ご苦労さん労務やっぱり

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中途採用の内定取り消しは新卒のそれよりも重大

2017-11-13 09:59:29 | 労務情報

 今春、東京の旅行会社が経営破綻し、およそ50人の採用内定が取り消されたことが話題になった。内定取り消しの理由は、本件のような会社側の経営上の都合によるもの(業績の急激な悪化等)と本人の責任によるもの(「学校を卒業できなかった」など)の2つに分けられるが、トラブルになりやすいのは、俄然、前者の方だ。

 「採用内定」は、当事者間で「解約権を留保した労働契約」が成立したものと解される。
 したがって、「内定取り消し」は、その契約を会社側から一方的に終了させるという意味を持ち、「解雇」と同じ労働契約法第16条の適用を受ける。すなわち、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効」となるのだ。
 訴訟においては、(内定取り消しは解雇ではないものの)「整理解雇の四要素」と呼ばれる (1)人員整理の必要性、(2)解雇回避努力義務の履行、(3)被解雇者選定の合理性、(4)解雇手続の妥当性、の4項目を用いてその当否が判断されるので、そもそも内定を取り消す前に、これらを勘案したうえで、慎重に結論を出さなければならない。

 ところで、中途採用の内定取り消しは、新卒採用予定者の内定取り消しと比較して事の重大性が異なるので、特に注意と配慮を要する。
 というのも、中途採用では、通常、現在勤務している他社を退職してもらうことが前提となるからだ。前職を退職した挙句に内定を取り消すことになったら、その人が培ったキャリアを無にしてしまいかねないからだ。このことは、裁判所が中途採用での内定取り消しを無効と断じた事案において、その間の賃金を補償させる他に“慰謝料”も支払うよう命じた裁判例が複数ある(新卒採用における内定取り消し事案では見当たらない)ことが端的に示している。
 会社としては、経営が苦しいから内定を取り消すのだろうに、働いてもいない人の賃金やまして慰謝料まで支払うことになったら目も当てられない。

 会社としては、「内定取り消しは整理解雇の寸前でなければ発動できない」ぐらいに理解し、相応の金銭補償も含めた誠意ある説得から始めるべきだろう。
 これも、言ってみれば「解雇に準じた対処」ということになる。


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