kzunoguchi

趣味の範囲で…園芸・沖釣り・漢方・医食同源の投稿をします…業務はCX・225指数・FX Pro. …

サムスン「ノート7」発火事故が鳴らす警鐘 ジャーナリスト 石川 温

2016年10月13日 10時58分04秒 | 市場動向チェックメモ
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO08257080S6A011C1000000/?dg=1

サムスン「ノート7」発火事故が鳴らす警鐘
ジャーナリスト 石川 温
(1/3ページ)2016/10/13 6:30日本経済新聞 電子版

 韓国サムスン電子の最新スマートフォン(スマホ)「ギャラクシーノート7」の発火事故は、同社にとって悪夢といえる最悪の展開となった。10月11日にギャラクシーノート7の製造・販売の中止を発表し、ユーザーに対して使用を禁止するとともに端末を回収し全額払い戻しに応じるとした。一部の携帯電話会社(キャリア)が秋・年末商戦向けの目玉として準備していた日本でも投入は白紙となった。ギャラクシーノート7は、このまま「幻のスマホ」となってしまいそうだ。

ペン入力も快適で「隙のないモデル」だったはずのギャラクシーノート7だが幻のスマホとなってしまいそうだ

 今回の発火事故の裏側には、市場の成長が鈍化し、その中で激しいスペック競争を繰り広げているスマホメーカーの事情がある。場合によっては、サムスン以外の会社の製品でも同様の事故が発生する可能性もある。

■勝負の自信作で痛恨の失策

 「打倒アップル」という目標を掲げるサムスン電子にとって、今回のギャラクシーノート7はiPhone7を狙い撃ちにした意欲作だったはずだ。

 サムスン電子は、9月上旬にドイツ・ベルリンで開催される欧州最大の家電展示会「IFA」でクリスマス商戦向けの新製品を発表するというのが例年のスケジュールだった。しかし、昨年と今年は新製品発表会の日程を8月に前倒ししたうえで、米ニューヨークで披露してきた。これは、毎年9月に発表・発売される新型iPhoneの機先を制する形で米国市場においてスタートダッシュを決めて、ハイエンド市場で強いiPhoneの牙城を切り崩す戦略だった。

 今年も、8月2日に開催されたギャラクシーノート7の発表会では、3500mAhという大型バッテリーを搭載しながらも、前モデルより軽量化した上で防水・防じん性能も実装した点をアピールしていた。

発表会でも「3500mAh」という大型バッテリーを搭載していることがアピールされた

 ニューヨークでの発表会を実際に取材した印象でも、高い完成度で、従来機種に比べて持ちやすいサイズ感ながらもペン入力がしやすく、しかも防水性能を備えており、スペック的にはまさしく「隙のないモデル」に仕上がっていた。以前からギャラクシーノートシリーズを使っていた身としては日本上陸が待ち遠しいと感じたほどだ。前モデルの「5」から6を飛ばして一気に「7」という型番をつけたのも打倒iPhone7を意識してのことだろう。

 ただ、従来のモデルに比べて軽量化しているにもかかわらず、防水性能を備え、さらにバッテリーを大型化したとなれば、端末の設計上、相当、無理をしている可能性も考えられる。Androidのスマホを製造している他メーカーの商品開発担当者は「原因は定かではないが、バッテリー単体の問題であればバッテリーが膨張する程度で済むことが多い。本体が熱を持ち発火したとなると、本体の充電を制御する部分に問題があるのかもしれない」と指摘する。

■あせりで事後対応も裏目

 世界中で発火問題が起こった直後、ギャラクシーノート7にはサムスンSDIとアンプアレックステクノロジー(ATL)という2つのメーカーから調達したバッテリーが使われていることが明らかとなった。このうち、問題が起こっているのはサムスンSDIが供給したバッテリーであったことから、リコールではATLのバッテリーが搭載されたモデルに交換している、という話だった。また、同時にソフトウエア面での対応として、バッテリーを最大で60%までしか充電しないという対処もとられた。

発表会では本体内部の写真も公開していた。左側の大きな黒い長方形が、今回問題となったバッテリー部分

 つまり、リコールでは「バッテリーそのもの」と「充電の制御」という2つの問題について可能性をつぶそうとサムスン電子は動いていたようだ。

 ギャラクシーノート7の発売日は8月19日だった。最初に台湾のユーザーが「爆発した」と交流サイト(SNS)に投稿したのが8月24日。その後、サムスン電子が騒動に気がつき、端末の出荷を停止したのが8月31日であった。

 9月2日に自主回収を発表した際には「10カ国で出荷した250万台のうち35台で爆発あるいは発火した報告があった」としていた。100万台のうち24台に不具合が出るという水準は、バッテリーの品質管理としては相当に低い数値なのだが、サムスン電子が原因を特定したくても、手元にある端末だけでは再現しない可能性が高い。

発火したギャラクシーノート7の例=ロイター

 サムスン電子としても、原因を特定できないジレンマがあるだろう。実際に発火した端末を回収しないことには正確な原因がわからない。もしかすると、正規品ではない粗悪な充電器を使った可能性も考えられるし、本体に衝撃が加わってバッテリーに傷がついた状態で充電されたこともあり得る。なかには、ネットでの注目を集めるために、イタズラで故意に発火させて撮影してSNSにアップしている人もいたっておかしくない。

 もちろん最も責任があるのは原因を作ったサムスン電子だが、世界中からSNSでアップされてくるこうした写真に翻弄されて原因特定に時間がかかってしまったのかもしれない。

 そんななかで、サムスン電子は9月下旬から販売再開に踏み切った。早いタイミングで出荷を止め回収作業を進めていたものの、完全に原因が特定されたわけでもないのに、見込みの対処だけをして再販売に踏み切ったことが災いしてしまった。原因が究明されるまで見合わせていたら、こんなに大きな影響は出なかっただろう。

 もしかすると、9月16日からライバルであるiPhone7が発売されるとあって、判断が鈍って見切り発車的に再販売に踏み切ってしまった可能性もあり得るかもしれない。

■「少しでも先に」の結末

 今回のサムスン電子の一件は、他のメーカーにとっても対岸の火事ではないはずだ。

 最近のスマホは構成部品のコモディティー(汎用品)化が進んでおり、どのメーカーも特徴を打ち出すのに苦労している。そんななかで、各社がこぞって強化ポイントとしてアピールしているのが、カメラと並んでバッテリー性能だった。スマホの登場以来、ユーザーは常に「すぐにバッテリーが切れる」という不満を抱えているので、各メーカーともより大容量のバッテリーを搭載して「いかに長時間、充電しなくても使えるか」で激しく競い合っているのだ。つまり、バッテリー部分はついつい無理してしまう可能性のある部分なのだ

 もしかしたら、裏ぶたを外してバッテリーを簡単に交換できる方式だったなら、対処も簡単でここまで大きな問題にはならなかったかもしれない。サムスン電子としては、2年前の「ギャラクシーノートエッジ」まではバッテリーを交換できるようにしていた。だが、世界中のほとんどのキャリアがiPhoneを取り扱い始め、さらに裏ぶたを取り外せるギャラクシーS5がデザイン的に大失敗してしまった。そのためデザイン面でアップルに対抗するためにも、サムスン電子としては昨年春発売のギャラクシーS6から裏ぶたを廃止してバッテリーを組み込む機構に変えてしまったのだった。

8月に米ニューヨークでギャラクシーノート7を発表したサムスン電子・無線事業部門トップのDJコー氏

 さらに、アップルも新しいiPhoneで取り入れたように防水・防じん性能が、スマホの標準スペックになりつつある。防水・防じん性能を実現しようとすると、異物が浸水しないようにスマホの内部をパッキンで覆うなど、とにかく密閉性を高める工夫をする必要がある。その結果、バッテリーが少しでも高温になれば熱がこもりやすくなり、さらにバッテリーに負荷がかかる悪循環になりうるのだ。

 また、急速充電もトレンドとなってきており「すぐに充電できる」という点も訴求されがちだ。一方で、バッテリーの大型化し急速充電といった要望もさらに高まる。大きなバッテリーを積んでいれば、それだけ燃えやすくなるため、発火した際、大きな炎になってしまう。今回のバッテリー事故がサムスン以外のスマホでいつ発生してもおかしくない。

■業界全体で情報共有を

 昨年発売したギャラクシーS6が世界的にヒットし、業績が上向いていたサムスン電子にとって、今回の騒動は相当に手痛い失態だ。今後、ギャラクシーブランドの存続も危ういかもしれない。サムスン電子は一刻も早くギャラクシーノート7の原因究明を進めるべきだが、そこで得た知見には他のメーカーも学ぶべきところはあるはずだ。スマホがユーザーを危険にさらすことのないよう、業界全体を上げて安全対策に取り組む必要があるだろう。

石川温(いしかわ・つつむ)
 月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜22時からの番組「スマホNo.1メディア」に出演(radiko、ポッドキャストでも配信)。NHKのEテレで趣味どきっ!「はじめてのスマホ バッチリ使いこなそう」に講師として出演。ニコニコチャンネルにてメルマガ(http://ch.nicovideo.jp/226)も配信。ツイッターアカウントはhttp://twitter.com/iskw226
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 安倍首相、だんまり戦術 憲... | トップ | [FT]サムスンのスマホ回収騒... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。