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体操「自動採点」 富士通、世界標準作りへの挑戦

2017年08月09日 09時26分25秒 | 市場動向チェックメモ
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO18991720Z10C17A7000000/?dg=1

体操「自動採点」 富士通、世界標準作りへの挑戦
(1/3ページ)2017/8/9 6:30

スポーツイノベーターズオンライン
 2020年東京五輪の体操競技、いや、すべての採点型競技にとって“革命”ともいえる技術の開発を、富士通が進めている。

 「3Dレーザーセンサー」という、これまでスポーツ界で採用の実績がない技術を活用した、審判の採点支援システムである。非接触のセンサーが取得したデータから競技の判定に必要な数値を導き出して審判の採点を支援する。「ゴールは、東京五輪までに男子6種目、女子4種目の計10種目をカバーすること」。開発を主導する富士通研究所 応用研究センター ライフイノベーション研究所 所長の佐々木和雄氏はこう語る。

採点支援システムの審判用画面例。「正面支持」の姿勢においてあん馬に対する体の角度を自動的に算出(図:富士通)

 “ひねり王子”の愛称で親しまれている白井健三選手の新技「シライ3」。現在最高のH難度のこの技は、目にも留まらぬ速さで「後方伸身2回宙返り3回ひねり」を繰り出す。こうした技の高度化に伴い、もはやプロの審判といえども肉眼で常に正確な判定を下すのが難しい状況になっている。

 このため、体操競技の判定にはしばしば“ぶれ”が生じ、それが選手やコーチの不満の温床になるばかりか、スポーツの魅力を損なう要因となっていた。

■誤審をなくしたい

 2016年10月19日。国際体操連盟(FIG)は、当時、日本体操協会専務理事だった渡辺守成氏を第9代会長に選出した。五輪実施競技の国際競技団体(IF)で日本人がトップに就任(2017年1月1日付)するのは23年ぶりという快挙だった。

 会長選の前日に行われたプレゼンで、渡辺氏は、富士通と富士通研究所、日本体操協会が共同で開発を進めている採点支援システムをデモし、その導入を2020年東京五輪へ向けての政策の目玉として掲げた。つまり、同システムは会長の“肝いり”のプロジェクトなのだ。

 そこには「体操競技から誤審をなくし、もっと透明性があって公平なものにしたい」という、渡辺会長、そしてFIGの強い思いがある。

 現在、体操競技の採点は、技の難易度を評価する「Dスコア(演技評価点)」と、技の出来栄えを評価する「Eスコア(実施点)」の合計点から成る。体操の採点規則をまとめた教本には、技の成立条件や減点要素などがこと細かく書かれている。

 例えば、Eスコアの減点要素である技術欠点には「正しい静止姿勢からの角度の逸脱」という項目がある。そこでは角度のずれに応じて、減点が「15度までは0.1、16~30度は0.3、31~45度は0.5」などと定められている。

 2016年リオデジャネイロ五輪の男子個人総合では、内村航平選手がウクライナの選手を最後の鉄棒で逆転して五輪2連覇を成し遂げた。このときの得点差はわずか0.099。つまり、極端な話、上記の「角度の逸脱」において、角度のわずかな違いがメダルの色を左右する可能性がある。審判にかかるプレッシャーが大きいことは容易に想像できる。

 さらに近年の「アスリートファースト」の考えが、判定をより難しくする傾向にあるという。「例えば男子のあん馬では従来、選手のすぐ目の前で審判員が見ていた。そうなると会場は審判員ばかりが目立つため、アスリートファーストの考えから審判員はもっと外側に座るようになってきた。審判が選手から離れ、見る角度も制限されるようになったため、「15度か」「30度か」など判定がより難しくなっている」(富士通 東京オリンピック・パラリンピック推進本部シニアディレクターの藤原英則氏)。

■自動車向けに開発していた技術

体操の採点支援に使用する3Dレーザーセンサー。1フレーム(画角)は7万6800点で、毎秒30回の発射で230万の測定点を取得する。カメラも内蔵。ネットワークで複数台を連携し、同じ時刻で異なる角度から選手を見られる。あん馬の判定は2~3台で対応できるという

 こうした課題を解決するのが、富士通研究所がもともと自動車向けに開発を進めていた3Dレーザーセンサーと、リハビリ向けに開発していた骨格認識ソフトを融合させた技術だ。

 これは選手に向かって1秒間に230万点という細かいパルス状のレーザー光を発射し、反射光を検出して対象までの距離を算出。そこから骨格の位置を推定し、手足の位置や関節の曲がり具合などを導き出し、体操競技の動きをデータベース化した「技の辞書」と照合して採点するシステムである。

 これまでスポーツ選手の動作分析には、「モーションキャプチャー」が主に使われてきた。これは、赤外光を反射する球体(マーカー)を肩、肘、膝などに装着し、赤外線カメラで選手の動きを捉える技術である。

 これに対して、3Dレーザーセンサーならマーカーの装着が不要なため、選手の演技の邪魔にならないほか、実際の試合でも使える利点がある。システム価格もより安価にできるという。

■FIGと進める「新たな基準作り」

 ただし、これまで誰も手掛けたことがない体操競技の「採点のデジタル化」は、FIGにとっても富士通にとっても大きな挑戦であり、地道で骨の折れる作業だ。

 例えば、あん馬で体の正面で馬体を支持する「正面支持」。教本には「正面支持の姿勢で、体があん馬に対して15度以内に収まっていること」と書いてあるが、その場合の「体」とはどこか、頭のてっぺんから足の先までなのか、首から腰にかけてのラインなのか、などが明確に書かれていない。

 このようにアナログ的な曖昧さが残るものを「0」「1」のデジタルの世界に落とし込むには、「骨格Aと骨格Bの角度を15度以内」というように、いちいち厳格に規定しなくてはならない。

 体操のルールは、FIGで上級審判を束ねているテクニカルコミッティーという委員会が決定する。富士通では3Dレーザーセンサーが検出する18の関節に番号を付けており、例えば「この技は1番と3番のラインの角度を見る」などと規定する作業を、テクニカルコミッティーにいちいち確認しながら進めている。まさにFIGと共同で「新たな基準作り」に取り組んでいるのだ。

 体操教本には男子で807の技が書かれており、それを分解すると346の基本動作の組み合わせになるという。作業の効率化の観点から、この346の技の辞書化を進めている。

 そのとき重要になるのが、「審判・選手との感覚のズレがないかを突き詰める作業だ」(佐々木氏)。3Dレーザーセンサーは関節の位置を検出するが、関節を結んだラインの角度は、例えば肘の内側か外側を見るかで、感覚が異なったりする。

 また、センサーの設置位置によって選手の“見え方”が変わり、それが「精度」に影響を与える。設置場所や台数などノウハウの蓄積が必要になるという。

 そこでセンサーが取得したデータをCG化したものを審判が見て、彼らの感覚とずれていないかを、いちいち確認する作業が重要になるという。「こうした検証を繰り返さないと使いものにならない」(佐々木氏)

骨格認識ソフトの画面例。3Dレーザーセンサーは18個の関節の位置を検出。そのデータからあん馬上で倒立する選手の骨格を認識し、膝や脊椎などの曲がり具合を割り出す(図:富士通)

■残された時間は2年

 今、富士通では本社、研究所・関係会社を含め50人弱の体制で、デッドラインまで残された日数をにらみながら、作業を急ピッチで進めている。

 開発に残された時間は少ない。ゴールは2020年東京五輪で男女10種目への適用だが、実際には五輪のテストイベントは2019年7月に始まり、前哨戦となる2019年10月のドイツ・シュツットガルトでの体操世界選手権に運用を間に合わせる必要がある。開発期間は実質、あと2年だ。

 2017年5月時点では、「技の辞書」を作るためのデータ取得が6割程度終了している。採点の自動化は種目ごとに難易度が異なるが、あん馬は技術的にほぼできるようになってきたという。

 実は、あん馬の演技は体操競技のさまざまな動きを含むため、これを判定できるようになれば他の種目に流用できる。ただし、あん馬には宙返り系の技はないので、あん馬をベースにそれ以外の種目の技を加えていくイメージだ。

 あん馬に続いて、跳馬と、静止技でEスコアの減点がよりはっきり分かるつり輪の2つに取り組んでいる。跳馬は男女共通の競技で、ここで得たデータを女子の床などに活用していく。

■世界148カ国・地域に市場あり

 50人弱の体制で開発を進めている採点支援システムだが、藤原氏はビジネス面について「市場性は大きい」と期待を寄せる。

 マネタイズ領域は3つある。“本流”の採点支援のほかに、試合の中継用データの提供とトレーニングシステムの販売がある。中でも潜在市場が大きいのが、採点支援システムと同じ技術を使いながら選手用に見せ方を変えたトレーニングシステムである。

放送用の画面例。技の種類や難易度などを画面に表示。体操に詳しくない一般の視聴者にとって中継の魅力が大きく増す(図:富士通)


 「FIGのルールに基づいてこのシステムが判定に導入されれば、世界各国の体操連盟などが選手のトレーニング用に導入する可能性がある。現在、FIGには148カ国・地域が加盟している」(藤原氏)

 つまり、技術の世界で「デファクトスタンダード(事実上の標準)」を取るのと同様に、この採点支援システムが新たな「世界標準」となれば、それをベースにしたトレーニングシステムを日々使って選手を強化しようと考えるのは、競技の世界では自然な流れだ。

 アフリカ諸国などでは体操コーチの絶対数が少ないという問題を抱えている。トレーニングシステムにeラーニング的な機能を実装すれば、そうした国で遠隔でコーチングをしたいというニーズに応えられる。

トレーニングシステムの画面例。あん馬の演技で肩のラインとお尻のラインの角度に関するデータを表示し、自分の演技を模範演技と比較できる(図:富士通)

■専門家の暗黙知を取り込め

 「体操のIoT(モノのインターネット)」ともいえる採点支援システムの開発は、「アグリテック」などと呼ばれる農業のIT(情報技術)化に似ている、と佐々木氏は語る。

 両者には、専門家のみが知る「暗黙知」を聞き出してシステムに組み込むプロセスが重要という共通点がある。「体操の審判は、すべての演技について見るべきポイントを知っている。それを国際審判員にひとつずつ教わっている」(藤原氏)。

 まさに、多くのIoTの開発で求められる、現場に密着した地道な作業を進めているわけだが、その先には「日本発の世界標準」の確立という大きな果実が待っている。

(日経BP社デジタル編集部 内田泰)
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