鴨川日記

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幸田真音「周極星」

2006-07-19 20:18:00 | 小説と映画
幸田真音さんの小説は、いつもビジネスの世界で生きる人々の物語が
描かれています。「周極星」では、上海と東京を結んで、若い男と女の
起業家たちと、大手銀行重役、その友人の企画会社社長などが登場。

中国の商習慣、中国人気質、日中の文化の違いを背景に、
ビジネス界における駆け引きが展開されます。いかに中国という国が
不思議なパワーを持った国かということが、作者の驚きと共に
伝わってくる。この作家特有の堅さがありますが、トータルでは
面白い小説だと思う。文化の違いやビジネスでの駆け引きなども
端的な説明や会話の中で上手に描かれています。

登場人物を書いておくと、それほどネタばれにならずに、この小説の
骨格が記録できそうなので、以下、主な人物紹介を。

織田一輝: 
 両親は日本人だが中国で中学生まで育ち、中国語も流暢。
父親にビジネスの洗礼を受け、自らも父親を乗り越えるべく、
若手起業家として活躍するが・・・。

胡夏琳:
 織田一輝とは幼なじみ。日本人の父とその愛人の中国人の間に
生まれた娘。母娘を捨て東京に戻った父を恨みつつ、上海で
人材派遣とファンド、2つのビジネスを展開。

倉津謙介:
 大手銀行の上海支店長。大手銀行でビジネスの駆け引きを
生き抜いてきた男。友人の助言も受け中国でのビジネスも積極的に
展開し、織田一輝、胡夏琳とも取引を行う。
本店執行役員の座もめざす。

高井正隆:
 企画会社社長。日本と中国でビジネスを展開。倉津謙介の
高校時代の友人で倉津が中国に赴任する際に相談役となる。

森下未亜:
 若くして郷里を捨て、上海に渡り、中国で生きる道を選ぶ。
通訳業などを通じて胡夏琳の友人であるが、織田一輝と出会って
運命が変わっていく。

織田、胡、倉津のビジネスがどのように絡んでいくか、
そこに男女の想い、親子の思い、上司と部下の関係などが
盛り込まれ、上手にドラマ化すればそれなりに面白いと思う。

この作家の本は、今までにも「小説ヘッジファンド」「日本国債」
「投資アドバイザー有利子」「eの悲劇」を読みました。直接ビジネスに
タッチしない人間にとってビジネス界を擬似的に楽しむのにいいかも。

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