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主役交代近し リチウムイオン電池、現技術に迫る限界

2017年02月24日 09時07分19秒 | 市場動向チェックメモ
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO11777740X10C17A1000000/?dg=1

主役交代近し リチウムイオン電池、現技術に迫る限界
(1/4ページ)2017/2/24 6:30日本経済新聞 電子版

日経エレクトロニクス
 現在主流のリチウム(Li)イオン2次電池(LIB)の数倍~10倍超の容量を持つ「ポストLIB」の存在感が急速に高まってきた。これまで実現は遠い将来と考えられていたが、技術の開発が大きく進展し始めたことに加え、既存のLIBの安全面・技術面・価格面での限界がハッキリと見えてきたからだ。

 エネルギー密度が現行のLIBの数倍から10倍超の「ポストLIB」の研究開発が大きく進んでいる(図1)。ポストLIBの技術は幾つもあるが、この1年ほどで大きなブレークスルーがそれぞれの技術に相次いだ。1つでも実用化できれば、スマートフォン(スマホ)、ウエアラブル端末、ドローン、そして電気自動車(EV)や電力系統の安定化用蓄電池など、充放電可能な2次電池を用いる用途の使い勝手を大幅に向上させ、社会的インパクトも非常に大きい。

図1 各種次世代電池の電池パッケージでのエネルギー密度の推定値と、それぞれの研究開発における最近の成果を示した。図における各電池のパッケージのエネルギー密度はNEDOの試算で、正負極の理論エネルギー密度の2分の1とした値(図:NEDOの資料に日経エレクトロニクスが加筆して作成)

 例えば、これまで液体だったLIBの電解質を固体電解質にする全固体電池の研究では、「Liイオンの高速道路」と言われる電解質材料が開発された。Liイオン伝導率が飛躍的に向上し、従来のLIBをはるかに超える出力密度を実現できる可能性が出てきた。

 理論上はエネルギー密度の大幅な向上が期待できても、実際には放電容量が低かったLi空気電池の開発では、1回目の充放電サイクルではあるものの、理論値に近い放電容量を確認できるようになった。Liを用いない非Liイオン電池系の技術では、食塩の材料であるナトリウム(Na)イオン2次電池で、LIBを超える放電容量の正極が開発され、しかもこれまで大きな課題だった充放電サイクルは、500回以上と大幅に伸びた。

 これらにはそれぞれ課題が残っており、すぐに実用化されるわけではない。それでも、以前よりははるかに明るい展望が広がってきたといえる。

■トヨタなどは「全固体、次にLi空気」

 研究開発のトレンドもポストLIBに大きくシフトしてきた(図2)。電池関連の学会で国内最大の「電池討論会」で、以前は全講演の半数近くを占めていた燃料電池とLIBの正極材料をテーマにした講演が2016年には大きく減り、それぞれ2012年の講演数の約2分の1と3分の2になった。その一方で、全固体電池やLi空気電池、非Liイオン電池についての講演数は1.5~2倍に増えた。

図2 学会「電池討論会」の2012年(第53回)と2016年(第57回)講演件数の推移をテーマ別に比較した。テーマの分類は本誌によるもの。学会の分類を基にしているが、必ずしも一致していない。燃料電池とLIBの正極についての講演がそれぞれ2分の1、3分の2に減る一方で、多価イオン電池、全固体電池や金属空気電池などの件数は大きく増えた


 こうしたポストLIBについての講演で特に目立ったのはトヨタ自動車だ。同社は以前から全固体電池やLi空気電池の研究開発を重視する姿勢を見せている。2016年11月の第57回 電池討論会では、LIBの次に全固体電池、そしてその次にLi空気電池へ移行するシナリオを示した(図3)。

 「航続距離500km以上のEVを実現したい。そのためには、(体積エネルギー密度が現行のLIBの2~3倍に相当する)800~1000Wh/Lの蓄電池が欲しい」(トヨタ自動車 電池研究部の中西真二氏)

図3 トヨタ自動車 電池開発部が2016年の電池討論会で明らかにした開発シナリオ(a)と、Samsung SDIが2016年春に公開した車載向け次世代電池の開発ロードマップ(b)を示した

 トヨタから遡ること約半年、韓国Samsung SDIも2016年春に車載用電池の開発ロードマップを明らかにしている。トヨタ自動車と同様、全固体電池の次にLi空気電池または金属Li電池、というものだが、全固体電池については、2025年と具体的な製品化時期も挙げた。300Wh/kgの全固体電池は2015年に開発を終えており、2017年には400Wh/kgの同電池を開発する計画という。

■現行LIBは3つの限界で“自滅”へ

 一方、ポストLIBの挑戦を受ける格好の現行LIBは、こうした競合技術の登場とは必ずしも関係のない形で数年のうちに“自滅”する可能性が高い。

 一般に普及している既存技術がある場合、競合技術は既存技術と同水準の性能では市場に参入できず、大幅な性能向上またはコストダウンを求められる。しかも、その性能向上などを進めている間に既存技術の改善が進み、技術の交代がなかなか進まないことも世の常である。ところが、現行のLIBには3つの限界があり、これまでの通例が当てはまらなそうだ。3つの限界とは(1)安全性の限界、(2)エネルギー密度の限界、(3)材料コストの限界、である。

 (1)の安全性の限界は、2016年8~9月に発火事故が相次いだ韓国Samsung Electronics(サムスン電子)のスマホ「Galaxy Note 7」に象徴される。電池は種類を問わずエネルギーの塊で、一歩間違えると発火や爆発の危険性がある。特に、エネルギー密度の高さと安全性の高さは、一定の技術の枠組みの中では互いにトレードオフの関係にある(図4)。過去のLIBの発火事件の度に、安全性の高さや寿命の長さに重点を置いた開発が進められてきた。そこで初めて製品化が実現した技術も多い。

図4 現行のLIBのエネルギー密度と安全性の高さはトレードオフの関係にあり、発火事故などが起こると、業界全体がしばらくは大容量化とは違う方向の開発に進むことが多い(a)。村田製作所が2016年6月に発表した小型LIBは、容量や出力電圧をやや抑える一方で、10Cという高い放電レートや3分で80%充電という短い充電時間、5Cなら5000回以上という長い充放電サイクル寿命を実現した(b)

 しかし、携帯電話機からスマホに移動体通信端末の主流が移行したように、電池駆動の機器は常により大容量の電池を必要とする傾向にあり、そのニーズに応えるために発火事故からやや時間がたつと再びエネルギー密度の向上を追求する歴史をたどってきた。

■発火は巨額の損失に直結

 Galaxy Note 7は、放電容量3500mAh、充電電圧4.4Vという大容量、高電圧のLIBを搭載しており、発火と高いエネルギー密度追求との関連を否定できない。

 Samsungはこの件で、製品のリコール費用だけで数千億円の損失を計上。部品メーカーなどへの補償や売れるはずだった端末の機会損失、ブランドの失墜も含めた損失の総額は2兆円近くになるという試算もある。

 メーカー各社の製品開発の現場では、再び振り子が安全性重視側に傾くのは避けられない。製品を開発する立場からすれば、電池のわずかな大容量化と引き換えに、巨額の損失を被るリスクは取れないからだ。

 しかし、LIBという技術の枠組みの中で安全性を追求しようとした場合、技術や材料の選択肢は以前にも増して狭まっている。そこで、LIBに代わる新技術に脚光が当たる可能性が高まる。

 実際、米Tesla Motors(テスラモーターズ)に大量のLIBを提供するパナソニック 代表取締役社長の津賀一宏氏は、日経エレクトロニクスの取材に対して「現行のLIB技術で、まだ2~3割のエネルギー密度向上が見込めると考えている。密度は安全性とトレードオフの関係にあるので、それ以上の密度向上を目指すなら、安全対策技術が必要になる。全固体電池は、その1つの候補だ」と述べた。

■寿命は「あと5~10年」

 たとえ安全性の議論を脇に置いても、現行のLIBは(2)、つまりエネルギー密度の理論限界がすぐそこまで迫っている(図5)。現在のLIBセルの重量エネルギー密度は最大で300Wh/kg程度。電池のパッケージとなると150~250Wh/kgで、既に理論限界に近い。

図5  LIBのエネルギー密度向上の推移と予測を示した。現在、実用化が見通せる技術では電池パッケージのエネルギー密度250Wh/kgがほぼ限界とされる。2020年過ぎにはその限界に達する見通しであるため、その限界を超える技術の開発の機運が高まっている。(図:NEDOの資料を基に日経エレクトロニクスが作成)

 2016年の第57回電池討論会では、「現行LIBの高性能化はもう限界」という発言が特に企業の研究者から相次いだ。これらの多くは各種ポストLIBの実現を目指す研究者の発言だが、多くの研究者が集まる公の場での発言の重さは無視できない。

 さまざまな種類の2次電池を研究する東京電機大学 准教授の藪内直明氏は、「現行のLIBは、まだNCAやNMCなどのNi(ニッケル)系正極による高容量密度化が可能で、あと数年はやっていける。ただし、5~10年後以降の(実用化が見通せる)技術はまだない」と指摘し、2020年前半にも現行LIBの性能向上が止まる見通しを示した。

■リチウムやコバルトの争奪戦

 (3)の材料コストの限界とは、主に正極材料の価格が高騰し、かつ高止まりが避けられない点に起因する。実際、現行LIB向けの正極材料の1つである炭酸リチウム(Li2CO3)の価格は2015年10月から2016年3月の間に3倍に急騰した(図6)。その後、価格上昇は止まったが、大きく下がることなく高止まり状態にある。さらに、LIBの材料で最も高価なコバルト(Co)もこの1年は価格が上がる一方である。

図6  Li2CO3の2007~2016年における価格の推移(a)。2015年10月までは5~7米ドル/kgと微増だったが、同年10月~2016年3月までの約半年で価格は約3倍になった。その後、価格の高騰は止まったが、18~23米ドル/kgの間で高止まりしている。主要正極材料の1つであるCoもこの1年はほぼ右肩上がりで価格が上昇している(b)。一方、Liの代替候補であるNaやMg、Znといった材料は2米ドル/kg前後と非常に安い(図:(a)は米Global Information(GII)の資料を基に日経エレクトロニクスが加筆して作成)


 背景には、中国でのEVバスを軸とするEVブームが起こりつつあることや、Tesla MotorsのEV向けLIB工場「Gigafactory」の本格稼働を前に、LiやCoの争奪戦が始まったことがある。その色の白さからLi2CO3を「白い金」にたとえる向きもある。

 米Goldman Sachs(ゴールドマンサックス)は2015年11月に「Liは新しいガソリンになる」との見方を示している。今後、EVは普及の一途をたどる予測がほとんどだが、数年のうちにLiやCoの供給量の逼迫が、EVの生産台数の深刻な制約要因になる可能性が高い。

■LIBの価格低減見通しに暗雲

 LIBの価格は量産が進んだことなどで数年前の20万円/kWhから現在は3万円/kWh前後に大きく低下している。これは、価格に占める原材料費の割合が高まっているということでもある。現時点ではEV向けLIBの価格の3分の1弱がCoやLiなど正極の材料費で占められている。今後は電力系統向けの定置型大容量LIBの需要も含めて、LIBのさらなる低価格化が社会的なニーズとなる中、それに逆行するLiやCoの高騰は大きな課題になりそうだ。

 一般にメーカーはコストアップにつながる新材料や新技術の採用を歓迎しないが、既存技術のLiやCoのままではそれ以上に深刻なコストアップが避けられないのである。

 一方、非Liイオン電池の主原料候補であるナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)などは価格が安く、資源量も多く、現時点でも生産量が非常に多いため、EVの需要が急伸しても価格高騰の可能性は低い。こうした3つの限界から、電池メーカー各社にとってポストLIBの実用化が急務となっているのだ。

(日経エレクトロニクス 野澤哲生)
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