ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

試用期間満了時に正式雇用しないのは問題あり?

2015-09-13 22:19:05 | 労務情報

 試用期間を設けている会社は多いが、試用期間だからと言って、安易に解雇したり、試用期間満了時に正式雇用しなかったりするのは、トラブルの素であるので、注意を要する。

 まず、理解しておかなければならないのは、試用期間中であれ試用期間満了時であれ、一度雇い始めた以上、退職させるのは「解雇」に違いないということ。すなわち、それが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、無効(労働契約法第16条)とされるのだ。
 実際どのような場合に解雇できるかはケースバイケースとしか言えないが、「従業員としての適格性に“著しく”欠ける」という状態でなければ裁判所には認めてもらえにくい。パソコンを扱えなかったため正式雇用を拒否した事案について「パソコンの技能は日常作業を通じて習得可能」として「解雇無効」と断じられた裁判例(東京地判H19.3.13)もあるので、「能力不足」は解雇の理由としては不充分と考えておくべきだろう。

 また、「試用期間満了時に正式雇用しない」というのは、必ずしも退職させるばかりでなく、試用期間を延長もしくは再試用するという選択肢もある。
 しかし、会社が適性判断を懈怠し結論を先送りするための試用期間延長や、試用期間が一旦満了して本採用された後に再び試用期間とするものは、「労働者が不安定な地位に置かれる」ので許されない(名古屋地判S59.3.23等)。ただし、「一応職務不適格と判断された者について直ちに解雇の措置をとるのでなく、配置転換などの方策により更に職務適格性を見いだすために試用期間を延長した」ケースは認められている(東京地判S60.11.20)。

 そして、意外に足をすくわれやすいのは、「試用期間について従業員本人に通知していない」というもの。厚労省が作成した『モデル労働条件通知書』に「試用期間」の項目が入っていないこともあり、また、就業規則には試用期間に関する規定を置いていても、その就業規則自体を新入社員に周知していない会社もあって、当の本人が試用期間であることを承知していないケースが少なくないのだ。
 そうなると、試用期間とは関係なく、ただ「解雇が有効か無効か」という議論になってしまい、会社にとってはハードルが高くなってしまう。さらには、試用期間でないならば、14日以内に解雇する場合でも、解雇予告(もしくは解雇予告手当の支払い)が必要になる。
 基本的な事ではあるが、漏れの無いよう、再チェックしておきたいところだ。


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