ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

顧客の名刺は会社の物か

2016-10-13 11:59:19 | 労務情報

 従業員が退職する際に、会社から渡した本人の名刺の残部を返却させるのは当然として、業務遂行に伴って入手した「顧客の名刺」を置いていかせることができるのだろうか。
 会社としては「名刺は顧客情報であるから会社の所有物である」と主張したいところだが、当該従業員側は「個人が築いた人間関係によって入手したものなので個人の所有物である」と主張するかも知れない。

 これに関し、裁判所は、「営業秘密に該当する場合」(名古屋地判H20.3.13等)と「特約のある場合」(東京地判H17.6.27等)に、会社の言い分を肯定している。逆に、これらに該当しない場合は、従業員側に軍配を挙げている(知財高判H24.2.29等)。

 まず、「営業秘密」とは、例えば、施錠された書庫に保管する(紙ベースの場合)、一部の者だけアクセスできるようパスワードを設定する(データ化した場合)等、厳重な管理下に置かれていたものを言い、すなわち、退職者自身も営業秘密であることが容易に認識できた(であろう)ものに限られる。したがって、会社が営業秘密であると主張するなら、これらの措置を講じておかなければならない。

 一方の「特約」とは、「退職時には業務上入手した名刺を会社に返却すること」といった取り決めを、労働契約(適法に制定された就業規則を含む)に定めていることを言う。
 では、就業規則(もしくは「機密管理規程」等の細則)にそう書いておきさえすれば良いかと言うと、そんなに簡単な話ではない。この類いの訴訟では、「就業規則の記載内容が従業員に周知されているかどうか」が、しばしば争点になるからだ。そのため、会社としては、就業規則等に定めておくほか、『機密管理に関する誓約書』に顧客の名刺についても明記して各従業員と交わしておくのが望ましい。
 また、昨今話題の「顧客の名刺をデータ化して全社で管理する」といったシステム(もしくはルール)は、「営業秘密としての管理」の面でも有効なので、導入を検討する価値はあるだろう。

 なお、現に顧客の名刺が不正利用されて会社が損害を被った場合は、損害賠償を求め、また、不正競争防止法事案として公訴を求めることは、もちろん可能ではある。しかし、そのような事態にならない方が両者にとって望ましいには違いないので、退職後は使わない(はずの)顧客の名刺は置いていかせる仕組みを作っておくのが賢明だろう。


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