまみセミナーでは多種多様な日本酒が供された(大林尚撮影)

 買収額の大きさという点ではソフトバンクに及ばないが、日本の対英投資は切れ目なく続いている。JA全農と農林中央金庫は昨秋、英食品卸会社を傘下に収めた。ロンドンは和食レストランの開店ラッシュに沸いている。ブレグジット後に英国の食品規制が緩和され、多様な和食材を提供しやすくなる利点もJA側の念頭にあろう。

 今月、ケンブリッジ大学のコーパス・クリスティ・カレッジで和食のうまみと日本酒の奥深さを紹介するセミナーがあった。出席者は70人ほど。「和食と日本酒がロンドンほどには浸透していないケンブリッジで、その良さをオピニオンリーダーたちに知ってもらいたかった」と在英日本大使館の担当者。ケンブリッジ州に今年、酒類メーカーの堂島麦酒醸造所(大阪市)が日本酒の醸造所を開業させることもあり、多くの参加者が興味津々の様子だった。食文化が貧弱だと言われる英国人の間で高まる和食への関心は、両国の文化交流の強化に直結する。

 この春に火蓋が切って落とされる英政府とEU執行部のブレグジット交渉は、かつてなく厳しい外交交渉になる。その日本への影響について理論を押さえておくのはもちろん大切だが、予断を排し現実を見落とさない鋭い感性もまた必要になる。


大林尚(おおばやし・つかさ)
84年日本経済新聞社入社。経済部編集委員、論説委員、欧州編集総局(ロンドン)編集委員を経て16年4月から同総局長。年金、医療改革や人口減少問題に一家言を持つ。欧州の構造問題を取材。
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