歴史・音楽・過ぎゆく日常のこと
日日の幻燈






■「赤松小三郎ともう一つの明治維新」
■関良基 著
■作品社 2016年

故郷・長野県上田市の知る人ぞ知る偉人、赤松小三郎。彼についての伝記を見かけて、これは買わねば…と思っていましたが、ようやくにして購入できました。
赤松小三郎、名前くらいはもちろん知っていました。が、自分の認識では幕末の洋学者で兵学者。京都で暗殺された人物。そんな程度。
上田に住んでいたころ、上田城址の市立博物館に行くと、ほとんど誰の目にもつかない2階の片隅のケースの中に、彼の遺品だか手紙だかが、こじんまりと展示されていたのを記憶しています。


彼の来歴を記すと、ざっと次の通り

1831(天保2)年
 信濃上田藩の下級武士・芦田家に誕生

1848(嘉永元)年
 江戸へ遊学

1854(嘉永7)年
 上田藩士の赤松家へ養子に入る
 この頃、勝海舟に入門

1864(元治元)年
 英国人アプリンに入門、英語を勉学

1865(慶応元)年
 「英国歩兵練法」を翻訳(共訳)

1866(慶応2)年
 幕府へ建白書を提出
 薩摩藩の要請で京都で英国兵学を教授

1867(慶応3)年
 会津藩洋学校の顧問に就任
 幕府、越前松平春嶽、薩摩島津久光に「口上書」を提出
 京都で暗殺される


さて、本書で著者が力説している、1867(慶応3)年に幕府、松平春嶽、島津久光に提出した「口述書」。要約すると、

今後は朝廷と幕府・諸藩が合一した政治体制を採用する。

公家、諸侯、旗本のうちから選挙で選ばれた30名からなる上局と、一般庶民の誰もが立候補でき、その中から選挙によって選出された代表者たちの下局からなる二院制の議政局を設置する。この議政局が国家の最高権力機関であり、天皇の権限をも上回ること。

教育は必須であり、各地に大学を設けて人材を育成すること。

国民は皆、平等であり、職業の選択の自由を有すこと。

農民だけではなく、それぞれが応分の納税義務を負うこと。

軍隊については、最初は諸藩士を中心に必要最小限の人数を置き、おいおい、国民皆兵(徴兵制ではなく、誰もが国防の義務を持つ)の方向へと進む


著者は、これぞ日本初の議会制民主主義を掲げたものであり、普通選挙、人民平等を盛り込んだ、現代日本の憲法の先駆けである!
そしてさらに、坂本龍馬が提唱したとされる船中八策は、赤松小三郎の口述書を基にした後年の創作ではないのか?と推理しています(「船中八策」の真贋についてはいろいろ言われているようですね)。
しかし、この建白によって武力倒幕に傾きかけていた薩摩藩の重鎮たちに邪魔者扱いにされ、ついには暗殺されるに至る…。
この辺り、事細かに小三郎の事績を追いかけていくにつれて(著者の推理も含めて)、思わず時間を忘れて、のめり込んでしまいました。


やるじゃん、赤松小三郎。


ただ、残念なことに…


この本、政治臭がプンプンしすぎるのです(著者の前書きの段階で、すでにちょっとイヤな感じがしたのですが)。


明治維新時にそれなりの働きをしながら、その後脚光を浴びることがなかったこの手の人物を取り上げるときにありがちな、薩摩、長州が政権を握らず、彼(この場合は小三郎)が政治の舵取りをしたら、その後の日本は戦争に突き進むことなく、もっとまともな国家になっていたはずだ…から始まって、今の与党、というか長州の流れをくむ政治家への反発をむき出しにしています。


とくにヤリ玉に挙げられているのが、現首相とその政策(中でも改憲について)。


結局そういうことか…と。

赤松小三郎、現代の政治批判のダシに使われただけなのか?


本の後半は小三郎のことより、現在の政治情勢についての著者の恨みつらみにも似た思いが滔々と綴られています。
著者がどんな政治信条を持とうが、それはもちろん自由ですが、予期せぬところでいきなり語られだすと、興ざめしてしまうのです。この前読んだ小説(昭和初期の時代設定)も、いきなり後書きで、著者が政治信条を語りだして、一気に続編を読む気が失せたっていうのもありました。

純粋に小三郎の人物について知りたかっただけなのになぁ。

「私は郷土の英雄・赤松小三郎が好きだ!だから彼を抹殺した長州や薩摩の元勲たち、西●や大●保や木●や品●は大嫌いだ!」
と、大声で叫んだほうが、とってもすっきりするのに。期待して読み始めただけに、なんとなく後味の悪い終わり方だったのでした。

ま、それはそれとして、忘れていた故郷の英雄・赤松小三郎のことを思い出させてくれたことは事実。今度、上田に帰ったら、小三郎の足跡をたどってみようと思い、本を閉じたのでした。


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